ゴブリンスレイヤー ~魂を継ぐ者~   作:ウォルナット

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山羊頭のデーモン

 悪魔(デーモン)。『祈らぬ者』と呼ばれる者共の中では特に有名(メジャー)な存在だろう。

 その特徴は多岐にわたる。翼持つ者。火や毒を吐く者。石の皮膚を持つ者。巨大な者。様々な姿の者が居る。そしてそのすべての存在に共通する特徴がある。極めて強力な存在ということだ。

 おれ達のような駆け出しではまるで勝ち目が浮かばないほどに。

 

「逃げろ!!」

 

 姿を認識した瞬間、撤退の指示が自然と口を()いた。仲間達も同じように思っていたのだろう。すぐさま全員が身を翻し入口へと駆け出した。

 

「逃ガスト思ウカァ!!!」

 

 山羊頭のデーモンはその手に持った大鉈のうちの一本をぶん投げてきた。

 

「っ! 避けろぉ!」

 

 猛烈な勢いで回転ながら飛んでくる大鉈を倒れこむように避けながら仲間への警告を叫ぶ。仲間も背後を警戒していたのだろう。すぐさま飛んでくる大鉈の射線から外れるように横へ避ける。

 飛んで行った大鉈はそのまま入り口のアーチに飛んでいき直撃。入り口を崩落させた。崩れた瓦礫の上部には辛うじて人が這い出る隙間程度はあるようだが、あのデーモンはそんなことを許してくれる相手でもないだろう。

 

「ヌフゥ……! モウ一度聞クゾ。ナゼココニイル?」

 

 デーモンは再び同じ問いを発した。

 

「……別に、大した理由じゃないさ。ただの冒険だよ。あんたがここにいる事なんて知らなかったさ」

 

 逃げられなくなった事を悟り構えようとする仲間を制しながら答える。答えながらも改めて相手の観察をする。

 人型を取ってはいるがさっきの大鉈の投擲を考えれば力はおれ達とは比べ物にならないだろう。手に持ったもう一本の大鉈を見ると自分の持っている鉄の剣が棒きれに思えてくる。あんなもので切りつけられたらおれ達は一たまりもないだろう。盾による防御もあまりアテになりそうにない。盾が壊れるか腕ごと吹っ飛ばされるか、振り下ろしなら盾ごと叩き潰されて終わりだろう。

 

(……ていうかこいつ、夢の中で見たことあるな)

 

 あの夢はただの夢じゃなかったのか? いや、今はそんなことはどうでもいい。

 それにこいつは夢の中で戦っていた奴とは明確に違う点がある。

 

「……フム。タダ運ガ悪カッタダケカ。オ互イニナ」

 

 会話が成立している点だ。つまり、理性や知性がある。夢の中みたいにただ力任せに大鉈を振り回すしか能がない、なんてことは期待するべきじゃないだろう。

 

「見逃してくれないか? おれ達みたいな雑魚、わざわざ殺す価値はないだろ?」

 

 一応といった感じだが交渉をしてみる。期待は、薄いだろうけれど。

 

「……フン、駄目ダナ。冥途ノ土産ニ教エテヤロウ。我ハ魔神王様ノ配下デアル。確カニ魔神王様ハ貴様ラ『祈る者』共ニ討タレタ。ダガアノ御方ハ、イズレ復活サレル。我ハソノ尖兵トシテココヲ根城トスルツモリデアッタノダ」

 

 当たり前だが断られた。……尖兵と言っているが残党の間違いじゃないのか。

 

「イクラ貴様ラガ雑魚トハイエ、我ノ事ヲ知ッタ貴様ラヲ生キテ帰ス訳ニハイカンナ」

 

 チラリ、と仲間達を見やる。……盗賊商人は怯えてしまってあまり当てにできそうになさそうだが、幼馴染と女魔術師はなんとか行けそうだ。

 

「だったら、しょうがないな!」

 

 そう言って切りかかる。幼馴染も後に続いてくれた。

 

「ソノ意気ヤ良シ! セイゼイ足掻イテ見セルガイイ!!」

 

 普段の壁役と攻撃役で別れるやり方ではなく二人共攻撃に専念する。

 

「くぅ……硬い!」

 

 幼馴染が呻くように言葉を漏らす。見た目に違わぬタフネスぶり。幼馴染の拳はその発達した筋肉にほとんど弾かれてしまっている。下手をすれば自分の拳を痛めてしまっているだろう。おれも斬り付けているがほとんど効果がなさそうだ。

 

「ヌハハハ! 貧弱貧弱ゥ! ソノ程度デハマルデ効カンゾ! 攻撃トハコウヤルノダ!!」

 

 デーモンは嘲笑うようにおれ達の攻撃をその身に受ける。そして見せつけるようにその手に持った大鉈を薙ぎ払った。

 その攻撃をおれも幼馴染もなんとか回避する。

 ダメだな、やっぱりおれ達じゃ勝負にならない。

 最初は遊ぶように大鉈を振り回していた攻撃が次第に激しくなっていき、次第におれ達も回避に専念しなければならなくなっていった。

 

「≪サジタ()……インフラマラエ(点火)……ラディウス(射出)≫!」

「ヌオ!?」

 

 だがおれ達の頼みの綱は、おれと女武闘家じゃない。女魔術師の魔術だ。おれ達に気を取られたデーモンの油断という隙を女魔術師は見事狙い打ってくれた。

 

「やったか!?」

 

《火矢》の魔術をその身に受けデーモンが炎上する。会心の連携に思わずそんな言葉が漏れる。しかし、

 

「舐メルナァ!!」

 

 咆哮と共に炎が振り払われる。手傷は与えられている気はするが、致命傷どころか重症にも程遠い。

 

「残念ダッタナァ! 悪クハナカッタゾ! サア、次ハナンダ?」

 

 デーモンはそう問いかけてくる。問いかけてはいるが、もう打つ手はないだろうと、自らの敗北など考えていないのが見て取れる。

 

(そして、それは間違ってないんだよな……)

 

 逃げるのもダメ。倒すのもダメ。

 

(詰み、か。……いやまだだ)

 

 ふと、思いついた案。それは起死回生の一手なんかじゃない。

 でも、なにもしないよりはマシな案。

 

(覚悟を、決めるしかない、か……)

 

 一人、心の中で呟く。仕方がない事なんだと、自分を騙した気になりながら。

 

 

 

 

「みんな聞いてくれ」

 

 チラリと仲間達を見やる。デーモンは面白がっているのか、静観の構えを見せている。

 仲間達は頼みの綱である魔術が通用しなかった事に心が折れそうになっている気配がする。盗賊商人に至っては絶望の表情を浮かべている。

 

「こいつはおれが食い止める。だからその間にみんなは街まで戻って応援を呼んでくれ」

「ホウ?」

 

 その言葉を聞き仲間達は驚愕の表情を浮かべ、デーモンは嘲りの声をあげる。

 

「おれ達にはもう打つ手がない。だが、街にいる上の等級の冒険者なら話は別だろう」

 

 おれはさらに言葉を紡ぐ。それが無謀だと知りながら。

 

「だからみんなが呼んできてくれ。なーに半日、いや戻ってくることも考えれば一日凌げばいいんだ。それくらいだったらやってみせるさ」

 

 

 

「ワハハハハ! イイダロウ! ナラバ貴様ガ死ヌマデハ、逃ゲル奴ラニ手ヲ出サナイデイテヤロウ! 逃ゲラレルモノナラ、逃ゲテミルガイイ!!」

 

 デーモンはそう言っておれに襲い掛かってくる。

 恐怖に竦みそうになる身体を必死に動かし、その攻撃を躱しながら叫ぶ。

 

「早く行けぇ!! 無駄にするな!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「は、早く行こう……」

 

 傍らから盗賊商人の『逃げよう』という誘いの声が聞こえてくる。

 

「バカ! なんで来た!!」

「なにがバカよ! あんた一人置いて行けるわけないでしょ!!」

 

 正面ではデーモンと戦う青年戦士と女武闘家のそんな声が聞こえてくる。

 そんな声たちを聴きながら、思う。

 

(我ながら、バカになったものね……)

 

 ここは逃げるのが正しい。ここで戦っても勝ち目がない、死に損だ。

 そんなことはわかっている。それでも。

 

「ごめんなさい」

「え……?」

 

 逃げるわけにはいかない。そう思うんだから。

 

「あなただけでも逃げて頂戴」

「あ、あなたも一緒に……」

 

 

 

「そういう訳にもいかないのよ」

 

 自然と言葉が紡がれる。まるでそれこそが本心であるとでもいうように。

 

「あいつらとはまだ出会って数か月。それでも、もう幾度も死線を一緒に乗り越えてきたわ。楽しさも悔しさも分け合ってきた」

 

 今までの冒険の記憶が蘇る。……なんだかんだあったけど、笑っていられたんだから楽しかったんでしょうね。

 

「今更あいつらを見捨てて、私一人だけのうのうと生きるわけにはいかないのよ。……他の誰かが許しても、私が私を許せないわ」

 

 私たちの選ぶ道は、全員で生き残るか、全員死ぬか、よ。

 

「でも、それにあなたを付き合わせるわけにはいかないのよ。だから……」

 

 そこまで言うと私が動きそうにないことを理解したのか、盗賊商人は一言謝り私から離れて行った。

 

「……ごめんっ!」

 

 

 

 

 それを気配だけで感じながら一つ深呼吸をして杖を構えた。

 さあ、悪足掻きを始めよう。

 

(あいつはああ言ってたけど、まだできることがあるかもしれない)

 

 考えろ。賢者の学院で学んだことを思い出せ。

 

(見たところあいつらの攻撃は通用してる気がしない。頼れるのは私の魔術のみ)

 

 考えろ。今までの経験を活かせ。

 

(私の使える魔術は《火矢》と《火球》のみ。うち《火球》は《火矢》に劣る威力しかないからアテにはできない)

 

 考えろ。考えろ。

 

(《火矢》は通用しないわけじゃない。でも決定打になるほどでもない。でも、当たり所がよかったりしたら? いや、炎上までして倒せなかったし……)

 

 考えろ。考えろ。考えろ。

 

(手持ちの手札では打開できない? だったら、新しい術を……いえ、そんなご都合主義な事は期待すべきじゃない……)

 

 考えろ、考えろ……

 

 詰み

(違う! 今はそんなことを考える必要はない!! もっと、もっと何か……)

 

 

 

 考えても考えてもなにも浮かばない。目の前の光景は刻一刻と悪い状況へと遷移していくというのに。

 ……原因は、わかっている。結局のところ、火力が足りないんだ。そして一朝一夕では火力は上げられない。だから何も出てこない。

 

(何が、魔術よ。肝心な時に、なんの役にも立たないじゃない……!)

 

 何の手も浮かばず、その焦りと憤りで今まで散々恃みとしてきた魔術を貶したくなったその時だった。

 

 

 

 何かを、閃いた気がした。

 

(え、なに……?)

 

 何に引っかかりを覚えた? そう思いもう一度散々引っ掻き回した頭の中を確認しなおしてみる。

 

 

 

『«インフラマラエ(点火)»』

 

 

 

 閃きを取っ掛かりに探すといくつかの情景が浮かんでくる。これは……槍使いの相方である魔女? 

 

(なにこれ、私も«インフラマラエ(点火)»を使えということ?)

 

 

 

『«サジタ()……インフラマラエ(点火)……ラディウス(射出)»!』

 

 

 

 今度は私が《火矢》を唱えている情景が見える。

 

(どういうこと? 《火矢》はダメだって結論が出たじゃない)

 

 

 

『この間の依頼の後、新しく使える魔術が増えたわ!』

 

 

 

 最後に«火球»の魔術を報告している私が見えた。

 

(なんなのよ? «火球»なんてもっとダメだってなったじゃない)

 

 

 

(いえ、違う。これじゃない。これはもっと根本的な……)

 

 そう思い、そもそも閃きが起こった原因を思い返す。

 

(確か、そう)

「何が、魔術よ……っ!!」

 

 そう呟いた瞬間、全てが繋がった気がした。

 

 

 

『何が、魔術よ』、ではない。

 

『魔術とは、なんだ?』、だ。

 

 

 

 魔術とは、『世界を改竄する真に力ある言葉を操る技術』だ。三節の詠唱を持って、強力な攻撃を繰り出したり不思議な現象を起こす技術ではない。

 

 «火矢»の魔術。それは『魔力を矢の形に整える(サジタ)』、『矢に火の属性を付与する(インフラマラエ)』、『矢を発射する(ラディウス)』という三つの『真に力ある言葉』を組み合わせただけの魔術だ。

 

 そして«火球»の魔術には……

 

 

 

(でも、本当にそんなことできるの……?)

 

 

 

 希望は見えた。でもその希望が本当に信じていいのかわからず考え込んだその時だった。

 

「うわ!?」

 

 女武闘家の悲鳴が聞こえた。見ると女武闘家が吹っ飛ばされ転がっていく姿が見えた。デーモンは手に持った大鉈を振り切っているような恰好をしている。大鉈には布切れが引っ掛かっているところを見るに避け切れずに胴着に引っ掛かり吹き飛ばされたのかもしれない。

 

「フハハハハ! ソロソロ限界カ!?」

「っ! くっそぉ!!」

 

 デーモンは嘲りの声をあげ、青年戦士は悔しさを滲ませた声を漏らす。

 考えている余裕はない。

 

(ええい、(まま)よ!!)

「っ! うわあああ!!」

 

 自分を鼓舞するように叫び声をあげながらデーモンに突撃をする。私が今からやろうとしている事は、私の考えが間違ってなければ近づかなければできない! 

 

「呪文遣イガ近ヅイテクルトハ! 気デモ触レタカ!」

 

 そんなデーモンの嘲りの声を聞き流し、恐怖に耐えながら足を動かし駆ける。

 そしてデーモンから歩いて大体五歩。大鉈の間合いギリギリぐらいの位置で足を止める。

 

(捉えた!!)

「«クレスクント(成長)»!」

 

 いつかの遠距離狙撃を成功させた時のように射程に捉えた感覚を感じながら、«クレスクント(成長)»を唱える。

 

«クレスクント(成長)»。«火球»の詠唱の一節に含まれる『真に力ある言葉』。

 その使い方は、『火の石(カリブンクルス)』を『成長(クレスクント)させて火球とする』事。

 

(つまり、増幅させて威力を増す効果がある!)

 

「ヌウ!? サセルカ!!」

 

 流石に魔術を使われるのを嫌ったのかデーモンはこちらを攻撃をしようとしてくる。

 

「させるか!」

 

 すかさず青年戦士が妨害をする。

 飛び上がり頭部を切りかかる。いつかの新米戦士に隙を晒さないようにしていると語った、彼らしくない決死の一撃()

 

「甘イワ!!」

 

 その攻撃は手に持った大鉈であっさりと防がれ、逆の開いてる手で殴られ吹っ飛ばされる。

 

「ぐああ!!!」

 

 バギギ! という何かが壊れる形容しがたい音が聞こえる。

 その音は装備していた鎧が壊れる音か、それとも骨の折れる音か。

 

 殴られた青年戦士に駆け寄りたくなる気持ちを必死に抑え、仲間の献身を無駄にしないために詠唱をする。

 

「«クレスクント(成長)»!!」

 

 

 

「詠唱ヲヤメロォ!?」

 

 青年戦士という障害を取り除いたデーモンは再び私を攻撃しようとした時、女武闘家による更なる突然の妨害を受けた。

 吹き飛ばされた女武闘家はいつの間にか立ち上がりデーモンの後頭部に飛び蹴りをかましたのだ。しかし彼女も既に限界だったのか、飛び蹴りをした後まともに着地もできずその場で崩れ落ちる。

 

「フン!」

「ぐっ……!!」

 

 デーモンは崩れ落ちた石ころを蹴飛ばすように女武闘家を蹴飛ばす。ボキリ、という骨が折れる嫌な音が響き女武闘家が吹き飛ばされた。蹴られる前に腕を差し込んだのか、腕が一本あらぬ方向に向いていた。

 

 倒れた女武闘家に駆け寄りたくなる気持ちを必死に抑え、仲間の執念を無駄にしないために詠唱をする。

 

「«クレスクント(成長)»!!!」

 

 

 

 これで下準備は完了した。しかし、

 

(ダメ! あと一手足りない……!!)

 

 準備ができただけだ。

 あと一手、«クレスクント(成長)»によって作られた『増幅する』という要素を威力に変える必要がある。

 

「コレデ、終ワリダ!」

(あと一手、ううん先制(イニシアチブ)さえ取れれば……)

 

 しかしいくらそう思おうともなにも変わらない。もう私達には手札がない。

 それでも最後まで足掻こうと口を開いた瞬間。

 

「グオ!?」

 

 なにかが通り過ぎる風切り音がした。突然デーモンが頭を押さえて蹲る。見ると頭部になにか棒状の何かが突き立っていた。

 

(あれは……ボウガンの……)

 

 そう思った時、背後からいなくなったはずの彼女の、怯えを必死に抑え込もうとしている震えた声が聞こえた。

 

「ウチを……元青玉等級(ウチ)を舐めるな! 黒曜等級(新人)!!」

 

 

 

 仲間達の献身と執念、そして勇気により策は成った。あとは私が最後の手を打つだけ。

 

(お願い……!!)

「«インフラマラエ(点火)»!!!!」

 

 最後の魔術の使用回数を使い『増幅する』力場に『点火』を意味する詠唱を唱えた瞬間。

 

 

 

 目の前が『紅』に現れた。

 

 

 

「ナ!? グウゥ……! ……!!」

 

 突然現れた『紅』に驚き二歩三歩と後退る。そうすると全貌が見えた。

 デーモンが紅い炎に包まれていた。その炎はいつもの«火矢»で生み出される『赤』より鮮やかで、『真紅』と言っていい色合いをしており感じ取れる熱も常より熱く感じられる。

 

 想像以上の威力を発揮した魔術に驚きそのまま更に数歩後退ると何かにぶつかった。

 

「大丈夫?」

 

 いつの間にか盗賊商人が近くまで来ていて彼女にぶつかったようだ。そのまま体を支えられる。

 

「……!!!」

 

 しばらくするとデーモンは限界を迎えたとばかりに倒れ伏す。ガラリ、と手に持つ大鉈が大きな音を立て地面に転がった。

 そのような状態になってなお紅い炎は燃え続けていた。

 

 

 

 デーモンは倒れた。そう思った時。

 

(……あ)

 

 安心したせいだろうか。ふと意識が遠退いていくのを感じる。盗賊商人が何かを話しているようだが、頭はそれを認識してくれない。

 青年戦士たちは大丈夫だろうか。そう思い最後に彼女に言葉を掛けた。

 

「あと……おねがい……」

 

 その言葉を最後に私の意識は闇へと沈んでいくのだった。

 

 

 

 




山羊頭のデーモン

筋骨隆々の長身の人型をしているが、首から上には山羊の頭蓋骨が乗っている。
デーモンとしては最低等級。
特に特殊な技能を持っているわけではないが、特大剣の大鉈を両手に一本ずつ持ち片手で振り回せるほどの力は決して侮るべきではない。また見た目にふさわしいタフネスを誇り、威力の低い攻撃ではビクともしない。
最低等級と言えどデーモン。その名と力に偽りはない。
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