今作の白霊要素も出ます。
「「幽霊?」」
青年戦士と女魔術師が異口同音に訝し気な声を漏らす。
その日の彼らは、そんな一幕から始まった。
「そう! 幽霊!! 最近出先で出くわす人が多いんですって」
そう話を振るのは女武闘家。
彼らが冒険者となって半年。当初は居心地悪く、所在なさげに待合室の隅のテーブルに押しやられていた彼らもそれなりに慣れ、ここが我らの居場所と馴染み席として利用するまでになっていた。
今はいつものように依頼の張り出しを待っているところだ。
「幽霊って……
「あ、そういうんじゃないんだって」
女魔術師の疑問の声に女武闘家はパタパタと手を振って否定する。
「えっと……あたしも又聞きだからよくは知らないんだけどね。所謂混沌の連中とは違うんだって」
「というと?」
「えーっと……」
詳細は知らないのか、女武闘家が言い淀んでいると。
「……ああ。そういえばウチもなんか聞いたことあるにゃ」
そう盗賊商人が口を挟んできた。彼女はカチャカチャと手持無沙汰に整備していたボウガンを置き、こちらに顔を向ける。
「あれでしょ? 赤いのと、白いの」
「そう! それ!!」
我が意を得たりとばかりに女武闘家は盗賊商人を指差す。
話についていけない青年戦士と女魔術師に、盗賊商人が知る限りの事情を話し始めた。
「最近一部の依頼で正体不明の存在と出くわすっていう事例があるんだにゃ。んで、そいつに襲われたり助けられたりって話」
「へぇ……それでなんで幽霊と?」
「うん。なんでもそいつらはことが済んだ後に溶けるように消えていくっていう話なんだにゃ。それが実体がない存在。つまり、幽霊なんじゃないかって話……ってことなのかにゃ」
盗賊商人は自信なさげにそう言葉を締めた。彼女も正確な情報を掴んでいるわけではないらしい。
「そういえば、白いのと赤いのっていうのは?」
「ああそうだった。さっきことが済んだらって言ったけど、どうも種類があってそれぞれ目的が違うみたいなんだにゃ」
「ほう」
「今のところ目撃情報があるのが白い奴と赤い奴の二種類。白い奴はウチらを助けてくれる奴が多いらしいにゃ。共闘してくれたり情報をくれたりするらしいにゃ」
「へぇ。赤いほうは?」
「そっちは敵対するのが多い……ていうか、襲われたっていう話しか聞いてないかにゃ? 死人も出てるらしいにゃ」
そこまで話すと盗賊商人はバツが悪そうに頭を掻いた。
「いやごめん。知ってるみたいに話してるけど、そこまで情報はないんだにゃ。たぶんこの噂は本当に最近流れ出したものなんだと思うにゃ。少なくともウチが前に冒険者やってた時には聞いたことはないかにゃ」
「……ふむ。となると、その情報も鵜呑みにしない方がいい感じかしら?」
ようやく内容が理解できたのか、女魔術師がそう確認を取る。
「そうなるかにゃ。赤い方は問答無用で敵対してくるケースが多いみたいだけど、白い方も味方してくれるって言っても、誰かの味方をした結果ウチらと敵対してる、みたいなケースもあるかもしれんにゃ」
「いずれにせよ、あまり当てにするべきではないってことですかね……。っと、そろそろですかね」
そんな話をしていると、にわかに周りが騒がしくなる。掲示板の方を見やると、ギルド職員の人たちが手分けして依頼表を張り出しているのが見えた。
では自分達も。そう彼らも準備をしようとした矢先だった。
「申し訳ございません。少々お待ちいただけますか?」
彼らは受付嬢から呼び止められたのだった。
「いかがでしょう。お引き受けしてみませんか?」
受付嬢のその言葉に、青年戦士達は思わず顔を顰めた。
話の内容は、彼らの一党に特別依頼を受注してみないかというもの。詳細としては、先日新たな遺跡が発見されたため、国の研究機関が探索に出向く前の事前調査というものだ。
内部構造の地図作成を始めとして、探索時に罠等がある際はその解除。そして守護者等の敵対者の確認及び、可能ならば排除といった感じだ。
彼らの一党には戦闘に優れた戦士・武闘家・魔術師がいることに加え、盗賊商人が所属していることから、そこら辺の役割は一通りこなせるだろうという意図で回されてきたらしい。
ギルドからの直接依頼。それはギルドからの期待の表れであり、昇級への早道と言っていいもの。彼らがこれからも冒険者を続けるのであれば、一も二もなく引き受けるべき打診。
それでも彼らが難しい顔をするのは。
(遺跡か……)
かつての
あの時は
そう思えばなかなか踏み切ることができなかった。
(とはいえども、だ)
青年戦士はチラリと仲間達の様子を伺う。仲間達も同じような思いなのか、青年戦士を見ていた。
その表情には不安の色が浮かんでいる。
「……わかりました。お受けします」
しかし同時に期待の色も浮かんでいた。
そうとも。かつての失敗に怯えてばかりではいられない。失敗をしたのならば反省をすればいい。少なくとも、自分たちはあの時そうしたのだ。
だからこそこう思うのだ。今度こそ、と。
「では、よろしくお願いします」
そんな彼らの様子を見て安心したのか、一つ息を吐き受付嬢はそう言った。
「ああ、ちょっと待ってください」
軽く頭を下げ、そのまま仕事へ戻ろうとする受付嬢を青年戦士は咄嗟に呼び止めた。
とりあえずこれだけは確認しておかなくてはいけない。そう思い青年戦士は口を開いた。
「別に、
彼は、そんな情けない事を問いかけたのだった。