ゴブリンスレイヤー ~魂を継ぐ者~   作:ウォルナット

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最終章開幕。

最終章はモチベーションを保つために、一話ずつ出来たら投稿することにします。


※注意!この話には、ダークソウルの世界観設定に関して、多分に作者の妄想や考察が含まれます。中にはこんなのダークソウルじゃない!みたいに思われる設定があると思われますが、広い心で受け止めていただければ幸いです。


第4章 いつか辿り着く冒険者たち
Five years later -大人になった冒険者たち-


 自分が誰で、ここがどこで、いつからここにいたのか、それは何もわからない。

 ただ、気付くと闇の中にいた。それだけはわかった。

 

 辺りを見回したのか、或いは見回さなかったのか、それは覚えていない。

 ただ、気付くと闇ではない何かが見えたのを覚えている。暖かくて、明るい何か。そこに向かっていったことは覚えている。

 

 そしてその何か、後に光と呼ばれるようになるそれの先には、世界が広がっていたことも覚えていた。

 

 灰色の巨岩、根を張る巨木。そしてそれらに負けぬほど巨大な怪物たち。

 世界は、怪物たちの楽園だった。

 

 自分が誰なのか。それはわからずとも、自分があれらのような怪物ではないことはわかった。

 

 ふと、怪物の一体と目があった気がした。

 それが何を考えているのかはわからなかった。

 

 ただ、奴らが自分を害そうとすれば、自分など一溜りもないだろう。

 

 それだけは、何の疑問を挟む余地もなく理解できた。

 

 

 

 だから、恐ろしくなって闇の中に逃げ帰ったのを覚えている。

 

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに、夢を見た。

 子供の頃から見ていて、大人になるにつれ見なくなっていったいつもの夢。

 でも今日見た夢は、今までと違っていて……

 

 いつものように擦り切れ、色褪せたような映像。そしていままで見たことのない、見慣れぬ天井。

 体もいつものように動かず、指先が僅かに痙攣するように動く程度。思う様に呼吸ができず苦しさを感じた。

 

 

『どうしてオレじゃダメだったんだ』

 

 

 その苦しさに藻掻くように腕を上げようとした時、知らないはずなのに、何故か理解できる、そんな言語(ことば)を聞いた気がした。

 

 その言葉を最後に意識が闇に堕ちていくのを感じる。深く、冷たく、昏い闇の中に…………

 

 

 

 

 

 気付くと見知った天井が視界に広がっていた。いつものように明瞭で色鮮やかな風景。

 天井へと手を伸ばしてみる。体も特に問題なく動かせるようだ。

 僅かに開かれた窓から、春の暖かな日差しに暖められた心地よい風が流れ込んできていた。

 

 青年戦士は呆然としながらゆっくりと身体を起こす。

 

 

「この夢は、なんだ?」

 

 

 そして今まで幾度となく思いながら、答えの出なかったそんな問いを再び口にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「英雄、か……」

 

 

 朝の身支度を整えながら、青年戦士はそう独り言ちた。

 

 英雄になりたい。そう思い、そして諦めたのはいつだったろうか。

 

 朝見た夢のせいだろうか。青年戦士はそんなことを鬱々と考え続けていた。

 

 

(いや、やめよう。どうせ今更だ)

 

 

 カチャリカチャリ。装備を身に付け終わると共に彼は思索を打ち切った。

 朝の夢のせいで精神的には僅かに乱れを感じる。しかし数年に及ぶ冒険者生活のおかげか、朝の身支度は問題なく行われていた。

 

 武器良し、防具良し、荷物良し。

 

 最終確認を行い、問題なしと判断して兜を被ろうとして、

 

 

「おっと……」

 

 

 忘れ物に気付いた。

 

 やはり少し調子がくるっているのだろうか。

 

 そんなことを考えながら苦笑しながら頭を掻いた。

 

 

「行くか」

 

 

 忘れ物を身に付け、改めて兜を被り部屋を出る。

 部屋を出る彼の首には、鎖に通された銀のプレートが揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らが冒険者になって五年程となるが、冒険者ギルドはあいも変わらずの様相を示していた。

 両開きの扉に、板張りのロビー。受付カウンターと冒険者たちの待合室。そして依頼張り出しの掲示板。

 朝の業務のために忙しそうに動き回るギルド職員、依頼張り出しを待つ冒険者たちの騒めき、ガチャガチャと装備がぶつかり合う金属音。

 いつ来ても、何年経っても変わらない。

 

 

「……」

 

「どうかした?」

 

「いや……」

 

 

 しかし変わらぬものがある反面、やはり変わりゆくものも当然あった。

 

 

「見慣れない顔が増えたなと思ってな」

 

「ああ……」

 

 

 人の顔ぶれはだいぶ変わりつつあった。

 

 目に映る人の中に、辺境最強を謳われた槍使いとその相方である魔女の姿はない。

 辺境最高と称された一党も、もういない。

 冒険者になってから散々世話になった受付嬢も新しく派遣されてきた新人に変わっていた。

 

 

「しょうがないんじゃない? あたしたちもいつの間にかこんなところにいるくらいだし」

 

 

 女武闘家がグルリと周りを見回してそう言った。

 彼女が言ったこんなところというのは待合室の中心のテーブル(自分たちのいる場所)のことだ。

 かつては待合室の隅に陣取っていた彼らだが、冒険者としての階級が上がるにつれ依頼は高難易度化、それに伴い遠出をしたり依頼が長期間化していき、冒険者ギルドに戻ってきたら既にそこには別に冒険者が陣取っていたという状態が頻発、仕方ないからと人がいない場所へと流れていった結果、今の場所に行きついたのだった。

 

 そんなことを思い出していると女武闘家がニンマリと面白そうに口の端を上げる。

 

 

「それにあたしたちも人の事は言えないでしょ? ね、『銀 騎 士(ナイト・オブ・シルヴァー)』?」

 

「うぐっ!」

 

 

『銀騎士』。それは五年に及ぶ冒険者生活の果てに呼ばれるようになった、青年戦士の異名だ。

 異名の由来は、彼の愛用する鎧にあった。

 青年戦士はその名の示す通り、白く輝く銀色の全身鎧を纏っている。製作者はかつて牧場防衛戦の後冒険者を引退した、青年戦士達と同期だった男だ。

 彼は引退した後故郷へと戻り、そこから鍛冶師へと弟子入りしたという。冒険者としては目の出なかった彼だが、鍛冶師としては天賦の才があったのかメキメキと頭角を現し、数年の修行を経てついには店を構える事すら許されたという。

 そして店を構えるにあたり、軌道に乗るか不安に思った彼は、

 

 

「宣伝のための広告塔になってくれないか」

 

 

 という話を青年戦士に持ってきてこれを青年戦士が快諾。そうして作られたのがこの鎧だった。

 ちなみに銀騎士というのはこの鍛冶師の名づけだったりする。以前名を馳せた英雄である『金 剛 石 の 騎 士(ナイト・オブ・ダイアモンド)』に肖ってつけたという。青年戦士が、同じように活躍をできるように願って。

 

 

 なお呼ばれている当人としては、身の丈に合わないとあまり歓迎していない。

 

 

 

「……ああそうだな。おまえも『精霊女王(ティターニア)』って呼ばれ始めるぐらいだもんな」

 

「うっ!」

 

 

『精霊女王』。それが女武闘家に付けられた異名だ。

 

 風のように迅く、水のように流麗に、岩のごとき硬さの拳を持ち、炎の激しさでもって敵を討つ。あらゆる精霊を統べ、加護受けし精霊女王。

 

 そうどこかの吟遊詩人が謳ったことによって広がっていった異名だ。もちろん彼女はそう呼ばれるに相応しい実力も備えているが。

 あとはその身に纏う戦闘衣(バトルクロス)もその名の広がった理由だろう。

 冒険者になりたての頃はただの布の道着を着ていた彼女だが、現在は鮮やかな緋色の衣をその肢体に纏っていた。あちこちを金糸の刺繍や飾り紐で縁取られたその衣は、異国のドレスのようにも思えるかもしれない。彼女の美貌も合わさり、さながら旅一座の踊り子や異国の令嬢のようにも見えることだろう。

 もちろんただ美しいだけの衣ではない。

 魔法を込められた糸で織られた布で仕立てられたその衣は羽のように軽く、それでいて鎖帷子程度の防御力を誇る逸品だ。

 

 

 なお彼女も『精霊女王』と呼ばれることをあまり歓迎はしていないようだ。

 

 

 

「はいはい。それくらいにしときなさい」

 

 

 苦笑しながら女魔術師が制止の声を投げかける。

 彼女もこの五年で大きく印象が変わったと言えるだろう。

 といっても容姿や格好に大きな変化があったわけではない。

 大きな変化といえば、魔法発動体の杖だろう。出会った当初は賢者の学園を卒業した時に賜ったという柘榴石の杖を装備していたが、現在は白皮の木の枝を纏めたものを杖として携えていた。この杖はかつて魔術で栄えた古の亡国にて使われていたという魔術杖だ。かつての冒険の折りに手に入れたもので、より強力な魔術が使えるようになるということで彼女の愛用となったものだった。

 装備の話で言えば、あとは腰に備えた鞭だろうか。店売りの革の鞭だったのが、討伐した魔獣の皮革を使用した物に変わっていた。

 

 外見も大きく変わったわけではないが、それでもかつての彼女を知る者であれば、その目を見て驚くかもしれない。

 勝ち気に輝き、炎のように揺らめいていた瞳は、今は落ち着きを得て凪いだ湖面の趣を表していたのだから。

 だからといって、それを見て自信を喪失したと考える者はいないだろう。その瞳には知恵者特有の深みと余裕、そして自信が見て取れた。

 

 

 その証拠だろうか。彼女は『大魔導士(アークウィザード)』と呼ばれていた。

 

 

 

「夫婦円満は喜ばしいことだけどにゃー♪」

 

 

 盗賊商人も茶化す様に声を掛けてくる。

 彼女はこの五年で大きな変化はなかった。強いていうなら装備のあちこちに収納用のポーチが増えたくらいだろう。

 容姿も大きくは変わっていない。多少残っていた幼さが消え、大人の女性として完成を見たくらいだろう。

 

 彼女が変わった点で語れば、社会的な立場だろうか。

 冒険者と二足の草鞋で続けていた商人としての評価は大きく上がっていた。

 

 冒険者をする上で様々な人と関わり続けた結果、下は農村の村人から上は貴族まで様々な人脈を築くことに成功。そしてその人脈を使って冒険中に思いついた道具や、冒険で手に入れた製法書などに記された道具を制作、売りに出して冒険者や旅人を中心とした市場に名を馳せていた。

 

 もちろん冒険者としても、混沌に堕ちた魔術師を隠密(ハイディング)からの背面打突(バックスタブ)で葬る『暗殺者(アサシン)』として一角の人物として知られていた。

 

 

「「夫婦じゃない!! ……まだ」」

 

 

 ちなみにこの五年で青年戦士と女武闘家の関係も順当な結果として──当人たちにとっては紆余曲折を経て──恋人へと進展していたりする。

 

 

 

「……正直『顔なし野郎(ノーフェイス)』とかの方がマシだぜ」

 

「コラ! ……まあ、わかるけどさ」

 

 

『顔なし野郎』も青年戦士の異名……というか、蔑称だ。

 冒険者は基本的に顔を売るために兜等の装備はしない。そんななかで兜を装備する者というのは、名声に興味がない変人か、自分に自信がない人間かと思われる。更に彼の一党は、彼を除けば見目麗しい美女という事もあり、一部の冒険者からやっかみを込めてそう呼ばれていた。

 

 

「わかってるよ。俺はお前たちの頭目だ。情けない姿は晒さんよ」

 

「わかってるなら、よし!」

 

 

 

 

 

 

 彼らがそんなふうに会話をしていると、

 

 

「あら? 久しぶりね、あなたたち!!」

 

 

 そう話しかけてくる人物がいた。

 

 変わりゆく人々の中に在りて、まるで変化の見えない人物。神の創りたもうた完成された造形の美貌の持ち主。

 

 ゴブリンスレイヤーの仲間だった妖精弓手だ。

 

 

 そう。”だった”だ。

 ゴブリンスレイヤーという冒険者は、数年前に冒険者を引退した。

 といっても、別に病気や怪我によるものじゃない。ありがちな、”結婚を機に”というやつだ。

 

 お相手は、彼の幼馴染である牛飼娘。

 

 男性であるゴブリンスレイヤーは年齢を重ねてもあまり問題はない。冒険者として、在野最上位に至った彼ならばその後の人生も安泰だろう。……当人がそういう在り方をどう思うかはともかくとして。

 

 しかし女性である牛飼娘の方はそうもいかない。

 

 生涯独り身の女性というのもいないではない。しかしそういう人は、人生の中で何らかの瑕疵を負った人か、あるいは当人の人間性に問題があり貰い手がいないかだ。実情はともかく、世間的にはそう見られてしまう。

 彼女の叔父である牧場主は、自分の姪がそんなふうに見られるのは流石に許容できなかったらしい。老い先短い自分の年齢の問題もあったのだろう。

 自分の姪と、居候の青年の仲がこれ以上の進展を見込めないと思ったのか、彼女に縁談を勧めたという。

 牛飼娘の方も、牧場主は親族とはいえ、自分が居候の身分であること。自分の年齢の事。なにより、大恩ある叔父に安心してほしいと思い、その話を受けるつもりだったという。

 詳しくは知らないが、ゴブリンスレイヤーもその決定を受け入れようとしていたらしい。

 

 そこに待ったをかけたのが青年戦士たちの友人であり、ゴブリンスレイヤーの仲間であった女神官だ。

 

 その話をどこかから聞いた女神官が、ゴブリンスレイヤーを呼び出し、説教をしたのだ。

 ゴブリンスレイヤーも自らの行いの正当性を主張していたらしいが、彼はあまり弁が立つ方ではない。

 逆に女神官は冒険者や聖職者として沢山の人々と接することで交渉の腕は十分磨かれていた。その交渉の技でもって彼の言葉を片っ端から叩き潰していったのだ。

 

 それでもなお渋るゴブリンスレイヤーの、

 

 

「……俺がゴブリンを狩らねば誰が狩るんだ」

 

 

 という最後の言葉に対して、

 

 

「私が狩ります。あなたの後は、私が継ぎます。だから、あなたはあなたができる事を……いえ、あなたにしかできない事をしてください」

 

 

 そう言って、ゴブリンスレイヤーを完全に黙らせた。

 

 

さまようよろい(呪いの装備)がついに地母神官に解呪(ディスペル)された」

 

 

 あの時の出来事は、未だにそう酒の肴の語り草になっている。

 現在彼は、牧場主から牧場を継ぐために、夫婦揃って修行の日々を送っていると聞く。

 

 

 

 ちなみに女神官がその後どうしたかというと。

 流石に後衛一人でゴブリン退治は厳しい。が、そこは既に神殿内で立ち位置(ポジション)を確立をしていた女神官。神殿に働きかけ、小鬼禍(ゴブリンハザード)の被害者から有志を募り、小鬼退治部隊(ゴブリンバスターズ)を組織、彼女はその教導役としても活躍していた。

 既に成果も上がり始め、地母神への入信者も増え始めているということを受け、各地でも同様の組織の設立も計画されているとか。

 

 青年戦士達も軌道に乗るまで、戦闘訓練等で協力をしていたものだ。

 

 

 

「そういえばあなたたち、こないだまで違う街に行ってたのよね? だったら最近噂になってる話って知ってる?」

 

「噂?」

 

 

 当時の事を思い出していると、妖精弓手が思いついたようにそんな事を聞いてきた。

 

 

「えーっとなんだったかな? 確か”薪の王”とかいうのがどうたらこうたらとか……」

 

「ああ……」

 

 

 思い当たることがあったのか、女魔術師が納得したような声を漏らした。

 

 

「それってあれですよね。薪の王が復活するってやつ」

 

「そう! それ! 何か知ってる?」

 

「確かどこかの学者が言い始めたことらしいんですけどね。えーっと、そう。”薪の王が蘇る。其は遍くを照らし、全てを闇に沈める者なり”だったかしら? ただおおよそ与太話扱いされてましたよ」

 

「え!? そうなの?」

 

「まあ……照らすのか、闇に沈めるのか、どっちだって話ですからね。秩序の者なのか、混沌の者なのか、それすらも判然としませんし」

 

「なーんだ。もしかしたら大冒険(キャンペーン)の始まりかもって思ってたんだけどなー」

 

 

 妖精弓手は女魔術師の話を聞いて、興味をなくしたように空を仰いだ。

 

 

「薪の王……」

 

 

 青年戦士は気付くとそう呟いていた。

 その噂というのは聞いたことがない。しかし、青年戦士はその名には聞き覚えがあった気がした。

 

 

「薪の王……薪の王……?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、その名を聞いた覚えがあるような……?」

 

 

 しかし、いくら思い出そうとしても記憶の取っ掛かりすら掴めない。だが擦り切れたような記憶の彼方の霧の中に必ずあったという確信もまたあった。

 

 

(いや、擦り切れた記憶……? もしかして、またあの夢に関係があるのか……?)

 

 

 もっとまじめに考えておいた方がよかっただろうか。

 

 そんなふうに思うも、どうせ手掛かりは何もない。結局は何も変わらなかっただろう。

 

 

「そういえばあなた達、受ける依頼ってもう決まってるの? よかったら一緒に受けない?」

 

 

 妖精弓手がそう誘いをかけて来る。悪くないお誘いだが。

 

 

「残念。今日はもう受ける依頼が決まってるんです。それも指名依頼で」

 

 

 指名依頼。

 特定の一党に対して発行される依頼であり、原則余人が介入することは推奨されないものだ。

 中には知り合いや、応援する一党に対する支援目的で依頼を出す依頼人もおり、そういう場合は他人が混じっても目溢しされる時はあるものの、大体はその一党の実力や信用を恃んで依頼される物だ。

 当然失敗は許されない。依頼の中の出来事には秘密も含まれるものもある。自分たちの信用にも関わってくる以上、他人を関わらせるべきではないし、関わるべきではない。

 

 

「あらら。……ちなみに、どんな依頼かは聞いても?」

 

「大丈夫ですよ。指名依頼って言っても護衛依頼……研究者が遺跡を調査したいから護衛してほしいって話ですから」

 

 

 そう言って女魔術師は荷物から依頼書を取り出す。

 

 

「場所は……あら?」

 

「どうした?」

 

「いえ……気付いてなかったけど、ここって『棄てられた砦街』の奥にあったっていう遺跡じゃない?」

 

 

 そう言われ、依頼書をのぞき込む。言われてみれば確かにそのあたりだと思った。

 

 

「遺跡の名は……」

 

 

 

 

 

 

『火継ぎの祭祀場』

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 闇の中に逃げ帰り、どのくらいたった頃だろうか。

 外への光以外に光があることに、闇の奥深く深くにソレがあることに気付いた。

 気付くと惹かれるように歩き出していた。

 

 ソレに感じるのはなんだったろうか。望郷、郷愁、懐古。いずれにせよ、否定的なものではなかったのは確かだ。

 果て無き闇の中、唯々ソレを(しるべ)とし足を進める。

 

 

 

 辿り着いた先にあったのは『(ひかり)』だった。

 

 

 

 ソレを見た時、何の根拠もなく思った。自分は、自分達はアレから生み出されたのだと。

 

 吹き付ける熱。それを感じた時、自分の中にも同じものを感じた。

 

 燃え盛る力。暖かな熱。目が眩むほどの輝く魂。それは、外の怪物達にも勝るとも劣らないと確信できた。

 

 これならば。

 

 そう思い、余裕ができたせいだろうか。周りに気配があることに気が付いた。

 

 自分より大きい者、自分より小さい者、そして自分と同じくらいの者たち。

 

 その者達にも、自分と同じ輝きを感じた。

 

 自分と同じくらいの輝きを持つ者が二人。自分達には劣るが、それなりの輝きを感じさせるものがちらほらと。

 

 そして、なんの力も感じさせない、光放たぬ魂(ダークソウル)を持つ子供たち。

 

 自分達は良いだろう。この力があれば、あの怪物達とも戦える。

 だが、この子供たちはどうなる? 間違いなくあの怪物達の爪牙に掛かり、ただ儚く散ることとなるだろう。

 

 だから、こう思ったのだ。

 

 

 

 守護(まも)らねば。

 

 

 

 

 




ゴブリンスレイヤーの去就について。

ゴブリンスレイヤーというキャラクターは専ら復讐者として扱われていますが、その根底にある心情は、罪悪感だと私は思っています。
もちろん復讐心があるというものはあると思ってはいます。ただ、それだけの男ではないというのもまた事実だと思います。

彼がゴブリンに対する復讐心で身を焦がすのは、自分の罪悪感に押しつぶされないため。
ゴブリン退治という実入り少なく、名誉も得難く、それでいて危険度の高い仕事しかしようとしないのは、怠惰によって故郷や家族を見殺しにした自分に対する罰。
そして、犠牲になった人たちのための鎮魂。

彼の行動理念はその辺にあるのだと思ってます。

ただ、これらの心情はどこまでいっても自己満足しか生みません。
一応行動自体は他者に利するところはあるとはいえ、それはすべて副産物、ゴブリンスレイヤーにとっては自分のあずかり知らぬところで発生しているものにすぎず、誇るものではないと思っていると思います。

そしてそれらは、果たして恩人の牛飼娘や牧場主のことをないがしろにしてまでするべきことか。

というあたりを女神官が突き回したという感じになります。

ゴブリンスレイヤーのなかで牛飼娘との結婚は、”ゴブリン退治を行い続けるという罰”の代替行為、”恩人に対する奉仕活動”ということになっています。
一応、名目上は、ですが。
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