ゴブリンスレイヤー ~魂を継ぐ者~   作:ウォルナット

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明けない夜はなく、日はまた昇る(マスターシーンⅢ)

 いつも騒がしい神々の遊技場ですが、今は常にもまして大騒ぎとなっています。

 それもそのはず。前々から計画されていた勇者シナリオの大冒険(キャンペーン)が遂に完結したからです。それも、誰も予想もしなかった結末で。

 もともとのシナリオはこうでした。

 追加要素(サプリメント)を適用したことにより、(せかい)に新たな古代の文明の痕跡が発見されるようになりました。

 人の王様はそれらに新たな混沌の気配を察知。部下や勇者一党に調査を命じました。

 調査の途上、新たな力を手に入れていく勇者たち。次第に暴かれていく世界の歴史。そしてついに訪れた薪の王(ラストボス)の復活。

 薪の王ととある冒険者の一党が戦っている最中、現れる勇者一行。そして始まるラストバトル! 混沌と秩序、薪の王と勇者、勝敗の行方は如何に? 

 

 ……そうなるはずでした。

 しかし、世界というものは往々にして思った通りにいかないものです。

 

 薪の王を復活させる混沌に堕ちた研究者、その復活した薪の王と交戦する冒険者一党。その構図になるまではシナリオ通りでした。そこに勇者一党が訪れることも。

 しかしここからシナリオを外れていったのでした。何故か勇者が戦場となっている広間の前から動こうとしなかったのです。

 神々はこの展開に慌てました。どうした、なにがあった。そんな事を喧々諤々、言葉を交わし合います。

 しかしそうしている間にも時は流れ、戦いは続いています。

 薪の王は勇者シナリオのための(ボス)です。当然その強さも勇者と相対することができる強さであり、いかに銀等級冒険者といえど、一般の冒険者に太刀打ちできるものではありません。

 冒険者たちの命は無為に散ることとなるのか。そう思うと、神々も気が気ではありませんでした。

 

 ところがどういうことでしょうか。あっけなくその命を散らすこととなると思われていた冒険者達が、なかなかどうして善戦するではありませんか! 

 

 冒険者達に幾度となく訪れる窮地。しかしそのたびに出目が走り、冒険者達はその窮地を切り抜けていきました。

 まるで世界が、幸運が、彼らの味方をしているようでした。

 しかし敵もさるもの。薪の王も元々対勇者用の(ボス)です。その力は尋常な物ではなく、窮地を切り抜けた冒険者達を再び窮地へと陥れていきます。

 

 冒険者達と薪の王は一進一退の攻防を繰り返し、後はお互い一撃を先に当てた方の勝ちという最終局面へと移っていきました。

 

 ここで冒険者が痛恨の判断ミス(ファンブル)! 駒の一つが無謀な飛び出しをしてしまいました。当然薪の王はそれを迎え撃ち、返り討ちにしようとしました。そこに更に冒険者側の駒が庇うように飛び込みます。当然庇った駒は薪の王の凶刃に倒れる──かのように思われました。ところがこの死んだと思われた冒険者、骰子(ダイス)の目など知らぬとばかりに死に体のまま動き、薪の王を逆に打ち倒してしまったのです! 

 

 これには行方をハラハラと見守っていた神々も大盛り上がり! 

 

 この冒険者の駒が実は特別だったのか? 薪の王が実は弱かった? それとも他の要因が? 神々は喧々囂々意見を交わし合います。

 それでも最後には笑い合いこう言い合いました。

 

 これだからこの(せかい)は面白い!

 

 大満足の神々は改めて礼を言うために男神の方に向き直ります。そこには呆然としていた男神の姿がありました。

 どうかしたのかと訝し気に彼を見ていると、ポツリと男神が溢しました。

 

 自分は間違っていたのか、と。

 

 このシナリオにおいて男神には目的がありました。それは、『薪の王が勇者に討たれる』というものでした。正確には、『自分(薪の王)この世界の英雄(勇者)』に討たれること。それによって自分はもう必要ないのだと、そう思うことで世界から消えること。それこそが真の目的でした。

 

 自分は無力で、愚かな、矮小な男。この世界の英雄は、神々は、そんな自分とは違う。あの子供達を託すに足る存在であると信じたかったのでした。

 

 しかし世界というものは往々にして思った通りにいかないものです。

 弱いと思っていた子供達。強き者を前にすればただ儚く散るしかないと思っていた子供達。実際にはそんな子供達が薪の王に立ち向かい、ついには勝利してしまいました。

 だからこそ思ったのです。

 

 子供達は守護らなければいけないほど、弱くなんてなかったのではないかと。

 

 もしそうであったのならば、あの時他にも打てる手があったのではないか。他の結末もあったのではないか。そんな考えが男神の頭をグルグルと巡ります。

 そんな男神の様子を見て、神々は──微笑みました。そしてこう思います。

 

 ああ、懐かしいと。

 

 神々の一人が男神に話しかけます。

 

 君が何を悔い、悩んでいるのかはわからない。それでも、いや、だからこそ。そこで終わらずに、今一度立ち上がるべきだ。

 

 その言葉に男神は顔を上げました。縋る様に言葉に耳を傾けます。

 

 誰しも失敗はする。重要なのはそこで終わらせないことだ。

 そう周りの神々は諭します。

 

 ……自分にできるだろうか。

 男神は自信なさげに項垂れ、口を開きます。

 

 そんな男神に優し気に微笑み、失敗した子供を諭す様に神々は更に言の葉を紡ぎました。

 できるさ。自分達にもできた。彼らもできている。ならば君にできない道理はないさ。

 

 そう言って神々は(せかい)を指し示します。

 その言葉を聞き、男神は(せかい)を見下ろします。

 視線の先には弱き子供達が怪物に襲われていました。子供たちはなすすべなく奪われ、犯され、倒されています。そこだけ見ればそんな言葉信じられなかったでしょう。しかしさらに見ていると、子供達が立ち上がったではありませんか。そして今度はこうはなるまいと工夫をし始めました。最初のうちは同じように倒されるだけ。しかし次第にその戦いは拮抗の様相を示すようになっていきました。そしてついにはやり返し、打ち倒してしまったではありませんか。

 (せかい)の各地でそんなことが起きているのです。その言葉を信じざるを得ませんでした。

 

 

 しばらくまんじりともせずにじっとその様子を見守っていた男神でしたが、やがて諦めたようにフッと息をつきました。そして神々に向かって手を伸ばします。

 

 骰子(ダイス)をよこせ。そう言うかのようにニヤリと笑みをこぼして。

 

 神々もそんな男神を見て顔を見合わせ、同じようにニヤリと笑いました。そして次のセッションはどうするのか。再び喧々囂々、議論を交わし始めました。

 やっぱり大冒険(キャンペーン)がいいだろうか。いやいや、まずは初心者向け(チュートリアル)からやるべきだろう。いや、ここはあまり経験がないだろう都市冒険譚(シティーアドベンチャー)なんかどうだろうか。

 

 コホン! 

 

 ワイワイ騒ぐ神々を遮るような咳払いが一つ。何かと見ると一人の神が分厚い紙束──シナリオを携えていました。

 

 その神はもっとも男神と縁のあった神でした。男神から彼の世界の本を受け取ったのも、シナリオを受け取ったのも、今回のシナリオの進行役(ゲームマスター)を務めたのもその神でした。

 その神は以前からこういう状況になった時──男神が仲間に入りたくなった時に遊べるようにいくつもいくつもシナリオをあらかじめ作っていたのでした。

 

 そのシナリオは群像劇やオムニバスとも呼べるような作品でした。今までにないシナリオ形態ににわかに神々も湧き上がります。

 その反応に我が意を得たりとばかりにニヤリと笑い、再びコホンと一つ咳払い。シナリオの序文を読み上げます。

 

 

 

この作品の主人公は特別にあらず。神の如き英雄(ヒーロー)にあらず。世界に仇なす英雄(チャンピオン)にあらず。

 

この作品の主人公は、なんの変哲もない生まれの、何の才能も持っていない、

不屈と言えば聞こえの言い諦めの悪さだけが取り柄の名もなき勇士たち(ネームレスブレイバーズ)

 

想いを受け継ぎ、道具を受け継ぎ、技を受け継ぎ、時として魂すらも継ぎゆく者達の物語。

 

 

魂を継ぐ者達の年代記(SOUL Adventurers Chronicle)

 

 

 

 

 

暗い魂を持つ小人達(無限の可能性を持つ子供達)(ひかり)の導きの在らんことを。

誰かが、そう言祝いだ気がしました。





グウィンは頼りになる先輩?となる四方世界の神々と出会い、彼らの導きをもって再起を果たしました。
これから彼はこの世界で彼らと共に、時に手を貸し、時に試練を課し、時に行く末を見守る、正しく神として存在していくこととなります。

四方世界にもダークソウルの登場人物たちが、その魂を継いだ人々が現れ、新たな物語を紡いでいくこととなります。かつての失敗を今度こそ成功へと導いたり、あるいは同じ失敗をしたとしても、更に次こそはと奮起をしたり。あるいは四方世界の人々が自分達はああはなるまいという教訓となったりするかもしれません。

そうして世界は続いていきます。


これにてこの物語は本当に終幕となります。
拙作にお付き合いいただきありがとうございました。

自己評価 66点(100点満点中)
内容的に書きたいことは書けた。でも技術的に書きたいように書けなかった。
要精進。
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