ビコーペガサスのトレーナーはライダーがお好き   作:J・イトー

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センスの有無はともかく、どちらもファッショニスタなので。

急に平成二期まで飛んだはいいものの、一向に1号ライダーのプロットが降りてこない件。


ローグの章〜Priming Runway〜
NEW WORLD FOR 『ME』


 ファッションコーディネート──生きている限り、一度はぶつかるその壁。

 それに悩むすべての人々にとって、彼女は心強い味方だ。

 

「あなたへのおすすめコーデは……これっ!」

 

 感謝祭で賑わう学園の一角にて、その口上とともに『カジュアル』を主題としたアイテムを引っ張り出すウマ娘の名は、ノースフライト。マイル戦にて抜群の強さを見せた、疑いの余地なき名ウマ娘だった。

 

「次のあなたには……こんなのっ!」

 

 目一杯の名声を手にしたフライトがこの場に望んだのは、自らを講師としたファッションアドバイス教室。

 今の彼女にとっては、自らに与えられたテリトリーへ踏み入る人々すべてがコーディネート対象だ。

 

「なんだ、あっちこっちに服引っ掴んで走り回って……」

 

「あれフライトじゃん! ねぇ、服装見てもらったら!?」

 

「無理無理、あたしそんなキャラじゃないし」

 

 学園がファンへ向けて解放される数少ないこのイベントにて、通りがかりに足を止める者は多い。

 しかし一方で、そう飛び込もうとする人間も少なかった。

 

「──そこのあなた! ファッションに性格なんて関係なし、ですよっ!」

 

 されどフライトの食指は、いや、ファッションは相手を選ばない。

 芝居がかった口調で割って入った彼女は、衆目を集めながらこう語った。

 

「ファッションコーディネート……それは、誰もが秘めている『輝き』を磨き上げ、表舞台までエスコートするためのものですから!」

 

「いや、けどあたしは……」

 

 力強く口にしたフライト。

 それでも、と尻込みする女性へ向け、ウマ娘界でも随一のファッションリーダーは、最後のひと押しを行う。

 

「心配ですか? 大丈夫です、なんたってお相手は──

 

 

 

 ──このノースフライト、ですから!」

 

 

 

 

「……そう。それじゃあ、あたしも!」

 

 いらっしゃいませ、と足を踏み出した女性に向け恭しく頭を下げたフライトは、歓迎の言葉と共に服を探しに踵を返そうとした。

 

 しかしその足は、意識外からの声によって引き留められた。

 

「流石に好調か」

 

「あ、トレーナーさん!」

 

 ざわつき始めた場に響いた低い声から、素性を悟ったフライトは、声をより弾ませる。

 自らの師であるこの男は、少し前から『野暮用がある』としてこの場を離れていたのだ。

 

「他でもないお前の舞台だ。俺も相応の装いを、と思ってな」

 

 ただし、普段の正装から外してきたらしい彼の口ぶりに、気付く。

 

 渋さの感じられる声色とは反対に、気軽な装いを表すカジュアルさを、この場では標榜していたこと。

 

 この男が登場して間もなく、場に妙なざわつきが生まれたこと。

 

 

 

 

 ──そして、彼の私服を褒めたことは、今までただの一度もなかったことに。

 

 

 

 

「……な」

 

 トレーナーの全身を視界に収めて間もなく、フライトは洩らした。

 

 見れば、鮮やかなピンク一色の上下──まだ、それはいい。

 

 しかし、白ブーツにシースルーな上着を携えたそのファッションは、普通のそれを逸脱している。

 

「なんですかそれえええぇぇぇっっ!?」

 

 おののくように叫んだ彼女へ伴うように、周囲のざわつきも大きくなる。

 

「ふっ……オーダーメイドだ」

 

『親しみやすさ』とプリントされたTシャツを自慢げに誇示するこの男の名は、氷室幻徳といった。

 

「だ、か、らぁ……私と人前に出るときは『自分のセンスだけに任せないでください』って言ったじゃないですか!?」

 

「なぜ怒っている? これはお前に歩み寄って最大限自重した結果だ」

 

「それでですか!? こ、こんなこと言いたくないですけど……ダサい! ダサいです!」

 

「なんだと? ここまで妥協して、なぜ俺のセンスが分からない!?」

 

 らしくなく詰め寄るフライトに対し、幻徳も激昂していく形で、口論まで発展していく。大勢の見守る前だったが、二人にとっては些事にも過ぎない事柄であった。

 

 

 

 ──これは、一見凹凸にも見える二人が、大義のために奔走する物語である。




フライトに対する筆者の解像度がクソ低いので、めっさ短め。

引けたらもう少し尺を引き延ばすかもしれません。
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