個性『転生』   作:那由多 ユラ

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第四話 マスコミ様とか委員長的な。


000

 

 

 

 私がヒーローを志すにたる理由というのは、皆と比べたら皆無と言って良い。

 ただ一つ、一人目の無個性であった私の願いであり、私達四つに出された絶対命令、みんなの味方。その遂行こそが、唯一無二のここにいる理由。

 

 ヒーローであれば、被害者と加害者の両方の味方でいられる。

 

 あるいは、ヴィランであっても最悪構わないのだけどね。

 私達の言うみんなってやつの大概は良かれ悪しかれ悪党なわけだし、交友を広げない方が楽に楽しいだろうしさ。

 

 さて、問題です。私はなぜ雄英にいるでしょう。……なんて、狂言回しにもほどがあるかな。

 それっぽい答えは願書に書いたけど、それだって答え合わせとはならないだろうし。

 

 

 


001 

 

 

 

 私と葉隠ちゃんの訓練、講評が終わるとすぐに次の訓練が開始。カメラ越しに見学していると、不意に声をかけられた。

 

「……なぁ、あんた」

 

「うん?」

 

 相変わらず半身だけ凍らせる不思議ファッションの氷結君。

 

「やぁ、氷結君。なんか聞きたいことでもあった?」

 

「氷結? 俺の名は轟だ。轟焦凍」

 

「はっはー。そこは別になんでも良いんだけどね」

 

 氷結君改め、轟君は訝しむような片目で私の顔を見る。

 

「死んでも生き返る個性。……さっきさらっと説明してたが、マジなのか」

 

「私は生まれてこの方、嘘をついたことは一度もないよ」

 

 疑う気持ちもわかるけどね。

 私にもわかってないことの方が多いし、実験の日々なわけだし。

 

「……ただの訓練だぞ」

 

「努力を軽んじる姿勢はさすが天才と言いたいところだけど、そういう意味じゃないんだろうねぇ」

 

 要するに、たかが訓練のためにお前は死んだのかって言いたいわけだ。殺したも同然だしね。

 

「……死んだのか」

 

「訓練中に二回ね。生き返ってるけど」

 

 全身氷漬けにされた時と、水蒸気爆発狙いで自爆した時。

 

 私の個性について知った時、人の反応は明確に別れる。

 片や、大したことも考えずにすごいと褒めそやしてくるタイプ。

 方や、私のことを考えずに命を大事にしろと叱りつけてくるタイプ。

 

「正気の沙汰じゃないな」

 

「それは異能の蔓延るこの社会そのものの話じゃないかな?」

 

 かつて無個性であった私の目で見れば、個性の存在は明らかに命の価値を低下させている。それは死が終わりでない私に限った話ではなく、全人類の約八割に当てはまる。

 

 人が人の価値を測る目安として、個性というのは分かり易すぎた。

 

「あんたは殺されても恨まないのか?」

 

「あー。……相手によるんじゃない?」

 

 生き返れる私にとって殺されるなんて、痴漢か愛撫されるようなものだし。あるいは自慰のようなものだし。

 好みの子に殺されたなら全然許すし、そうじゃないやつに殺されれば普通にイラつく。相手次第じゃ殺意を抱くことだってあるかもしれないね。

 

「命が大事、なんてことは散々言われてきたけどさぁ」

 

 中学の時の役に立たなかった教師達とか、あっさり死んでった両親をふと思い出した。

 

 命大事に、なんて散々言っておきながら、安々と死んでいったもんなぁ。

 

「人は死ぬんだから、殺された程度で恨んでちゃきりないって」

 

「…………そうか」

 

 何を思われたのか、納得いってなさそうな顔のまま轟君は離れて行った。

 

 

 

 全五回と続いた訓練は、私のやった自爆テロがヴィランとしても異端児であることを存分に知らしめてくれた。

 

「お疲れさん! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ! 緑谷少年以外は大きな怪我も無し! ……現川少女は自重しようね?」

 

「はいはい」

 

「それじゃあ私は緑谷少年に好評を聞かせねば!」

 

 オールマイトは私に念入りな注意をしてすぐ、颯爽というには豪快すぎる速さで、医務室へと走り去っていった。

 

 私もさっさと帰ろ。

 

 

 


002

 

 

 

 いつかはこうなるとは思ってたし、わざわざ驚いてやったりもしないけど、いざなってみれば迷惑極まりないなぁ。

 

 オールマイトが雄英で教師をやってるのがマスコミにバレたらしい。

 校門周囲にはカメラとマイクと人の群れが沢山で、その中には困り顔の雄英生が巻き込まれている。

 

「教師としてのオールマイトはどんな感じですか!!」

 

「オールマイトは一体どんな授業を!?」

 

「その髪はオールマイトのリスペクト!?」

 

 ほら、私にまで来た。いや、一回しかされてないから知らないし。あと髪は趣味で染めてるだけだし。

 

「オールマイトの授業はミッドナイトよりエロいし、プレゼント・マイクより煩かったよー」

 

「そっ、そうなの!? ぐっ、具体的には?」

 

「そりゃ、もう、私みたいな美少女の口からは具体的には言えないくらいにはエロエロだよ」

 

「エロエロなの!?」

 

「あの筋肉量からは想像できないくらいにねー」

 

 適当に嘯きつつ、私も授業があるから、なんて言いながらマスコミの群れを抜け出す。下手に居座って死んでもあれだし、そもそも私の個性はメディア露出NGだし。

 

「……何をしてるんだ」

 

「聞いての通り、マスメディア様様へのボランティア活動だともさ」

 

 実は潜るのは今日で二回目くらいの校門までつくと、担任に背後を取られて首根っこを掴まれた――ちょ、死ぬ死ぬ。私みたいなか弱い美少女の首根っこを掴んだり死ぬってヒーロー社会不適合者!!」

 

「……言い残すことはそれだけか?」

 

 やべ、声出てたかな。

 

「目つき怖いって。そんなんだからアングラ系とか言われるんだよ?」

 

「敬語。俺は同じことを何度も言うのは嫌いだと言わなかったか?」

 

「言われた覚えはないけど、言いたくないなら言わなくて良いよ? 私も言われたくないし。そっちのがウィンウィンじゃんさ」

 

「その悪知恵にはいっそ敬意すら覚えるが、それは是非ともヒーロー活動に活かせる形で発揮してくれ」

 

「はーい」

 

「ホームルームはすぐだ。急げよ」

 

「はいはーい」

 

「オールマイトに土下座も忘れるなよ」

 

「逆にさせてやるぜぃ! 目指せ特大玉の輿!」

 

「……本当に学生か、お前。玉の輿とか聞いたの何年振りだぞ」

 

 潜り抜けてきた死戦の数が違うからね。……恥ずかしながら。

 

 

 

 私が教室に着くのは、担任以外じゃ一番最後だった。

 

「おはよう、現川さん」

 

「裏道ちゃんちゃおー」

 

「うぅらーらーかっ!!」

 

「はいはい。うらら、うらら」

 

「覚える気ないやろ!?」

 

時雨(しぐれ)ちゃんもオハー」

 

「おはよう。そして梅雨ちゃんと呼んで」

 

 うむ。なんかノルマ完了って感じだね。今日は何かいいことあるかもしれない。

 

 

 

 マスコミであれこれあったからか、幾らか遅れてのホームルーム。合理主義者な我らが担任、相澤先生はうんざりした雰囲気で始めた。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。ブイと成績見させてもらった。……現川、命もっと大事にしろ」

 

「はーい」

 

「爆豪、お前もうガキみたいな真似するな」

 

「……おう」

 

「緑谷、個性の制御が出来ないから仕方ないじゃ通さねえぞ。克服すればできることは莫大だ」

 

「はっ、はい!」

 

 ……待てコラ担任。第一戦の二人より先に私に注意ってどういうことよ。

 あと別に命を大事にはしてるって! 粗末になんてしてないよ! エコだよ!

 

 説教も済めば、ようやっと本題を切り出される。

 

「急で悪いが、今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

 

「「「「急に学校っぽいのきたー!!」」」」

 

 叫ぶねー、みんな。

 ついてけない私みたいなのは頬杖つきながらのんびり見てるにとどめるけどさ。

 

 誰も彼も、こぞってみんな挙手して立候補していく。手を上げてない人もいないじゃないけれど、圧倒的に少数派になっている。

 雪だるま式に騒々しさが膨れ上がっていく中、一人見るからに委員長気質な眼鏡君が立ち上がった。

 

「静粛にしたまえ!!」

 

 鶴の一声ってほど艶やかな声音じゃないけれど、教室は彼の一言で静まりかえった。

 

「多を牽引する責任重大な仕事だぞ。やりたい者がやれるモノではないだろう」

 

 今だ!!

 

「それじゃあ選定方法はあみだくじにしよっか。私は辞退するから、責任を持って準備しようじゃないかー」

 

「待て待て待て待て待ちたまえ!! それじゃあただの運じゃあないか!!」

 

「百円につき一本、自分で線を引く権利を売るよ?」

 

「そんな堂々とした八百長があってたまるか!! 委員長は周囲からの信頼あってこそ務まる聖務。民主主義に則り、真のリーダーはみんなで決めるべきだ!」

 

 くそぅ、なかなかしぶといなこの眼鏡君。

 

「じゃあ間をとってこっくりさんで決めよう。私が今からこっくりさんの個性を転生させてくるから」

 

「どこの間をとったんだ!? しかも多分だけど君のさじ加減じゃないか!!」

 

 あー、どうなんだろ。

 存在は確認してるけど、こっくりさんがどんな個性なのか把握はまだ出来てないんだよねぇ。

 伝承通り、こっくりさんに答えを聞ける個性なのか、狐狗狸みたいな見た目になるただの異形型の個性なのか、神仏の類になる個性なのか。

 

「じゃあ仕方ない。民主主義らしく多数決にしよっか。ただし自分への投票は禁止で、最下位の人達で喧嘩して勝った人が当選ね」

 

「どう考えても角が立つじゃないか!! 一日で学級崩壊しかねるぞ!? 本当にヒーロー志望か!?」

 

「ヒーロー社会なんて結局は蹴落とし合いの界隈じゃんさぁ。今のうちに、出てる杭はへし折っておかないと」

 

「……それ、民主主義どころか独裁じゃないか?」

 

「あっはぁ。こりゃまいりました」

 

 完敗、完敗。

 打たれた杭は大人しく引っ込んでいようじゃないか。

 

「な、なんか絶好調やね?」

 

「楽しいことには全力で。つまらないことでも面白く。長い人生はせめて楽しまないとねー」

 

 背後からの苦笑いを聞き流しながら、私は学級委員長を決める投票を眺めるに徹することにした。

 

 


 

 

 かくかくしかじか、なんやかんやあって、委員長が決まるまでには昼休み後の授業の時間までかかった。

 そのなんやかんやの中には、昼休みの時間に雄英敷地内に侵入して、警備システムが騒ぎ出したりとかもあったわけだけども。

 

 多数決で票を集めた、天パ君こと緑谷君が委員長となったものの、その彼からの推薦により委員長は眼鏡君こと、飯田君と相成った。

 なお、副委員長は二番目に表を集めた八百万ちゃん。彼女をそっちのけで飯田君を推薦した緑谷君を睨んでた気がするけど、まぁ私には関係ないか。

 

 

 

 

 




 後書き。というか、コスチュームの設定。


 黒のカッターシャツ
 火葬に適した素材で作られていて、高温で燃やされると灰も残さず、消臭作用のある気体を発生させる。
 耐久性や着心地は一般的な服と大差なく、黒い理由も血や怪我を目立たせない程度でしかない。

 赤のワイドパンツ
 カッターシャツと素材は同じ。柔軟性にはいくらか優れているものの、やっぱり他のコスチュームと比べたら貧弱そのもの。色はただの趣味。

 赤のネクタイ
 一本の紐を結ぶ、一般的なものではなく、構造的には首輪とリードをネクタイの形にしているだけ。前に垂れる部分を引っ張ることで首輪を締めることができ、絞殺が手軽にできる。
 イレイザー・ヘッドの捕縛布を参考にされており、一般的な物に比べて遥かに耐久性が高い。が、やっぱりよく燃える。

 その他、インナー類
 アウター同様、灰を残さずよく燃える素材で出来ている。便利だから余分に用意してもらい、日常的に着用している。



 個性を発動させるにあたり、最も困るのが死体の処理。
 下手に残すと、公的な手順を踏んで火葬場で火葬しなければならず、勝手に捨てたりすると死体遺棄の罪に問われかねない。
 本人は「自分の死体なんだから別にいいじゃん」と役所に談判し、役所側も「確かにそうなんだけども……」、と思いながら、誰も納得仕切れない微妙な時間が発生したことがある。
 勝手に火葬するのも問題な気がするけれど、いちいちそれを問題にして騒ぐほど暇な人もいない。……社会の闇よね。

 籠絡が不老不死の獲得と同義のため、個性のメディア露出は避けるよう、偉そうな人達から言われている。コスチュームがヒーロー的でないのもその辺りが噛んでいたり、単に彼女が面倒くさがりなだけだったり。
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