個性『転生』   作:那由多 ユラ

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第五話 人命救助とか初めまして的な。


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 殺し殺し殺し殺され、殺戮の果てで私は殺す。

 

 

 


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 委員長が決まったり、マスコミが侵入してきた日の翌日。今日も今日とて、校門前にはマスコミが溢れて大変だったらしい。

 私の場合、デスポ登校して来たから今日は捕まったりもしなかった。……いや、なんか待ち伏せしてたエロエロヒーローに捕まって命の尊さみたいなことを説かれたけどさ。

 

 ともあれども。かくあれども。

 

 第二回、ヒーロー基礎学。

 多分、三回目あたりからはいちいち数えたりしないんだろうけどね。

 

 まぁそんなことは置いておいてだ。

 今日のヒーロー基礎学の内容は、人命救助(レスキュー)

 

 はっははは。

 命を懸ける個性で人命を救うなんて、なんたる皮肉か。いや、苦肉と言うべきかな?

 

 訓練場までは遠いからバスでの移動となるから、さっさと準備をしろと言い残して、相澤先生は一人でさっさと行ってしまう。

 コスチュームの着用は各自の判断でいいらしい。動きが制限されることもあるし、そういう人は体操服だってさ。

 

 まあ私の場合、灰が残らない以外は普通の服で、制限もクソもないんだけどね。

 

「水難なら私の独壇場。ケロケロ」

 

 更衣室で着替えてると、梅雨ちゃんはそんなことを言い出した。まぁカエルだもんね。水陸両用って言うとより強そう。

 

「私はなんだろ、……ハイジャックとかかな」

 

 あと立て篭りとか?

 デスポして中に入って、自爆テロばりに無双すれば死者ゼロ(自分を除く)も難しくないだろうし。

 

「古鳥ちゃん。それはもうレスキューではないわ」

 

「人が救えてれば別にいいじゃんさー?」

 

「それで死なれてちゃ、救われた人も救われないわ」

 

 よく言われるけどさ。

 

 そんなに大事なのかなぁ、命って。

 そりゃ、痛いものは痛いし、無駄死にはあんまりしたくないけどさ。

 いや、死ねば分かることと、死ねない人にしか分からないことは違うのは当然か。

 

 

 

「バスの席順でスムーズに座れるよう番号順に二列で並ぼう!」

 

 女子全員の準備が済んで一緒にバスが待機しているところに着くと、飯田君が異様にキビキビ、と言うかカクカクした動きで並ばせた。

 だと言うのに、飯田君の期待、と言うほどのものじゃないけれど、考えを裏切るように、バスの座席は電車のように向かい合うタイプだった。

 

 飯田君を揶揄う声とか色々聞き流しながら、私はツイッターを流し見して時間を潰していると。

 ふと、梅雨ちゃんの言葉が場を締め、全員が意識を傾けた。

 

「あなたの個性、オールマイトに似てるわね」

 

 言われた相手は、緑谷君だった。

 

 ……どんな個性だったっけ、緑谷君。

 そもそもオールマイトの個性も詳しく知らないけどさ。

 

 えっと、体が壊れるほどの超パワー、みたいなやつだったよね? よく怪我してるの見るし。

 

「おいおい待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトはあんな怪我しねぇぞ? 怪我なら現川の方が似てるだろ」

 

 と、話題に私を加えた赤髪君は誰だったかな。

 

 私が怪我っていうと、ボール投げの時かな?

 

「私のは個性の反動的なやつじゃないよ。脳がバグって限界を超えたとか、そんな感じのやつ」

 

 映画でたまにあるじゃん? 人間は脳を十パーセントしか使えてないとか、百パーセント使えると超人みたいなことができるとか、そんなの。

 

「後先考えずの究極系みたいな技だから、練習すれば誰でもできるよ」

 

 そもそも、私の体が壊れやすくなってるってのもあるんだけどね。

 

「いや、しねぇよ。こぇーよ」

 

「死ぬよりマシだって。死ぬほど痛いけど」

 

 それにしても、オールマイトの個性ってなんなんだろうねぇ。

 

 私の個性である転生も大概な個性だけど、オールマイトの個性は常軌を逸している。

 一口に言うなら、全個性の平均と比べて出力が桁違いに大きい。

 そもそも個性が十人十色なのだから比べるのもおかしな話だけど、それでも平均値を出せるくらい、私は個性を見てきている。より正確に言うのなら、死ぬたびに死んだ個性を取捨選択してきている。

 個性特異点とか個性婚とかで、ある世代を経るごとに出力が大きくなることはあるものの、逆に落ちることもある。

 

 例として、私が焼身自殺や火葬に愛用している、古い世代の人体発火の個性。

 炎に関する個性を持つ人間は皆、炎や熱に対する耐性を持っている。それが、私たちの世代にとっての常識。けれどその耐性というのは、生物同様、個性が生物学的に進化して入手したものでしかない。

 だから古い個性というのは、出力は高いけれど耐性は無く、その身を焼いてしまうというものが少なくない。

 個性を発動して身体を壊すというのは、時によっては一般的。とまでは言わないけれど、珍しいことでもない。

 

 さて、ここでオールマイトの個性。詳細は知らないけれど、とりあえず超パワーと仮定しておこうか。

 身体能力を強化する個性はいつの時代でもそれなりにいる。私だって何種類か使ったことがあるし、緑谷君のそれも身体能力を強化するという点、常軌を逸した出力という点を見れば、確かに似ているとも言えるだろうね。

 

 別にハンターハンターの念能力じゃないし、強力な力を発揮するには相応の対価が必要なんてことはない。

 それにしたって、個性に何一つとしてデメリットも無く、あれだけの、火力と言い換えてもいいくらいの出力を出せるのは違和感がある。

 

 まるで古い世代の個性が現代まで生き残った、みたいな。

 身も焼く個性に耐えられるよう、肉体を鍛え上げた、みたいな。

 個性の出力と鍛錬の足し算で生まれた超パワー、みたいな。

 

 オールマイトは年齢も非公開だったと思うし、あながち間違いじゃないかもねぇ。

 

 

 ……あれ。それなら、緑谷君の個性がオールマイトと似てるってのも、あながち間違ってもいないんじゃね? ただ単に、肉体の耐久性がオールマイトと比べて足りてないか、オールマイト以上に出力が高い、とか。

 

「いいねぇ、緑谷君。ちょっと萌えるよ」

 

「現川さん、何言っとるん?」

 

 存外、気が合うかもしれない。

 

 

 


002

 

 

 

 ウソの災害や事故ルーム、通称USJというらしい。

 ……もうちょっと真っ当な名前つけようよ。一応、いいとこの学校でしょうが。

 

 そんなふざけた名前の施設の入り口あたりで待っていたのは、宇宙服のような格好をした女性のヒーローだった。

 このUSJとやらの創設者らしく、麗日ちゃんが言うには、救難救助のプロフェッショナルらしい。

 

「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ、三つ……、四つ……」

 

 そんだけ増えたら小言じゃないよ。大言よ。

 

 ……なんてくだらないことを考えてるのは私だけらしく、皆揃って13号の話に聞き入ってる。

 仕方ないし、私もたまには聞き手に回ろうか。

 

 

 

 彼女の個性は、ありとあらゆるを吸い込み、塵とする個性――ブラックホール。聞いた限りじゃ、オールマイト並みの出力を出せそうな個性で、しかしもっぱら救助にこそ、その個性を使っているらしい。

 それが人間を容易く殺せる個性だとも彼女は言った。

 また、それは彼女に限らず。私達学生の個性とて、人を傷つけ、殺せてしまえる。それを忘れないようにと、なんかやたらと私の方を見ながら訴えてきた。

 

 そしてこの授業では戦闘訓練とは心機一転、人を救う為の活用法を学んでいきましょう。みたいな。そんなことを和かに言って小言を締めた。

 

「君達の力は人を傷つける為にあるのだはない。助ける為にあるのだと思ってください。……ご清聴ありがとうございました」

 

 皆一様に、拍手を送る。

 ここでわざわざ、そんな大層なこと言ってた? 普通のことじゃなかった? 中学の校長とか似たようなこと言ってもみんな欠伸してたじゃん。……なんて空気の読めないことを言ったりはしない私、偉い。

 

「それじゃあまずは、……?」

 

 さっさと授業を始めようとした相澤先生は、何かに気がついたように背後を見た。

 釣られるように私も見ると、広場の噴水あたりに、黒いモヤのようなものがあった。炎による黒煙のようには見えない。

 

 そのモヤがだんだんと大きくなり、渦を巻き始め。中から瞳が見えた。途端、相澤先生は叫ぶ。

 

「一塊になって動くな!! 13号、生徒を守れ!!」

 

 増大したモヤから、あからさまに碌でなしな人たちが姿を見せる。……ワープの個性ねぇ。誰かが使ってるのは初めて見たかも。

 

「動くな! あれは(ヴィラン)だ!!」

 

 と、言われてもクラスメイト達はただ呆然と、惚けた反応しかできていなかった。

 

「ヴィラン、ねぇ」

 

 にしては誰も彼も見ない顔だけど。新人ばっかりなのか、それともマジのベテラン揃いなのか。……後者だったら怖いなぁ。

 

「どこだよ、オールマイト……。せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ。……子どもを殺せば来るのかな?」

 

 相澤先生の警告にはあまり反応できなかったものの、ヴィランの一人、おそらく頭領。身体中に手をくっつけた男の声、悪意に、皆が皆気付かされた。――ヴィランの襲撃。

 

「13号避難開始! 学校に連絡試せ! センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ」

 

「っス!」

 

 クラスメイトの電撃使い、上鳴君? は、個性を利用した連絡を試すも、うまくいかないらしい。私も携帯の電波を見てみるも、そこには圏外の二文字が。

 

 ネットの繋がらないスマホなんて板チョコ以下よ。

 

「……現川。お前、今の個性が瞬間移動だったりしないか?」

 

 スマホをポケットにしまっていると、相澤先生に問われる。

 

「そんな意味ないことするわけないじゃん」

 

 死ぬだけで擬似的にできるわけだし、テレポートの個性に貴重な一枠を使ったりしないって。

 

「なら大人しく避難しろよ。お前でも死ぬのは許さん」

 

「はいはい」

 

 つまり、死なない為なら何をしても構わないと。了解。

 

「でもそれ、私よりも先生の方でしょ。私がいなきゃ、死んだら死ぬんだから」

 

 私の命ってやつはこの場で何よりも安い。なら私にとっての安全地帯は、危険地帯であろうとも変わらない。

 

「っおい!! 大人しく指示に従え!」

 

 私は相澤先生の指示を聞き流し、ヴィランの集団へと一人特攻する。

 

「ちゃっおークソ野郎ども! 仲良くしようぜっ!!」

 

 階段を飛び降り、全身を発熱、発火。塊になって階段を上るヴィラン達に自爆特攻。

 

「なんだこいつ!?」

「ラリってんのか!?」

 

 衝突する頃には私の体はすでに燃えかす。炎だけが一瞬広がり、服に燃え移る。

 堪らず階段を転がり落ちる様子を確認してから、私は別の個性と共に転生する。

 

「私が狂っているのなら、君達ヴィランは正気なのかなっ」

 

 今度の個性は指鉄砲。鉄砲の形にした手の指先から、弾丸を発射する個性。水とか空気とかBB弾みたいな安全(そう)な弾から、散弾とか砲弾みたいな危険なやつまで選り取り見取りなおもしろ個性。

 

 背後から聞こえてくるクラスメイト達の声が小さくなっていくのを感じながら、私は彼らに尋ねた。

 

「君たちはテロリスト? それとも殺人鬼かな?」

 

 まぁ、彼女がいないのならどっちでもいいのかもしれないけどね。

 

「初めまして、我々はヴィラン連合。僭越ながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えていただきたいと思っての事でして」

 

 主犯格の一角っぽい、ワープの個性の持ち主であろうモヤっぽいのが私と、それから追いかけてきた相澤先生の前に現れて述べた。

 

「へぇ、それは予想外。オールマイトね」

 

 指鉄砲の二丁拳銃を頭部に向けて撃つも、実体がないのか、圧縮空気の弾は流体のように受け流される。

 

「おいっ、いい加減にしろ! うつつが――!!」

 

「あ……」

 

 捕縛布で鎧っぽい部分を捕らえつつ私に注意してくる相澤先生。

 一旦サポートに回ろうとか考えてたら、私だけモヤに包まれた。

 

「生徒といえど、優秀な金の卵。私の役目は、散らし、嬲り、殺す」

 

 死んでいないのに、足元に感覚の無い独特の浮遊感。

 

「オーキードーキーッ!! そういう事なら得意分野っ!!」

 

「現川ぁ!!!」

 

 私だけならデスポでいつでも帰ってこれる。

 だったらすべきは時間の有効活用。

 

「萌えるねっ、ヴィラン連合!!」

 

 浮遊感に身を任せて、私はネクタイを一気に締めた。

 

 さようなら、現世。

 さようなら、先生。

 

 


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