個性『転生』   作:那由多 ユラ

6 / 7
第六話 達磨の山とか四人目的な。


001

 

 

 

 個性特異点って滅亡論のせいで、未来の個性こそやばいと思われがちだけど、割とそうでもない。

 

 例えば怪談、怪異。

 

「何して遊ぼっか?」

 

「嘗めてんじゃねぇぞガキがぁ!!」

 

「はいはい、殺しあいね」

 

 個性が発生したって言われてる時代よりもさらに少し古い世代の個性は、その大概が危険なものばかり。

 自分の身を滅ぼすほどの人体発火だったり、有るだけで無差別に滅ぼしまくる危険物だったり。

 

 今回の私が転生させた異形型個性、『トイレの花子さん』だってその類。

 

 黒かったカッターシャツは白く染まり、赤いワイドパンツは吊りスカートに変わる。髪も短くなってゴムが落ち、前髪は定規を当てたのかってくらいパッツンに。

 外見的変化はまぁ少ない方の異形型だけれど、その本質は理不尽まみれの発動型。

 

 刺し殺す為の包丁を手元に出現させる。

 首を吊り殺す為のロープを頭上に出現させる。

 周囲のトイレ、水路へと吸い寄せ、強引に流し込ませる。

 抵抗もさせずに首を絞め殺す為の身体能力。

 

 他にもいろいろ、トイレの花子さんっぽい能力が盛り沢山。

 

「大丈夫、安心して。個性以外は残してあげる」

 

 手近なやつは腹を刺し、届かなければロープで首を引く。

 

「な、なんだこいつ!? 本当にヒーロー科かよっ!?」

 

「やばいっ! 殺されるぞ!!」

 

 トイレの花子さんからは、逃げられない。

 ここがどこかは知らないけれど、史実上トイレの花子さんの最高速度は時速1000キロ。実際のところ、どれだけ出てるのか知らないけれど、今の私は死ねないほどに強い。

 

 それに逃げようにも、扉は霊障によって開かない。

 

「お願い出してぇぇぇええ!!!」

 

「アッハハハハハハハッ!!」

 

 どこか知らないけれど、床も壁もコンクリート剥き出しで、何もない部屋。

 水路でもあれば手っ取り早かったのだけれど、ここもUSJの訓練用の施設なのか、パイプの一本すらない。

 

 それでも死体の山を築くのに、そう時間は掛からなかった。

 

 薄灰色だったコンクリートは、血で真っ赤。死体の中には血で溺死したやつまでいる。

 

 ロープが消えて吊り上げられた死体が落下。

 私以外に人間がいなくなると、血に濡れた包丁も消える。

 そしてこの肉体も、時代に追われて存在意義を失い、幻想へと溶けていく。

 

「ありがとね、花子さん」

 

 そういえば、トイレの花子さんは生前は普通の女の子だったんだっけか。

 そんな子が人を殺す怪異に成り上がるなんて、社会ってやつは怖いよねぇ。

 

 さようなら、現世。

 くたばれ社会。

 

 

 


002

 

 

 

 ぶっ殺したヴィラン達からしっかり個性と手足を捥いだ上で転生させた私は、USJの広場へと戻ってきた。

 一人一人丁寧にやらなきゃいけなかったから幾らか時間がかかったけど、どういう状況なんだろ。

 

 クラスメイトのほとんどは見える範囲にいないし、木っ端ヴィランはほとんど倒れてて、それなのに相澤先生はなんかピンチっぽい。

 敵は脳みそ剥き出しで黒い筋骨隆々と、頭領っぽい手まみれ。

 

「たっだいまー。先生元気ー?」

 

 脳みそ剥き出しに片腕を掴まれた相澤先生は、何回殴られたのか、ひっどい顔をしながら私を見た。

 

「無事、……だったか」

 

「先生はそうじゃないっぽいね」

 

 肌をあまり見せない格好のせいで分かりにくいけど、怪我は顔よりも腕がひどい。骨が普通じゃ無い折れかたしてるし、握り潰されたりでもしたのかな。

 

「まったく、まったく。選手交代しよっか」

 

「逃げっ、ろ……!」

 

 んな怪我してながらヒーロー面するなっての。

 それに生憎と、今の私はベストコンディションでね。

 

「あっははー。私は先生よりちょっと怖いぞ?」

 

「ガキも殺せ! 脳無!!」

 

 つーかあれ、生きてるのかね。脳みそ剥き出しで、目もなんかヤバイし。薬中?

 

 命令に忠実な質なのか、相澤先生を捨てるように落として私のほうに襲いかかってくる巨体。……脳無って言ったっけ。

 私の顔に倍くらいデカい拳が、瞬く間に私の首から上を殴り飛ばしてくれた。

 

「痛くない殺し方は好感持てるね。仲良くはなれそうにないけどさっ!!」

 

 痛くないとはいえ、何回も無駄に殺されるのは私の好みじゃない。

 腕を刀に変化させる個性でその巨大な右腕を三枚に切り分ける。って筋っぽいなぁ君!? 先に肉叩きとかする必要あったかなぁ!!

 

「なっ、なんで生きてやがる!? 分身の個性か!?」

 

「殺してみればわかるって! きっとさ!」

 

「なら死ぬまで殺せぇ! 脳無ぅ!!」

 

 筋っぽい上に再生まで出来るのか、裂けた腕がすぐにくっついてまた拳を握った。

 

「ナイスガッツ! でも顔は好みじゃないかなぁ!!」

 

 手刀は個性とはいえ性質は鉄と同じ。硬いものを切れば簡単に切れ味が落ちるし、骨とか関係なくめっちゃ曲がる。

 

「てか喋れし! お喋りしましょ? その口は何のためについてるのん? 食べるためかそっかぁ!!」

 

 雄叫びひとつも上げず、今度は殴るのではなく掴みにきた。

 

 ……知性はちゃんとあるみたいだけど、馬鹿だね君。

 

「君みたいなのは萌えねぇや。日本語勉強して出直しな」

 

 握り潰された肉体を修復、転生。人体発火の個性を持ち帰って、最大出力で無差別放火。焼け死ねぇ!!

 

 

 

「……ねぇねぇ、相澤先生。あれ、どうやったら死ぬの?」

 

「知るかよ。……やるならちゃんとやれ」

 

 最初に頭吹っ飛ばされた身体焼きつつ、相澤先生に相談してみるも投げられちゃった。つっかえな。

 

「無効化してその間に焼いたら死ぬかな?」

「お前の炎を直視できるわけないだろ。却下だ」

 

「全身グルグル巻きにして拘束は?」

「それが通用するならとっくにやってる。引きちぎられたぞ」

 

「脳みそ爆破したら流石に止まるよね?」

「できるならやってみろ。殺しても事故になるだろうさ」

 

 了解。

 ちょうどいいやつあったかなぁ。

 

 


003

 

 

 

 ……だぁめだ、ありゃ。

 マジで不死身なんじゃねぇの?

 脳を焼いても切っても、心臓を爆破しても死なないんですけど。無傷なんですけど!

 

 つーかブラックホール先生どこ行ったの!? ああいうの殺す為にあるでしょその個性! 殺しても死なない相手は太陽かブラックホールにポイするのが定石でしょうが!!

 似たような個性も他にないし! どっから湧いたのブラックホール!

 

「……どうなってやがる。もう何回死んでんだ。あんなのがいるなんて聞いてねぇぞ」

 

 そりゃお互い様だってボス!

 パワーと再生と脳みそ剥き出しのセットとか私知らないんですけど!? オールマイトだって殺せるさそりゃ!

 

「そうじゃん! ボスの方先にやればいいじゃん!」

 

 見た感じ、殴る蹴るのタイプじゃないし。いけんじゃね?

 

「脳無!!」

 

「あー、だよねー」

 

 指鉄砲の個性で、対物ライフルの弾丸を撃っても、でっかい拳にキャッチされる。連射すれば無限再生の肉壁が盾になる。

 

 デスポしたところで逃げる以外どうしようもないし、それはそもそも私の好みじゃない。

 オールマイトでもこれは無理だろうしなぁ。

 

 片っ端からヒーローを集める?

 却下。それこそ死体の山が出来るだけだし。

 核爆弾の個性でも持ってくる?

 却下。私が社会的に死ぬ。

 絶対必殺の個性が見つかるまでゾンビ作戦?

 却下。殺すより先に私が萎える。

 トイレの花子さんをもう一回転生させる?

 却下。多分、花子さんが泣く。小学生だし。

 

「……あっはぁ。かっこつけた割に、万事休すかも」

 

「クソッ!! どうしてガキ一人殺せない!! 対オールマイト用に造られてんだぞ!!」

 

 ……なんか、どうしようもないのはお互い様っぽいけど。

 

 マジの最終手段、無いじゃないんだけどさぁ。

 

 

 

 ……あいつ、怖いんだよなぁ。

 

 

 

 …………応援にもいろんな意味で期待できないし、仕方ないかぁ。

 

 

 

「あはっ。殺せよ、モンスター」

 

 

 

 さようなら、現世。

 

 

 

 ただいま、煉獄。

 

 

 

 …………行ってらっしゃい、我。

 

 

 


004

 

 

 

「くっふふ。……随分と、五人目が世話になったようだな」

 

 おー、おー、あちこちに転がる私の死体たち。

 火葬が面倒だなんだとほざいておったが、その余裕もないくらい強敵というわけか。

 

「……お前、現川か?」

 

 相澤、と言ったか。我らの最新の担任。……いや、この言い方は流石に悪いか。

 

「現川古鳥は一人目に架された名だ。代弁たる五人目ならともかく、四人目たる我に語らせる名はない」

 

 あえて名乗るなら、転生とでも名乗るべきか? いや、あえぬが。

 

「仕切り直そうぞ、ヴィラン連合。殺し合おうぞ、脳無とやら。我は五人目ほど緩くはないぞ?」

 

 片や警戒。片や無気力。

 まぁ、女が男になれば警戒する方が自然か。

 

「……殺し殺し殺し殺され、煉獄の果てで我は死のう」

 

 我に扱いを許された個性は、私が嫌う個性のみ。

 

「殺せっ! 脳無!!!」

 

「なぁに、楽に死なせてやる」

 

 転生も出来ぬほど惨たらしく。

 命を恐れるほど恐ろしく。

 

「リンボの果てまで同行しよう。――死ね」

 

 振り上げた脳無の拳は、我には届かない。

 凶器たる拳は開き、己が首を掴む。

 

「我らの戦場は現世にあらず。地獄の底で殺しあおうぞ」

 

 我も習い、首に構える。

 

「私達のための世界を、死者が穢すべきではなかろうよ」

 

 共に首を引きちぎり、個性も魂魄も余さず捕らえる。

 

 

 ……随分と歪な魂魄をしているな。

 それに個性も複数か。

 ふんっ、まるで工作物だな。

 

 

 


999

 

 

 

――命を粗末にするなと、何度言ったら理解するのだ、貴様は。

 

 無駄遣いはしてないんだからいいじゃんさぁ。

 

――そもそも他人の個性を当てにしすぎなのだ。力でも話術でも、少しは鍛えることを覚えろ。

 

 話術は鍛えられてるでしょうが! 私のセリフ量数えてみやがれさ!!

 

――阿呆。貴様のそれはただ口が軽いだけであろうが。

 

 重いよりいいでしょうが!!

 

――軽くて流されてる時点で無駄死にであろうよ。

 

 無駄死に言うなし! 私の個性を!!

 

――我らの個性は転生であろうが!

 

 はいはい。ごめんなさい、パパ。

 

――ぶっ殺すぞ。

 

 ……ごめんて。

 

 

 


005

 

 

 

 脳無相席のおっかない説教を長々と受け、帰ってきた頃にはもう事態は終わっていた。

 多数のヒーローがヴィランを拘束して一ヶ所に集めている。

 

 相澤先生と13号、あとオールマイトとクラスメイト達はいないし、置いていかれたかな?

 

「あれ? 現川ちゃん? まだ避難してなかったの?」

 

「げ、おっぱい先生」

 

 さっさとデスポして帰るべきか、一声かけるべきか考えてたところを、死角から話しかけられた。

 

「げって何よ、げって。あと呼び方!!」

 

 男子人気ならオールマイト並み、十八禁ヒーローミッドナイト。

 

「って、そんなことより! また無茶したんだって!? 何回死んだの!!」

 

「またそれ!? いいじゃん! 死んでも平気な個性なんだから!」

 

 いつだったか、前にもこのおっぱいヒーローには説教をされてる。

 つーかそんなことより、もうお説教はお腹いっぱいなんだよ。もう私は帰ってプリンで胃を埋めたいの!!!

 

「ダメよ!! 自分の命を守れないヒーローに他人の命は守れないの! 道徳の授業で何してたの!!」

 

「ドッジボールと鬼ごっこ! あとハンカチ落としとか!」

 

「青春ね! でも今はその教育不足な教師が恨めしい!!」

 

 今どき道徳の時間に道徳教育する教師とか絶滅危惧種だよねー。

 そもそも論だけど、私は命を湯水のように使う方が人助けに有利だし。

 

「……まぁ、あなたも疲れてるでしょうしお説教はあとでいいわ」

 

「別にしなくていいってば。これから死なないようにしようとか思えないし」

 

「あ、と、で、い、い、わ!!」

 

 はいはい。

 

「それより、妙なヴィランが幾つも捕縛されてきてるんだけど。……もしかしてあなたの仕業?」

 

 ミッドナイトが鞭で指し示す方にいたのは、手足の無い達磨状態で何かに怯え、涙を拭えずグチャグチャな表情のヴィラン達。

 

 あー……。

 

「……正当防衛だよね?」

 

「……仮にも殺人未遂だし、否定はできないけどね」

 

 流石に個性だけ死にっぱなしにしたのはやりすぎだったかな。

 

 個性が無くなるなんて、今の時代じゃ死ぬも同然だしね。

 

「あれじゃ、たとえ更生しても何も出来ないわね」

 

「いや、臓器移植とかでまだ使えるでしょ」

 

「鬼ね、あなた……」

 

 手足以外は健康なはずだし、それなりに保管は出来るんじゃないかな。

 

「人だよ、私は。死ぬのは怖いし、死ぬときは痛いし、殺されれば死ぬ」

 

「……ならどうしてそんなに無茶するの」

 

「それが私の存在意義だから、かな」

 

 一人目の私が、そうあれかしと望んだのだから。

 

 たとえ私が五億回死んだなら、私は五億回転生して生き続ける。

 

「欲求不満って辛いんだよ。個性持ってるなら知ってんでしょ」

 

「現川ちゃん、あなた……」

 

 いい加減、私もさっさとここを出よう。

 帰りにコンビニ寄ってプリン買おう。あとシュークリームとかエクレアとかバームクーヘンとかドーナツとかポテチとか煎餅とかコーラとか紅茶とかコーヒーとか。

 

 胃から脳まで全力で甘やかそ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。