シャルロッテは〇〇が食べたい   作:火野ミライ

8 / 10
ハジメはユエに食べられる?

なにか暖かいものに包まれている感覚と共に目を覚ます。それはハジメとって懐かしい物であり、運命の分岐点でもあったあの日以降見ていないもの、ベットであった。

 

(なんだ? ここ迷宮だよな? ……なんでベットに)

 

親しく感じて無かった熟睡後の起床に感じる2度寝を促す睡魔に襲われながらも、必死に記憶を探る。それは本人(ハジメ)の体感で昨日の事_______

 

 

 

その日はハジメとシャルロッテことベベが出会った階層からちょうど100階、今までのどの場所よりも豪華な扉、まるでラスボス戦手前の扉を潜り抜けた先で6つの首を持つ体長30メートルの【ヒュドラ】と戦闘を繰り広げいた。厳密にはハジメとユエは戦闘しておらず、彼らの目の前で…

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

赤い模様が刻まれた顔の口から火が吐かれ、青い模様が氷のつぶてを絶え間なく放ち、緑の模様持つ顔が風を刃様に尖らせ獲物を切り裂かんと操る。その攻撃を受けるのは第2形態となったベベ。攻撃を受けても一切表情を変える事も無ければ、呻き声を上げる事すらしない。

 

眼前に広がる火・氷・風により自身が傷つくのを気にせず巨大な図体から想像も使いない速度でヒュドラに接近し、体当たりを仕掛ける。その一撃を受けるのは黄色の模様を持つ顔、他の首より前に出るとその顔を一気に膨らませ盾となる。

 

2体の巨体がぶつかる衝撃で部屋が大きく揺れる。ヒュドラが大きく後退し、ベベの一撃を受けた黄色模様の頭部からは血が流れこぶが出来ていた。対するベベは普通の生命体ならば痛みで気絶しても可笑しくはないほどの傷が出来ておりながら、普段通りの真顔でヒュドラの様子を窺っている。

 

その様に怯えの表情を浮かべるのは黒い模様を持つ顔であった。黒の顔が持つ力は対象のトラウマを想起させ恐怖による混乱の引き起こす事。そんな力を持つがゆえに今、自分たちが相まみえている怪物(ベベ)の本質を肌で感じているのかもしれない。

 

「クルゥアン!」

 

悪寒を感じている黒い顔を知らず白い模様の顔が雄たけびを上げる。すると血を流していた黄色の顔が白い光に包まれ、その傷を逆再生の如く再生したのだった。盾役である黄色の顔が元に戻った事を目視すると再び火・氷・風による攻撃を再開。

 

「…………………」

 

相も変わらず感情を感じさせない表情で眺めていたベベは周囲にシャボン玉を作り迎撃を始めた。一見するとシャボン玉を使用するベベの方が不利に見えるがシャボン玉事態に途方もない魔力、それこそ魔女と呼ばれる存在だけあって一つ一つがユエが放つ魔法に匹敵する威力を持つソレを次々に生成しては放つ。

 

「……………すごい」

 

ハジメの袖を掴んで座りこんでるユエが無意識に呟いた言葉。

ユエはベベがきちんと戦闘をしている様子を見るのが初めてではないが、ここまでの力を発揮している姿を見るのは始めてだ。そもそもユエがパーティーに入ってからはハジメとユエだけで大抵の魔物を片付けることが出来る為、基本的に2人が睡眠している時の監視をしているだけ。

 

もしくはハジメがリクエストした甘味のある食べ物を魔法で召喚、ハジメかユエに抱きかかえられてジッとしているなど、とても戦闘できるとは思えなかった。一度だけユエの目の前で第2形態に変化した時もあったが、それは不意打ちによる一撃で仕留めており、ユエの認識では生きたぬいぐるみ魔物の認識だった。

 

(アェェ!? シャボン玉、シャボン玉ナンデ!?)

 

一方のハジメはベベが攻撃に使用しているシャボン玉に驚愕していた。

ハジメの知識にあるベベの能力は、使い魔の使役、お菓子の生成・第1、第2形態への変形・脱皮による完全回復、魔力の塊に変化してのワープじみた移動・浮遊・対象をケーキ(食べ物)に変化と言った魔女としての力。

 

また第1形態は瞳に何も映して無いOFFハイライト、常に無表情で一言も発しず、2つのボタンで前で留めるシングルブレストの上着を着ており、必要時以外はじっとして動かない。この事からハジメはなぜか襲ってこない魔女の認識であり、いつかは自身の知るチーズの名称を連呼するあの状態になるシャルロッテにならないかと思いベベと呼んでいる。

 

しかしながら今目の前で披露した力はシャルロッテ(ベベ)がお菓子の魔女と呼ばれる前、魔法を使えるだけの子供だった時の物であり、お菓子の魔女(シャルロッテ)と呼ばれるようになってからは使った事が無い物であった。そしてハジメ自身もベベと呼ばれたあの子と自分達が共に冒険している目の前の子は全くの別人、もしくはIFの存在と推測していた為に突然の情報投下に驚いている。……………主にオタクとしてのハジメが。

 

「……………………」

 

なお当の本人は、出来そうだからやったらシャボン玉が出ただけと後に日記に記したそうな…

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

本人のマイペースさとは正反対にシャボン玉はヒュドラの魔法を押していき、遂には本体にダメージを与えていく。絶え間なく放たれ、魔力と魔力のぶつかり合いによって生じる爆風により軌道が読めないが為に黄色の顔はたてとして役割を果たせず、白の頭はどの顔を回復するか迷いながらダメージを追う。

 

攻撃陣の頭部もシャボン玉を遊撃しようと魔法を放つが数が多く対処しきれず、黒の頭に至っては去るがままになってる。次々とシャボン玉によって生傷が増える中で白の頭部が吹き飛び、それに続くかのように次々と頭部が吹き飛ぶ。

 

シャボン玉の大軍により6つが吹き飛ぶという光景に、何とも言えず頬が吊り上がるのを感じながらハジメはゆっくりと銃口をおろす。一息つき、何もしてないなと感想を浮かべ名がべべに労いの言葉を掛けようとしたその時!

 

「「危ない!」」

 

ユエと二人しての警告。その声を聴き第1形態へと戻ろうとしたベベは訳が分からないまま、周囲を警戒する。そして目にしたのは傷だらけの中、奇跡的に無事だった銀色に輝く第7の頭部が仲間の恨みを込めた怒りの視線で射貫く。

 

「クルゥァァアアン!!」

 

銀の頭は自身の存在を示すかのように周囲を震わす咆哮を上げるとベベに向かって極光を放つ!

その光は確かにベベの胴体を貫いたがトカゲがしっぽを切って逃げる様に、その大きな口から蛇の脱皮の如く全く同じ姿で飛び出し、その勢いで硬直しているヒュドラに頭突きをかます。

 

しかしその一撃は驚愕から回復したヒュドラの極光により遮られ、先程同じように脱皮して距離を取るベベ。そこから巨体同士の第二ラウンドとなったが両者ともに決め手に欠けており、ハジメとユエの援護により最後はベベ達の勝利で終わる。

 

しかしながら先の戦闘は堪えたのか、はたまた魔力が尽きたのか瞳を開けたまま気絶するベベ。慌ててベベのそばに近寄る二人。ベベを抱きかかえた所でヒュドラの後ろにあった扉が独りでに開いたのだった。

 

 

 

(その扉の向こうが反逆者の住所であり、そこにあったベット見た瞬間吸い込まれるように倒れこんで寝てしまっと…)

 

頭の中である程度整理をつけたハジメはふと、何か柔らかい物が触れた感触を感じて横を見る。そこには穏やかな顔で眠る小さな影。服が無いため全裸で寝ているユエの姿があった。

 

「____っ!」

 

声にならない声を上げ、思わず自身の格好を見下ろすハジメ。

 

(…………………服は着てる)

 

ここにたどり着くまでの戦いでボロボロとなった衣装を着ている事にホッと胸をなでおろす。そして彼女の暖かさを感じる右腕をそっと自身の胸へと引き寄せて天井を見上げる。

 

(ちゃんと生きているんだよな)

 

顔を赤く染め、煩いほど鳴り響く心臓の鼓動で改めて生きている事をかみしめるハジメ。

 

「う~ん………………」

 

ハジメが小さくため息をはいた時、ユエが目を覚ました。ゆっくりと上半身を起こし目をこするとハジメの方に視線を向ける。

 

「お、おはよう」

 

気まずさを感じ、少しどもりながらも挨拶を絞り出したハジメ。しばらく瞼をパチパチと開閉させたユエ、やがて瞳に涙を浮かべながらハジメに勢いよく抱き着いた。思ぬ衝撃を受け再びベットへと倒れこんだ。

 

「死んだかと……思った……」

 

「……………」

 

文句の一言でも言おうとしたハジメを遮るように弱々しい声で紡がれるユエの言葉。それを聞きハジメは何も言えなくなり、ユエの頭を優しくなでる。その時のユエの顔はハッキリと見えなかったし、嗚咽なんて聞こえない事にした。

 

「ねぇ、ハジメ」

 

「………なんだ?」

 

いつもの様子を取り戻したユエの言葉に答えるハジメ。

 

「生きてる?」

 

「生きてる」

 

「これからも一緒にいてくる?」

 

「あぁ」

 

「ハジメの世界に一緒に行っても良い?」

 

「あぁ! 僕とユエ、それにベベも一緒に」

 

静かに短く言葉をつないでいく二人。ハジメの返答一つ一つを胸に刻みこむように聞き入るユエ。またしばらくの静寂が続いたのち、大きく息を吸ったユエがハジメの目をしっかり見つめて口を開いた。

 

「だったら、ハジメが離れない証が欲しい」

 

「え?」

 

「ハジメの温もりが欲しい……… ダメ?」

 

「………………ッ!」

 

ユエの最後の質問。その答えをハジメ言葉ではなく行動で示した。ここで語るは無粋だろう。

ただ一つ書き残すなら、お菓子の魔女は既に部屋の外へ出て行ったということだ。




お待たせしました。今回の話をどう調理するか悩みに悩みまくった作者です。
いまだこの作品に需要があるかわかりませんが出来たので投稿した所存。ちなみにハジメは両目見えてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。