中学生でも冒険者になれるって本当ですか?   作:猫の手

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ストレス発散で書きました。

不定期なのは変わらない感じです。


12話:初心者狩りの後始末

 

 事件が冒険者狩りということもあって事情聴取は非常に長引いた。

 

 繰り返される質問にうんざりと答え、ようやく解放されたころには夜も更けていた。

 

 疲れた様子のトラにコーヒーが差し出される―――冒険者ギルド名物の不味くて苦いコーヒーである。

 

「トラよ。ご苦労じゃったな。」

 

「爺さん、助かったよ。救助活動だから仕方ないとはいえ、災難だったよ。」

 

 ねちっこく聞かれれば流石にウンザリする。証拠の映像があってもギルド所員からかなりしつこく質問攻めにあった。

 

 ちなみに母親はダンジョンの奥深くに潜っているため、戻ってこれず爺さんはその代理である。

 

 第二次アンゴルモアの傷跡は様々な形で多くの人の人生を狂わせた。

 

 親を失ったもの、恋人を失ったもの、子供を失ったもの、それらすべてを失い天涯孤独となったものなど様々だ。

 

 たいていの人間はそれらを受け入れ新しい絆を育み、傷跡をふさぐのだが、ごく一部例外的にその傷跡を憎悪で埋めて狂ったようにダンジョンに潜り続ける人間が存在する。

 

 トラの母親もその数少ない例の一人だ。

 

 止まらない。止められない。理由を知るがゆえに周囲も爺さんですら止めることができない。

 

「とはいえ、今回の謝礼で80万、ようやくランクアップの資金が作れたよ。」

 

 みのりの冒険者ライセンスのカメラに証拠がきっちりと映っていたため、あっさりと謝礼を貰えることとなった。

 

 80万円悪くない金額である。

 

「準備はしておる。明日にでも取りに来るんじゃな」

 

 言外に今日はダメだと告げる爺さん。そりゃそうだと頷くトラ。

 

 爺さんから渡してもらったコーヒーに口を付け―――表情を歪める。

 

 不味いというわけではなくひたすら苦い、職員の眠気覚ましのためにわざと設置しているのではないかといわれているコーヒーだ。

 

 トラは流石に冗談だと思っていたのだが、実際に現ぷつを飲んで考えを改めた。不味いものを渡した。爺さんを恨みがましそうに見るが涼しい顔をしていた。

 

「冒険者ギルドの名物じゃからの。経験してみるのもよいじゃろ」

 

 いたずらが成功したいたずらっ子のように爺さんは笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガチャリとドアが開く。

 

 そこから出てきたのは魚みのりとスーツを身にまとった女性の二人だ。どうやら警察とのお話も終わったようである。

 

「ストーカーね。今月に入って3人目―――…ダンジョンまで来るとは思わなかったなー。有名になったのは良いけど―――あ」

 

「見直しが必要かしらね。」

 

 トラに気が付いたみのりは手を振る。

 

 スーツの女性もトラに気が付いたようだ。二人してトラと爺さんの方へ歩いてきた。

 

 スーツの女性は頭を下げるとお前も下げろとばかりにみのりの頭も下げさせる。

 

「歌川君ね、この子を助けてくれてありがとうございます。」

 

「景虎君、ありがと。ほんとに助かったわ。――…ダンジョンまでストーカーが来るとは思っていなかったから」

 

 ダンジョン内では緊張もあったんで平然と対処できていたが、美人のみのりから正面切ってお礼を言われると気恥ずかしくなる。

 

「――…気にしなくていいですよ。俺もメリットあったんで」

 

 まあ報奨金のことである。口調は少しぶっきらぼう

 

「やれやれ、未熟者め。すまないのお嬢さん方、こ奴は思春期ゆえに美人さんとのやりとりに慣れてなくての。大目に見てやってくれぬかな」

 

 少年らしい様子にみのりは面白いものを見たとでも言いたげな表情を浮かべる。

 

 トラのダンジョン内での活躍を聞いていたスーツの女性――巴彩美というらしい――も可愛らしいものを見たとでも言いたげな表情だ。

 

「貴方がいてくれて本当に助かりました。ダンジョンの中までストーカーが襲ってくるとは、私たちの想定が甘すぎた」

 

 悔やんでも悔やみきれなとばかりに苦々しく巴彩美は言葉を漏らす。

 

 今回の事件は端的に言ってしまえば、カリスマモデルである魚みのりのファンの暴走である。

 

 魚みのりは自身のキャリアアップのために冒険者になることを選んだ。

 

 本人はダンジョンチューバーになる予定ではなくモンコロの解説者を目指していた。

 

 解説者になるにしても冒険者としての知識と経験がなければ太刀打ちができず、それを実地で学ぶために冒険者になったらしい。

 

 珍しい理由ではあるが不純とも言い難い理由だ。

 

 魚みのりのマネージャーであるスーツの女性――巴彩美というらしい――は少し困った表情を浮かべていた。

 

「今回は無事で済みましたが、このまま続けるのも危ないですね。」

 

「でも、止めるわけにはいかないわよ。」

 

 危険だという巴彩美に対し、みのりはだからと言って止めるわけにはいかないでしょと返す。

 

 巴彩美としても足踏みをさせたくないのはある。みのりの仕事の幅を増やすことはマネージャの彼女の成績にも直結するからだ。

 

 少し悩んで、巴彩美はトラにほんのかすかな期待を込めて提案をしてみた。

 

「もしよかったら、チームを組んでもらえないかしら?」

 

 その依頼にトラはドン引きとでも言いたげな表情を浮かべる。

 

 トラはあまり詳しくははないがカリスマモデル――世の女の子が憧れる女性――に対し、男がチームを組むのは社会的に危険が危なすぎる

 

 また、他の理由もありトラは受けるわけにもいかなかった。

 

「申し訳ないけど、それは無理かな。今回の報酬で目標金額に達成したから、☆2の試験を受けるからね」

 

 やっぱり無理かと巴彩美は無念そうな表情を浮かべる。みのりも残念そうな表情を浮かべた。

 

 トラは技量が高い。また、既に退官しているといえ、椚木惣一郎が保護者として現れるのであれば信頼ができるだろう。

 

 とはいえ、理由が理由である。無理にお願いすることも難しいだろう。

 

 少し困った表情を浮かべている巴彩美を見兼ねたのか爺さんがみのりに提案をした。

 

「お嬢さんは冒険者ギルドの初心者講習を受けたかの?」

 

「いえ、受けてないわ。講習行くよりダンジョンに潜った方がいいと思うし」

 

 みのりの回答に爺さんは苦笑する。

 

 初心者は実践が何より有効と考えがちだが、実践を有効にするためには知識と訓練がいる

 

 トラは爺さんが徹底的に仕込んだので問題はないのだが、そうでない人間にダンジョンで必要となる技術を教示するための講習なのだ。

 

「なるほどの、悪いことは言わぬから、講習を受けるとよいじゃろう。このような初心者狩りへの対処法なども学ぶことができるし、有望な仲間を見つけることができる可能性もあるからの」

 

 爺さんの言葉にみのりは少し考える。

 

 トラの保護者であれば技量は優れていると考えてよいだろう。みのりが知らない何かがある可能性がある。

 

 そう判断したみのりは素直に爺さんの提案を受け入れることにした。

 

「ん………ありがとう。受けてみるわお爺ちゃん」

 

「どういたしましてじゃな」

 

 爺さんは提案をきちんと受け入れたみのりに対し好々爺とした笑みを浮かべる。

 

 巴彩美も爺さんの提案を聞いて少し考える。確かに講習会は悪いものではない。そこで良い人間がいればチームを組むのもよいだろう。

 

 講習会について調査する必要がある。そろそろ帰るべきだろう。

 

「みのりそろそろ帰りましょう。これ以上は明日に響きます。」

 

「あ、少し待って」

 

 みのりは巴彩美にそういうとトラに近づいて行った。

 

 2枚のカードをトラに見せる。Dランクのカード川姫、ハンツ=テテク、犯罪冒険者が持っていたカードだ。

 

 トラはそのカードを見て首をかしげる。

 

「アイツ、親がお金を持っていたみたい、このカード以外にも私も慰謝料を貰ったわ。だから、助けてくれたお礼にどちらか1枚持って」

 

 トラは少し考える―――まぁ、貰えるというなら貰うべきか。

 

 川姫とハンツ=テテク、カードを見て少し考える。どちらもそれなりに優れたカードだ。

 

 自分の手持ちのカードを思い浮かべ、苧うにのランクアップ先としても使えそうな川姫が良いだろうと考えた。

 

 胸のお化けといわれる"ハンツ=テテク"に興味がないわけではないが、年上のきれいなお姉さんの前であまり恥ずかしい対応をするわけにもいかない。

 

「じゃぁ、川姫を手持ちのランクアップとしても使えそうだし」

 

「なるほどね。私はこの子を使うわ。今度機会があったら一緒に探索をしようね。」

 

 そういって、トラはみのりとは連絡先を交換、何故か巴彩美とも連絡先を交換した。

 

 ☆2試験が終わった後なら良いよとトラは回答。

 

 後日、お礼とともに送付されてきた自撮り写真を真那に見つかり、色々と騒動が起きた。

 





魚みのりは割としたたかな性格です。
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