中学生でも冒険者になれるって本当ですか?   作:猫の手

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お話はあまり進んでおりませんが投下。

次から☆2の試験に挑めそうです。


13話:戦力強化

 

 4月も半ばを過ぎた。

 

 冒険者になった時間はそれ以前よりも濃厚であり、気が付けば駆け去るようにという間に過ぎ去る。

 

 とはいえ、足を止めるつもりはなく、より早くより前へ焦るような気持ちとともに逸る心があった。

 

 そんなトラの様子を呆れたように真那は見つめ、えいっとに鼻を掴む。

 

 登校途中という気のゆるみと焦燥があったとはいえトラも油断をしていたわけではない。それでも、真那のいたずらには反応ができない。

 

 流石に鼻をつままれては痛いので文句を言おうと口を開――前に

 

「酷い顔しているわよ、トラ。せっかくランクアップの資金稼げたというのにそんなんじゃ大怪我するわよ?」

 

 真那の言葉を聞いて嘆息、どうやら顔に出るぐらい焦っていたらしい。未熟なことこの上ない話である

 

 それを指摘してくれた幼馴染に感謝する。

 

「あー、顔に出ていたか。わりぃな。気を付けるよ。焦っても仕方ないってのは分かっているんだが、気が逸る……」

 

 そんなトラに苦笑しながら真那は気が逸るという言葉に同意する

 

「まぁ、分からないでもないけど、お姉ちゃんも先に行っているし」

 

 もっとも諒姉さんは異常な反射神経を持っている真那にお前が言うなというだろうが……

 

 そういえばと、昨日の今日で真那にはまだ言っていなかったはずなのだが、なんで知っているのか。恐らく爺さんが原因だろうが

 

 孫娘との会話のだしに使ったのだろう。孫に甘い爺さんである。

 

「今日、札商が来るから、まっすぐ帰って来いってお爺ちゃんから伝言よ」

 

「おや?札商呼ぶんだ。爺さんから買い取る形になるとばかり思っていたんだがな」

 

 購入するのは所詮2枚。札商の商いとしてははした金のような金額である。

 

 来るとは思えないが爺さんのコネクションなのだろう。無理を言った可能性があるからまっすぐ向かわねばなるまい。

 

 トラの疑問を知ってか知らずか真那は話を続ける。

 

「お爺ちゃんのお友達らしいわ。」

 

「なるほど」

 

 それならば着てくれそうである。爺さんの友達とかどんな曲者が来るかは不安なのだが……

 

 そして、真那は昨日の出来事を聞きたいらしく、話題を振ってきた。

 

「――本当にいるのねぇ。キンスレイヤーって、トラが捕まえたのは魚みのりさんのストーカーらしいけど」

 

「理解できん存在だよ。おとなしく応援しときゃよかろうに」

 

 推しに危害を加えるのは言語道断の行為である。

 

 トラには熱心なファン活動をするタイプではないので理解できないし、更にストーカに至った奴の気持ちは理解したくもなかった。

 

 有名人って大変よねーと続ける真那に全くだとトラは返した。

 

 魚ゆかりは真那でも知っている(失礼)カリスマモデルらしい。若い女の子を中心にフォロワーも多くいるそうだ。

 

 逆に男性のファンよりも女性のファンが多いタイプなのだが、それでもストーカーは発生するらしい。

 

「まぁ、おかげで☆2の試験が受けられる準備ができたのは幸運だったのかな」

 

 人の不幸をあまり幸運というのは良くないのだが、そうとしか表現しようがない。

 

 そういって苦笑いを浮かべるトラに真那はこう告げる

 

「幸運よ。魚みのりさんも無事でトラも報酬を受け取れたんだから、そして、犯罪者はふさわしい末路をになっただけよ。」

 

 自信たっぷりの真那の言葉にトラは少し気が軽くなった。

 

 他人の不幸で手に入れた金だったので少しばかり気分が重くなっていたのだ。

 

「おう、ありがとよ。んじゃま、ランクアップのカード購入記念にケーキでも奢ってやるよ。」

 

 トラの言葉に目を輝かせる。真那も甘いものが大好きな女子中学生だ。少し考えて、返事をした。

 

「じゃぁ、旬の苺のケーキが良いわ。」

 

「となると、天満宮のあたりの店がいいか。まぁ、今日は無理っぽいから"ありや"によるかな。来客用の茶菓子もいるだろし」

 

「あーあそこもいいわね。」

 

 勝手知りたる椚木家は今茶菓子を切らしていることをトラは知っていた。そのため、真那もにそれは良いアイデアだと思うわと返す。

 

 ランクアップの作業を含め、今日はダンジョンの探索は無理だろう。トラはのんびりと菓子を食べながらだらだらする日があってもよいかと考える

 

 そういえばと、真那は何かを思い出したのかトラに質問を投げた。

 

「そー言えば、ランクアップはするとして名付けはするの?」

 

 真那のその言葉にあっとなるトラ。ランクアップをするのであれば、確かに名づけを考えるべきである。

 

 蓑草鞋の件もあるし、慎重な対応が必要だろう。

 

「考えてなかったなぁ。確かに必要だ―――考えてから、相談することにするよ。」

 

 あえて目を逸らせていた覚悟を決めなければならない問題点を指摘してくれた幼馴染にトラは感謝をしつつも、頭の痛い問題にどうしたもんかと悩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、トラは"ありや"で購入したケーキを片手に真那と一緒に椚木家に帰る。

 

「ただいま~」

 

「お邪魔します」

 

 トラと真那が椚木家に入ると玄関には見知らぬ革靴があった。どうやら札商が既にきているようだ。

 

 どーするとアイコンタクト、真那の視線はケーキへと向かう。

 

 女性が甘い物に目がないのは世の常である。トラは苦笑。

 

「どーやら、来ているみたいだな。リビングかな」

 

「たぶんそーね?」

 

 未練がましそうにケーキを見るが諦める真那。爺さんたちも気が付いたのかリビングからトラのいる玄関の方を覗き込んだ。

 

 爺さんが二人を手招きする。ちらりと見えたリビングにはお茶すら用意されていなかった。おや、トラは内心首を傾げる。

 

「さっき買ったケーキとお茶を準備するわ。先行ってて」

 

「いや、手伝うよ。」

 

 真那がトラに先に行ってと告げるが、流石に手伝うと伝える。一人で準備をさせるのは気が引けるし。

 

 爺さんに茶菓子を準備すると伝えて、準備をしてからリビングへと向かう。

 

 リビングに向かうと和室の部屋に恰幅の良い中年の男性と爺さんが胡坐をかいて座っていた。

 

 体つきはゴツく、その筋肉の上に脂肪がのったような感じの体格だった。元々スポーツでもやっていたのだろうか?

 

 茶菓子とお茶をそれぞれの目の前に置いた後、失礼にならないように目の前の中年男性に対しトラと真那が挨拶をした。

 

「こんにちわ、初めまして、歌川景虎です。」

 

「こんにちわ、椚木真那よ。」

 

 そんな二人の挨拶に中年男性は気をよくしたのかにこやか笑みを浮かべる。その体格と相まって恵比寿の様であった。

 

 恵比寿のような中年の男は挨拶を返した。

 

「ああ、こんにちわ、私は羽木匡平と言う。惣一郎の古い馴染みで札商をしている者だよ。」 

 

 爺さんの方を見ると、悪友に対し揶揄するように口を開く

 

「しかし、惣一郎、お前さんの弟子にしては礼儀正しいじゃないか。茶菓子すら出さないお前とは大違いだ。」

 

「やかましいわ。ブクブクと太りおってからに、貴様の細君には菓子類を食わせないでくれと言われているから仕方なかろうが」

 

 羽木は嫁さんからダイエット令でも出されているのだろうか。確かにあの体格を見ればさもありなんといったところである。

 

 珍しい爺さんの発言。だいぶ気安く付き合っている相手の様だ。普段は年長者としてそれに相応しい落ち着いた態度の爺さんらしからぬ対応である。

 

 札商ということは自分にカードを打ってくれる相手だろうか?

 

 そんなことを考えつつも爺さんと漫才をする羽木と爺さんを眺めていた。

 

 真那はそんな二人の言い争いを肴にありやのショートケーキを楽しんでいた。ケーキを食べ終わるころには落ち着いたのか、二人とも落ち着いた様子を取り戻していた。

 

「しかし、美味そうなケーキだね。買って帰らなないと嫁に叱られそうだ」

 

 ケーキを見て呟くのが嫁のこと、羽木と彼の嫁は仲睦まじいようだ。爺さんは相変わらずといった羽木の様子に呆れたように突っ込みを入れる。

 

「相変わらずのだの。貴様も―――わざわざここまできおってからに」

 

 爺さんの言葉を羽木は鼻で笑う。何を言っているんだとでも言いたげな愛度だ。

 

「何を言ってやがる惣一郎。景久の子が冒険者を始めたンだろ?あと、威一郎の娘――妹の方も冒険者になったって話じゃねぇか。一回会いたいとは思っていたんだよ」

 

 爺さんの言葉にそう返すと爺さんは苦笑いを浮かべるトラと真那の親の知り合いの様だ。

 

 割と親しげな様子に首を傾げつつも口をはさむタイミングを逸し黙って聞いていると、羽木がトラに向かって話しかける。

 

「ああ、すまない。俺と惣一郎と景久はまぁ年齢が近いってこともあってよくつるんでいたんだよ。惣一郎の奴は防大卒のエリートの癖にな」

 

「やかましいわい。貴様が主犯で威一郎に夜遊びを教えようとしたからじゃろうが」

 

「最終的にノリノリでついてきたお前も同じ穴の狢だがな」

 

 次々と漏れる爺さんたちの悪行にトラは苦笑し、真那はあきれた視線を向ける。

 

 孫娘の視線に爺さんは慌てて話題の転換を図る。可愛がっている孫娘にそう言う視線を向けられるのは爺さんとしても遠慮したいのだ。

 

「匡平、さっさと取引カードを見せんか!!」

 

「へいへいっと、お嬢ちゃんは席を外していた方が良いだろうな。アレなモンスターを探していたみたいだからな」

 

 その言葉を聞いた真那はあっさりと納得し席を外す。ジャパニーズエロゲモンスターなど年頃の娘が見るものではない。

 

 そんな真那を見て、少し後ろめたくなったが金がないから仕方がないと割り切る。

 

 真那がリビングから立ち去った後、羽木はカードをテーブルの上に並べ始めた。

 

 並べられたカードは"やまらのおろち""金霊"、さくぞうすと銭霊のランクアップ先である。

 

 事前に聞いていた封問いに入れた金をテーブルの上に置く

 

 

【種族】やまらのおろち

【戦闘力】450

【先天技能】

・多頭の龍:高い再生力、物理攻撃及び魔法攻撃に対する耐性、巨体に相応しい剛力を誇る。また、複数の敵と戦う時にプラス補正

・粘液のブレス:白い液体のブレスを吐く。高威力の攻撃とともに状態異常を与える。更に攻撃を受けた女の子モンスターの戦闘力に大幅なマイナス補正

・八つの酒瓶:眷属であるいやだひめを召喚。一日8回、一体のみ。

 

【後天技能】

・中等忍術:

・物理強化:

・耐性貫通:

・生技:

 

 

【種族】金霊

戦闘力:130

【先天技能】

 富貴在天:訪れた家に服を与える。金運に大幅にプラス補正。(ダンジョンで宝箱を発見率、アイテムのドロップ率、品質などがに影響)

 付喪神(金):初等クラスの装備化スキル。他のカード、あるいはマスターへと憑依することで、自身の戦闘力の四分の一を加算させることができる(マスターへの装備化の場合はすべての戦闘力とスキルを共有できる) 

 中等状態異常魔法:

 

【後天技能】

・精密動作:

・生還の心得:

 

 

 まずはやまらのおろちの先天技能"八つの酒瓶"に目を剝いた。百慕々語では確かにいやだひめと一緒に描写されてる。

 

 一緒に描写されたが故に眷属として召喚される彼女に憐れみを覚えた。とはいえマスターとしては便利なのでどうこういうつもりもない。

 

 他の能力もかなり高く良いカードなのだと考えた。たぶんやまらのおろちじゃなければとても高いんだろうなぁと思われる能力だ

 

 金霊も割と良い。生還の心得があるのは高い評価である。 

 

 お金の入った封筒を机の上におくとそれを確認した羽木が「確かに」と言って受け取った。

 

「いや……景虎君と同じようなことを考える奴はたまにいるんだけどたいていはカードを見たら思いとどまるんだよね」

 

 まぁ、やまらのおろちのビジュアルは強烈である。現実を思い知って挫折をするやつもいるだろう。

 

 トラも内心さくぞうすの変化の術が引き継がれることを祈っている。無ければ、運用がちょっとめんどくさいことになりそうだからだ。

 

「まぁ、最短で強くなるにはこれが早いですからね」

 

「確かにそれはそーなんだが、惣一郎はどういう育て方をしたんだ」

 

 あまり迷いのないトラの発言に頭を抱える羽木、友人の息子がこうなれば流石に思うところはあるのだろう。

 

 爺さんに羽木は呆れた視線を向ける。

 

 最初のカードが不味かったんじゃと爺さんは内心トラの兄、政信への恨みをこぼす。

 

 威厳を保つために爺さんはトラにくぎを刺す。

 

「ある程度予算がたまったらマイナーチェンジも視野に置くんじゃぞ。☆2までであれば個人行動でもよいが、☆3以降はチームで動くことも増えるからの」

 

「それならいっそ、Bランクのマーラへのランクアップを考えるよ。」

 

 トラのその発言を聞いた羽木は不良在庫と化しているご立派様としか形容しようのない外見のマーラを思い出した。

 

 もし、買う気があるならアレを売ってもいいかなぁとか考えていた。

 

 そのあと普通のマーラを最優先で売ってやればまぁ許されるだろう(ばれたら、キれた爺さんとの戦闘が始まります)

 

「取引は以上かな。まぁ、何かあったら連絡をするといい。私も札商してもそこそこ経験はあるしね。力になれると思うよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

 トラは手渡された名刺を受けとる。今後のことを考えると札商とのコネクションはあるに越したことはない。

 

 必要な時に必要なカードを金銭で交換できるのは強力なメリットだからだ。

 

 羽木はしげしげとトラを観察し昔を懐かしむように呟く。

 

「景久に似ているな。あいつと俺は同期だったんだけだよ。そこの爺だけは仲間外れだがね。」

 

「喧しい、わしは餓鬼のころからの腐れ縁じゃ。」

 

 口を開くたびにマウントの取り合いをする爺さんと羽木にトラは苦笑を浮かべる。

 

 普段の爺さんからは想像のつかない一面だ。友人に会ったせいで取り繕っていた外面が暴かれていくような感じである。

 

「父さんの友人だったんですか?」

 

 羽木にそう問いかけるとああと頷く。そして昔を懐かしむように言った。

 

「ああ、栄さんを巡った恋のライバルもしていたんだよ。俺も爺も負けたけどね。まぁそのあと俺は良い人に巡り合ったがね。」

 

 栄とはトラの母親のことだ。さりげなく羽木は爺さんにマウントを取る。それに対しては爺さんも言い返す言葉がないのか歯ぎしりせんばかりの表情を浮かべる。

 

 普段とは違い落ち着きのない爺さんにトラは面白いものを見たと思った。

 

「まぁ、あいつは良い奴で優れていたよ。ちょっと抱え込み過ぎなところもあったがね。―――とまぁこれ以上喋ると爺の血圧に問題が出そうだから止めておこう」

 

 そして、時計を見る。羽木は札商。取引も多く忙しい身の上だ。トラの帰宅時間に合わせて、時間を確保していたがそろそろ移動をしなければ不味い。

 

 ケーキを食べてお茶で流し込むとお暇するよという。

 

 そんな羽木に爺さんは大人げない言葉を吐く。

 

「ふん、さっさと帰れ、わしらも暇ではないのじゃからな。」

 

「爺はどっちかというと暇だろう?退役してから、隠居決めやがって――景虎君、欲しいカードがあれば呼んでくれ、旧友の息子の依頼であれば頑張るさ。」

 

 爺の憎まれ口に軽口で返し、羽木さんは帰って行った。

 

 羽木さんを見送ってから、リビングに戻ると良い笑顔を浮かべていた真那とトラの携帯がテーブルの上に置いてあった。

 

 チャットが開かれており、魚みのりとハンツ=テテクのツーショットが写った写真が写っていた。

 

「トラ、みのりさんからチャット来ているわよ。」

 

 笑顔での平静な様子の真那を見て内心震え上がる。だが、対処を間違えれば地獄へ真っ逆さまになる。

 

 故に平静を装ってこう回答した。

 

「件のストーカーから慰謝料として回収したカードが問題なく伝えたと連絡してきただけじゃないか?」

 

 トラの返事に真那は少し考えて、ふむと頷く。

 

 ストーリーとしては変な話ではないし、年齢差がある。とはいえ油断をしてはいけないだろう。

 

「じゃ、トラが譲ってもらったモンスターと一緒に写した写真を返信しましょう。私も一緒に写るわ。」

 

 その後、トラは川姫、蓑草鞋、トラ、真那、シルキーの5人を撮った写真をみのりへ変身した。

 

 それを見たみのりはチャシャ猫のような笑顔を浮かべ返信する。

 

『可愛い子ね。彼女?』

 

 この返信を見た真那はみのりのことを良い人ねというようになった。

 

 

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