もうちょっと文章はくらませそうなんだけど、語彙力の問題かな
感想増えろー
2022/10/2
戦闘シーンに問題があったかなと感じたので大幅に修正しました。
諒達と別れて、トラ達は煉獄山を歩き続けていた。その光景を見ることは不快だった。
麓の第一冠ではアンゴルモアの被害者が重い石を背負わされ、腰を折り曲げていた。
責め苦を与えていた獄卒たちが高らかに叫ぶ。
「これはモンスターと戦い抗った罪の浄化である。貴様らの傲慢を浄化する責め苦である」
この言葉を聞いて怒り狂った真那が獄卒を首を薙ぐ、殺意を固めたような冷たい声で吐き捨てるよう言う。
「黙って死になさい」
しかし、その刃は空気を薙いだだけ、獄卒を斬り捨てることはできなかった。真那の刀は魂を斬るようにはできていない。何度殺しても飽き足らぬ殺意で刃を振っても、機能が伴わなければ届くことはない。そして、獄卒も生者に危害を加えることはできない。死者と生者は交わることがない。それがどうしようもなくもどかしい。
更に刃をふるおうとする真那を止める。これ以上のスタミナの消費は看過できない。怒りを叩きつける先はあるのだ。そいつにぶつけるべきだ。
「そこまでにしとけ。」
「でも!!」
自分でも無駄なことは分かっているのだろう。助けたいが助けられない。真那は泣きそうな表情になる。だから、怒りをぶつける先を誘導することにした。―――そうしなければ、勝てないのだから。
「怒りは―――パンをふんだ娘ぶつければいい。あいつがすべての元凶だ。」
その言葉に口惜し気に俯く。パンをふんだ娘と戦うのは狂雲だ。真那はは直接は殴れない。狂おしいほどの怒りで刀を強く握りしめた。絞り出すような声、抑えても抑えきれぬ憤怒。トラも狂いそうな怒りを我慢していた。察してくれたのだろう。憎悪で少しだけ引き攣った笑顔を浮かべ、真那は我慢をすることを選択した。
「分かった。早く倒しましょう。」
真那の言葉に頷き返すと煉獄山の先を見る。―――遠くで悲鳴が聞こえる。本来は罪を浄化されるための反省を込めた刑罰を受ける場所は地獄もかくやという悲惨な牢獄へと変貌していた。蓑草鞋は零落した山の神とも言われている。故に山で行われている残酷な仕打ちが分かってしまうのだろう。悲しみと嘆きをテレパシーに乗せてククリはトラに懇願する。
『早く、早く終わらせましょう。こんなのは酷いです。』
『ああ』
ククリをなだめるようにトラはテレパシーを返す。まだ心が幼い彼女に見せるのは酷な光景であるということは分かっている。だが、勝率を高めるためにはククリの装備化スキルを使用するしかない。自分の弱さに反吐が出そうになった。
先頭を歩く狂雲がさくぞうすであったときに使用していた錫杖を取り出し、鳴らす。頭部に取り付けられた十二遊環がこすれあい音を響かせる。その音は意外に大きく響き渡りっていく。錫杖の音には煩悩を除去し知恵を与え、悪霊を攘却する力があると考えられている。爺さんから終わった言葉を思い出したトラは我に返る。先頭を行く狂雲がトラ達に言葉を投げる。
「余計なものを持ち込めば死ぬぜ。怒るなとは言わないが、つけこまれる真似をするな。」
狂雲の言葉を聞いて羞恥心と怒りで顔が真っ赤になり黙る。相手との実力差は明らかである。作戦通りに動けなければ死ぬのは自分たちだ。それがイレギュラーエンカウントとの闘いと聞いていたはずなのにそれができていない己を恥じた。真那も気が付いたのか黙ってしまう。
狂雲が先導し、トラ達一行は、煉獄山を歩んでいく。
パンをふんだ娘にゆがめられた煉獄山は罪を浄化する場所などではなくなり、アンゴルモアの被害者たちに永遠の責め苦を与える地獄へと姿を変えていた。助けることができない、地獄で舗装された道を歩み続けることは怒りで気が狂わんばかりである。故に怒りをため込む。この怒りはぶつけるべき相手にぶつけるためにため込んでおく。奴との戦闘の時に正しく怒りをぶつけられるように………
第二冠 ―――目を縫い付けられ燃やされる犠牲者
第三冠 ―――獄卒に全身を引き裂かれ血煙となる犠牲者
第四冠 ―――首を捻じ曲げられた犠牲者が這いつくばりながら見せしめのように煉獄山を引き回される
第五冠 ―――犠牲者たちは地に埋められ鳥がその頭部を啄み。引き引き裂く
第六冠 ―――餓え気が狂った犠牲者たちが空腹を満たすため、仲間を喰らう
第七冠 ―――悪疫に侵された犠牲者たちが溶解した金属を浴びせられ苦悶する
目を覆いたくなるような惨状であった。無知で傲慢な娘は自分がアンゴルモアで集めたコレクションを自慢のつもりか?怒りで腸が煮えくり返る―――いや、心が冷え冷えと冷めてくる。この惨状を作り出したクソ野郎をこの手で引き裂いてやりたい。諒姉に譲ったが今からでも変わってほしいくらいだ。煉獄山にいる被害者の万分の一でも痛みを刻んでやりたい。
山頂、神曲では地上楽園とされていた場所常春の美しいはずの場所はアンゴルモア犠牲者の怨嗟にまみれ、地面はデスマスクで敷き詰められていた。―――疾く殺したい。憎悪がトラの精神を汚染する。計算高さがブレーキを踏むがいつ暴発してもおかしくはない。
頂を見上げるとそこには屍の山の上にパンをふんだ娘は寓話に伝わる通り傲慢な表情を浮かべる。楽園の主人は己である振る舞いで死者で作られた椅子に腰を掛け見下ろす。自分は地獄に落とされたのではなく煉獄山の管理者にでも選ばれたのだと言わんばかりの表情だ―――叩き潰したくなる。
畏怖も恐怖もなく、殺意を瞳に宿し睨む。憤怒は出口を求め荒れ狂っている。だがそれを言葉にはしない。言葉にして漏らせば決壊寸前までため込まれた憎悪が噴出してしまうから、傲慢な女に叩きつけたいのだ。万分の一でも犠牲者たちの痛みを理解させねばならない。故に言葉などでソレを漏らしたくはない。
だが、パンをふんだ娘は苛々とした様に踵で椅子を何度も蹴りつける。そのたびに椅子の材料とされた魂は悲鳴を上げ苦悶する。その悲鳴を聞いて気が晴れたのか。椅子から立ち上がり傲岸不遜な表情を作る。地獄の創造主としての威厳を取り繕う。主人に逆らう愚か者達を嘲笑う。
「ああ、なんという傲慢、それとも私のことを知らない無知?その両方かしら人間らしい罪深さね。罰を、罰を与えてあげるわ。死霊どもに凌辱させてやろうかしら?それとも食い殺させてやろうかしら?」
足で死霊を踏みつぶし、高らかに歌う。呪う様に侮蔑するように女王の決定に従えと言わんばかりに
「でも、貴方たちには選ばせてあげないわ。選ぶのはこの世界の主人である私なのだから」
言外にイレギュラーエンカウントに勝てるわけがないと嘲笑う。空より眷属の鳥が舞い降り、アンゴルモアで連れ去られた人々の魂をパンくずのように引き裂き喰らう。死霊たちがあげる苦痛の悲鳴、それが心地よいのだろうか。心地よさげに笑っていた。無知と傲慢を体現した娘。女王とまで意識を肥大化させたモンスターがそこにいた。
その行いをみたククリは悲痛な思いがテレパシーを通してトラに流れる。狂雲は錫杖を強く握りしめ、真那は激怒し二刀を抜く。
「あんた、な―――」
憤怒と共に回線の口火を切ろうとした真那をの前移動したトラが止める。冷静さを失い。メンタル面で優位を取られている。今、回線をするのは不味い。故に主導権を取り戻すためトラは女王を騙るパンをふんだ娘の童話で語られる行いを論う。
「なに、神の体を踏む。てめぇの無知さほどじゃねぇさ。」
その言葉を聞いたパンをふんだ娘は目を見開く、―――高々一斤のパンで地獄に落とされた恨みが噴出する。歯軋りがトラの元まで聞こえるほどだ。そんな無様な女王の様子を見て溜飲が下がったのか。真那が口を閉じる。パンをふんだ娘の無様を見てもトラは鼻で笑う。畳みかけるように言葉を続ける。
「事実だろ?―――その無知と傲慢さで地獄に落ちた咎人。テメェのために祈った女性の行いは無駄だったようだな」
否定できない寓話での行いが己を自縛する。自分は愚かではないのだ。愚かなのは他人で教えることすらしなかった村の人間、両親。何故、何故、何故、高々パンをふんだ程度で地獄に行かねばならなかったのか。納得できるはずがない許せるはずがない。
トラのダメ押し。否定したかった隠し続けたかった事実をさらけ出す。事実をより扇情にイエロージャーナリズムが如く傷跡を引きずり出し踏み躙る。舌戦は相手の余裕を奪う戦いへと変貌していた。
パンをふんだ娘は凍り付いたかのように動きを止める。美貌も地獄の鬼もかくやという表情へと変貌し自分の罪をかき消すために大きな声で、自分の咎をさらけ出し傷跡を踏み躙った非道な男を罵る。
「なんて、無礼な人間なのかしら、そんなに死に急ぎたいならお喋りはここでお仕舞い。殺してあげるわ。啄んであげるわ。死んだ後も永遠に!!」
空がより幾重にも連なって鳥が降りてくる。
本来であれば、パンをふんだ娘が餓えた鳥たちにパンくずを与える役割を負うのだ。それを行わず、己の手足のように使役する。イレギュラーエンカウント故か再現された傲慢さ。悪鬼のような表情を見て、十分に冷静さは奪えたかと妥協した。
真那の様子を窺うとこちらは冷静さを取り戻していた。溜飲が降りて頭が冷えたようだ。一応念のために釘をさしておくことにした。
「真那――」
「悪かったわよ。」
「ならいい」
反省した様子を見せた真那に小言を止める。時間があるわけではない。後で爺さんに報告をしておけばいいだろう。鳥を真那とトラが止めて、やまらのおろち―――狂雲が相手にスキルを使う暇を与えず擦り潰し続ける。パンをふんだ娘は優秀なスキルで戦うタイプであり、ステータスが優れているわけではないイレギュラーエンカウントだ。最善を継続し続ければ足止めは可能になる。
逆に言えば、最善を繰り返さなければ足止めすらできない強敵なのだ。
トラは己の信じるエースに―――激励しようと考え、浮かんだのは簡単な言葉だった。
「狂雲―――任せた。」
「応、任せろ。」
だが、狂雲にはこれでよい。いや、これが良い。任せるということは全幅の信頼を置いているということである。ジャパニーズエロゲモンスターである己にとってはまずかけられることのない言葉。故に震え立つ―――死ぬには良い日とはこのような日なのだろう。
龍燈――龍の形に燃える炎――が召喚される。龍燈の炎に照らされた真那はトラに呼びかける。その呼びかけに従い、トラは龍燈の背に飛び乗った。その様子を確認せず、真那はワルキューレのように戦場へ向かうことを告げる
「行くわよ。」
「応」
山羽のように短く答える。50の炎が天へと昇る。それは天翔ける龍のようであり、ガルーダに挑む龍蛇のようでもあった。天に昇っていくトラ達を見てふざけるなとパンをふんだ娘は追いかけようと視線を向ける。地上に残ったモンスターの相手などする必要などないと追いかけようと視線を向ける。
―――それは、悪手であった。
パンをふんだ娘はステータスではなく多様なスキルで戦うのが正しいスタイルだ。だが、無知と傲慢である彼女は直情的に動く。支配者は自分であり、他は全て傅くべきなのである。ここで戦術的な行動をとれないのが他のイレギュラーエンカウント、ハーメルンの笛吹き男との違いだ。
狂雲は空へ向かおうとするパンをふんだ娘を叩き落とす。既に変化の術は解け、卑猥な八本首の多頭竜が姿を現していた。自分の邪魔をされたことへの怒り、そして禍々しい狂雲の姿を嘲笑う。
「汚らわしいわ。醜いわ。なんとおぞましい。私の邪魔をするなんて無知と傲慢なんでしょう。更に好色も極まるなんてなんて汚らわしい。流石はあの人間のモンスターといったところかしら―――分際をわきまえずないその傲慢を叩き潰すわ!!」
ただのモンスターがイレギュラーエンカウントである自分にかなうわけがないと嘲笑う。相手にする必要もない。再度空へ追いかけようと―――狂雲が自分の胴体の上にいやだひめを召喚する。絵面は最悪であるが、相手を釘付けにするには最良の一手。いやだひめは相手側のヘイトを自分へと向ける能力を持つからだ。意識を向けざるを得ない。自分の思い通りにならないことにパンをふんだ娘は地団駄を踏む。
「そんなに死にたいなら、貴方から先に殺してあげるわ。」
「ハッ、返り討ちにしてやるよ」
「―――いつもよりは待遇がいいけど、なんでこんなところに呼ばれるの私」
いやだひめの愚痴を狂雲は聞き流し、傲慢な娘に攻め込む。―――スキルを使わせてはならない。この戦闘に勝利するための大前提。使う暇を与えないほどの連撃とステータスの差で周囲の地形を変えながら打ち据える。
砕け散るパンをふんだ娘―――その場にリポップ
砕け散るパンをふんだ娘―――その場にリポップ
砕け散るパンをふんだ娘―――その場にリポップ
……際限がないほどほどこれを繰り返していく。最善の結果を維持しなければ押し潰される。これがトラ達の共通見解。細い綱を渡り切らなければ全滅が待っている。そもそも無限に眷属を召喚系のスキルでもないくせに直ぐにアバターをリポップするスキル自体がふざけている。
殴り続けられ擦り潰されるたびに憤激で表情が歪む。スキルを駆使し防ごうもそれを許さぬスピードで叩き潰す。自分たちよりも強敵に全力を出す機会を与えてはならない。全身全霊をかけて叩き潰し続ける。反撃で傷つく体を強靭な肉体と生命力が回復させる。致命的な一撃にならないように立ち回り擦り潰し続ける。
沙希と諒が本体を見つけ出し、それを叩き落すまでそれを続けなければならない。精神を削り続ける1時間がはじまった。
空では激戦が繰り返されていた。否、死闘というべきか。数多の鳥たちを装備化スキルを使用したマスター二人と50体の龍燈で削り続ける消耗戦だ。強力な攻撃魔法は龍燈しか持っていなかった。
既にトラ達は龍燈から降り立ち、鳥たちを足場に切り込んでいた。武装による強化で鳥よりも戦闘力は上回っていたが、相手は数が多い。クルッジを持ったトラが群れに大きく風穴を開ければ。二刀を持った真那が傷ついた鳥たちを仕留めてゆく。仕留めきれなかった残骸を龍燈が魔法で焼き払う。声も合図もない―――龍燈に対し真那はテレパシーで指示をしているが――連携で敵陣を削り取る。
本来コレは悪手である。無限召喚される眷属に対しては無限召喚する眷属で対応するのが常道である。鳥の飛行能力に対応できる眷属召喚ができないトラ達は自分たちでの処理をいやおうなしにやらされていた。それを理解しているククリは不安を覚える。それはダイレクトにテレパシーでトラへと伝わる。ククリの不安を和らげるために安心材料の説明を説明し始める。
『ククリ、安心しろ。オレと真那は魔道具で戦闘力を強化しているから召喚で呼ばれたCランクモンスターよりは戦闘力は上になっているよ。』
そんなトラの言葉に不安なんて感じていないと振り切りようにククリは言葉を発する。望んだ戦場である。不安など覚えていいはずがない。
『ふ、不安なんて思ってません。ただ、敵の数が多くて、ちょっと……』
『まぁ、それは確かにね。―――でも、オレと真那は強いんだ。それにまぁ、爺さんから蜂の群れを相手に戦わされたこともあるしね』
安心させるようにククリを説得したトラは、クルッヂを片手で持ち直し、普段使っている鋸のような槍を取り出す。槍の二刀流。攻撃は少し荒くなるが殲滅速度を上げることを優先するべきだろう。
殲滅速度を加速させる。狂雲が想定以上にうまくやっている。今のうちに減らさなければ先がない。二本の槍は意志を持っているかのように軌道を自在に変える。ジグザグの軌道を描き鳥達を切り裂く。切り裂かれた鳥たちを龍燈が焼き払う。ポジションチェンジ、真那はトラから少し離れた場所の鳥たちの始末を始めた。
追加召喚ができない状態をいつまでも継続できるはずがないのだ。上手くいっているうちに処理を加速させる。悪手を強引に奇手へと切り替えなければこの戦いに勝利はできない。いや、正確には足止めができないというべきだろうか。トラ達がいくら頑張ったところでそれは勝利に結びつかないのだ。全ては諒と沙希の二人にかかっていた。
恐らくはそれをパンをふんだ娘は分かっているのだろう。屈辱的な状況にもかかわらずトラ達に付き合い戦うということは勝ち目が見えているからである。最善を維持しなければ速攻で潰しに来るだろう。
諒達がうまくいかなかった場合の第二の矢のためにも殲滅速度を上げて鳥の数を減らす必要があった。
勝利を手にするための鍵はいまだ見えない―――心を削る消耗戦を継続させなければならなかった。
息が上がる。それをポーションで誤魔化す。パンをふんだ娘との戦闘は想定通りの膠着状態が1時間以上続いていた。プランはすでに崩壊しており、状況を強引に打破するかそれとも現状を維持するか。その判断に迫られていた。とはいえ、状況を打破するプランを立てるにしても情報が足りない。愚痴りそうになる心を叱咤しつつ、次の手を考え始めた。
真那の様子をちらりとみる。彼女もまだ限界ではないが、そろそろ次の手を打たなけれ不味い。とはいえ、まだ情報が不足している。起死回生の一手を撃とうにも本体の場所がわからなければ話にならない。
足元より肉が潰れた音がする。足場が消える。―――どうやら間違って死にかけの鳥に足場にしてしまったようだ。龍燈が足場へとフォローに回る。
致命的なミス。故に戦況は動いた。
――トラへと意識を向ける鳥達。それをさせまいと龍燈達が焼きつくそうと燃え盛る。
――鳥たちを切り裂き、トラをフォローしようと速度を上げる真那
――トラに視線を向け動揺する狂雲
――地上へ落ちるトラの目は巨大なスズメバチが空へと飛んで行っているのをとらえた
その隙をパンをふんだ娘は逃がさない。いやだひめにヘイトを割かれながらも己を侮辱した不遜な男へと瞬間移動をする。絶対攻撃のスキルを使用。トラの体を拳で貫こうと振り下ろす。
離れている仲間たちは間に合わない。走馬灯のようにゆっくりと迫りくるパンをふんだ娘を視界にとらえたトラはククリと狂雲を送還。クルッジを盾にしようとと手を動かし、パンをふんだ娘によって体を貫かれる。
「トラ!!」
真那の悲鳴が響く。その悲鳴を心地よさげにパンをふんだ娘は聞き、傲慢な人間を嘲笑おうと目を向け―――地上へ向かって殴り飛ばされた。
―――即死しなかったトラが口からあふれてくる血を飲み込み。狂雲とククリを再召喚したからだ。空中に召喚された狂雲は怒声を上げてパンをふんだ娘を地上へと自分もろとも地上へ叩き落す。トラはポケットからポーションを取り出し、震える手―――ククリがポーションを奪い、泣きながらトラの傷口へと振りかける。
苦しむ顔が見たかったのだろうパンをふんだ娘の一撃はトラを即死させることはなくポーションで十分に癒えるレベルであった。
「ククリ装備化スキルを使用してくれ」
ククリは泣きながら返事をせず、装備化スキルを使用してする。その時になって追いついた龍燈と真那が空中でトラを回収する。トラのやった行動に真那は激怒し怒鳴りつける。
「トラ、何やっているのよ!!」
「マスター、どうして……」
怒り狂う真那、装備化スキルを使用した後も泣きじゃくるククリ、迫りくる鳥達への対処をしながら、端的に答えることにした。自分のミスではあるが長々と話ができる状況ではない。
「悪いりぃ……狂雲とククリをロストすることを避けるためだ。二人をロストしたらそこで詰むからな」
その言葉に二人は黙った。―――納得したわけではない。納得できたわけではない。問い詰めるのを後回しにすると考えただけだ。とりあえずは納得してくれた状況にトラはほっと安心しつつ、言葉をつづけた。
「あと少しだけ耐えればいい。諒姉のカムイソワが恐らくだけど本体の場所に向かって飛んで行っていたのを見た。あと少しで終わる。」
カムイソワとはアイヌ神話に伝わるスズメバチのカムイだ。その強力な毒は同じ場所を二回刺せば大抵の敵を仕留められるらしい。そして、地上に落ちたパンをふんだ娘のアバターが砕けたままの姿で悲鳴を上げる。本体が仕留められたのだろうか苦しみもが気ながら憎悪の声を上げる。
「傲慢!!傲慢!!傲慢!!なんて傲慢なの!!死を受け入れないなんて!!―――許さないわ。絶対に許さないわ!!」
トラと真那の目の前に小さな灰色の鳥が現れる。トラと真那がそれぞれ手に取り、憎悪をぶつけるパンをふんだ娘を見下ろす。既に勝敗は決した。相手の戯言など聞かなくてもよいだろう。トラが狂雲へとどめを刺すように指示をする前に真那が鬼神大王波平行安を投擲する。その一撃でパンをふんだ娘は頭を砕かれながらも憎悪と呪いの言葉を吐いた。
「―――次は殺すから」
パンをふんだ娘が潰れると地獄を再現したい世界が砕け散ってゆく。ゆっくりと龍燈が地面に降り、トラが安堵の息を吐いた。真那も疲弊しているのかダルそうな声を上げる
「トラ、ポーション頂戴、流石に疲れたわ」
真那の言葉にトラも苦笑い。残っているのはローポーション1本だけだった。それを真那に渡す。
「ほらよ。」
真那はそれを受け取り飲もうとし、ポーションを取り出さないことに首を傾げ問いかける。
「トラ、あんたの分は?」
「オレはさっき使用したばかりだよ。」
そういうと納得してポーションを飲み干す。とはいえ、流石に長期戦。ポーションの在庫はぎりぎりであった。もう少し所持数を増やした方が安全かもしれない。そんなことを考えていると真那から声がかかる。
「諒姉達と合流して戻りましょう。―――あんな無茶をした理由を問い詰めないといけないし」
真那の声が冷え冷えとしたものに変わる。ククリも怒っているのか真那に同意するような意志をテレパシーで返してきた。トラは戻り次第みっちりとお説教をされるのだろう。生き残ったのは良いが気が重い。いずれにせよ、イレギュラーエンカウントに会うという最悪の日はこれで終了した。それにしても何故守護者の間でイレギュラーエンカウントが発生したのだろうか?その事例をトラは聞いたことが無い。異常な事態にいやな予感を覚えた。
沙希と諒の様子も書いた方が良かったかなぁ……
狂雲が女の子モンスター相手なので戦闘力2倍になるため、どうにかやりあえました。
本当はパンをふんだ少女は強いはずなのですが、頭が良くないためこんなことになっております。
(戦術的な立ち回りのできるハーメルンの笛吹き男の厄介さよ)
空中戦はもう少し語彙力があればいろいろと書けたのだろうなぁ。暇を見て書き直すかもしれません。
最後にスズメバチのモンスターについてデータを開示します。
この子は諒のカードです。
【種族】カムイソワ(スズメバチのカムイ)
【戦闘力】800(初期400+成長400)
【先天技能】
・神の蜂:ヒグマを獲るほどの巨大なスズメバチ。飛行能力を持つ。生命力、防御力、筋力を2倍にする。眷属である巨大なスズメバチを召喚する(無限召喚)
・二撃必殺:強力な毒針を持つ。同じ場所を2度刺された相手は死亡する。
・中等状態異常魔法:
【後天技能】
・罠感知:
・罠解除:
・騎獣:
・中等攻撃魔法:
・武術: