中学生でも冒険者になれるって本当ですか?   作:猫の手

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沙希の後始末です。
いろいろ意見はあると思いますがこういう結論に落ち着きました。


21話:後始末と学校行事

 

 機織淵のリビングはシルキーの青江があやめの許可を取り付け、自分の美意識の元にコーディネートをしていた。調度品こそ少なめではあるが、センスの良い洋間となっておりチームメンバーが集まり、雑談やミーティングをする場所としては十分過ぎるほどだ。

 

 そんなリビングの一角でそれにふさわしく無い空間が存在していた。絨毯を折りたたむき出しになった床。トラはそこで正座をしていた。首には『私は戦闘中に装備化しているモンスターを送還したバカ者です』と書かれたプラカードを掛けられおり、更には明らかに重そうな石を太ももの上に置かれている。

 目の前には真那とククリが仁王立ちをしており、延々と説教続けていた。

 

「トラ、言いなさい?なんであんなことをしたの!!」

 

「マスター、なんであんなことしたんですか!!」

 

 この質問は何度目であろうか。送還するのは戦術的に正しい判断だったと今でも考えている。だが、いくら魔道具で戦闘力が補強できている状況であっても自分のモンスターを送還して相手モンスターの攻撃を受けるなど狂気の沙汰である。即死の可能性が低かろうが何だろうが、普通に考えてその選択肢を取ることはあり得ない。

 

 ソファーに座って眺めている爺さんが頭を抱えていた。沙希は諒ですら呆れ顔である。弁護は期待できそうにない。故に必死になってトラは自分の判断を説明する

 

「いや、だから、ククリと狂雲の動きが鈍ったり、ロストする可能性を少しでも抑えたくて―――」

 

「私たちは一撃でロストしたりしません!!」

 

 更に火に油を注ぐ結果になった。

トラとしてはククリの言うことも分かるが、相手は絶対攻撃を使用していたのだ。特にククリは二重でダメージを受ける可能性が高く。それだとロストの可能性も低くなかった。とはいえ、マスターを危険にさらしてしまったカードの怒りは十分に理解できるので、反論が思い浮かばない。

 離れたテーブルに座っている爺さんは呆れ顔でぼそりと呟いた。

 

「自業自得じゃ、そのまま怒られておれ。」

 

 流石の爺さんも呆れたような視線をトラに向けていた。青筋が立っているのを見るとあとで爺さんからも別に られそうである。諒も沙希も呆れた視線をトラに向けており、助けてくれる気配はなかった。そっと視線を向けると気が付いたのだろうか。無情の返事を返されてしまう。

 

「諒さんはそのまま怒られたほうが良いと思うよ」

 

「―――恐慌に陥った私が言うのもどうかと思うけど、君は怒られた方が良い。」

 

 我がエースである狂雲も他の面々と同意のようである。四面楚歌とはこの状況か。なるほど項羽も絶望するわけである。そんなくだらないことを考えているとククリと真那の目が更に据わっていた。どうやら、姉達に助けを求めたことに感づかれたようだ。トラは必死になってよい口実を考えようとあが―――

 

「まだ、反省されてないんですね。」

 

「そうね。徹底的にやらないとダメ見たいね。」

 

 ククリと真那の絶対零度の返事に現実の無常さを悟った。青江は何も言わずに追加の石をトラの太ももに乗せる。どうやら彼女もお冠らしい。―――ここから1時間トラにとっての地獄の時間が開幕した。当然だが誰も助けてくれることはなく、途中参戦した爺さんの攻撃によりトラは生ける屍と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人の説教により生ける屍とかしたトラ。ロジックとしては間違った行動ではないが必ずしも正しいわけではない行動。爺さんから見てもギャンブル要素の強いと判断をせざるを得ない行為と指摘され、反論の材料、根拠も奪われた。理論面、感情面からの説教と叱責が続き、精も根も尽き果ててダウン、一応このような無茶はしないという約束を取り付けたため解放となった。

 

 テーブルの上には香り高い紅茶が並べられているがトラだけ白湯になっている。青江はトラに対して分かりやすく怒っていることをアピールしていた。―――地味に凹む対応である。ちなみにトラは足がしびれており立つができない。床にうちあげられたアザラシのように寝そべっていた。

 

 トラへの叱責が完了したことで次の話題に移る。沙希の今後についてだ。沙希と諒、二人での話し合い、というよりもどうするかは沙希は決めているようでそれについての確認になっていた。

 諒に促され沙希がゆっくりとした口調で自分の考えを語りはじめた。

 

「こんな無様を晒したんだ。―――やめるべきだと思う。」

 

 沙希は淡々と独白するように語る。爺さんと真那は真剣な面持ちで聞いており、諒は不安そうにしていた。

 

「最初はね。父親に言われて始めたんだ。特に冒険者になる気もならない気もなかった。そんな宙ぶらりんな心持のまま冒険者を今まで冒険者を続けていたんだ。」

 

 プロ冒険者という肩書は人気の職業ということもあり、名誉な部分もある。エクスプローラ・ストアを営んでいる家の娘が至ったのであれば非常に自慢ができるだろう。そういう親のエゴで冒険者になった人間も割といる。そういう人間は割と死ぬことが多い。良いカードを与えられすぎて冒険者としての技量が育たないまま無理ができてしまうからだ。

 

「でもね。いざ止めると考えて今までを振り返って、未練ができた。」

 

 未練という単語に爺さん腕を組み。真那の眼差しは鋭さを増す。諒は不安が混じった真剣な眼差しを向ける。トラは轟沈した状態のまま話を聞いていた。足のしびれが取れないので、まだ立てそうになかった……

 

「だから、最初からやり直そうと思う。100万円でカードを買って、Fランクダンジョンの探索から始めようと思う。」

 

 その言葉を聞いた爺さんは顎をしごく、暗かった諒の表情は明るくなり、真那の緊張感はなくなった。トラも止める必要性のない妥当な判断に胸をなでおろす。そして自分の最後の仕事とばかりに申し訳なさそうに諒に告げる。

 

「諒、私はチームから抜けるよ。後のことは君に任せた。ごめん。不甲斐なくて―――」

 

 諒は沙希を抱きしめると、首を横に振る。

 

「もし、沙希が不甲斐ないんだとしたらさ、私の責任でもあるんだよね。仲間なのにさ。どうにかしてあげられなくてごめん。―――チームに名前は残しておくから、ちゃんと戻ってきてね。」

 

「ん――」

 

 諒の言葉にに込められた温かさに沙希は涙を流す。爺さんはその二人を満足げに見ていた。爺さんから見ても今の回答は合格点なんだろう。トラは痛む足に閉口しながら、諒と沙希を見上げていた。

 

 未練とは仲間のことなんだろうか?なんとなくそう思ったがトラは問いかけられなかった。

 

 そして、沙希は本日自宅に帰ることを選択した。一刻も早く再出発をしたいからだそうだ。トラ達は地上へ連れて行き見送り、予定通りのダンジョン探索を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Cランクダンジョン探索の最終日、最後の探索を終えたトラは機織淵の自室で今回のダンジョンの特徴と地図を纏めていた。ローグダンジョンとはいえ地図などの情報は今後の資料として役に立つ。経験を可視化することは冒険者を続けていく中で必要なことだと爺さんに口を酸っぱく言わている。

 

 それと並行して、金霊に命じてネットでパンをふんだ娘のこと、守護者の間で発生したイレギュラーエンカウントについて調査をさせた。しかし、出てくるのは当たり障りのない知っている範囲での情報ばかり、前例がない、若しくは極端に少ない事例なのだろう。

 

 机の上に並べられたカードを見る。蓑草鞋、金霊、川姫、虚舟、やまらのおろち―――…どれも優秀で強いカードたちではある。だが、今回の件で弱点が明確に判明してしまった。

 

 まず空を飛ぶ敵への対応力のなさ―――幸運に龍燈を入手できたから対応はできたが、無ければ詰んでいたろう。

 次に無限召喚系への対応力のなさ―――力技で押さえたがあまり良い結果だったとは言えない対策は必要である。

 3つ目は遠距離攻撃方法の少なさ―――銃では通じない敵が増えてきた魔法が使える奴を探すべきだろう。

 

 他にもいろいろあるが主に不味いのがこれらである。Cランクのやまらのおろちを手に入れて天狗になっていたようだ。少なくとも無限召喚系はやはりと思っていたが非常に強い。1個用意しなければ死ぬだろう。ゴールデンウイークの探索が終了したら探さなければならない。Webからダウンロードしていたカードのリストを引っ張り出す。開いて調査を始めようとしたとき、襖がノックされる。

 

「マスター、お爺様が呼んでいるわよ。」

 

 襖の外から聞こえる声。キクリが迎えに来てくれた。普段はククリが来るのだが珍しいこともある。資料を片づけてひとまとめに置くと、トラは外にいるキクリに対して返事をする。

 

「ありがとう、キクリ。」

 

 そういって立ち上がるとデータをセーブしディスプレイを閉じる。カードを手に取り上着のポケットに入れて祖へ襖を開く。部屋の外にはキクリが待っていた。ククリとよく似た造形だが肌が浅黒く、雪のように白い髪であった。トラは内心P2カラーという単語がよぎるが止める。テレパシーが使えるのだ。どこでどう漏れるか分かったものではない。

 

「マスター、行きましょう。特別に私がエスコートしてあげるわ。」

 

「ああ、頼むよ。」

 

 ククリの影法師であるキクリはククリと張り合いたがる。もう一人の自分への負けん気なのかは分からないが、ククリとのバランスを考えて付き合わないとククリが不機嫌になるので大変だ。

 

 青江の手によって魔改造されたリビングは日々姿を変えていた。青江の作ったオリジナルにあやめの美意識が混じり始めていた。このリビングを和と洋をどうにか融合させようと悪戦苦闘するさまが見て取れた。この館の主人であるあやめは新しい物好きな性質なのでノリノリで部屋の改造に協力している。ちなみにマスターであるトラの意見が通ることはない。

 

 この部屋の掃除と管理のために、ククリにメイドスキルを仕込もうとするのはやめてほしいのだけど……覚えると便利なスキルのため、反対ができない悲しみがあった。

 

 リビングのドアをノックした後、キクリが開ける。彼女が最後までエスコートをするつもりらしい。部屋の中に対して少し幼い感じの声で部屋の中のメンバーに声をかける。

 

「皆様、失礼します。マスターを連れて参りました。」

 

 部屋の中には全員揃っており、キクリがしっかりとエスコートをした様子を見た爺さんが好々爺の表情を浮かべ労いの言葉をかける。

 

「ああ、わざわざ済まぬの。あっちのテーブルにお菓子を用意してあるから食べなさい。」

 

「ありがとうございます。お爺様」

 

 キクリのがお礼を言うと爺さんの表情がさらに崩れる。まるで幼い孫娘を見ているかのような様子だ。先にお菓子を食べていたククリの隣にキクリが座り、テーブルでお菓子を食べ始めた。生暖かい目で見ているトラに気が付いたのか爺さんは咳ばらいをする。

 

「トラよ。遅かったの」

 

 取り繕う爺さんに対し、トラは意地悪気に返す。

 

「悪いな爺さん、今回の探索の記録を纏めてたら気が付いたら―――な。あと、今更取り繕っても遅いぞ。」

 

 トラの指摘に諒と真那が全くだと頷く。孫娘の無常な指摘にぐうの音も出ない爺さん。ちなみに孫娘たちの指摘が無情なのにも理由があった。今回の財貨―――そのうち魔道具の9割が所持禁止の魔道具だったからである。つまりは当初のルールにより爺さんの取り分になる。なってしまうのだ……

 ルールはルールだが、爺さんもさすがにバツが悪かった。故にカードについては遠慮することにした。

 

「まぁカードはわしが一番最後に選ぼう。3人で先に取ると良い。」

 

 その言葉に孫娘たちの機嫌もよくなった。譲ると判断をしたのは、爺さんとしては既に自分のカードは揃えていたため、無理に入手する必要もなかったということもあるが……

 

「ありがとーお爺ちゃん。諒さんは☆4を目指すつもりだからありがたいよ。」

 

「ありがと、戦力の不足を実感していたからほんと助かるわ。」

 

「助かるよ爺さん。真那の言う通りな。あのクソ女に目をつけられた以上は戦力は早めに拡充させないとヤバイしな」

 

 それぞれが爺さんに礼を言う。特にイレギュラーエンカウントから魔道具を受け取ったトラと真那は戦力の拡充が急務である。テーブルに乗った魔道具を脇にどけ、カードを並べる。入手したカードは超幸運なことに手に入れることができたBランク1枚、Cランク5枚(初日の2枚を含む)だ。ビギナーズラックのおかげで大収穫であった。爺さんの感覚からするとCランクのカードは2、3回踏破するぐらいで1枚ペースらしいので、今回はかなりの幸運だったのだろう。

 

 さて、カードの分配である。公平な☆割りにより最初にカードを選ぶ権利は諒姉にあった。

 そして、肝心のBランクカードは閃電娘娘。封神演義に出てくる十天君の一人に数えられる仙女だ。特に金光陣は強力なスキルということで知られている。

 

 当たり前ではあるが諒はBランクのカードを持っていく。その公平な結果を見たトラは早く☆3になろう……そう心に誓った。真那も同じ気持ちだったらしい。恨めしそうにBランクカードを持っていく諒をみていた。

 

 残されたCランクカードは付喪神、人形神、厄神、龍燈、橋姫

 

 このうち人形神はウンコッコスキルの零落せしもの付きである。実質4枚から選ぶことになる。どれも有用で面白いカードばかりで目移りしてしまう。とはいえ、最初にどれを選ぶかを選択するためには真那とのジャンケンに勝たなければならなかった。ちなみにトラは真那にジャンケンで一度も勝ったことがない。

 

 絶対の自信を持つ真那はニヤリと笑う。トラは今度こそはと心を奮い立たせ。真那との真剣勝負に挑む。トラが始めるぞとばかりに掛け声をかける。

 

「さいしょは」

 

 不敵に笑う真那にトラは天に運を任せ。――…祈る。一回も届いたことはないけれど。

 真那が迎え撃つぞとばかりに掛け声を続ける。勝利への絶対の自信を覗かせていた。

 

「ぐ~」

 

 トラは渾身の思いを込めて、掛け声と共に腕を再び上げる。今回はチョキ、これで勝つことを誓う。

 

「じゃんけん~~~」

 

 今度こそは初勝利を収める。その誓いとともにトラは腕を振り下ろし―――

 

「「ぽん!!」」

 

 二人同時に掛け声をかける。結果は、無情にも真那はぐーであった。チョキのトラはガッカリとうなだれる。連敗記録が更新した瞬間であった。

 

 真那は満足そうに頷き、付喪神のカードを手に取った。自身の武術に絶対の自信を持つ真那であればまぁ選ぶだろうカードだった。鎧武者をランクアップさせて、適当な武器防具を取り込ませればいいのだ。嬉しそうな真那を横目にトラは残されたカードを見る。どれも悪いカードというわけではない。

 

 さて、どれを選ぼうかと考えていると、ククリがトラのそばにやってきた。人形神に手を伸ばし、トラに差し出す。トラは戸惑う。うんこっこスキルだったというのもあるが、カードモンスターがランクアップ先を選ぶというのは異常事態だ。

 トラの様子にククリは少し困った表情を浮かべたが意を決し自分の意志を告げる。

 

「マスター、このカードを選んでください。」

 

 明確に告げるククリ、トラは少し悩む。別にククリが欲しいというのであればそれを選んでも問題はなかった。それがうんこっこスキル付きでさえなければ……とりあえず、人形神の能力を確認する

 

 

【種族】人形神

【戦闘力】300

【先天技能】

今度は何だ:どんな願いでも叶えるご利益を持つ。呪われた幸運を与える。マスターへの好感度で出力増減。

千の霊魂:その身には千の霊魂が宿るという。亡霊を召喚する(無限召喚)

憑きモノ:祝福型の装備化スキル。他のカード、あるいはマスターへと呪い/祝福を与えることで、自身の戦闘力の半分を加算させることができ、また自身の後天スキルを共有する(マスターへの装備化の場合はすべての戦闘力とスキルを共有できる)。マスターと深い縁があるカード、人物であれば複数対象指定することが可能

 

【後天技能】

零落せしもの:本来の存在より零落している。戦闘力を常時100マイナス、スキルの欠落やランクダウン。

魔力回復:

初等魔法使い:

 

 

 うんこっこスキル付きではあるが悪くないカードである。零落せしものは戦闘力を下げたり、スキルの欠落を与えるマイナススキルであるが割り切れば使えないことはない。無限召喚のスキルを持っているのが何よりありがたい。なによりもククリが希望しているのだ。このカードを選ぶべきだろう。

 

 折角の権利をうんこっこスキル付きを選ぶことに忸怩たる思いがあるがトラは人形神を選ぶことにした。悔しくはないのだと自分を慰める。トラのその様子を見て爺さんは苦笑を浮かべる。流石にうんこっこスキルのモンスターカードではフェアな取引とは言えない。故に―――

 

「トラよ。もう一枚カードを選んでよいぞ。流石にフェアな取引とは言えぬからな。ただし、人形神の分だけ魔道具の分け前は減らすぞ」

 

「まぁ仕方ないわよね。流石にそのスキルのカードは―――ね。」

 

「うん、諒さんが酷く悪人に思えるから、そうしてもらった方がいいかなぁ」

 

 流石にうんこっこスキル付き1枚は良心が咎めたらしい。トラとしてはとてもありがたかった。流石にCランクダンジョンをクリアーした報酬がうんこっこスキル付きの1枚では辛かった。そうしてどれを選ぼうかトラが考えていると、今度はキクリがやってきた。トラの裾を引っ張って一枚のカードを指し示す。

 

「マスター、アレを選んで。」

 

 キクリが指したカードは厄神。どうやらトラに決定権はないらしい。疲れたように嘆息するがキクリは真剣な面持ちでマスターに忠告をする。

 

「人形姫を使うなら、アレを選んで――お願いだから。」

 

 からかう様子のないキクリの言葉にトラは少し考えて頷く。カードが必要と言っている以上それは運命のようなものだろう。

 

「分かった」

 

 そういって厄神を手に取る。キクリは安堵をした表情を浮かべ、ククリは少し気まずげな表情を浮かべていた。そして、残りのカードは☆割りの理により、爺さんの取り分となった。―――トラと真那は☆3に早くなることを心の底より誓った。

 

「残りは魔道具じゃの。ちょうど頭数で割れるものは割ってよかろう。」

 

 そういって爺さんは2セットあった宝籤のカードを5枚ずつ分ける。残りのアイテムについては、公平な☆割りで分けていく、トラがどうにか確保できたのはカードホルダーとヴィーヴィルダイヤ1個だった。

 

 トラは強く強く☆3を目指そうと誓った。

 

 財貨の分配が終了し、一息ところで、諒から今後の予定、冒険部の学校行事について説明がはじまった。

 

「真那、トラ。6月にモンコレの県大会があるから参加お願いね。あとこれ、強制だから断れないの。ごめんね。」

 

 渋面を浮かべるトラと真那。この県大会、主催が教育委員会のため商品が出ないのだ。その癖、大会の委員会はカードについて補償すらしないらしい。出るだけ損な大会。強制とはいえ、ブッちしたところで問題はないだろう。それを口に出そうとするが、タイミングよく諒が説明の続きを始める。

 

「一応、学校がロストしたカードについては補填してくれるわ。―――じゃないと誰も出ないし、自殺とか殺人事件の再来とかさせるわけにもいかないしね。」

 

 過去にあった有名な事件である。無理やりに出場させられてカードを全損し自殺、対戦相手を殺害した生徒が出たのだ。しかも複数。流石にこれは社会的な問題になったが全ては個人の問題とお偉いさんは突っぱねて大会を継続をし続けた。仕方ないため、一部冒険部を持つ学校と冒険者協同組合が相談し、生徒たちのロストしたカードを彼らが補填することにしたという。

モンコレ県大会は損しかない大会の代名詞と成り果ててしまったのだ。

 

 学校側が損害の補填をするという言葉にトラと真那は話を聞く気になったらしい。――…最低限、損が出ないというのは良いことである。とはいえ、釘をさすのは忘れない。

 

「全国大会は断るよ。」

 

「学校側もそれに出ろとは言わないから安心して」

 

 学生たちも何のメリットもない大会に時間を掛けれられるほど暇というわけではないのだ。ちなみに全国大会はもう数年単位にわたって開催されていない。グラディエーター志望はTV局主催の大会に出るので、県大会は優勝したとしてもキャリアにならない。存在価値のわからない大会といわれている。

 

「じゃぁ、説明を続けるね。使用できるカードに制限がかけられるわ。Dランク1枚、Eランク2枚よ。これは学校側の予算の関係ね。」

 

「まぁ、そりゃそうよね。」

 

 それぐらいなら、冒険者協同組合のサポートがあればどうにかなりそうだ。それを超えると予算が厳しそうだ。ぎりぎりで運営しているという事実になんでそこまでするんだとも思う。

 

「紳士協定という奴じゃな。主催者の連中はもっとランクの上のカードを使えと言っているらしいがの無視してよかろう。」

 

 爺さんの呪っても呪いきれないという言葉にトラと真那も絶句してしまう。補償もしないのに面の皮が厚すぎる。諒は爺さんの言葉に苦笑しながら最後の説明を行う。

 

「あと、なるべくモンスターは殺さないこと。試合は個人戦のみよ。」

 

 トラもそりゃそうだろうと頷く。モンスターを殺せば学校の予算は大打撃である。面倒くさいとはいえ、補償はするのだ流石に出なければならないだろう。トラは嘆息する。

 

「了解。だけど、オレはEランクカード確保しないとなぁ………」

 

 トラの言葉に真那も同意と続け――一つ付け加える

 

「出来ればDランクのカードも普段使いしないやつ用意した方が良いわよ。冒険者を狙った殺人鬼もいたみたいだし」

 

 魚みのりの件は記憶に新しい。それを考えると自分の戦術をさらけ出すのも危険だろう。Dランクカードも入手する必要がある。ちょっと面倒だ。

 

 Dランクカードは気にしなかったけど、分けてもらうべきだろう。そう考え、爺さんに相談をする。

 

「さっき分けなかったDランクカードなんだけど1枚づつ、オレと真那に譲ってもらえると助かるんだけど……」

 

 トラの言葉に爺さんは苦笑する。そのぐらいならば問題がないだろう。先ほど分けたアイテムたちに比べれば誤差のようなものである。

 

 トラは大禿を、真那は女天狗を選んだ。大禿を選んだトラに真那は首を傾げる。真那の視線に気が付いたトラは恐らく感じているであろう疑問に答える。

 

「ああ、今魔法使い系のカードが足りなかったから、それが補えるカードを選んだんだ。」

 

「ふぅん、そういう意味だと確かにそのカードが良いわね。」

 

「だろ?真那は今後の強化も考えてか……」

 

 真那の言葉に軽口で返事を返す。真那はトラの返事に頷く。大禿は先天スキルで初等ではあるが仙術が使用できる珍しいカードである。他のスキルは戦闘には向かないのだがそれだけでも十分使用を検討するに値すると考えた。真那の女天狗は白狼天狗の強化先としてだろう。今後の強化も考えるとあまりは外れたカードを用意するのは良くないと考えるのも正しい考え方といえる。

 

 財貨の分配も終了した今、そろそろ帰るじか――――強化?、ランクアップ?……マイナーチェンジ!?

 

「あ!!」

 

 トラの脳裏に電流が走るEランクを作らなければならないんなら折角だFランクカードを山ほど集めて後天技能を盛りまくったカードを作ればいいんじゃないか!!普段なら、絶対にやらない誰もが思いつくが誰もやらない馬鹿なことである。とはいえ今回は県大会のためという大義名分がある。失敗してもいいじゃないか。祭りの準備なんだから

 

 少しだけニヤケてしまう。祭りの準備は楽しいものになるだろう。そんなトラを爺さんたち三人は冷めた目で見ていた。コイツまた何か変なことを考え付きやがったよという目である。3人を代表して真那がツッコミをいれた。

 

「トラ、また変なこと思いついたんじゃないでしょうね?」

 

 そんな真那に今思いついたアイデアを試したくて仕方がないトラ。変な誤解を与えないように差し障りのないと思われる回答をする。

 

「悪いことじゃないさ。祭りの準備―――使用するモンスターについて面白いアイデアが浮かんだだけだよ」

 

 トラのその意見を聞いて真那は面白そうに笑う。個人戦であればトラとぶつかることもあるだろう。少しばかり真面目に準備が必要と真那は考えた。全力でトラにぶつかる機会などあまりないのだ。真那もルールの範囲内で全力で戦える準備をすることにした。

 

 

 





冒険部という部活動だけに県大会はあるんだろうなと考え設定しました。
学校の大会なので商品は出せないだろうなということと、きっと予算の問題でモンスターカードをロストしても補填できないだろうなぁと考えたらこんなことに

モンスターカードはDランクから数百万の資産なので学生がロストするとトラブルは発生すると考えてります。それが賞金目当てであればまだ納得の使用もあるのですが、部活で強制となればそれこそ一大事にしかならないかぁと考えてます。
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