中学生でも冒険者になれるって本当ですか?   作:猫の手

25 / 25
県大会への下準備です。

話は特に進んでおりませんがこういう回もあるということで

色々語っておりますが、オリジナル設定ということでご理解ください


24話:県大会の下準備②

 

 機織淵の封印されたリビングルーム。青江とあやめが己のセンスを競う様に悪魔合体を起こした内装はもはや混沌以外何物でもないといった風情だ。封印されたのも仕方ないだろう。青江とあやめの競争はいまだ続いており、己のセンスで相手のセンスを飲み込もうとしていた。マスターであるトラがこの部屋以外での競争を禁止しなければ機織淵自体が混沌の内装に埋め尽くされたことは想像に難くなかった。

 

 ククリは青江の教育によって生えてしまったメイド見習いのスキルを使い、混沌とかしたリビングルームの掃除をしていた。ちなみに他の部屋の掃除は終わっている。一番めんどくさいこの部屋を最後に回したのだ。

 

 和風と洋風が悪い形で混ざり合ている部屋は前衛的な芸術とでもいえるこの部屋にはとても客は迎え入れられないだろう。混沌としすぎて掃除が大変なのでククリの個人的な意見としてはこのまま封印をしておきたかった。

 

 ククリは現在機織淵のハウスキーパーのような役割をしている持ち主は機織り部屋に閉じこもって機織りを続けているため、管理をする気がないのだ。他の面々もおおざっぱすぎたり性格的に向いていないのでやっていない。狂雲は元さくぞうすだけあって、拭き掃除はお手の物である。廊下の掃除だけは彼にお願いをしている。

 

 少し離れた部屋でガチャで爆死したものがあげるような絶望的な悲鳴が聞こえた。今日一日ですでに10度は聞いた声。トラの部屋の方向を見て掃除を止める。そして、表情が少し緩み。思いもよらず声が漏れた。

 

「マスターは仕方ないんだから―――もっと私を頼ってくれてもいいのになぁ」

 

 呆れが混ざっているがそれよりも喜色が多く混ざった声である。大急ぎで掃除道具を片づけるとスキップでもしそうな足取りでトラの部屋へと向かう。人形神は人間の願いを無理やりにでも聞き取って叶える存在である。ランクアップをしたククリはその影響を受けていた。直接的な害はないが、頼りすぎるといろいろと問題が起きるのが、珠に瑕である。

 

 嬉しそうに鼻歌を歌いながら、トラの部屋へと向かい。そっとドアを開ける。

 

 そこにはカードを握りしめ、力尽きたようにうつ伏せ倒れているトラとその背中に座って、意地悪気にトラを見下ろしているキクリがいた。普段ならトラが制止する行為であるが、失敗を重ねすぎてダメージが大きすぎたのか当の本人がそのまま力尽きていた。トラの呟きは魂が抜けているような呟きだった。

 

「50枚近く使ったのに全く継承しないなんて……」

 

 トラの慟哭に背に乗ったククリはからかう様に―――非常に愚かなことをしたトラを言葉の刃を突き刺す。

 

「散財のし過ぎよ―――駄目なマスター」

 

「ぐふっ」

 

 キクリの追い打ちにダメージを受ける。トラがやっているのはマイナーチェンジを大量に行い良いスキルのカードを作るという。誰でも思いつくがやる奴がまずいないという愚者の所業をやっているのだ。そりゃそう言うだろう。とはいえ、トラにも諦めきれない理由がある。

 

「だってさ。コイツがうまく成功したから、諦めきれなくて……」

 

 手に持っていたカードを床に置く。それはなぜかとんとん拍子で成功したトラを沼に落とすきっかけとなったカード。成功したこと自体が罠だったのかどうか?ガチャでの成功体験をあきらめきれない駄目男のようなことを言い始めた。

 

 

【種族】大禿(おおかぶろ)

【戦闘力】170

【先天技能】

 初等仙術:初等の仙術を使用することができる

 房中術:男女の交合によって不老長生を得ようとする養生術。大禿は同性異性問わず交合していた(性技、フェロモン、魅了、吸精を内包)

 芸妓:稚児として、芸妓舞楽、散楽、延年を上演した(演奏、歌唱、演劇、精密動作、家事、礼儀作法などの技能を内包する)

 

【後天技能】

 心は熱く:燃え盛る炎のような心を持つ。精神異常、状態異常に耐性、自由行動にプラス補正。

 初等忍術

 中等魔法使い

 魔力強化

 魔力回復

 詠唱破棄

 

 

 大成功の例である。こんなのが1回でも起きたら諦めきれないのも仕方がないだろう。とはいえ、どこかで区切りを付ける必要があった。トラは最初にその区切りを決めている分だけマシなのだが―――トラの耳にキクリが嘆息が聞こえた。

 

「ほんと、仕方のないマスターね。」

 

 反論の余地がなくなったトラはせめてもの抵抗とばかりにごろんっと仰向けになる。そのまま滑り落ちるように畳の上に座ったキクリはトラの脇腹に背を預ける。

 

 ここまで声をかけるタイミングを逸していたククリがそっと部屋に入る。仰向けになったトラの頭の前に正座で座る。トラを見る目はとても慈愛にあふれていて……いや、駄目男に尽くそうとする女性の視線というべきか。トラの顔を両手で包み込み堕落への誘いを口にする。

 

「マスター、カードが足りなくなったって大丈夫です。もっと、私を頼ってください。」

 

 そんなククリの様子を見たキクリは頭を抱える。ククリはトラ限定のダメ男製造装置になりかけていた。人形神へのランクアップの負の側面なのだろうか。駄目男になりかけているトラには辛い甘言である。キクリが指先をこっそりトラの脇腹へ移動させる。触れられているトラにはわかるが下手な対応をすれば抓るつもりだろう。

 

 釘を刺されたトラは堕落しそうになる心を叱咤、ククリの頬に向かって両手を伸ばすとその柔らかいほっぺたを摘み横に伸ばした。軽くつまむぐらいの感じで伸ばしているため、痛みはないだろうが、ほっぺたを引っ張られらばCランクモンスターといえどもまともに話すことはできない。ククリの頬を引っ張ったままトラは、申し出を断る返事をする。

 

「ククリのスキルはもっと別の時に使うよ。少なくともコレに使う必要ないないよ。」

 

 頬を引っ張っているため、反論もできないククリは「うーうー」と唸り声をあげていた。そんなククリの様子にトラは意地悪気に笑いながら見ている。ククリのスキル<今度は何だ>は得た幸運の分だけ不運がたまるスキルだ。故に厄神の不運を溜め込み、他者に与えるスキル<流し雛>がなければ危険すぎて使えない。

 

 キクリの指がトラの脇腹から離れたどうやらピンチは凌げたようだ。トラの指を頬から放すことに成功したククリは頬を膨らませて抗議する。

 

「頬をつまむなんてひどいです。」

 

「駄目男製造装置になりかけた"我"がいう資格はないわよ。」

 

 キクリの突っ込みにぐうの音も出ないククリ。理性は理解をしていたが感情が暴走した感じだろうか?トラは二人のやり取りを聞いて微笑ましく思った。良い関係を築けているようだ。ツッコミ役になってくれるのでトラとしても助かっている。

 

 さてと、そろそろ、探索をした方が良いだろう。わざわざ☆3昇格試験を受けて貸し切りのダンジョンにした。1ヶ月しか探索の期間はないから、あまり無駄に時間を使う余裕はないのだ。

 

 トラはキクリの背中を叩いて退くように促す。

キクリは仕方ないとトラを背もたれにすることをやめて立ち上がる。トラはゆっくり体を起こすと先ほど頬をつまんだククリの機嫌を取るかのようにククリに探索の続きをするという。

 

「ククリ、そろそろ探索を再開するから準備をしてくれ。Eランク階層をもう一往復するぞ」

 

「はい!」

 

 キクリの名前を呼ばずに自分を呼んでくれたことに気をよくしたククリは嬉しそうにトラの言葉に返事をする。キクリはおそらくトラの考えが読めているのだろう。意地悪気にこちらを見ながら何も言わない。

 

 キクリはハンガーからトラのジャケットをとって手渡す。一歩で遅れたククリは悔しそうにする。姉妹のような二人の様子をトラは微笑ましく見ながら、ジャケットを受け取る。

 

「キクリ、ありがとう。」

 

「ん、どういたしまして、マイ・マスター」

 

 ククリが羨ましげに見ていたが、マスターの手をつかみ早く行こうという。

 

「マスター早くいきましょう。」

 

 子供のようなククリにトラは苦笑しながら引っ張られていき、キクリはからかい甲斐があるとでも思ったのだろうかにやりとチャッシ猫のよう笑顔を浮かべ、二人に遅れてついて行った。

 

 この後、虚舟でひき逃げアタックを繰り返しながらEランク階層を往復するのだが、理想のカードができるまでに1往復程度では済まなかった。トラ自身、具体的に何周したか忘れるほど周回をしたようであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 致命傷で済んだと言えるガチャのダメージを乗り越えた数日後、トラは工房荒川を訪れていた。

 

 目的は銃器の強化である。カードがある程度揃ってきた現在、銃器がほぼ役に立っていない状態気続いていた。このまま銃器を使い続けていい物どうか相談に来たのだ。そしてトラの相談は全ての銃器使い共通の悩みといってもよかった。

 

「―――Dランク以上のモンスターが相手になると銃がほとんど効かなくなってちょっと困っているんだ。」

 

 ☆3試験を受けたが故の悩み。ちなみに☆3試験自体はCランクカードが3枚もある現在苦戦することはなくクリアーできた。ゴリ押し万歳である。

 

 これは銃器使い全てが持つ悩みである。銃器部門の責任者である小夏はトラの悩みに真摯に対応をする。半端な対応をしては銃器使いを減らすことになりかねない。ただでさえトラは鋸を使っているのだ。ここで銃使いに染めなければ使わないという選択肢を選ぶ可能性があった。慎重に言葉を選ぶ。

 

 対策はあるのだ。これは惜しまず開示する。銃使いを増やすためにも……

 

「それは皆がぶつかる問題点よね。少なくはあるけど対策はあるわー。まず、対策の前にモンスターに銃器が効かない理由について現状こうじゃないかって言われている説を説明するわね~」

 

 小夏は人差し指を1本伸ばす。

 

「一つ目。そもそもモンスターが丈夫過ぎて、銃が豆鉄砲になっている。」

 

 トラは巨大な体を持つやまらのおろちを思い出した。確かにあのサイズだと銃なんぞ豆鉄砲である。そして、中指薬指と立ててゆく。

 

「二つ目。バリヤーみたいなものがあって銃弾の威力を減衰している。三つ目。実体がないから」

 

「あー……身もふたもない理由が」

 

 バリヤーといわれると何となく思い当たる節もある。実体がないのは軍隊が痛い目にあった件で非常に有名な話である。銃はダンジョンではいばらの道のようである。ここまで聞いて、銃を使わない方が良いのではないかと考えてしまいかねないほどの理由だ。

 

「まぁ、大きいところでこの3つね~。他のも諸説はあるんだけど、大体この3つの対策をするのが銃使いの基本となるわね。」

 

 次は対策の説明。テーブルの上に銀色の銃弾、スリングに使用できそうな石、パウダー……火薬だろうか?を並べてゆく。そして並べ終わった小夏は一つ一つ説明を開始し始めた。

 

「現在発見されている対策はダンジョンのドロップアイテムを使用するだけなの。」

 

「ドロップアイテムを使用することだけというとこれは―――」

 

 トラがテーブルの上に置かれた魔道具に視線を注ぐ。トラの視線に促されるように小夏は説明の続きを始める。一つ一つ指をさしながら、アイテムについて説明をする。

 

「この銀色の弾丸は"銀の銃弾"よ。銃使いに一番人気がある魔道具ね。これがあれば、普通に銃器でモンスターにダメージを与えられるわ。不死とか再生能力を阻害する力もあるから便利よ。」

 

 そういってツンツンと銀の銃弾を指で指す。―――しかしながら、何かしら問題があるようで小夏は嘆息する。

 

「問題点は国が買い集めていることよ。だから市場にはめったに出回らないわ。自分で入手した分しか使えない―――それが銀の銃弾ね」

 

「なるほど……」

 

 そりゃ、癖もなく使いやすい銃弾となれば買い集めるだろう。自衛隊という銃の扱いに慣れた集団に使わせる方が有用である。それは否定できなかった。トラは内心銀の銃弾に×を付けた。そんなトラの内心を知ってか知らずか、小夏は次のスリング用の石を指さす。

 

「こちらはタスラムね。威力は折り紙付きよ。ただ、滑空砲でしか使えないから、大口径の散弾銃でしかこれは使えないわ。―――弾自体は再利用できるというメリットがあるんだけどね

 

 滑空砲、つまりライフリングが彫れないということである。つまりは長距離射撃の精度が悪いということになる。大型の相手を雑に狙うなら使えそうだが、逆転の切り札めいた使い方しか出来なさそうだった。

 

「でもね、これ凄く高いの。1発1億円よ」

 

「―――…うわぁ」

 

 その金額を聞いたトラは呻く。自分がドロップするまでは使用すまい。トラは心の底からそう誓った。×と自分の心の中のメモ帳に記載した。そして次は火薬である。これは便利そうと思った瞬間嫌な予感がした。小夏がそのトラの内心を知ってか知らずか説明を続ける

 

「これはギリシア火薬ね。これも魔道具だから、これを使った銃弾はモンスターにダメージを与えることができるようになるわ。それ以外に特出した効果はないのだけど―――これも便利だから、国が買い集めているのよね。」

 

 トラは心のメモ帳に×印を付ける。ダンジョンで銃を使うことはハードルが高すぎるのかとトラが諦めかけるが、小夏の説明はまだ終わっていなかった。対策の続きを説明し始める

 

「そのまま銃弾として使えるのはこのぐらいね~他の対策としてはアストラという手もあるわ」

 

「それってインド系の神々のモンスターじゃないと駄目な奴じゃ?」

 

 アストラの名前を聞いたトラの突っ込みに小夏は苦笑して頷く。アストラとはインドの神話で神の力を使い召喚する中長距離の武器の名前である。それを銃弾、銃器の形にすれば銃として使えるだろう。ある意味暴れ解である。

 

「付喪神はいう必要はないわね。もう一つはアクケルテが入手出来ればってところかしら。」

 

「アクケルテってどんな武器なんですか?」

 

 トラが聞いたことがないと首を傾げる。トラの言葉にそりゃそうよねと言いたげに頷く。日本ではあまり有名ではない伝承に出てくる武器なのだから。

 

「アクケルテはキルギスの英雄マナスが使用していた長銃よ。多分魔道具として機能しそうな銃器はこれとワイアットホープが使ったという"バントラインスペシャル"ぐらいだとおもうわ。この二つは国も集めていないから狙い目よ~」

 

 トラはその言葉を聞いて少し考える。長銃と拳銃と現実問題としてこの二つを入手することが銃を使い続けるためのボーダーラインとなりそうである。恐らくは、それなりの値段がするだろう。資金をためて購入してもよい。対策としてはこの二つが現実的かと考えたトラにまだあると続きの説明を続ける。

 

「銃・火薬・銃弾のうちどれかがダンジョン産のドロップアイテムじゃないと駄目というのが、銃を使う上での条件ね」

 

「ハードルが高いなぁ」

 

 小夏のいう結論にトラは顔を顰める。銃器はダンジョンで使用するにはハードルが高い装備という結論となった。魔道具の銃を入手するまではお蔵入りにせざるを得ないという結論を下―――小夏が指を振る。まだ説明は終わっていないようだ。早合点をするトラにまだ終わっていないと言いたげに続きを話し始めた。

 

「そう、どれかが魔道具であればいいのよ。で、今私が研究している最前線の銃弾がこれ」

 

 テーブルの前に銃弾が一つ置かれる。銀の銃弾やタスラムとも違う赤味がかった輝きに首を傾げる。研究している最前線ということは小夏が作った人工魔道具だろうか?nitijyouhenn

 

 小夏は得意げに説明を続け始めた。

 

「ドロップアイテム"竜の生き血"を含浸させた銃弾よ。一応効果があるのは確認できたわ。―――そこでここからが相談なんだけど」

 

「相談ですか?」

 

 小夏の言葉に首を傾げる含浸ということは銃弾の内部まで竜の生き血を染み込ませたということである。どういう技術でそれをやったのかはトラには皆目見当ができない。小夏が自慢げに銃弾を見せるということは相当の自信作なのだろう。

 

 トラの前に12ゲージのスラッグ弾を置く。そして、トラへの依頼を告げる。

 

「君が前買った散弾銃に併せて作った銃弾よ。安く譲ってあげるから、これを使用して実戦での効果をレポートにまとめてほしいの。」

 

「実地評価……構いませんけど、これいくらぐらいするんです?」

 

 トラの警戒する声、そりゃそうである。今まで出てくる銃弾はべらぼうに高い物ばかりであった。あまり金がかかるようではとてもではないが銃器を使用し続けることができないからだ。小夏は自信ありげに笑っている。どうやら値段にも自信があるようである。

 

「1個当たり1000円が販売単価かな。ただ、実地試験をしてもらっている間は半額で販売をするよ。とにかく、試験結果を増やさないとどの程度使えるものかわからないから」

 

「1発500円。悪くない―――実地試験を引き受けます。」

 

 トラも銃弾の人工魔道具ということもあってかなり興味を持っていた。これが使い物になるのであれば今後の戦闘の幅が増える。使い物になる技術であることを期待していた。そのためのレポートであればまぁ問題ないだろう。新しく手に入れた銃弾にトラはワクワクしていた。

 





銃のパワーアップ回
竜の生き血を含浸させた銃弾は焼結合金であれば可能かなっと思い登場させました。
実際に銃弾に焼結合金が使えるかどうかは知りませんが……

竜の生き血はの消費量が少ないので値段が抑えられているということでお願いします。

感想増えろー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。