中学生でも冒険者になれるって本当ですか?   作:猫の手

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兄の悪行が暴かれます。

かなり性質が悪いのでご注意を


3話:男としてもわかりたくない。いやマジで……

 

 二日市地下水道ダンジョン。

 

 下水道二にせられて作られたダンジョンは薄暗く、石畳は濡れており、気を付けて歩かねばならない。

 

 唯一の救いは……匂いがない事だろうか?

 

 安全地帯で始めてみるダンジョンを興奮した様子で見るトラと真那。

 

 爺さんはそんな二人の初々しさに懐かしさをを覚え何も言わないでおいていた。ダンジョンは安全地帯にいれば安全なのだ。

 

 故に二人の行動は間違はない。

 

 とは言え、あまりのんびりしていては日が暮れてしまう。感動する二人に水を差すようで悪いが、そろそろ探索へと意識を切り替えるべきだろう。

 

 爺さんはカードを取り出すと1体のモンスターを召喚する。呼び出したのはイペオプ。

 

 アイヌの神話に出てくる人食いの妖槍だ。ランクはC、Fランクのダンジョンで使用するのであれば十分過ぎる獲物である。

 

 爺さんがモンスターを召喚したことに気が付いた二人は慌てて自分のカードを取り出し召喚する。

 

 先に召喚を行ったのは真那。

 

 召喚されたカードはDランクの鎧武者、同じくDランクのシルキーだ。

 

 鎧武者は戦場を彷徨う武者の亡霊と言われているネイティブの一枚で、日本版のリビングアーマーと言われるカードだ。

 

 シルキーはイングランドで家事などのお手伝いをしてくれる妖精であり、かなり人気のあるカードだ。メイドさんが好きな奴は多いらしい。

 

 真那が召喚を終わらせたのを見て、トラが改めてモンスターの召喚を行う。

 

 初めての召喚―――時間をかけてしまうのは申し訳ないが、一人一人召喚をして確認をさせてもらうことにする。

 

 記念すべき1枚目は当然期待のカード蓑草鞋だ。

 

 "マイナススキルの記載がない"優秀なカードであり、イラストも可愛らしい。トラの手持ちで、エースとなれるカードだ

 

 緊張と期待を胸にカードに呼びかける

 

「―――蓑草鞋」

 

 トラの呼び声に反応し、蓑草鞋が召喚される。

 

 蓑を羽織り、靴の代わりに草鞋を履いた少女。長くのばされた麗しい黒い髪。開かれた眼でトラを確認すると怯えたように後ずさりをした。

 

 蓑草鞋の反応に絶句するトラ。始めて召喚する相手である。こんなふうに怯えられるいわれはない。

 

 トラが声を掛けようとする前に―――蓑草鞋が口を開く。

 

「マスターは蓑草鞋に酷いこと―――夜伽を命じたりしない?」と

 

 蓑草鞋の発言の意味が理解ができないトラは混乱し、反射的に蓑草鞋の言葉に返事を返す。嫌な予感がするがこれは今は無視する。

 

「オレはそんな命令しないけど―――…ドウシテデスカ?」

 

 吝嗇な兄がこのカードを売った理由・背景が不安として押し寄せる。蓑草鞋は背が低く、幼い印象を与える女の子である。

 

 見た目も幼く、言動も幼い。カード故法的に問題がないが、社会的にアウトだろう。

 

 嫌な予感が当たってくれるなよと願いつつも、世界は無常だった。こういう時こそ願いがかなうことはない。

 

「―――とっても怖い思いをしたの。蓑草鞋はマスターの命令に逆らいにくいの。でも、マスターと言うだけの何も知らない人は―――嫌」

 

 蓑草鞋のスキル天真爛漫は命令に対する行動にプラス補正を掛ける。故にどうにかなると兄は思ったのだろうか……

 

 トラは目の前が真っ暗になった。この少女に前のマスター――トラの兄である物体は■■を強要したらしい。

 

 全てを悟ったトラは、気が付けば蓑草鞋に土下座をしていた。蓑草鞋は相当な精神的なダメージを植え付けられていたらしい。

 

 ロリコン野郎には去勢が必要である。今すぐ家に帰って去勢しに行くか―――トラは深い怒りと殺意を覚えた。

 

 黙って聞いていた爺さんは「直広に相談をして折檻をせねばならぬな」と深くため息をしながらつぶやき、スマフォ取り出してどこかに連絡を始め、真那に至っては半眼で「サイテー」とだけ呟いた。

 

 そんな心が冷え冷えとする言葉を聞きながら、トラは土下座をしたまま、懇願するように蓑草鞋と会話を続けた。

 

「オレは蓑草鞋にそんなことはさせないから、信じてくれないかな?」

 

 土下座をする俺を見て違うと思ったのだろうか、少しだけ蓑草鞋の態度は軟化したのか――そう思って顔を上げると

 

 蓑草鞋を見るとその可愛らしい顔は涙に濡れていた………探索は明日に回してクソ兄貴を去勢しにいくかなぁ。トラの兄への殺意のボルテージは上がっていく

 

「ほんとう?」と問いかける蓑草鞋に対し、トラは「本当だよ」と返す。

 

「ほんとうにほんとう?」と更に問いかける蓑草鞋に対し、トラは「本当に本当だよ」と答えた。

 

 トラの背中には哀愁が漂っていた。

 

 モンスターとマスターの関係故に口をはさむのを止めていた爺さんと真那も見かねたらしくフォローに入る

 

「大丈夫よ。トラはそういうことしないから、何かあったら私が責任を持って去勢するわ」

 

 真那の発言に去勢されると言われたトラの何かがヒュンっと縮こまる。フォローになっているようでなっていない発言にトラは戦々恐々する。

 

「そういう悪さはしない奴じゃ、わしも保障するから信じてやってもらえんかな?」

 

 幼い子供に語り掛けるような優しい口調で爺さんは蓑草鞋を諭す。

 

「分かったの。信じる努力をするの……裏切ったら嫌だからね。」

 

 その蓑草鞋の発言に罪悪感でへし折られかけるトラ。今日の今日では流石に戦力として使う気にはならず、カードに戻した。

 

 戻したカードにはマイナススキルが追加されていた。

 

『疑心暗鬼:マスターを本当に信じてよいのか疑っている。命令に対する行動にマイナス補正。』

 

 そのマイナススキルを見たトラはぼそりと平坦な声で怒りを口にする。

 

「―――爺さん兄貴を去勢したくなったな」

 

 どす黒い殺意を漏らすトラ。政信はどうでも良いがトラにそういう真似をさせるわけにはいかない爺さんは慌てて止めに入る。

 

 トラはやると言ったらやる性格で、そのうえで爺さんに鍛えられているため、政信が冗談抜きに死ぬほど殴られかねなかった。

 

 尊属殺人未遂をさせるわけにはいかない。

 

「辞めておけ、直広とわしで地獄に落としてやるつもりじゃからな。トラ、お主は余計なことを考えず、蓑草鞋からの信頼を勝ち取れ」

 

 その爺さんの発言に歯ぎしりをし怒りを抑えながら、ただしそれの正しさと理解し、爺さんへの信頼で抑え込む。

 

「分かったよ。爺さん――――地獄を見せてやってくれ」

 

 最後の言葉だけドスが利いたものになったのは致し方ない。真那も爺さんを見ると「信じているからね」と言う。

 

 無論、爺さんもこんな馬鹿な真似をした恥知らずをただで済ませるつもりは無い。きっちりと真人間になるように泣いたり笑ったりできなくなるまで躾をせねばならない。

 

 携帯で直広――トラの祖父に電話連絡とメールは送付済みである。とりあえず、確保しなければ始まらない。直広ならばうまくやるだろう。

 

 そしてこのまま家に帰し下手に政信とかち合うと殺人事件が勃発しかねない。

 

 ダンジョンを探索させて、頭を冷やしてやる必要性があると爺さんは判断した。故に師匠としてトラに命じる。

 

「トラよ。ダンジョン探索は続けるぞ。次のカードを呼ぶが良い。」

 

 トラはさくぞうすを取り出す。それに気が付いた爺さんは額を抑え、真那も表情を引きつらせる。

 

 呼び出されるモンスターに気が付いたシルキーは主人である真那の目を両の手でふさぐ。

 

「トラ様、私がマスターを目隠ししている間に召喚を」

 

 過保護なシルキーにトラは苦笑する。少なくとも主従関係は良好なようだ。トラはそれが羨ましく思う。

 

 特にさっきの蓑草鞋の会話の後だと

 

 とは言え、いつまでも浸っているわけにはいかない。さくぞうすを召喚する。

 

「さくぞうす」

 

 トラの言葉に応じる様にカードが輝き、さくぞうすが召喚される。―――見た目がアウトな歩く18禁である。

 

 特に卑猥ヘッドが最悪だ。冗談抜きに歩く18禁として三面記事に乗りかねない強烈長い剣である。

 

 さくぞうすは苦笑いを浮かべ、トラに言葉をかける。

 

「よぅ、大変だったな、マスター。拙僧はさくそうずだ。」

 

 どうやらカードの中から蓑草鞋との会話を聞いていたらしい。気を使うさくぞうすにトラは苦笑を浮かべた。

 

「ありがとよ。さくぞうす、歌川景虎だ。―――早速だが人間に化けてくれないか。そうしてくれれば、俺の悩みが一つ減るんだが」

 

 挨拶をする卑猥ヘッド、もといさくぞうすに対し、トラは挨拶と同時に要求を突き付けた。

 

 トラの要求に対し、さくぞうすは考えを巡らせる。想定された内容、マスターが子供故にエロい方面でも期待は難しいだろう。

 

 また、顔を隠す生活はストレスが溜まる。恐らく永続的にやることになるだろう。エロと言う発散がないその生活はモンスターとは言え億劫だった。

 

 さくぞうすはトラの要求に対し確認を行う。

 

「構わねぇよと言いたいところだが、変身はどのぐらいの期間続けりゃいいんだ?」

 

 さくぞうすの言葉に対し、トラは躊躇うことなく素直に答えた

 

「基本的には常時だよ。さくぞうすの姿は刺激的過ぎるんだ。他の冒険者に見られるとちょっと面倒なことになる。」

 

 想定通りの言葉、故にさくぞうすは交換条件を切り出す。

 

「ふぅむ、常時変身するのはストレスがな。―――そうだな、"すまふぉ"って奴をもらえねぇか?それがあれば世界中の春画が見れるんだろ?」

 

 それでストレス発散するさと言う、さくぞうす。

 

 ストレス発散のための要求。さくぞうすの要求はそこまで大したものではない。

 

 むしろストレスが溜まるなら発散の機会を与えなければ暴走しかねないとトラは判断した。とはいえ、直にくれてやれるスマフォはない。

 

 故にトラはこう返した。

 

「良いよ。ただ、手元に予備がなくてね。次の探索までに用意ってことで了承してくれないか?」

 

 もっともな回答である。故にさくぞうすも問題無しと頷いた。

 

「それでいいぜ。」

 

 さくぞうすはニヤリと笑う。江戸より進化した春画どういうものか楽しみである。

 

 取引は成立。さくぞうすは変化の術を使い、人間に変身する。

 

 無精ひげが早し、ボロボロの法衣を身に纏った中肉中背の草臥れた感じのおじさんへ変身をした"さくぞうす"

 

「その姿ならまぁ問題は起きないな。」

 

 トラはほっと安堵の息を漏らす。変身した姿を確認したシルキーは真那の目隠しを止めた。

 

 割合まともな性格のさくぞうすで安堵するトラ。これで性格が問題児だったら、大変なことになっていた。

 

「普通の外見じゃない?この人がさくぞうす?」

 

 と、目隠しを外された真那はトラに尋ねる。 

 

「ああ、変化の術を使った後のな。」

 

 マジマジとさくぞうすを見つめ、トラに合格と告げる

 

「ふーん、これなら他の人が混ざったとしてもどうこう言われないと思うわ。」

 

 唯一の女性からお墨付きをもらったところでほっとするトラ。

 

 その様子を見たさくぞうすは楽しげにニヤリと笑う。からかう種ができたとも思っているのだろうか。

 

 さくぞうすの不穏な様子に何か余計なことを言われる前に次のカードを取り出す。あまり時間をつぶすわけにもいかない。

 

 よほどのことがない限り次の召喚で今回は終了だ。

 

 選んだモンスターは銭霊。『古今百物語評判』記述がある妖で、銭の精とも世界中の銭が集まって空にたなびいているともいわれている。

 

 訪れた家に富を授け、いなくなれば没落するという座敷童のような妖怪だ。

 

 このカードはネイティブの癖に戦闘力は低いのだがそのスキルが面白い

 

 

銭霊 

戦闘力:55

【先天技能】

 金は湧き物:思いがけずに金目の物を手に入れる技能。金運が大幅にプラス補正される。

 付喪神(銭):他のカード、あるいはマスターへと憑依することで、自身の戦闘力の四分の一を加算させることができる(マスターへの装備化の場合はすべての戦闘力とスキルを共有できる) 

 

【後天技能】

 マルチタスク:複数の複数を同時に処理できる。複数の行動を同時に行うときにペナルティが発生しない

 ランド・フィッシング:人の手の入ることのない場所に赴き、遺された財宝を探す技能。同一階層にある宝物の位置が分かる。

 鑑定眼:アイテムの良し悪しを見定める技能。ドロップアイテムやオーブなどの大雑把な性能が分かる。

 

 

 スキルのほとんどを金策に回しているようなスキル群である。

 

 これをまともに運用するのであればオーブでも使ってスキルを増やしていかないと駄目だろう。

 

 今日は爺さんと真那が同行をする。

 

 どの程度であれば、Fランクのダンジョンで通じるか安全に実験ができるのは良いことである。

 

 多少リスクのある選択肢をしなければ勿体ない。

 

「銭霊」

 

 呼び声に応え銭霊がカードから召喚される。銭が空に浮かんでいるという奇妙な外見。人間の欲が形になったような妖である。

 

「初めまして、ハスターはん。うちが銭霊や。あんさんに友達との縁授けたるで」

 

 言外に戦闘力は期待するなと言う発言にトラは苦笑を浮かべる

 

「よろしく、オレがマスターの歌川景虎だ。――…まぁよろしく頼む。後、装備かスキルの使用してくれ。」

 

 トラの発言に心得たとばかりに銭霊が体に纏わりつき、銭霊は銭でできたチェーンメイルになった。

 

 ちょっとばかりアレな格好だ上からコートでも着た方が良いだろう。

 

 トラは手のひらに収まる程度の銀色の円柱を取り出すと、ロックを解除する。円柱が伸び、あっという間に全長2mほどの棍になった。

 

 それを見たさくぞうす興味深げに棍を見る。どういうものかトラに質問を投げかけた。

 

「マスター。そいつは?」

 

「ああ、人工魔道具の棍だ。棒はあった方が便利だからな。準備をした」

 

 軽く振り回すと鋭い音が響く。Eランクモンスター銭霊の補正もある。Fランクモンスターであれば、まともに当たればタダではすむまい。

 

 準備が整ったのを理解した。真那がトラに声をかける

 

「トラ、準備できたなら行くわよ。索敵はどっちがやる?」

 

 真那の問いに少し考える。本来であれば蓑草鞋を使って索敵をしたかったのだが、今日の時点ではうまくいかないだろう。

 

「さくぞうすを前衛に盾と索敵を兼ねて動いて貰うことを考えているけど真那はどうする?」

 

 トラの回答に真那は自分の考えを告げる。

 

「なら私は、シルキーを最後尾に置くわ。」

 

 鎧武者を装備しているのであれば真那が最後尾に行くのもありなのだが、慣れていないダンジョンでどんなミスが出るか分からないため、止めておいた方が良いだろうと考えた。

 

 二人の考え方に爺さんは満足げに頷く。彼はあくまでもいざという時にしか手助けをするつもりがなく、発言も控えていた。

 

 現状特に問題は無い。どこまでできるか爺さんはお手並みを拝見と考えていた。

 

 隊列を整えるとトラたちはダンジョン探索へと進んでいった。

 

 

 

 

 




ほんとうは探索まで書くつもりでしたが、キリが悪いのでここまでとしました。
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