中学生でも冒険者になれるって本当ですか?   作:猫の手

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ショッピングモールでの買い物編です。

トラは結構散財しましたね。


6話:二日市ダンジョンモール

 二日市駅前ダンジョンモール。

 

 駅の目の前という好立地にあり、東京ドームと同じタイプの特殊なダンジョンということで知られている。

 

 モンスターを召喚して連れ歩けるレジャーランド、中央部に設置されたリング、多くの冒険者専門店。

 

 また、リングではFランクカード限定の素人同士で野試合、通称ストリートファイトが開催されている。

 

 それぞれがFランクカードを持ち合い戦う賭け試合であり、冒険者協同組合が関与することで成立させているグレーの試合だ。

 

 ただ、それで稼いだ金で冒険者やグラディエーターになるものも多く。政府も見て見ないふりをしているらしい。

 

 イヤホンを耳にはめ、"Come Together"を聞きながら、トラは2階席からストリートファイトのリングを眺めていた。

 

 まだ試合前でリングの外にチームメイトらしいメンバーがたむろしていた。

 

 トラの隣では蓑草鞋が録画をした鉄腕■■■■を見ていた。好みにあったのだろうか真剣な眼差しで録画した内容を鑑賞していた。

 

 そんな蓑草鞋をトラは観察しながら、今後のコミュニケーションツールと使えるなと心のメモに書き記す。

 

 それ以外のメンツはというと、近くの書店でそれぞれ好きな本を選んでいた。

 

 さくぞうすは女の子モンスターのレビュー(意味浅)本を見つけ買い漁り、

 

 銭霊は四季報を買って、これ凄いやんと興奮していたり

 

 着物を身に纏った和風美人―――苧うにはファッション雑誌に目を通しては、興味のあるものをいくつも購入している。

 

 ちなみに一人当たりの小遣いは1万円である

 

 1階席に観客が増えてきた。そろそろストリートファイトが始まるようである。リング近くに二人のファイターが現れた。

 

 赤コーナーよりタトゥー刻んだ少年が現れチームメンバーから応援を受けている。

 

 青コーナーからはイエローカラーのパーカーを身に纏った少年が同じ柄のパーカーを着た少年たちに見送られリングに上がる。

 

 ストリートファイトのファイターは所謂チーマーやカラーギャングと呼ばれるものが多い。

 

 無軌道な暴走をするものが多く。それが原因で一時期治安悪化の要因となった。

 

 再三にわたる警告を無視した彼らにダンジョン・モールの運営団体、冒険者協同組合、ストリートファイトを取り仕切っている裏の人々がまとめてブチ切れた。

 

 物理的、精神的、社会的に徹底的に追い詰められ、地下■■に出荷されたため、現在ではそのような事件はほぼ起きなくなっていた。

 

 全くゼロになったわけではなく、時折乱闘を起こしかけた連中がチーム丸ごと地下■■に出荷されていると噂がある。

 

 素人同士の賭け試合、Fランクカード故に失っても致命的な痛いというほどのことはなく。故に使いつぶすつもりで酷使し、戦う。

 

 故にその戦闘は技量が低くとも白熱した展開となるケースが多く。真剣勝負を見たいという根強いリピーターとなるファンが多数いる。

 

 プロの試合であるグラディエーターよりも好む人間がいるぐらいである。

 

 さて、ファイターがリングに立ち、ゴングが鳴る。

 

 タトゥの少年が召喚したのはスケルトン、ゾンビ、ブエナフット

 

 イエローパーカーの少年が召喚したのはスライム、旧鼠、スケルトン

 

 蓑草鞋が鉄腕■■■■の視聴を終えるにはまだ30分程度時間があり、他のメンバーも一心不乱に本を選んでいる。

 

 待ち合わせ時間は1時間後、のんびりとストリートファイトを見るのもいいだろう。

 

 ちょうど、"Come Together"の演奏が終了した。イヤフォンを耳から外しポーチの中に仕舞う。試合をぼんやりと視線を向けると後ろから声がかかった。

 

「久しぶりだな。トラ、いっ―――椚木さんから聞いたぞ。冒険者になったそうじゃねぇか。」

 

 声を掛けられたトラは立ち上がり、声を掛けた主に挨拶をする

 

「お久しぶりです。隆二さん、ええ、昨日なったばかりなんですよ。」

 

 そこにいたのはオーダーメイドのスーツを身に纏い、サングラスを掛けた壮年の男性だった。

 

 彼は不二咲隆二。このショッピングモールの警備責任者であり、☆4の冒険者だ。

 

 父親の部下であり、第二次アンゴルモア後に起きたある事件後、自衛隊を退官。その後、冒険者と警備会社の会社員の二足の草鞋を履いている。

 

「隊長も喜んでいるだろうよ。―――で」

 

 隆二が話の続きを聞こうとしたとき、タトゥの少年がイエローパーカーの少年を圧倒し勝利した。

 

 チーマーが勝利にわき、イエローパーカー側が殺気立つ。隆二は嘆息。相変わらず馬鹿が多いとでも言いたげだ。

 

「すまんな。今は仕事中であまり話せないが、今度連絡するからそんとき色々と聞かせてくれ。」

 

 それだけを言うと隆二は急ぎ、携帯で部下に指示を出し、リングへと向かう。折角の休みに乱闘騒ぎを起こされれば台無しになる。兆候の時点で積む必要があった。

 

「相変わらず忙しそうだなぁ。隆二さん」

 

 リングを見てみると乗り込んできた警備員に対し突っかかろうとしたイエローパーカー達があっという間に鎮圧され次々と連行されて行った。

 

 鮮やかな腕前。チーマー達は自分たちは何もしてませんアピールをし、大人しく警備室へと連れられて行った。

 

 漸く蓑草鞋の鑑賞が終わったらしい。どことなく満足げな様子の蓑草鞋に対し、トラは少し考え、言葉を選び話しかける。

 

「蓑草鞋、鉄腕■■■■は気にったか?」

 

「え!、あ……はい、とても―――」

 

 少しだけトラを怯えた様子で見る違うマスターだと理解していても恐怖は抜けないか。折角楽しい番組の余韻に浸っていたのに悪いことをしたと思う。

 

 トラは困ったような表情を浮かべると怯える蓑草鞋を無遠慮だったと謝る。

 

「わりぃな。」

 

「―――いえ、マスターが悪いわけじゃない……です。それに本当に面白かったです。ありがとございます。」

 

「気にってくれてよかったよ。また今度続きを持ってくるから楽しみにしていてくれよ」

 

「はい」と嬉しそうに素直に頷く蓑草鞋。ゆっくり時間をかけて信頼を勝ち取るしかない。とは言えきっかけは見つけた。

 

 他にもカギになりそうなのはないかと考え、トラの視界に書店が映った。似た系統の漫画を複数種類渡してみるか。それで好き嫌いを推し量ってみよう。

 

 話題を増やして会話を増やせばいつか信頼を勝ち取れいつかマイナススキルが解消される―――と思いたい。

 

「じゃぁ、農業とかそれ関係で面白い漫画があるからいくつか買ってく?」

 

「いいんですか?」

 

 蓑草鞋の不安げな眼差し、それを与えられることにも疑心を覚える。酷いスキルを植え付けられたものである。

 

「ああ、あの3人にもそれを許可しているからな。蓑草鞋が買わないのは不公平だろう。」

 

 書店にいる三人とトラにに視線を何度も移動させ、蓑草鞋は消え入りそうな声で「ありがとうございます。」と言った。

 

「じゃ、行こうか」

 

 そういうとトラは書店に入り、銀の■、罠■■■、百■貴■などを一冊づつ手に取り、それを買い物かごに入れる。気に入った本があればそれの続きを買えばいい

 

「そろそろ会計するぞ。買うものがあったらもってこいよ」

 

 本屋に居ついている3人に対し、トラはそろそろ会計をするよう声を掛けた。

 

 先に店に入っていた3人は慌てて、購入予定の本の選定を始める。一番手でやってきたのはさくぞうすだった。

 

「坊主。人間はすげぇなぁ。蒙が啓かれた気分だぜ。」

 

「そーかい。休暇を満喫できてるようならよかったよ。」

 

 女の子モンスターレビュー本(意味浅)を6冊程度持ってきたさくぞうすが嬉しそうに笑う。

 

 濃い世界のエロ本。それに対して楽しそうに見える無精髭の中年男性を見て、店員話困惑顔だ。エロ本ということを知っているからだろう。

 

 あまり長時間エロ本を持っていたくないトラは「会計お願いします」と店員に促した。

 

 店員は、はっと我に返り、いそいそと会計を進めていく。

 

 さくぞうすの言葉にエロ本に興味が惹かれたトラだがここには蓑草鞋がいる。迂闊な発言は控えることにした。

 

 会計が終わると、さくぞうすにレビュー(意味浅)本を手渡し、念押しをする。

 

「収納スキル持っている銭霊に預けといてくれ。中身が気になるならカードに戻って鑑賞していても良いぞ。」

 

「まぁ、さっさと読みたいってのはあるが、後でいいわ。とりあえず、銭霊に預けとく」

 

 本は分厚い紙袋に入っているので中は見れないが、まぁいつまでも持ってはいない方が良いだろう。

 

 次にやってきたのは銭霊だった。やつは四季報を見て大興奮していた。興奮が収まらぬまま、熱いパッションをもって四季報の素晴らしさを語る。

 

「マスターはん!!この四季報ってすごいで―――こんなに簡単に情報が得られるなんて驚きやわ。」

 

「オレにはよくわからんけどそうなのかな?」

 

 正直、株式の知識があまりあるわけではないトラは銭霊の言葉があまり理解できず、鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべこたえる

 

 銭霊はクワッと銭でできた五体を大きく引き伸ばすと叫ぶ

 

「ええか!!マスターはん!!この四季報っちゅうんわな」

 

 長くなりそうな予感がしたトラはそれを止めるための最終兵器を切り出す。正直理解できない話を長々聞くほど時間もないのだ。

 

「はいはい、清算済ませてくるからさっさと寄越せ。じゃないと買わないぞ」

 

「マスターはん、それはせっしょうやで」

 

 トラが長くなりそうな銭霊の言葉を止める。銭霊としても買わないということは避けた方らしく慌ててトラに四季報を渡す。

 

 四季報を受け取ったタイミングで、苧うにがやってきた。彼女は大量のファッション雑誌をかかえていた。

 

「いやぁ、マスター。人間のファッションにかける情熱は凄いねぇ。さくぞうすじゃないが、蒙が啓かれるってもんさ。」

 

「そいつは良かったな。お前さんには戦闘と違うところで期待しているからな。頼むよ」

 

「ああ、期待には応えるつもりサ。マスター」

 

 トラの言葉に苧うにはニヤリと笑う。苧うには「画図百鬼夜行」に描かれた妖怪であり、苧から糸をつむぐ手伝いをしたと言われる妖怪だ。

 

 伝承に伝わる長い髪は邪魔にならないようアップスタイルに纏めており活動的な印象を与えていた。

 

 

苧うに

戦闘力:60

【先天技能】

・糸紡ぎ:糸を紡ぐ能力。原材料があれば糸を作成することが可能

・お節介な山姥:麻で苧を績んでいる女性たちの手伝いするありがたい妖怪。特定行動時、作業スピードにプラス補正

 

【後天技能】

・針仕事:裁縫に関するスキル。特定行動時、行動にプラス補正。

・初等回復魔法:初等の回復魔法が使用可能

 

 

 戦闘力は低く、スキルはほとんど生産系だ。

 

 故にダンジョンでは使えない外れカードの一つとしてカウントされている。これがD以上だと話は変わるのだが……

 

 トラとしては苧うにに原料を渡せば防具が作れないかなぁと淡い期待を抱いていた。そうすれば、探索に掛かる装備の費用がだいぶ圧縮できるからだ。

 

 全ての本を受け取ったトラが清算を済ませ、銭霊の収納スキルで本を収納してしまう。後で本棚でも買って、ブラックヴォルガの中に詰め込めば良いだろうと考える。

 

 スマフォを取り出し、時間の確認。あと少しで待ち合わせの時間だ。待ち合わせの場所はすぐ傍にある2階ストリートファイト観戦席。近場とは言え時間に遅れないようさっさと移動するべきだろう。

 

 トラはストリートファイトの観戦席に移動。適当に空いている席に座る。

 

 他の面々も適当な椅子に座り先ほど購入した本を銭霊から受け取り読み始めた。

 

 四季報を読んでいる銭霊がトラに銭で作られた身体を向け、願いを切り出した。

 

「マスターはん、スマフォを―――うちにもくれへんか?」

 

 トラは首を傾げる。スマフォを何に使うのだろうか?念のために確認のために問いかける。

 

「何に使うつもりだ?」

 

「株取引や。」

 

 トラは銭霊の言葉に半眼になり、とりあえず聞かなかったことにするかと考え、ストリートファイトのリングに視線を向ける。

 

 そんなトラに銭霊が縋りついて叫ぶ

 

「マスターはん、せっしょうやで、頼むさかい、株取引やらしてくれぇな。うちなら儲けるからなっ、なっ!!」

 

 必死になって縋りつく銭霊。金が好きな奴だとは思っていたがこういう方向に走るとは―――渋面になりどうしたもんかと考えていると、レビュー本(意味浅)を読んでいたさくぞうすが顔を上げて、案を出す。

 

「坊主。条件を付けてやらせたらどうだ?完全に駄目というと今後に響きそうだしな」

 

 さくぞうすの言葉に少し考えて受け入れることを決めた。銭霊は今後のキーになるモンスターである多少の我儘は聞かざるをえまい。

 

「―――分かった。ただし、オレのスマフォを使うこと既にチャージしている金額以上は使用できない。という条件なら良いぞ。」

 

 冒険者のライセンスが身分証明書になるため、証券口座の開設はあっという間に終わり、電子マネーを使って5万円ほどチャージ、準備ができたスマフォを銭霊に渡す。

 

 銭霊が目を輝かせスマフォを受け取り、高速でチェックし株のチェックを始める。

 

 とりあえず、しばらく銭霊にはお小遣い無しで良いかと判断。あと、昨日以上にブラックな仕事をしてもらおう。

 

「ありがとな。マスターはん、これで色々とやる気がもりもり上がってきおったわ」

 

「あっさりスらないように気を付けろよ。」

 

 スマフォでガチャガチャと株投資を始めた銭霊。既に投資に夢中になり、トラの言葉は聞き流していた。

 

 やれやれとトラは銭霊を見てから明日探索する予定のダンジョンを物色し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「トラ、お待たせ。今日はどこから回る?」

 

 時間五分前、いつも通りに真那はやってきた。ジーパンに明るい色のコートを身に纏った姿は活動的な印象を与える。

 

 傍にはシルキーと白い犬―――もとい、狼がいた。

 

 白い狼は白狼天狗と呼ばれる。天狗の中での地位が一番低い天狗であり、上位の天狗のために資金繰りをさせられている悲しい妖怪だ。

 

 昨日、冒険者協同組合で見つけた金運を強化できるEランクのモンスターだ。騎獣スキルも持っており、移動手段として十分に活躍できるため真那は購入したらしい。

 

 見た目はふわふわの人を乗せらられるほど大きな大型犬だ。ランクアップを見据えて考えれば悪くはない選択肢である

 

 

白狼天狗

戦闘力:70

【先天技能】

 天狗の山のサイフ達:シタッパは資金稼ぎをさせられる。金運にプラス補正。

 集団行動:群れの中で生きる習性。集団での行動に対するプラス補正。

 

【後天技能】

 騎獣:騎乗スキルを持つ乗り手のステータスに自身の攻撃力と俊敏性を加算することができる

 気配察知:五感を強化し、隠密系スキルを見破りやすくする。

 小さな勇者:詳細不明。

 

 

 春物のコートでは年齢不相応の胸は隠しきれない。そちらに視線を向けると後で死ぬほどの目に合うためトラは目線を真那の顔に固定

 

 折角のショッピングである。楽しんで帰りたいものだ。

 

「そーだな。時間のかかりそうなところから済ませたいんで武器屋――工房荒堀に行かないか?」

 

「良いわね。私も出物があったら見てみたいし、刀だけだと不安なのよねぇ」

 

 ちなみに真那は単純な武具を操る技術ではトラよりも上である。爺さんもその才覚には目を見張っていた。

 

 身体能力の差で五分まで落とし込んでいたが、装備化スキルがあれば身体能力の差など意味がなく。今は勝ち目ないだろうなと苦笑い。

 

「ちなみに何を買う気なんだ?」

 

「ん~、小太刀サイズの刀剣を2本、後は槍―――ハルバードみたいなのがあれば良いんだけど」

 

「了解。じゃあ行ってみようか」

 

 株取引をやっている銭霊を立たせ―――ようとする前に銭がトラの両腕に巻き付く。運べということだろうか。

 

 銭霊は悪びれた様子もなくトラに言う。

 

「すまんなぁ。歩きスマフォは危ないんやろ。せやからはこんだってほしいわ。」

 

 トラは内心この野郎と思いつつも明日から酷使することを誓い、受け入れることにした。無駄な言い争いよりも地獄を見せた方が早いだろう。

 

 そんなトラと銭霊のやり取りを見ながら、真那は苦笑する

 

「苦労しているわね。トラ」

 

「まぁ、ダンジョンで地獄を見せるから大丈夫さ」

 

 そういって、真那と合流をしたトラは工房荒堀へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンモールに出店している鍛冶屋は複数あるが、工房荒堀は波平の技術を受け継ぐ刀鍛冶だ。

 

 きさらぎ市で多いのは大和伝の技術を継いだ刀匠であり、波平は珍しい。

 

 あまり有名な刀匠ではないが、幕末の時に示現流の剣士たちが使用した骨まで切断する刃を作った鍛冶師の末裔である。

 

 また、彼自身☆4の冒険者としても活躍をしている変わり種だ。ちなみに嫁さんも探索者でありこちらはガンマニアが高じてガンスミスをやっていたりする。

 

 ストリートファイトの観客席から歩いて5分程度のところに武器屋―――工房荒堀があった。

 

「こんちわー」

 

 トラがドアを開くとと入り口は暗くなっており、えいと、遠慮なく鍛冶屋の中に入る。

 

 中は明らかに敷地面積を超える広さがあり、恐らくは迷いがか何かを使って面積を拡張しているのだろう。

 

 敷地面積の半分は銃器が並んでおり、残り半分は刀剣と言った近接系の武具が所狭しと並んでいた。

 

 蓑草鞋は銃に目を引かれ、目をキラキラと輝かせ、ふらふらっと銃のあるコーナーへと行ってしまう。猟師スキルの影響だろうか。

 

 トラは心のメモ帳に蓑草鞋は銃器が好きと刻む。

 

「銃だ。―――こんなにいっぱい凄い。」

 

 新しいおもちゃを与えられた子供の様に―――実際に外見は少女といった感じなのだが、蓑草鞋は銃のウィンドーショッピングを始めていた。

 

 水を差すのも悪いと考えたトラは「気を付けろよ」とだけいって見送る。

 

 真那も部屋の中に入ってきて所狭しと並ぶ武具に感嘆の息をつく。

 

「凄いわねぇ。ここまでくると壮観ね。私の相棒探さないと――っと、トラの用事をさっさと済ませちゃいましょう。」

 

「りょーかい。さくぞうすと苧うには適当に武器を見ていてくれ。」

 

 真那の言葉にトラは頷く。一番時間がかかるのがトラの用事だ。先に済ませるべきだろう。

 

 さくぞうす達に適当に時間を潰すように言うと、さくぞうすは棍を取り扱っているコーナーへと向かい、苧うには蓑草鞋のところへと言った。

 

 蓑草鞋のサポートをしてくれれば助かるなと思いながら、ちなみにシルキーと白狼天狗はマスターから離れないという選択肢を選んだようだ。

 

 メイドと忠犬の鑑である。

 

 そうこうしていると奥から、作業用のエプロンと手袋を付けたガタイが良い女性が現れた。可愛らしい容貌とガタイの良さのギャップにちょっとびっくりしてしまう。

 

 彼女が夫と一緒に冒険者をしているガンスミス――荒堀小夏だろうか?全然小さくはないのだけど。

 

「いらっしゃい。あら、初々しいわね。ようこそ、工房荒堀へどんなごようかしら?」

 

 小夏はトラと真那を見て微笑ましいものを見たというような表情を浮かべる。トラは小夏の言葉を冒険者としての話かと取り返事をした。

 

 ちなみに真那は少々顔を赤くしているが、微妙にトラから見れない位置のため、トラには気づかれていない。

 

「ええ、ここだと魔道具の改造ができると聞いたので」

 

 鞄の中より"Murderer's machete"の刃を布で覆った状態で取り出し、小夏に見せる。小夏が目を丸くする――まぁ、ルーキーがこれを見せればそんな反応は当たり前だろう。

 

 ただし、目を丸くしたのはその一回だけで、直に先ほど見せていたアルカイック・スマイルに戻る。

 

「ええ、可能よ。ただ、私は銃器が専門だから旦那を呼ぶわね。少し待ってて―――冬真!!お客さん来たわよ」

 

 小夏はそういうと奥の部屋に向かって大声で呼ぶ。遠くから「わかった」という返事が返ってくる。そして、小夏は真那の方に視線を移し工房荒堀を訪れた理由を尋ねる。

 

「ええっと、あなたは何をお探しかしら?」

 

「ダンジョン用の武具を探しに―――…トラの用事が終わってから探そうと思っているけど」

 

 真那がそう小夏に応えると小夏はこう切り返した

 

「購入した武器も使い手様に調整―――特に握りの部分を弄る必要が必要があるから先に選んだ方が良いわよ」

 

 真那はあーと声を上げる。持ち手のサイズが合っていないと武器が使いにくいのは間違いがなく、とくにトラと真那は成長期の中学生である。

 

 社会人が一般に使う奴ではサイズが合わない可能性が高い。真那も指摘をされて気が付いたのだろうトラを見ると詫びる様にいう

 

「ごめん。先に武器選ぶわね。」

 

「気にしなくて大丈夫だよ。―――こちらも終わったらそっち行くから」

 

 そういうと、小夏が真那を先導し武器が置いてあるコーナーへと連れて行く。当然であるが従者のシルキーと忠犬・白狼天狗はそのあとをついて行く。

 

 それを見送り、数分経過しただろうか。奥の方からボディービルダーの様にマッチョな男がやってきた。

 

「いらっしゃい。さて、今日はどんなようだい?」

 

 一言でいうと暑苦しい男だった。ムキムキの身体に長袖の服とエプロンを纏い。髪の毛なスキンヘッドそっているのか天然かは不明だ。

 

 流石は現役の冒険者と言ったところだろう。ガタイからして一線を隔している。

 

 冬真はテーブルへとトラを案内、腰を掛け商談が開始する。

 

 トラは"Murderer's machete"を手に取るとテーブルの上に置くと、冬真に対し予定していた依頼の内容を言う

 

「これはガッカリ箱で手に入れた魔道具なんだけど、これに2mぐらいの長柄を付けて槍にしたいんだけどできる?」

 

 興味深げに"Murderer's machete"を見る冬真。しばらく観察を続けると納得したのかテーブルの上に置く。

 

「まぁ、そこそこの鉈だな。ガッカリ箱でこいつを手に入れたんなら相当運が良い。」

 

「まぁ、ビギナーズラックかな。」

 

 冬真のそこそこの鉈という言葉にやっぱりそこそこと言ったところなんだなと納得し苦笑する。トラはラッキーな冒険者と言ったところだろうか。

 

 武器改造のプランについてトラは冬真から説明を受ける。

 

「武器を鉈から槍に改造するのはそこまで難易度が高いわけでないからすぐにできるが、元々のデザインがホラー系だ恐らく影響受けるぜ。」

 

 冬真のその言葉に渋面になるトラ、出来れば真っ当な外見の槍にしたかったのだがそうもいかないらしい。

 

 トラは嘆息し運命から逃れられないことを悟った。

 

「槍への改造ってだけならまぁ半日で出来らぁな。夕方ぐらいまでに間に合わせとくから取りに来てくれよ」

 

「了解。結構早いんだな。」

 

 トラの発言に冬真は不敵な笑みを浮かべ答える。

 

「そりゃぁ、俺はプロだからな。長柄にするだけならそんなもんよ。代金はまぁサービスだ10万で良いぜ。前払いはできるか?」

 

 プロであるという自負を込めた発言にトラは納得させられる。この店は評判の良い店だったし、問題は無いかと考えた。

 

「電子マネーでよければ大丈夫だけど」

 

 冬真の返事はOKだった。トラは会計を済ませると、預かり証を受け取る。"Murderer's machete"を受け取った冬真は奥の鍜治場へと引き込んでしまった。

 

 真那は小夏と会話をしており、真剣に話をしていた。流石にあれを邪魔するのは悪い。

 

 そう考えていると、不意に誰かに呼ばれ様な気がした。

 

 呼ばれた方を見ていると、じーっと美しく白く装飾の施された散弾銃をみている蓑草鞋と、こちらを見ていた苧うにがいた。

 

 苧うに達の方へ近寄り声をかける

 

「なんかいいものをみつけたのか?」

 

 トラを見て、少し怯える蓑草鞋。言おうか言うまいか迷っていると、苧うにが口をはさむ

 

「嬢ちゃんはそこの散弾銃が気に入ったみたいでナ。―――俺としてはマスターの気前のいいところを見せてもらいたいと思っていたところサ」

 

 苧うにの言葉に苦笑する―――気前がいいと言っても昨日冒険に出たばかりでそこまで金があるわけではない。

 

 とは言え、砲術スキルもちの蓑草鞋に銃を買うのは悪い選択肢とは言い難い。値段次第では買ってもいいかと思い銃に目を向ける。

 

 値段は20万円程度―――デザインの割には破格の値段と言える。手が届く値段。少し悩んで蓑草鞋に声をかけることにした。

 

「蓑草鞋、この銃が気に入ったのか?」

 

 トラの言葉対し、蓑草鞋は少し悩んだ様子を見せ―――短くではあるが素直に答えた。

 

「―――はい」

 

「分かった。」

 

 トラは現状を整理する。

 

 まず、今後の戦術的に蓑草鞋に銃を与えるのは間違いではない。

 

 次に、疑心暗鬼のマイナススキルを持つ彼女がマスターであるトラに対し、迷いながらも銃が欲しいという意思を示した。

 

 最後に兄のやらかしに家族が多少の泥をかぶるのはやむを得ない

 

「じゃぁ、買おうか。ダンジョンでの活躍期待しているよ。蓑草鞋」

 

 蓑草鞋は不安そうにトラを見上げていた。驚いた風に目を開き、「ありがとうございます。」と答えた。

 

 それを見た苧うには満足そうに頷いた。

 

「必要な出費を惜しまないのは良い対応サ。マスターがケチじゃなくて、良かったヨ。」

 

 苧うにの言い分にトラは苦笑するしかない。どうやらトラの判断は彼女にとってもグッドコミュニケーションだったようだ。

 

 とはいえ、彼女には生産系のモンスターとして色々と働いてもらわなければならない。気分よく働いてもらえるならそれに越したことはないだろう。

 

 どうやら、真那達の買い物も終了したようだ。小夏と二人でトラのところへとやってきた。

 

「おや、面白いのを見つけたね。それは割と掘り出し物だよ。」

 

「掘り出し物って、大分安いけど―――どうして?」

 

 小夏にトラが質問を投げる。その質問に対し、そりゃ疑問に思うよね言いながら、小夏は解説を始めた。

 

「そりゃぁそうよ。10年以上前に生産された中古品よ。性能については大丈夫。少し前に前の持ち主がダンジョン向けにカスタマイズしたときに色々豪華に改造したから」

 

 そりゃぁ古い銃の改造品だからと値段が安いことについて理由をあっさり話す小夏。

 

 豪華に改造したのがどうしてここにあるのか分からないトラ。普通は大切に使うもんじゃなかろうか?

 

「豪華に改造したのが何でここに?」

 

 当然と言えば当然の質問、小夏はそれを聞いて苦笑して回答をする。

 

「このデザインさ。奇麗なんだけどちょっと派手でしょ?改造した子の仲間に不評だったみたいでね。結局手放すことになったの」

 

 まぁ普通、銃と言ったら武骨なデザインをイメージする。この銃は少しばかり繊細で美しすぎた―――人によっては不評だろう。

 

「それを私が回収したというわけ―――外見が好みじゃないって人が多くて残っちゃってて、引き取ってくれる人が出てきて嬉しいねぇ」

 

 蓑草鞋を見てみると、真那とシルキーが傍にいて銃について似合っているとか色々とほめていた。

 

 今更買わないなんて言えない状態である。

 

「アレも買うよ。銃弾も500発分用意しといてくれない?オレの武器が完成するときに一緒に引き取るからさ」

 

 その言葉に小夏はにんまりと笑う。

 

「まいどあり~じゃぁ準備しときます。掃除道具もオマケしておくからね」

 

 そういうと小夏は商品と引き換え用のタグを取り出すとトラに渡す。

 

 とりあえず、武器の用事は済ませたと言ってもいいだろう。後は細々としたアイテムを購入するだけである。

 

 モノがあればになるが、糸の原材料を手に入れて、苧うにに防具を作らせる必要もある。

 

 今日はあまり時間がない―――メモ帳に書いてあったリストをチェックすると、トラは蓑草鞋たちのところへ向かっていった。




【う・ん・ち・く】
銃器の使用許可について

☆1だと使用できる銃器は散弾銃のみ、ソードオフも不可
☆2でライフルが解禁
☆3で自動小銃が解禁
☆4でそれ以外の銃器が使えるようになる

しかしながら、拳銃については携帯できる銃器ということもあり厳しい審査を乗り越えなければ購入することができない。


※上記はオリジナル設定です。
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