宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
本作ではそのような意見も来ることを前提としてシナリオを作ってましたが今回前倒しの番外編として、波動砲条約の背景についての話をします
時系列的には「力の咆哮の方向」と「その身を纏うのは力のカタチ」の中間に当たります。
国際波動砲使用制限条約。
コレは地球人からすると厄介極まりない条約であった。なぜなら、波動砲の対象を制限するのは、ヴンダーの手数を減らすことになるからだ。
一応かなりの重武装に仕上げたが、波動砲の制限の分を補填することは完全には出来なかった。
今回は、そんな条約に不満を抱く男を書いていこう
芹沢虎徹は自分の執務室で「Wunder」…「旧buße」の改装状況を確認していた。
双胴式波動エンジンに陽電子衝撃砲搭複数機、対空パルスレーザーにホーミングレーザー。人類が考えたが、エンジンの問題で搭載出来なかった兵器が全て取り付けられることに芹沢虎徹は感嘆の声を上げていた、だが、1つ受け入れられないものが1つある。
そう、波動砲条約である。
波動砲の対象を制限されたことでWunderは、「波動砲での対艦攻撃」という最強に近い手札を失った。
暁第1主任設計士と睦月第2主任設計士はそれをカバーできるだけの武装を途中追加したが、どうも引っ掛かる事がある。
条約の発案者は誰なのか……
そもそもあの異星人「ユリーシャ」には設計図を見せてないから「波動砲の存在を知らないはず」だ。知っているとするならば、「誰かが漏らした」と考えるのが妥当だろう。そして、条約を結ぶことを考えた。
調べなければな……
早速芹沢は自分の側近を呼び出した。
「それで、ご要件というのは」
「うむ、この波動砲条約の事なんだが、私は条約を思いついたのが地球人ではないかと考えている」
芹沢は自分の仮説として「地球人が条約を思いついた説」を話した。正直根拠はないが、どうもそうとしか思えない。
「それなら、ユリーシャさんの近辺を調べてみるのはどうでしょうか?彼女に条約締結を話した人物なら彼女とよく会っているはずです」
確かにそうだ。しかし、ユリーシャが泊まってる宿舎はプライバシーの問題もあり、監視カメラに盗聴器はない。
「しかし、どうやって調べるというのだ?」
「あの宿舎にはカメラはありませんからね。古臭く聞き込みをしてみます。」
「うむ、頼むぞ。私は設計主任の2人に会ってみる」
こうして条約の張本人探しが始まった。
芹沢は「暁・睦月研究室」と書かれたプレートが掛かっている扉の前にいた。まずは、あの船の設計者であり、波動砲開発に関わった人に話を聞くべきと考えて、芹沢はココに足を運んだ。
正直マーズノイドには少し抵抗がある。元々内惑星戦争で争っていたのだから。
でも、意を決して呼び鈴を押した。
ピンポーン♪
(はーい)
女性の声が聞こえた。暁主任か
「ハイハイ、あ!芹沢軍務局長!!どうぞどうぞ!」
暁主任は研究室の応接間に芹沢を通した。そしてお茶とお茶菓子を出した。
「局長が直接いらっしゃるなんて珍しいですね。本日はどう言ったご要件で」
そういえばあんまりココには来ないな、私。
「うむ、波動砲条約についてなんだが、君はあの条約をどう考える?」
「あの条約は今後の地球人にとって必要な事だと考えてます」
「どういう事だ?」
「人類が手にしたオーバーテクノロジーは破壊の咆哮を生んでしまった。そして、人類は手持ちの技術を発展させて生活を豊かにしたり、戦争を有利に進めてきました。しかし波動砲は発展させてはならない兵器であり、その力で人間同士で争ったらお互い自滅します」
「なるほど。自滅回避のために必要だったということか、だが、ホントに争うのか?」
「現に地球と火星は独立をかけて争いましたよ。」
「むぅ……しかし、波動砲の対艦攻撃が出来たら良かったのだが」
そこが肝心であった。対艦攻撃が出来ないことがどうしても芹沢は残念だったからだ。何度も言うが、波動砲を使用した対艦攻撃は最強に近い手札である。
「それはイスカンダルの過去が関係してるんだと思います。イスカンダルはこの技術で大帝国を築いた。恐らく、戦闘時の手札は敵のアウトレンジから波動砲を撃つことだけだったでしょう。さあ、それは何故でしょうか?」
芹沢は軍務局長らしい回答を考えた。
「?無駄な犠牲を一切出さずに勝つ必要があるからか?」
「う~ん、それも考えられますが、実際は無敵だと錯覚してしまっていたからとか、力に溺れてしまっていたからだと思います。」
「一撃必殺で倒せそうだからな、波動砲は。力に魅了されて波動砲艦増産に動いたら超軍国主義国家となってしまうな」
「そして、その愚行を恥じた、もしくはイスカンダル内でいくつかの派閥に別れたのでしょう。」
「派閥?平和主義 対 軍国主義のようにか?」
「はい、そして争って、争いに疲れたイスカンダルは現在の救済の星となった。ここまでが私の考えです」
なるほど、それなら私でも分かるな。「私たちと同じ誤ちをして欲しくない」という事か……
「だから波動砲条約を各国間で結ばせた…」
「はい、条約の発案は私たちです」
その声で、睦月第2主任設計士が出て来た。
隠れていたのだ、合図が来るまで。
「何だって!?君たちがやったのか?!」
芹沢は何となくだが「条約の発案者は開発者の中にいるのでは?」と思っていたが、まさか両主任だったとは……
「私たちは波動砲の設計が完成した時、発射時の攻撃範囲と破壊可能な質量の限界をシミュレーションにかけて調べました。」
「その結果、波動砲は僕たちの考えたよりも遥かに広い攻撃半径を持ち、膨大な質量を破壊できることを知りました。オーストラリア大陸位なら消し飛ばせます」
「それはあの時の説明で聞いた。要はそれを人に向けなければ良い話なのではないのか?」
「それだけではダメです、人類の中には過激的な思想をお持ちの方がいます。『地球が復活したら軍備を増強して、波動砲艦増産だぁ!』って考えてる人も軍上層部内部では少なくないはずです。それこそ、イスカンダルと同じ道を歩んでしまう。」
「私たちと真田さん、ユリーシャさんで、考えに考え抜いて『波動コアを人質に取る形での条約締結』を考えつきました。波動コアがなければエンジンは動かない、約束すれば波動コアは譲渡される。波動砲での対艦攻撃戦法を考える人も、その考えは『波動エンジンが動くことが前提』なので、条約を受け入れるしかない。受け入れたら波動砲で対艦攻撃は出来ない。こういうカラクリとなっています。」
「うぅむ、とんでもないことをしてくれたなぁ…。」
「それに、波動砲はイスカンダルでは忌むべき技術だとユリーシャさんから聞いています。イスカンダルへの航海中に敵が来る度に『波動砲発射ぁッ!』ってやってドカドカ撃っていたら、スターシャさんが放射能除去装置を渡してくれるかどうかももっと怪しくなりますよ。この条約はスターシャさんへのアピール的な側面も持っています 」
「「ご理解頂けますか?芹沢軍務局長」」
やられた……彼らはただ単に波動砲での対艦攻撃を防ぎたいだけではなく、放射能除去装置が受け取りやすくすることも考えていたのか……。
なかなかな策士じゃないか…この2人は…
「分かった…そこまで考えたなら私は何も言わん。だがあと1つ聞いておきたいことがある。ユリーシャが監査官としてあの船に乗るのも君たちの考えか?」
「「はい!」」
「あ、でもユリーシャさんの希望でもあるんですよ」
頭痛薬が欲しくなってきた…2人の主任の考えは確かに人類のためだが、波動コアが人質となるのはマズイだろ…。
でも、芹沢の「軍人としての自分」が、冷静に撤退を勧告した。
「お邪魔したな、暁主任、睦月主任。君たちを信じてみよう。」
「振り回してしまってごめんなさい、芹沢軍務局長。」
「君たちが地球の事も考えて条約を結んだなら私は特に口を出さんよ。すまない、最初は『単に波動砲での対艦攻撃を避けたい』だけだと思ってた。」
「だが、そこまで考えていたなら、君たちの条約にかけてみようと思う。」
「局長…。」
「君たちもその船に乗るといい、波動砲開発者であり、制限条約の発案者でもある君たちなら、スターシャさんともちゃんと話が出来るだろう。」
この言葉を残して、芹沢は研究室を後にした。
執務室に戻った芹沢は聞き込みをしてきた側近の話を聞いた。聞き込みをしていた所を「散歩しようとしていたユリーシャ」に見つかり、波動砲条約の意味について全部聞かされたそうだ。
「局長、1杯食わされましたね…」
「そうだな、彼らなりの保険がかけられているのはよく分かった」
しかし、波動砲での対艦攻撃なしでホントに大丈夫か?
最後までこの不安は残り続けた。
その後、
内線を取った芹沢は自分の部下に連絡を入れた。
『新見君かね、頼まれて欲しいことがある』
波動砲条約の話、お終いです。
条約制定により、
波動砲の対象を制限することで対艦攻撃は不可、『発射回数は減る』、つまり「最悪の力に溺れず、正しく運用出来ていた」ことをスターシャにアピール出来ます。
証人としてユリーシャもいます。放射能除去装置が貰える確率も上がるでしょう。
番外編はまたやるかも…。
コメントとかでどんなの読んでみたいか意見貰えると嬉しいです。