宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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はい、第11番惑星の戦い(2回目)です


A magician on the battlefield. -AW4年4月2日- Part1

 地球の大道芸人、悪戯神(ロキ)、ホームアローン、絶対に敵にしたくないやつ。

 

 この数々のあだ名は、全て1人の人物を指している。

 ガミラス戦争時にはアステロイドベルトを上手く使いガミラス艦隊に手痛い損害を与えることも成功した彼は、戦後もWILLEとして艦隊指揮官に座り続けている。

 

 そんな彼は、ガミラスとの演習でとあるトラップを仕掛けた。実戦火力で投入すれば即死級の、だ。流石に演習だという事は理解していたので威力は押さえていたが、それでもガミラス艦隊を恐怖させる程度には強力だった。

 

 アレックス・ホッパー一佐。第2防衛艦隊所属のナガト型ミズーリを駆る奇将の姿は、第11番惑星にあった。

 

 

 

 

 AW4年 4月3日

 第11番惑星沖

 通称 ガトランティスベルト

 

 第2防衛艦隊(北米) 実働艦隊

 ナガト型航宙巡洋戦艦ミズーリ

 

Target acquisition completed(目標捕捉完了)

 

It's time for some fun(バカ騒ぎの時間だ)

 

 ガトランティスベルトを盾にするように隠れた第2防衛艦隊実働艦隊は、一斉にとある装置を起動した。

 

 マグネトロンウェーブ照射機だ。

 小惑星やデブリに突き刺したマグネトロンプローブにそれを照射する事で、プローブが突き刺さった対象を引き寄せたり移動させる事が出来る装備だ。

 内惑星戦争時に発明されたそれは、主にアステロイドシップと呼ばれる追加装甲を構築するために使用された。

 が、発想の転換という言葉もある。特にこの男にはそれがある。

 

 だが____ありすぎて逆に怖いとも言われる。

 

 

「マグネトロンウェーブ照射」

 

「プレゼントだ受け取れ!」

 

 照射を受けたデブリが意思を持ったように移動を開始し、ラスコー級に向かっていく。だが、ただデブリをぶつけるだけなのか? それでは芸がない。全くもって芸がない。

 そう考えたホッパーは、1つ仕込みをする事にした。

 

「KREDITと戦術機には頭が上がらないな。爆雷をデブリにねじ込むとか、あんな危なっかしい仕事を手伝ってくれたんだからな」

 

「いつも通り、礼の品を用意しませんとな。そうですね……第11番惑星の基地に放棄された物資とか」

 

「可もなく不可もなく、ってとこだな。でもまあ悪くない。あそこには戦術機の弾薬や手持ち武器も置きっぱで避難してたし、パーティーが終わったら回収頼んどくか」

 

 漆黒の宇宙に爆発の花が咲く。()()()()()()()を捻じ込んだデブリがククルカン級に接触し、被弾した部分が大きく削り取られた。

 バランスを崩した隙を逃さずさらに爆雷入りデブリが着弾し、デブリと爆雷とプローブだけで撃沈をもぎ取った。

 

「一佐ってえげつないですね」

 

「味気なかったんだよ。それに、戦場にあるものは何だって使え。幸い外は真空だし、相手がギャーギャー騒いでも何も聞こえやしない」

 

「地上でそんなゲスい笑顔しないでくださいね? あ、あれはヤバい奴ですね」

 

「総員対ショック対閃光防御。行くぞ_______boom(ドカン)!!」

 

 一際大きな爆発が発生し、ラスコー級が丸ごと消滅した。それだけでおさまらず、周辺のナスカ級、ククルカン級もまとめて数隻が消し飛んだ。

 一瞬のうちに生まれた偽物の太陽はその宙域を目も眩む程の閃光で照らし、まるで花火の様に散って行った。

 

「N2爆雷の起爆を確認」

 

「何なんですかアレ……」

 

「マッドな連中が集う国際設計局が発案して、南部火工が生み出した最強の爆弾──『Non Nuclear爆弾』だ。“試してみてね”って渡されたけど、まさかここまでとはな」

 

 副長が補足説明を入れる。

 N2爆弾と言われるこの兵器は、22世紀中盤に「核ではない方法で核を超えようと挑んだ」マッドな興味の産物だ。

 中心温度100万度を超えられるこの爆弾は何もかもを焼き尽くし、大気圏内での使用を固く禁じられる事となったが、大気圏外で汚い花火(敵を巻き添えにして撃つ花火)を打ち上げるにはもってこいな兵装だ。

 

「ああそうだな。それじゃあ花火大会は終わりだ、砲雷撃戦用意。いいか、こっちが狙って1発撃つ間に向こうは10発撃って来る。だが焦るな。焦りこそが、敵よりも恐ろしいものだ。良い仕込みも出来やしないからな」

 

 ________

 

 

「何だ、何がどうなっている!?」

 

「我がガトランティスの残骸を投げつけてきただと!? おのれ我らの死を侮辱するつもりかっ!!」

 

 汚い花火の跡地で奮戦を続けるガトランティス艦隊、その提督「コスモダート」は酷く憤慨していた。

 この宙で散った戦士達、艦達の残骸を「悪用」しているのだから、誰であっても憤慨するだろう。

 

「メダルーサを出せ! 焼き払ってくれるわ!!」

 

 宙域に強行ワープをしたメダルーサ級がエネルギーダンパーを起動させ、ものの数十秒で火球を生み出す。

 ここなら、例の壁もない。転送投擲機も正常に動く。確実に空間跳躍を使い狙える。

 

「火焔直撃砲発射ァ!」

 

 ━━━━━

 

 

「空間波動エコー、火炎砲です!」

 

「全艦回避、巻き込まれないようにな」

 

「そう来るよな」と余裕そうなホッパーは回避を命じる。既に火炎直撃砲の回避方法は確立している。波動防壁を分厚く纏い、軽快な機動性で安全マージンを広く取って回避をする。

 

 さらに爆雷入りデブリをそれとなく艦隊の近くから離していき、3発の特殊魚雷を放った。

 

 突き進む魚雷の外装が外れ何かの粒子をばら撒いた。人工太陽の光を受けキラキラと光っているが、その正体はかく乱幕ではない。

 

 当たり前だろう、ホッパーがそんな「有効だけど地味な芸」をする筈がない。

 

「火気厳禁。……boom(ドカン)!」

 

 適当な爆雷入りデブリを点火させる。

 ただ1発、適当な位置にある爆雷入りデブリを点火させると、散布宙域は火の海になった。

 艦隊を丸ごと包み込むような爆炎は目も眩む程の閃光で、ホッパーは対閃光ゴーグルをつけて鑑賞していた。

 

「撹乱幕の副産物だ。ゴミって訳でもないんだよ」

 

「使えるかどうか分かんない武装は大抵うちに来ますよね。危険だから使いあぐねていたんでしょう」

 

「ゼッフル粒子だってさ。元ネタは、アニメとか言ってたな」

 

 これもアニメが元ネタらしい。

 元ネタは無臭・透明で、一定量以上の熱量やエネルギーに反応して制御可能な範囲内で引火爆発を起こすガス状の物質らしい。

 が、これは光学兵器かく乱幕の開発過程で生まれた()()()であり、エンジン熱程度では発火しないが光学兵器並みの熱量であれば激烈な反応を示し、環境を問わず引火爆発を起こすのだ。

 

 扱いは慎重に、と厳命されたのも頷ける効果だ。

 

「で、これだけの大爆発でも、ギリギリ沈まないんだよな。……さて、お前ら、射的の時間だ」

 

 爆炎が収まった宙域で黒焦げたガトランティス艦に向け照準が向けられる。センサーや対空火器が損壊を受けスラスターも焼け付いた。使えるのはメインエンジンノズルくらいで、満足のいく回避は望めない。

 

「fire」

 

 その声にこたえるように、全艦隊の主砲が一斉に火を吹いた。VSPSTの鮮やかな水色の光は残ったゼッフル粒子を引火爆発させながらラスコー級を射抜き、ククルカン級を消し飛ばす。

 真空の中、黒焦げた艦体を貫く光条がいくつも走る。

 耐えられるはずがなかった。ゼッフル粒子の熱爆発を浴び、センサーと電装を損壊された艦は、ただの鉄の塊に過ぎない。

 

 回避しようにも、スラスターが沈黙している。迎撃しようにも、CIWSは全基故障。

 しかも艦橋機能が喪失し、完全な“無頭”状態だ。

 

 まるで、屠殺場に並んだ牛のように。

 ガトランティス艦は次々と砲撃に飲まれていった。

 

「稼働中の艦艇、ゼロです」

 

「警戒行動に戻ろう。仕込んだ大道具、もう使っちまった」

 

「仕込むにしても、今回みたいな大道具は時間かかりますから」

 

「環境活かして手持ち道具を使うしかないか。幸いあと10時間で交代だ。ペンシルベニア率いる交代の艦隊が来てくれる。そうすれば、一旦戻れるぞ」

 

「そうしたらどうしますか?」

 

「墓行って酒供えて準備班に差し入れだな」

 

「変わりませんね」

 

 副長の言葉に、ホッパーは肩をすくめた。

 

「変わる必要があるか? 俺が変わると、誰かが事故るだろ?」

 

「それは……否定できませんが」

 

 ミズーリの艦橋には、一瞬だけ気の抜けた空気が流れた。

 だがそれは安堵ではなく、“終わった仕事を一時的に脇に置く”という、軍人特有の儀礼的余白に過ぎない。

 

「損傷あるか?」

 

「……胃薬の残量は減りましたね」

 

「お前の胃じゃなくて艦体の方だ。……あ、お前も慣れたか」

 

「……嫌でも、慣れますよ。一佐の下じゃ」

 

 副長はモニターに視線を戻しながら呟いた。

 しかしその声には疲労ではなく、わずかな安心が滲んでいる。

 

「VPS装甲に微細な熱歪み。ゼッフル爆炎の余波ですね。爆炎の影響であとはセンサー系の再調整が必要です。これくらいなら現場で可能です」

 

「大破なし。よし、充分上出来」

 

 ホッパーは満足げに腕を組むと、周囲のクルーに視線を巡らせた。

 

「各班、通常配置に戻れ。ブリッジ班は30分交代で休息を取れ。……たまには寝とけよ。次に何が起こるか、分からんからな」

 

 その指示は、珍しく“まともな艦長”のそれだった。

 誰も突っ込まないあたり、ホッパーの“戦後の顔”が浸透している証拠だった。

 

 

 

「副長」

 

「はい」

 

「お前もだ。せめて……30分、横になって来い。胃薬持って」

 

「……命令なら従います」

 

 軽く敬礼して、背を向けかけたそのとき、副長はふと足を止めた。

 

「──本音を言えば、演習するたびに死ぬ思いしてます。胃だけで済んでるのが奇跡だと思ってます。でも」

 

「でも?」

 

「……でも、それ以上に“面白い”んですよ。一佐の戦い方って」

 

 

 

 ホッパーは笑わなかった。ただ、一瞬だけまぶたを伏せた。

 

「……だったら、もう少しだけ、付き合ってもらうか」

 

「ええ、せめて胃が溶けるまでは」

 

 

 

 副長が去った艦橋に、静寂が戻る。

 その静寂は、決して無音ではなく──“勝者だけが許された、戦場の沈黙”だった。

 

 

 ____________

 

 

 

「コスモダートが散ったか。敵将の(いくさ)は侮辱的ではあるが、確実に勝つための戦い……使えるものは何でも使う、変則的な戦い方だ。だが──手品の種は、すでに使い切ったはずだ」

 

 メーザーはカラクルム級ゼルカラムの艦橋でそう呟いた。

 相手はその辺に転がっているデブリでさえ武器に変えられる手品師だ。だが、手品の種はあらかじめ仕込むべきもの。種が割れている今なら、落とせる。

 

「軍を集めよ。コスモダートの無念、ここで払ってくれようぞ!」

 

 

 ____________

 

 

 

「……賭けていい」

 

「増援……とか言わないですよね」

 

「その増援だ。50隻潰す為に仕込んだ大道具使っちまったからな。手持ち武器で色々するしかない。さてどうしようか……お前らもやれそうなこと挙げてけ。出来るかどうかは後で考える」

 

 ホッパーの一言に、艦橋にいた全員が一瞬、静まり返ったが、すぐにそれぞれの席で手を動かし始める。

 彼らはもう分かっている──この艦長の「無茶振り」は、即ち“生還の唯一の道”だと。

 

「艦長、戦術機のペイロードならプローブをコンテナに3つ詰め込んで運べます。追加で出来たデブリに刺すのもいいかと」

 

「へぇ、爆雷投射機でも届かないとこの小惑星も使うのか。手持ちミサイル感覚で撃てるな。どうだできそうか?」

 

「震電は腕力もあるいい子ですからね。片腕で1発ずつ。プローブに換算して14発いけます」

 

「あら優秀だな、採用」

 

「艦長、プローブで敵艦隊に投げつけた隕石に向けて砲撃しましょう。VSPST1速で破壊しない程度に撃って遊星爆弾の真似事しましょう」

 

「お前人の心ねぇだろ。採用」

 

「お前何言ってんの?」と発言者に視線が向くが、ホッパーは気にしない。冷静に鋭くツッコミを入れて即時採用をした。

 

「これガミラス相手ならやり返せたけどなぁ、ほら遊星爆弾」

 

「録画して設計局にでも送ってやろうぜ。アイツらこういうの気にせずにインスピレーション働かせるし」

 

「何だかんだ言ってお得意様だからな俺ら」

 

 環境に笑いが生まれ、少しだけ空気が緩む。緊張感が無いように見えるが、緊迫している時こそ笑いと気の余裕が必要だ。

 その余裕を燃料にしてホッパーは頭の中で手品を組み立てていく。演習では絶対できないような手を捻じ込み、宇宙という3次元の部隊を最大限に生かす方法を考える。

 

 ふと、ホッパーの頭に1つのアイディアが思い浮かんだ。

 

(呼ぶか……? いや呼んでも間に合うか?)

 

「第4防衛艦隊呼べないか?」

 

「応援要請でしたら出来ますが、珍しいですね?」

 

「餅は餅屋なんだよ。多分バカみたいな数が出てくるから待機艦隊だけじゃヤバい。中華料理は火力が命だからな。今回は第4の火力を頼らせてもらうぜ。うし、じゃあこうするぞ」

 

 ホッパーは艦橋要員と甲板部、戦術機部隊のパイロットを集めると作戦を指示した。あきれ返る者、ニヤニヤする者、「なるほどそう来たか」と妙に納得する者、何も言わずに準備に取り掛かろうとする者、様子は様々だ。

 

「またまた変な作戦を考えましたね。で、中華は来るんですか?」

 

「強めのガスコンロが欲しいって言ったら『強火でいいなら急行する』ってよ。あと、うちの待機艦隊が増援で来てくれる。到着したら第4と合流してもらうか」

 

 

 _______________

 

 

 

 東アジア管区

 青島(チンタオ)宇宙港

 第4防衛艦隊待機艦隊 旗艦 ナガト型航宙巡洋戦艦 定遠

 

「親愛なる東アジア管区の将兵諸君。北米の奇術師が、我が艦隊の“火力”を所望だ。しかも、我々のことを“ガスコンロ”と呼んでな。……笑わせる。我らは中華コンロの如く高火力で応えてやろうではないか。光学だろうが実弾だろうが、何でも来い──“圧倒的火力”、それが我々の矜持だ。諸君らの働きに期待する!」

 

 定遠の艦橋で、() 雲海(ウンカイ)宙将はそう演説をした。

 彼もまたガミラス戦争を生き抜いた生え抜きの指揮官で、正確無比かつ苛烈な砲撃を繰り出す名手だ。

 高圧増幅光線砲が通じなかったガミラス戦争では、複数艦を指揮し、1隻の敵艦の一点を集中して砲撃することで、損傷を与える戦術を成功させた実績を持つ。

 

 

「我らを“ガスコンロ”扱いとはな……。あのふざけた若造には、一度“本場の四川麻婆”を食わせてやらんとな」

 

「本場は、アメリカ人には辛すぎますよ」

 

 士官の1人が苦笑しながら言う。彼は雲海から何度か料理を振舞われているが、中華に慣れ切った舌でも辛いと思う事が多いのだ。

 

「だからいいんだ。オムシス食糧でも死ぬほど美味いやつを食わせてやる。アイツはふざけてるが有望なのは間違いないんだ」

 

「全艦隊発進準備完了。離水いけます」

 

「よし……今から少し柄にもないことを言うが、まあ気にするな。では諸君──料理の時間だ」

 

 定遠の波動エンジンが目覚め、錨が上がる。補助エンジンが光を強め、定遠はまるで準備運動をするかのように、その巨体をゆっくりと動かし始めた。

 

 微速前進から両舷半側、小走りになる。

 黄海の開けた海を目指し進み、その海を眼前に捉えた。

 

「フライホイール接続。離水、定遠発進」

 

 メインエンジンノズルから爆発的な光を放ち、定遠を先頭とした待機艦隊が一気に離水していく。

 

 青島宇宙港は、宇宙港として地形的にも理想的な地点である。広々とした湾を使い離着水が容易で、黄海を目の前にして大きく開けた地形を活かし、約60隻の艦艇が洋上で整備可能な構造になっている。

 それだけではない。第2世代艦は潜水艦のように耐圧性能にも優れていて、空間装甲として設けられた部分をメインタンクにする事で潜水と浮上が可能だ。

 それを活かし、艦艇が水中から進入可能な整備用の水中ドックも設けられている。

 

 その為、実際の受け入れ可能隻数は100を超える。

 

 定遠の離水後、その水中ドックから発進して浮上した艦艇も浮上し、合流30隻ほどの艦隊となりして一気に大気圏を離脱する。

 “見えない翼”が艦隊を宇宙の彼方へと押し上げる。こうして、第4防衛艦隊は大気圏を抜け、宇宙という大海原へと躍り出た。

 

「目標は、第11番惑星付近に展開する“あの若造”の艦隊だ」

 




part2は修正完了次第後日公開します
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