宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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この章はこの話でラストです
ヴンダーへの改装から始まります。

章タイトル回収!


贖罪の船から奇跡を起こす船へ

第5話 贖罪の船から奇跡を起こす船へ

 

改設計を完成させたハルナとリクと真田さんは極東管区の藤堂長官に直接設計図を提出した。

 

「この短期間でよく完成させてくれたっ!」

藤堂長官は最大級の賛辞を3人に送った。

「いえいえ!ちょっと睡眠不足ですが、上層部の要望も込みで最大級の戦艦を設計出来て楽しかったですよ。」

 

3人とも目の下にうっすらとではあるがクマが出来ている。

それを見た藤堂長官は…

「君たちに無理をさせてしまい本当に済まない…」

頭を下げたのであった。

 

コレには3人ともビックリ、極東管区の責任者が技術屋&設計士2人に頭を下げているのだ。でも、自分の部下にもしっかりと頭を下げれる上司には人がついて来るのだ。そこが長官としての彼の光る部分だろう。

 

「長官!どうか頭を上げてください!?」

「私たち頑張って仕事しただけですよ!?」

「!…。」

 

1人だけフリーズしているが(ハルナ)藤堂長官にとってそれが彼なりの筋の通し方であった。

最高の上司に会ったね、「3人とも」。

 

とにかく、話を進めなければ。

 

「では、この設計図を2日後の国連のリモート総会で発表して、協力してくださる管区と企業に声を掛けよう。君たちはゆっくり休んで欲しい。」

 

「はい!」

「後はよろしくお願いします!」

 

「うむ」

 

その後3人は、1度『暁・睦月(あかつき・むつき)研究室』に戻ったら眠気の限界が来て布団にバタンキューしたのであった。

「むにゃむにゃ、お腹いっぱい…えへへー」

「んにゃ、行くぞ!ヴンダー発進っ!!」

「……こんなこともあろうかと♯☆Σฅ●╬ω∀を作っておいたのだよ…」

 

全く、技術畑の人は寝言までおかしいのか…。

 

 

 

 

3人が爆睡した2日後、藤堂長官は決戦に望んでいた。

 

(この改装には極東だけでは間に合わない、世界の協力がどうしても必要だ。最低でも南部重工クラスが2社欲しいが…)

 

現在の各管区の体力はまだ余裕がある。その余裕がいつ尽きるか分からないが、頼める時に頼んでおかないと後々悲劇を見るのは私たち人類である。

それに、この先通信が上手く繋がらなくなる可能性も充分ある。尚更だ。

 

『では、第48回国際連合リモート総会開催をココに宣言致します。前回と同じ様に各管区の状況を報告してください。』

 

このリモート総会は地球が荒廃してから定期的に行われている「現状報告会」である。

 

各管区の状況が次々に報告されていく。どこも余裕が少なくなってきているのは明らかだ。

『次に極東管区のトウドウ長官、報告をお願いします。』

 

「はい、現在極東管区では食糧、エネルギー共に減少傾向にありますが、生命維持に支障が出るほどではなく、暴動も発生しておりません。そして、以前の総会でご説明しました『恒星間航行宇宙戦艦』の改設計は先日、完了いたしました」

 

スピーカーから各管区責任者の驚きの声が上がる。

 

さて、本題はココからだ…

 

「そのことについてご説明しなければならないことがいくつかございます。お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

『許可します。どうぞ』

 

「ありがとうございます」

ココから藤堂長官の勝負が始まった。

「先程各管区に送信した改設計を完全に完了させるためには極東管区の艦船製造能力だけでは、残念ながらどうしても足りません。そこで、各管区の造船企業の皆さんに改装のご協力を頂けないでしょうか」

 

会議がざわめき始めた。こんな余裕の少ない状態で改装を手伝えだと?巫山戯るな。

 

内心そう思ってるだろう。

 

 

 

しかし、救世主はいるものだ。

 

 

 

ある企業が名乗り出た。

 

『ユーロ管区、フランスのエプシロン社、代表取締役のカイル・アルトスです。まずはどの部分の手伝いがいるのか教えてください。うちの会社の得意分野があるかもしれない。』

エプシロン社は南部重工に匹敵する大企業である。過去に第2次内惑星戦争ではユーロ圏に巡洋艦を製造していた知らぬ者はいない世界的大企業である。

 

「! はい!改装支援をお願いしたい箇所は装甲の1部、波動エンジンの部品、対空パルスレーザー砲塔、主翼の一部です!」

まさかあのエプシロン社が名乗り出てくれるとは、藤堂長官も予想外であった。でも、コレであと一社である。

 

『うん、装甲についてならうちの会社は強いですよ、私の会社でやってみよう。こちらの会議で審議にかけるから3日待ってくれますか?』

 

「ありがとうございます!!」

よし、装甲は何とかなりそうだ。

ここでさらに名乗り出た者がいた。

 

『東アジア管区の宙帝造船(ちゅうていぞうせん)、会長の李 飛龍(リー・フェイロン)です。ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?対空パルスレーザーのサイズは?一体いくつくらいかな?』

 

「はい!、パルスレーザー砲塔は直径10メートルの半球形、船全体で60基付いていて、支援をお願いしたいのはその半分の30基です。」

 

『ふぅ…日本人は遠慮癖がありますね。うちで40基作れるかどうか審議にかけます。いい報告をお待ちください。』

 

「ありがとうございます!」

 

『人類に奇跡をもたらす船なんでしょ、エプシロン社さんにだけ良い思いはさせませんよ。人類を救うのに私も協力させてくださいよ?』

 

宙帝造船も、かつては南部重工と良い関係を結んでいた中国の企業である。インド、タイ、韓国にも支社を置く、南部とエプシロンに負けず劣らずの大企業である。

 

『ハッハッハ、一緒に人類救いましょうか、カイルさん。』

『もちろんです、異星人に地球の技術を見せつけてやりましょう、李さん』

 

 

技術は国境を超えるという言葉があるが、今藤堂長官の前で起こっている光景は正にその通りだった。こんなにも苦しい状況なのに人は技術で団結しようとしている。

感極まる藤堂長官であった。

 

 

さらに名乗りあげた者がいた。

 

『北米管区長官、アルフォン・アイリスです。エプシロンさんと宙帝さんが装甲とパルスレーザー砲塔を担当してくださるなら、主翼を私たちの管区で担当しようかしら。出来上がったものは分割して輸送艦で衛星軌道ドックに運べばよろしいかしら?』

 

企業ではなく、1つの管区がまるまる名乗り出た。

これだけ戦力が集まれば充分改装は間に合う。

 

「カイル社長、飛龍会長、アイリス長官、ありがとうございます!」

 

『まてまて、輸送手段の方は足りているかい?我がアフリカ管区には輸送艦が何十隻も残っている。動かせるだけ動かすぞ?』

 

『豪州管区から技術者を衛星軌道ドックに送るぞ?』

『待った、南米管区からも技術者を出すぞ?』

 

世界中が協力するという人類史上類を見ない状況である。

現在の所、

装甲担当

《ユーロ管区「エプシロン社」》

対空パルスレーザー砲塔担当

《東アジア管区「宙帝造船」》

主翼担当

《北米管区》

輸送担当

《アフリカ管区》

技術者派遣

《豪州、南米管区》

 

といった感じである。

 

こんな状況でも人々は繋がれる。

技術という縁の力で…。

 

チラリと横を見るとリモートの設定をしてくれた側近がものすごい勢いでガッツポーズをしている。

 

『では、エプシロン社さん、宙帝造船さん、各管区の長官の皆さん、それぞれ詳細が決定次第、全管区への内容の送信をお願いしますよ。』

 

全員『分かりました』

 

『では、これにて国際連合リモート総会を終了致します。』

 

 

 

リモート回線が切れて会議は終了した。

 

 

「いよぉーしッ!!」

「よっしゃぁぁぁ!」

「奇跡だァァァァ!」

 

リモート室で静かに会議を聞いていた人々はあまりの歓喜に叫んだ。

 

藤堂長官も「よぉーし!」思わずガッツポーズだ。

でもその後の行動は素早く、未だに喜んでいる側近に南部重工大公社、社長の南部康造に回線を繋ぐように指示をした。

 

 

「南部社長、いけました!」

「おおっ!それでどこの会社ですか?!」

「エプシロン社と宙帝造船、そして北米、豪州、南米管区が改装協力に名乗り出てくれました!」

 

「いやいやいや、世界中じゃないですか?!凄いことですよ!コレ!」

 

「あの船が起こした最初の奇跡ですよ」

 

「まさしくそうですね。とにかく、会社の方で改装パーツの作成を行います。」

 

「お願いします!」

 

 

3日後、エプシロン社と宙帝造船はWunder改装作業の全面協力を発表。

その発表の翌日、各管区の調整の末、北米、豪州、南米管区の協力も正式に決定した。

 

 

 

 

その結果を研究室で見ていたハルナとリク、真田さんは驚いていた。技術で人が繋がるその光景に。

 

「これも技術という縁の力がなすことか。」

「この仕事やってて本当に良かったです。」

「凄いわね、人類って…。」

 

人類が1つになって滅亡に抗い始めた。個々では無理かもしれないが、人類が束になれば…。

 

「いよいよ動き始めましたね」

「明日から大忙しだ。次期に、設計者として衛星軌道ドックに上がってきて欲しいと連絡が入るはずだ。準備しておく方が良いだろう。」

 

「そうですね。一旦家に帰って支度しておきますね。」

 

 

今日はこれにて解散となった。

 

それから1週間後、上層部から暁、睦月、そして真田の3名に衛星軌道ドックへの移動を命じられた。

3人は既に準備万端だったため、すぐに軌道上に上がった。

 

 

 

 

それから1ヶ月後…

 

 

地球衛星軌道上 特設衛星軌道ドック「鳥籠」

 

 

ハルナとリク、真田さんはドック居住区の研究室からドック内部を見ていた。

 

「壮観だねぇ」

「壮観だなぁ」

「壮観だ…」

 

ガラス越しに見る3人の前では「buße」から「Wunder」への改装作業が行われている。

つい一週間前まで、南部重工の作成したパーツの取付作業が行われていたが、エプシロン社と宙帝造船から、「部品が少し完成したから送っていいか?」との連絡が来たのだ。そしてちょうど今、アフリカ管区の輸送支援を受けて、改装部品の第1便が届いたのだ。

その船にはフランス語、中国語、英語、アフリカの各国の言葉がペイントされていて「ああ、ホントに世界中が協力してるんだなぁ」と何だか感慨深くなる。

 

そんな感じでいると、輸送船を動かしたアフリカ人がドアをノックして入ってきた。

 

「Hey、teamJapanese genius(チーム日本の天才)、君たちにお客さんだよ」

 

お客さん?こんな宇宙に尋ねてくるなんて誰?

ここの関係者?

 

入ってきた人物は予想の斜め上を行く人物であった。

 

 

 

 

「初めまして、私はカイル・アルトス。エプシロン社の代表取締役を務めています。」

彼は流暢な日本語でそう話した。

 

なんと、お客さんというのはエプシロン社の取締役だったのだ。

なんで宇宙に?!

 

「ははは初めましてっ!暁ハルナです!」

「睦月リクです!」

「私は国連宇宙軍極東管区幕僚監部(ばくりょうかんぶ)所属真田志郎です。」

 

内心真田さんもビックリしていたが、「軍人としての真田さん」が上手くコントロールした。

 

「皆さんが書き上げた設計図を見ました。全くとんでもない船ですね。うちの会社の主任研究員が興奮してましたよ。」

 

「ありがとうございます!ですが、まさかエプシロン社さんに協力していただけるとは」

「人類滅亡の瀬戸際(せとぎわ)だって時に力を合わせなくてどうするんですか?私は、遊星爆弾で母を失ってます。そのこともあって、奴らに一泡吹かせたいと思ったからですよ。」

 

ヤバい、良い人すぎる。カイル社長。

 

「あ、そうだ君たちに渡しておくものがありました。」

「「?」」

 

なんだろう?

 

社長は簡易宇宙服の内ポケットから1枚のディスクを取り出して、私たちに渡してきた。

 

「これは?なんのデータなのですか?」

 

「これはね、トウドウ長官が世界中に送った設計図を見たドイツの特務機関のメンバーが、波動砲の欠点を抑えるために何十回と行ったシミュレーションのデータだよ。」

 

「「「?!!!?」」」

 

「私はその人と知り合いでね、たまにあって技術討論をする仲なんだよ。宇宙行きを彼女に伝えた時にこのディスクを渡されてね『日本の天才達に渡してあげて』と言われたんだ」

 

ここでリクに疑問が浮かぶ。

誰なんだろう。

 

「カイル社長、その人は誰なんですか?」

 

「その人は元々日本にいたんだけど。神経系を利用した操縦システムの研究をするためにドイツに渡った天才博士だ。名前は『アカギ・リツコ』という。」

 

「聞いたことがある。脳波操縦システムの第一人者、赤木リツコ博士。極東管区では名前が最近出ていなかったが、なるほど、かなり前にドイツに渡っていたのか。」

 

「その天才アカギ博士が波動砲に興味を示してね、その欠点である『ユークリッド2次元ブラックホールの破綻』という事象をある程度克服出来るように理論を組んだらしい。」

 

「つまり、このデータで波動砲の欠点を抑えれるってことですか?」

 

「うん。既存の発射システムの改良と方程式の修正だけで出来たみたいだから、そこまで大掛かりにはならないと思うよ」

 

「これなら、波動砲の欠点を抑えてることが出来る…次元への影響を抑えられる。」

 

「カイル社長、赤木博士に『波動砲の欠点の改善、ありがとうございます!』とお伝え頂けないでしょうか?」

 

「うん。地球に戻ったら、私から彼女に伝えておきます。」

 

「ありがとうございます!」

その時、彼の通信機からアラーム音がなった。

『カイル社長、まもなく輸送船第1便がドックから離脱します。支給お戻りください。』

「分かりました。大至急戻ります。」

 

どうやらそろそろお別れのようだ。

 

「それでは、アカツキさん、ムツキさん、サナダさん、後をお願いします。我々も最後まで全力でサポートを行います。」

 

カイル社長はそう言って飛んで輸送船まで戻った。

その数分後、ドックから離れる輸送船が見えた。

 

「カイル社長、良い人だったね。」

「うん。なんか人懐っこい話しやすい人だった。」

「カイル・アルトス、心強い人だな。」

 

3人ともカイル社長に感謝している。なんたってエプシロン社さんがいなかったら改装そのものがダメになっていた可能性があるからだ。

 

それに赤木博士、どんな人かは分からないけど波動砲の欠点を抑えるためのデータを間接的にだが私たちに渡してくれた。

こりゃ地球に戻ったら感謝の挨拶(あいさつ)にいかないと。

ユーロ圏だけじゃない。宙帝造船さんも全力で工廠を回してパルスレーザー砲塔を造ってくれてる。

北米管区さんも、構造上1番大変なはずの主翼を造ってくれている。

アフリカ管区、豪州、南米管区さんも自分たちに出来ることで全力でサポートしてくれている。アフリカ管区さんの輸送船がなかったら輸送が滞るし、豪州、南米管区さんからの技術者支援がなかったら人手不足必死の状況だっただろう。

 

 

世界が力を合わせている。人類の底力を垣間見ることが出来た。

 

 

「さて、私たちは赤木博士のデータに感謝して、波動砲の改良をしようか」

 

「「はいっ!」」

 

その後、3人は赤木博士のデータを元にして波動砲のシステム周りを改良、欠点を大きく抑えることに成功した。

 

睡眠不足という尊い犠牲の上に成ったこの結果にユリーシャさんもニッコリだった。

 

2週間後、第1便の部品も設置作業が終わり始めた。

 

地上では第2便の積み込み作業が急ピッチで行われている。

 

私達も当分地球に帰れなさそうし、まだやることもある。

 

 

 

 

 

西暦2198年

 

奇跡の名を冠する船はその身を鳥籠の中で強化し続けた。

 

命を運ぶ方舟ではなく、

人類を守り…奇跡を起こす戦闘艦へと…

 

鳥籠の外に広がる大いなる宙に飛び立つ、その日まで…

 

 

 

第1章

贖罪の船から奇跡を起こす船へ ~完~

 

 




書けたァ…長かった…(現在6000文字ほど)

ここで赤木博士登場です。
名前だけの登場でしたが、将来的にwunder2202で登場してもらいます。
いつになるかは分かりませんが気長〜にお待ちいただけると有難いです。

この話で第1部はおしまいです。

学業が落ち着いたら第2部を書き始めます
乞うご期待下さい。


追記 4月29日
赤木博士大活躍ですww
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