宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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真の震電です
明田川さん、ありがとうございます


The God Killers Meet Again Part2 -AW4年4月22日-

「3時、7時、11時方向より大型ミサイルが接近。命中まで20秒!」

 

「迎撃! 絶対に撃ち漏らすな!」

 

 古代の指示で両舷舷側短魚雷発射管から多数の短魚雷が発射され、目標の大型ミサイルに命中する。

 その大きさに違わぬ大爆発が全周スクリーンに映し出され、かなりの威力を持っている事がうかがえる。

 

「ミサイルの識別は?」

 

「ガミラス軍のモノではありません。恐らく、ガトランティス側の未確認の大型です」

 

「前みたいな反乱軍の線は消えたな。ミサイルの画像から何か分かりますか?」

 

「らしくないってとこかな」

 

 充電器を付けたまま環境で作業をするハルナの右目には、真っ青に塗られた大型ミサイルが映っていた。

 ガトランティスが青色を採用するか? と聞かれても皆答えられず唸るしかないが、今までの艦艇は白か黄緑がよく見られる。

 

 そして、青色は「旧ガミラス親衛隊」の色だ。

 

「キーマン君の意見は?」

 

「画像からはハッキリ判別する事は難しいが、奴らがこの色を採用するのはないだろう。腹立たしい」

 

「さらにミサイル! 1時、5時方向です!」

 

「包囲されているのか!?」

 

「射程圏外から撃って来ている……七色星団か! 真田さん!」

 

「言いたい事は分かっている。空間波動エコーの検査だな。すでにやっている!」

 

 古代も真田も同じ事を考えていたようだ。

 七色星団でWunderを大きく苦しめた戦法____現在ではドメル戦法と呼ばれているが、敵の射程圏外から航空機を送り込む事を可能にした奇襲特化戦法だ。

 ワープが出来ない物を送りこむ瞬間物質移送機であれば、航空機以外のモノを送り込む事が出来る。

 それこそ、今回みたいな巨大ミサイルでもだ。

 

 そして、戦史開示によりドメル戦法にも穴がある事が近年になって判明した。

 跳躍先の座標が不安定になっている場合、または重力でかき乱されている場合は跳躍先で座標の重複等が起こる。

 

 さらに、技術次第では空間航跡のトレースの応用で「転送元の逆探知」が可能になる。

 

 

「逆探知完了まで5分。それまで持ちこたえてくれ。ハルナ君、真理君、新見君。君達も入ってほしい」

 

「「「分かりました」」」

 

 義眼に信号を送ろうと頭で考えるが、今は充電中だったと思い出した。

 やむを得ず充電器を付けたままコンソールに向かうと逆探知の支援に入った。

 本当に間の悪い時に来たものだと心の中で悪態をつきながら空間波動エコーの解析を続けると、おかしな事にすぐに解析が終わった。

 

 簡単すぎる。簡単すぎたのだ。

 

「転送元座標確認、ここから300光秒先、直進です!」

 

「古代、転送が出来る敵は1隻だ。だが近すぎる」

 

「射程圏外の空間より伝文を受信!」

 

「大宇宙で矢文とは古風なもんだねぇ。で、ガミラスにそんな文化は?」

 

「ある訳ないだろう何時の時代の話をしているんだ? とにかく見せろ」

 

 送信されてきた電文をモニターに映し出されると、キーマンはその文章に違和感を抱いた。

 戦いの前の挨拶にも見えるが、そんな趣味は自分達も持っていない。

 大公国時代ならともかく、帝国時代にそんな流行りは聞いた事も無い。

 

 そして、ある1文がどうしても気になった。

 

 古いガミラスの言葉だ。

 それも今の時代で使われているような物ではなく、大公国時代にとある一族が内戦時代に使ったと言われている「分かる人は分かる言葉」だった。

 

 キーマンには、それに心当たりがあった。

 

「コダイ三佐。今すぐ肉薄するんだ。相手の意図が分かった」

 

「どういうことだ?」

 

「時間がない。だが恐らくこれを送ったのはガミラス人だ。おい、俺が嘘を言っていない事は分かるな?」

 

「分かってるよ。あと驚きと困惑と少しの期待があるね。古代くん、私はキーマンに賛成かな。多分砲雷撃戦にはならないよ。というかしない方がいい」

 

 ハルナもキーマンの驚きを感じ取っているようで、どう反応していいのか困ったような笑みを浮かべた。

 だが、砲雷撃戦にはしない方がいいとはどういうことなのか?

 そもそもそれをせずにどのように制圧しろというのか?

 

 いや、ある。

 あるじゃないか。

 

「……最大戦速! 波動防壁最大で主砲射程圏内まで突っ切る! それと空間騎兵隊に敵艦への突入用意を!」

 

 ________________

 

 

『目標、速度90バーゼル増速。転送位置との誤差拡大。転送、一時中断します』

 

「コスモウェーブによる精神感応。といったか。距離も障害物もお構いなしの高次元通信とは、恐れ入るね」

 

「コスモウェーブとはそういうものです。ヴンダー艦内にガトランティス人がいるからこそ出来る技であり、時間も空間も超越する事も容易い物です」

 

「では、引き続きヴンダーの捕捉を任せよう。瞬間物質移送機、座標再設定」

 

『警告。目標速度に異常を確認。目標、亜光速で接近中。航跡トレースにて、重力波傾斜を検出』

 

「やはりそうくるか。私が出した開戦の辞は確かに受け取ってもらえたようだ」

 

「敵であっても礼を尽くす。貴方らしいと言えば、貴方らしいです。それに、随分と懐かしい言葉を使われたようで」

 

 どうやら自分の真意はタランには伝わっているようだ。

 言葉を交わさなくても行動で真意を察してくれる良い部下を持ったと、デスラーは満足そうに頷いた。

 

「敵にして、なお礼を持って迎える。さて、誰の流儀だったかな」

 

(そうだ。そのまま進みたまえ)

 

 デスラーはミサイルの転送を更に命じ、ワインに口を付けた。

 自分の思ったように事が進んでいる事に満足そうに、玉座の脇で立っているミルを見上げた。

 

「私は今、久しぶりに気分がいい」

 

「私は、貴方の思考を読み取れなくて不快ですが。貴方は何をしようとしているのですか」

 

「彼らとの再戦だよ。再び相まみえる事が出来るように、このデウスーラを修復してくれたことには感謝しているよ、ミル君。……ああ、無駄だよ。このデウスーラは君にとっては牢獄だ。コスモウェーブの弱点を知っているかい?」

 

「封印岩盤……!」

 

「テレザートの封印の柱が解け次第運び込まれる予定の封印岩盤。アレを少々拝借してね、デウスーラの装甲の隙間に仕込ませてもらったよ。元が巨大な岩盤だ、小惑星程度の小石を拾うくらいであれば君達の目も盗めたよ。さて、私は君達の危険極まりない行動を阻止させてもらおう。自滅するならそれでも構わないが、全宇宙の生命を巻き込んだ自滅である以上は、ガミラス民族存続のために阻止せざるをえないからね」

 

「貴様ッ!!」

 

 ミルの手が腰のホルスターにかかった瞬間、デスラーの左腕が鋭く伸びる。

 銃口が彼の額を狙うよりも一瞬早く、ミルの手首が床に叩きつけられた。

 

「ッ……!」

 

「総統の座にあった頃、君のような人は五人や六人じゃ済まなかったよ」

 

 押さえ込んだ腕にわずかな力を込めながら、デスラーは静かに語る。

 まるで稽古で身に染み込ませた型をなぞるように、無駄のない動きだった。

 

 総統の座についていた時は何度も暗殺の危機に見舞われたが、それと比べればこの程度は小事だ。

 護身術もある程度心得ているし、ミルは屈強な戦士の多いガトランティスの中でも体格が劣る。

 

 つまり、デスラーでも十分に抑え込める。

 

「あと0.5秒私が遅ければ、この艦橋は血と焼けた肉の匂いで充満していた事だろう。実にスリリングだ」

 

「総統、お持ちしました! お怪我は?」

 

「私とて心得はある。要らぬ心配をかけたようだ。例のモノを」

 

「こちらを」

 

 タランがデスラーに手渡したものは、チョーカーだ。

 真っ黒で、のど元に当たる部分に赤い長方形が装飾された無機質なそれをデスラーは片手でミルの首に押し当てた。

 

「何をする!?」

 

「タラン!」

 

「はい!」

 

 デスラーが何とか抑え込んでいる間に足らんがミルの背後に回り、そのチョーカーを完全にロックして解錠機能を壊した。

 

「これは……っ!?」

 

「封印岩盤を使って作った、ちょっとした装飾品だよ。君のコスモウェーブには助けられたが、大帝への直通電話は私にとっては首輪でしかない。試しに大帝に助けを呼んでみてはどうかな?」

 

 咄嗟にミルはズォーダーにコスモウェーブを使った通信を試みるが、一切の静寂の世界に放り込まれたようで何も聞こえない、何も通じない。

 

 

 ミルは意識の奥底に手を伸ばし、ズォーダーの意識を呼ぶ。

 しかし、何もない。

 暗い、寒い、無風の宇宙空間にただ一人取り残されたような沈黙が広がる。

 彼の感覚は、初めて“無”に包まれた。

 コスモウェーブは、彼を見捨てたのか──

 いや、“切られた”のだ。人間の手によって。

 

「これにはもう1つの仕掛けがあるのだが、この首輪は爆弾にもなっている。このリモコンもタランに作ってもらったのだが、私はこのリモコン1つで君の命を刈り取る事が出来る。首輪を壊そうとしてら私に知らせが届くから、私は直ぐに君を向こう側に送る事が出来てしまう」

 

「っ?!」

 

「さて」

 

 デスラーが手を軽く叩くとガミロイドが整列し、一糸乱れぬ敬礼をした。

 デスラーはそれに返礼するとガミロイドにミルを改めて拘束させ、封印岩盤で厳重に固めた営倉に収監した。

 

「いつの間に……」

 

「戦いの遥か前に仕込みは済ませておくものだよ、タラン。君も一杯どうだい? 勝利の美酒というものだ」

 

 久しぶりのスリリングな出来事にデスラーは額の汗を拭い、また一口ワインを運んだ。

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

「レーダーに感。艦種識別、コードゼロ該当物、エアレーズングです! 随伴艦としてラスコー級8隻を確認!」

 

「またこの船を見ることになるなんてね。神殺しの姉妹が1隻、エアレーズング」

 

「陸戦隊は?」

 

『特攻野郎は全員準備完了だ! でどうすんだ?』

 

「まず震電で艦橋を外から抑える。その後空間騎兵を突入させてエアレーズングの艦橋を中から抑えてくれ」

 

『で、マジなんだよな。ワンチャンお出迎えされるって』

 

「銃弾じゃない方で丁重にもてなされるんじゃないかな。キーマンが諺を解いてくれなかったら今頃ドンパチしてるよ?」

 

『そりゃそうかい。じゃ切るぞ』

 

「減速開始。第1種戦闘配置のまま待機。以降指示あるまで発砲を禁ずる」

 

「の前に、ラスコー級が戦果を挙げたくて撃ってくるよ。エアレーズングの主は多分気にしないけど、古代くん南部くん?」

 

「勿論撃ちます」

 

「まだ待て。WILLEとしてのポーズを見せる必要がある」

 

 砲雷長であり大砲屋である南部は砲撃指示を出したくてうずうずしているが、ここはまだ堪えてもらう。

 これは、エアレーズングの主に「WILLEはなりふり構わず戦闘を仕掛ける組織でない事」を示すポーズだ。

 これがもし先手必勝で砲撃を始めれば下手をすればエアレーズングとの再戦が起こるかもしれない。

 それに意図をはき違えていると受け取られかねない。

 

「第3戦速にまで減速を完了」

 

「ラスコー級に動きあり。エアレーズングの護衛を離れ、各艦散開しながら向かってきます」

 

「波動防壁を展開。まずは攻撃を受け止める。防壁への着弾を確認次第反撃を行う」

 

「空間騎兵は《ファルコンspec2》3機による強襲降下を行う。コンテナの準備は?」

 

『整備班です。準備完了機は2機。もう1機への装着に残り1分下さい』

 

「時間は稼ぎます。装着と人員乗り込みを並行で進めて下さい」

 

『了解です』

 

この3年強の間に、コスモファルコンも強化された。

自身の後継機の開発環境を戦術機に譲る事となったが、その代わりに総合性能の向上と各種任務用武装の選択能力を獲得する事となった。

第2世代艦艇のオーバードウェポンに影響を受けたと聞いているが、それが噂ではないという事は各種武装の多さが証明している。

 

対艦、対空、対地、対要塞、対航空機、そして、「50m以上の大型人型兵器を相手にする事」を念頭に置かれた各種兵装を保有し、任務ごとに選択して装着する事が出来るのだ。

 

コスモシーガルでは対応能力に劣る場面で、戦闘機を人員輸送に使えるようになったのだ。

 

 

「砲撃可能距離に入りました。ラスコー級発砲を開始!」

 

「当たらなーい。ですね?」

 

「ああ。彼らは弾を撒き散らす習性があるが、狙って撃つ事はそうそうしない。やるとすれば、例の火焔砲くらいだ」

 

そう話しているうちにラスコー級が撒き散らす陽電子ビームが波動防壁に波紋を作り始め、大義名分は得た。

古代が南部に砲撃指示を出し、第1から第4主砲、そして第1第2副砲が主砲を持ち上げ、主砲を覆う鱗のように重なる装甲を解放した。

 

「エリミネーター、3速、自動追尾照準ヨシ!」

 

「撃ち方始め!」

 

防壁越しに放たれた重く鉄槌のような一撃は的確にラスコー級を捉え、その艦体の半分を消し飛ばした。

既にエアレーズングから距離があった事が幸いし大爆発がエアレーズングを巻き込む事はなく、その爆炎を切り裂いてAAAWunderはファルコンspec2を出撃させた。

 

自身と同じ全長のコンテナを装着したファルコンspec2がエアレーズングに向かって加速し、続けて震電が出撃してそれらを追い抜いていく。

 

「さーて。思い通りになってくれればいいんだけどね」

 

 

____________

 

 

 

「おぅしお前ら! この金髪がロックを解除してくれるって言うんだから堂々と乗り込むぞ!」

 

「金髪って……。虜囚の身だ、抵抗はしない。こうして協力もしているのが証拠だ」

 

「まぁ何だ。お前の事は正直気に入らんが、ガミラスのシステムが分かるのがお前くらいしかいないんだ。装備も一式貸してやったんだからしっかり頼むぞ」

 

「……了解した」

 

ファルコンspec2のコンテナハッチが開き、2式空間機動甲冑を装着した空間騎兵とキーマンが一斉に降下した。

真っ青に染められたエアレーズングの装甲に降下していくが、対空兵器の1つも稼働していない。

やはり、迎え入れるために行動なのだろう。

そう判断した斉藤はキーマンの先導で降下を続け、エアロックに辿り着いた。

エアロックの付近をペタペタと触ると奇妙な隙間を見つけ、そこに指をかけてパネルを開けた。

緑色の画面がよく目立つ、ガミラス式のコンソールだ。

そのコンソールにケーブルを差し込むと、持ってきた電子端末で解析を始めた。

 

「ていうかお前よく位置分かるな」

 

「同じガミラス艦である以上は、ある程度の規則性はある。ガトランティスに改造された箇所は多いが、ガミラス仕様で残っている部分がある以上は……」

 

キーマンの手が止まるとエアロックが重々しく開き、機動甲冑でも通れるくらいの通路が見えた。

 

「おしお前ら! もてなされるとか何とか言われたけどなぁ! 気ぃ引き締めろ! 行くぞ!!」

 

「「「応ッ!」」」

 

解放されたハッチに機動甲冑装備の空間騎兵が飛び込んでいく。

すでに艦橋は震電が外から威嚇して押さえている。

18mの巨人が電磁小銃を向けている以上、万が一反撃の意思があった場合にその意思をへし折る事が出来るだろう。

まぁ聞く限りでは、そんなものはないだろうが。

 

「やっぱりそうだ。お前が言ってた古い言葉の話はマジみたいだな」

 

「ああ。ガミラスの古い言葉で、実際に内戦時にも使われた記録がある。『装いを正す』は、『戦う気はない』や『戦っているフリをしろ』といった意味がある。お前たちの"コトワザ"に近いものだ」

 

「なるほどな。確かに今は戦っている感じを装っている。送り主は相当頭もよさそうだな」

 

「俺の直感が正しかったら、送り主は……」

 

「誰なんだ?」

 

「それは、会ってみればわかる」

 

脚部ローラーで広い通路を疾走して辿り着いた隔壁を解除して機動甲冑を脱着していく。

機動甲冑が通れるほどに通路が広くなく、残りの僅かな距離は徒歩だ。

 

艦橋らしき場所に通じる隔壁にキーマンがプラグを指そうとすると、まるで迎え入れるように隔壁は勝手に開いた。

 

「出迎えが遅れて申し訳ない。ようこそ、我がデウスーラへ」

 

 

「やはり貴方でしたか。アベルト・デスラー」

 

 

________________________________

 

 

 

「で、誰がいたって?」

 

「デスラー総統だ」

 

「え?」

 

「デスラー総統だ」

 

「いやそこは分かるんだけど、生きてたんだね……これ艦内に入れられないじゃん」

 

「総統自身も理解して頂けているようで、今はデウスーラの方で待機して頂いている」

 

「うんそれがいいよ。でもさぁ、爆弾にも程度があるって……」

 

AAAWunder幹部会議、最早定番の第1会議室で報告を受けた真田とハルナはフリーズからの頭痛を覚えた。

うすうす気づいてはいたが、いざ現実として事実に上がるとここまでインパクトが大きくなる情報はそう多くないし、そう起こらない。

 

「で、デスラー総統は?」

 

「非公式での会談を要請された。ガトランティスの虜囚から逃れる事が出来た今だから、ガミラス民族存続の為の行動を起こしたいとおっしゃっている」

 

「へぇ……。バレラス落としの人が考える事じゃないけど、どういう風の吹き回し_____あ、そっか。デスラー総統の民族丸ごと移住先探しの為って感じかな?」

 

「その推測で間違いはないだろう。今までの大拡大政策とガミラスとイスカンダルの大統合、第2バレラスの存在理由に『ガミラス民族の存続の為』という理由を当てはめれば、説明は出来る」

 

「国から離れて深呼吸する機会が出来たから、少しだけ余裕が出来たのかもね。取り敢えず、親族枠でキーマン君。護衛で古代くんでいいかな? メインは真田さんと私で何とかするね。南部君に戦術長代理を任せるから、万が一ガトランティスが来たら反撃を許可するよ。自分からは?」

 

「撃つな、ですね」

 

「よろしい」

 

「では早速会談に向けて準備を行う。だが、ガミラス大使館と地球の3組織にこの事を伝えないわけにはいかない。余りにも危険性の高い情報だ。適切な場所で共有させて隔離する必要がある。構わないか?」

 

「その代わり厳重なかん口令を敷いてほしい。亡くなられたと思われていた人が生きておられたなど、そうそう出していい情報ではない」

 

情報には大小あれど重力がある。

人の目を引き付ける重力だ。

強すぎれば人も組織も歴史も動かしてしまう為、だからこそ、重力場を押さえておく必要があるのだ。

その点キーマンの頼みは現実的で護りに特化しているだろう。

 

真田はキーマンの頼みを聞き入れて、相原に地球と月面の在太陽系ガミラス大使館に連絡を入れるように指示を出す。

N2爆雷並みに危険な情報にバレルや藤堂、アイリスやカナーバが腰を抜かすかひっくり返るか、あるいは胃薬が増えるのか、心配な相原であった。

 

 

 

 

 

___________

 

 

 

 

 

 

地球

Tokyo3

WILLE統合庁舎直下地下800m(非公開区画LevelEEE)

敵性異星人侵攻対策危機管理センター

地球圏安全保障会議

 

「……状況の説明をしてもらおうか」

 

「はい、地球時間本日1330。テレザートへの航海を続けるWILLE所属の特務指定艦AAAWunderから特一級優先超空間通信を受信しました。内容は、亜空間回廊海戦で遭遇したコードゼロ指定物であるNHG2番艦エアレーズングの発見と制圧、及び艦内で『アベルト・デスラー』の身柄を確保、監視対象に置いているという、との事です」

 

文字通り光よりも早く伝わった情報にそれ以上の速さで緊急招集がかけられ、藤堂、カナーバ、アイリス、バレル、そして幕僚長である沖田が円卓で難しい顔を向け合っていた。

 

「問題は生きていたかどうかではない。“何をしに戻ってきたか”だ」

 

「……ええそうです。デスラー政権のトップが、今は誰にも縛られずに自由に行動が出来てしまっている状況です。AAAWunderからの通信には詳細の記載はあるの?」

 

「はい。アベルト・デスラーは非公式な会談を求めており、ガトランティスの危険性と『ズォーダーが何をしようとしているのか』に関する情報の共有をする準備がある、との事です」

 

「続けてくれ」

 

「聞き取り調査によると、現在のエアレーズング……『デウスーラ・レパラータ』と呼称されているようですが、ガトランティスがこれと、さらに既に確保されていたコードゼロ指定物のエルブズュンデとゲベートを解析してNHGと同等の艦艇の複製に成功しているとの事です」

 

「本人の目撃証言でほぼ確定となりましたね」

 

「贋作が混じっているとはいえ、NHGが4隻揃っているのだ。そしてアリステラ4から強奪された白き月。火星のガリラヤ跡地でアディショナルインパクトを実行するには道具は揃っていますね。火星最終防衛線の状況は?」

 

軍備状況の質問を受けた沖田が手元のタブレットを操作して大画面の状況を表示した。

 

「ルクレティウス級を火星軌道以遠に配置を完了させています。また、最終艤装段階のアウグストゥスとハドリアヌスも、艤装終了後各種テストを終えた後直ちに火星に配備させます」

 

地球の最大の守護神であるルクレティウス級を火星軌道に配備する。

それは、火星を制圧されたら全ヒューマノイド種族が最悪「終わる」という大戦争に打ち勝つための手段であり、これで地球の守りは半減した。

しかし、火星を制圧されたら終わりな時に、地球の傍に身を護る盾を置いておいても意味がない。

それを知っている沖田が関係各所に働きかけてルクレティウス級の移動を実現したのだ。

 

「沖田くんの名がなければ、誰もルクレティウスを動かそうとはしなかっただろうな」

 

「過去の実績を使うつもりはありませんでした。ですが、使える物は何でも使わまなければ、今回も乗り切れないと理解しています」

 

「ガミラス大使館からは、火星のガリラヤ跡地を利用した全人類文明に影響をもたらす破滅的災害の阻止を目的とした師団規模の艦艇派遣をガミラス政府に要求します」

 

「よろしくお願いします。最悪派遣師団が間に合わなくても、飛び入り参加でも構いません」

 

「分かりました」

 

「では我々は、AAAWunder側の会談結果に基づいて後始末や細部の調整を行うだけ、ですね」

 

「これほど“現場任せ”を強いることになるとはな……。皮肉な話だ。理事会が今は“傍観するのが最善”と知っている」

 

「彼らは“戦場で世界を守る”。我々は“戦場の外で、世界を壊さぬよう支える”。腹切り要員で世界を救えるなら喜んでなろう」

 

 

 

 

「沖田君。確認したいのだが例の戦略機に関する進捗は?」

 

「機体フレームは時間断層工廠での試験建造に入りました。電磁自動小銃及び粒子ビームライフルはグルーム・レイクで順次試験予定です」

 

「……エリミネーターは?」

 

「サンプル品を用い、現在調整中です」

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