宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
-ガトランティス軍が血祭りにされる1時間前-
薄氷を脱ぎ捨てながらワープアウトし、コルサンティアまで残り300光秒の宙域に辿り着いた。
ショックカノン、三式弾準備よし。
カミナリサマ準備よし。
爆雷、各種魚雷、準備よし。
戦術機、航空隊、準備よし。
覚悟、準備よし。
逃げる準備、よし。
全ての準備、よし。
艦橋につめたメンバーの顔は、ふざけた作戦名とは真逆の真剣な物だ。
作戦名
でも、テレザートでEVAを用いて戦闘を行うなら艦艇を生け捕りにして捌いて素材を確保するしかないのだ。
第2船体株の艦載機発艦口が開き、仰向けになった震電が射出されていく。
ランドスピナーを脚部に装備したニュースタイルの震電は使い捨て吸着装置「手すり」を使い甲板に張りつくと、露払い兼狩人の発艦を見送る。
N2式戦術歩行空間機動戦闘機 秋水だ。
新2号機をフィードバックして可変機能を持たせ、剛性を保ちつつ機動力を上げたこの機体は、開発チームの奇声と夢とロマンを栄養にして2203年に何とか実戦配備にこぎつけた早産な機体だ。
なので、まだ少しの粗がある。
「ちょっとまだ反応鈍いよね」
「分かる。コンマ1くらい遅れる時あるよね。でも変形と速度は十分。改良の余地まだまだありって感じね」
「新2はそういうのないけどね」
「アレはアタシ専用調整だからね。アタシの手足」
「いーなぁ羨ましいわ」
『イカロス中隊、発艦始め』
管制室より発艦命令が下り、雑談を切り上げるとスッと戦史の顔になった。
「イカロスリーダーから各機。まずは死なない事。艦橋だけ狩るとか無茶ぶりされてるけど、程々に狙う事。いいね」
「「「了解!」」」
イカロス中隊12機全機が射出されていく。滑り落とすように発艦されてからの自力加速はAAAWunder艦載機パイロットの必須技能で、皆もたつく事なく自力加速で加速を始める。
そして変形。
脚部を折りたたみ、腰を半回転させ、腕を折りたたみ、左右に分割した機種ユニットを被り羽を広げ、背部の推進機関を腰部にアームで移動させて推進装置を全て後方に向ける。
ハインライン研究室の生粋の変態共がSFアニメを見て考案した飛行形態は大気圏内外問わず機能する姿であり、夢とロマンをそのまま機体に焼き付けたかのような飛行形態だった。*1
そのまま爆発的な推進力で飛び出すと一気にGが襲い掛かり、リニアシートがGを緩和する。
10年先の機体とも言われる震電や秋水、およそこの時代に似つかわしくない新2号機といい、地球にはバケモノを量産するバケモノが多いようだ。
その爪と牙がガトランティス艦隊に突き立てられたのは、その30分後だった。
_______________
___現在
「カミナリサマ、右舷VLS1番から3番に装填、諸元任せる!」
「放電点入力。蓄電率良好。カミナリサマ1番から3番発射準備完了!」
「撃て!」
右舷VLSから放たれた3発のカミナリサマが有機的な機動を描きガトランティス艦隊に飛び込み、即座にEMP発生装置をばら撒いた。
間髪入れずに速射輪胴砲塔から嵐のような対空砲火が放たれ発生装置が狙い撃ちされていくが、遠隔制御で大出力の放電が発生した。
ガミラス艦よりもお粗末な耐EMP性能では防ぎきれず、ラスコー級、ククルカン級、ナスカ級、ゴストーク級が巨大な棺桶となった。
が、これでは終わらなかった。
ナスカ級の艦載機格納庫のハッチが爆破で吹っ飛ばされ、中からデスバテーターが現れた。
起動していなかった生き残りが顔を出したのだ。
それも逃さずAAAWunderが三式弾を使ってナスカ級の船体をへし折る。
イカロス中隊からのターゲティング情報を基にして、目視範囲外からの超長距離実体弾砲撃を行ったのだ。
「イカロス中隊から報告。第1弾の命中を確認。次のナスカ級の位置情報を確認」
「南部、三式装填。まだまだ撃つぞ」
「俺は大砲屋です。狙った的は、外しません」
コルサンティア軌道上の重力もあるというのに、南部はマリと協力して弾道計算を進めていく。
カミナリサマで異常放電を意図的に引き起こした以上、陽電子の塊であるショックカノンも少なくない影響を受ける。
ならば、物理で殴る。
徹底的に電子制御を省いて機械式に拘ったこの実体弾の信頼性は折り紙付きで、99年時の航海でも特殊環境や窮地に立たされた時に記憶に残る活躍をしてきた。
それは今回も証明され、ショックカノンが命中するか怪しい状況でも物理で確実に破壊していく。
「ファイヤー!」
「撃て!」
マリは相変わらずどこかふざけているが、その計算にズレは残さない。
軌道上の重力状況を加味した弾道は綺麗な弧を描き、またナスカ級がスクラップになった。
_______
カラクルム級戦闘艦ダズガルクの艦橋では、突然の奇襲にうろたえたガトランティス兵が怒りに震えていた。
「敵襲! 射程圏外より砲撃を確認! ビームではありません!」
「実体弾だと!? そんなカビの生えた野蛮な代物を持ち出して来おって……! 我らを愚弄する積もりか!?」
「既にナスカ級が3隻が撃沈! 敵の高出力放電で艦の機能を殺されています!」
「何たる奇策……ッ! 生き残っている艦を散開させろ! 足の速い艦をブンダーに突撃させて報復の刃を突き立てろ!」
命を受けたラスコー級とククルカン級が急加速に入り、弾道から予測した砲撃地点に向かって猛進する。
同志の仇と言わんばかりの猛進具合は怒りや憎しみといった負の感情を纏っていて、輪胴砲塔に片っ端にエネルギーを充填していく。
が、それは狩人によって狩られた。
逆手に短刀を構え、アサルトライフルを突きつける秋水がラスコー級とククルカン級の艦橋を粉砕し、爆発もさせずに無効化したのだ。
未確認の敵影、通常それを確認したら慎重になるか撤退するかがセオリーだが、彼らには通用しない。
猪突猛進に四肢を取り付けたような彼らは構わず突っ込むが、秋水はその細身の手足と推進器を存分に使い鮮やかな機動を描くと、艦橋基部から上部まで雑に切り裂いた。
異常放電が続く異常な宙域を意に介せずに、一切の不調も見せずに縦横無尽に動き回るその姿は明らかに異常だ。
秋水はガミラス艦やガトランティス艦を超えるレベルの耐EMP性能を持っているというのか。
「悪魔だ……」
カラクルム級戦闘艦ダスガルグの艦長は、眼前に突きつけられた巨体な短刀を目に、そう呟いた。
この広大な宇宙でも類を見ない人形機動兵器による白兵戦は見事にガトランティス艦隊に突き刺さり、コルサンティア近海には「戦利品」が転がる何とも言いがたい状況となった。
ガトランティスが見たら「死体漁りだ」や「尊き戦死を遂げた戦士への侮辱」と煩く砲撃をしてくると思うが、生憎そんなことが出来る様子ではないようだ。
狩りを終えた秋水達は艦橋が潰れたラスコー級に短刀を突き立て、持ち運びしやすいサイズに切り出した。
それを艦橋から見ていたキーマンはこう言った。
「野蛮人に野蛮といわれても困るが」
そもそも侵略と略奪を繰り返してきてガミラスと地球の双方から野蛮人と認識されているから、当の本人から言われても困るものだ。
それに、兎に角資材が欲しいのだ。
「あ、カラクルム級は欲しい。基本フレームは頑丈にしたいから、必ず仕入れて」
『誰が卸売り業者よ、ハイハイ、長刀なら切れるから。あ、残骸はどうする?』
「状態の良いものは回収してね。使うから」
「警告、敵ククルカン級に高エネルギー反応、秋水隊、退避して下さい!」
熱反応をセンサーで見張っていたアナライザーがアラートを発し、回収で動いていた秋水達に一報を飛ばした。
直ぐに蜘蛛の子を散らすように秋水が散り、その数瞬後にククルカン級が爆発した。
「自爆……!?」
「あるかどうかは分からんが、控えめに言って奴らの尊厳を踏みにじる事にはなるだろう。お前達が気にするなら、弔砲でも撃っておけ」
キーマンはそう言うと、作業風景を淡々と見続けた。
「宙域を離れたら、簡易的だが弔砲を行う。キーマンの言うように、尊厳に関わる話だ」
「七色星団の時の設定は残してあるから、そんなに準備はいらないよ。簡易的だけど、やっておくのね」
「はい」
「……分かった。軌道上の艦隊が減ったから強行突入するよ。レイちゃんはATフィールドを正面に張って。大気圏の熱は出来るだけ遮断したい」
「分かった」
「島、コルサンティア大気圏に突入。高度4000で艦体を地表面と垂直にしてくれ」
「おいおい出来るのか……あ、そっか。この船だったら」
「出来ます」
「はいはいもう感覚おかしくなりそうだ。いや、もうおかしくなってるか」
見る見る間に捌かれていったガトランティス艦隊を突っ切り、AAAWunderはそのまま大気圏に突入した。
断熱圧縮による空力加熱により艦首が赤熱するが、綾波が張った極大規模のATフィールドが熱と大気を拒絶し、そのまま大推力と重力に従って地表面に向かって真っ逆さまに落ちていった。
「艦首上げ!」
操縦桿を思い切り引きスラスターと重力制御で艦首を持ち上げると、強引に押しのけられた大気が凄まじい風を巻き起こす。
だが、2500mの艦艇にとってはそよ風程度でしかない。
甲板上にしがみ付いていた震電が器用に立ち上がり、地面と平行に飛び続けるAAAWunderから飛び降りた。
背部のフレキシブルスラスターを全力で吹かせて少し仰向けになりながら減速をしていく。
あとはランドスピナーをランディングギアの代わりにして着陸するだけだ。
「敵襲ッ!」
地表から放たれた黄緑のビームが僚機の腕を飛ばした。
大きくバランスを崩したと思った僚機はすぐに器用に姿勢を正し、予備の電磁小銃を構え直した。
存在の可能性は事前に聞いていたが陸上戦力の存在は確かに脅威だ。
それを皮切りにし、高度800から黄緑色のビームが震電降下部隊を出迎えてくる。
特に空挺降下のように上空からの侵攻を行うのであれば、対空砲撃は天敵と言ってもいい。
だが、対空砲撃されるなら空対地攻撃をすればいいのだ。
「総員雷槍構え! ブッ飛ばせェッ!!」
規定重量ギリギリまで持ち込んだ鋼鉄の槍のような物を構える。
各機が構えた鋼鉄の槍──WS-02超高速運動体貫徹弾、通称〈雷槍〉。
震電降下部隊が振るう手投げ式のバンカーバスターは、ガミラスやガトランティス艦を紙のように貫く。
グリップのマウントラッチに3連装を接続、引き金を絞る。
雷槍はラッチから離脱し、青白い炎を吐きながら音速の壁を軽く粉砕する。
安定翼を展開し、熱源を捕捉したまま目標に突き刺さり、0.8秒後──甲板が裂け、炸裂した弾体が本命の弾頭を艦の腹へとねじ込んだ。
空気を震わせる衝撃波と共に、敵艦は火柱を噴き上げ、瞬く間に炎に包まれた。
「命中! 命中!」
「このまま撃て。降下後は近接戦で艦橋を潰す」
「おしお前ら撃ちまくれ!」
高威力と初速が高すぎるため、1発ずつしか撃てない切り札だ。
贅沢に6本持ってきた震電が景気よく放ち、頭の良さを活かして敵艦に面白いくらい突き刺さる。
いや、面白い物ではない。
これは戦争だ。
『震電全機に通達。これより空対地支援を開始する。各機注意せよ』
「各機降下速度を落とせ! ミサイルの雨が来るぞ!」
咄嗟に速度を落とした数秒後、大量のミサイルを装備したファルコンspec2が現れた。
機体に格納するミサイル以外にも、選択式装備で追加したマウントラッチで複数のミサイルコンテナを抱えたその姿はまるで爆撃機だ。
ここであまり知られていない話を一つ。
コスモファルコンは機内にミサイルを格納する方式を主にしているが、マウントラッチを主翼上下に設けている。
なので、ステルス性を犠牲にして大量のミサイルを搭載する事が出来る。
そして、多少の仕様の違いはあれど大真面目に実行した機体がいた。
それは99年時の航海でアスカを護り切り修羅の如く飛びきったコスモファルコンEURO2だ。
七色星団海戦が始まる直前に重武装形態になった事があるのだが、その当時の戦闘データは無駄にせずに活かされ、spec2の選択式装備として「超攻撃形態」が実装された。
それは21世紀のステルス戦闘機に倣って「ビーストモード」と名付けられ、ステルスと引き換えの強力な手札となったのだ。
その殺意満点の獣から放たれたありったけの空対地ミサイルは地を舐めるように飛び去って行き、敵艦に突き刺さった。
どうやらこれもバンカーバスターの類らしく、大きくひしゃけたガトランティス艦が内側から大きく膨れて爆発した。
「敵艦の識別を確認。メダルーサ級……なのか?」
「おいおい何だよコイツ。宙に上がれないのか?」
「陸上戦艦、ってとこか。データ送れ。新種だぞ」
幸運にも生き残ったメダルーサ級陸上戦艦に更に雷槍を叩きこみ、鉄の躯を量産していく。
第2陣のファルコンspec2ビーストモードが空対地ミサイルを叩きこみ、雷槍を叩きこみ、高度を下げていく。
メダルーサ級らしき陸上戦艦が激しい抵抗をしてこない事が気になるが、そんなものは後から考えればいい事だ。
高度1000、高度計は加速度的に数字を減らしていき、雷槍を撃ち尽くした機体は40ミリ自動電磁突撃銃を構えて牽制射撃に切り替える。
打ち尽くした弾倉は投棄し、マウントラッチを投棄し、兎に角身軽にしながら降下していく。
「アレが地表面……!」
都市惑星の名の通り、地表面を覆っていたのは自然の色ではなく無機質な色だった。
曼荼羅の模様が所々に浮かび上がり、消え、血管を流れる血液のように流動的で、星そのものが生物のようにも見える。
「減速最大!」
長く青白い尾のように吹き出した噴射炎が震電を一気に減速させ、ランドスピナーをランディングギアにして危なげなく着地する。
激しい火花を散らしながらなんとか停止すると、コルサンティアの異様さが直ぐに分かった。
月程度の大きさしかないが、空気があり、重力が地球とそう変わらない。
それに、見えないはずの空がある。
「おいおいどうなってんだよコレは」
「大気圧は1010hPa、気温は27度、湿度が30%、窒素、酸素、二酸化炭素。月程度の星に人類向けの環境を用意しているとはな」
「総員傾注。これより、コルサンティア地表面の情報流を辿り、中枢に辿り着く。中枢到達後は速やかにデータを取得して、素材回収を終了したAAAWunderに帰投してワープで宙域を離れる。以上だ」
___________
広々とした第三格納庫と艦内工場には、黄緑と白色の場違いな素材の山が出来上がっていた。
流石に主機は手に入らなかったが状態のいい素材やビーム発振器、推進装置まで手に入ったので、技術科と甲板部はウハウハ状態だ。
「上質な素材にゃヒャッハァァァァァァアアアアア!」
「……一応塩撒いて加藤さんにお経唱えてもらってから使おっか。仏教とかあんまり分かんないけど、取り敢えずは」
喜んでいいのか悪いのか分からないハルナは、取り敢えずそうする事にした。
清めの塩やお経で供養する文化があるのは何となくわかるが、艦艇の残骸にそういう事をする事例があったのかどうかまでは分からない。
ただ、気分的にそうした方がいいとも思ったからだ。
敵国で蛮族で危険とはいえ、さっきまで人が動かしていた艦艇の破片だ。
「まぁ~ハルナっちの言いたい事は分からなくはないんよ。艦艇生け捕りにして人出して切り出して使ってるんだから、私は大満足でもハルナっちは複雑なんよね」
「まぁ……」
そう言うと、リクの上着の裾を握った。
「リっくん?」
「多分、リクも必要なら同じような事をすると思うんです。で、素直に喜ばない。使い方を考えるっていうか、一切無駄なく使うっていうか……何だろう、分かんない」
1か月以上会っていない。
光年で見ると果てしなく離れてしまった距離と心の寒さは比例するらしく、腕を擦る回数も増えてしまった。
(ダメだこりゃ)
「あたりまえ」がいない環境でやり切るしかない。
それを強いてコツコツやってきたつもりだったけど、どうやら自分はどうしようもない程にベッタリだったようだ。
ハルナは知らないが、いつも強制的に寝かしつけてくる綾波が日に日に距離を縮めてくる。
ハルナが言おうとしなくても、綾波は気付いている。
だから、代わりになれなくても温もりを渡せないかと、距離を縮めているんだ。
「まー加藤さんにお経やってもらってから使うってのは分かったにゃ。色々複雑だけど、やるしかないんにゃよ」
「はい」
後ろめたさを感じる暖かい右とは反対に、左目はいつも通りに計算を続ける無機質な存在だ。
(あ、そういえば……)
眼帯スタイルで巻くのを放り出していたのを思い出した。
ひたすらフルスロットルで動く程には忙しかったので仕事以外の事がおざなりになってしまい、身だしなみの部分もなあなあになってしまっていた。
(確か……)
ごそごそと上着のポケットを探り、指先に触れた布とこびりついて固まった血の感触に息を止めた。
99年時の航海で受け継いだWILLEの水色のバンダナだ。
この世に現存するただ1つの「葛城ミサト初代艦長の遺品」にして、WILLEに所属する人員が持っているバンダナのオリジナルだ。
不思議な事に、このバンダナに付いている血は落ちない。
日頃からに身に着けているので定期的に洗濯をしていたがそれでも落ちず、ごしごしと強めに洗った方がいいのかと思ったが何だかしない方がいいと思ってそのままにしていた。
それで左目を覆い、眼帯のように頭に巻く。
性能が高すぎる義眼にセーブをかける為、遺志を継ぐ為、色々ある。
でも1番は、くじけない為だ。
両手を頭の後ろに回してリボン結びにすると、らしくないなと思った。
自分はそんなに女性的ではない、身だしなみはたまに大雑把で、仕事人間で、リクといる時も2人揃って仕事の話ばっかりだ。
(あ、でも……)
そうだった、将来の事も語り明かしていたじゃないか。
子供が出来たら、どんな名前を贈るか。
家を買いたいな、と考えたりもした。
夫婦らしい事とか恋人らしい事とか、どんな事かなと考えてやってみたりもした。
1回だけ、ストレス故の過ちもあったけど。
ばっちーん!
「ん? どったのハルナっち」
「な、何でもない……です」
思いっきり両頬を叩いたら思ったより音が出てしまった。
頬がヒリヒリするけど、何だかそれが良い気付けになった。
「どったの? 頬赤くなってるけど」
「思い出し恥ずかしさと自分で軽く叩いたのがミックスされてるだけです」
「ほう?」
「あ」
「あとで、お姉さんと、O・HA・NA・SHI しよっか」
「やば」
ハルナ、盛大に自爆。
マリの尻尾にからめとられ、ストレス故の過ちは綺麗に吐かされる事となった。
____________
月の円周は10921km、時速200㎞で走り続けてノンストップで55時間程。
マッハ2__時速2448㎞で飛べば5時間もかからない。
月と同程度のサイズのコルサンティアは震電で調査するにはちょうどいい大きさで、2個中隊24機の震電が中隊で分かれてそれぞれ北と南に分かれて飛んでいた。
脈動する情報流はそれぞれ北と南に向かって伸びていた。
中枢は2つある様で、位置は北極と南極に近い。
月と違う点を挙げれば、青空で空気がある事くらい。
あとは、敵がいる事くらいだ。
「弾倉残り4個!」
「俺の予備使え、まだ6個あるからな。お前は撃ちすぎ」
本日のコルサンティアの天気は晴れ時々敵、ところによって鋼鉄と光学兵器の雨。
配備されていたメダルーサ級陸上戦車や地上の基地から発進したデスバテーターが舞い上がり、対抗して電磁小銃や40ミリ自動電磁突撃銃が鋼鉄の雨を横殴りに放っていく。
『爆撃入ります!』
ミサイルを補給したファルコンspec2が震電部隊に再合流して、さらに空対地ミサイルを放つ。
AAAWunderに保管してある空対地ミサイルの在庫を大きく持ち出した甲斐もあり、第4波攻撃までを実施する事が出来るようになった。
一応ミサイルの生産は艦内でも出来るが、作戦に失敗したらただ在庫を潰しただけになってしまう。
折角大量の物資をつぎ込むから、成果が無いと困るのだ。
メダルーサ級陸上戦艦は見かけとは裏腹に異様なほど脆く、空対地ミサイルが良く刺さる。
8番浮遊大陸奪還作戦で退治したメダルーサ級はもっと硬かったが、この脆さは何なのか。
「……あいつら、もうコイツらを使わないつもりか?」
「は? 火炎のやつ強いだろ」
「そーじゃねえだろ。火炎のやつは装甲突入型で1対1で防げるし、防いだらローエングリンとかダインスレイヴとかで串刺しにできるだろ。戦術がもう完成されちまってるんだよ。攻略完了完封で今の地球とガミラスからしたらただのデカい的だ」
「てことは?」
「大戦艦とかククルカンとかラスコーをバカみたいに造ってるかもしれねぇって事。イワシの群れみたいな感じになるくらいには、な」
「イワシって言うよりサメじゃないすか?」
「……確かにな。地球だと覚悟ガン決まりの提督たちがサメ狩りの方法でも考えてるだろ。よし、おしゃべりは終わりだ。鈍重な戦車狩りだ」
ファルコンspec2が震電とランデブーし、追加のコンテナを受け取り中を確認する。
中には追加弾倉と雷装が入っていて、それを装備して速やかに離れる。
震電とファルコンspec2のランデブー飛行はなかなかに高難易度で、相対速度を0に近づけるから機体に触れられる程だ。
今回は震電がファルコンspec2から補給を受けているが、その逆の「震電がファルコンにミサイルを届けて、マウントラッチや爆弾倉に格納する」事も出来るのだ。
「腹一杯になった機体から離れていけ! 後ろが詰まるぞ!」
流れ作業のように詰まる事なく補給と離脱を繰り返し、補給中の機体を護衛する様に援護射撃を放つ。
そのループを繰り返し、1時間。
部隊は、情報流のいきつく先を捉えた。
「デケぇ……」
「曼荼羅ですね。敵はいません」
「着陸態勢。以降は歩行移動で探索を続ける」
___________
白色彗星
玉座の間
「テロン艦ヴンダーがコルサンティアに到着、コルサンティア侵攻軍が壊滅的打撃を受けています。すでに、ザバイバル師団長が戦死を遂げました」
「そうか。……コルサンティアの英知、アケーリアスが残した英知は、我らガトランティスの願いを叶える為の術である。そして、神殺しの船であるヴンダーを捉えるまたとない機会。跳躍に必要な力は供給を頼れば問題ない。サーベラー、やれ」
「帝星ガトランティス、相転移次元跳躍」
ビーストモード、実装出来て良かったです。
ファルコンspec2をマルチロールファイターとして活躍できるようにすることで、コスモタイガーⅡが搭乗するまでの延命が出来ています。
しかもこの改修は決して無駄にならないので、コスモタイガーⅡが原作よりもずっと強くなります