宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
あ、ヤマト3199第4章面白かったです。
ラストに「お前カッコ良く禍々しくなったな」ってなってブフォってなりました
『初号機とサターン5ユニットとの接続テストに問題無し。予定通り、超大型銃剣装備の稼働テストに入ってください』
『各部品の第1次強度試験結果はオールグリーン。第2次試験を60分後に実施』
『初号機の宙間戦闘装備の装着は予定より3分遅れています』
『外装主機接続良好、10分後に試験稼働に入ります』
『メインパイロット睦月レイ綾波特務三尉のパーソナルデータの登録完了。サブパイロット睦月・ハルナ・暁三佐の対呪詛文様処置結果はグリーンと推定』
『内蔵電源への充電率は92%』
『臨時ケイジのロックボルトを解除。以降は最低限の機体固定状態での整備に入ります。担当整備員はテザーケーブルの装着を再度確認してください』
テレザートまで残り1光年の空間で作業は熱を帯びていく。
無線での報告が飛び交い、試験は急ピッチで進められ、結構まで2日に迫ったテレザート解放作戦は最終準備へと進んだ。
その一角で、ハルナの姿はマリの部屋にあった。
「え、いや、言ってる意味は分かるんけどやっちゃっていいの?」
「やっちゃって下さい」
「はぁ……ハルナっちの髪綺麗だから勿体ないんだよねぇ」
マリはハルナの長い髪にハサミを入れた。
シャキンと音がするとパサリと髪が束で落ち、背中まで伸び切った髪は一気に肩くらいの長さになった。
「どのくらいにするの?」
「玲ちゃんくらいで。長いまま乗ったらLCLの吸水機に髪の毛巻き込まれるので」
「髪切りに行く時間もなかったからねぇ。切っちゃった後に聞くのもあれだけどさ、団子にして纏めるなり髪型チェンジで乗り切ろうとか思わなかったの?」
「考えはしましたけど、散髪にはちょうどいい機会かなって」
「ホントは、そういう理由じゃないでしょ」
やっぱりマリに誤魔化す事は出来ない。
自分と違い普通の人間の筈なのに、どうしてもカンが鋭い。
ハルナは観念して、本当の事を語った。
「空間騎兵隊って、首掛けのやつ以外にも靴の中にドックタグを入れているらしいですが、何でだと思いますか?」
「二つ分を? 一個で良くない?」
「バラバラ死体でも誰なのかを分かるようにそうしてるって、斉藤さんが言っていたんです」
音が消えた。
余り知られていないとはいえこれは真実であり、旧海兵隊からの規則とも言われている。
ハルナは後ろを向いていて表情が分からないとはいえ、肌に突き刺さる様にその感情を受け取っていた。
幸せ一歩手前で苦しく足踏みし続けている人が、危険な任務を目の前にして何てことないような表情をしている。
強がっているのか壊れかけているのかは分からないが、どうか前者であってほしい、と。
「流石にエヴァで死んだら上半身も下半身も意味ないんですけど、ここに私がいたという記憶を残しておくためですよ」
「……リっくんが聞いたら、それなりに悲しむよ」
「無事に帰ってきたら証拠隠滅しますって。だから黙っててください」
シャキン、また髪の束が落ちた。
「レイちゃんとハルナっちのプラグスーツを白メインにしなかったのはね、ちょっと縁起悪かったからなんだよ」
「無垢の卸立て、死に装束に見えるからですか?」
「そんな縁起の欠片もないこと言わないでにゃ。レイちゃんが白いやつ着てたって聞いたけど、最初のプラグスーツと言ってもちょっと怖い印象あってね、だからハルナっちのテスト用のやつを真っピンクにした」
「あれだいぶ恥ずかしかったんですけど」
「まぁテスト用は分かりやすいように色派手にっていう話もあるけどね、ちょっとヒロイックにしてそういうのをやわらげたかったんにゃ。こんなとこで死んでリッくん悲しませる幽霊になったら困るからね」
「言いますね……」
マリはハサミの手を止め、やや強めに肩を叩いた。
衝撃にハルナの肩が揺れたが言いたい事は何となく分かる、これは自身の戒めの為だと聞いた。
「いざという時は自分を大事にしないハルナさんだからねぇ。『いのちだいじに』が作戦内容に入ってないにゃ。年長さんから厳命する、リっくんを寡夫にしたらダメ。ゲンドウ君2号機を造りたくないなら必ず戻って来る事」
「……分かりました。必ず戻ってきます」
「約束にゃ、お姉さんとの」
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すっかり短くなった髪型の上から呪詛文様が印字されたバンダナを巻き、左目を隠す。
機能不全を起こして停止させるしかなくなったこの目は取り外してしまいたいと思っているが、今は出来ない。
生身の目、温かな光を持つろうそくのような目が、自分は好きだった。
「地球に帰ったら再生医療かな。休暇余ってるし、1週間丸々取っても怒られないよね」
この呪詛文様は義眼に仕込まれた物を打ち消す為の物だ。
自分じゃどうにもならないという事で地球にヘルプを出してデイブレイクの呪詛文様解読班に頼んで用意してもらったものだ。
これなら、恐らく大丈夫だ。
そしてその怪しげなバンダナの上から何時もの水色のバンダナを巻く。
スイッチが切り替わったような感じが頭に伝わり、どこか引き締まる。
「で、これね」
マリが作った実戦用プラグスーツだ。
綾波の記憶に沿って機能等を実装していったが、色に関してはマリがヒロイックに調整した。
だからなのか、白いのは肩から二の腕の部分だけになっている。
他は明るい水色、紺色がバランスよく配色されていて、マリが言ったように本当にヒロイックだ。
何とか全身を入れて手首のスイッチを押すと肌とスーツの間の空気が一気に排出されてウェットスーツのように肌に密着した。
体のラインがハッキリと見えてしまうがそこは配慮していたようで、胸元とかは微妙に分からない様に内蔵機器とかで誤魔化されていた。
背中には大きくWILLEの紋章があしらわれ、胸元には数字ではなく「α」の文字が入っている。
綾波の方はメインパイロットだから「A」と印字されているようだ。
「行こう、レイちゃん」
お揃いのプラグスーツを纏い、同じ戦場を睨んだ。
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『エントリースタート』
『LCL、電化密度は正常。思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス、初期コンタクト全て問題無し』
『コミュニケーション回線オープン。リスト1504までオールグリーン、シナプス計測、シンクロ率48.6%』
『発進準備』
「了解、サターン5起動」
サターン5、アポロ計画当時では史上最大のロケットであり、人類の月面着陸を成功させた歴史でも有名なロケットだ。
その名を受け継いだ全長140mのこのユニットは、鹵獲したガトランティス艦の主機を利用した大出力跳躍ブースターであり、エヴァ初号機に莫大な推力と1回限りのワープを与える翼なのだ。
そしてその見た目は「ブースター」という単語では片付けられない程に奇抜だ。
機首に当たる部分は細長く伸びた正八面体の装甲突入体となっていて、初号機がこの内部に格納されている。
その突入体の左右に取り付けられているのが、幸運にも鹵獲に成功したガトランティス製次元跳躍機関だ。
理論がガミラス星の機関と同じであり「ガミラス艦を鹵獲して模倣したのだろう」と結論付けられて難なく実装されたそれは、地球では見慣れない水色の噴射光を放ち初号機とサターン5を押し出していく。
「両舷機関圧力正常。ワープ準備」
『AAAWunderよりサターン5、ワープ先座標を送信する。超空間観測の結果、ハロー環上に敵性エヴァらしき機体と未確認の超大型艦艇を観測した。艦艇の方はこちらで片付ける』
「了解。機関出力上昇。ワープシステムとの接続良好」
青白い噴炎に押されてサターン5は猛進し、ハルナと綾波はエントリープラグの中で加速度に耐えていた。
酸素が溶け込んだLCLで満たされている為呼吸は問題なく、LCLが耐G性能を持っているのでプラグスーツに耐G性能を付加しなくてもいい。
それでも殺し切れない加速度が2人をシートに押し付けていく。
「ワープ先座標、テレザートハロー環付近。重力圏内だからグラビティダメージでブースターが止まる。慣性で飛んで着地するしかない」
「AAAWunderは?」
「追いかけて来るって。超大型艦は向こうが片付ける」
「じゃあエヴァに集中。分かった」
言葉を交わして表情が和らぐと、綾波はインダクションレバーを握り直して正面のワームホールを睨む。
ガトランティス製の機関を使っても、地球製のワープシステムを使えばワープエフェクトはアレにならないのは驚いた。
てっきり三角形を重ねたあのエフェクトが出る物と思ったからだ。
できればガトランティス特有の物が出て欲しかった、同じエフェクトなら見た目で誤魔化しが効くし、見知ったゲートから知らない物が飛び出して来たら驚いて行動が鈍るからだ。
『現時点で全てのリモート誘導を切る。以後の制御はローカル。Goodluck』
「ぐっどらっく。行こう、お母さん」
「……こんな事、ささっと終わらせよう。ワープ開始」
「ワープ開始、対閃光モード」
プラグ内の照明が暗くなり外部映像も暗くなると、ワイヤーフレームだけで構成された外界映像が映し出された。
無機質な直線と曲線だけで構成されたワームホールに装甲突入体を突き立てるとゆっくりと押し込んでいき、ブースターも飲み込んでいく。
エヴァでワープなんかした事もない綾波にとって、エヴァで感じる異様な感覚は拭いきれない。
引き延ばされるような縮められるような揉みくちゃにされるような感覚は鳥肌が立つ程には気持ち悪いもので、それを頭を振って振り払った。
眼前に映るのは、青々とした水を抱えた宝石のような星。
イスカンダル、地球、それらとも違う神秘性を抱えた星は、黄緑色の艦隊に集られている。
そのハロー環、土星の輪のような部分に突き刺さった柱、楔というべきかの構造物に向かって歩みを進める巨人が1人、エヴァンゲリオンだ。
「爆砕ボルト点火、対閃光モード解除」
装甲突入体の装甲が爆薬で吹っ飛び、巨人が現れた。
1つ目で白色と山吹色で構成されたこの巨人の肩には、紫と黄緑のラインが入っている。
綾波が知る零号機と同じ見た目ではあるが中身は初号機、勘違いを防ぐためにマーキングされた物だが、今だけはやけにヒロイックに見えてくる。
「通常モードに移行完了。武装は問題ない。使える」
「三式砲用意」
初号機が構える巨大な剣は、大砲でもある。
副砲に回された48センチ砲の予備砲身を使った事で火薬式の銃撃が可能となり、その砲弾として三式弾が用意された。
反動に気を付ければ圧倒的威力をたたき出すそれは単独で艦艇を沈められるが、これも対エヴァ用の武装だ。
ATフィールドを張らないと直撃からの小破は確実なので足を止めさせるには十分だ。
ドガァンッ!!!
野蛮とも称された物理の暴力が砲身から放たれ、着弾の遅延を伴い白熱と衝撃が環に揺らぎの紋を作った。
「足を止めた。こっちを見ている」
「対空警戒。そろそろ来るよ……来た!」
機体を揺らすほどの重力震が宙域を揺らすと、空間の歪みを突き破って人類史上最大の戦艦が現れた。
ツインドライヴ、80センチ主砲、大量のVLS、波動砲、ファルコンspec2、震電、波動砲。
地球が自慢できる力を全て詰め込んでアップデートされたその艦艇を目の前にした時、有象無象は塵芥と化す。
NHG-***1、AAAWunderだ。
『AAAWunderよりサターン5へ。これより対艦戦闘を開始する。ハルナ君、綾波君、必ず帰って来るんだ』
「分かってますよ、真田さん」
「行ってきます」
AAAWunderに向かって軽く敬礼をすると、残っている推力でハロー環に向かって加速をすると、すぐさま後方で爆発が起こった。
戦闘が開始された、超大型艦の件は分からないが、それ以外は雑兵だろう。
「これより、降下する」
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「全艦砲雷撃戦用意、主砲、副砲、VLS、対空兵装用意!」
「航空隊及び戦術機部隊緊急発艦開始、発艦安全速度解除」
砲撃戦に移行する前の僅かな時間を使い、第2船体下部から怒涛の勢いでファルコンspec2と震電、秋水、新2号機が放出されていく。
単艦で敵艦隊に殴り込みをかけるのだから、動かせる駒と手数は増やしておきたい。
そういう考えもあって安全速度無視の急速発艦を決行したのだ。
「レーダーに感。テレザートハロー環外周部に多数の敵艦を確認。艦種不明。ですが、1隻はNHGタイプです」
「不明艦とNHGを最大望遠で出してくれ」
真田の指示で太田がその艦艇を拡大投影すると、その姿に一同が息をのんだ。
二対の翼、猛禽を思わせる中央船体艦首、水晶を思わせる謎の構造物、鋭く尖った第2船体艦首、その船体に塗りたぐられた黄緑、白。
さらにガトランティス由来なのか謎の文様が各所に金で彫られていて、同じNHGとは思えなかった。
「コード0に該当せず。恐らく、報告にあった複製艦です」
「その周りに、趣味の悪そうなミサイル艦か」
南部が言う「趣味の悪そうなミサイル艦」というのは、確かに的を得ている。
艦首に白い超大型ミサイルを2発、艦艇のいたるところにミサイルを搭載している。
しかもそれはVLSに格納してハッチを閉めている状態ではなく、殆ど宇宙区間にむき出しの状態で積載しているのだ。
これでは被弾時にドミノ倒しのように一斉に誘爆して轟沈だ。
でも、これだけのミサイルを無事に射出されてしまったら総火力は馬鹿に出来ない。
ハッキリ言って、艦隊規模で斉射されたら対応能力が追い付かないだろう。
「ミサイル艦を先に叩く、南部!」
「歩く火薬庫みたいな艦艇なんだ。主砲じゃ勿体ない位だけど、出し惜しみはしません」
「撃て!」
80センチの咆哮がそのミサイル艦を射抜き艦橋丸ごとごっそりと抉られたその艦はミサイルの誘爆と共に宇宙の星となった。
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ティカル級使命遂行対大艦 1番艦
「敵襲ゥ──ッ!」
「対艦戦闘用意ッ! 推進器を捉え航行不能に追い込め!」
バルゼーは驚いていた、巨人を持つ者が自身とガミロンの青虫の他にもいたという事に。
それでもティカル級の性能と大きな戦意が自信を後押しして砲戦に足を進めた。
生体兵器ガイゼンガンである以上この船は、ゴストークよりも、カラクルムよりも強くある。
そして、クローニングで代を重ねたバルゼーの経験がある。
「輪動砲塔、徹甲砲塔、超巨大ミサイルの発射準備を急げ! 飽和攻撃で押し切ってくれるわ!」
ティカル級の五連装大口径徹甲砲塔が重々しく旋回しAAAWunderを射角に捉え、一切の躊躇なく砲撃を始める。
おくれて艦体各所からミサイルが放たれ降り注ぎ始め、AAAWunderの波動防壁に波紋を作り始める。
しかし、苛烈な砲撃には苛烈な応酬が帰って来る。
水色の破壊の光がティカル級に襲い掛かり艦隊の各所から炎が上がる。
こればかりはどうしようもない、バルゼーは分かっている。
AAAWunderにあってティカル級に無い物、波動防壁の有無で艦艇の打たれ強さに天と地の差が出てくるのだ。
「やはり盾の有無は覆しがたいか……ッ! ならば!」
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「敵NHG加速! 吶喊する模様!」
「吶喊!?」
レーダー上で急速に縮まる距離に森が咄嗟に報告を上げ、それは彼らの容赦のなさと荒々しい災害のような物を感じさせた。
波動防壁を衝角で破る積もりなのか、だがそんな物で波動防壁を破る事は出来ない。
「島、スラスター噴射面舵!」
「ああ!」
投げられた槍のように加速するティカル級から身を躱すために大きく躱そうとするが、ティカル級の加速が凄まじいのか波動防壁の発生面がティカル級の第2船体衝角に接触した。
その時だった、波動防壁の壁面に揺らぎが生まれたのは。
「これは……ッ! 島、さらに加速!」
「はいっ!」
波動防壁の揺らぎが異常数値に達し真田が咄嗟の指示を出すと、引き裂かれた布のように波動防壁が破れた。
そのままティカル級の衝角は防壁を破り続け、艦体を抉りはしなかったが最強の盾の信頼を一方的に抉り飛ばした。
「波動防壁展開に異常確認!」
「布のように破いた……ッ重力でかき消す方式ではなく、量子力学的性質を無いに等しくしただと……?」
信じられない。
ガトランティスにこんな物が存在していたとはとても信じられない。
そしてティカル級のこの推力、まるで大型ミサイルだ。
それが大質量兵器として襲い掛かって来るなんて、ガトランティスはやはり考える事が違う。
「古代! アレで吶喊されれば波動防壁でも防げないぞ!」
「防壁の中和か……ッ! よし、目標を分ける! ミサイル艦を航空隊と秋水、新2号機に任せ、NHGは震電、本艦で叩く!」
「AAAWunderよりアルファ(航空隊)、ブラボー(秋水)へ。目標を敵ミサイル艦とし攻撃を開始。チャーリー(震電)は本艦と共にNHGを叩く!」
展開済みのファルコンspec2と秋水がゴストーク級に飛び掛かる。
航空機であるファルコンspec2は勿論の事、飛行形態への変形が可能な秋水であれば圧倒的な推力で迎撃兵器を躱してミサイルを叩きこめるはずだ。
そして変形しない分頑強な震電なら、超大型艦を落とす為の艦載機になり得る。
パイロットは教導隊であり、現状最強の練度を誇る。
「アルファ、ブラボーは敵艦首超大型ミサイルを集中攻撃。誘爆による撃沈を狙え。チャーリーは敵NHGの砲撃兵装を破壊するんだ。吶喊しか方法が無くなれば、やりようはある」
「ですが、吶喊を避けられなければ……ッ!」
「島、お前の腕に賭けたい」
「……分かった分かった。機関長、やってください」
「いいんじゃな? ツインドライヴは時に使いきれん程にエネルギーを吐き出す。真田君、艦の外に排出するバルブ、アレを開いて使い切れん分を吐き出させるぞ」
「分かりました。ツインドライヴの排出回路を開き、余剰分を放出。使う分は余すことなく使います」
ツインドライヴが出力を上げていき、「AAAWunderが推進に使える十分量」を超える。
全力戦闘と最大船速を同時に行えるが時に持て余してしまう程のエネルギー量から、ツインドライヴには排出回路が設けられている。
そして現有艦の波動エンジンには例外なくこの回路が設けられているがあくまで非常用であり、波動エンジンの運用歴がまだ浅いがゆえの措置とされている。
それを非常時でもないのに開くのは、ツインドライヴの常識外れのエネルギー精製能力が故だ。
第2船体から青白い炎が噴出し、粒子となって霧散していく。
あの時に見たツインドライヴの光、波動エネルギーの正体にして、マイクロブラックホールの蒸発の光。
各種エネルギーに調律される事なく吐き出されるホーキング輻射の正体は美しく、オーロラの様。
それを彗星の尾のように引きながら、AAAWunderは巨鳥同士の追いかけっこを始めた。
格好の獲物にしてインパクトの材料になり得るAAAWunderは、ガトランティスにとっては喉から手を伸びる程手に入れたいものだ。
その追い手に追いすがろうとする人型の影が1つ、2つ。
いや、十数以上が小銃と雷槍を構えて飛び掛かる。
「デッカイ獲物だぜヒャッホーイ!!」
異次元の兵器が、ガトランティスの巨鳥に襲い掛かった。
「減速ッ!」
サターン5の全てのスラスターが進行方向とは真逆に向き、豪炎を吐き出し加速を大きく打ち消していく。
信じられないが、テレザートのハロー環はチリや氷の粒ではなく何らかの力場が可視化された物であり、エヴァ並みの質量物を支えて尚且つその上を歩く事も出来る程に頑丈らしい。
そしてハロー環に突き刺さる真っ赤な楔は、ただの楔なんかではない。
テレザートをこの世界に縫い付ける、或いは外界からの干渉を拒絶する為の封印装置か、それは分からない。
でも、破壊された跡がいくつか残っているから、ガトランティスはこれを破壊する為にエヴァを投入したんだ。
「8,7,6,5,4,3,2,1ッ……! 燃焼終了!」
サターン5から炎が消え、巨大なナットが自分で回転を始めて全ての構成部品がバラバラになっていく。
長大なブースターも一気に分解されていき、部品単位になったらそのまま投棄、スペースデブリにしてどんどん身軽になっていく。
そして着地、
ハロー環に大きな波紋を作り初号機は着地し、その眼前に見知らぬ機体を捉えた。
「各部異常なし、武装、S型装備、共に異常なし。エヴァ初号機、戦闘開始」
巨大な銃剣を構えて、初号機は巨人と対峙した。
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もし宇宙に空気があるなら、その音は轟音となってあらゆるものを揺らしただろう。
もし宇宙が漆黒の海でなければ、より鮮やかに映っただろう。
それ程にまで巨人たちの戦いは大規模で、一挙手一投手が災害だ。
ぶつけ合う暴力は火花を散らし、虚ろな視線と煌々と輝く視線が交差し、軋む筋繊維はぐわッと膨らみ、押し返し、睨み合う。
相手のエヴァ、白と黄緑の装甲を持つ虚ろな機体はハルバードのような武器を振り回し、初号機の銃剣型装備に打撃を与えてくる。
その初号機も、銃剣をまるで鈍器のように扱い叩き切る勢いで攻撃を加える。
どういう理由かは分からないが、綾波の記憶には「エヴァが剣を装備していた記憶」がなかった。
整備が大変なのか大して効果が無かったのかその辺りの理由は分からないが、「ロボット物には剣」というあるあるな常識を使わなくても良いという事で銃剣のように使える装備が用意された。
しかし使い方は、剣と言うよりメイス。
質量攻撃で叩き切る事を主眼に置かれ「刃が付いててバカデカいこん棒」とも呼べるこの装備は、エヴァの膂力を存分に生かしながら損傷や不具合を無くすために電子機器の一切を廃した。
なので特殊な機能なんてものは無い。
その代わり、AAAWunder副砲の予備砲身と保管してあった砲弾を使い火砲を取り付け、射撃能力も付与されている。
勿論この射撃能力にも電子機器は無い。
何を考えたのか、旧世紀のリボルバー式拳銃の仕組みを巨大化して実装してしまったのだ。
部品の数を100点以下に絞り耐衝撃性能を高めたそれは暴発を防ぐ為に確かに働き、十数回と打ち付けても不具合を見せない。
「強い……ッ!」
「でも戦えている!」
ATフィールドも中和し続けている。
相手のフィールドが分からないからつい数十秒前まで手探りだったが、ジワリと解けるような感覚が教えてくれた。
相手にもATフィールドがある。
初号機と同じようなちゃんとしたエヴァなのか、NHGの主機となっていたMark10なのか、それの複製品でしかない機体なのかは分からない。
でもこれでハッキリした、同じエヴァンゲリオンだ。
また打撃。
武器の攻撃力はこっちが上、そもそもの重量が違うんだ。
のけ反った相手の身体に更に一撃を加え、武器を落とさせる。
さらに怯んだところにメイスを突き立て、撃鉄を起こす。
三式弾が格納されたチャンバーが重々しく回転し所定の位置に移動すると、綾波は躊躇なく引き金を引いた。
ドガァンッ!!!
豪炎と共に放たれた砲弾が敵機の装甲に着弾し、大きな焦げ跡とクレーターを生み出した。
元が艦砲射撃用の砲弾だ、ガミラス艦が大きく歪む程の弾速と前後に千切るほどの爆発を起こせる砲弾ならエヴァンゲリオンのような理解不能の超兵器にも通用する。
「いけるッ!」
そう言ってはいけなかった。
敵機の躯体が痙攣したかと思うと、肩のウェポンラックを模した装甲が吹き飛んだ。
そこから生えてきた謎の棒、1本、2本、3本、4本。
制御棒のような物が引き出され、さらにその胴はうねり延伸していく。
はじき出されたように制御棒が飛び出していき、恐竜の骨盤のように伸びていく。
「何、あれ……」
「2号機……」
虚ろな目が歪み、不揃いな牙が生え、口は大きく開かれた。
あ、ガンダムの方もよろしくお願いします