宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
「現在艦内の状況はフリー。主要区画及びバイタルパートの安全を確認。ベークライトの破砕作業はトータルで5%進んでいます」
「多少遅れても大丈夫です。安全第一で砕いて下さい」
「了解です。工兵部隊から爆薬を使える者を集め砕きます。破砕したベークライトはどうしますか?」
「そうなんですよね……艦艇の噴射炎で燃やし尽くしてもいいけど初めてこんなに大規模に使ったので。サンプル回収してそれ以外は噴射炎で燃やし尽くしましょう」
船外服を脱いでようやく身軽に慣れたリクが的確に指示を出していく中、真田は考え続けていた。
地球からテレザートまでは、単純計算で21,750光年離れている。
如何にツインドライヴのヤマトとはいえ、この距離を1日で走破する事は絶対に出来ない。
通信が届くまでに1日、そこから救助艦艇の選出や配置、発進準備等で最短1日、そこから機関の負荷を無視しての連続ワープをしても10日、合計12日は必要となる。
なぜこれほど早く到達する事が出来たのか、真田には分からなかった。
「睦月君、どうやってこれ程まで早く辿り着いたんだ?」
「トランスワープを沢山やってみました。ガミラス艦隊とツインドライブ艦のヤマトの合わせ技、実際ヤマトは、地球発進からここまでの間でノンストップの弾丸特急になってました」
「……まさか!?」
「合計40回のトランスワープとダメ押しの超長距離ワープ。これで、21,750光年を1日で走り切りました」
《被制圧時の緊急シグナルが届く2日前》
「知らない天井だ……」
大量の機械に囲まれたベットの上で、碇シンジはそう呟いた。
記憶が所々しか存在せず、掲揚できない不安感に襲われ表情がどんどん歪んでいくが、知らない少年の顔が頭の中に残っている。
(誰だったんだろう、あの人は。会った事があるような、無いような……)
腕からは1本の点滴の管が伸び、消毒液のような病院独特の匂いがしている。
「気が付いたかい」
少し低い声が聞こえてその声の方に首をやると、見覚えのある人が立っていた。
KOMPASS、KREDIT、WILLEに次ぐ力を持つ組織のトップに立っている男、睦月・リク・暁だ。
「ああそのままでいい。起きなくてもマスクを外さなくてもいい」
リクは手で制すると、背筋を正しシンジに向き合った。
「まずは謝らせて欲しい。戦いに巻き込んではいけない君を巻き込んでこんな事になってしまった。すまない」
リクはその場で深く頭を下げた。
シンジは慌てるがリクはそのままだった。
親となり1つの組織の長となり、何だか抱える物が増えてしまった今では、こうして頭を下げる事も増えてきた。
何より、シンジを預かったのは自分達だ。
「ここは、どこなんです?」
「防大病院の隔離病棟だ。エヴァに乗せられていた君に普通の病棟で入院してもらう訳にはいかなくて、済まないが隔離させてもらっている。それ以外は不自由させない、約束する」
見るとテレビや飲み物や小さめのソファなどが置かれていて、ここが普通の隔離病棟の一室ではない事が分かる。
病室の無機質さを見かねたリクが手配したのだろう。
「えっと、ありがとう、ございます」
「容体が安定し次第、君にはナガトに乗ってAAAWunderに向かってもらう。すまないがWILLEの意向だ。SEELEが君を狙った以上、奪還し返されるわけにはいかないんだ。身の安全を保障して、冬月先生にも同行してもらう。もう一度信じて欲しい」
そう言ってもう1度深々と頭を下げる様子にシンジは頭を挙げるように言い続けるが、けじめとして上げる事は無かった。
子供を戦争に巻き込む____学徒出陣なんて恐ろしい時代ではないが、過去にも未来にも起こしてはいけない事だ。
綾波は特別な事情と本人の意向で特務三尉という階級を使っているが、シンジはそうもいかない。
どこにでもいる筈で、普通に暮らしている筈の中学2年生だ。
「君の友人たち、2年A組はうちの諜報部で1人1人コッソリ監視してSEELEがちょっかいかけてくることを防いでいる。鈴原家と相田家、洞木家は特に重点的に見ている」
「トウジとケンスケ、委員長の家を?」
「少なくとも君の関係者だからね。SEELEの事を話すわけにはいかなかったから、プライバシー配慮して遠巻きにガチガチに警戒するだけだ。それと、伝言を渡しておく」
リクは簡易端末に入っていたデータファイルを開いて再生すると、やかましそうな男子生徒の声が飛び出した。
『シンジ! 急にいなくなって心配してたら、このWILLEの白髪が来てビビったわ! でもな、あいつメチャクチャ頭下げとったからワシは信じたる!』
『白髪言うな。相田でーす。……お前、無理すんなよ。ちゃんと待ってるから』
『ちょ、二人とも! ……元気になって。必ず戻ってきてね!』
『ありがとう、シンジ君に必ず渡そう』
1分にも満たない短いボイスレターだったが、急に消えた自分を心配した人がいたという事に胸が締め付けられ、シンジは枕に顔を押し付け、嗚咽をこらえる。
その様子を見てリクは一時撤退する事にして、病室を後にした。
そっと病室のドアを閉めると、壁にもたれかかったカヲルが曖昧な笑みを浮かべていた。
何を考えているのか終始分からないアルカイックスマイル、でも今は、嬉しさと複雑さを抱えている。
「行かなくていいのかい?」
「遠くから見守る形も、悪くないと思わないのかい?」
「妻子がいる身としては分からないな。……意識はハッキリしてるし、SEELEにされた事はあんまり覚えていない。でも精神面のケアはどの道必要だ。君の手を、借りる事になるかもしれない」
「構わないよ。別に僕は、シンジ君を独占しようとは考えていない。彼の望む未来に、少しのテコ入れをさせてもらうくらいだよ」
「その後はどうするつもりだい?」
「そうだね……世界を渡る意味は無くなってしまった。達成感と幸福感で大きな穴が埋まってしまったから、多分何をしてもそこまで感じないだろうね。でも……そうだね、久しぶりにピアノをやりたいという気持ちはあるかな」
「最後のシ者は音楽を嗜む、か」
リクの冗談めいた口調に、カヲルは少しだけ肩をすくめた。
「昔、シンジ君とQuatre Mainsの連弾をしたんだ。今思えば僕が強引に誘っていたような物だけどね。あの時は、楽しかった」
リクはしばらく黙っていたが、ふと何かを思いついたように言った。
「……カヲル君、もしよければ、学校に通って見ないかい?」
「え?」
突拍子もない提案にカヲルの笑みは吹き飛ばされ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
貴重な表情に吹き出しそうになったリクだけど、案外真面目な話でもあるから堪えて話を続行する。
「使徒だから親の概念が無い事は理解しているけど、戦災孤児枠として各管区では孤児院が多くなっている。その成長しない体問題を解決しないとどうにもならないけど、人になって普通に暮らす事も考えてみたらどうかい?」
「人として……生きる?」
カヲルは小さく繰り返した。
それはまるで、自分の中で響きを確かめているような声で、“人”という単語に、ほんのわずかに温度が混じる。
「学校に通って、日常を送って、昼にパンを食べて……そういう普通の時間を過ごすのも悪くない。戦いのない日々を、試してみてもいいんじゃないか?」
「……君は、面白いことを言うね」
カヲルは壁から背を離し、まっすぐにリクを見つめた。
その瞳の奥には、かつての“シンジを見つめた優しさ”と、“人の光を知った存在”の色が宿っていた。
「でも、そうだね。もし僕が人間として世界に残るなら──“友達”として、彼の隣に立てるだろうか?」
「立てるさ」
リクは即答した。
「君が“守るために在る存在”から、“共に生きる存在”へ変われるなら、それはもう立派な人だ」
カヲルは目を細め、ほんの少しだけ笑った。
その笑みは、どこか少年のようだった。
「……じゃあ、考えてみるよ。制服を着る自分を、想像してみるのも悪くない」
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カヲルを庁舎の寮に送り届けたリクは、無言のまま長官室へと向かった。
磨かれた床を踏む靴音が、冷たい夜の空気を震わせる。
これから行うのは軍事作戦、しかも一般市民に知られてはならない、苛烈極まる掃討戦だ。
「シンジ君は無事に目を覚まし、カヲル君は次の指針を見つけた。……さて、我々大人はバイオレンスのお時間というわけですね」
デスク前にいた芹沢が、わずかに苦笑を浮かべた。
長官室の奥、壁一面のホログラフに展開される地図には、赤い点がゆっくりと点滅している。
その中心には、たった一つの名前。
「睦月君、本当にこの位置なのだな?」
「心配し過ぎですよ、芹沢さん。それに、ここを突き止めたのはデイブレイクと加持さんです。精度は保証付きです」
リクは軽く答えながら、肩の緊張をほぐした。
だが、その声色に冗談は含まれていない。
デイブレイク調査班のメンバーの顔が脳裏をよぎる。
目の下のクマが深くなりすぎて、油性ペンで描いたように見えるほどだった。
それほどの執念で、彼らは幽霊の足跡を追ってきた。
量子通信経路の解析と隠蔽アルゴリズムの解読。
リク自身が女装までして潜入したティアマトの完全調査。
KOMPASSによる強制接収、そして地下都市連絡網の一斉封鎖。
──その全てが、一つの地点を指し示した。
「KOMPASS本部の真下、《ノナタワー地下区画》、か」
「ノナタワーの消費電力量は偽造されていませんでした。ですが、大深度層から量子通信網が多数の拠点と接続しているのが確認されています。そして、あの“義体”の解析結果を合わせると……ここしかない」
リクは頷き、壁面の映像に手をかざした。
その中心に映る一枚の映像──それが、彼らが手にした“証拠”だ。
《クリストファー元大統領の義体》。
「まさか、あれが鍵になるとはな……」
「実際、物証は揃っています。義体の中から確認されたライトキューブ──あれは間違いなく、FLAIの“本体”です。光量子ネットワークを内包し、意識データを保持する立方体。魂そのものといっていい」
現在WILLEに協力しているFL乗組員、元アンダーワールド人の魂と言っていいライトキューブは、人間の大脳と同等の容量を持っている。
本来はとある組織がフラクトライトをコピー&保存する為に21世紀の時点で作ったものだが、容量の面を見れば「人間の意識を丸ごと保存できてしまう」。
「つまり、SEELEは“人間の意識転送”を既に確立している、と」
「はい。しかもその転送経路が“量子通信”を介している。観測した瞬間に情報が変質する通信形式を、彼らは逆手に取ったんです。盗聴が成立しないからこそ、“誰にも干渉できない転送”が完成した」
リクは指で空中に操作線を描くと、地図のレイヤーを切り替えた。
無数の青い線が、ノナタワーの地下から世界各地へと伸びていく。
「だが、義体に残っていたキャッシュの完全破壊は出来なかった」
リクは静かに続けた。
「クリストファーの義体というポイントからSEELEに量子通信をするとき、どうしてもキャッシュデータが発生します。これも高度に暗号化されて義体破棄時に壊したつもりかもしれませんが、80年分の執念を舐めてもらっては困ります」
目の奥にぎらぎらと炎をたぎらせる月村が指を鳴らしていた。
「死人の義体から生きた神を辿るとはな」
「人の業ですよ」
リクは短く言い、瞳を細めた。
「だが、これで確定しました。SEELEの本体はノナタワーの下層、館内マップにも載っていないくらいの大深度」
「突入の方は?」
「WILLE宇宙海兵隊欧州機甲師団のほぼ全てを動員し、2式空間機動甲冑を装備させます。動体反応は全て敵とみなし、携行武装の使用自由を想定しています」
「徹底的ですね。そこまでする理由って、何です?」
「単純に、僕が殲滅すべきと思ってるからです」
にこやかな笑みで圧をかけると全員の額に冷や汗が浮かんだ。
2155年、2202年、2203年、
しかし2155年の事件が起こらなかったら、自分は2199年の時点で相当な年を取っていたのでイスカンダル航海に参加してもいないし、ハルナと結婚していたのかも怪しいので一概に全てが悪に染まっているとは言えない。
しかし、今は横に置いておこう。
世界と自分たちにここまで迷惑をかけてきたんだ、落とし前は付けてもらわなければならないだろう。
「じゃあ、作戦名は断頭台で」
「「「怖い」」」
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KOMPASS本部の真下というのは、正直盲点だった。
灯台下暗し、という言葉にも言い換えられるが、ノナタワー自体が相当に高い建物である事も相まって、「灯台」の方がしっくりくる。
この断頭台作戦を、KOMPASS本部は了承した。
元がクリストファー元大統領がSEELEの義体として根を張っていた建物だ、何か出るのか出ないのかと言われれば「出る方」だろう。
そして、五大湖集積基地から駆り出された超大型水上貨物機3機は第三新東京に着水、万が一を考えて陸戦部隊と震電2個小隊、CQBを前提にした装備に身を固めた空間騎兵第1機甲師団が動員される事となった。
その搭乗30分前、それはリク宛の緊急連絡で一時中断された。
「AAAWunderが!?」
『超指向性で放たれていた。艦内被制圧時の緊急シグナルと見て間違いないんだな?』
「うちで用意した物ですから当然です! 位置は!?」
『地球から21,750光年先、テレザート星だ。シグナルには碇ゲンドウという人物名が入っていた』
金属の擦れる音が腕から聞こえた。
無意識に義手で強く握り込んでしまい、指先に僅かなへこみが出来てしまった。
どこから湧いて出たのかはリクは知らないが、ハルナと綾波が乗っているAAAWunderを占拠して、よからぬことに利用しようとしている。
SEELEか宙か、決断は早かった。
「庁舎に戻ります! 艦を宙に上げる準備を!」
『だが、距離が問題だ。強行軍で1日5回のワープとしても10日はかかる』
「1隻だけ。1隻だけ可能な船があります。超長距離ワープとトランスワープを最大限に使えば単艦で3日以内に到達できます!」
『ヤマトを動かすというのか! だが第11番惑星防衛線の要だ。動かすとなれば代理が必要となる』
『芹沢副長官、山南をその任に当ててみては? アンドロメダはツインドライヴではありませんが、ドレッドノート級を重力アンカーで接舷させブースターとして運用します。アンドロメダがダウンしても、機関を停止させ待機していたドレッドノートで退避させれば、代役は可能です』
「シンジ君もすでに日常生活を送れるくらいには回復しています。冬月さんも連れてヤマトに移乗して移動します」
関係各所へ速やかに連絡を入れると着こんでいた装備品を一気に脱いで滑走路から走り出すと物凄い速度で走って来た軍用車両に飛び乗った。
恐らく藤堂長官が迎え用に寄越した車だろう、行き先を言う前に車両は走り出し数分もしないうちに統合庁舎が見えてきた。
「諜報部をパシリに使うとは長官も人が悪い」
「加持さん!」
「連絡は受けている。奥さんと娘さんの方が大事なのは実に人間らしい。人からだんだん離れてているのに心は人間のまま。大事にしてほしいね」
「すみません残り全部丸投げします」
「いや全然。月村会長やうちの部員、空間騎兵は殺る気満々。ああ、「や」の字が漢字かひらがなかはご想像にお任せするよ」
「漢字にしておいてください。僕がやっておきたかった事なので」
____________
通信は既にパンク寸前の勢いで飛び交っていた。
安保理適用で応援要請を受けたディッツ艦隊は瞬時に中継艦の配置を決め、アンドロメダはドレッドノートのブースター運用準備に入った。
超長距離ワープに必要な物資、トランスワープの座標、各艦の軌道同期。数百の指示が同時に出され、誰もがその指示の一つ一つに命運を託している。
その結果は、巨大な銀河海図に映し出されたガミラス艦の座標と目まぐるしく動く空間座標計が示していた。
「さっき電話して1時間も経ってないぞ……」
「異常な働き者に頼り切る訳にはいかないからな。太陽圏に急行中のディッツ艦隊は、幸いにも分艦隊ごとに分けて航行させていた。これを利用して、トランスワープをノンストップで行う」
「ノンストップで? いや仕様上にはそんなものは……」
「可能です。次元波動理論に一日の長があるガミラスではトランスワープを用いた訓練も行われています。一部の艦隊は航行状態の艦艇と相対速度を合わせて接舷させてそのままトランスワープする技術を持っているとか」
「そしてその技術を持っていたのは、故エルク・ドメル大元帥が率いた第6空間機甲師団で、今のディッツ艦隊と在太陽系艦隊にノウハウと思想が受け継がれている」
「エルク・ドメル……七色星団のか!?」
エルク・ドメル。
カレル163と七色星団で旧Wunderを苦しめ、宇宙の狼という二つ名を持った男だ。
死後、上級大将からの二階級特進で最終階級が大元帥となり、彼の名はガミラス史に残り、彼のノウハウはその部下たちに残った。
そして、ガトランティス殲滅の為の空前絶後の大艦隊であったディッツ艦隊を動かせたのは、第2バレラス落下未遂事件で自壊覚悟で波動砲を撃ったAAAWunderへ報いる為という理由があり、大使館経由でダメ元で通された応援要請はあろうことか首相命令として即時承認されたのだ。
ガミラスは屈辱を忘れない民族であり、恩を忘れない民族だ。
戦いという決して幸福ではない縁ではあったが、繋がれた縁がここで花開いたのだ。
「ただ、作戦参加艦艇全ての軌道計算には骨が折れましてね。何かとコネの多い藤堂長官から世界中のMAGIの使用許諾で声をかけてもらいました。今は赤木博士と遠隔で伊吹二尉がルート計算中です。跳躍点と跳躍先の空間点の調整に残り3時間……いや2時間と言っています」
「既に在太陽系艦隊から指定位置に艦艇が向かっている。戦時下が功を奏したな。艦内待機の分艦隊が真っ先に上がっていったぞ」
「ヤマトは既に発進準備に入っている。残りの調整は全てこちらで行う。大使館経由で低遅延超空間通信も使えている。問題は無い。行くんだ」
世界どころか星が纏まっている。
自分が何もしていないのに、人類史上最強の戦艦を救うために一致団結している。
この光景をどこかで見たことがある、どこだっただろうか。
ああそうだ、ヤシマ作戦だ。
軌道上にいるWunderへ向けて全電力をマイクロウェーブにして送信したあの作戦*1だ。
その時の種火がまたここで燃え上がっているのが分かる。
自分が行くなら、今しかない。
「皆さんッ!! よろしくお願いしますッ!!」
「「「応ッ!!!」」」
__________________
銀灰色の1隻の宇宙戦艦、ヤマトでは発進準備が進められていた。
「稼働中のケルビンインパルスは出力70を維持」
「大気圏内に障害となり得る艦艇及び機影は確認できず」
「民間人2名及び睦月リク暁三佐の乗艦を確認。ハッチ閉鎖」
後部甲板に乗り付けたシーガルからリク、シンジ、そして冬月が艦内に乗り込むと、乗降用タラップが収納され、岸壁から離れていく。
横須賀で慌ただしく進められていく出港準備はしかし丁寧さを持ち合わせていて、まるでこの日の為に用意されてきたかのような正確さも持っていた。
慌てず急いで正確にを体現したヤマト第1艦橋の艦長席に座るのは、「葛城ミサト特務二佐」だ。
WILLE艦長職に上がるには古代と同様にやや足りない階級だが、WILLEの上層部しか知らない事情等もあり艦長職に就いている。
「葛城艦長、統合庁舎からガミラス艦の座標配置データを受け取りました。メインスクリーンに映します」
伊吹の操作でメインスクリーンに大きく映し出されると、厳格に決められた艦艇配置図に一同目が釘付けになった。
しかしミサトはそれを一瞥すると、必要な事を再確認し高雄に確認を取った。
「トランスワープの方は?」
「トランスワープ自体はコイツの運搬で何度も受けていますが、ガミラス艦でのトランスは初です。そして超長距離ワープときたものですから……AAAWunderの空間点にワープした直後に戦闘態勢を取れるかが肝ですな」
「青葉君、各砲塔のコンデンサーにエネルギーを充填しておいて。ワープアウトしたらすぐに戦闘かもしれないよ」
「了解です。ですが、AAAWunderの波動防壁を抜くのは正直厳しいです。名実ともに地球最強の戦艦です」
「大丈夫。何も全部壊すわけじゃないわ」
「兎に角了解です。火器管制準備よし」
「レーダー、スキャナー準備OK」
「ツインドライヴ、用意よし」
「補機、第4船速。接続いけます」
「操舵、いつでもどうぞ」
ミサトがリク達を一瞥すると、髪をかき上げて艦長帽を被り直すと号令を出した。
「ツインドライヴ、フライホイール接続。ヤマト、発進!!」
直列型ツインドライヴが333mの艦体に莫大な推力を与え、巨大な水柱を上げてヤマトは浮上した。
2つの心臓を持つもう1隻の艦艇にして唯一の第2.5世代は重力を悠々と振り切り、一気に対流圏に足を進めた。
「フェイズシフト展開」
「了解。フェイズシフト、通常モードで展開開始」
伊吹がコンソールを操作して装甲への通電を行うと、銀灰色の装甲が鮮やかな黒鉄色と深紅色へ姿を変えていく。
かつての大日本帝国海軍を思わせるカラーリングを纏うその姿は他のどの艦艇よりも勇ましく、見る者を鼓舞する引力を与えていく。
そして艦首と艦側面に描かれた錨のマーク、ヤマトだけが持つ軍艦の印が陽光で輝いた。
「フェイズシフト展開終了。異常発熱、異常放電なし。消費電力3000kwで安定。ツインドライヴ出力40%。フェイズシフト完了」
「統合庁舎からのワープ座標支援が開始されました。第1次ワープアウトポイント、冥王星軌道以遠重力圏外です」
「全艦ワープ準備。長良、頼むわよ」
「了解、艦長」
「第1次ワープポイントへワープを行う。ワープ用意!」
「ツインドライヴ出力上昇。規定出力まで10秒」
「座標確認。ワープアウト後、慣性航法状態でガミラス艦艇によるブースターを受け入れトランスワープを行う。総員ベルト着用」
青白い豪炎を吹き出し速力を目まぐるしく上げていくヤマトの眼前に空間の揺らぎが生まれた。
三次元空間を穿つワームホールは空間に波紋を生み出し続け、光に最も近い速度で突き進むヤマトを難なく受け入れた。
そして冥王星重力圏外に飛び出し薄氷を脱ぎ捨てると、深海魚を思わせる形状の緑の艦艇が待機していた。
デストリア級2隻、そしてワープ管制塔としてミランガルが待機していた。
「ミランガルより映像通信です」
「メインモニターに」
映像通信を接続するが、リクは通信の主に察しがついていた。
そしてそれはずっと正解で、紫の髪に頬の縫い跡を持った血気盛んな男が映った。
『ムツキの旦那、ヴィレの上層部から状況は聞いている。元第6空間機甲師団としてお前をきっちりテレザートにブッ飛ばしてやる』
「感謝します、バーガーさん」
『年そんなに変わんねーだろ、バーガーでいい。カツラギ艦長、事前に受け取っていると思いますが手筈通りにお願いしますよ。第3ポイントまではうちの分艦隊が待ってます、残りはディッツ艦隊のになりますので、到着予想時刻はこちらから伝えておきます』
「感謝します、バーガー中佐」
通信はそこで切れ、慣性航法状態のヤマトに向かってデストリア級が追い付き、艦体を90度傾けて重力アンカーでヤマトの両舷にピッタリと貼り付いた。
「ガミラス艦からのトランスワープ申請を受諾、ワープアルゴリズムをガミラス式に同調」
「重力アンカー正常、ワープ先座標を確認。第2ワープインポイント至近、座標誤差、重力による干渉確率3.4%」
「トランスワープ開始」
ブースターとなったデストリア級のメインエンジンが青白い光を伸ばしていき、ヤマトはデストリア級の助けを借り赤い空間の裂け目に飛び込んだ。
出力の比較です
AAAWunder(2203)
↑
Wunder (亜空間回廊海戦ツインドライヴ)
↑
Wunder(2199、ツインドライヴする前まで)
↑
デウスーラ2世(エアレーズング)
↑
ルクレティウス級(複数載せてる為)
ヤマト(タウコアツインドライヴ)
↑
本作の第2世代、原作2199ヤマト
↑
○○○○級戦略機動航宙殲滅攻撃機
となっています
ちなみに、今作のヤマトは3199のようなデザインですがハウンドを乗せてないので、艦載機搭載数は2199時台と同じです。