宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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本作には、現実の緊急警報(Jアラート)を模した演出が登場します。
読者の不安を煽る目的ではなく、作品世界の設定上の演出です。
苦手な方はご注意ください。


Evacuation(避難)

 白色彗星

 瞑想の間

 

 

 ティカル級が墜とされた。

 NHGを解析し、神殺しの船の代行者にして複製として生み出した執行艦が、よもやあのような機械の歩兵に落とされるとは。

 

 幾ら巨大でも、あの機械の歩兵には敵わない。

 デスバテーターの能力を大きく凌ぎ、ガミロンの戦闘機も容易く叩き落とす性能は、現時点では埋め難い。

 

 何がテロンの力をここまで大きく引き出した。

 

 滅びかけた彼の星を、何がここまで精強にした。

 

 何が自分の計画を妨げようとしたのか。

 

 

「テレサ、お前の導きなのか……」

 

 この世の始まりから終わりまでを見定める女神は何も答えない。

 テレサの力はあらゆる願いも叶える伝承は決してお伽話ではなく、その力であったかもしれない世界を創り出す事も出来る。

 

 テレサの力の奪取とアディショナルインパクト、2段構えの作戦の片方を潰され、もう片方の作戦の要を潰されたのだ。

 

 

 ズォーダーの激昂は、瞑想の間に散らばった化石標本が無言で語っている。

 何らかの宇宙生物の化石標本が飾られたこの部屋は、この全てを飲み込む滅びの象徴とは打って変わって生物の保管を目的としたような意図が見える。

 

 その部屋の名前にふさわしくない高ぶりが、ズォーダーの中で渦巻いている。

 

 

 最後に使うのは、この手段かもしれない。

 

 

「大帝、宜しいのですね」

 

「構わん。予備の計画を潰されただけだ。ガイレーン、始めろ」

 

「どうかこれが、貴方様の憎悪を焼き払う事を願い」

 

 

 _____________

 

 

 

 地球 第三新東京市

 WILLE 統合庁舎

 

 

「エリダヌス40に大規模な重力震反応、分析出ました、パターン白!」

 

 旧8番浮遊大陸に設置された無人観測基地からアラートが発せられ、天体規模の物体のワープアウトが確認された。

 パターン白、ワープ時に白煙を吹き出していた2199年時のガトランティス艦にちなんで設定された符号で、地球艦艇なら青、ガミラスなら赤が設定されている。

 

 これ以上符号が増えるのはあって欲しくないが、確かに敵は来た。

 なら、動くだけだ。

 

「遂にこの日が来たのか。ヤマトはどうか」

 

「先程、冥王星基地を通過しました」

 

「アンドロメダには、代役を押し付ける形になりましたな」

 

「ワープ阻害があるとはいえ、ここから地球に降りてすぐに11番惑星に飛ぶのは負担が大きすぎます。アンドロメダと、山南指令に任せるしかありません」

 

「そうだな。イザナミの準備は?」

 

「選抜部隊の機体のパーソナルデータを反映させ、個々人の専用機として調整中です。遅滞戦闘に持ち込み、1か月あれば作戦投入可能かと」

 

「1か月か……」

 

 白色彗星が太陽系の目と鼻の先に来ている時に、1か月の時間を稼がなければならない。

 途方もなく大きな課題に見えるが、幸いにもWILLEにはこれでもかと考え抜いた「アディショナルインパクト絶対阻止計画」がある。

 使える物は全て使え、戦力として動かせる艦は全て動かせ、太陽系は俺達の庭だから多少やんちゃをしても平気の精神で考えて考え抜いた策は一つ一つが必殺級の出来栄えであり、現在のガトランティスの状況が外れない限りは「面白い位に効く」策だ。

 

 AAAWunderからの報告によると、白色彗星内部には膨大な数の艦艇が係留されている。

 最低で10万隻、最悪で100万隻単位だ。

 これ全てが戦力として運用できるかどうかは判断し切れなかったが、16万8000光年彼方に1万隻を超える実働可能戦力を持つ文明(ガミラス)がいた事を思い出したWILLEは、これら全てが動く事を前提に置いた。

 

 しかし、ガトランティスが戦術的戦略的に艦艇を使えるかと言われたらそうでもないのが現状だ。

 ガミラスから提供を受けた資料では、西暦2199年時点のガトランティス艦隊にカラクルム級はいない。

 ここ数年で開発、或いは奪取した艦艇であり、それが数十万数百万と量産したもののこれらをどう運用しようかは考えきれていないのが現状なのだろう。

 

 実際、ガトランティスがここまで規模を拡大した事は過去に確認していない。

 これが初めての急拡大であり、白色彗星を手に入れて稼働状態にしたから出来た事と言えるだろう。

 

 

 しかし、時に数は戦略を雪崩のように押し潰してくる。

 万全の準備で待ち構えたつもりだったが、想定をはるかに超える物量が何もかも押し潰していってしまった事は、先人たちから学んでいる。

 

 故に、WILLEは石橋を叩いて渡る。

 

「SSアラート発動。各衛星基地全域からの民間人退避を開始し、市民に放送を行う」

 

 

 SSアラート、それはかつて極東で使われた全国瞬時警報システムを太陽系規模にまで拡大した「太陽系全域瞬時警報システム」だ。

 嘗てのガミラス戦争では管区単位での避難で足並みが揃わなかった。

 その反省を受け設けられたこのアラートシステムは、将来的な太陽系内コロニーへの警報通知も行うことも考えられており、ボタン1つで全人類に警告を届ける事ができてしまう。

 

 

 

 

 その目的はただ1つ。

 人類保護に関する情報の発表だ。

 

 

 

 

 月面

 サナトリウム

 

 

 療養を続ける一人息子を看病し続ける真琴は、自分の携帯端末で息子にアニメを見せていた。

 旧世紀の時代のアニメの再放送でありやや古いが、それでも正義の味方やコスモファルコンといった戦闘機、巨大ロボットはお気に召したようで、今日も同じ時間に端末を覗いていた。

 

 

「ママ、アニメとまっちゃった」

 

「ん? 電波悪いのか……な」

 

 電波の問題で止まったのではない。

 止めざるを得ない理由があっただけであり、その理由は画面に映る情報自身が説明していた。

 

 

「……始まったのね」

 

『カメラ回ってるよ!』

 

 空っぽのニューススタジオが映る映像の次には、黒赤白だけで作られたウィンドウが表示された。

 

 

 

人類保護に関する情報

     

攻撃兆候感知、攻撃兆候感知

敵性異星文明からの攻撃兆候を感知しました

該当地域にいる方は、避難を開始してください

 

対象地域:地球全域 月面基地 衛星鉱山

地球圏平和維持防衛機構WILLE

 

『番組の途中ですが、ここで人類保護に関する情報です。攻撃兆候感知、攻撃兆候感知。敵性異星文明からの攻撃兆候を感知しました。繰り返します。攻撃兆候感知、攻撃兆候感知。敵性異星文明からの攻撃兆候を感知しました。これより12時間以内にWILLE、KREDIT、KOMPASSによる全人類の地下都市への避難計画が開始されます。落ち着いて指示に従い、避難を開始して下さい。対象地域は地球全域、月面都市、衛星鉱山です」

 

 周りを見るとサナトリウムに滞在するすべての一般市民の端末に送信されている様で、喧騒が大きくなっていく。

 入院中の子供たちもその状況の変化を感じ取り、しかし不安と恐怖に襲われている。

 

 

「落ち着いてください! 私はAAAWunder元乗員の加藤真琴です! ご家族の方は、貴重品の入った最低限の荷物を速やかに用意して避難準備を始めてください!」

 

 軍歴証明書と当時のカードを片手にそう叫ぶと、膨らみかけた不安はそこで止まった。

 

 AAAWunderが地球を発ったのど同時期に、真琴はリクから「いずれこうなる」事を聞かされていた。

 ついに来たかという構えの心と来てしまったという少しの焦りが渦巻いているが、避難という非常時が自分の中で切っていたスイッチを起こした。

 

「AAAWunderの人ですか?」

 

「元でけど、イスカンダル航海に同行していました」

 

「ご協力に感謝します。何せSSアラートの使用は今回が初めてなので。4時間後にサナトリウムに滞在、及び入院する全ての民間人と患者を地球に移送開始します。KREDITからアントノフ型2隻が急行していると連絡が入っていますので、往復だけで全員の避難が完了します。それと、人手が足りなくなりそうなので、軍務経験者を大急ぎで募集しています」

 

 真琴は一瞬逡巡した。

 軍務から降りた自分でも今出来ることがある。

 でも自分の息子のことが心配だ。

 ココ最近は特に落ち着いているけど、環境変化等で崩すかもしれない。

 

 母親としてか、元乗組員としてか。

 

 

 

 

 

 いや、いっその事両方取ってしまえ。

 

 母親として誇れる自分になるため、元乗組員として動く。

 そう決まれば、真琴は早かった。

 

「荷物をまとめます、息子をお願いします」

 

「お任せ下さい。ご協力に感謝します」

 

 真琴は居住区の一室に飛び込むと最低限の持ち出し品を纏めて、最後に水色のバンダナ__WILLEのバンダナを腕に巻いた。

 

 初代艦長の遺品であるあのバンダナは普通のバンダナとして複製されWILLEのほぼ全員が制服とセットで身につけていている。

 一般にもグッズとしても流通しているが、真琴が着けたのはWILLE内で実際に使用されている「本物」てあった。

 

 

「アントノフ到着まで残り4時間です。これより月面から民間人の全島避難を開始します」

 

 

 


 

 

 

 エリダヌス40に白色彗星確認、その報は地球に厳戒態勢をとらせて全人類を地下都市に避難させる決断をさせた。

 

 幸いにも地下都市は戦後も機能維持が続けられ、いさという時は即日使えるように整備されていた。

 

 

 そして、統合庁舎でも防衛戦の前倒しと1つの命令が発令された。

 

 

「土方か」

 

『沖田、10分前に地球ガミラス安保理でA801が発動された』

 

「地下都市への避難は?」

 

『戦闘艦はギリギリまで調整したいからな。KREDITで手の空いた艦艇と地上部隊の輸送機がピストン輸送で地下都市の入口に運んでいる。月面にはアントノフが向かってくれている』

 

「あとは、絶対防衛命令か」

 

 A801、それは安保理で発令される命令の中でも最も優先される命令で、人類存続のために全戦力を投じるするこの命令は地球とガミラス両星間での合意の元で発動できるようになっている。

 

 

 A801が発動された時点で、地球とガミラスは平時の全法体系を停止し、軍事法のみが最優先する。

 そして、波動砲に縛りを与えたイスク・サン・アリア条約第1条補足である

 

 

 地球人類の存続の危機と判断された場合、非常事態宣言による特例に基づく波動砲の対艦隊戦使用を容認する

 

 

 を堂々と適用させ、防衛計画の手札に波動砲を加えることが出来る。

 

 ——これは、人類の種と文明、未来をかけた最後通牒だ。

 

 

『ホッパー宙将補の防衛戦は既に第11番惑星付近に配置完了している。ガミラス臣民の盾及び自前のワープ阻害機能搭載型OWの準備にはあと48時間かかる』

 

「嘆きの海か」

 

 嘆きの海、それは実質的なワープ不能宙域を広範囲に作り出す「最も苦労させられた」オーバードウェポンだ。

 

 元ネタであるガミラス臣民の盾から防御力を削ぎ落しワープ阻害領域の生成と拡大だけを求めて開発されたそれは、先駆者に劣らない程のワープ阻害フィールドを獲得した。

 

 さらに恐ろしいことに、敵艦が超空間航行に入る直前に阻害フィールドを起動させた場合、敵艦はワープアウト出来なくなるというオマケが付いている。

 

 次元の彼方まで飛んでいけを体現した初見殺し兵器であるが開発は相当に難易度が高く、AAAWunder出立後から突貫で開発が進められ、時間断層という反則技を使い3週間前にギリギリ完成したのだ。

 

『完成している分で16ユニット分。今も断層工廠で造らせているが数は少ない』

 

「ある分で何とかするしかない。アントノフによる民間人輸送が完了次第、イザナミ輸送用の改修を始める。宇宙での作業になり相当なサイズになる以上、2個小隊分の震電を作業員として配置する」

 

『ラチェットマンだけでは心もとないな。それで進めよう。エリダヌス40は遠巻きに観測させる。何か動きがあり次第報告を入れる』

 

 エリダヌスに調査艦隊を派遣する事を決定した沖田は即座に第7防衛艦隊から強行偵察艦隊を編成し、完成して間もないオーバードウェポンを装備させた。

 鹵獲したドレッドノート型が装備していたステルス装備を解明し、第2世代艦艇を熱以外で徹底的に隠蔽するオーバードウェポン「ミラージュコロイドステルス」だ。

 

 能力はシンプル、あらゆる光や電波、コスモレーダーの超光速走査波を逆反射させてレーダーから消え失せるもので、それはガミラス系統のレーダーでも実証済みで、幽霊のように近づき実弾火器で敵の首を刈り取るという真似も可能だ。

 

 さらに、外部から内部に向けて共鳴波を照射する事で波動エンジンの動力反応をギリギリまで漏れ出ない様に「出力を絞らせる」事も可能だ。

 

 

 だがこれでも足りない。

 

 ガトランティスは戦略ではなく超物量で攻め込むはずだ。

 

 だから、波動砲のような戦略兵器の「戦術レベルでの使用」が必要となる。

 

 

 しかし、波動砲の太陽系内での使用には慎重にならざるを得ない。

 

 

 A801発動で波動砲の持込が解禁されたとはいえ、それは「無制限使用」ではない。

 戦略兵器としての立ち位置を戦術兵器に下げるという事は、それは「戦術歩兵のマスケット銃」のように兎に角撃ちまくることに繋がってしまうのだ。

 

 それが始まれば何が始まるか、沖田には想像がついた。

 

 

 戦術歩兵による波動砲戦、陣形を組み波動砲を撃ち、敵味方入り乱れる大混戦だ。

 それは絶対に避けなければならない。

 

 幸いにも、この地球には生え抜きの覚悟のキマった提督が艦隊を率いている、親友の土方も第1を率いてくれる。総旗艦艦隊は自分が率いればいい。

 

 ならば、まずは第11番惑星で迎え入れ、一気に行動不能にする。

 

 

 

「アンドロメダに通信、敵艦隊の11番惑星付近へのワープアウトを確認次第、作戦決行時刻を繰り上げる」

 

 

 

 _______

 

 

 

 

 エリダヌス40付近

 南米管区艦隊 第71隠密偵察艦隊

 旗艦タカオ型航宙装甲巡洋艦 シルヴァド

 

「ミラージュコロイドステルスの剥離率3%、ステルス能力に問題無し」

 

「彗星の状態はどうだ?」

 

「落ち着いていますが、コイツがアケーリアスの遺跡かもしれないってマジですか……」

 

「マジだろうな。現にAAAWunderが彗星の中を通過してんだ。そこで見つけちまったのが、総数数千以上の艦艇だ。アレの火力なら11番惑星にお邪魔してきたカラクルムをワンパン出来るが、第2世代はどうかな……」

 

「5速なら過貫通させる事が出来ますので、急所でクリティカルを連発するしかないです」

 

「厳しい戦いになりそうだな……」

 

 1000光秒先から慣性で進んできた隠密偵察艦隊は低温ガスで姿勢を調整し、微惑星に身を隠しながら観測を続ける。

 逃げる為の備えとしてワープをすぐに使えるようにしてあるが、観測結果が背筋に嫌な汗を垂らしてくる。

 

 天王星サイズの筈だったその想定は打ち砕かれ、直径は木星規模だった。

 重力の影響範囲はかなり広大で、重力アンカーでも抗えない程の強力さだ。

 

 その戦力は白色彗星からどんどん吐き出されていき、彗星の真正面に黄緑色をしたサメの群れが集結している。

 

 

「総数1万を超え尚も増大中、全部カラクルム級です」

 

「値崩れするぞあんなに出したら。向こうさんは数十万レベルでいるから気にしねぇけどよ」

 

 軽口を吐いていないとやっていられない。

 それ程侵略者の戦力は強大で、象にアリが挑むような物だ。

 

 でも、アリには知恵と鋭い牙と猛毒があり、上手く使えばやり様はある。

 

 そのやり様を考えたのが、奇術師ホッパーと幕僚長である沖田を始めとした提督たちだ。

 

「おい、記録続けているか?」

 

「バッチリです。ですが、ミラージュコロイドくらいで防げているのは不思議ですな。相手はガトランティスですが白色彗星はアケーリアスなんですよ?」

 

「感知してるけど捨て置けって感じか、あるいは本当に感知されていないのかもしれないな」

 

 そうだ、()()()()()()()()()で隠せている事にも疑問を覚えないといけない。

 

 白色彗星が本当にガトランティス製の移動要塞なら、技術面は科学奴隷に頼っているはずだ。

 だとすると艦艇や武装から見て文明レベルはガミラスレベルであるが、アケーリアス製の移動要塞であった場合は、3つの可能性が挙げられる。

 

 

 

 1つ、本当に感知しているが、放っておけとされている場合。

 

 2つ、ガトランティスは白色彗星の全能力を使っていない。

 

 3つ、ガトランティスでは白色彗星の全能力を使えない。

 

 

 

 このうち、3なら勝機はある。

 

 全能力が使えないなら、使えるようになる前に殲滅するしかない。

 波動砲、オーバードウェポン、第2世代、震電、秋水、ファルコンspec2、超兵器イザナミ級、応援のガミラス艦隊、そして戦略と戦術。

 

 持てる物全てをぶつける戦闘を展開し、火星圏に入られる前に終わらせるしかない。

 

 

「さーて、できれば3であってくれよ」

 

 宇宙服越しにシルヴァドの艦長はイエスに祈った。

 

 

 

 _______________

 

 

 

 

 テレザート星

 AAAWunder

 

 

 

「この戦艦が、過去にも戦っていたって事ですか?」

 

「100年以上前にもね。推定西暦2028年時点で、AAAWunderは人類を救うための戦いをしていた。2機のエヴァンゲリオンを載せてね。今のAAAWunderは、その旧AAAWunderを今の技術で修復して運用しているけど、足りてない部分が沢山あるのはびっくりだ」

 

 宣言通り、リクはシンジに真実を話していた。

 AAAWunderはどこから来たのか、誰が乗っていたのか、綾波の正体と今どうなっているのか、この先何が起こるのか、そして、「世界を守る手助けをして欲しい」ということを。

 

 

「……」

 

「まぁそりゃあ黙るよな。君がどう選択しても、WILLEは人類消滅を阻止するために全力を振るう。作戦にエヴァが投入されるのは規定事項だが」

 

「それって……綾波さんを?」

 

「……そうなるな。AAAWunderに乗せる時に自分の娘じゃないかって古代くんに怒られた。何で選択を止めなかったのかって」

 

「選択を?」

 

「レイちゃんが自身で臨んだ事なんだ。初号機での戦闘も。こうなるとは想像も出来なかったのは、一生しこりで残る」

 

「……リクさん」

 

「何だい?」

 

 

「リクさんは何で、戦っているんですか?」

 

 思いもよらぬ質問に面食らったが、自分の心象をはっきりと言った。

 

「家族の為かな、ハルナも言ってたけど、世界が救われるのはあくまでついでなんだ。極端な話、お子様セットのオマケで付いてくる玩具程度だ。みんな似たような物なんだよ、世界救うのはついででしかない」

 

「……リクさん、笑わないで聞いてほしいです」

 

「笑わないよ、何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……可愛い子を助けたいって言ったら、おかしいですか?」

 

「……成人したら挨拶に来なさい」

 

 真顔でそう返せば、シンジは顔を赤くして慌てる。

 成程年相応だとからかいたくなるほど純粋だが、本当にゲンドウの子供なのだろうかと首を傾げる。

 

「ごめんごめん、戦うには純粋すぎる理由だったからさ。でも、それでもいい。先駆者が古代くんだったからね、見た事はあるよ。あの時は行動力凄かったからなぁ、崩壊する敵の要塞に戦闘機で突っ込んでいって、大事な人を救出して生き残れたんだから。マジもんの成功例がある」

 

「その……WILLEのビルで顔を合わせた時、可愛いと思ってしまったんです。そんな子が、こんな宇宙で戦ってたって聞いて……僕は、良いように攫われて、渚くんとリクさんが助け出してもらったから、良かったんですけど……」

 

「うん」

 

「無事でよかった、で終わっていいのかなって……」

 

「終わってもいい。最初にも言ったけど、どう選択してもWILLEは全力を投じる。レイちゃんも復帰次第初号機を使い戦闘に出て、修復中のもう1機を使いカチコミをすると思う」

 

「……」

 

 シンジは黙り、俯いた。

 意見を急かされていないのが分かっている様で、落ち着いている。

 どっちを向いても地獄ではないが、少なくとも歩くのに苦労する悪路ではあるだろう。

 

 でも、シンジは、綾波が何故戦ったのか分かった気がした。

 

 綾波は、自分の為に戦っていたんだ。

 

 後悔をしない為に、自分の個人的な理由の為に、戦ったんだ。

 

 

 

 

 

「……まずは、乗ってみます」

 

「いいんだな。後戻りできない所まで行くと引くに引けなくなる」

 

「どこまで出来るかは、分かりません。でも、逃げちゃダメだって思うんです」

 

「それが自分を追い詰める事にも繋がるかもしれないという事は理解してほしい。勇気と勢いは違うし、勢いだけで何でも出来たら誰も深く考えたりしない。でも」

 

 リクは、シンジに手を差し出した。

 

「やるというなら、愉快な大人たちがサポートする。地球には変人技術者がダースで揃ってるしやる気も十分なうちの部下たちだ」

 

「大丈夫なんですか……?」

 

「まぁ……知恵は保証する。悪い人ではないけど暴走するからな……イザナミとかオーバードウェポンでバテ始めてるから暴走はしにくいと思うけど、手綱は握らせてるから大丈夫だろう」

 

 どう答えていいか悩んだ末に答えたが、暴走気質にいくらか救われてる部分もあり悪い人とは言えないのが現状だ。

 オーバードウェポンも、彼らマッド共の知恵から生まれた物が殆どで、AAAWunderが地球を出立してからの兵器開発はマッド共を「真面なマッド共」が引っ張ることで成り立っていた。

 

 だから、力になるけど少し危ないところがあるのだ。

 

「さて、大事な話はおわりだ」

 

「……お別れ、しないといけないんですね」

 

「ユイさんは安定してるけど、戻ることを望んでいる。ゲンドウが非道な手段使ったまで救いだしたのに、肝心の本人が戻ることを選んでるとは、皮肉なもんだ」

 

 

「……父さんと母さん、会わせられないんですか?」

 

「ぶっちゃけ僕はしたくない、被害者の親として。それに、君の父さんはWILLEで重要指名手配されていた。ハッキリ言わせてもらうけど犯罪者だ」

 

 

「……」

 

 

「それでも、君の父親だ。縁は切れない」

 

 

「……」

 

 

「兎に角僕はしたくない。君がしたいと思うなら、もっと別の人に頼んで欲しい」

 

 そう締めるとタイミングよく医務室にたどり着き、自動ドアが2人を迎える。

 

「お話し終わった?」

 

「まぁな、許す気はないけど。あとユイさんにもお説教した方がいい」

 

「母さんに?」

 

「初号機に入った理由は冬月さんから聞いている。でも、肝心の理由をゲンドウに言わずに実行したらしい。それがなければ、多少はマシな碇ゲンドウがいたかもしれない」

 

 そう、全ての元凶だ。

 リクは、シンジがいながらも全ての元凶にユイを据えていた。

 もしも最初から家族間の同意があったなら、こんなふざけたマネは起こっていない。

 

 そういうことで、リクはユイにも問いただすつもりでいた。

 

 パーテーションで1ベットだけ区切られた中に入ると、水色の髪をした女性がベットに座っていた。

 もう既に体に馴染み始め、最低限の動きは出来ているようだ。

 

「碇ユイさん、貴方にも原因はあります」

 

「……分かっています」

 

「分かっているならシンジ君と僕達に吐いてもらいますからね。聞きたい事は2つ、何故ゲンドウに黙って実行したのか、初号機をどう建造したのか。ハルナから聞きましたけどアレの運用には成功しても補修とかもどうすればいいのか分からない部分も多いんです。ゲンドウからは造る方の知識は取れましたけど直す方は無かったんです。洗いざらい、喋ってもらいますからね」




2度と使うかよJアラート風表現
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