宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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これまでのお話
1.テレザートで初号機初戦闘
2.マダオがレイちゃんに手をかけたので、ハルナがブチ切れ全力ストレートしてどす黒ハルナさんになりかける(闇落ちもあり得た)
3.縁の力で急行中のガミラス艦隊の手を借りて、ヤマトをロンドン砲作戦でテレザートへブッ飛ばす
4.レイちゃんサルベージ、パパママ安心
5.大侵攻開始


クライマックスに向けて書いていきます

あ、就職しました。
あと主題歌にピッタリな歌情報お待ちしてますようつべに飛んで聞きに行きます



Calamity 1 -私は、人類を守る為の力です-

 太陽系第5惑星 木星

 戦時急造木星周回軌道衛星基地群 ガリレオベルト

 

 

 月以遠の衛星に基地を設置する事は、ガミラス戦争以前では全く行われた事のない大事業だ。

 

 月への基地建設はタブハベースや空間騎兵隊駐屯地である程度ノウハウがあるが、それより遠くへとなると話が違ってくる。

 そもそも衛星と一言で言っても、その全てが月と同じわけではない。

 氷で覆われている衛星、活火山を持つ衛星、水がある衛星、コスモナイト60のような鉱物資源を採取できる衛星などなど、人類が住まう太陽系の庭には豊かな衛星群が存在している。

 

 それらの中から選ばれたこの木星衛星群に、急ピッチで軍事基地が建設された。

 

 先に断っておくが、この建設にハルナとリクは一切関わっていない。

 さらに言えば話すら回っていない。

 

 沖田を始めとした提督たち、WILLE、KREDIT、KOMPASSが考えた結果前線基地は必要と判断され、アクセルとなった設計局(マッド共)と軍産企業が数か月という短期間で拵えてしまったのだ。

 

 

 その名を、ガリレオベルト。

 敵艦隊がアステロイドベルトを越えて彼岸である内惑星系に侵攻する事を阻止するために設けられた人類の防衛ラインだ。

 

 

 まず、アステロイドベルトに啓開航路を設けるために小惑星の一部撤去が行われ物資の搬入が始まった。

 一部小惑星をステキなモノにする改造を挟みながら、本来大気圏内仕様であった幹ドックを大気圏外用に改造して衛星に設置した。

 

 KREDITに回された非武装の震電とラチェットマン連隊を配備した大規模な応急修理基地が生まれたかと思えば、マッド共は艦船用の波動エンジンを衛星深くに埋め込んだ。

 元から狂っているとはいえ遂に果てる所まで狂ったかとため息をついたころにはマッド共はショックカノンや電磁投射砲、砲撃系オーバードウェポンをこれでもかと取り付け武装プラットフォームを拵えておまけに波動防壁も設置してしまった。

 

 さらに震電サイズのドリルを用意して掘り進めた事で衛星の地下に大規模な格納庫が生まれてしまい、航空機や戦術機を発進させるカタパルトもついでに生まれてしまった。

 これにはAAAWunderや第2世代に使用されているドラム式格納庫の技術が転用されており、ざっと300機程の配備が実現した。

 

 戦時急造とはいえ余りにも大規模なこの基地だが、問題点を上げるとすれば戦時突貫故に粗があることだろう。

 

 壊される事前提なので居住区画はなく、大気圏外用に改造はしてあるとはいえドックポン付けしてるので寿命が短くなり、エンジンを埋設してあるので戦後の解体で掘り起こすのが大変だ。

 

 だが、数々の問題をスルーして造られたこの人類史上最大の宇宙拠点は異星の民であるガミラスも招き入れることに成功し、土星以遠を全て戦場にする準備を整えることができた。

 

 従来ではガミラス艦隊は内惑星系の衛星に軌道上停泊する予定だったが、ガリレオベルトという基地群の建設がかなりの勢いで進んだ事で木星軌道での受け入れが可能となり、この基地は思ったよりも大所帯だ。

 

 

『第11番惑星外縁宙域にカラクルム級戦闘艦。数10000を超え、なおも増加中』

 

『現時刻をもって、イザナミ級を除く全ての試験項目を終了。全艦載機は指定艦艇に帰還せよ』

 

『アポロノーム、アンタレスの稼働状況は87%。航空隊管制システム構築率はトータルで3%遅れています』

 

『時間優先だ。チェックの5分の1は巻いていくぞ』

 

『イオ基地への防空機収容を開始します。航空機はIA及びIB格納庫へ。戦術機はICへ』

 

『全艦艇へのオーバードウェポン装備は6時間後に終了します』

 

『遅い! 5時間だ!』

 

『アステロイドベルトより入電。特重火力弾頭の構築作業は残り5時間で終了します』

 

『外惑星群防衛システムの第5次点検作業を開始。試射目標鹵獲ガトランティス艦艇の移送作業は続行。3時間後に試射を行います』

 

 無線の嵐が飛び交い、アステロイドを訓練場所にしていた航空機や戦術機が一気に帰還に動き出した。

 構築中のシステムの構築もさらに1段階ギアが上がり、形式じみた言葉から現場の怒号までありとあらゆる言語で飛び交っている。

 

 その中にはガミラス語も混じっていて、冥王星から退避して軌道上停泊作業に駆けまわるガミラス艦の誘導指示が行われている。

 

 

 現在太陽系に集まったガミラス軍は、総隻数200隻。

 改ゲルバデス級ミランガルを旗艦とし、一足先に合流したクダン艦隊の旗艦クドゥーニア、メルトリア、デストリア、ケルカピア、クリピテラといったおなじみの艦艇群は勿論のこと、ガイペロン級2隻と航空戦力も配備され贅沢な艦隊編成となっている。

 

 その中にちらほらと見られるのは「長物」を両脇に抱えた艦艇だ。

 (かつ)てのドメラーズ3世が外装式で4000ミリクラスの大口径砲を扱ったように、この太陽系駐留艦隊の一部の艦艇は地球製の兵器である「オーバードウェポン」を抱えている。

 

 これは、開戦前に特例で許可された技術開示で太陽系駐留艦隊所属のガミラス艦へのオーバードウェポン取り付けが可能になった事による戦時限定の強化であり、多少システム周りでは強引さが見られるが確かに運用可能だ。

 

 

 そんな強化を受けた太陽系駐留艦隊の将である2人は、ミランガルの艦橋から基地の様相を眺めていた。

 

 

「建設にうちらも関わったとはいえテロンのやる事はブッ飛んでんな。今に始まったことじゃねぇけど」

 

「でも理にかなっているわ。軌道ステーションを組み立てて周回させるより既に周回してる衛星に設置したほうが早い。考え方は私たちと同じね」

 

 冥王星基地を引き払ってきたバーガーとネレディアは、ミランガルの艦橋からカリストの地表面を見ていた。

 カリストの地表には完全無人化された迎撃プラットフォームが貼り付いている。

 マルチロックオンで補足して砲撃を行い、アステロイドベルトを渡らせるよりも前に三途の川を渡らせるそうだ。

 

「でもよ、ディッツ提督が来る前にガト公が来ちまってるんだ。上はどうするつもりなんだ?」

 

「大丈夫とは言えないけど、人工太陽を使えそうよ」

 

「……曰くつきの癇癪太陽をかよ。アレがダメだったから冥王星に基地置いたんだったな」

 

「バーガー君、リッケ君、始まったね」

 

 ミランガルの艦橋に入ってきたのは、援軍として現れたクダン艦隊の司令、アウル・クダンだ。

 

「お、クダンのおっさん。上は何と?」

 

「フォムト、知り合いとはいっても上官なのよ?」

 

「おっさんで構わんよ。下手に硬くなられても困る。空間機甲軍団はあと1回ジャンプすれば到達する。が、邪魔者がいる以上今は無理だ」

 

「そこで、ヴィレのバ火力とぶっ飛んだ作戦と」

 

「共同管理用の物だったが、全員の星外避難が完了している以上は問題ない。何より、開戦の狼煙を上げるのは我々ではなく、彼らだ」

 

 

 


 

 

 

 

 第11番惑星

 

 

 三角形を幾重にも重ねたワープエフェクトは途切れることを知らず、黄緑色の鮫を吐き出し続けている。

 鮫と呼ぶには些か角張っているが、頑強な構造と獰猛な攻撃力を備えた鮫「カラクルム級」はイワシの群れのように魚群となり、円柱のような構造を生み出していた。

 

 それを我関せずの人工太陽は、薄黄緑の怪しい光を降らせながら悠々と衛星軌道を周回する。

 

 本来この星は、地球人類最果ての星であり外宇宙への開拓の足掛かりであった。

 しかしガトランティス侵攻が発生したことにより軍民双方の星外避難が行われ、この黄緑を帯びた星は今は静寂に満ち生活の光の1つも見られない。

 

 

 その星の軌道へと泳ぐカラクルム級は、もう20万を超えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンドロメダ級特砲航宙戦艦

 1番艦 アンドロメダ

 遠隔操作型タカオブースターAMD[Miragecolloid(ミラージュコロイド)]接続仕様

 

 随伴艦

 ナガト型航宙巡洋戦艦遠隔操作型AMD[YatanoKagami(ヤタノカガミ)]2隻

 

 

 

「ミラージュコロイドステルス異常なし。電波封鎖継続」

 

「こちらから光は一切漏らすな。敵に見つかるリスクをギリギリまで抑えろ。レーダー照射は?」

 

「ありません。艦長、やはり……」

 

「ああ。白色彗星はどうかは分からないが、カラクルム級はミラージュコロイドステルスを見破れない」

 

 特砲運用艦隊に配属され波動砲を2門搭載したアンドロメダ級は、AAAWunderというをデタラメを除けば正面火力最大だ。

 さらにタカオ型を2隻ブースターとして接続して護衛として遠隔操作ナガト型AMD[Yatanokagami(ヤタノカガミ)]を2隻つけた小艦隊だが、ギリギリまで密集する事で今は文字通り姿を隠している。

 

 

 ミラージュコロイドステルスは、艦体全てを覆い隠せば透明になれる。

 それこそ一昔前のアニメにあった透明マントとそう大差ない性能であり、相変わらずの大電力を消費するものの確かな性能を発揮している。

 

 それは思ったよりもしっかりガトランティスにも効いていて、カラクルム級の群れは潜伏するこの艦隊に気づきもしない。

 

 それを見る山南は、観測情報から表示されるカラクルム級の群れのCG画像を見ていた。

 何を目的として円柱にしているのか。

 円柱は何故人工太陽の軌道に重なる様に造られているのか。

 

 人工太陽衝突時に何が起こるのか。

 

 完全隠密化での行動の為超空間通信も必要最低限しか使えず、大容量データの送信は存在の露呈に繋がる。

 従って、この第1次作戦はアンドロメダに全てがかかっているのだ。

 

 

「観測を続けろ。追加で、人工太陽が接触した場合の挙動を予測するんだ」

 

「了解です」

 

 

 

 ________________

 

 

 

 帝星ガトランティス第8機動艦隊第1群

 カラクルム級戦闘艦 バルガラム

 

「紛い物の恒星が周回するゾル星系最果ての星か。これで見納めだな」

 

 ガトランティスにとって、一番槍は名誉の証である。

 初撃を決め戦況を一気に有利へと傾け、敵の素っ首を掲げるその一連の行為はガトランティスが艦艇を操るようになる遥か昔から続いてきたモノであり、人工細胞を形作る遺伝子に刻まれた記憶とも言えよう。

 

「ありがたくも、軍団光滅砲の使用が許可された。ゾル星系侵攻は大帝が我らにお命じになられた崇高なる戦いであり、一番槍である我々はその使命を果たさねばならない。我らが打ち立てる戦火を、大帝に捧げようではないかァ!」

 

 バルカラムの艦橋で、第1群を預かるデスタールはカラクルム級に乗るすべての乗員に向けて演説を行った。

 大都督として艦隊を預かるデスタールは、この30万隻を用いた大砲撃で多くの戦士が命と引き換えに一撃を放つ事を理解している。

 

 カラクルム級が持つ雷撃ビットの全て、そして艦体そのものを砲身の一部として放つこの攻撃は、艦艇その物が焼き切れることを前提にしている。

 しかしそれと引き換えに地球クラスの惑星を焼き尽くし崩壊させる事も可能で、エネルギーの外部供給を利用すればさらに射程を伸ばす事も可能ときた。

 

 それが、この人工太陽を用いた大規模砲撃作戦だ。

 

「軍団光滅砲の陣を敷け。この一番槍で、障害を打ち砕くッ!!」

 

 

 バルカラムの艦橋から、カラクルム級で形作られる巨大砲身が見える。

 これらに乗り込む戦士の1つ1つの魂が燃え、光の鉄槌になるのだろう。

 

 そう思えば、この犠牲も大儀のうちだろう。

 全宇宙は我らガトランティス、ズォーダーの物だと考えれば、デスタールは誇らしく思えた。

 

 

 

 _____________

 

 

 

 

「解析完了しました。スクリーンに出します」

 

 技術士官の1人がメインスクリーンに表示したのは、カラクルム級群と人工太陽の接触シミュレーションだ。

 人工「太陽」とは言えその実態は巨大な波動機関であり、中心部の炉心から生まれるエネルギーを純粋な熱や光として照射しているだけだ。

 メンテナンスは必要だが絶えずエネルギーを生産できるその機関は、自壊覚悟であれば惑星破壊級のエネルギーを瞬時に生成できる。

 

 

「つまりコイツは……」

 

「巨大な加速装置であり、人工太陽を弾薬にした巨大な大砲です。山南艦長、かなり想定外の事態ですが、作戦自体に変更は無いかと」

 

「分かった。ガリレオベルトと地球にこの情報を送れ」

 

「こちらの位置がバレますよ。よろしいですか?」

 

「どの道バラすんだ。それと、急行中の空間機甲軍団にも声をかけるように言ってくれ。上手く事を運べば……」

 

 ____

 

 

 _____

 

 

「それであれば」

 

「よし。アンドロメダ、波動砲発射準備。ミラージュコロイドはギリギリまで展開しろ。人工太陽への命中と波動共鳴による敵艦の機能停止を確認するまでは粘るぞ」

 

「了解。全艦、波動砲発射態勢に移行」

 

「艦橋より機関室へ。現時点をもって出力制限を解除。バレたら戦術科が何とかする。思い切り回せ」

 

「波動防壁、不可視圏内出力で展開。ミラージュコロイド剥離率15%に上昇。ステルス能力に若干の低下あり」

 

「構うな。一点のみを狙い撃つ事を考えるぞ」

 

 人工太陽を狙い撃つ超長距離砲撃で波動共鳴を引き起こし、第11番惑星に現れるように調整されたガトランティス艦を一気に行動不能にする。

 周到な跳躍封鎖と冥王星以遠の防御の手薄さを敢えて見せ第11番惑星を橋頭保に見えるようにした事でこの作戦はやっと成り立ったが、まさか人工太陽を弾薬にした砲撃を敢行しようとしているとは、山南は考えもしなかった。

 

 いや、誰がこんな事を考えようか。

 恐らく司令部の誰もこんな策を想定していないだろう。

 

 そしてそれは思ったよりもずっと正しいようで、地球では騒然としていた。

 

 

 

 

地球

Tokyo3

WILLE統合庁舎直下地下800m(非公開区画LevelEEE)

敵性異星人侵攻対策危機管理センター

 

 

 

 

「カラクルム級を用いた大規模砲撃だと!?」

 

「恐らくは。アンドロメダから送られてきたデータを解析したところ、砲身は明らかに内惑星軌道を向いています。そこから波動砲並みのエネルギー流が発射された場合、確実に直進します。各惑星の公転軌道と今の位置から計算して射線上に存在する惑星は1つです」

 

「地球……」

 

「ズォーダーの目的が火星でのアディショナルインパクトであるならば火星を外す事は明確ですし、最大の障害である地球を吹き飛ばす事は合理的です。私もそうします」

 

「君ね……」

 

「何か?」

 

 赤木が別件で月で動いているので引っ張ってこられたハインラインは不機嫌そうな顔で解析結果を報告していた。

 この後ムリーヤに移乗するために宙に上がるのだがここで引き留められて解析をするとは思ってなかったのだ。

 相手が藤堂でも芹沢でも関係なしに淡々と報告するが、実は内心割と焦っていた。

 

 波動砲が星間文明間でありふれた兵器なのかどうかは分からないが、これほどの兵器をガトランティスも保有している事自体想定外だったのだ。

 イザナミであればカラクルム級を雑草の様に刈り取れるが、これほどの規模となれば数の暴力で押し潰されるかもしれない。

 

 

 最高の質が途方もない数に負けることは、最悪の結末だ。

 

 

「ですが、かなり好都合な点もあります」

 

「人工太陽周辺に敵艦隊が密集するという点だね」

 

「はい。かなりリスキーですが、人工太陽がカラクルム大砲身に接触する直前に波動砲を使えば、10万隻単位の艦艇を行動不能にする事ができます。それに、山南艦長の提案も確度が高くなるかと」

 

 藤堂は押し黙った。

 ギリギリまで粘り敵艦隊を行動不能にする事ができれば、最大限に数を減らす事ができる。

 しかし、第11番惑星に潜伏しているのはアンドロメダとタカオとナガトを合わせて5隻だ。

 

 

 

「ガリレオベルトに連絡。人工太陽と敵艦隊の接触直前での波動砲発射を行う。空間機甲軍団に作戦要綱を送信しろ」

 

 


 

 

 

『デスタール提督、軍団光滅砲の発射準備、整いましてございます』

 

「よし、軍団光滅砲発射準備!」

 

 全てのカラクルム級から雷撃ビットが解き放たれ、砲身と化したカラクルム級の群れの中でエネルギーを収束させていく。

 だがこれは人工太陽を暴走させて更なるエネルギーを呼び込むための呼び水でしかない。

 

 本命の弾薬が来るまでの間に仕上げてやろう。

 

 

 

 ____

 

 

 

「カラクルム級大砲身、発射態勢に入りました。人工太陽接触まで、残り360秒」

 

「ターゲットスコープ、オープン。操艦とトリガーは預かった」

 

 山南の座る艦長席にトリガーが展開され、その重さを両手に感じた。

 元々拡散波動砲を搭載され、波動砲を撃つ事に最適化された戦艦であるこの艦は、SEELEのLeben級を接収しWILLEの規格に合わせて生まれた艦艇だ。

 

 方舟の守護者として生み出されたとの噂だが、真偽は定かではない。

 だが、今はWILLEの貴重な波動砲戦力だ。

 アリア条約という枷を付け拵えた戦略兵器を携え、純粋な戦闘力の塊でもあるこの艦は、果たして人類を守る力と胸を張って言えるのだろうか。

 

 

 それは、この一撃で決まる。

 

 

「艦内電力供給を蓄電池に切り替え、波動砲への回路開きます」

 

「非常弁全閉鎖、強制注入機1番2番作動を確認」

 

「安全装置解除、セーフティロックゼロ、最終セーフティを解除する」

 

「1番2番薬室、タキオン粒子圧力上昇。88、99、100、エネルギー充填120%」

 

「ミラージュコロイドの供給エネルギー下限値を下回ります。剥離速度急上昇」

 

「フェイズシフト開始」

 

 ミラージュコロイドの定着がVPS装甲への通電で妨げられ、まるでワープアウト時に氷を脱ぎ捨てる様に粒子の膜が消えていき、その艦体が露になった。

 

 全長444m、VSPSTに換装された40.6センチ3連装主砲、四方に伸びるアンテナ、そして2門の波動砲。

 

 アンドロメダ級特砲航宙戦艦、WILLEの戦略兵器級の切り札だ。

 

 そして身を寄せ合い透明化の恩恵を受けていた遠隔操作ナガト型が前進し門番のようにヤタノカガミを構え、即座に最大出力で展開した。

 

 

「ステルスゼロ! 敵艦のレーダー圏内です!」

 

「連携防壁展開、傾斜30度。跳弾を維持!」

 

 

 特砲艦隊はその構造上、オーバードウェポンに対応していない。

 それに通常、波動砲発射態勢時は波動防壁を展開できず、エンジン再起動用のエネルギーを使って発射準備中に防壁を展開した場合は文字通りのすっからかんになる。

 

 そこで、万能屋である第2世代だ。

 波動砲を持たない代わりに器用な2本腕を持てる第2世代は砲撃から防御、航空戦力の展開といった史上まれに見る器用さを持ち、現在も時間断層で急ピッチで量産が行われている。

 

 

 この組み合わせなら、勝てる。

 

 

 だがその思考は、警報音によって断ち切られた。

 

「レーダーに感! 敵駆逐艦急速接近中」

 

「キルゾーン突入までは?!」

 

「残り40秒!」

 

 VSPSTにエネルギーは回せない。

 防壁の隙間を作りアンドロメダが実体弾とミサイルを叩きこむと、なんとミサイルの半数が迎撃された。

 

 狙って撃つよりばらまくように撃つ。

 こちらが1発撃つまでの間に相手は10発は撃つとレポートにあったが、どうやら紛れもなく真実だ。

 現にガトランティス艦の攻撃がヤタノカガミに着弾し波紋を刻んでいる。

 防壁を破るには至らないが、カラクルム級を大量に差し向けられればただでは済まないだろう。

 ガトランティスとの交戦経験が少ない山南は彼らの持つ脅威に一筋の汗を流し、ターゲットスコープに映る人工太陽を睨む。

 

「ヤタノカガミは?!」

 

「耐圧限界まで残り300。っ!? ワープアウト反応! 星系外方向、重力震来ます! パターン白!」

 

 さらにワープアウトが始まり、ラスコー級、ククルカン級、メダルーサ級、大盤振る舞いされているカラクルム級、そして、ゴストーク級が束になって出現した。

 

 ガミラス艦よりも深い緑の艦隊、ハリネズミのように装備したミサイルと艦首に構える超巨大ミサイルが特徴的だ。

 既にAAAWunderと戦術機部隊がこの艦艇相手に一方的な戦闘を披露したが、それとは唯一違う点が見られた。

 

 艦首ミサイルとは別に、さらに巨大なミサイルを構えているのだ。

 骨組みだけで組み上げられたミサイルだろうか、それとも艦首ミサイルを越える威力の超兵器だろうか。

 

「報告に無い新兵器か。だが撃たれる前にこっちが撃つぞ。副長! あとどれくらいだ!」

 

「最大効果半径まで残り100です!」

 

「ヤタノカガミ全力稼働中! あと60秒持つかどうか……ッ!」

 

(これ以上粘れば損害が発生しかねないか……ッ! やむを得ん!)

 

「スリーカウントで発射する!!」

 

「ミサイル接近を確認! 数40!」

 

「構わん! ミサイルごと撃ち抜く! カウント3、2、1……!」

 

 

 

(アンドロメダ、俺が証明してやる。お前は人類を守る為の盾であり、剣だという事を!!)

 

 

 

「波動砲、発射ッ!!」

 

 

 緊急退避指示でナガト達が射線から退避した次の一瞬で、開戦の一撃は放たれた。

 二つ並んだ砲口から放たれる光は射線上を無に帰し、マイクロブラックホールの生成と蒸発をとめどなく繰り返し目標物に向けて猛進していく。

 

 ミサイルを瞬時に蒸発させ、大真面目に真っ直ぐ突っ込んでくるククルカン級、ラスコー級を消し飛ばし、退避の間に合わなかったゴストーク級を崩壊させ、それでも威力の衰えない光の矢は人工太陽をついに捉えた。

 

 

 _______

 

 

 

 カラクルム級 バルカラム

 

「高エネルギー反応!」

 

「バラン星域のあの光か……ッ! 何故今まで発見できなかった!!」

 

「観測にも何も反応ありませんでした! 急に出現して……ッ!」

 

「まさか……静謐の星の遮蔽の技術を持っているというのか?!」

 

 全くの見当違いだが、アンドロメダは今の今まで透明になっていた。

 地球やガミラス、ガトランティスが持つ超光速帯域のレーダーから消え失せるほどの性能は波動砲搭載艦を神出鬼没の戦略兵器に格上げし、必殺の矢を見逃させた。

 

 波動砲を対処できるような兵器などガトランティスには存在せず、人工太陽はその心臓を射貫かれた。

 

 紫電を撒き散らす人工太陽は爆発の1つも起こさず強烈な抑制波動共鳴波を撒き散らし、人工太陽の暴走を企てたカラクルム級の群れはエンジンノズルの火を失い始めた。

 

 1隻、10隻、100隻、加速度的にカラクルム級の群れが沈黙していき、制御を失った群れがぶつかり合い、炎が上がる。

 

 それはカラクルム級バルカラムの艦橋で悲鳴のように報告を上げ、屈強な兵士たちが右往左往していた。

 

「何が起こった!?」

 

「何らかの干渉場で機関に異常を……ッ! 立ち上げ直せ!」

 

「ダメです! 再始動が効きません!」

 

「これが例の大砲だというのか……ッ!」

 

「レーダーに反応! 大量の火器!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンドロメダ級特砲航宙戦艦

 1番艦 アンドロメダ

 遠隔操作型タカオブースター接続仕様

 

 

「抑制領域計測中、安全距離を維持」

 

「全火器を立ち上げろ。無人兵器群の制御を掌握するんだ」

 

「了解! ローエングリン、全戦闘衛星を立ち上げます。外装小型主機よりエネルギー供給、FCS連動開始します!」

 

「目標、射程圏内に存在する全ガトランティス艦艇。オールウェポンズフリー!」

 

 第11番惑星衛星軌道上に配置されていたオーバードウェポンが一斉に目を覚ました。

 外装主機を与えられたことで艦艇にエネルギーを頼る必要が無くなり、今の今まで忍んでいたのだ。

 

 

「レーダーに感! 射程圏外の空間に微弱な空間波動エコーです! パターン無し!」

 

「来たか!!」

 

 その瞬間、赤みがかった桃色の光が突っ切った。

 何もない所から急に沸いた「波動砲並みに太い光」はカラクルム級の群れを破壊していき、ひときわ大きな爆発を起こした。

 

 しかし発射点と思わしき空間には1隻もいない。

 

 

 

 そうだ、援軍がやって来たのだ。

 

 

 

「ワープアウト反応感知! パターン赤!」

 

 切り裂き無理矢理開かれた赤い裂け目から艦艇が飛び出した。

 黄色い目、緑の艦体、深海魚を思わせる形状。

 

 

 嘗てガミラス戦争で恐怖の対象とされた彼らは、今回は心強い援軍だ。

 

「識別確認! 特別派遣空間機甲軍団!」

 

 堤を切ったように大群がワープアウトを続け、レーダー上では表示が追い付かない程の大規模なワープアウトが続いていく。

 大規模ワープアウトによる重力震で空間が大きく揺れるが、空間機甲軍団は狼狽える事無く陣形を整え、統制砲撃戦、機動戦両方にいつでも移行できる体系を整える。

 

 

 

 

 

 

 

 改ゼルグート級1等航宙戦艦 サレザリウス

 

 

「各雷撃戦闘団、ミサイル、魚雷発射!」

 

 総数4桁を越える艦隊からミサイル、魚雷が放たれ、漂流するカラクルム級と辛くも避け切ったゴストーク、メダルーサ、ラスコー、ククルカンに豪雨のように襲い掛かる。

 

 力は力によって滅ぼされると知れと突きつける冗談じみた火力はカラクルム級を焼き尽くし、後続の本命としてドルシーラとガルントが突然現れた。

 

 サレザリウスの瞬間物質移送機だ。

 

 鈍重なドルシーラとガルントが動けない敵艦の眼前に現れ、全速力で投下宙域に飛び込むとFi.97型魚雷と大型のクラスターミサイルを放った。

 

 Fi.97型魚雷はそのまま敵艦のエンジンに突き刺さり爆発、爆発の勢いで他艦を巻き込みドミノ倒しのように崩していき、ガルントの運んだクラスターミサイルは敵艦が密集した域まで突き進むと多数の小型ミサイルを撒き散らし、確実にエンジン部に突き刺さる。

 

「各機動砲撃戦闘団は前へ、機動砲撃戦による殲滅戦へ移行する。テロンの砲撃範囲にくれぐれも入るな。では喰らいつけッ!」

 

 デストリア、ケルカピア、クリピテラ、メルトリアで構成された複数の機動砲撃戦闘団が急加速をかけまだ動けないカラクルム級に畳みかける。

 

 ガミラス艦の砲撃ではカラクルム級の装甲を過貫通する事ができない。

 ならば一番の弱点を狙えばいいのだ。

 1つの小艦隊がまるで群体生物のように見事な機動を見せ、カラクルム級のある1点を撃ち抜いた。

 

 それは艦尾、装甲で覆う事ができない部分の1つであるエンジンノズルだ。

 どんな艦艇でもどうしてもそこは装甲で覆い隠す事ができないため、堅牢さを誇るカラクルム級も例外でない。

 その証拠に、エンジンノズルを撃ち抜かれたカラクルム級は至近にいた僚艦を巻き込んでドミノ倒しのように爆散していった。

 

 ガミラス最精鋭の連携と砲撃精度は一級品。

 骸になりかけとはいえカラクルム級を着々と片付けていくなか、サレザリウスに通信が入った。

 

「正面に出せ」

 

 サレザリウスの大型モニターに表示されたのは、アンドロメダを預かる山南だった。

 

『ディッツ総司令、今回の援軍、この場で地球を代表して感謝します』

 

「ガトランティスをやらなければ我らも危険。手を貸さない理由はない。見たところこの宙域のやつらは動けまい。このまま放置し防波堤とし、我々は君達の停泊地にお邪魔しよう」

 

『既に来訪は地球に伝わっています。我々は頃合いを見て引き揚げます』

 

「では、泊地で会おう」

 

 通信が切れると4000隻のガミラス艦は砲撃が一時的に止んだ宙域を進み、航路管制を受けて木星に飛んだ。




Calamity編なんですが、本来はCalamity Warにする積もりだったんです。
ですが、鉄オルに厄祭戦(Calamity War)があるので被りそうだったんです。

……いや、ちょっと書き変えるだけだからなぁ。
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