宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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戦闘らしい戦闘はない回です


Calamity 2 -それを成すのは、私であってほしい-

「N2弾頭ミサイル、1番から4番安全装置解除。順次発射!」

 

 第11番惑星公転軌道に配置されていたミサイルコンテナが命令を受信し、大型のミサイルが放たれた。

 悪魔の住まう設計局で生まれたN2兵器は加害リミッターから解き放たれたことで本来の威力を存分に発揮し、1つの都市が更地になる程の爆発が生まれた。

 

 これが市街地で起爆されたらと思うとゾッとする。

 嘗ての遊星爆弾を思わせる程のクレーターが造られ、太陽が顕現したかのようなシミュレーション結果を吐き出したこの爆弾は確実にカラクルム級を刈り取った。

 

「ワープアウトが止んでるとはいえ、スゴい数です」

 

「……無人のホルスアイを置いて我々も下がるぞ。海王星冥王星間のラインだ」

 

「了解。遠隔砲撃を継続し第2次防衛ラインに下がります。自立モードに設定後、直ちにワープに入ります。ワープ終了後、直ちに再接続します」

 

 アンドロメダと随伴の遠隔操作型ナガトが急加速し、ワープ管制を受けて第2防衛ラインへと下がった。

 

 もちろん、置き土産を置いて。

 

 

 ─────────

 

 

「何故だ……ッ! 何故止めを刺さずに引いた……ッ! 我らの誇りを……戦って死ぬ誇りを汚すというのかッ!!」

 

 バルガラムの艦橋でデスタールが吠える。

 野蛮とガミロンの青虫に罵られようとも、デスタールは戦士として誇りを持っていた。

 

 負けたものは死す、それが果たされぬことは耐えがたき苦痛であり、ガトランティスの根っこにある物を蝕んだ。

 

「ヤツの跳躍は解析できたかッ!」

 

「空間跳躍直前に空間航跡を乱すものを使用した模様、跳躍先特定できません……!」

 

 

 

「小癪な……ッ」

 

 それと同時に抜け目のなさも感じた。

 空間航跡を解析されれば相手の跳躍先はある程度絞り込める。

 恒星系内という1光年もない距離での短距離跳躍であれば、跳躍先の特定精度はグンと上がる。

 

 それを相手も分かっているのだ。

 つい数年前に外宇宙の海原を進み始めた筈なのに何という抜け目のなさ。

 

 敵ながら賛辞を送りたくなるが、その前に誇りを汚された怒りが先行する。

 

 刹那、身を焦がす火球が迫り、バルカラムを飲み込んだ。

 

 

 


 

 

 

 ガリレオベルト カリスト基地

 特別派遣空間機甲軍団泊地

 

「すげぇ……あの鈍重戦車ゼルグートが物質移送機と決戦兵器を持ってやがる。何かガミラス側であったのか? 残らずデータ取っとけよ。波動砲ではないとはいえ、ガミラスがそういう艦艇の運用に意欲を見せ始めてるって事だぞ?」

 

「おいバカ待て。相手は友軍だぞ。データじゃなくて、活躍ぶりで見ておこうぜ」

 

 所狭しとカリストに集まった特別派遣空間機甲軍団__特派軍団の旗艦はやはり目を惹く。

 1等航宙戦艦と艦種は同じだが、実態は戦略指揮戦艦であり今までのゼルグートを過去のものにしてしまっている。

 

 その艦の主、総司令官として戦場に足を運んだディッツは、移動総指揮所となるヤマトへ足を運んでいた。

 

 

 _____

 

 

 

 WILLE総旗艦艦隊

 総旗艦ヤマト

 

 

「まさかと思いましたが、やはりそうでしたか……」

 

「まあ、お会いできましたな。ディッツ提督、クダン司令」

 

 惑星レプタポーダ、第17収容所惑星での会談から凡そ4年。

 お互いにもう会う事も無いだろうと思っていたから、この再開は互いに目を見開く事となった。

 生きる伝説、ガミラスの妖怪、猛将が集うこのヤマトの一室は異様な雰囲気を見せているが、その実態はただの「再会を喜ぶ将校たち」だ。

 

 

「それでオキタ幕僚長、娘から聞いていたが持病の方は……?」

 

「一時危険な状態ではありましたが、療養を経て復帰する事ができました。完治ではありませんが、再発リスクが低くなっているならば、という事で」

 

「例の症候群の解析はこちらでも行っているが、報告で耳にした母子感染や二次発症まで引き起こすとは……」

 

「儂が引退するころには解析も終わるでしょう。母子感染や二次発症の患者に充ててもらえればそれでいいです」

 

「……すまない」

 

「ガル、ここに来た目的忘れてないな?」

 

「お前はもう少し空気を読まんかアウル……そうだな、防衛線の方は?」

 

「こちらです。ホッパー、情報を」

 

「アイサー」

 

 発案者(ホッパー宙将補)がモニターを操作すると会議室は暗転し、精巧なホログラムが表示された。

 

 まず最外縁に展開されているのが現在絶賛防衛中の第1次防衛ラインだ。

 これは捨てることを前提にした防衛線であり、その実態は遠隔操作兵器を用いて「敵を最後まで削る」ための作戦陣地だ。

 無人化したローエングリン、艦艇級の主砲塔を取り付けた戦闘衛星に外装主機を取り付けてエネルギー問題を解決しありったけ配置する事で火力を保証し、ホルスアイで広域探査能力を付与、さらに戦術弾道ミサイルとして加害リミッターを全て外したN2弾頭ミサイルが配備されている。

 

 

 冥王星と海王星の間に敷かれているのが第2次防衛ラインで、土星に第3、このガリレオベルトが第4、アステロイドベルトを越えた先が絶対防衛ラインとなっている。

 

 時間断層工廠は現在フル稼働しており、1日で100隻を生み出すレベルの工業力を発揮しているが、それよりも凄いのはそれを持て余さないように配備計画を練り続けている上層部だろう。

 

 断層工廠はすごいが、一つ間違えればその無限の工業力から来る魔力に飲まれてしまう。

 今回の戦いは「そうなっても負け」だ。

 

「本星から連絡を受けていたが、離反していた親衛隊勢力も増援としてこちらに向かっている。気に入らん連中だが、どうこう言ってられないのも事実だ。何せ相手はタランだったからな」

 

「それでざっと200隻。それで止められるのだろうな?」

 

「残念ながら、分からないとしか申し上げられません。相手の狙いが地球の制圧ではなく人類の消滅である以上、単純な砲火力だけで決する事ができないのです」

 

「エヴァンゲリオンか。Type-nullの件は兎も角、上位存在と呼べる特殊な機体もいるとなれば、嘗ての対使徒艦隊戦が効くかどうか……ドメルもやっていたがそれ以上に苛烈になるかもしれん」

 

「その為の対抗兵器も、何とか建造に成功しました」

 

 

 _______________

 

 

 

 

 地球火星間軌道

 イザナミ級選抜部隊《アメノハバキリ大隊》

 第11増強戦術機連隊

 第31可変戦術機連隊

 

 

 

 紆余曲折あり現実的な範疇に収められた震電の追加装備「彗星」は、機体全長を超えるサイズの超

 高出力レールガンと多数の常温核融合ミサイルコンテナを装備した突撃仕様だ。

 

 大型アームで支持されたレールガンは背部と脚部に分散配置された主機から生まれる膨大なエネルギーを食らい弾頭を光速の約3%の時速1万キロで加速させ、計算上はカラクルム級をブチ抜く事ができる。

 さらに脚部を丸々ブースターで覆い反動制御を万全なものとし、仮にレールガンを破壊されても背部と脚部を生かした高機動を活かしながら通常戦闘に移行する事もできる兵装だ。

 

 それだけではなく、第31可変戦術機連隊に配備された秋水は「完成系」だ。

 N2r式戦術歩行空間機動戦闘機 秋水だ。

 2203年の早産な機体だったが粗が目立つ部分を磨き直したため、「ベータ版」から「リリース版」へと格上げされ「release」の文字を貰い大量配備が決まった。

 

 機体剛性と反応速度をさらに向上させ外装ミサイルを主翼に取り付け、機動力を損なわずに持てるギリギリの量の弾倉と電磁小銃を装備したフル装備仕様で揃えらえた秋水は第2防衛(北米)艦隊所属のジョンFケネディAMD[Ptolemy(プトレマイオス)]と第3防衛(ユーロ)艦隊所属のシャルルドゴールAMD[Ptolemy(プトレマイオス)]に上限ギリギリまで配備されている。

 

 

 そして本命の選抜部隊____アメノハバキリ大隊には、36機のイザナミ級が配備されている。

 ガミラスに使用権を借用した断層工廠まで使ってギリギリで数を揃えることに成功し、最終調整と各機パイロットとのマッチングを極限まで進めることが決まった。

 

 量産された戦略兵器1機1機を各々の専用機に仕上げるようなものだ。

 

 パイロットの利き手利き足や武装の好みと言ったクセから始まり、反応速度や主機ゲシュ・タム=ドライヴの調整、慣性制御能力のさらなる向上やVPS装甲の電力配分と挙げればキリがない。

 

 しかし、有り余るほどの予算と人員と権限が与えられたハインラインと以下マッド共は今だけは無敵だ。

 既に北米、ユーラシア、ユーロからも余剰人員を引っ張って総動員で調整にかかっている。

 訓練に入っている機体も複数機存在していて、正しく「艦隊殲滅兵器」にふさわしい能力を持っている。

 

「間に合わせますよ」

 

「了解です。イザナミ5番機から8番機の主機調整に入るぞ!」

 

 


 

 

 テレザート星 AAAWunder

 

 

「戦況は?」

 

「第11番惑星で人工太陽を爆破した事で、集結中であったカラクルム級20万隻のほぼ全てが機能不全となりました」

 

 初戦で20万隻の無力化に成功した事実に一同驚く。

 第2次11番惑星防衛線でも出現したカラクルム級が一気に20万隻も現れた事実も驚くべきだが、それ以上に「ほとんど無力化した」とはどういうことか。

 まず、通常の砲撃ではなし得ない事だ。

 

「人工太陽……。キーマン中尉、つまりは……」

 

「サナダ副長、その想像で大方当たりだろう」

 

「え? どういうことなのキーマン君?」

 

「お前たちも次元波動理論を扱うなら触れているだろう。活性もできれば抑制も出来る」

 

「「……ああ~あれか~」」

 

 キーマンにヒントを投げられ受けとめると、2人は納得がいったように深く頷いた。

 それでも首を傾げる集団に向けて、リクはある程度かみ砕いて説明した。

 

「要するに、波動エンジンの働きを大きく落とす『抑制波動共鳴波』を強力かつ広範囲に発生させたって事。ガトランティス艦も次元波動理論を使ってるから特性は知れてる。人工太陽は言ってしまえば大きな波動エンジンだから、衝撃を与えたり中心をぶち抜いたりすれば暴走して抑制波を一気に撒き散らす事ができる」

 

「つまり、人工太陽を波動共鳴爆雷にしてしまったってことですか……これなら第11番惑星に稼働不能艦艇を使った一種の難所を造る事ができる……!」

 

「残念ながら、ガトランティスは同胞の骸も躊躇なく踏んで進むヤツもいる。あまり意味はないと思うが、そうではない義理堅い奴にとっては進みがたい場所だろう。そもそもゾル……太陽系はワープ管制無しでは飛べないように跳躍封鎖が敷かれている。2重3重に防衛線を強いた以上奴らはそれらを順当に越える必要があるが、アケーリアスの力を使っている以上出鱈目の1つや2つくらいは覚悟しておく事だな」

 

「分かっている。これより本艦は、テレザート星系からの離脱を行い、強行軍での地球への帰還を行う」

 

 

 そうと決まれば帰還だ。

 超空間通信でテレザートの現状とテレサとの対話内容等諸々の情報を押し込んだ報告書を地球に投げて、届くまでの時間も使ってとにかく前へ進む。

 

 しかし、ヤマトの時のようなインチキ弾丸特急は使えない。

 なので1日3回までのワープを5回までに増やし強行軍での帰還となる。

 

 それでだいたい8日、ヤマトの時の試算よりも速いのは単純に性能の問題だが、それでも8日だ。

 それまでにどれだけ戦線が後退しているかは分からないが、今どうこう考えてもここから手が出せる様な事ではないんだ。

 

「航法システム異常なし。目的地を地球に設定」

 

「白色彗星の位置は常に確認する様に」

 

「ツインドライヴ1番2番異常なし。ワープから波動砲まで使用可能じゃ」

 

「火器管制、主砲及びVLS、魚雷もいけます」

 

「オオスミ内の初号機のモニタリングは厳とせよ。帰還まで24時間体制での監視を行う」

 

「全艦、発進準備完了。古代くん、帰ろう」

 

 

 

「全艦発進。地球に帰還する!」

 

 青い水晶玉の星が遠ざかっていく。

 永久に思えた封印を取り払ったその星は透明になっていき、どこか遠くの次元へと旅立とうとしている。

 

「星ごと……ッ!?」

 

「もう何も考えない方がいいですね」

 

 新見が大きく目を見開くが、オカルトや高次元は満腹気味なリクが遠い目で諦めた。

 イスカンダルといいガトランティスといいテレザートといい、追いつけない程の超文明や理解不能の戦闘思考やこの次元を超えた存在といった「人類がいまだ理解できない何か」はこの宇宙にゴロゴロしている。

 

 今回はその1つの「全知全能の神枠」から助言を貰えただけいいかもしれない。

 

 

 

「ワープ先座標設定、現座標から直線距離で850光年先の空間点」

 

「ツインドライヴ出力上昇」

 

 やがてテレザートが消え去るその瞬間、AAAWunderもその星域から消え去った。

 女神は微笑み、立ち去っていく。

 

 これが、人類の存続の一助となることを願い、テレサは祈り続けるだろう。

 

 

 

 _____________

 

 

 

 時間断層工廠ネモ1

 

 

『主機1番2番の波動エンジン換装完了。6時間後にタウコアでの個別稼働テストに移ります。工廠電力との接続作業は現時刻より5時間後に開始します』

 

『各伝導管の補強作業及びナガト型主砲用砲塔基部の増設作業は残り3時間半で終了予定です』

 

『第1次防衛ライン自動迎撃が開始されました』

 

『対空迎撃システム構築率63%です』

 

『波動砲への回路延伸作業はトータルで4%進んでいます』

 

 如何に10倍速で時間が進むとはいえ、これは大仕事だ。

 主砲塔基部と対空火器の増設、元が地球製ではない艦艇の為武装とソフトウェア、エンジンとのかみ合わせも気にしながら進めなければならず、主任代行を務める相田の精神は疲弊の一途をたどっている。

 

 さらにさらに暴走するマッド共の手綱も掴む必要があり、相田は胃薬のビンに手を伸ばした。

 

「恨みますよ……主任」

 

 

 

 __________

 

 

「よくやってくれた、タラン」

 

『国防軍と遭遇した時はヒヤリとしましたが、事情を説明し敵意が無い事を理解してもらいました』

 

「君には何度も苦労を掛けた」

 

『相当の気まぐれはいつもの事なので。その気まぐれが多方面に苦労を掛けていますが、結果的に追い風を生んでいるのは事実です』

 

「そう言ってもらえて助かるよ。これで心おぎなく、私も戦場に出られる」

 

『……総統。ゲシュ・タムの門での戦闘とはわけが違います。蛮族の中枢とも戦闘を行う以上、貴方様の身にも危険が及ぶかと』

 

「私の使命は、全ガミラス臣民の移住先を見つけること。王座はそれをするための道具でしかなかったのだよ。いまはそれが無くても行動を起こせるから多少の無茶も実行できる。それに、星の寿命に関する問題は既にヒス君が率いる政府にも伝わっている。私が道半ばで倒れたとしても、成し遂げてくれるだろう。だが……」

 

 

 

(アベルト、いまここで誓え。ガミラスの移住先を、生涯かけて見つけると)

 

 

 

「移住先を見つけるのは、私であってほしい。マティウスに誓ったあの時から、私の旅は始まったのだよ」

 

 蘇るは幼少の記憶、秘密を守る事を始めたあの日。

 エーリク・ヴァム・デスラーの後継者と目された程の人物であった「マティウス・デスラー」と血の誓いを交わし、ガミラスの未来を共に約束した。

 

 そしてそれは事故のような物だった。

 血の誓いを交わした者のみが参加する会議に忍び込んでしまい、ガミラス星の寿命問題という重大事実を聞いてしまったからやむを得ず、という見方もできる。

 あの頃、アベルトとマティウスは何かと比較されており、「マティウスが陽ならアベルトは陰」と評されていて、アベルトはなかなか愛されなかった。

 

 だからなのだろうか、スターシャに執着した。

 大使館で出会ったリクがハルナを心配する様子を見て、何故だか落ち着いた気持ちになれた。

 

 血の誓いから6年後にマティウスはテロで死亡し、ガミラス民族存続の重責はデスラーに全て圧し掛かった。

 

 拡大政策を続けていき大小マゼランを統一しても、天の川銀河に手を伸ばしても、ガミラス民族に適した星は見つからなかった。

 血の誓いを交わした者はもう自分1人だけになってしまった。

 

 そんな時、デスラーは秘密の漏洩を知った。

 漏洩元は何とランハルト・デスラー_____マティウスの子であり今はクラウス・キーマンとして活動をしている甥だった。

 何とも滑稽な方法で吐かされたそうだが、問題は血の誓いを交わした者からの漏洩ではない事だ。

 

 もう血の誓いは意味をなさない。

 孤独な旅は、偶然とはいえ同じ目的を持つ者と共にする事となったのだ。

 

 一時はガトランティスに頼ることを考えたが、人類消滅を考えるやつらがいる以上は「例えガミラス星と寸分たがわぬ環境の星」を与えられても滅ぶ事は必死だ。

 

 ならば、この戦いで全てを決し新天地を探す旅を再開するべきだ。

 

 

 

 

 

 

『総統……』

 

「独り言だ。忘れてくれたまえ」

 

 デスラーは通信を切ると、断層制御艦から見える断層工廠を見下ろした。

 

(スターシャがテロンに供与したコスモリバースでこんな空間が……)

 

 生身では耐えられない10倍速の空間は、この地球に異次元の工業力と経済の加速を与えている。

 物が生まれるスピードが一気に戦前並みに戻ったのだ。

 下手をすれば戦前よりも速いかもしれないが、需要を一気に満たせるレベルであれば金の動きは淀みを脱して大河のように流れていく。

 

 これを軍事に一気に振り向ければ、資源が尽きない限りは無尽蔵に艦艇を生み出す事ができる。

 

 しかし開戦前の地球はそれをしなかった。

 

 太陽系を守れる程度の戦力を用意したあとは、組み立て式のビルや各種生活物資、その他多数といった民間向けのモノも製造していた。

 勿論それら製品の出所は伏せているが、人類は禁断の果実を上手い具合に切り分け工夫して使っているようだ。

 

 

「総統。公試もなしの電撃投入となりますことを、お詫び申し上げます」

 

「構わない。戦える力を用意してくれれば、それでいい」

 

 モニターに映るそれは、本来手を携える筈がなかった艦艇だった。

 

 

 _____________

 

 

 

「綾波、もういいの?」

 

「心配ありがとう。もう平気」

 

 数度の検査を受けて異常なしの結果を受けて、綾波は晴れて退院できた。

 それまでの間はハルナやリク、シンジ、時間を捻出した真田まで顔を出して話をしてくれていた。

 

 その真田は、どうやら波動コアについて再調査を進めていた。

 真田が何を言っているのかは半分も分からなかったが、一騎当千の切り札になるかもしれないというらしい。

 ただここからでは調査ができないので、現在持ち出されているビーメラコアを、限られて時間で断層工廠で解析させてるそうだ。

 

「これから、どうなるんだろ……」

 

「アディショナルインパクトを止める。私たちは切り札」

 

「……リクさんに言われたよ。WILLEは全力でガトランティスにぶつかって僕たちを全力で支えるって。もう1人の僕が言ってたけど、NERVとは大違いだって」

 

「……分かる」

 

 人類の命運を14歳の少年少女だけに委ねるNERVとは違い、WILLEは出し惜しみなしで本気で立ち向かってくれる。

 もちろん技術の進歩から来るものもあると思うけど、頼もしさは雲泥の差だ。

 

「碇くんは、戻ったらどうするの?」

 

「僕? ……戻ったら、トウジやケンスケ、委員長に会わないと。いなくなってから心配かけちゃったから。綾波は?」

 

「学校に行きたい」

 

「学校?」

 

 もっと家族や友達のことが出ると思ってたシンジは、予想外の答えにぽかんとした。

 

「できれば、碇くんのいる学校がいい。お父さんやお母さん、WILLEに迷惑をかけると思うけど、もう一度学校に行きたい」

 

 嘗ての第三新東京立第1中学校は、エヴァパイロット候補者が集められた学校だった。

 しかし今の第1中学校は何てことないただの中学校で、組織の思惑なんてものも入っていない健全な学校、第三新東京や建設中の郊外都市に住む中学生のための学校だ。

 

「……だったら、僕が勉強教えるよ!」

 

「いいの?」

 

「冬月先生に結構教えてもらってて、ほんの少し、自信があるんだけど……い、嫌だったら別にいいんだけど……」

 

「教えて。生きていきたいから」

 

 中学から高校、高校から大学へ、大学から社会人へ。

 自分が歩めないはずだった未来が選択次第で歩めるようになっている。

 顔には出していないが綾波はそれをとても喜んでいて、自分たちが切り札である事とは別で「終わった後の事」も考えている。

 両親やWILLEには迷惑をかけることになる事を綾波は心配していたが、彼女の知らないところでそういう事も考えられていた。

 

 人類を守る為に戦う____戦った少年少女に大人は何を返せるか、大人としてどう守るか。

 これは本人ではなくWILLEの主観になってしまうが、綾波レイという少女の人生はこれ以上軍事に関わるべきではなかった。

 それでも本人の意思で関わった___関わってくれた以上、何も返さないというのは人として、1つの組織として余りにも不誠実だ。

 

 彼女は驚くかもしれない、困惑するかもしれない。

 それでも、目いっぱいの祝福をこの先の人生にもたらす為に、大人たちは水面下で動いているのだ。

 

「後は、友達も作る。今は1人しかいないけど、まだまだ増やしていく」

 

「?」

 

「碇くんは私の友達」

 

 そっと手を伸ばし、シンジの掌に触れる。

 シンジは困惑するが、綾波の柔らか音微笑みに推されて、その手を握った。

 

「ありがとう、碇くん」

 

 

 

 __________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反波動格子、これは最後の手段になるだろう」

 

 

 反波動格子に頼らずにどの様に強化するか。

 キーマンからそれを回収してから、真田はずっと頭の隅にそれを置いていた。

 反波動格子をブースターにして波動砲に絡めることで1回限りで何乗倍にも威力を上げられる反面、大きな問題が存在している。

 

 1つは、発射機構が耐えられるかどうか。

 99年時から波動砲は改良されていないのは周知の事実であり、「発展型波動砲」の枠に入るという理由でアリア条約で禁じられている。

 過去のバレラス事変で発射された波動砲は薬室内タキオン粒子の圧力を120%以上にして発射していた。

 これはそれの比ではない。

 下手をすれば、艦首が消し飛ぶだろう。

 

 もう1つは、膨大なエネルギー輻射(ふくしゃ)だ。

 輻射とは、熱が電磁波として放射され、真空を含む空間を通って物体に直接熱を伝える現象のことだが、波動砲の場合は収束し切れない分が艦体にダメージを与えてしまう。

 これは通常の波動砲にもみられる現象で、AAAWunderやヤマト、特砲航宙戦艦は艦首が特に丈夫に設計されている。

 その為、通常波動砲の生む僅かな輻射は艦体にダメージを与えるに至らないがこれは事情が異なって来る。

 

 何乗倍にも高める場合は、その輻射の勢いも激しくなる。

 下手をすれば、輻射で大破……なんてことも起こりかねない。

 

 

「今存在しているオリジナルコアはおそらく4つ」

 

 

 現在確認されているイスカンダル純正波動コアは、発見された場所、もたらした人、保有勢力から由来を取り個体識別用の名前が付けられている。

 

 AAAWunderにはユリーシャコアとサーシャコアだ。

 98年時、99年時に供与された2つの純正波動コアは、今はAAAWunderの心臓となっている。

 

 地球にはビーメラコアだ。

 ビーメラ星系ビーメラ4で発見され、タウコアの始祖となった波動コアだ。

 現在は真田の指示で時間断層工廠で分解解析にかけられていて、タウコア製造時の解析情報からさらに踏み込み深部の探索が進められている。

 

 その結果はつい数刻前に届いており、純正波動コアの深部に関わるリミッターの有無が判明している。

 

 そして、実在が確認されていないが「()()()()()()()()()()()()()4()()()()」だ。

 

 

 

 

 

 

 現存するこの4つのコアのリミッターをもし外す事ができれば_____

 

 真田は何かを思い至り、2人を呼び出した。

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