宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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予想が付いていたかもしれませんが、あの艦が戦場入りです。


Calamity 5 -飛び立て、蒼き鋼の神殺しよ-

極東地下都市

旧 国連宇宙軍極東管区司令部

現 WILLE地下避難指揮所 医療棟K47号室

 

地球へとアントノフで移動し、地下都市への避難に成功した真琴は、息子の翼に付き添い医療棟の一室で戦況を見ていた。

自分の夫は今どこにいるのか、太陽系は今どうなっているのか。

元軍医とはいえイスカンダルへの旅を経験した身だ、どうしても気になってしまったのだ。

 

特別な計らいで一部だけ見ることを許されこうして病室で見守っているが、AAAWunderはまだ戦場に到着していないらしい。

それもそうだ、テレザートは遥か彼方の星で、そこからの帰還となればワープを繰り返してもどうしても時間がかかる。

 

 

「ママ……おほしさまきれいだね」

 

その画面に映っていたのは、禍々しいエネルギーと赤い波動エネルギーがぶつかり合った「星雲のような何か」だった。

 

 

 

_________________

 

 

 

 

アントノフ型ムリーヤ

 

「来ました! 地球方面よりワープアウト反応、パターン青!」

 

 

空間が大きく歪み、波紋の中心から氷を纏った巨艦が姿を現した。

 

 

1対の翼、その羽ばたきは堂々と。

 

 

2つの心臓、それは存在を誇示するように強く拍動する。

 

 

第2船体、そして巨大な「砲口」を構えた中央船体。

 

 

薄氷を脱ぎ捨てれば、現れるは鮮やかな青。

 

 

大量に増設されたVSPST、懸架された大型ミサイル、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そう、現れたのはNHG-***2。

嘗てAAAWunderと死闘を繰り広げたあの艦、デウスーラだ。

 

 

「IFF確認! デウスーラ・エアレーズングです!!」

 

 

「頼みます、これと正面戦闘できるのは貴方しかいません。アベルト・デスラー()()

 

 

 

 

 

 

 

 

360秒前

 

時間断層工廠ネモ1

WILLE暫定識別コードNHG-***2

WILLE識別用暫定艦種:第X世代型強襲制圧型特級航宙戦艦

 

艦橋

 

 

「両舷コア装填完了、エネルギー充填開始」

 

ネモ1の全ての動きが止まり、全電力がデウスーラの為に注がれていく。

あのガミラス大使館での会談でデスラーが設計局に預けたのは、なんとデウスーラだった。

 

それを地球は追加戦力として了承し、一通りの軍事技術に関する誓約を結んだ上で艦体が許す限りの改造を施した。

元々あった陽電子カノン砲を全て80㎝口径3連装VSPSTに換装に再塗装、さらにツインドライヴの実装を行ったのだ。

 

 

しかしデウスーラが使用しているのは「イスカンダルツインドライヴ」だ。

それにはイスカンダル製純正コアを2つ用意する必要があり、一同が疑問を覚えることだろう。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()調()()()()()()、と。

 

 

 

 

 

……運命というのは、縁というのは奇妙な物だ。

デウスーラ・レパラータ(デウスーラ2世)に用いられていた波動コアは、イスカンダル純正コアだったのだ。

 

考えてみれば自然な事だ。

第2バレラスの巨大波動コア複数基でやっとチャージしていたデスラー砲を、なぜ外部供給無しで単艦で発射できていたのか。

 

簡単な事だ、デウスーラは純正波動コアを使用していたのだ。

ガミラスが持つゲシュ・タム技術の源流となった遺物は、バレラス事変のその日までコアシップごとバレラスタワーに格納されていたのだ。

 

 

 

あとは転がり落ちるだけだ。

研究用に使われていたビーメラコアを持ち出し、デウスーラの純正コアと合わせてイスカンダルツインドライヴを組むだけだ。

それに合わせた伝導管の補強で強大な心臓に殺される可能性を低くし、有り余るエネルギーを残さず使う為に主砲の交換と増設を行い、デスラー砲用の回路を張り直す。

 

そんな大改造にデスラーは全面的に許可を出し、嘗ての名と有り余る力を添えて今生まれ変わったのだ。

 

 

これはほとんどの人に知られていない事だが、イスカンダル航海中のビーメラ4への立ち寄りが無ければ、この奇跡の組み合わせは成立しない。

あの時はオムシスが不調で有機物回収とメンタルケアが求められていた時期だ。

もしも旧Wunderが後れを巻き返すべく先へと進んでいった場合、ビーメラコアは手に入らなかっただろう。

 

帰還時に立ち寄るとしても、帰り道を急ぐ中での航路選定で弾かれる事だろう。

 

 

巡り巡ってやってきたこの奇跡は、もう1隻のツインドライヴ艦となった。

AAAWunderを取り巻く()()が、奇跡の誕生を招いたのだ。

 

 

「デウスーラ・ドライヴ、ビーメラ・ドライヴ、フライホイール充填率120バーゼル、出せます!」

 

「総統。ご要望のものです」

 

タランが総統に見せたのは、WILLEで使用されている軍帽だった。

たはだWILLEの正規品ではなく、錨の紋章がガミラスの国章に変えられ、ガミラス国防軍の色であるグリーンに染められていた。

 

これは、覚悟だ。

 

ガミラスのために、ガミラス人のために戦う覚悟だ。

もう二度と道は踏み外さない。

 

この青い血、青い肌に誓い、ガミラス人の存続のために、戦い抜くのだ。

 

軍帽を被り、デスラーは艦長席に立った。

 

『管制塔からデウスーラへ。命名だけはお願いしますよ? 丹精込めて魔改造したんですから新しい名前くらい付けてやってください』

 

マッドの誰かだろう。

仮にも元最高権力者にフランクな物言いだが、デスラーは気にしない。

 

「アベルト・デスラーの名において、我がデウスーラに新たな名を与えよう」

 

自分が今までしてきたことは消えない。

そして、ここから自分がする事も消えないんだ。

ならばこの艦の名も、消えない名になるように与えよう。

 

 

 

「本艦を、デウスーラ・エアレーズングと命名する」

 

 

 

待機していた震電が艦首に「デスラーの所有していたワイン」の瓶を投げ、それは盛大に割れた。

進水式で艦首にシャンパンの瓶をぶつけて航海の無事を祈る儀式で、この23世紀でも第2世代の就役時に行われた伝統儀式だ。

 

『艦籍番号、艦名登録よし! NHG-***2デウスーラ・エアレーズング、全ガントリーロック及びケーブルをパージ!』

 

デウスーラを固定していた全ての装置が一気に外され、その巨体は自由となった。

新たなる力を身に纏い、救済の意味を持つ地球の言葉を与えられ、彼の船は何を成すのか。

 

「フライホイール接続、点火!」

 

 

「往くぞ。デウスーラ・エアレーズング、発進!!」

 

 

新たなる心臓の拍動は勇ましく、最初は緩やかに、しかしドックから出るとその莫大な力を吐き出し時間断層を駆け上がっていく。

 

KREDIT工作艦の甲板でラチェットマンが手を振っている。

10倍の時間に耐えながらの突貫作業でガタが来ているが、それでも整列は一糸乱れぬ見事な様だ。

 

『デウスーラ・エアレーズングの新たなる旅立ちに、敬礼!』

 

一糸乱れぬ地球式敬礼にガミラス式敬礼で返礼すると、さらに高度を上げた。

イスカンダルツインドライヴの有り余る力に背中を押され、大気圏を離脱、重力圏を引き千切り、ワープの虚空へと飛んだ。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━

 

 

 

 

『頼みます、今これと正面戦闘できるのは貴方しかいません。アベルト・デスラー艦長』

 

「引き受けよう」

 

装甲がスライドし、格納されていた大量の砲塔を展開し20基60門が一点を狙う。

ツインドライヴの暴力的出力が前方指向可能なこの60門に瞬く間にエネルギーを充填し、口径80cmVSPSTの破壊の鉄槌が超巨大戦艦の艦首に突き刺さる。

60本の死の光が一点集中で穿ち抜き、推定圧30000ミリの艦首超重装甲を強引に突き破り、続けざまに懸架していた大量のミサイルを放つ。

 

バンカーバスターと同原理の貫通特化型ミサイル_戦術機を大きく越えるサイズが降り注ぎ、装甲から火の手が上がる。

続けざまに焦点が吹き飛ぶ閃光が迸り、更なる大爆発が超巨大戦艦の装甲を大きく抉り内部が露出した。

 

 

それは巨大な球体状の砲塔から放たれた一撃だった。

デウスーラ2世___その原型であるエアレーズングから残っていた特殊砲塔で、亜空間回廊海戦ではその威力を見せる事無く終わったが今この瞬間その威力を発揮した。

 

使徒の光線攻撃を再現した大出力砲塔__2番宇宙推定西暦2028年から残り続けた遺物であり、ガミラスと地球での解析と分解整備で遂に砲火を放ったのだ。

 

元が山すら溶かす一撃だ。

超重装甲も耐えきれず再度の砲撃を受けまた大きな破口を生みだした。

 

「テロン機動兵器、機動砲撃艦の対処に入りました!」

 

「砲撃を続行。デスラー砲はどうか?」

 

「可能です。ベオズゲシュ=タム・ドライヴの出力であれば、砲雷撃戦中に充填可能です」

 

デウスーラ・エアレーズングを取り囲もうとするタレット艦に、イザナミが果敢に攻撃を加え続ける。

艦隊殲滅兵器としての一面に違わず優勢、推定装甲厚2000ミリをものともせず捌き露出した機構部に容赦ない連射を捩じ込み1つまた1つと爆炎に変えていく。

 

パイロットは複雑な事だろう。

嘗て地球を滅ぼしかけた張本人が乗る巨大戦艦を援護する事となるとは。

 

それでも心情は機体の動きに乗らない。

大剣を振りかぶり、ライフルを構え、大量のミサイルで狙い、両の掌の輻射波動で焼き尽くし、群れを成し襲い掛かろうとするタレット艦は人類の精鋭たちによって狩り尽くされようとしていた。

 

タレット艦の動きが封じられている今なら大胆に動ける。

超巨大戦艦の艦底を潜り抜け艦尾に回り込むと無防備な背中が顔を出し、対空の追い付かない弱点が現れた。

 

全長12000メートルを前にすれば、全長2500メートルなど小鳥だ。

しかし侮るな、凶悪な牙を持ち最強の小人の戦士を従えている今なら_____

 

「速射魚雷、撃て!!」

 

対空砲火が出迎える前にできるだけ多く撃ち込め。

全長30mを誇るFi.97型魚雷を連続発射し、重さゆえに遅い雷速も至近距離で補い全弾漏れなく食らわせ砲塔を使い物にならなくした。

 

 

 

しかし動きがあった。

全身から豪炎を吐く超巨大戦艦が突如前進、艦底部の機構が怪しく稼働を始めた。

 

火焔直撃砲のように格納されていた砲身が展開されていき、「何か」を狙い撃つために延長していくではないか。

 

「ッ! 射線を計算! どこを狙っている!?」

 

「着弾予測、地球です!」

 

質が悪い。

良ければ助かるが、地球は甚大な被害を被る。

受けとめれば地球は助かるが、デウスーラは消滅する。

 

「ズォーダー大帝か。人類に選択を突きつけるのがお好きなようだ……!」

 

「総統!」

 

「後退しながら機関出力を上げよ。ノイ・デスラー砲発射準備!」

 

決戦兵器の発射まではどの勢力も時間がかかる。

ならば、同格の武器で対抗するしかない。

 

 

 

それに、決戦兵器に勝てるのは決戦兵器だけだ。

 

 

 

「薬室内圧力上昇、86、107、エネルギー充填120バーゼル! 重力アンカーよろし!」

 

再調整されたデスラー砲に赤い光珠が灯り、ツインドライヴの力が噴き上がる。

有り余るエネルギーが一気に艦首に集まり、彼のAAAWunderよりも速く充填が完了した。

 

ガミラス語で「新」を意味する「ノイ」の言葉の通り、デスラーに委ねられた「守るための新しい力」だ。

 

 

「対ショック対閃光モードよし!」

 

「発射5秒前、5(ガル)4(ジー)3(ネル)2(ベオ)1(アル)

 

 

(私は選択しない。両方、掴んで見せよう)

 

 

 

 

「ノイ・デスラー砲、発射ッ!!」

 

 

 

 

その瞬間、超巨大戦艦から濁流のような紫の光束が放たれ、負けじとデスラー砲も放たれた。

本家イスカンダルと地球、そしてガミラスの力が束なりさらに強化された力の咆哮は紫の光束に激突し、互いに拮抗し合った。

 

どちらも譲らず、ただ尽きた方が一瞬で押し負ける力押しの戦い。

拡散していく光のシャワーがタレット艦や超巨大戦艦の装甲片を消し飛ばし、ガンマ線の嵐が吹き荒れていく。

ツインドライヴがさらに唸りを上げ、機関室を滅茶苦茶にする程のエネルギー干渉波を撒き散らし、空間衝撃波がデウスーラを襲う。

 

しかし倒れない、膝を折らないデスラーは、宿敵であった彼の艦がどうしたのかを思い出し、決断した。

 

 

 

 

「最大船速!! 重力アンカー解除!!」

 

「ッ!? 了解ッ!!」

 

正気を疑う指示にタランは目を見開いたが、嘗ての宿敵と同じ戦法だと気付けば行動は早かった。

ワープ並みの出力で艦を押し出し、重力アンカーを解除すると、微速ながら進んだ。

 

第2船体後部から莫大な光が漏れる程の出力を維持し、デスラー砲を継続放射しながら距離を詰めるその光景はさながら最終決戦の一幕、常識をかなぐり捨て去った頂上決戦だ。

 

その決死の全身に攻撃を加えようとするタレット艦の残党はイザナミが叩き落し、指揮艦であるムリーヤが全速で退避しイザナミはデウスーラの甲板に飛びつき()()()()()()()から身を守り始めた。

 

 

やがて片方が押し負け始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()が力を失っていき、ノイ・デスラー砲が押し始めたのだ。

6次元どころか7、8、9、10、11次元も展開しエネルギーを絞り出し、巨大な暴力に打ち勝とうとしているのだ。

 

 

「総統! いけます!!」

 

 

「出力そのまま! 歩を止めるな!」

 

艦首からノイ・デスラー砲、艦尾からワープ時並みの推進炎、小振りな星雲を創れてしまう程のエネルギーを吐き出しながら、デウスーラは前進する。

 

これが今AAAWunderに乗っている力と同等のモノ、嘗てイスカンダルが使った力。

デスラーはコッキングレバーを強く握りしめると力の限り叫んだ。

 

 

 

 

「撃ち抜けェェェェェッ!!!」

 

 

 

 

 

そのまま艦底から艦上部へ向けて斜めに穿ち抜きどてっ腹に大穴を開けたが、デウスーラもかなり消耗してしまった。

 

最早死に体、それでも動こうとするしぶとさにデスラーは歯を食い縛るがすかさず手札を切った。

 

「幕引きは任せよう。テロンの戦士たちよ」

 

 

 

________

 

 

 

「全機総攻撃開始! デウスーラの攻撃で死に体です!!」

 

『ボーナスステージだオ”ル”ァッ!!!』

 

反撃はもうない、とどめを譲られたからには仕留めそこなうのはあまりにも失礼だ。

持てる武装の全てを叩きこみ、過貫通した巨大な大穴を更に抉っていく。

傷口に塩を塗るどころか剣山を突き立て引っ掻き回す様な所業は各所の誘爆を引き起こし、超巨大戦艦は遂に出力の低下を引き起こした。

 

艦橋らしき部分に単分子大刀を突き立て指揮機能を奪い、それでもしぶとく動き続ける砲塔を掃射で黙らせ、足掻く力を徹底的に奪っていく。

 

砲塔の山が無残に崩れていき、噴火のように吹き出すエネルギー流が脱落した砲塔を噴き上げる。

 

エンジンノズルから光が消え慣性で動き続けるが遂に攻撃が機関部に届いた。

今までと比較にならない爆発が艦後部から突き破る様に噴き上がり、大穴を中心にして二つに真っ二つに千切れていく。

 

 

 

 

 

刹那、機関部に全てが吸い込まれたかと思うと爆縮、太陽のような光球となり飛散していった。

 

 

 

 

 

 

「空間衝撃波が来る! 総員衝撃に備え!」

 

空間衝撃波よりも速く飛ぶイザナミがデウスーラに、ムリーヤに辿り着くと重力アンカーを受け入れ機体を固定し何とか耐えた。

慣性制御無しではショックで問答無用で失神するレベルを何とか耐え抜き、放たれる極彩色の閃光はオーロラのような残り火を残し消えていった。

 

 

 

「超巨大戦艦……撃破!!」

 

無線上で喜びが爆発し、ミリーゼは思わずヘッドセットを外した。

ムリーヤやデウスーラの甲板上にいるイザナミは喜びを分かち合うように腕をぶつけ合い、興奮したかのように飛び回り、またある機体は艦橋越しに敬礼している。

 

地球へ迫る強大な敵を打ち倒したという実感がミリーゼの中に一気に沸き上がり、柄にもなく思い切り喜んだ。

その最中、デウスーラが艦を寄せ通信が入ってきた。

応じる旨を伝え、気分を落ち着けてヘッドセットを取った。

 

ミリーゼ自身ガミラス軍人に会った事があるが、WILLEにそっくりな軍帽を被っている人は初めてだった。

地球式の敬礼をするとモニター越しのデスラーはガミラス式の敬礼を返した。

 

 

『NHG2番艦デウスーラ・エアレーズングの艦長、アベルト・デスラーだ』

 

「デスラー艦長、ご助力感謝します」

 

『私はガミラス臣民のために戦っている。君達に助太刀したのは、結果的にはガミラスのためになるからだ。だが……』

 

 

デスラーは一拍間を置くと、こう締めた。

 

 

『間に合ってよかったよ』

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

地球

Tokyo3

WILLE統合庁舎直下地下800m(非公開区画LevelEEE)

敵性異星人侵攻対策危機管理センター

 

 

「超巨大戦艦、撃破確認!!」

 

 

どっと歓声が沸き上がるがそこは軍人、まだ危機の1つ目が去っただけだと理解し急いで持ち場に戻っていった。

 

「待て待てまだ外惑星域にたんまりいるんだぞ!? 落ち着け!!」

 

「報告急げ!」

 

「はいっ! 時間断層工廠ネモ1より発進したNHG-***2がアメノハバキリ大隊に合流、砲撃戦及びデスラー砲、その後の一押しで超巨大戦艦の完全撃破を確認しました! 残骸一つ残さない大勝です!」

 

芹沢に呼び止められた1人の連絡士官が届いた情報を読み上げると、拳を握り込んだ。

だが万歳三唱は全て終わってからだ、すかさず次を聴く。

 

「参加機体とNHG-***2の損害は?」

 

「報告によると、第11連隊、31連隊に機体損耗がありますが、パイロットは無事です。NHG-***2____デウスーラ・エアレーズングは現在ノイ・デスラー砲の緊急点検を行っています。イスカンダルツインドライヴには問題ありません」

 

「デウスーラのコアとこちらが保管していたビーメラコアのツインドライヴ、間に合いましたな」

 

「真田副長からの報告が正しければ、更なる力の解放も望める。それを踏まえて改装に口を出しておいたが、上手くいってくれてよかった。補給が済み次第、大隊と両連隊はUS作戦宙域に向かってもらう。デウスーラもだ」

 

「了解! 急げぇ!!」

 

まるで一つの群体生物のように命令が伝わっていき無駄のない動きで連携をしていく。

 

全てはこんな時のためにと勧められた訓練のたまものだ。

人類を踏み潰すレベルの災厄を乗り越えるのは戦場に立つ軍人だけではなく、彼らの背後で構える自分たち司令部の人間もだ。

 

 

自分達が浮かれて踊って狼狽えて何になる。

例え嬉しくても小躍りは終わってからにしろ。

 

 

「本隊の様子はどうか?」

 

「戦況は優勢です。撹乱幕がやはり効いているようです。艦隊ネットによると、残り弾数は1000を切りました」

 

「補給を急がせろ。ガリレオの集積分を各戦域に分配させる」

 

「待機している補給部隊を動員し、各戦域に行き渡らせます」

 

「よし」

 

「傾注! 白色彗星より未知の艦影確認! 推定全長1200m!」

 

「情報を集め続けさせろ! 出現は全艦隊で把握しているな?!」

 

「リアルタイムで共有しています。画像きました!」

 

白を基調にし、ナスカ級を拡大したような幅広の艦体を持つその巨体は悠々と進み、未だ続く強大な重力乱流に揉まれながらも這い出てきた。

その甲板には巨大な刀剣のような何かが安置されていて、その数40。

 

さらにデスバテーターを多数射出し航空攻撃を仕掛ける準備を始めている。

 

「直ちに刀剣型艦艇の解析を始めろ! EWACSからの情報を超並列演算機構に回せ!」

 

超並列演算機構___それは地球に存在するオリジナルMAGIとそのコピー3基、合計4基を並列につなぎ合わせた解析機構だ。

未知を知り既知へと変え、知を武器とする戦場で力を発揮する頭脳だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

第2防衛艦隊

旗艦 ナガト型コンスティテューションAMD[Elinaceus(エリナケウス)]

 

 

「刀剣型、敵艦載機確認!」

 

「濃度、光学使用可能圏内。艦隊防空、エリナケウス一斉射! 撃て!」

 

紅い霧雨が宙を染め、刀剣型___自滅型攻撃艦イーター1が死の雨に突っ込む。

数の暴力で刃先が赤く焼け、ダメ押しのN2弾頭ミサイルが数刻の太陽を産み落とし、取り巻きのデスバテーターごと消し飛ばした。

 

しかし多い、数が多すぎる。

艦隊というより、これは投げナイフだ。

しかも有人、有人艦特有の咄嗟の判断が見え隠れしている。

 

「Baka Bombじゃねんだぞ!? 今は23世紀だぞ!?」

 

「歴史が進んでいない様だな奴らはッ……!」

 

指揮官席でアームストロングは投げナイフの動きをにらんだ。

 

しかし砲撃の手を緩める事はできない。

艦隊防空でイーター1を撃ち落とす事も大事だが目の前のカラクルム級を減らす事も大事だ。

残り500隻、援軍が来にくい状況を作ってビームも封じたが、刀剣型の襲来で苦境に立たされた。

 

実弾防御でミサイルを使用しても、近いうちに尽きる。

濃度低下で偶々エリナケウスが使えたが、元の濃度に戻せば次防ぎきれるかは不明だ。

 

「司令! スタウトが!」

 

「どうした!?」

 

モニターに移った映像には、ユキカゼ型スタウトの展開する波動防壁に切っ先を押し込んだイーター1が映っていた。

そのまま推進力に任せて波動防壁を貫通させスタウトの艦体にずぶりと突き刺さり、ビームを連射して自爆した。

 

「スタウト、波動防壁を突破され撃沈しました……」

 

「全艦隊に通達、敵刀剣型艦艇は波動防壁を突破する! 受ければ終わりだ、艦載機、戦術機による柄の部分への攻撃を徹底させろ!」

 

アームストロングはそれ自体を脅威と感じながらも、不完全な脅威と見た。

確かに防壁を貫通できる兵器は脅威で、波動機関搭載艦に対してのメタ兵器だろう。

 

だが、機動兵器対策はこちらに分がある。

複雑な三次元機動の戦術機とマルチロールファイターとなったファルコンspec2であれば、制空機としての役割を果たせる。

 

そして_____

 

 

「全艦隊対EM防御! カミナリサマ用意! 撃て!」

 

これがある。

幼稚な対EM防御では防ぎきれない程の大電力が撹乱幕の帯電粒子に作用して宙域一帯に凄まじいスパークが迸る。

デスバテーターが誘爆で花火となり、イーター1の動きに乱れが生じるが、有人機動には決定打になりえない。

 

 

その剣先を、巨人が叩き折った。

 

 

震電彗星装備型が、超高出力レールガンの砲身ブレードでイーター1の柄を叩き切ったのだ。

確かに柄の部分に機関部や指揮機能が集約されているようで、勢いを奪われた刃は容易く消し飛ばされた。

 

好機と見たアームストロングはミズーリに下令して、彗星装備型を更に出すように命じた。

 

 

 

 

 

ナガト型ミズーリAMD[Ptolemy(プトレマイオス)]

 

「そうら出していくぞ!! 動ける機は順次発進だ!」

 

彗星装備に身を包んだ震電が次々と発進し、第221増強戦術機中隊が一気に展開していく。

 

挨拶代わりにレールガンを一発、大口径から放たれる礼儀正しい一撃は刃に命中すると「刃零れ」させた。

そして相手と軸線を合わせ、砲身の大型ブレードで力任せに叩き切る。

 

「いいぞ! ミサイル誘導して刃の腹にブチ当てろ! 誘導任せた!」

 

「行くぞッ!!」

 

リーヴァンテインの操作で生命体のようにミサイルがうねり、1発残らず刃の腹に命中、見事に崩壊し撃破した。

 

『地球統合庁舎より、ガリレオ経由で全艦隊に一斉通信。敵刀剣型の第一次解析結果を送信する。各艦隊これに対処せよ』

 

「ありがてぇ! EWACS とMAGI様々だな!」

 

「情報来ました! 刃先に単分子カッターが搭載され、波動防壁の中和機構が内蔵されている可能性大です!」

 

「ゴリ押しじゃねぇってことか。構造は?」

 

「艦長の勘通りですね。刃の腹、ひし形を重ね合わせてるため、やろうと思えばミサイルや主砲でやれます。ただ主砲はクソみたいな狙いにくさがありますけどね!」

 

「砲雷長いけるか!?」

 

「誰に言ってんだ。できるさ」

 

「女は毎度毎度外すけどな」

 

「言ってろこのやろう!」

 

正確無比な砲撃がイーター1の刃の腹を捉え、1発で崩壊した。

太古のカミカゼ・アタックにでも倣ったかのようなイーター1の突撃は、現代技術の百発百中に無残に落とされた。

 

しかし数が多い。

こうして迎撃に務めている間に、間に合わなかった僚艦が何隻も串刺しにされている。

 

You damn bastard(このクソったれが)!」

 

主砲では狙いにくい分余計にタチが悪い。

その切っ先がミズーリへ向き、特効を仕掛ける。

たまらずミサイルを放ち追尾で柄の破壊にかかるが、およそ有人では考えにくい複雑な機動を描き大半を振り切ってしまった。

 

慣性制御が効いていたとしても殺人的なGが襲い掛かるはずだ。

それでも動かせたのは何故だ、何故なのだ。

 

……ああそうか、彼らは厳密には人では無いのだ。

人造兵士の屈強な肉体は人間を壊すGを耐え抜き、クマのような怪力すら生み出す。

 

だからこんなふざけたマネができるのか。

 

 

 

「ちくしょう、マジでふざけてやがる」

 

超加速で刃がホッパーに向く。

単分子の刃が、波動防壁ごとホッパーを真っ二つにするだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『速射魚雷、多連装ミサイル発射!』

 

別方向から現れた豪雨のようなミサイルがイーター1の腹を叩き爆散し、ミズーリはその破片を浴びるが咄嗟の防壁で何とか防ぎきった。

 

「助かった……どこからだ!」

 

『続けて重力子スプレッド一斉射、射線安全確保よし撃て!!』

 

「通信!?」

 

更に現れるは8つの青白い飛礫(つぶて)、イーター1には命中しなかったが、浮遊するカラクルム級の残骸に命中すると周辺の物体を吹き飛ばし、イーター1も巻き添えにした。

 

「濃紺のアンドロメダ……そうか!」

 

「IFF確認、AAA-02アルデバランです!」

 

『若いのが先に逝ってはならんぞ、ホッパー宙将補』

 

「谷宙将、助かりました」

 

『珍しく丁寧な英語じゃないか。長話はできん、しっかりやれ』

 

「アイサー!」

 

命を救われた。

最期の一言が「ちくしょう、マジでふざけてやがる」にならなくてホッとしたホッパーはさらに苛烈な攻撃を指示した。

自分は戦争の中で上手く狂っていられると自覚しているが、だからといって人の心を捨てているわけではない。

 

 

「お前ら気合い入れ直せ! ガト公を血祭りにしてやれ!!」

 

「あーあ狂っちまった。アイサー!!」

 

部下もそれに慣れているから、ミズーリ全体が良い意味で狂っているのだろう。

 

 

 

_______________

 

 

 

「総統、ノイ・デスラー砲の点検終了いたしました。幸いにも異常なしです」

 

「テロン司令部に連絡。これよりゲシュ・タム=ジャンプを用いUS作戦宙域にジャンプする。管制を求めよ」

 

「はっ!」

 

緊急で乗り込んでいた設計局員との連係プレーでノイ・デスラー砲の緊急点検が終わり、さらに艦内は慌ただしくなる。

イザナミ級をムリーヤへ収容する時間を惜しんだミリーゼの提案で、イザナミ級をデウスーラ・エアレーズングの重力アンカーで取り付かせた上での大所帯で飛ぶ事になったのだから準備も大変だ。

 

だが、デスラーは艦長帽の奥に興味深そうな視線を覗かせていた。

 

凡そ6倍の体躯の戦艦は、どう見てもガトランティスの様式ではなかった。

ガトランティスの虜囚であった時から存在自体は知っていたが、AAAWunderからの報告書が共有されている今なら、その正体の想像は付く。

 

アレは、先史古代文明であるゼムリアが造ったもの「カラクルム」だ。

時期から考えてゼムリアとイスカンダルは同じくらいの時期に生まれているので、アレに打ち勝ったという事はこの神殺し2番艦はゼムリアより格下のガトランティス群勢を雑に刈り取るように倒す事ができるだろう。

 

(いい仕事をしてくれたようだ)

 

「作業を急がせたまえ。戦況はこちらでも把握しているが、時間が惜しい」

 

「ザーベルク」

 

ふと思い艦長帽を取ると、正面に輝く金のメッキが施されたガミラスの国章が見えた。

メッキ____まるで自分を覆い隠していたものを暗示しているようだ。

 

 

いや、今は構わない。

近いうちに、それを取り払う時が来るだろう。

 

 

1時間後、デウスーラ・エアレーズングは36柱の戦神を連れて戦場へと飛んだ。




Tier表では、AAAWunder(アドバンスドツインドライヴ)にようやく並びました。
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