宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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きゅーそくせんこー


Calamity 8 -異次元の潜り手達よ-

「来るんじゃねぇぞ……来るんじゃ、ねぇぞ……」

 

太陽系内に敷かれた跳躍封鎖のタネはこうだ。

オーバードウェポン「嘆きの海」を装備した遠隔操作型タカオ型を等間隔に配置し、隙間が生まれない様に阻害フィールドを展開している。

 

その数60隻、戦時体制で増産されたタカオ型によって構成されており、ガトランティスの予測される侵攻ルート上だけを何とかカバーする事で進撃を押し留めている。

 

幸いになことにガトランティスの艦隊行動が平面的であり、ガミラスのように機動戦を用いず、地球のような三次元砲撃戦を行っていないため、この不完全な阻害フィールドは役割をつい先ほど迄果たしていた。

 

 

それが2隻、もう3隻も墜とされた。

自分の担当艦の近くからも魚雷が飛び出し、つい5分前にそれを撃破したばかりだ。

 

タカオ型の甲板に足を付け、艦艇のレーダーと次元パッシブソナーで次元の揺らぎを睨み、パイロットはじっと何もない方向を睨んでいる。

 

 

『5時方向!』

 

スラスターを吹かし飛び上がりその方向を睨むと、異様な空間の揺らぎから魚雷が強引に飛び出し、タカオ型に向かって直進を始める。

 

「やらせるかッ!」

 

電磁小銃の連射が亜空間魚雷を捉え、穴だらけになった魚雷が爆ぜる。

 

亜空間の敵を仕留められる武器は、こちらにはない。

かつてのWunderと次元潜航艦の戦闘と同じように、ひたすら回避するか潜望鏡を砕くしかない。

その潜望鏡を見つけようとリソースを割けば、亜空間魚雷を仕留め損なうリスクが増える。

 

ジリ貧だ。

 

『I401より阻害艦隊各艦。これより、敵次元潜航艦の討伐を開始する!』

 

「討伐!? しかし、こちらに次元潜航艦はいないんだろう!?」

 

『いや、我々がいる』

 

水色のVPS装甲で彩られ、UX級のような水上船型船体を持つ地球の船。

艦首左舷側に小さくWILLEの紋章と見慣れない型番が存在感を示している。

 

SSSY-002 ClassI400-401

 

『識別確認! 確かに地球製の次元潜航艦です! ですが……ッ』

 

「Y番号かよ……!」

 

それは試作を意味する型番であり、本来戦場に出るには早い事を示す。

それを引きずり出すほどに緊急事態だという事がよく分かるが、今は兎に角対抗できるかどうかが重要だ。

 

『アタシらに任せな。あとメチャクチャ馬鹿げたことするからタカオ守ってな』

 

I401の艦首で船首像のように立つ震電は、特殊な装備を付け腕を組み仁王立ちをしていた。

明らかに異様な雰囲気だが、その後方から現れたUX級次元潜航艦の落ち着いた動きが異様さを中和していき、3隻の次元潜航艦が揃った。

 

その更に頭上をファルコンspec2が飛び出していき、大型ミサイルを何発も打ち込んでいく。

 

しかし、それはミサイルなどではない。

 

正体は亜空間ソノブイを連結させた大型クラスターミサイルであり、ミサイル自身の遠心力と爆薬で等間隔に散らばっていきバルーン展開とパッシブソナー基部が延伸し、どんどん索敵範囲が広がっていく。

 

さらにファルコンspec2に護衛された100式空間偵察機が小型レドームを背負って各方面へと散らばっていく。

2199年時に100式に試験的に搭載された亜空間ソナーが今では標準装備となり、未知の戦場は既知の戦場へとなろうとしているのだ。

 

「タカオのパッシブも追加するぞ!  気張ってる全艦に伝えろ!」

 

 

_____________

 

 

 

約6時間前

 

 

 

 

「ワープ管制によるトランスワープを実行。目標、ガリレオベルト!」

 

試作艦艇I400型試作次元潜航艦2番艦を預かり、第2世代艦の後を追い続けた男は、そこにいた。

千早群像一尉、ガミラス戦争時に軍人の父を失い後を追うように船乗りの道に進んだ彼は、まだ地球にとって未知の多い対次元潜航艦戦闘の教練で目覚しい成績を残し、この試作艦を受け取った。

 

この未熟児も千早の防大卒業と同時期にひとまずの完成を迎え、可潜艦とされてきた。

 

それの実戦投入、しかも古代の考案したとんでもない作戦での実戦は千早を唸らせた。

 

歳もそこまで離れていないはずなのに、何故そんなことが考えられるのか不思議でたまらなかった。

 

 

 

 

まだ可潜艦でしかない401に素潜りをさせて、潜行限界に達する前に「露天駐機の震電を飛び出させて近接戦で沈める」なんて誰も考えつかない。

 

 

 

 

 

ピンポイントでの索敵と水中での身の動かし方が要求されるが、確かに手持ちの手札で可能だ。

 

震電の水中運用時に試験を担当したビアンカ・カーライルとパーソネルデータの積み替えだけしかできてない震電、倉庫で埃をかぶるだけで終わるはずのデブリ帯対応兵装、それを携えた401はガリレオベルトに姿を表した。

 

「トランスワープ終了。艦長、アレが……」

 

「今の地球の船の源流だ。AAAWunder、地球をまた守ろうとしている船だ」

 

織部の感嘆の声に、千早はそう返した。

 

 

____

 

 

「オーケー、やることは分かったわ。要は生きてるボウガンになればいいんでしょ?」

 

「簡単に言いますね……破壊したあと、戻ってこないといけないんですよ」

 

「アタシ以外に水中試験こなしたパイロットはいないわ。借り物でパーソナル書き換えしかしてない子だけど、まぁなんとかするわ。デブリ帯対応兵装は?」

 

「大急ぎで取り付けてます。時間がないので使い方は実戦で身体で覚えてください。ワイヤー射出と巻き取り、慣性で飛び、切る。亜空間での機体挙動が水中に近くても、誰もやったことがないんです」

 

作戦計画書を片手に説明を続ける千早を、カーライルは冷静な目で見ていた。

軍服に着られている感じがまだ残っているが、自分の艦の性能と人の技量を理解して作戦を微調整する知恵をしっかり持っているようだ。

 

そして、テスターを任される程のカーライルは、第86独立機動打撃群___教導隊に引けを取らない北米組の1人であり、水中試験で震電用ウォータージェットを使いこなした天性の持ち主だ。

 

「そりゃそうでしょ。この作戦思いついたやつは相当なオオモノね。で、誰の発案?」

 

「AAAWunderの古代三佐です」

 

「あぁ……幕僚長の弟子ね。馬鹿げた作戦作ってくれた仕返しに戦果でぶん殴ってやるわ」

 

 

________

 

 

「おぅし! キャプテンから任された2番艦、きっちり指揮して敵落としてやりますかぁッ!!」

 

次元潜航艦の性能が旧Wunder戦で証明されたことで、UX級は先行量産として3隻の姉妹艦が造られた。

その2番艦をあてがわれたゴル・ハイニは気合十分の目で命令書を睨んだ。

 

ガトランティス製と思わしき次元潜航艦の撃沈、次元潜航VS次元潜航というガミラス史上前代未聞の戦闘だ。

 

それでも、白色彗星への強行偵察に出向いているフラーケンから託された2番艦と3番艦の指揮官はゆらがず、どっしりと構えている。

 

「おいヤーブ、お前の古巣はあの船だろ?」

 

「はい。あんな別れ方だったので、戻るに戻れないんですけどね」

 

その2番艦の機関士となったヤーブ・スケルジ___薮助治は、眼科に広がる第2世代艦艇とその源流であるAAAWunderを見下ろしていた。

そして古巣、もう帰れない場所だ。

 

「キャプテンはできるやつ好きだからなぁ。ヤーブがテロン人だって知ってもしばらく黙ってたくらいだし」

 

「それはホントにその……頭が上がりません」

 

「キャプテンはさ、俺らみたいな捨て犬拾うのが趣味なんだよ。そんでキッチリ育てちまうんだからまぁーイイ上司に拾われたわ。それとヤーブ、おめぇさぁ……」

 

「?」

 

「あぉもう!!」

 

 

 

 

 

 

 

____

 

 

「急な話ですんません。臨時対潜戦闘艦隊指揮官、ゴル・ハイニ少佐でありますッ!」

 

少しドスの効いた声で名乗るハイニは、軍人と言うよりもガラの悪い男と言った具合だった。

半グレ、ヤクザ、そう言った手合いだが、打ち合わせの連絡は丁寧だったので、ガミラスの中でも変わり者の部隊という認識がAAAWunder艦橋要員に広がっていた。

 

「それで、打ち合わせというのは?」

 

「……」

 

「ハイニ少佐?」

 

「すんませんッ!! 打ち合わせってのは方便で、トクガワっていう白髭の機関士さんにコイツを合わせるためです!!」

 

ガバッと深々と頭を下げると後ろに隠れるように立っていた男を引きずり出した。

ヤーブ___藪だった。

ガミラス謹製の丈夫なツナギを着た藪はつんのめって、およそ4年ぶりに元クルーの顔を見た。

 

 

「藪?!」

 

「藪って……あの藪?!」

 

「どうやって生きてたんだ……というか、何故次元潜航艦に……」

 

驚きと戸惑いが巻き起こる中、徳川だけはやはり違っていた。

キリシマの頃から機関員として罐焚きを生業にしてきた、Wunderで地球史上初のエンジンに触れて弱気ながら支えた。

 

そして、ビーメラ4で自分に銃を向けてきた男。

 

 

 

「おやっさん……」

 

徳川は困惑していたが意を決した目で藪を見て、傷だらけの固い職人の手で肩を掴んだ。

 

「怪我はしとらんな?」

 

「おやっさん……」

 

「しとらんかと聞いとるんじゃ! はっきりせんか!?」

 

「し、してません!! レプタポーダでキャプテンに拾われてから、3年半くらいお世話になってます!」

 

「元気にやっとるんじゃな!?」

 

「元気に……やっています……ッ!」

 

「よく……ッ生きとったな……ッ! こんの、バカもんが……ッ!!」

 

人目を気にせず徳川は、まるで孫の帰郷を喜ぶかのように強く抱きしめた。

遠く離れた星に置き去り、記録では戦死扱いで終戦後の捜索も一切行われなかったが、こうしてガミラスで拾われて手に職を付けて3年以上もの間生きていた。

 

過去は何であれ、徳川にとって藪は、愛弟子だ。

キリシマ時代からの愛弟子だ。

 

山崎にとっても、同様だ。

上司と部下という立ち位置で、共に機関室を支えた仲間だった。

 

「どうなることかと思ったが、引っぱって来て良かったぜ」

 

「取り敢えず詳しい事情を聴かせてもらえますか? 戦死扱いの人が3年越しに帰って来ましたとか上が効いても冗談にしか聞こえませんから」

 

同報告すべきか悩むリクがハイニの肩をガシッとつかむと、そのまま壁際に引っ張り込んだ。

金属の左手で一切離さないぞと圧をかけると、ハイニは両手を上げて降参のポーズを取り素直に従った。

 

「ガミラスでもそのポーズなんですね」

 

「万国共通ってやつだろ。んで、どこっから話そうか……」

 

「1から10まで全部です。レプタポーダ辺りでMIA判定になったのはこっちでも把握してますけど。取り敢えずフラーケン中佐が藪さんを拾ったんですよね?」

 

「ヤーブな。向こうじゃそっちが本名らしいけどどうでもいいわ。ヤーブがウチに来たのは、レプタポーダの収容者の中で目立ったやつがいたからだった。ザルツ語が分からんザルツ人だけど、エンジンに強いってな。ほれ、俺の首にも付いとるコイツが付いてたんだ」

 

軍服の襟元を見せると、ガミラス製の多言語翻訳機が付いていた。

藪の首元にはついていないので、恐らくこの3年で独力でガミラス語を覚えたのだろう。

 

「んで、そのころは俺らはバランあたりに(たむろ)ってる離反艦隊に対処するために補給を何回かしながらバランに向かってたんだが、たまたまレプタポーダで補給してる時にヤーブの噂を聞いたんだよ。で、キャプテンが気に入り、そのまま機関室入りって話だ。バランん時は助かったぜヤーブのお陰でな」

 

「……マジですか」

 

「ゲシュ・ヴァールはゲシュ・タム機関と根本的に違うからな。そんじょそこらの腕じゃ扱えねぇ。だから新人、見習いって事で置いたんだが、潜航できねぇ大ピンチん時にとっさの判断で緊急バルブ開いてくれたから潜ってそのままドンッ! 初っ端でいい仕事してくれたぜ」

 

 

「(絶句)」

 

 

「そこから半年後くらいにヤーブがテロン人だってことがバレちまってな。暫くはキャプテンが黙っててくれたんだが上にもバレちまってひと悶着あった。けど、ヤーブが地球じゃ多分死亡判定で、戦争が終わってて、民主化移行のゴタゴタもあったから、それに紛れ込ませる形でヤーブ・スケルジっつうザルツ人が誕生したって事だ。あとはすまんが端折らせてもらうぜ」

 

「取り敢えず分かりましたが……保護? 転職? それとも何?」

 

「銀河規模の転職だろ。んでも、アンタらは複雑かもしれんが大目に見てやってくれんか? あいつ、会った時よりも生き生きしてるし、行きつけの食堂の女将と良い感じなんよ。幸せは離れたとこで見守った方が良い」

 

「……大目に見るも何も、初対面のザルツ人機関士『ヤーブ・スケルジさん』の何を大目に見るんですか? ヤーブさん、何かうちでやらかしましたか?」

 

「リクくん、それは……」

 

「そう言うことです真田さん。面倒な変更は嫌いなので、収まり良いとこに収まったならそれで終いです」

 

「……思うとこは色々あるけど、リクがそう言うならそれで通しましょ。無理に地球陣営に引き戻しても国際問題だし」

 

ビーメラ4での反乱の解決に関わったハルナとしては複雑な再会と解決となったが、その藪が巡り巡って地球と全人類のために戦おうとしている。

 

 

それに、リクと結婚した身としては何となく邪魔になることをしたくなかった。

 

「取り敢えず死んだままってのもアレなので、徳川さんのご家族には生存伝えようかと。なんか家族絡みで交流あるっぽいので」

 

「ヤーブに聞いてからにするわ。そんでよぉ、色々ややこしい問題あるかもしれんけど、後処理頼むわ」

 

「報告書メントクサイですけど。対潜戦闘終わったらやりますので、急いだ方がいいかと」

 

「おっと、そうだったな。地球のシンデンが気張っててくれてるが急がねぇと。ヤーブ! 戻って船出すぞ!」

 

「はいっ!」

 

「薮、しっかりやるんじゃぞ」

 

「おやっさん、行ってきます」

 

慌ただしい再会は終わりを告げ、薮__ヤーブはハイニに連れられ大急ぎでAAAWunderから降りてUX級に戻って行った。

 

やはりと言うべきか、やや歓迎的な目になったのは機関科だけで、それ以外はどう接していいのか分からずじまいだった。

 

「政治的判断、だな」

 

「ビーメラの件は公式記録から消してありますからね。私たちとツインドライヴのついでに。ヤーブさんは生き生きしてましたね?」

 

「……ヤーブの腕に期待しよう。I401では力不足だ。プロの腕が必要だからな」

 

時に嘘が真実になる政治的判断だが、こういうのもアリだ。

思うところはあるが、穏便に済ませようとリクは判断し、ハルナは同調した。

 

ビーメラの時の踏み外したような顔は無くなり、一端の機関士の顔をしているのを見たから、おそらくは大丈夫だろう。

 

「010の操作試験に移ります」

 

足早に持ち場に戻り、桜花作戦の準備にかかっていったのであった。

 

 

___________

 

 

 

 

_________

 

現在

第三防衛艦隊旗艦ナガト型ビスマルクAMD[Ptolemy(プトレマイオス)]

 

 

「嘆きの海展開範囲へのspec2と100式レドームの展開完了しました。現在、タカオ型の亜空間ソナーのデータリンクへの追加作業中です」

 

「急いでくれ。しかし一気に60機……アドミラル搭載の1隻分を吐き出したからには、見つけないとキツイな」

 

第3防衛艦隊を預かる彼、ウォルター・ネルソン宙将補は旗艦ビスマルクの艦橋で探知ネットワークの構築を見つめていた。

1回受けた攻撃は徹底的に対策を講じるのが今の地球だ。

 

火焔直撃砲は転送座標の特定からの回避で無効武力に。

 

波動砲は重力子スプレッド、若しくはミラーリングシステムで無効武力に。

 

そして、次元潜航艦は亜空間ソナーと対潜哨戒網。

 

しかし、見つける為の目と耳を持っても、撃沈できるわけではなかった。

 

そこで始まったのが、次元潜航艦の開発だ。

 

戦後賠償で引き摺りだしたゲシュ=ヴァール機関と多次元位相バラストタンクを用い試作艦の建造が行われ、「次元潜航と浮上を確実に出来ること」を最優先にして組み上げられた。

それ故に急速潜航と急速浮上は困難であり潜航浮上共に30秒を要し、実質的な次元航行可能時間は9分も無い。

 

それでも、今回こうして投入された2番艦I401は、確実に潜って帰ってくれる艦だ。

ガミラスで磨き上げられた基礎があるとはいえ潜る先は異次元の墓場、この艦艇も異次元の棺桶と仇名をつけられると思われたが、まさかの「素潜り初心者」という可愛らしい仇名が付けられた。

 

戻ってこれるだけ、ガミラスの初期の潜航艦よりずっといいのだろう。

 

「リンク開始。全亜空間ソノブイ、タカオ搭載のソナー、連結完了稼働開始」

 

「UX-02及び03、I401との連携も良好。対潜哨戒網、展開完了しました」

 

「タカオ・ブイが潰されたら一番ヤバいからな。ブイにつく機体は警戒を怠るな。魚雷が通常空間に上がる時の音紋がデカいとはいえ、見落とせばダメージはデカいぞ」

 

「了解。早速感アリ!」

 

「早いな。音紋は」

 

「魚雷ではありません。重い推進音を確認、潜航艦です!」

 

「近いのは?」

 

「UX-02です!」

 

「伝えろ。アイツらは潜りのプロだ」

 

 

 

__________

 

 

 

 

「メインタンク一杯! 急速潜航ッ!」

 

宙に波を立て、UX-02がその深緑の艦体を速やかに沈めていく。

時に艦艇の残骸が浮き沈みする亜空間に潜ることもあるが、太陽系の真下__亜空間は凪いでいた。

 

残骸一つ見当たらず、妙な空間のうねりも無い。

 

「試しに潜った時にも思ったが、こいつァ仕事がやりやすくていい! 初の潜航艦同士のバトル、キッチリ決めさせてもらうぜ!」

 

潜航艦同士の戦いは、先に撃った方が勝者となると推測されている。

その理由として、回避が困難だからだ。

 

音紋入力されれば相手の推進反応、次元震の反応目がけて突き進み、突き刺さる。

()()()であれば、地形を生かして魚雷を撒く、或いはマスカーで音を誤魔化したりデコイで魚雷を逸らす事もできる。

 

しかし、宇宙となると話が違う。

地形もクソも無い、マスカーという概念もまだ無く、デコイは艦のサイズからして厳しい。

ならば機銃掃射で落とすかと考えるが、亜空間ではエネルギーの減衰があり光学兵器は効果が薄い。

 

そしてUX級には迎撃に使えそうな実弾砲が搭載されていない。

 

つまりは、撃たれる前に撃てという事だ。

 

 

 

「魚雷発射管1番2番開けェ! 音紋入れろォ!」

 

「入力よし! 目標、ガト軍潜航艦方位22上げ2! 用意ヨシ!」

 

「撃てェい!!」

 

先手必勝、2本の魚雷が艦首発射管から放たれ、ガトランティスの次元潜航艦に向かい猛進を始める。

UX級とは異なり巨大な魚雷のような船体と1軸の亜空間航行用スクリューで進むその姿は鈍重そのもので、スラスターを吹かして急速反転を試みるが魚雷は横っ腹に突き刺さり、盛大に爆発、ゆっくり途中深度亜空間へと沈んでいき、次元圧でぐしゃりと潰れた。

 

「目標圧壊、聞きたくねぇ汚ぇ音です」

 

「次行くぞ!」

 

初の次元潜航艦同士の戦闘、それは意外とあっけないが軍事史に確かに書き残すものとなった。

喜んでいいのか悪いのかは脇に置き、亜空間の狩人は自分だけでないと自覚しより一層ハイニは気を引き締めた。

 

_________

 

 

「4番が落ちたと?」

 

「4番の音が消えました。ガミロンとテロンも次元潜航艦を回してきたようです」

 

「跳躍阻害の霧を晴らせというのが、ゲーニッツ機動艦隊総司令長官のご命令だ。このガイデヌ級に乗れば生きては帰れぬ。だがしかし、死してお詫びを示すよりも、死して戦火を示し大帝と我らガトランティスの誇りを示せ。発射管に魚雷を込めろ!」

 

ガイデヌ級、それはガミラス亜空間戦闘部隊を科学奴隷として捕らえたガトランティスが得た次元潜航艦だ。

全長100m、潜水艦らしい艦橋部は備えず巨大な魚雷のような見た目をしたこの潜航艦には致命的な問題が存在していた。

 

 

 

浮上出来ないのだ。

 

 

 

潜れば最後、所謂特攻兵器として1つの完成に辿り着き、通常空間での厳戒態勢を潜り抜け亜空間下からの攻撃を行う艦艇だ。

価値観の違う彼らだからこそ乗り込める、ある種の栄誉とも言えるのだろう。

 

スラスターを吹きゆっくりと方向転換をするガイデヌ級の艦首発射管ハッチが開き、700ミリ亜空間魚雷が顔をのぞかせる。

 

潜望鏡で顔を出さなくても、そこに質量物があるという事が分かる。

 

そこに跳躍阻害の霧___嘆きの海搭載艦がいることが分かる。

 

「放てェッ!!」

 

重々しい発射音で魚雷が泳ぎ始め、ゆっくりと次元境界面へと昇っていく。

魚雷は上がれるが潜航艦は上がれない。

 

だが、敵を殺し武勲を立てられるのであれば構わない。

 

「敵艦への命中まで、5秒、4,3……何だ!?」

 

 

その魚雷が、何者かに撃ち落とされたのだ。

 

 

亜空間下でのあり得ない攻撃、魚雷しか飛び交わないと予想していたガイデヌ級艦長は外部環境カメラの映像を凝視すると、その正体に気が付いた。

 

 

「テロンの、機械の巨人か……ッ!!」

 

 

 

______

 

 

 

「撃ちたいんだろう? 残念、私達が来たからね」

 

『潜航可能時間、残り7分』

 

「はいはい」

 

電磁小銃の挙動確認として魚雷を撃ってみたが、一通りの物理現象は通常空間と同じようだ。

小銃を左手に持ち替え、利き手の右手を兵装担架に伸ばし超高振動戦闘長刀を構えた。

 

 

バシュンッ!!

 

 

高張力超伝導ワイヤーがスラスターで発射され、ヤマトのロケットアンカーさながらに弧を描き飛んでいく。

その先端には震電が用いる吸着装置が取り付けられており、見事ガイデヌ級に命中するとガッチリと固定した。

 

 

その瞬間、I401船首から震電が飛び出した。

震電本来のスラスターとワイヤー巻き取りでガイデヌ級に一直線に飛んでいき、まるで下半身だけが先行しているような飛び方だが途中から上半身を起こし戦闘長刀を構えた。

 

 

「やっぱ馬鹿げてるけど確実ねぇ!!」

 

 

その勢いのままガイデヌ級の装甲を大きく切り裂き、損傷に耐えきれぬ船殻が次元圧に耐えきれず圧壊を始めていく。

 

吸着解除して急いでI401に吸着アンカーを放ち、巻き込まれぬように脱兎のごとく離脱した。

その10秒後完全にガイデヌ級は圧壊し、爆発すら次元圧で押し込められる大深度亜空間で破片と遺体に変わった。

 

『1隻撃沈を確認。一時浮上、次のポイントに移ります』

 

「はいはい。アンタ、見た目可愛いのに可愛げないよね」

 

『??』

 

______

 

 

「イオナ、急速浮上。静は次元震と超空間通信の探知を」

 

「了解。浮上開始」

 

FL乗組員は、旧アンダーワールド人からの志願によって構成されている。

それは現有第2世代有人艦にそれぞれ1人ずつ所属し管制補助を行う為であるが、実は1人だけアンダーワールド出身ではない者がいる。

 

旧アンダーワールドに似て何倍にも加速された仮想空間で自我育成が行われた人工FLAI__あくまで実験として生み出された唯一のテストタイプだ。

しかし一部の狂ったマッドが進めた結果WILLEが激怒して計画凍結となったため、行き場を失いかけた彼女は現在I401専属の航海士として所属している。

 

「次元境界面確認。バラストタンク内波動エネルギー流体密度、マイナス1.6。全艦浮上開始」

 

彼女の世界は、まだ研究区画とI401しか知らない。

しかし、引き取り手になった群像を慕っていて、こうして航海士の席を用意してくれた事には感謝をしている。

 

次元境界面が揺らぎ、艦橋がゆっくりと出現し、甲板、喫水線、艦底が順に出現していき波のように揺れる境界面が消えた。

 

「いおり、エンジンスリープからノーマルへ」

 

「波動エンジン再起動、出力5分の1で。ゲシュ=ヴァール休ませるよ」

 

「イオナ、哨戒網の状態は?」

 

「各タカオ型パッシブソナー網に感6。UX級2、アンノウン4。タカオ型甲板上の迎撃機が現在迎撃中。」

 

「多すぎる……ッ! 対潜装備機は!?」

 

「到着まで3分!」

 

「次潜るぞ。バラストどうだ?」

 

「波動エネルギー流対密度正常、限界潜航時間の回復を確認。潜航可能時間は、8分です」

 

「ゲシュ=ヴァールの調整が不十分だけど、潜れるよ! 全力で3分保証する!」

 

「潜航と浮上を除いて6分までだ。次へ向かうぞ!」




ガイデヌ級の由来は、旧日本軍の回天です
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彼女は親子の形を知らぬまま死ぬはずだった。▼彼は母親を知らずして成長するはずだった。▼運命のいたずらにより、不治の病を克服した彼女は、子供たちとともにオラリオでお菓子屋を開いている。▼これは、そんな彼女と子供たちの物語である。▼【挿絵表示】▼色々と設定は適当なので過度な期待はしないでください。▼ある程度アトリエシリーズの知識が必要です。▼この作品はコメディー…


総合評価:677/評価:8.35/連載:23話/更新日時:2026年06月01日(月) 08:00 小説情報

よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】(作者:Mr.ティン)(オリジナル歴史/冒険・バトル)

気が付くと、男はダンジョンコアになっていた。▼身動きすらできず、ただ自分の領域であるダンジョンの中のみを知覚する事しか出来ない中、初めての侵入者がやって来た。▼「……ウホ?」▼(……原始人じゃねーか!?)▼毛皮で身を覆い、石槍や石斧を持った彼らに、ダンジョンコアとなった男は状況を否応にも理解させられる。▼そして男は、ダンジョンコアの機能で仮初の身体を作り上げ…


総合評価:6742/評価:8.32/連載:214話/更新日時:2026年06月02日(火) 12:00 小説情報


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