宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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第6章、楽しみです(^^♪


Calamity 9 -瞬間、心、重ねて-

土星宙域

 

 

『試作亜空間魚雷搭載機到着まで90秒』

 

『対潜装備取付急げ。装備完了次第発進させろ』

 

『ドラム旋回開始、搭載機をカタパルトにセット』

 

運び込まれた亜空間魚雷をspec2に搭載し、順次発進させていく。

対潜戦闘の能力を持たせるために、本来魚雷発射管から打ち出す亜空間魚雷を航空機による投下で使用する案がファルコンの近代化計画で提出されていた。

 

次元潜航艦の配備よりも簡単であり、手始めに航空機投下用の亜空間魚雷と亜空間ソナー標準搭載の100式の配備が急がれた。

 

その結果がこの対潜哨戒網であり、ナガト型プリンスオブウェールズAMD[Admiral(アドミラル)]から順次発艦している対潜装備仕様のspec2だ。

 

だがまだ機体底部に1発抱えるのでやっとな大きさで、機動力もある程度減じてしまう。

それを護衛するのが1機の震電であり、鈍重な的になってしまったspec2を要人警護の如く守り抜く。

 

「投下! 投下!」

 

貴重な1発、底部に増設したアームが魚雷を離し亜空間に潜っていく。

パイロットは震電に取り付けた亜空間ソナーで何もない空間をスキャンすると、次元震が感じ取れた。

spec2の亜空間魚雷はいい仕事をしている、護衛をした甲斐がある。

 

「亜空間ソナー感2、友軍魚雷、魚雷航走中。ガト軍潜航艦1、真っ直ぐ突き進んでいます」

 

「潜航艦に動きあり、回避行動へ移行した模様」

 

「動きが遅ぇ。ガミラスの潜航艦とは違うな」

 

刹那、まるで海底火山の噴火のように次元境界面が沸き立った。

亜空間内部からの急激な次元圧が境界面を揺らし、一時的に次元境界面に穴を開けたのだ。

 

そして遠ざかっていく次元震__亜空間ソナーが捉える音は沈降していく物体を捉え、また1隻の撃沈を確認した。

 

 

「クソッ……大した性能はないくせに数だけは多いな。タカオはどうだ?」

 

「4隻目の損害を確認。こちらの対処能力を超えています!」

 

「数の暴力で跳躍封鎖を潰すつもりだな」

 

ガトランティスには、カラクルム級を万単位で揃えられる生産力があると推測されている。

それは思ったよりもずっと正しく、現に本隊が20万隻を超えている。

その生産力があれば、建造にかなりのコストと手間がかかる次元潜航艦をダース単位で揃えることも不可能ではないのだろう。

 

尤も、今この宙域に潜るガトランティス製潜航艦は浮上不可能だが。

 

「重力場の乱れを検知!!」

 

「跳躍封鎖が効いているのに飛ぶのか……ッ超巨大戦艦と同じ手法か! 哨戒網の全ての機体に通達! 艦隊規模の跳躍を感知! 来るぞ!」

 

その瞬間、空間が大きく軋みを上げた。

ワームホールを介さない異常なワープは、空間丸ごと入れ替える手法を用いた恐ろしく効率の悪い手法の筈。

しかしワームホール型ワープを封じられたこの宙域では唯一の跳躍手段であり、ガトランティスが持つ奇襲の手札だ。

 

「敵艦隊の出現を確認! 超巨大空母2、通常空母4、カラクルム多数!」

 

全長1240m、AAAWunderの半分と言われれば「何だその程度か」と勘違いする事だろう。

しかし全長1240mを丸ごと空母甲板として扱うその超巨大空母はその対潜哨戒網を潰すために意図的に転移させられた艦隊であり、砲戦より対潜に力を傾けた彼らでは、その猛攻に耐える事はできないだろう。

 

「クソったれがッ!!!」

 

その大艦隊が、対潜哨戒網を押し潰す為に進撃を始めた。

 

 

 

___________

 

 

 

第3防衛艦隊

旗艦ナガト型ビスマルクAMD[Ptolemy]

 

 

「これが狙いか……ッ!!」

 

ネルソンはアームレストを力強く叩いた。

敵の狙いはタカオ型の排除による跳躍封鎖の解除ではない。

 

対潜哨戒に駆り出された航空機の排除による航空戦力及び戦術機への大打撃だった。

 

「I401は!?」

 

「土星天王星間で浮上しました。可潜艦ですから長く潜れません。指示を得られない時の再浮上はあまりにも危険すぎますからね。UX級は現在亜空間下で緊急待機中、以後状況に応じて潜航下

魚雷攻撃を敢行するとの事です」

 

「回れるのはウチと、太陽系駐留艦隊と、第4,6,8防衛艦隊」

 

「特砲艦隊もいけます。既に、跳躍封鎖が破られた部分を使い緊急ワープに入るとの事です」

 

「ガリレオベルトから入電! 敵本隊の数が30%を割り込んだ事を受け、作戦中であったデウスーラ・エアレーズングも戦線に向かうとの事です!」

 

敵の作戦にのまれるな。

力には知恵を、そしてそれを実行できるだけの力をもって答えろ、そうネルソンは信じている。

まだこちらには待機させていた艦隊がいるのだ。

 

本隊の戦闘に対し背水の陣を取らずに温存したのはよかった。

なら今やるべき事は、戦場になる場所を蹂躙される前に片付けることだ。

 

 

 

「嘆きの海跳躍封鎖網の解除を進言する! 搭載艦は直ちに安全圏に移動し再編、土星木星間と木星火星間宙域に新たに構築する! 地球に繋げ!! 命令が下り次第解除して即時ワープだ!」

 

 

_______

 

 

 

地球

WILLE統合庁舎地下800m

 

 

「まさか跳躍封鎖を囮にされるとは……ッ!」

 

「ネルソン提督の進言は正しいです。このまま跳躍封鎖網を守る為に戦力を動員していたら、航空機どころか艦隊をすり減らしていました」

 

「敵の土俵で戦う所でしたな。長官」

 

「分かっている。残った嘆きの海タカオ型の跳躍封鎖隊形を全解除。直ちにワープに入り、進言通り土星木星間、木星火星間に置くんだ。本隊との戦闘は撤退戦へ移行。殿は第5に務めさせ、サバーニャを装備したAAAWunderを派遣する」

 

「遂に超兵器を始動させるとは……ッ」

 

超兵器___サバーニャを知る者はそう呼ぶ。

慣性制御では到底制し切れない過剰な加速と有人区画を潰した事で搭載できた大出力ビームジェネレーターから生まれる巨艦殺しの一撃。

 

人一人で多大な戦果を挙げられる可能性があり、同時に人類が持つにはまだ早い代物だ。

 

幸いなことに、制御系はピーキーの一言。

開発者以外はまともに操作できないと言わしめる欠陥兵器だが、今、開発者と兵器が同じ場所にある。

 

AAAWunderの新たなる力、それが吠えようとしていた。

 

 


 

 

 

第5防衛艦隊

旗艦 ナガト型アイアン・ブーメランAMD[Dainslave(ダインスレイヴ)]

 

「キツイ役回りですな」

 

「投げたら戻ってくるブーメラン、踏ん張りどころだ」

 

開戦前の昇進は何とも胸騒ぎを感じたが、アーノルド・クレッグ宙将は鋼の名のとおりに揺るがなかった。

第5護衛艦隊の現在の総数は171隻、時間断層で増産され平時の艦隊戦力102隻から190隻へと大幅に増えてはいたものの、度重なる戦闘ですり減らされていた。

 

このアイアンブーメランも無傷ではない。

貫通は許さなかったが、波動防壁を何度か貫かれVPSには被弾時の溶け痕が幾つも見られる。

本隊との戦闘が10時間以上も続き、疲弊の色も濃くなっている。

 

 

「だが、勝つ艦隊じゃなくてウチは負けない艦隊だ。第11番惑星を思い出せ! 動けないのに腹見せて撃ってたのはどこの誰だ!?」

 

「俺達だ!!」

 

「ビーム封じて実弾で殴ってたのはどこの誰だ!?」

 

「俺達だ!!」

 

「民間人守り抜いたのはどこの誰だ!!」

 

「俺達だ!!」

 

「残ってる撹乱幕もゼッフル弾頭も好きなだけくれてやれ!! 撤退戦始めるぞ! 機関上げろ! 防御優先で後退しながら1式弾とミサイルで殴ってやれ!!」

 

アイアンブーメランが雄叫びに包まれ、それに応え撹乱幕弾頭が一気に発射された。

辺り一面の宙域が激烈に帯電した粒子で満たされ、再び互いにビーム兵器が封じられた。

 

残った艦艇___有人遠隔合わせて171隻。

キルレシオ10:1の第2世代がここまですり減らされる地獄の戦場、ここを乗り切れば一旦おさらばだ。

 

「レーダーに感! 野郎、ビーム効かねぇからゴストーク級を回してきやがりました!」

 

「予想通りだ。さぁて、楽しい地獄の遠足の同行者が撃ってくれるぞ」

 

 

 

ズダァンッッッ!!!

 

 

 

電磁パルスを撒き散らし放たれた秒速6000㎞の弾頭がゴストーク級を穿ち抜き、コッキングレバーを引き薬莢型キャパシタを排莢した。

ナガト型ブリスベンAMD[Admiral]の甲板でバイポットを立て、中隊支援電磁投射砲を構える1機の震電___両足義足のパイロットがそこにいた。

 

 

『目標への着弾を確認。次弾装填』

 

 

ダリル・ローレンツ、ガミラス戦争で両足を失い歩兵としての道を断たれた彼は、今こうして震電で狙撃手としての道を往く。

類い稀なる長距離狙撃能力が中隊支援電磁投射砲で輝き、今では第5防衛艦隊所属機のなかでも名狙撃手となっている。

そして、狙撃手は彼だけではない。

 

フィッシャー・ネス、ショーン・ミタデラ、フーバー・アイスラ、ヨンム・カークス、ミハエル・ブラン、数多くの狙撃手がブリスベン甲板上に中隊支援電磁投射砲を並べ、そのバイザーを光らせている。

 

そして、その最上位に位置する特別な狙撃手、震電の特別なカスタム機「天穿(アマウガチ)」を搭乗機とし、秒速7000㎞の弾丸で全てを撃ち抜く特級のスナイパーがそこにいた。

 

 

ニール・ディランディ__成層圏の向こうまで狙い撃つ男(ロックオン・ストラトス)だ。

 

 

頭部、肩部に増設された高感度センサーが震電を超える索敵能力をもたらし、試製250ミリ中隊支援電磁投射砲の高威力に耐えるために腕部が強化された結果、一般的には欠陥兵器である高威力電磁投射砲を扱えるスペックを手に入れている。

 

そしてスポーツ射撃の経験を操縦に反映させるためにコックピットにライフル型コントローラが増設され、ニールはそのスコープに映る敵艦を捉えた。

 

 

「見えた……ッ!」

 

 

ズギャォンッッッ!!!

 

放たれた弾体は重力偏差による僅かなカーブを描き、スイングバイでさらに速度を上乗せしてアポカリクス級の艦橋を貫通した。

制御系統が集中する艦橋をもぎ取られた事で艦体から火の手が上がり、その爆発は周辺を固めるカラクルム級を巻き込む巨大な火球となった。

 

ブリスベンの甲板に大量のスナイパーが並び、バイポットで支えられた中隊支援電磁投射砲が砲身を数多の敵艦へ向き、コッキングレバーがその剛腕で引かれ____

 

 

ズダダダダダァンッッッ!!!

 

 

18機のスナイパーが放つ弾体がそのスコープに映る敵を穿いていった。

 

 

 

 

アイアン・ブーメランAMD[Dainslave(ダインスレイヴ)]

 

「ブリスベン狙撃中隊、砲撃を開始」

 

「ブリスベンを中心にし射線を開けろ。彼らの邪魔をせずに砲撃を続行、第1戦速で後退しつつ他艦隊のワープ完了まで持ちこたえるぞ」

 

「Yes, sir!」

 

スラスターを吹かし進路を変更、被弾面積の少ない真正面を向き前方の主砲3基を向けると力強い砲撃を放ち始める。

そしてゆっくりと後退、ミサイルはユキカゼ級の対空防御でしのぎつつ、波動防壁との2段重ねの防御態勢でしぶとく後退を続けていく。

 

撹乱幕を撒かれたガトランティス艦隊はゴストーク級を前に出す事を強要され、全身火薬庫のミサイル戦艦は実弾兵装で身を固めた第5防衛艦隊と狙撃中隊の餌食となる。

 

特にその艦首、ゴストーク級は2本の超巨大ミサイルを艦首に取り付けている。

それは一撃必殺の兵器だが、撃たれる前にこちらが撃つ事を徹底すれば兵器はただの弱点に変わる。

 

2度の第11番惑星防衛線、AAAWunderが遭遇した時の戦闘レポートでゴストーク級とカラクルム級は知りつくされている。

 

だから()()()()()がそろわない限りは無効武力だが、その条件が今揃おうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴストーク級、数およそ100!」

 

それは、「バカみたいな数」だ。

 

「こりゃもう艦隊というより災害だ。1隻でも多く誘爆させろ!」

 

「1式弾、榴散弾切替、撃て!」

 

 

ドゴォンッ!!!

 

 

旧大日本帝国海軍は、三式弾という対空砲弾を用いたとされている。

主砲から放ち敵航空機編隊の目の前で炸裂させ、機体を炎上させる榴散弾の1種とされている。

 

旧Wunderは22世紀暮れの力で主に宇宙での対艦砲撃用として同名の砲弾が生み出され、波動エンジンに頼らない攻撃能力としてイスカンダル航海を支えた。

 

そして、何が起こったかその中間を狙った攻撃がこの1式弾に与えられた。

 

艦隊中心での起爆を用いた榴散弾__散弾攻撃だ。

 

 

適切な起爆タイミングを与えられた1式弾が艦隊最奥で起爆し、離散した破片がゴストーク級のミサイルに飛来し破孔を生み、誘爆の機会を生み出した。

さらに______

 

「エアーズロックに下令! ゼッフル粒子弾頭撃て!」

 

ナガト級エアーズロックから放たれたゼッフル粒子弾頭が、動けないガトランティス全軍へと飛び掛かる。

 

「弾頭、敵艦隊中央到達! 炸裂を確認!」

 

「粒子散布確認! 起爆したら撹乱幕も焼損しますが、宜しいんですね!?」

 

「どうせ逃げ切り勝ち狙いだ。やりたい事やってしまうぞ!」

 

まるでダイヤモンドダストのように静かな光の粒子が降り注ぐ。

宇宙に雪___なんて幻はない。

これは危険極まりない粒子であり、WILLEでも取扱注意の周知を受ける程だ。

 

第2防衛艦隊のホッパーは嬉々として使っていたが、本来喜んで使うようなものではないのだ。

 

「1式撃て! 点火だ!」

 

火種が放たれ、ひたすら前進を続けるガトランティス艦隊が火の海に包まれた。

 

いや、宇宙で火の海というのは違う___激烈な反応を示し、機雷でもミサイルでも実体弾でも艦艇でも誘爆を引き起こす致死の嵐だ。

 

既にエネルギーの漏出や火災を起こしていた艦艇には致命的な環境変化であり、小さな傷だと思っていた部分ですさまじい爆発が発生し、隊列が乱れる艦艇群はドミノ倒しの如く壊滅していった。

 

 

「ホッパーが喜ぶわけだ。奴らどうだ!?」

 

「止まる事を知らんようですぜ! 前を潰しても後続がやってきます! というか防壁無ければ今頃死んでますね!?」

 

「イスカンダルと設計局に感謝せんとな! どんどん撃っていけ! バケモノが来てくれるまで持ちこたえろよ!」

 

後退を続けながら苛烈な砲火をお見舞いし、2倍以上の体躯のカラクルム級と火薬庫の如きゴストーク級を相手にして優位に立てている。

だがこちらも損害を受けている。

 

ナガト、タカオ型は兎も角、全長の短さから相対的に機関出力に劣るユキカゼ級は防壁をやはり貫通され、VPS装甲で何とか受ける状態に入った。

如何に生存性が高くとも、これだけの艦隊の一斉砲火を受ければ撃沈が出かねない。

 

そして、つい先ほど覚悟を決めて使ったゼッフル粒子の反応により撹乱幕が焼損し始めているのだ。

さすがに一気にすべてが消えるわけではないが、時間経過で撹乱幕が消えているのが観測で確認できている。

 

これは賭けだ。

一騎当千のバケモノが来るのが先か、完全に焼損し切ってビーム兵器の解禁がバレるのが先か。

 

悟られないようにひたすら実弾兵装を使い続けているが、実弾である以上限りがある。

ビーム兵器が使用可能になりつつあることを誤魔化すには少々心もとない残弾だが、補給が見込めない戦場で民間人を守り抜いた経験が、彼らに折れない心を与えている。

 

 

 

「ワラムンガ2被弾! キブロン2小破!」

 

「エアーズロック、装甲を貫通されました!」

 

「ブリスベンのいる中心に控えさせろ! ダメコンと応急修理に集中するように伝えろ!」

 

「了解ッ!」

 

遂に報告に上がるような損害が現れた。

遠隔操作艦は兎も角有人艦も被弾を受け、一撃爆散を決して許さない第2世代であっても無視できないダメージだ。

 

「まだか!?」

 

「まだですって!」

 

クレッグの怒鳴りに通信長が怒鳴りで返し、防壁への被弾で響く衝撃に歯を食いしばる。

ひときわ大きい衝撃が艦内に走り、ついにアイアン・ブーメラン艦内に警報音が鳴り響いた。

 

「抜かれました! 第21区画被弾、隔壁閉鎖!!」

 

「クソったれがぁッ!! ダインスレイヴ過負荷、撃て!!」

 

過負荷駆動で生まれた秒速1万2000キロの暴力が放たれ、込められた散弾が敵艦隊の真正面に襲い掛かり小規模な爆発が次々に生まれた。

1式と同じく艦隊全体へのダメージを狙った一撃で、脆弱な艦橋部やアンテナ、センサー部が亜光速で飛ぶ破片でズタズタに引き裂かれて目と耳、頭脳が奪われていく。

 

代償も大きく、過負荷で火花を散らすダインスレイヴを爆砕ボルトで一気に切り離し、増設されたロケットモーターで艦隊から離れると自爆した。

 

「ダインスレイヴ投棄! 供給管閉鎖!」

 

「主砲一式弾残りわずかです!」

 

「魚雷がまだあるだろうが! 撃ち尽くしまえ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長! 来ました!!」

 

 

その瞬間、ガトランティス艦隊がショックカノンの嵐に横殴りにされた。

撹乱幕が少々残っているとはいえその影響を無視できる程に強力な一撃がカラクルム、ゴストーク級多数に連打を決め、一気に40隻以上が爆散した。

 

 

「レーダーに感! 未識別の艦影30を確認! 友軍コードを出しています!」

 

「一部艦影確認、出します!」

 

船務長の操作で大型モニターにその艦影が投影され、ガミラス戦争を知るモノは驚きから口が開いたままとなった。

 

「何だこれは?!」

 

「イソカゼ型なのか……ッ!?」

 

『AAAWunderより、アイアン・ブーメラン旗下第5防衛艦隊へ。これより貴艦隊の撤退援護を行う!』

 

「遅ぇんだよ。まぁ誰も沈んでねぇけどなぁ!」

 

嘗て地球を、地球人類を守った奇跡の船AAAWunder。

それが人類を守る為の戦いに再び参戦し、その力を持ってまずは必死に耐え抜いた第5防衛艦隊を救った。

 

ナガト型のおよそ10倍、10倍の体躯の超巨大戦艦に、クレッグは帽を振った。

 

 

「頼むぞバケモノ戦艦!!」

 

 

 

_________

 

 

 

 

 

(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいッ!! やっぱり1秒でも気を抜いたらミスる!!)

 

(テンパるな。でもコレやっぱりキツイ!!)

 

何十回と練習と調整を繰り返して、コレだ。

1人15隻、半自動操縦にして飛ぶ方向と射撃タイミングだけの指示を出すだけに簡略化はしたとはいえ、それでも人類史上初の装備を使うには無理をしていた。

 

これを動かせばこっちが詰まり、こっちが詰まればあっちも詰まる。

練習の時はこれの繰り返しで、2人仲良く自滅を繰り返した。

 

それに見かねたレイが「2人の心を1つにする事」と言わなければ、今頃80mの金属の塊をノロノロと動かす事となっていただろう。

 

 

心の声を聴き、言葉にしなくても相手を理解して動く。

互いが互いの拠り所であり、この世で最も信頼している相手がペアだ。

 

 

 

まさしく、「瞬間、心、重ねて」だ。

 

 

 

何とか形になったこの嵐のような攻撃は遂には敵艦隊中枢に飛び込ませてもギリギリ何とかなるレベルにまで上り詰め、ギリギリのオペレーションで初投入で戦果を挙げたのだ。

 

思えば亜空間回廊海戦でのAAAWunder覚醒を通し、2人の魂は欠損が驚くほど少なく強靭となり互いの魂の欠片を持つ事となっていた。

 

 

2人はすっかり忘れていたのだ、そのようなイカれた事が起こっていた事を。

 

 

副作用とも呼ぶべき「睡眠の不要」が日常になり過ぎて、業務に圧殺されかけ、頭の片隅にぽつんと置かれたままだったそれを2年ぶりに拾上げた時には溜息すら出た。

 

1番大事な事を忘れていた、と。

互いに心をシンクロできるなら、息を完全に合わせる事くらい分けないんじゃないかと。

 

 

 

「睦月さん! 2時、11時方向!!」

 

「「応ッ!!」」

 

一心同体、魂のツインドライヴ。

最早誰にも真似できない究極の兵器、機動砲台艦群は元来の高機動性と無人化による火力向上を存分に振るい至近距離でのVSPSC___一撃必殺に等しいショックカノンを叩きつけていく。

 

視線誘導でターゲットをロックオンし、指先の動きで進路を定め、極限の集中力で底上げされた精度で敵の間を縫うように飛び確実に落としていく。

 

1隻1隻にハルナとリクの意思が乗り、まるで有人艦のような生きているような軌道を描く。

砲火の中をくぐり抜け、旧磯風型が持ちえなかった波動防壁で自らを守り、さらにヤタノカガミの応用技術で生まれた連携波動防壁を第5防衛艦隊の目の前に展開し、極厚の防壁でガトランティスの砲火をシャットアウトした。

 

 

「「行ってください! ひと通り暴れてからこっちも逃げますから!!」」

 

((よし5隻ずつオートにしたから1人10隻! ほんの少し余裕ができた!))

 

とは言うが、余裕なんて欠片もない。

古代の指示であちこちに改イソカゼを飛ばしていたが、実戦でやはり輝くのは艦長代理経験のある優秀な指揮官(古代)だ。

 

自分はあくまで武装の操作役で、全体を見る目は古代が上。

指揮者になってもらえないかと頼み込んだが、いい選択だったようだ。

 

 

「島! 進路を敵艦隊の真正面に付けてくれ! お2人は防御を!」

 

「「10隻あればいける! 残りは増設補機にする!」」

 

「イ6から10、16から20を手放せ。こちらで着艦させる」

 

真田が改イソカゼ6から10番艦、16から20番艦を預かるとコンソールを叩き制御を掌握、オートに切り替えてAAAWunder主翼のラックに速やかに着艦させた。

 

続けて改イソカゼの各所に波動エネルギー伝導管が接続され、あっという間にAAAWunderの増設補機となった。

 

だがただの補助エンジンではない。

コスモタービンでは足元にも及ばない、規模は小さいが間違いなく波動エンジンだ。

 

「ターゲットスコープオープン! 改イソカゼで防御を固め、急速充填! 最適な発射タイミングを見極め

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波動砲を敵艦隊に直撃させるッ!!」

 

今までとは違う。

白色彗星での発砲はあくまで「敵艦が巻き込まれた」にすぎないが、今回は名実共に波動砲で艦隊攻撃を行うのだ。

 

安保理が対艦隊使用を承認しているとはいえ、これまで対物仕様に留めてきたAAAWunderの波動砲を遂に艦隊に向けることが、古代の両肩に重くのしかかる。

 

しかし____

 

 

 

(これは俺だけの引き金じゃない。波動砲の引き金は皆で撃つ為の物だ!!)

 

 

 

人類で最初にこの引き金を引いたのは古代だった。

あれは木星浮遊大陸への波動砲試射だった。

 

次は次元断層脱出のため、その次はバラン星宙域突破のため。

 

 

(『命を救う戦闘艦として』!!)

 

 

バレラスの空でハルナとリクが祈りを叫び、AAAWunderの再覚醒と共に引き金を引いた。

 

 

(私がお母さんを助ける……ッ!)

 

 

崩壊する惑星シュトラバーゼから母を救い出すため、14歳の少女__睦月・レイ・綾波が引き金を引いた。

 

 

白色彗星から逃れるために、生き抜くために引き金を引いた。

 

 

そして、地球人類が生き抜くため、その意思を貫き通す為に引き金を引く。

 

 

 

「波動砲への回路、開け!」

 

「波動砲への回路、開きます! 主翼上部改イソカゼからのエネルギー流入を確認! 充填速度向上!」

 

「予備回路接続、主翼エネルギーラインからの供給良好」

 

「非常弁、全閉鎖。両舷強制注入機作動」

 

「安全装置解除」

 

手が離せない2人に代わり古代、真田、南部がキーを回し、最終安全装置が解除された。

解除を示すウィンドウが表示され、波動砲コントローラがせり上がった。

 

「タキオン粒子圧力上昇、20、88、エネルギー充填120%!」

 

「レーダーに感、敵大型ミサイル接近、数20!」

 

「「真田さん充填もういいですよね!?」」

 

「飛ばすぞ!」

 

主翼からパージされた改イソカゼが再び2人の制御下に戻り、再び生きているかのような軌道を描き縦横無尽に宙を駆ける。

波動砲の充填を感知したガトランティスが()()()なAAAWunderに攻撃を仕掛けたつもりなのだろうが、改イソカゼを従わせる今はその無防備さから解き放たれている。

 

波動防壁、主砲、ミサイルの全てを充填中でも行使する事ができ、努力と根性で操作___操演するハルナとリクが集中を保てる限りはいかなる状況であっても砲火を放つ事ができる。

 

「照準固定!」

 

カラクルム級からの砲火が改イソカゼの連携波動防壁を叩き続ける。

その出力のほぼ全てを投じ重力アンカーでどっしりと構え、梃子でも動かぬと言わんばかりに防壁を展開し続ける改イソカゼは、前身となった第1世代艦磯風型の無念を晴らす様に立ち向かい続ける。

 

 

そして、ヤマト作戦の出で立ちと奇しくも同じその姿。

まるで、果たせなかった作戦をやり直すかのようだ。

 

 

「敵艦隊、陣形を変更! 一直線に並びエネルギー反応が上昇しています!」

 

「陣形砲撃……ッ! マズイ、敵の方が速いぞ!!」

 

「べらぼうめェおとといきやがれェッ!!」

 

マリが叫び、キーボードをたたきツインドライヴのエネルギーを別箇所に注ぎ始めた。

 

「ミラーリング用意ッ!!」

 

ツインドライヴがさらに雄叫びを上げ、中央船体アダムス組織が青白い光と共に励起を始めた。

重力子と斥力子が怒涛の勢いで量子跳躍を続け、空間が大きく歪みワームホールが世界を押しのけ始める。

 

その数なんと16。

横一列に並ぶ破滅の光___光滅砲の斉射を防ぎきるには全力を投じねばならない。

その為にはツインドライヴの()1()()()()()()()()()は当然の事、波動砲を維持しながらミラーリングを起動させねばならない。

 

どちらかが途切れれば、あの黄緑の光に焼き殺されるだろう。

 

 

「出力280%! 冷却怠るな!!」

 

『分かっていますが! これ以上回したら機関がオーバーブーストしますよ!!』

 

「なら今できる最大出力で回し続けるんじゃ!」

 

徐々に世界を押しのけるワームホールはまだ小さく、大きく無理をしている事が分かる。

拡散波動砲を受け止めた時はミラーリングシステムに注力していたから発動できたものの、大陸を消し飛ばす兵器との同時運用は無茶が過ぎる。

 

 

「やはりこれ以上の出力は……ッ!」

 

 

第1次リミッターは解除した。

最終リミッター解除で299%まで上げる事ができるが、待っているのは裂ける宙___エネルギーを求め続けたツインドライヴが余剰次元を展開尽くし、隣接する宇宙へと手をかけた結果の空間裂傷だ。

 

 

既に波動エンジンの振動がこの戦闘艦橋にも響いている。

500m以上離れている筈のここにだ。

エンジンも限界まで稼働している、これ以上に出力を上げる方法など_____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆様、大変お待たせしました』

 

ジャックされたモニターに映ったのは、スターシャだった。

やや薄暗い神殿のような場所をバックに、ユリーシャとサーシャも映っていた。

 

「どこからの通信だ!?」

 

「イスカンダルです! でもどうやって……ッ?」

 

通信要請を受けた痕跡も無く、唐突にその姿が現れた。

まるで通信ジャックの様だ。

 

「……波動コアだ」

 

確信を得た声色で、真田がそう呟いた。

 

「スターシャさん、波動コアは起動キーでもあり知性でもあり、ある種の通信機能を持ったコンピュータ。違いますか?」

 

『……ええ、こうして貴方方に呼び掛ける事もできます。とはいえ、あまり時間もなさそうですね』

 

「「生きるか死ぬかの瀬戸際です!!」」

 

必死に操演し音を上げかけているハルナとリクの状況に理解を示し、スターシャは話しを一旦繰り上げた。

 

『分かりました。手身近にお伝えします。今から、波動コアの封印を解き、真の力を貴方達とアベルトに託します』




改イソカゼは、所謂クソデカいビットステイヴです。
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