宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

147 / 150
Calamity 12 -閃光のアスカ-

大気圏内でなくて良かったとつくづく思う。

そう思ったのはこの砲撃を見てしまったからだ。

 

 

「敵構造体、発砲を確認!!」

 

 

暴風、暴流、破滅の光、射線に立てばあの世行き。

荷電粒子と思われたその光は高エネルギープラズマの奔流であり、太陽フレアを超えられる熱量を抱えたそれは遠隔操作艦の波動防壁を3秒で叩き割った。

 

そこからはあっという間だった。

 

防壁を破ればさらに砲撃を加え、艦隊を大きく抉り飛ばし瞬く間に爆沈させるその手際は生物というよりも兵器だ。

いや、使徒という超常生物を兵器として扱っている以上、兵器と言っても差し支えない事だろう。

 

放たれるミサイルはことごとくATフィールドに阻まれ、侵食弾頭は特殊共鳴波を放たれる前に正確無比な狙撃で叩き落とされ、主砲斉射も当然防がれる。

 

 

陽電子砲で破れたあの使徒はどこにいったのだろうか。

 

 

ちょっとした広場くらいのサイズはどこにいったのだろうか。

 

 

縦横高さ3キロの正八面体で火焔直撃砲並みの砲撃性能で連射も可能とは聞いてない。

 

 

 

「バケモンじゃん!?」

 

それは、ブリーフィングに呼び出されていたアスカに乱暴に結論付けられるのも納得のスペックだ。

 

 

 

________

 

 

 

月面

タブハベース

プロジェクト303e特別チーム

 

 

『VOB取付急げ!』

 

『OSとの接続は?!』

 

『同時並行だ! 組み上がり次第戦線投入だ!』

 

『外装波動エンジン取付完了しました! 緊急用爆砕ボルト、スタンバイ状態で固定よし!』

 

『マゴロックス懸架搬送艦到着! 射出ハッチからの搬入入ります!』

 

『ATFエリミネーターの許可下りたか!?』

 

『降りてます! 断層工廠から搬送中です!』

 

『ポジトロンライフル来ました!』

 

 

怒号が飛び交い無重力を飛び回る作業員を見下ろすのは、四ツ目の巨人___エヴァンゲリオン2号機だ。

Type-nullを大幅な改装を施しアスカ専用に調整、戦術機である新2号機から操作感を移植してさらに最適化、慣性制御とLCL衝撃吸収で超高速に耐え切り、改イソカゼと同じ波動エンジンを背負い半永久稼働を保証する。

 

全高80mに施せる限界まで改装を施されたこの「神様擬き」は現状バケモノレベル層のパイロット「式波・アスカ・ラングレー」に委ねられることとなったのだが、その経緯はこうだ。

 

まず、アスカは「イザナミ」への搭乗資格を有している。

一騎当千はもちろん、その「死神に嫌われる」レベルの生存能力が大きく評価されている。

 

次に、戦績というわけではないが「ある種の願い」を狙って選ばれている。

EURO2、改2号機、新2号機と、ここまで何故か「2」という数字に拘り続け、こうしてこのエヴァにも2号機と名を与えている。

 

世界は違えどアスカはアスカ、やはり赤色と「2」に強く惹き付けられるのだろう。

 

「メルダ、アンタの機体借りるわよ」

 

『せめて改造する前に言え。装甲も中のシステムまで全面改装など聞いてないぞ』

 

「アンタが今から地球に飛んでくる訳にもいかないでしょ。壊したりしないから水に流してくれない?」

 

『101部隊解散以降、その機体は宙ずりになっていたからな。乗り手が現れたのは喜ぶべきかもしれんが、分かっているだろうな? 機体とパイロットのシンクロでダメージが……』

 

「腕ちぎれたら腕がバカ痛いってことでしょ? そうならないように立ち回るわよ。メルダやレイみたいにATフィールド使えないしそもそも練習時間もなかったんだから、当たらなければどうと言うことはないわよ」

 

『それはそうだが……とにかく、まともな戦い方をしろ。お前の戦術機とは違うんだぞ?』

 

「ハイハイ」

 

通信を切ると、例の「バケモノ」の推定スペックがモニターに表示されていた。

4次元立体を3次元に投影した影であり、実際の姿は4次元立方体に近いというのが統合庁舎の推測だ。

そしてその巨体を巨大加速器として使用することで高エネルギープラズマを生み出し、亜光速でプラズマ砲を直撃させる、というのが遠隔操作艦1隻の尊い犠牲で判明した事実だ。

 

「良いわね。貴方にやってもらうのはこの使徒の撃滅、VOBを用いた超光速航行とエリミネーターを用いたATフィールドの強制突破よ」

 

「このデカイ槍ね?」

 

「本来は中和という手段を用いるけど、それが経験上できるレイの負担を減らすためなのよ」

 

「まぁ私が使うことになったけど。別に鈍器でブン回してもいいのよね?」

 

「呆れるほどに頑丈だから、構わないわ」

 

モニターに映されたのは、エヴァサイズの槍だ。

槍先か螺旋状にねじれ3本に解れているその見た目はあのロンギヌスを想起させるが、その色は真反対の青色。

おまけに石突きから頑丈はケーブルが生えていて、2号機背部の外装式波動エンジンに繋がっている。

 

これは、空間の相転移現象と思われるATフィールドを打ち破る為の策だ。

本来であれば逆位相のATフィールドを用いるのが最適解だが、そのような高度な事は訓練を受けていないアスカには不可能だ。

 

 

その空間相転移に打ち破れる鍵は、次元波動理論だ。

 

 

6次元の膜面の振動で莫大なエネルギーを取り出す波動エンジン、それを射線上で行い何もかも吹き飛ばす波動砲、実弾光学問わずの鉄壁の防御を誇る波動防壁、宇宙を裂きかねないツインドライヴ。

 

それだけに終わらず、地球に残ったマッド(HENTAI)が考案したのがこれだ。

 

 

 

 

一点集中で波動砲並みにエネルギーぶつけて(小細工無しパワーゴリ押しで)破ればいいじゃねーか、と。

 

 

 

 

槍に仕込まれたマイクロ波動炉心に波動エネルギーを注入、6次元の膜面を展開し破綻寸前まで振動させ、波動砲クラスのエネルギーを穂先に集める。

如何に空間相転移と言えど、波動砲並みのエネルギーをぶつけられれば破れるのは目に見えている。

 

 

 

そして待っているのは、亜音速で振るわれる槍の一突きだ。

 

 

 

「で、それに何でマリを呼びつけたの?」

 

「オートじゃないのよ。試作品だから必ずマニュアル制御が必要でアスカにやらせるわけにはいかないわよね?」

 

「そりゃそーだけど。で、当の本人は?」

 

「例の話を持ち出したからハルナさんに吹っ飛ばされて今寝かされてるわ」

 

「いいことじゃない? 帰還してから最近までは、そんなこと気にする余裕なんてなかったでしょ、あの人たち。新居捨てて、撃たれて欠損、ストレス過多。勢いでヤっちゃうくらい追い詰められてたんだから」

 

「……え?」

 

「本人割と反省してた。もうさっさと使徒とかガトランティスとかぶっ潰して何が何でも退役して、あの三人には普通に暮らしてもらお。マリ叩き起こしてくる」

 

「お願いね」

 

 

____________

 

 

 

マリを寝かせている長椅子を見つけると、アスカは頬を引っ張って無理矢理起こした。

 

「知らない天井と長椅子にゃ!」

 

「バカじゃないの初めて来るとこだからそりゃそーでしょ。はい着る」

 

ハルナ用のプラグスーツを押し付けるとマリは微妙な顔をしたが、思ったものと違い首を傾げた。

テレザートでの実戦で使った正規品ではなく、シンクロテスト用で造られたピンク色バージョンだったのだ。

 

「実戦用だと胸周り内蔵機器だらけだからアンタ入らないでしょ。ハルナさん、アンタを駆逐艦に放り込む時申し訳なさそうにテスト用のピンクも入れてたから、それなら押し込めば何とかなるでしょ。はいブリーフィングやるから博士んとこ行くわよ」

 

「……」

 

アスカの圧に押されて艦内服を渋々脱ぐと、ハルナ用のプラグスーツに袖を通した。

身長は同じくらいだが専用ではないため、完全には身体へ合わない。それでも手首のスイッチを押すと、プラグスーツは収縮しながら身体へ密着していく。

 

その感触に観念したように天井を仰ぎ、マリはぽつりと漏らした。

 

「ハルナっち、ゴメンニャ」

 

「生還してから言いなさい」

 

そのまま全身ピンクのマリを連れるアスカは全身赤。

所々に差し色の白とダークグレーが入っているが、トレードカラーの主張が大きい如何にも彼女らしいプラグスーツだ。

 

「寝起きみたいね。体系弄るとロクな事ないわよ。マリ、ATFエリミネーターの概要は?」

 

「流石に帰還中に話来ましたからさらっと見ましたよ。トンデモ兵器なことには変わりないんですけどね」

 

「波動炉心を仕込んだ槍で波動砲と同等のエネルギーを瞬時に生み出してパワーで割る。エリミネーターというよりクラッシャーね。ただし試作品で完全マニュアル、アスカに同時並行でやらせるのは流石に無理があるから、そこで貴方」

 

「戦乙女のお供をするってことですね博士」

 

「そういうこと。今も正八面体との遅滞戦闘で少ないけど被害が出ているから、早めに行くわよ。戦域到達まではVOBで飛ばすから」

 

「VOB?」

 

「ヴァンガードオーバードブースト。切り離し前提の使い捨て推進器よ。普通のワープブースターでは出力が足りないから、同調させて4基並列にしたもの。これでエヴァ並みの質量を押し出してワープもさせられるわ」

 

「うへぇ。そのワープ管制も私持ち?」

 

「エヴァの操縦以外は全部マリね。時間よ、かかって頂戴」

 

「らーじゃ」

 

 

____________

 

 

 

リツコから手渡された思考遮断ヘルメットを被ると、エントリープラグに乗り込み後部座席に着いた。

如何にも外付け品なやや頼りない座席だが、アスカの操縦と「ブッ飛ばされても平気だった」自分の幸運に任せようと切り替えてエントリーを待った。

 

「マリ、アンタ戦場に出るの怖くないの? 初でしょ?」

 

「全力グーパンハルナっちに比べりゃね」

 

肩を竦め、ヘルメットの内側で苦笑する。

 

「レイちゃんがゲンドウ君に取られた時なんか、マジでゲンドウ君をぶっ殺しそうな目してたし。あれ見た後じゃ、戦場の方がまんだ理屈が通るにゃ」

 

「……やっぱ、レイだね」

 

「レイちゃんいるようになってから色々優先順位が変わったからねぇ。無理しようとしたらレイちゃんがハルナっちとリっくん止めにかかるし、『自分大事に』より『自分よりレイちゃん大事』になってるし、そもそもハルナっちとリっくんはレイちゃんに逆らえないし」

 

「あーやめやめ。さっさと終わらせないとダメだぁーって膨れ上がってくるじゃん。博士エントリー開始!」

 

『LCL注入開始。主機起動して』

 

「あいさ。背部波動エンジン起動!」

 

背部コネクタに接続された樽状の機関___外装式波動エンジンが唸り始め、2号機に電力が満ち始めるのが分かる。

それを慎重に上げていくマリの手腕は素晴らしく、機関科ではないが技術科として恥ずかしくない技量だ。

 

足元から水位を上げるLCLにぎょっとするが、肺に溜まっていた空気を一気に吐き出して満たすと、やや息苦しそうに顔を顰めた。

 

『インターフェース接続、A10神経接続よし、思考形態は?』

 

「日本語! ドイツ語最近使ってないから!」

 

『日本語を基礎原則にするわ。リスト1504までオールクリア、シンクロ率、40.1%』

 

「どうなん、それ?」

 

『少し鈍いくらいね。操縦に問題が出るレベルじゃないわ』

 

リツコはデータを確認しながら続ける。

 

『アスカ。多少は違和感もあるでしょうし、不信感もあるでしょうけど……もう少しこの機体を信頼しなさい』

 

「……」

 

『その2号機は、友人が命を預けてきた機体よ』

 

『メルダはその機体で戦場を生き延びた。整備班も限界まで調整している。だから貴方は、貴方の仕事だけをしなさい』

 

アスカは小さく鼻を鳴らした。

 

「……言われなくても、やるわよ」

 

『……その意気ね。発進準備』

 

2号機を固定していた装置が外されていき、ケーブル、コネクタ、拘束具が重々しく動き始める。

もとが10年以上放置されていた施設で、何とか稼働状態に持ち込んだのだ。

だから多少の劣化は仕方がない、今はただ動けばいいのだ。

 

さらに2号機頭上のハッチが解放されていき、電磁カタパルトが月面から生え始めた。

主動力代わりになっている全領域汎用整備艦からの電力供給を受けて強烈なローレンツ力を生み出し始め、格納庫内の電位が上昇していく。

 

 

『……アスカ、一応確認するけど』

 

「何よ」

 

『この機体、取り敢えずエヴァ2号機って呼んでるけど正式名まだ決めれてないのよ。申告が遅れたから。で、どうする? 特に思いつかないならそれっぽい名前で申告するけど』

 

 

「名前……名前ね……極東事変の時は新2号機にしたから______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エヴァ2号機。コールサイン、ヴァルキュリアで」

 

一瞬、管制室が静まり返る。

 

リツコは端末へ入力すると、小さく頷いた。

 

『……登録完了。コールサイン、ヴァルキュリア。半神にも等しい存在であるエヴァには、割と会う名前ね』

 

「でしょ?」

 

アスカは口元だけで笑う。

 

『ええ。生きて帰ってきなさい、ヴァルキュリア。先にヴァルハラ宮殿に行ったら叱るわよ』

 

「博士~、景気よく蹴飛ばしてくださいな」

 

リツコは小さく息を吐いた。

 

『……分かった、射出するわ。LCLと慣性制御があるとはいえ完全じゃないの。衝撃には気を付けなさい』

 

オペレーターが一斉に復唱する。

 

『カタパルト充電率100%』

 

『VOB全基スタンバイ』

 

『外装波動エンジン定格出力到達』

 

『慣性制御正常』

 

『エントリープラグ固定確認、射線クリア』

 

リツコは静かに頷く。

 

『エヴァ2号機____発進ッ!!』

 

瞬間、月面カタパルトが白く閃いた。

ローレンツ力が八十メートルの巨体を叩き出し、背部の4基のVOBが一拍遅れて咆哮する。

轟音は真空には響かない___だが、噴き出した青白い推進光だけが月面を薙ぎ払い、ヴァルキュリアは一直線に宇宙へと撃ち放たれた。

 

「ッ……!」

 

全身へ押し寄せる猛烈な加速度。

LCLと慣性制御が衝撃を殺し切る前に身体がシートへ押し付けられる。

その圧力を笑うように、アスカは操縦桿を握り締めた。

 

「――上等ッ!」

 

やがて2号機は月重力圏から解き放たれ、地球圏を脱した。

加速度に僅かずつ体が慣れてきたマリは地球との回線を繋ぎ、ワープ先を設定した。

ワープ先は土星沖、あの正八面体___使徒が暴威を振るう地獄の宙域だ。

 

「VOB出力上昇、ワープ先選定よし、管制も受け取ったからヨシ!」

 

「イイ仕事! エヴァ2号機、ワープ!!」

 

インダクションレバーを高機動モードに展開すると、すかさず引き金を引いた。

その瞬間VOBから眩い水色の光が吹き出し、星々の光が1拍遅れた。

 

光が引き延ばされる___光速の域に足を踏み込みアスカの身体に妙な負荷がかかり始める。

慣性制御とLCLによる耐Gがかかっていても、エヴァ本体にかかる負荷はシンクロ率に応じた分でパイロットにフィードバックされる。

 

EURO2、改2号機、新2号機で体感した超高機動、それをまた上回る負荷が___エヴァの感じる負荷が大きく体にのしかかり歯を食いしばる。

 

 

「ブッ飛ばせェ姫!!」

 

 

「行っっっっけェェェェェェェッ!!!」

 

 

エヴァ2号機____アスカとマリは、戦場へ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

 

巻きあがるガスは砂煙の様に視界を覆い始め、有視界距離での戦闘に支障が現れ始めた。

特に戦術機、戦闘機は不可視波長とレーダー頼りの戦闘にシフトするしかなく、至近距離での攻撃は熟練でも無ければ不可能となった。

 

中隊支援砲を構えた震電、天穿、面制圧のために大量のミサイルポッドを装備したイザナミ、ファルコンspec2、彼ら彼女らが波動掘削弾でカラクルム級の群れを叩き潰していく。

 

さらにナガト型、タカオ型、ユキカゼ型の各艦は波動防壁を最大出力、機関に多少の無理を強いてでも最大の攻撃力と最大の防御力を両立させ、VSPST5速の貫通特化を只管放ちカラクルムを射抜いていく。

 

しかし、そちらばかりに目を向ければ、使徒からの超高出力砲撃がやってくる。

 

事実これで遠隔操作艦艇が6隻消し飛んだ。

 

 

だが、攻撃を受けにくくする策はある。

 

 

『第203、204火力投射艦隊はガトランティスの事は一旦忘れろ。使徒に反撃の瞬間を与えるな』

 

『了解!』

 

波動掘削弾、荷電粒子砲、実体弾、ATフィールドに対しての威力は十分ではない。

 

だが目的は撃破ではなく拘束だ。

 

ATフィールドが砲撃を受け止めるたび、正八面体は防御形態を維持する。

解析班の報告どおりなら、防御と主砲照射は完全な同時実行ができない。

 

ならば、「防御させ続ければいい」のだ。

 

二十数隻の火力投射艦隊が、休みなく砲撃を浴びせ続けた。

 

ガトリング砲のような連続斉射、息をつかせぬ砲火。

使徒は絶え間なくATフィールドを展開し続け、その巨砲は沈黙した。

 

 

ひときわ大きな閃光が戦場に生まれた。

 

 

ナガト型オクラホマが撃ち込んだN2弾頭ミサイルが起爆したのだ。

 

第3新東京市の一区画を吹き飛ばすほどの爆発だが、その閃光を受けても正八面体は揺るがない。

ATフィールドが爆炎を押し返し、その光球に焼き尽くされる事も無く受け止めていた。

 

N²では足りない、それは誰よりオクラホマの乗員が理解している。

 

だから艦長は二発目を命じなかった。

 

視界を奪うだけの爆炎は味方の邪魔になる、ならば必要なのは派手な一撃ではない。

 

絶え間ない連打だ。

 

『通常弾幕を継続! ATフィールドを張らせ続けろ! 撃ち返す暇を与えるな!』

 

波動掘削弾、VSPST5速、荷電粒子砲、大小さまざまな火線が絶え間なく正八面体へ殺到する。

 

撃破ではなく拘束をするために、衛星の地形すら書き換える火力を惜しみなく叩き込み続ける。

 

 

「木星方面よりワープアウト反応、パターン青!」

 

 

「来たか……ッ!! 進路上を開けさせろ! 切り札のご到着だぞ!!」

 

 

亜光速で空を裂くように飛ぶ彗星。

VOBが吐き出す青い推進校に突き飛ばされる機体は薄氷を破り捨て、その真紅の機体をあらわにした。

四つの目を輝かせる、エヴァンゲリオン2号機だ。

 

「IFF確認、エヴァ2号機! コールサインヴァルキュリアです!!」

 

 

 

___________

 

 

 

 

一方、その頃コックピット。

 

「寒ッッ!? エアコン!!」

 

「ありゃ。」

 

後部座席で計器を見ていたマリが肩をすくめる。

 

「表面温度マイナス百数十度。そりゃ冷えるにゃ」

 

「あったり前でしょ! 一瞬だけど艦艇と同じように氷纏うんだから!?」

 

「了解了解ガンガンにしておくね~」

 

一気に温めたLCLがプラグ内へ循環し、アスカはようやく肩の力を抜いた。

 

「ふぅ……生き返る。」

 

「エヴァでの超空間航行後の第一声が『寒い』とはこれ如何に」

 

「うるさい! 寒いものは寒いの!」

 

マリはくすりと笑う。

 

「了解、戦乙女」

 

アスカは操縦桿を握り直し、一瞬で戦闘の顔へ切り替えた。

 

「暴れるわよ! マリ、出力上げろ!」

 

「戦闘用意! 姫、景気よくぶっ放してくださいな!」

 

 

 

「――ショックカノンッ!!」

 

 

 

両腕に構えられた二挺の巨大拳銃が火を噴く。

 

その正体は、()()()()()()()()()

 

艦艇規格三〇・五センチVSPST砲身を転用し、試作段階で保管されていたコンデンサー試作弾を組み合わせた、「外部電力供給を必要としない」携行型陽電子砲。

 

通常の光学兵器と異なりコンデンサー試作弾に込められた陽電子だけで発射するそれはタカオ型と同等の破壊力を叩き出し、使徒を囲うカラクルム級を見事に狙い撃った。

 

「お見事ぉ!」

 

「次!!」

 

「担架回すよ! エンジンフルパワー!」

 

背部兵装担架がVOBを避けながら肩部へ移動し、腕を回してポジトロンマグナムを格納すると2振りの短刀を振り回し青い光を纏った。

それはやがて伸び、短刀とは言い難い____長刀へと変わっていく。

どうやら剣の頭からエリミネーターと同様のケーブルが生えていて、背部波動エンジンと繋がりエネルギー供給を受けているようだ。

 

 

 

特3式攻勢波動防壁発振剣「マゴロックス」だ。

 

 

 

新2号機が極東事変で使用した波動防壁中和用の長刀をさらに発展させ、「波動防壁の攻勢運用」を主眼に置いた()()()だ。

イザナミの胸部ゲシュ=タム機関でも起動不可能、ただのデカすぎる刀で終わるはずだったこの大刀は、エヴァ2号機と背部波動エンジンでようやく持ち主と動力源を得てこうして戦場に躍り出る事ができた。

 

波動防壁タックルで敵艦をひき潰すことも手札となる有効な第2世代の能力に注目し、刀身に波動防壁を纏わせ物理では説明できない切れ味を叩き出すこの刀は、「誰も振れないだろ」とツッコミを受けるサイズと引き換えに「何もかも真っ二つじゃないか?」とうならせる事となった。

 

 

 

「どうりゃあああああああああッ!!!」

 

 

 

二振りの長剣がその双腕で振るわれ、水色の光を纏った刀身がカラクルム級を艦首から艦尾へ大きく切り裂いた。

極限集中した波動防壁が量子力学を破綻させ、全てのルールをねじ伏せて理不尽の塊を切り裂いていく。

 

だがカラクルム級など前座も前座、敵ですらない。

 

 

黄緑の鮫共を切り裂き、辿り着くは本丸___使徒だ。

 

 

「VOB分離!!」

 

「アイサー!」

 

今の今まで2号機を押し出していたVOBが爆砕ボルトでパージされ、巨大なミサイルと化したVOBが4方向に散らばり取り巻きのカラクルム級を吹き飛ばした。

その光を背負う2号機は、背部の4枚の翼を広げた。

 

フラップに当たる部分にびっしりとスラスターが配置され、大きく目立つ大出力スラスターを翼の先端に備えたそれが2号機の姿勢を多少強引ながら正していく。

 

 

まるで仇を見つけたかのように使徒は砲撃を開始し、アスカはワザと自分にヘイトが向くように大きく動き回り、砲撃を回避しながらポジトロンマグナムを命中させる。

攻撃と防御を両立させられない使徒はその攻撃を甘んじて受けるしかなく、4次元立体の影であるその姿にヒビが入る。

 

しかし使徒が持つ生命の実は文字通りの強靭な生命力を与える。

被弾箇所はまるで何も起こらなかったかのように再生していき、反撃のプラズマ砲がカラクルム級を数隻消し飛ばしながらも2号機を追尾する。

 

 

その光を縫うように軌道を描きながらその手に構えたのは必殺の槍、ATFエリミネーター。

 

 

莫大な供給を受け起動した槍やマリの必死のマニュアル操作で暴走を起こさずに順調に炉心を励起させていき、穂先にエネルギーが集まり始めた。

 

 

(ヤッバ!? 何でこんな頭わるわるな超兵器生み出してんの!? スゴイけど!? スゴイけどヤバいんですけど?!)

 

 

瞬間的にではあるが波動砲並みの出力を叩き出し、ATフィールドをブチ抜く。

余りにも頭の悪い兵器と思われがちだが、ATフィールドに関するまともな知見と実戦経験が無い以上はパワーで破るしかない。

 

槍の柄に仕込まれたフライホイールが回転を強めていく。

柄に仕込まれたマイクロ波動炉心が外装波動エンジンのエネルギーを貪り、種火から無尽蔵にエネルギーを生成し穂先に集めていく。

 

それが一瞬のうちに極大化し、波動砲に匹敵するほんの0.4秒、それがアスカに与えられたチャンスタイムだ。

 

 

「合わせろ姫!」

 

「言われなくてもやってやらぁッ!!」

 

真っ赤なカシウス、ロンギヌスとは違うのだ。

人類が造り上げた「人の知恵で天使を殺す槍」が人が再生した神様モドキの手で振るわれていく。

 

 

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」

 

 

 

極超音速ミサイル(マッハ20)に匹敵する槍の一突き、それは0.4秒の壁を乗り越えてATフィールドに突き刺さった。

穂先に集まった波動砲並みのエネルギーはATフィールドの許容限界を容易く突破し、波紋のように激しく揺れるその膜を薄氷の様に割った。

 

 

「バッカみたいに練習させられたわ。目押しとか言うやつ」

 

 

その勢いで使徒の巨体に突き刺さり、青い破片を撒き散らしていく。

4次元図形の影と推測される巨体がガラスのように割れていき、正面からは以後まで綺麗に貫通したかと思えばこれもまた再生をしていく。

 

 

しかしその瞬間、マリが睨む観測機器は信じられない結果を見せていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。