宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
禁断の力を思い知ったWonderは今後どう進むのか…。
波動砲生みの親であるハルナ&リク、そして真田さん…少し辛くなりますね。
古代くん、1人で背負わないで…。
「敵艦の数は?」
「4隻ですがそのうち1隻が浮遊大陸より離脱していきます」
森船務長がレーダーで敵艦の数を把握、艦長に報告する。
『警告!敵艦の陽電子カノン砲塔の旋回を確認。第一種戦闘配置の発令を推奨します。』
MAGIシステムが戦闘配置を推奨する。そんなこと沖田艦長も分かっている。
「何故1隻だけ大陸から離脱していくのだ?僚艦を囮にするとは…無人艦なら有り得るな。こちらに手の内を明かさせるつもりか。」
「沖田艦長、ガミラスはこちらのデータを収集するつもりですよ」
「敵は用心深いですね」
ハルナとリクも考えてる事は同じようだ。
ドガァン!
敵艦の陽電子ビームが左舷に着弾した。
「どうした?!」
「左舷第38装甲板に被弾!」
「ダメージコントロール、隔壁閉鎖します!」
「負傷者は?!」
「着弾時、第38区画は無人でした。負傷者ゼロです。」
(何がなんでも手札を使わせたいようだな…)
「総員第一種戦闘配置、戦闘艦橋に指揮系統を移行。現在Wunderは敵艦の攻撃を受けている。VLSに特殊誘導ミサイル装填、三式弾準備。ショックカノンはエンジン修理完了まで使用不能だ。実弾兵装で凌ぎきる!」
「第3格納庫!100式をいつでも格納できるように準備だ!」
「了解、機関室!補助エンジンをいつでも全開に出来るようにしておけ!」
徳川機関長が機関室に向かって通信越しに指示をする。波動エンジン修理完了まであと5分。最悪のタイミングで敵が襲来したが、Wunderにはエンジンに頼らない手札がある。手札は晒したくないがわがままは言っていられないし、そのわがままを敵が「ハイそうですか」と聞いてくれるわけが無い。
『100式からWunderへ!こちら式波です!現在急速帰投中!着艦するので第3格納庫の付近の重力を通常に戻してください!』
「了解しました!回収準備は完了してます、いつでもどうぞ!」
相原が「いつでも来い!」という趣旨でアスカに着艦許可を出す。沖田艦長が回収準備を急がせたのが功を奏した。
「Danke schon!」
100式のエンジンが唸る。安全速度ギリギリで飛ばして母艦に戻るアスカは、危ない状況の筈だが少し笑みを浮かべていた。
(Wunderの人達、手際がいい…きっと沖田艦長の指示ね。)
そんなことを考えているとWunderが見えてきた。
(普通に幅寄せしてたら間に合わない…ならば…!)
「榎本甲板長!!回収用アームを格納庫の外に出してください!幅寄せ無しで行きます!」
『??わかった!しくじるなよ!』
榎本さんはアスカが何をしようとしてるのかを理解したようだ。正気の沙汰ではないが。
「私なら…!」
アスカは、自分が17歳で飛び級して戦闘機部隊に居ることを誇りに思っていた。まだ地球が赤茶げた大地になる前、陣形を組んで青空を飛ぶ戦闘機に憧れを抱いた。自分が部隊に入った頃には地球は遊星爆弾で荒廃してしまったが、青空の元で空を駆ける事を夢に見ている。
確かな夢を持って努力する天才。それが彼女だ。
そしてアスカがこの船に乗ったわけ、それは地球を元に戻すこと、青空を取り戻すことだった。
「急速ターン!!」
アスカは操縦桿を思い切り右に倒し、推力は左だけ全開にした。その結果、推力バランスの偏重と操縦技術で右に勢いよくターン…いやドリフトして、吸い込まれるようにして第3格納庫の手前で停止した。
「よぉーし!アーム接合、格納しろ!」
「「はいぃ!」」
艦載機運用担当の岩田、遠山の操作でアームで100式が格納庫内に格納された。
「100式、格納完了!」
「よし!重力推進開始!Wunder発進!」
エンジン完全復活もままならないが、Wunderは敵艦の迎撃に向かった。
敵艦から陽電子ビームが何発も発射されるが、巨艦でありながら重力の力で機敏に動けるWunderからしてみると「軽く避けるくらい」ですむ。
そして敵艦陽電子砲塔の射程外、つまり敵艦の真上を取り、バレルロールで背面跳びをする。
「左舷甲板、VLS1番発射!」
「撃てぇ!」
南部の掛け声で甲板上のVLSが特殊誘導ミサイルを6発放った。
この特殊誘導ミサイルは、Wunder第2船体のアレイアンテナで観測した敵艦を自動ロックオン、ミサイル自体をMAGIシステムがコントロールすることで確実に敵を葬る、もしくはこちらの思うように敵艦を誘導する。
つまりMAGIシステム操縦の鬼畜誘導ミサイルである。
(処理能力の限界があるので一度に使えるのは24発まで)
「さぁ、逃げ切れないぞ?」
リクが影のある笑みを浮かべた。
その獰猛なピラニアはMAGIシステムの導きによって4発命中。敵戦艦と巡洋艦が爆散した。残り2本は、敵駆逐艦が回避行動を取ったのでパターンBに移行、敵艦を三式の射程に追い込む。
「敵艦、三式弾射程内に入りました!」
「三式弾、撃てぇ!」
古代の号令により第1主砲が轟音と共に火を噴いた。それはビームの光ではなく、実弾を発射する時の物である。
三式融合弾、三式弾と呼ばれるWunderの実弾兵器は元々Bußeの主砲塔用の砲弾として開発された物だ。高圧増幅光線ではガミラスにダメージを与えられないことをよく理解した国連宇宙軍の回答の1つだ。
ゴゴゴォンっ!!
その砲弾が駆逐艦の側面に勢い良く突き刺さる。その直後にミサイルが、敵艦の前後から挟み込む形で命中。三式とミサイルが同時に爆発することで敵艦は跡形もなくなった。
Wunderの隠し手札、その一部は、MAGIシステム誘導のミサイルと困った時の実体弾射撃であった。
「敵艦殲滅!」
またしても兵装テストの的となってしまったガミラス艦を尻目に、浮遊大陸基地から離脱した1隻の船がワープしていく。
「波動エンジン冷却完了!機関再始動します!」
ちょうどエンジンも復活して、メインエンジンノズルに再び火が灯る。
「古代、この場で波動砲のテストを行う。」
「ここでですか?!」
「射程内に艦艇はない。射線が木星を掠めないように上方修正を行う。目標、前方の浮遊大陸。」
「…了解!波動砲発射シークエンスに入ります!」
Wunder最強の手札を使用することに艦橋全体に緊張が走る。ハルナとリクにも「波動砲を創った者として」緊張が走る。
Wunderは重力推進を解除して、反動推進で大陸外縁部まで船を進めた。
そして180度回頭、艦首を大陸へと向けた。
「古代くん。目標は1点だ、波動砲を収束できるかどうかやってみるからそっちは準備を進めて。アナライザー、手伝って!」
リクには何かしらの策があるようだ。
『了解デス!』
「艦内の電源を再起動に備え、非常用蓄電池に切り替えます」
「徳川機関長!今補助エンジンを全力で回せますか?」
「ああ、補助エンジンは非常時に独立して回せるから波動砲発射時でもフルで回せるぞ」
「お願いします!」
「全く君の設計は…『こんなこともあろうかと主義』の人間かい?」
「そんな感じです。」
艦内の照明、動く歩道が停止。トラムリフトは最寄り駅に停止した。
そして、波動砲口の絞り羽が開放され、古代の座席にあるコンソールから拳銃型の波動砲用コントローラーがせり上がってきた。
「島、操艦を古代に渡せ」
「了解、操艦を古代戦術長に回します」
島が操縦桿を手放した。それと同時に古代が波動砲用コントローラーを握った。これで古代に操艦権が移譲された。
「森、大陸の熱源は?」
「大陸中心部の盆地に集中しています。」
森船務長が観測機器の観測データから熱の分布を確認する。
「うむ、座標を戦術長に送れ。古代!」
「了解、艦首を大陸中心部に向けます」
波動砲用コントローラーを僅かに左にずらす。操艦権は古代にあり、操艦はそのコントローラーで出来る。艦首がやや左を向き、艦首が完全に中心部を向いた。
「波動砲への回路を開け」
「了解、波動砲への回路開きます。非常弁全閉鎖、強制注入器作動。」
徳川機関長の操作で波動エンジンから波動砲へとエネルギーを伝える回路が開き、波動砲の突入ボルト…いわゆる撃鉄にあたる部分が起動する。
「同時認証準備!」
ここで波動砲発射承認の認証が必要になる。沖田艦長、真田副長、そして古代戦術長の同時指紋認証で安全装置が解除される。兵器にしては発射までにかなり手間を取るが、それだけ重みのある兵器であることを認識させたい…引き金をたった1人に引かせたくないリクの思いから生まれたシステムだった。
「認証します!」
3人のコンソールには認証用パネルが設置されている。そこに手を置くことで認証が完了する。
コレがなければ最終安全装置は外すことが出来ない。
『3名の生体認証を確認。波動砲最終安全装置を解除します。』
MAGIシステムにより、最終安全装置が解除された。
「ターゲットスコープオープン!」
全周スクリーンにサイトマークが表示され、マークの中心に大陸中心部が入っている。サイトマークの周囲には、目標との距離、サイズ、タキオン粒子圧力メーターなどが表示されている。
「波動砲射線上に重力収束バレル形成開始。重力子の量子跳躍を随時開始します。古代くん、これで波動砲を纏められる」
1点の目標に当てるためには2本を1本に束ねないといけない。そこで、本来の用途とは異なるが重力推進を応用して、アンノウンドライブで重力子を大量生成&量子跳躍を繰り返して巨大な筒を造った。
形状としては「ワームホールの図」に近い。
「両舷薬室内タキオン粒子圧力上昇86…90…100…エネルギー充填120%!」
エネルギー充填量に合わせてタキオン粒子圧力メーターが青、黄、赤に色が変わっていく。
「浮遊大陸との距離、23000。相対速度26」
「艦首、軸線に乗った。」
古代がコントローラーの撃鉄に当たる部分を引く。
「照準修正、誤差+2度」
「重力収束バレル形成完了しました。重力バレル強度、高位へ推移。」
「全周スクリーンを対ショック対閃光モードに切り替え。総員対閃光ゴーグルを着用。」
全員が遮光ゴーグルを装着する。全周スクリーンは対ショック対閃光モードに切り替わっているが、それで波動砲の閃光を全て防ぎきれるとは限らないからだ。
そして、波動砲の砲口に青白い光が蓄積され始めた。
それはどんどん砲口内を満たしていき、溢れんばかりの光となった。
美しく見えるが、それは忌むべき破壊の力である。
「照準固定!」
「発射10秒前、9、8、7、…」
古代はギリギリで決心した。星すら殺す忌むべき力の引き金を引くべきかどうか。それを扱う覚悟を1人で背負うことを。
「6、5、4、3…」
リクとハルナは造った者として見届ける覚悟を決めた。技術者は多くの物を生み出すが、それが戦争の道具と化した時、責任を取ることを放棄してしまう。それを2人は歴史から学び、同じ過ちを繰り返さないように意識した。
「2、1…」
沖田は思った。「この船は、この力は決して侵略のための力ではない。地球を守り、救うための力である」と。たとえどんな結果になろうとも。たとえこれが綺麗事でも。
「撃てぇ!」
沖田艦長の号令に合わせ、古代がその引き金を引いた。
砲口で湧き立つ光が急速に広がり、一気に収束したかと思うと、勢い良く極太のエネルギーの束を放出した。
重力収束バレルを通って無理やり1本に束ねられたエネルギーは目標に向かって突き進む。周囲に放電を起こしながら進み続け、大陸中心部に着弾、勢いは衰えることなく、光が大陸を飲み込んでいく。
そして、浮遊大陸が崩壊した。
「あれが…波動砲」
「力の方向、間違えなかったよね…?」
「これからだ。力はわかった、それをどうするかだ。」
ハルナはか細い声で縋るようにをリクに聞いた。決して侵略のための道具として造ってないが、それが血で血を洗う戦いを呼び込みそうに思えてしまう。
リクは何時に無く険しい顔をした。
圧倒的な破壊力を誇る波動砲…イスカンダル生まれの次元波動理論から生まれた破壊の光は、Wunder乗員にその力を見せつけ、こう問いを投げかけた。
Wunderは木星を離脱、太陽系外縁部に向けての航海を再開した。艦影は無し、戦闘配置も解かれ、一時の休息をありがたく思い船は進んでいく。
沖田艦長は波動砲の威力を知り、艦長室で思考の海に潜っていた。
(星を殺しかねない力…我々は、禁断のメギドの火を手に入れてしまったかもしれない。以下に制約を作ろうとも抑えられる保証はない…。それがもし人の心を歪め、間違った方向に向いた時…我々はもう後戻りはできない。ならば…儂が責任を持ち、この船を導くしかない。)
『艦船3隻と浮遊大陸を失った分の収穫はあるようだな』
シュルツが厳しい顔でスクリーンを見ていた。その横には浮遊大陸基地から離脱したラーレタがタブレット型の端末を操作してスクリーンに映像を投影していた。
「え、えぇ。敵艦の攻撃性能は従来のテロン艦をはるかに凌ぐ性能です。高精度の誘導ミサイル、実弾発射が可能な陽電子砲塔、そして…」
ここまではガミラスでも対処可能な範囲だ。しかし、次が問題だ。
「この攻撃です。」
それは木星大気圏外、Wunderをギリギリ視認できる距離からの映像だ。艦首らしき部分から青白い光が2本放たれ、それが1本にまとまり、浮遊大陸を消し飛ばした。
「計算上では…あの攻撃1回でこの前線基地を…いやこの星を吹き飛ばすことも可能です。それに彼らはゲシュタムジャンプが可能です。万が一あの船がサレザー星系に侵入した場合…。」
それは最悪のシナリオだった、あの砲撃でガミラス星を破壊することも不可能ではない。
「まさか、奴らサレザーを目指しているのか?!」
「あくまでも可能性ですが…。」
不味いことになった、技術で劣るテロンがあのようなものを生み出すとは…そしてジャンプ可能、多武装、あの戦略兵器…。
「ガミラス総督府への優先通信を開いてくれ。」
「ザーベルク!」
うp主の想像により、ミサイルがチートになりました。
ミサイルの行動パターン
パターンA
そのまま追尾する→命中
パターンB
敵が回避行動を取る→艦の射程圏内に追い込む
パターンC
ひたすらしつこくどこまでも追いかける
パターンD
『敵艦の対空防御を避ける』高性能モード
(一度に使えるのは12発まで)
波動砲がついに発射されました。
技術は戦争の道具になりうる。これはどの時代でも同じです。
こんなご時世にこんな話するのは不謹慎だと思いますが、やっぱり良くないよ、戦争は。