宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
エンケラドゥスに行く手前の話です。どうぞお楽しみください。
大ガミラス帝星、通称ガミラス星…
地球から遥か168000光年、大マゼラン星雲のサレザー星系に属する惑星。地球を攻撃する彼らの星は青ではなく緑色をしている。そして彼らは地球人とほぼ変わらない見た目をしている。唯一違うのは肌が青い事くらいだ。
そして、ガミラス星の帝都、バレラスにそびえ立つバレラスタワーは天を貫く程の高さを誇り、総督府として機能する。
そのバベルの塔こそ、
ガミラスの王、『アベルト・デスラー総統』の城であった。
デスラー総統は日頃の公務の疲れを上質な湯で洗い流していた。
浴槽…いや温泉全体が煌びやかに装飾されていて、体の疲れは確かに取れそうだが目の疲れが蓄積しそうだ。
「貴族の馬鹿共の相手は疲れるな」
本日の総統の公務内容は政権交代を狙う貴族との会談、及び諜報部を用いて『貴族の闇を暴いて二度と自分に突っかかれないようにする』ことだった。
ガミラス星は、およそ100年前にデスラー一族の手で全土統一が行われて以来、各地で数々の紛争が発生した。
それを乗り越え、11年ほど前にアベルト・デスラーは永世総統として独裁体制の座に君臨した。
以来ガミラスは領土を広げ、大小マゼランを治め、天の川銀河にも進出する大帝国と化した。
そんな彼の癒しの時間に水を指すものが現れた。
「ご入浴中の所、申し訳ございません。総統」
1人の女性が入浴施設の入口に入ってきた。
彼女の名は『ミーゼラ・セレステラ』、ガミラスの宣伝情報相である。ガミラス人でありながら肌が白い…彼女は滅亡した民族である『ジレル人』の生き残りだ。異民族でありながら閣僚のメンバーの一人として活動する事はほかの閣僚からはよく思われてないが、彼女自身はデスラー総統に絶対的な忠誠を誓っている。
「セレステラか…どうした? 」
「二等ガミラス空間機甲旅団からの緊急の優先通信です」
「二等ガミラスの旅団? 確か惑星テロンの討伐を命じたはずだが…何かあったのかね? 」
「その司令官のヴァルケ・シュルツより、惑星テロンから飛び立った未確認の超弩級戦艦についての通信です。」
「ほう、テロンが超弩級戦艦を造ったか…。通信を受けよう」
「セレステラ、シュルツより通信と言ったが、彼から詳細データは来ているのか?」
「はい、詳細データはこちらに」
まずは予習、少ないが、ザックリとデータに目を通す。
「!…これは、シュルツがゲールではなく私に報告するのも納得が行くな。」
超高精度の誘導ミサイル、実弾も発射できる陽電子砲塔、大陸を消す咆哮兵器。そして重要なのが、テロンがゲシュタムジャンプをするということ。
潰すべきか…。
デスラーは自分の玉座に向かった。
大ガミラス帝星は軍事独裁体制を貫いている。つまりデスラーの匙加減で色々決定を覆せる。
デスラー本人は圧倒的カリスマ性を持っているため、ガミラス臣民からは多くの支持を得ている。しかし閣僚は、よく思ってない人もいる。でも彼らは総統の機嫌を取らないといけないのだ。
そんな彼の玉座は、永世総統にふさわしい位置にある。
「「総統、お呼び立てして申し訳ありません」」
多くの閣僚が彼に謝罪を述べた。
「緊急と聞いてね。セレステラから詳細は聞いたよ。繋いでくれ。」
「繋ぎます」
その瞬間、デスラーの目の前にシュルツの姿がホログラムで投影された。
『総統、お呼び立てして申し訳ありません。事態の重要性を鑑みて、総統に直接ご報告をと思いまして。』
「まず、報告感謝する。だが1ついいかな? 君の直属の上司はゲールくんだったはずだが、なぜ私に報告しようと思ったのかね? 」
『銀河方面軍のみではなく、ガミラス本星の方でも対策を考案して頂く方がガミラスの為になると判断に至ったためです。』
「なるほど、君の忠誠心は分かった。情報を見せてくれ。」
『では、そちらのモニターに表示します。』
その瞬間、神話の1シーンを描いたような巨大な絵がスクリーンに切り替わり、ラーレタが艦の観測用カメラで撮影した映像が表示される。
『ゾル星系第4惑星ズピストでの映像です。中心に位置するのが例の超弩級戦艦です。』
はたしてこれを戦艦と言えるのだろうか?全長2500メートルの戦艦が存在している、しかも技術的に何歩も劣るテロンが造った事に、閣僚全員が驚きを隠せなかった。
「あれが戦艦か?! ありえない! デストリア8隻分はあるじゃないか?! 」
「しかも鳥のようにも見えるな…。」
『推定全長2500程、この映像で確認できる武装は3連装の大口径陽電子砲塔が7基、ミサイル発射管多数。艦首の魚雷発射管、そして…』
「謎の咆哮兵器…だね? 」
『はい。この咆哮兵器から発せられるエネルギーは、浮遊大陸を完全に破壊しました。』
次に表示された映像はその戦艦が艦首の咆哮兵器を発射、その光で大陸が崩れ、完全に破壊される映像だ。
閣僚全員が固まる。そもそもありえないのだ、恒星系すら脱していないテロンがあのようなものを生み出すとは。
「タラン、軍需産業が専門の君はあれをどう見る?」
デスラーはヴェルテ・タランに問う。彼は軍需省と国防総省を纏めるエリートだ。
「あのような兵器をテロンが持つとはとても信じられません。しかし、あの咆哮兵器、どこかで見たことが…。開発中の試作兵器の中に類似するものがあります。」
「…調査を行ってくれ。シュルツくん、ご苦労だった。引き続きそのテロンの戦艦を監視、可能ならば撃沈するんだ。」
『ザーベルク!』
「吉報を待っているよ」
『ガーレ デスラー、総統万歳!』
シュルツのホログラムが消えて通信が終了した。
「総統、あの戦艦がゲシュタムジャンプの機能を搭載している以上、サレザーに向かうことも考えられます。」
「そうならないように私は撃墜許可を出したのだ。ヒス副総統?」
「では諸君、おやすみ」
帝都バレラス、その頭上には青い星が輝いていた。
『皆〜ちょっと第3会議室に来てくれる? 面白い物見れるにゃ〜! 』
「「「??? 」」」
ハルナとリク、真田さんはシンクロ率脅威の300%で顔を見合せた。面白いもの?何それ?っと言った感じである。
「マリさん?面白いものってなんですか? 」
『いいからいいから、Come on! 』
「みんな来てくれてありがとね、やっと映像の引き伸ばしと可視化が終わったの。」
「なにか撮れてたんですか? 」
周りを見ると、古代に島、森さんや新見さん等の第1艦橋メンバーと、まさかの沖田艦長もいる。
極めつけにユリーシャもいる。
「赤木博士、終わったのですね。」
沖田艦長が内容を知っている口振りで赤木博士に聞く。
「作業が終了していなかったら皆さんをお呼びしてはいませんよ? じゃあ皆さん、足元をご覧下さい。」
赤木博士がタブレット型端末を操作して床面スクリーンにとある映像を投影した。
それは10秒くらいの長さの、ビックリするくらい鮮やかな映像だった。
「えっと、赤木博士。この映像は? 」
古代がご最もな疑問をうかべる。
「これはWunderがワープ中の艦外映像。元々は1ナノ秒の一瞬以下の映像よ。」
「え! そんなものをどうやって?! 」
森さんも驚く。そんなものどうやって?
「私も意図して撮ったわけじゃないけど、MAGIシステムが外部センサとカメラでデータを拾っていたの。その観測データを重ね合わせて可視化して、10兆倍に引き伸ばしたのがこの僅か10秒の映像よ。」
それはオレンジ色の背景で、黒や白、黄やピンクなどの色をした無数の光の束が一直線に飛ぶ映像だった。
これが、ワープ時に通過する異空間の映像のようだ。
「ワープ空間ってこうなってるんですね」
「あくまで可視化した映像よ。一部分かりやすいように加工もしてあるからこれが完全版ってわけじゃないけど。」
「博士…地球に帰ったらノーベル賞待ったナシですよ…。」
島が分かりきってるようなことを言う。地球に帰ったら博士には数え切れないほどの賞が与えられるだろう。
「とまぁ、お話はこのくらいにして。沖田艦長、本題は今後の航路と冥王星の事ですよね?」
赤木博士が沖田艦長にバトンタッチする。ワープ空間の撮影成功が「余興」とでも思ってるのだろうか? 博士??
えっ? こんなのまだ序の口ですって? 博士?
…博士ホントにチート過ぎ。
「うむ、航海科とユリーシャさんの合同で、今後の航路を作成した。これを見てくれ」
新見さんがタブレット型の端末を操作して、航路図を表示した。
「今後Wunderは、外惑星を通過した後太陽系外に出る。その後、当分はこのバラン星を目指して航海を続けることとなるだろう。」
その星は天の川銀河と大マゼランの中間の銀河間空間に位置していた。
「バラン星? 」
ハルナが疑問を浮かべる。
「この星は、イスカンダル側で名付けれられた名前らしい。自由浮遊型惑星で、宇宙の灯台とも言われている。」
島がその疑問に応える。まだバラン星を光学で観測できてないので見た目は置いといて、まずはそこを目指すらしい。
「その星には古代アケーリアス文明の遺産が残っているの。それは銀河間を繋ぐ超空間ネットワークで、ゲートをくぐって何万光年もワープができる。かなり年月が経っているけど一部がまだ使用可能なの。でも…それをガミラスも使っている。」
ユリーシャがかなり重要な事を話した。もしもそのワープゲートのようなものをこちらも使用可能なら、日程を大幅に短縮が可能だ。
しかしそれは、『ガミラスがバランにもいるということ』でもある。
「大まかな航路は出来上がっているが、1つ問題がある。」
「…冥王星だ。」
「航海日程の遅れよりも冥王星攻略を優先すべきか、日程重視で通過するか」
そう、ガミラスの基地は冥王星にあるのだ。その基地からあの遊星爆弾は発射されている。つまり、その基地を潰さない限り、遊星爆弾は小惑星帯から小惑星が無くなるまで発射され続ける。
「やるべきです! 奴らの基地をここで叩けばもう遊星爆弾は降らない! 」
古代が基地殲滅を進言する。彼の両親は東京に落ちた遊星爆弾で命を落としている。それゆえ、ガミラスを敵視している。
「確かにここで発射元を潰しておけば遊星爆弾は降らない。それに遊星爆弾の発射によって人類滅亡のカウントダウンが進んでいるなら、基地を潰すことでそのカウントダウンを少し遅らせることも可能だと思う」
リクもそれに同意する。
「島くん、航海科としてはどう進みたいの? 」
ハルナがこの道のプロに聞く。
「…航海科としては、冥王星を利用してスイングバイ、そのままヘリオポーズに向かうのが最適と考えてます。」
「じゃあ、このまま遊星爆弾が落ち続けてもいいのかよ!」
古代は苛立った。
「まあ待て、俺は否定してる訳じゃないぞ。『航海科として』考えただけで、俺個人としては叩きたい。」
「島…。」
「一応、冥王星基地を潰しても日程の遅れが少なくなる航路を選定中だ。もう少し待ってくれ。」
皆が安堵してる瞬間、
突如警報音が鳴り響いた。
ヴィー! ヴィー! ヴィー!
『警告、両舷波動エンジンブロックで深刻な異常発生。警告度AA』
「何だ?!」
相原が狼狽える。Aだと少々深刻だ。航行にも支障が出る。
その直後、内線電話が鳴り響く。
近くにいた真田さんが受話器を取る。
「はい、こちら第3会議室。」
『こちら左舷機関室、徳川だ! 波動エンジンのエネルギーコンデンサが溶けておる! 右舷でも異常発熱を感知した! 早急な修理が必要じゃ! 』
エネルギーコンデンサは波動エンジンの重要なパーツで、単純にエネルギーを貯めておくパーツだ。しかしそれがないとエネルギーの平滑が不能になり、エンジンのエネルギー伝導が不安定になる。
それが溶けかかっている。
「真田さん受話器貸してください。徳川機関長、睦月です! 両舷のエンジンのステータス画面をこっちに送ってください! 」
床面スクリーンに映し出されたのは波動エンジンの概略図、だがかなり深刻な状況だった。
「やっぱり波動砲が原因か…。」
『そのようじゃ。修理後にいきなり波動砲をぶっぱなしたのが効いたんじゃろう。』
「クソっ!! 無理だったか…。」
「睦月さん! どういうことですか?? 」
古代が聞く。
「エネルギーコンデンサの素材はコスモナイト90…Wunder建造時には世界中からかき集めたんだがそれでも足りなかったんだ。それで、コスモナイトが必要量以下でも問題ない設計にしたんだが無理だったか…。僕のミスです、申し訳ございません。」
「太陽系を出る前で良かったじゃないか、睦月1尉。本艦にコスモナイトの備蓄は?」
「ありません…世界中からかき集めた分で造りましたから。余裕なんて…」
リクは落ちる所まで落ち込んだ。自分のミスでエンジンがピンチなのだから。
「無いなら見つければいいわ。新見さん、コスモナイト90って宇宙合金でしたよね?それの採掘場を調べてください! 」
「ハルナ…」
「エンジン設計に私も半分関わってるのを忘れた?2人で責任取ろっか。」
「…ありがとう。」
「はいシャキッとする! 」
ハルナは明るいし、機転がよく効く。片付け苦手だけど。
火星でもずっと一緒、一緒に昏睡、今は一緒に船に乗っている。
なんだかんだ言って、ハルナはリクの気になる存在なのだ。
「あった、ありました! 」
そして希望を新見さんが見つけた。
「どこですか?! 」
リクが即座に食いつく。
「土星の衛星エンケラドゥスに、放棄されたコスモナイトの採掘場があります。そこならば、必要量を十分賄い、備蓄することも可能です」
「うむ、総員航海艦橋へ移動。エンジン修理のため、エンケラドゥスのコスモナイト採掘場に向かう。真田くんと暁くん睦月くんは採掘班を編成、コスモナイト90の採掘にかかれ。」
「了解! 」
船は、自身の不調を解決する方に舵を切った。
『何? テロンの怪鳥が? 』
『はい、コードネーム《怪鳥》は惑星セダンの衛星に降下していきます。どういう事でしょうか?』
『わからん。だが、その宙域には確か機械化兵の偵察艇を配備していたはずだ。それを向かわせろ。可能ならば捕虜を取るのだ。』
『ザーベルク! 』
(さあどこに行く、テロンの怪鳥よ)
Wunderは両舷の波動エンジンを休ませるために補助エンジンを使って航行。エンケラドゥスに向かっている。コスモナイト90の採掘が何よりの急務だ。
一方ハルナとリクは、採掘班の準備を終了させて、エネルギーコンデンサの設計を見直していた。
「確かコスモナイトの純度って95%だったよね」
「ああ、初期設計だと95で造る予定だったんだが、量が手に入らなかったから75~80%でも出来る設計にした。それでは耐えきれなかったのは想定外というかなんと言うか…。なんか逃げてる感じがするな、僕」
やっぱり背負い込んでる、リクくんは負い目を結構感じやすい性格のようだ。
そんな状態を見かねたハルナは、リクの頭をなでなでする。
本来逆なのではと思いたくなるが、この際コレが一番効くのだろう。ちなみにリクの方が公的には年上である。
精神年齢的にはハルナの方が上であるのは、真田さんやユリーシャはバッチリ気付いている。
「…! ちょっと」
「リクは抱えすぎだし落ち込みすぎ、1人で責任背負わないで欲しいから同時認証作ったはずのあなたが、なんでここまで背負い込むの? 」
「…。」
「火星の時から私たち一緒だったけど、実の所私、リクに結構助けられてるんだから。落ち込んでるのはリクじゃないと思う。」
「ハルナ…。そうだったね。落ち込むのはやめだ。」
「戻った? 良かったわ。でも、責任感があるのは良い事だけどね。とりあえず、コンデンサは初期設計が一番良くできてると思うしそもそもコレがカタログ的には最適なんだからコレをちょっと調整してやってみよっか。あとは波動エンジンのシステム調整が少々かな? 」
「ああ、波動砲撃った時のログが残ってるはずだからそれを元にして最適なコンデンサを造る。エネルギー伝導率もコンデンサの性能に合わせて調整。これでいけると思う。」
どうやらリクは元に戻ったようだ。
ほんの少しだけ頬に赤みが刺してるのは気のせいだと思う。
一方航海艦橋、慎重に船を進めている中、1つの通信が入る。
「救難信号をキャッチしました! 国連宇宙海軍のものです! 出力は微弱、艦籍番号、艦種及び艦名は不明! 」
氷の惑星で遭難者がいるのか?! 艦橋中に動揺が生まれた。
しかし、救難救助は船乗りとしてやるべきことであった。それはどんな時代でも変わらない。
「古代、森、2人は保安部と医療班同行の元、遭難者の救助に向かってくれ。」
「「え?」」
正直いって自分だけで良いのでは?2人はそう思っただろう。
沖田艦長は内心微笑んでいた。キューピットにでもなりたいのだろうか。
「古代進、遭難者の救助任務に当たります!」
「同じく森雪、救助任務に当たります。」
船は凍てついた海原に進んでいく。
( ๑´•ω•)۶"(´・ω・`)なでなで
作者の体験談です。落ち込んでる時に撫でてもらったことがあり、それで救われた感じがあったので今回の話に入れました。
(なんでやねんΣ\(゚Д゚;))
もうホントに2人が兄弟姉妹に見えてしまいそうで、書いていて笑えてきます。
エンケラドゥスに来ました。古代くんと森くんが互いに意識し始めます。
次の話は多分入学してから出すと思います。
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m(_ _)m
ではでは( ̄^ ̄)ゞ