宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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長い……!

と思ったので後編です


玄関と外の世界 後編

「星が綺麗だな」

 

「そうだね。昔はさ、地球が世界の中心だという考え、天動説が一般的だったみたいでさ、それをガリレオっていう天文学者が間違っているといって、今の地動説を提唱したらしいよ」

「天動説って、世界は自分たちを中心にして回っているって考え?」

「そんな感じ。でもまるでこの星たちが自分たちの周りにあるように見えるよね」

「その星は手で届きそうな距離にあるように見えるけど、実際は光さえたどり着くのに苦労する距離にある。僕らの目的地も同じだ」

ハルナとリクは、船外服を着て艦外に出ていた。パーティーは楽しいのだが、展望室から見た星々に目を奪われて思い切って船外に出ていたのだ。

 

そして二人で第一主砲の上に寝転がって、頭上に広がる満天の星空を見ていたのだ。

 

 

「流れ星来ないかなあ」

 

「あのね、流れ星ってのは大気圏に突入したチリのことなんだよ? 見れないんじゃない?」

 

「待ってみようよ?」

ハルナは流れ星を見たことがない。火星には、地球の様に流星群が降ってくる時期とかがなく、見たくても見れない。資料では知っていたが、実物を見たことないのだ。

 

 

10分くらい待っていたが、一向に現れる気配はない。

 

「来ないね……」

「まあ来ないよね」

 

「流石に流れ星は来ませんよお2方、代わりに星に願いを託してみてはどうでしょうか?」

ヘルメットの内蔵スピーカーから誰かの声が響いた。あたりを見渡してみると、背後に榎本が部品片手に笑っていた。

 

「榎本さん、お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 

「お疲れさんお2人さん。どうやら流れ星を探していたようですな。でも大昔の人は、一番明るい星に祈りをささげていたっていう話もありますよ? 我々の場合なら、目的地のイスカンダルですな」

 

そういって榎本は持っていた部品で艦前方の宙の彼方を指し示した。無限に広がる宇宙のたった一つの目的地、願い星にするにはピッタリかもしれない。

 

 

「じゃあ、お願い事しよっか」

「そうだね」

 

2人は目をつむりまだ見えない目的地に向かって祈った。

 

 

 

 

「リクは何を願ったの?」

「内緒、願い事を他の人に喋ったら叶わないと思う」

 

「むう……」

 

 

「私は『誰か整備作業手伝ってくれないかなぁ』と願いましたよ? そうしたら都合よく2名ほど目の前にいるじゃないですか?」

榎本はいつも通りの笑顔で期待する。ああ、これは逃げられない感じだ。2人は同時に直感した。

 

「はあ……分かりましたよ」

「私たちがそっちの人と交代しますよ。特に新婚の人」

 

「そいつはありがたいですな。佐伯! 来島! お前ら確か新婚だろ? 交信行ってこい!」

『いいんですか、甲板長?!』

 

「この船に最も詳しいお2人が手伝ってくれるぞ!」

『『ありがとうございまーす!!』』

 

「さて、一働きしますか」

無重力では重さは感じないはずだが、重くなったように感じた腰を持ち上げて手伝いに向かっていった。

 

 

 


 

 

 

『……生きて帰って来い!!』

 

「はい!」

 

《通信終了しました》

 

(ありがとうございました……)

無口で頑固な親に激励をもらった加藤は、消灯した画面に向かって礼をした。

 

 

 

 

「冬月先生、お変わりないようですね」

 

『君も元気そうじゃないか』

 

「まあまあ元気ですよ。赤木博士と愉快な技術者軍団の一員として楽しんでますよ」

 

『それは何よりだ。こっちは相変わらず配給が少なくなるばかりだが、シンジ君が配給食糧をおいしくアレンジしてくれるからこの老体は健康なままだ』

 

「シンジ君の方はどうですか? 冬月先生の家にお邪魔した以来顔を見てないのでちょっと気になりますね」

 

『ああ、いるよ。シンジ君、こっちだ』

 

「シンジく~ん私だよ~」

 

『マリさん! お久しぶりです!』

交信画面に映り込んだのは、少しやせ気味の中性的な少年だ。

碇シンジ君だ。彼は訳あって、マリとユイの恩師である冬月コウゾウの家に住んでいるのだ。

 

「4年ぶりだね〜シンジくんそっちは?」

 

『変わらず冬月先生と勉強しながら頑張って生活してます』

 

「冬月先生がシンジくんの料理絶賛気味だよ〜はぁ〜私も食べたいなぁシンジくんの料理」

 

「そんな……ちょっと嬉しいです」

 

『もう~照れちゃって~』

 

「必ず帰るからね~そして手作りご飯をゲットにゃ! あとシンジくんにも紹介したいなぁ私の仲間」

 

『どんな人ですか?』

 

「それ即ち天才だよ、でもどっか可愛いんだよね~」

 

『会ってみたいですね』

 

「人懐っこいからすぐ仲良くなるよお。そろそろ時間だにゃ、シンジ君、冬月先生絶対帰るからね!」

 

『気を付けてください!』

『マリ君、気をつけてな』

 

《通信終了しました》

 

(グットラック、私……)

 

 


 

 

 

「お姉さま、私達は今地球の船に乗って故郷に帰ろうとしているの。Wunderっていうんだけど、地球の言葉で奇跡って意味みたいだよ。」

「……。」

「地球に来てからたくさんのものを見て、たくさんの人に出会って、たくさんの思いを見たわ。この船には、たくさんの地球の人の思いが乗っているの。私の願いも」

「……。」

 

「お姉さま、いつまで寝ているの?目を覚ましてよ、せっかくリクもお見舞いに来てくれてたのに、綺麗な花を花瓶にさしてくれたのに」

 

(大丈夫よ……。私は死なないから)

 

「お姉さま……?」

 

静かな病室に一人、ユリージャの話が悲しく響く。

 

 

 


 

 

 

『ここまででかい船だと整備性はよくないんじゃないかと思いましたが、まさかここまで整備員にやさしい船とは思いませんでしたよ』

 

「フッフッフ、そこまで考えましたからね?」

ハルナは自慢げに胸を反らして応える。

榎本は、持参してきたタブレットをからケーブルを伸ばして、船体に備え付けられている整備用の液晶パネルに差し込んだ。

そのタブレットには、船体の損傷状況が表示されていた。

 

 

全長2500メートルの長大な船体を一つ一つ確認するのは甲板部が何人いても足りない。作業の効率化を図るため、船体各所の装甲内部に「整備用コンディションパネル」が100メートル間隔に設置されている。ここを確認するだけで、どこが損傷しているのかや波動コイルの損耗率などが分かり、必要な部品を必要な個数で交換することができる。

パネル自体はすべて艦内ネットで繋がっているので、敵の攻撃でどこかのパネルが壊れてしまっても他のパネルで確認することが出来る。何なら艦内からも確認出来るので甲板部からは大好評だ。

 

 

『ふむふむ、3番と19番と43番だな。お2人さん! その波動コイルを3番と19番と43番で取り付けてくれ! 位置はこれで確認してくれ!』

 

「「わかりました」」

榎本からタブレットを手渡されて、2人は宇宙遊泳を開始した。

船外服備え付けのガススラスターを吹かせて目的地に飛ぶ。3番は比較的近い位置だった。

船体装甲に付いているレバーを回すと、巨大な装甲が持ち上がり内部構造があらわとなった。

 

「えーと3番の交換は2本だな」

 

そういいながらリクは、取り付けられていた波動コイルを取り外して新しい波動コイルを取り付けた。

波動コイルは取り付ける位置ごとに型番が決まっていて、これを間違えると防壁が一部展開できなくなったり、最悪の場合波動コイルが秒で切れてしまう。

 

取り替え終わったらコイルの保護用カバーを取り付けて交換終了。これが後三か所ある。

 

 

「こうして間近に見てみると、やっぱりこの船って大きいのね」

「2500メートルだからな? あ、終わったら寄りたいとこがあるけどいい?」

「?」

 

 

それから2人は作業をてきぱきと終わらせて、船外のとある場所に向かった。

 

 

船体中央構造物アンノウンドライブ内部

 

重力子斥力子を生み出す未確認骨格……その内部は中空で、その見た目は骨らしき物体が包帯の様に渦を巻いている。

そこにも整備の手が加わっていたが、一人の見知った人影がいた。

 

 

「あれ? 赤木博士じゃないですか」

 

『あらハルナさん、リクくんも一緒なのね』

「作業が終わったのでちょっと寄り道で来てみました」

『あなたたち変なとこに寄り道してきたわね。今ね、この謎骨格のサンプルを少量採取していたとこなの』

 

「これをですか? データなら火星技研撤退時に引き上げた時の物がありますが」

『確かに当時のデータはあるわ。でも、重力子と斥力子発生後の生データが取れるかもしれないのよ。ホントは、重力子のみと斥力子のみで別々のデータが欲しいとこだけど、さすがにのワガママは言えないわ。私とマリはお客さんとして乗っているのよ』

「……許可はとってるんですよね?」

『もちろん取っているわよ。研究用とはいえ、船の一部を削るのよ?』

 

2人は、思わずホッとした。勝手にそんなことされたらたまったもんじゃないからだ。

完全に解明されていない物だけあって何が起こるかわからない。おまけに不完全の様にも見えるため、これがもともと何だったのか、本当にこの形状をした宇宙生物がいたのか、疑問は耐えない。

 

だからこそ、この船を調べる必要がある。

 

データをとるためには、実戦後のデータが最適。そのため赤木博士のような科学者には、この船が『宝の船』の様にも見えてしまうのである。

 

『さて、回収が終わったから戻ろうかしら。2人とも、ちょっとこっちに来てくれる?』

 

「「??」」

 

赤木博士の近くに寄った2人は、とあるものを目にした。

それは、タブレットに書かれたメモ書きと写真データだ。

 

 

《あの骨格に数字が刻まれていたけど、あなた達がこの数字を印字したの?》

 

タブレットに映っていたのは、とても小さなマークと数字だった。掠れているが、地球の数字で型番のような番号が刻まれている。『AD1-145』と書かれていたその数字は、リクもハルナも知らない型番だ。

 

《私たちも知りません……建造時に付けたマーキングは全て消しましたが、これは見たことありません。いつのものか調べてもらえませんか?》

《やってみるけどあまり期待はしないでね?一応真田くんとマリ、沖田艦長と艦橋メンバーにはこれは伝えるけど》

《お願いします。私たちは火星技研時代のデータを洗い出してみます。地球から発つときにデータを持ち出してきたので》

《じゃあよろしくね》

 

3人以外誰も知らない筆談はこの場で終いとなった。

 

 

 

 

「残り35人です」

交信希望者の残り人数を、岬が相原に報告しに来た。

「お疲れ様、てことはあとは3分の1くらいか……それはそうと、例の件の許可が下りたそうじゃないか」

 

「はい! 乗ってからずっとやりたかったのでとっても嬉しいです!」

言葉がなくてもその雰囲気でわかってしまうほど岬は嬉しそうだ。

 

「頑張ってね、リクエストするよ」

「ありがとうございます!」

 

 

 


 

 

 

太陽系赤道祭は終盤に近付いた。太田のガセネタを真に受けた人は結構いたみたいで、仮装して艦内を回る女性の乗員も多くいる。

 

そんな中、沖田艦長は一人艦内を歩き回っていた。艦長室でゆっくりするのもありだが、体調面もかねて歩き回っている。気晴らしにもちょうど良い。

 

しかしこれはいつものパターン、今回は違っていた。

 

 

「沖田艦長、何か御用ですか?」

 

「……ん? いや、忙しそうだな。失礼した」

最初に訪れたのは解析室。そこには、エンケラドゥスで鹵獲したロボット、通称「ガミロイド」の解析が行われていた。

他の乗員は赤道祭を楽しんでいるが、真田lだけは一人で解析を行っていた。

 

(沖田艦長、何か用があったのかな?)

 

そう思う真田であった。

 

 

 

「沖田艦長? 何か御用でしょうか?」

次に訪れたのは、左舷機関室だった。そこには藪が当直として機関の面倒を見ていた。

 

「あ、いや……ここに徳川くん来ていないかと思ってな……」

 

「機関長でしたら先程当直から上がっていきましたよ?」

 

「そうか、ありがとう。邪魔したな」

そういって、沖田艦長は機関室を後にした。

 

 

 

結局艦内を歩き回って徳川君はいなかった。トラムリフトがあるとはいえ疲れてしまった沖田艦長は、自室で休んでいた。

 

(徳川くんはどこだ?)

 

 

その数分後、扉を叩く音が聞こえた。

 

「誰だ?」

 

「徳川です。入ります」

 

入ってきたのは徳川機関長だった。

「儂を探しとったようですな。それと、これもお探しのようですな?」

徳川機関長が持ち込んできたのは、日本酒だった。

 

 

 

 

 

 

「……美味いな」

「佐渡先生の所から一本頂いてきたものですからな」

2人は艦長室の床に座り込み、酒を飲み語らいあっていた。

 

「儂らもかなりの時間がたったな。気付けばもう老人の域だ」

 

「そうですな、宇宙軍に入ってからもう何年も経ちました、確か最初の船は……」

 

「防衛艦36番、艦名ももらえなかった小さな艦でした。確かあいつは、新米の砲雷手でしたな」

 

「古代守か……この船に乗るはずだった男だった。今は弟がその役割を十分果たしている」

「多すぎる若者が死んでいった……有望な若者が命を散らした……」

 

「数えきれないほどの若者が戦乱の中でその命を落とした、だが、命を数えてはならんな」

 

「数えたくないですな、そんな思いを断ち切るために儂らは進み続けるしかないですわ」

昔の語らいは話が進むにつれて、かつて同じ船に乗っていた同僚の話へと移っていく。

 

酒を飲むと音痴な歌を歌う人の話、島の父親の島大吾の話、自慢の乗員の話へと移る。そして徳川機関長が、酔いでウトウトするまで静かな飲み語らいは続いたのであった。

 

 

 


 

 

 

《Wunder左舷大型アレイアンテナ基部観測室》

 

この観測室は、艦の後方がよく見えるドームのような構造だ。そこはよく、数人で集まって談笑する場となっていて、階段の踊り場のようなところになっている。

 

そこで1人ハーモニカを吹く人がいた。

兄から聞いた古い曲を、路上ミュージシャンのように1人で演奏する彼は、どこか寂しげな雰囲気があった。

 

 

「古代くんがハーモニカ持ってるなんてね。ハーモニカなんて久しぶり見たわ」

 

「これは元々兄さんが吹いていた物なんだ」

そう言って古代は声の主に向かって振り向いた。

「古代くんは地球にいる家族と交信したの?」

 

「家族はみんな死んだ」

古代はさも気にしてないように応えたが、

「……ゴメンなさい」

森は不味いことを聞いてしまったと捉えてしまった。

 

「いいんだ、昔に拘ってても良いことは無いから。君は?」

 

「土方の叔父さんと話してきたの。古代くんと同じだったから」

「すまない……」

「謝らないで。土方司令、凄く心配してたわ……」

 

「心配してくれる家族がいるのは羨ましいな、でも今は友人が沢山いるから寂しくはないな」

 

「……私は?」

「?」

 

「私も、古代くんが言う『友人』の1人?」

「ああ、勿論だよ」

 

古代がそう答えると、森は嬉しそうな顔をした。

森は、エンケラドゥスで助けられた時からなんとなく気になっていたのは言うまでもないだろう。

 

 

『本艦は間もなく、ヘリオポーズを通過し、太陽系を離脱します。それをもって、太陽系赤道祭を終了させて頂きます。ここからは…』

 

赤道祭終了のお知らせの直後に流れたのは、陽気な音楽だった。

 

 

『はーい! 皆さんこんにちは! 今日から始まりました「奇跡のラジオ局in大宇宙」!第1回放送では、遠大なる旅路にピッタリの曲を放送します!』

 

艦内放送で流れてきたのは、200年ほど前の落ち着いた曲調の歌だった。

 

 

『必ず帰るから、真赤なスカーフ♪』

『きっとその日も、迎えておくれ』

『今ははるばる 宇宙の果て』

『夢を見るのは、星の中』

『旅する、男の瞳は』

『ロマンをいつでも映したい』

『ラララ……ラララ……真赤なスカーフ♪』

 

艦内のモニターには、地球の超望遠光学映像が投影されている。赤茶けているが、それは確かに我らが故郷だ。あの平和だったころの姿を、緑が生い茂り、海が星を満たすその姿をもう一度見るために、彼らは今の故郷の姿をその目に焼き付けて前に進む。

 

 

 

「さようなら地球」

「俺たちは必ず帰ってる。必ず帰ってくるぞー!」

 

宇宙空間には声は響かない。しかし、古代の決意は確かにこの宇宙に響いていった。

 

 

船は進む。人類にとっていまだ道の宙域に漕ぎ出したその先にどのような苦難が待っていようとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前、交信室で1人の人が守秘回線で地球と交信を行っていた。

 

 

『今のところWunderは問題ないな。人類を救うWunder計画は成功確率が低い、それに人類の命というチップを賭けるのはあまりにもハイリスクだ』

 

「人類生存に適した恒星系が確認でき次第、実行に移ります」

『君にすべてを任せたい。それまではこの船を沈めないように、万が一の時は渡した切り札を使うんだ』

 

「はい」

 

 

 

《通信終了しました》

 




今回は試しに前編と後編に分けてみました。
どこで分けるか考えましたが、原作のAパートとBパートに分ける部分で分けました。
新たなる伏線が出てきました。Wonderの骨格に残されていた謎のマーク。誰がいつ書いた物でしょうか


それと、前にアンケートして決まった暁ハルナのキャラ絵ですが、今基本情報技術者試験の勉強をやっていて全然手が付けられてません。
|ω・`)スミマセン
試験終わったら描いてみるのでお待ちいただけると幸いです。


だんだんこの小説に使徒を出演させるパターンが出来始めました。
出せる使徒は出していきます。「こいつ出して欲しい」って使徒がいたら教えてくださいm(_ _)m出せるかどうかやってみます。

それでは次の話でお会いしましょう。
*˙︶˙*)ノ"マタネー

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