宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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試験がムズい!
過去問が多い!
書きたい内容が山のようにある!
_人人人人人人人人_
> 勉強しろ!! <
 ̄VVVVVVVV ̄

と言われたので頑張ります(/;ω;\)

では、お楽しみください
完成した話はもう一話あるのでそれは日を置いて投稿します(´;ω;`)


Memory of the red dwarf

サレザー恒星歴1000年

デスラー紀元103年

3月5日(地球換算)

 

 

この日はガミラス本星のみならず、大小マゼランに散らばる全てのガミラス民族にとっての大事な日だ。

 

その重要性ゆえ、本星からの超空間通信の回線が全ての植民惑星に引かれ、とある様子をリアルタイムで中継されている。

この日は、ガミラス帝国が建国された日。『建国記念日』である。

 

 

ガミラス帝国標準恒星系配置図

銀経0度 銀緯0度

大マゼラン星雲

サレザー恒星系第4惑星

大ガミラス帝星

帝都 バレラス

 

 

「青き花咲く大地

 

気高き我が故郷よ

響け歓喜の歌

神の加護は我らと共にあり続けん

 

ガーレ! ガミロン!

 

讃えよ、祖国の勝利を」

 

 

帝都バレラス、天を貫く様にそびえ立つバレラスタワーの正面広場には、数万人のガミラス臣民が建国記念を祝っていた。皆一様に「ガーレガミロン!(ガミラス万歳)」と声を上げていた。彼らの目的は一つ。

 

 

 

 

我らが総統の建国記念祝辞を聞くためである。

 

 

 

 

『ガミラス帝国臣民諸君、私は知っている。我が頭上の栄光は諸君らの、国家への、この星への、偉大なるガミラスへの愛国心の賜物であると!』

デスラー総統の言葉は1字1句ガミラス臣民の心につたわり、一息つく時には広場から歓声が響き渡る。

 

それをデスラー総統は片手で制し、続きを話していく。

 

『今この時をもって、諸君らを友と呼ぼう! 今日、この場に集まってくれた友人、遠く離れた星で私の言葉を聞いてくれている友人に心から感謝する。ありがとう、諸君』

 

再び歓声が上がり、デスラー総統が壇上から降壇しても止むことは無かった。

 

「ガーレガミロン! ガーレデスラー!」

 

「ガミラス万歳」と「デスラー万歳」が交互に響く会場を後にしたデスラー総統は、セレステラと共に総統府に向かって移動を始めた。

 

 

「総統閣下」

「良い原稿だったよ」

「お褒めに預かり光栄です」

「人間とは愚かで従順な生き物だ。そしてこの上なく退屈な存在でもある。何かに酔わないと、溺れなければ生きていけない生き物というのは宇宙広しと言えども同じだな」

 

「この後の余興の準備も整っております」

 

 

 

デスラー総統が自身の玉座の間に戻ると、閣僚一同が拍手で迎えた。

まるで凱旋だ。その出迎えを慣れた様子で進み、閣僚一同の拍手の雨を浴びる。そしてこれまた慣れた手つきでマントを片手で翻し、ゆっくりと鎮座する。

 

玉座の間、主にデスラー総統が座る玉座の周辺にはガミラス伝統の四角形を多数用いた文様が煌びやかに施されている。見方によれば後光のようにも見えるそれは、絶大な権力がそのまま形となったようだ。

 

 

 

「総統。ガミラス帝国建国1000年、並びにデスラー歴103年を閣僚を代表してお祝い申し上げます」

ガミラスのNo.2であるヒス副総統がデスラー総統に祝辞の言葉を述べる。

デスラー一族がガミラスを統治したのはちょうど103年前、

その初代総統の頃からヒス副総統の先祖……すなわち「レドフ一族」は閣僚としてデスラー一族に祝辞を述べている。そして副総統として総統の補佐を行っているのだ。

 

「ありがとう、副総統」

そして両者は知る由もないが、話し方も受け答え方も先祖とほぼ変わらない。

 

「宇宙に名だたる大ガミラスは、大小マゼラン統一の偉業を成し遂げ、天の川銀河へと版図を広がり、総統のご威光はあまねく宇宙に降り注いでおります」

玉座の間に、中空スクリーンが表示され、現在のガミラスの勢力図が表示される。自分たちのホームグラウンドの大マゼランを越え、お隣の小マゼランも統一し、現在では天の川銀河への進出を果たしている。これほどまでに勢力を広げたことはガミラス有史史上類を見ないことであり、この勢力拡大がデスラー総統の支持率の向上に一役買っている。

 

「同化政策も順調に進んでおります。帰順を示したものには滅亡ではなく、二等ガミラス臣民としての権利を与えております。これが、帝国繁栄の礎となっております」

ヴェルテ・タランが帝国の拡大の仕組みを改めて説明する。

ガミラスは、他の惑星を開拓して「植民惑星」とするのはもちろんのこと、他の民族との併合も行っている。

そのため、ザルツ人やポルメリア人などの肌の色が他とは異なる民族もいるのだ。

 

「まさに偉業ゥ! まさに神の御業(みわざ)であァる。総統と! 我が大ガミラスの征くとこに敵なァし。無敵ガミラス! 敗れることなァし!!」

ヘルム・ゼーリックがドスの利いた低い声で声を上げる。

貴族出身の彼は、中央軍の総監として艦隊を預かっている。ガミラスがまだ「大公国」と呼ばれていた時代から彼の家は貴族であり、純血主義の人間である。

 

「慢心はなりませんぞ?」

そんなゼーリックに一言釘を刺す初老の聡明な男性がいた。

航宙艦隊総司令の「ガル・ディッツ」である。

基本的にガミラスの艦隊は彼の管轄にある。そのため、どの艦隊がどの方面に行くかは彼の判断によって決まる。

この仕事を長く務めた彼は、いつしか老練な策士となっていた。

 

「小マゼラン外縁部では、外宇宙からの蛮族侵入も油断なりません。そして、アリステラの生命体も野放しにはしておけませんぞ?」

 

「ディッツ君、君は私が大ほら吹きと言いたいのかぁ?」

「艦隊運用の責任者としての意見を言ったまでだ」

 

「総統、間もなくその蛮族どももほどなく一掃されることでしょう」

「ドメル中将の派遣を検討中です。彼がアリステラ星系の任務から帰還次第、派遣命令を出します」

 

「宇宙の狼か、彼ならやってくれよう。しかし、我々は彼に負担をかけ過ぎているのかもしれんな。ディッツ君、国防軍の中から腕のいい艦隊を蛮族退治に優先的に回すように調整を頼む」

 

「ザーベルク」

エルク・ドメル……宇宙の狼と呼ばれる彼は、中将という肩書に見劣りすることのない数々の戦果を挙げた優秀な指揮官だ。彼のもとに集った通称「ドメル幕僚団」はガミラス国軍のなかでも指折りの精鋭だ。

 

 

 

「さて、今宵は諸君らの日頃からの労をねぎらうため、ちょっとした余興を用意したんだ」

ワイングラス片手にデスラー総統はそう切り出す。その直後にセレステラが皆から見える位置にサッと移動して一礼、閣僚一同に説明を始める。

 

「今宵は皆様に、帝国最前線の映像を御覧に入れます」

 

「なぜそんなことを?」

ガミラス親衛隊長官のハイドレ・ギムレーが疑問を発する。なぜそんな辺鄙そうな位置の映像を出すのかわからなかった。

 

「それは、これからご覧いただく作戦は総統ご自身が立案なさったからなのです」

セレステラがその疑問に答えるとギムレーは意外そうな顔をしてデスラー総統の方を向いた。デスラー総統は楽しそうな笑みを浮かべ、こう言い放った。

 

 

「さあ、ゲームを始めようか」

 

 

 

 

 

 

『星に願いを託すことは、昔も今も変わらない風習です。では、皆さんの思いを私たちの目的地であるイスカンダルに託してみてはどうでしょうか。叶わないと思っていた思いも星が叶えてくれるかもしれませんよ?』

『おっと、お時間が来てしまいました。奇跡のラジオ局in外宇宙、次の放送は、艦内時間20時30分からです。お相手は、岬百合亜でした。』

 

「はい、オッケー」

アシスタントさんの声を聴いて、岬は放送用スイッチをオフにして大きく伸びをする。一回の放送は大体15分くらい。長くても30分以内というのが決まりだ。艦内ラジオ局開設時に沖田艦長から「艦内業身に支障が出ない範囲でなら良いだろう。乗員の娯楽の一つにもなる」というお墨付きが出ているので、支障が出ない範囲で自由に動ける。すでに岬の頭の中にはやりたいことがいくつかできている。

機材室の方を見ると、保安部の星名が手を振っていた。

放送が始まってから、よく来るのだ。

 

 

 

「いいの? こんなとこで油売ってて」

「うん、今オフだからね」

保安部は、騒動でも起きない限りオフなのだ。騒動が起きた時の保安部なので、彼らが暇そうにしているのは、艦内が平穏だという事だ。

 

「それより知ってる?」

「ん?」

 

「この先にサーシャさんの病室があるんだけどさ、そこからたまに声が聞こえるみたいなんだ。もしかしたらサーシャさんの声だったりして……」

星名はわざと声を低くしていかにも怖い話をしているようにするが、その手の戦術は通用しなかった。

 

 

「それ、ユリーシャさんだよ」

「へっ?!」

 

「たまに病室に来て話しかけてるみたいなの。幽霊じゃないわよ?」

「……そうなんだ」

星名は若干恥ずかしくなってしまった。

 

 

 


 

 

 

航海艦橋では、次のワープに向けての準備が進められていた。太陽系を脱出してから、Wunderは1日2回のワープを行っている。乗員がワープに慣れてからは、1日に750光年は進むことが計画されている。しかしまだワープの回数が少ないこともあり、距離を短くしている。

 

 

「現在Wunderは、地球から8.6光年の宙域を時速18エスノットで航行中」

「次のワープで地球から20.6光年のグリーゼ581の宙域に到着します」

宇宙空間の大航海はワープをひたすら繰り返さないといつまでたっても目的地にたどり着かない。たとえ光速を保ったまま航行することが出来ても、イスカンダルまでには16万8000年かかってしまう。往復ならその倍だ。あっという間にゲームオーバーだ。

 

そういうことで、1日に何度もワープすることとなっている。

 

 

「12光年の跳躍か……WunderのVLBI望遠鏡であの地球の姿が見れる最後の機会だな」

「えっ? この船にそんなもの積んでましたか?」

島が素朴な疑問をのぞかせる。沖田艦長の言うVLBI望遠鏡は電波望遠鏡のことだ。そんな大掛かりな観測機器をこんな船に乗せられるとは到底思えなかった。

 

「厳密には、あの大型アレイアンテナの事だよ」

その疑問にハルナが応える。Wunderのアレイアンテナは様々な波長の電波及び重力震を感知できるように色々改造されているが、本来の機能は失われていない。

 

「青い星の記憶を最後に見てみましょうか」

リクもそうつぶやきながら観測用のコンソールを操作する。

 

 

実のところ、2人は地球の本当の姿を知らない。

2人が目覚めたのが95年と96年だったが、その頃には地球は荒れてしまっていた。その頃は完全に赤茶けていた訳では無いが、「痛々しい姿」だったのは2人もよく覚えている。

そして、そのことは秘密なのだ。

 

 

「観測目標は地球。各アンテナ連動。観測開始します」

航海艦橋に大きめの中空スクリーンが表示されて、そこにはあの青い星の姿が映し出された。

緑の大地は抱え、青い海でその身を潤した生命の星がそこに映っていた。

 

「これは、地球か?!」

古代が驚く。地球は今は赤茶けていたはずなのでは?

 

「ここは、地球から8.6光年の位置、つまりこれは、およそ8年前の地球の姿だ」

光が1年に進む距離は1光年、そのため地球から観測している星々の姿はすべて過去の映像ということになる。

ならば地球から何光年も離れた位置から地球を観測してみればどうなるか?離れた距離が大きければ大きいほど過去の地球の姿を見ることが出来るのだ。

 

 

「いいか、これが我々の取り戻す地球の姿だ。その目にしっかりと焼き付けておくんだ。そして、イスカンダルにたどり着くことだけが目的ではない。地球に帰ってくることまでが目標だ。総員ワープ準備にかかれ」

 

自分たちの故郷である星の姿を目に焼き付けた彼らは各々の持ち場で作業の進める。

 

蒼い星の姿を初めて目にしたハルナとリクは、いつまでもその光景が頭から離れなかった。

 

「綺麗だったね」

「ああ、あれを取り戻すことが僕の戦う理由だね、ハルナは?」

「?」

「戦う理由だよ」

「私は、戦争が終わった後に一緒に……やっぱり内緒」

「気になるなぁ、続きは?」

「だから内緒だって」

ハルナはそっぽを向いてしまった。

その向いた方向がたまたま島の座っている方向で、島はハルナの顔をバッチリ見ていた。見ると少し赤くなっている。島はピンときた。

 

(あれ……?暁さんってもしかして)

 

 

 


 

 

 

そのころ、冥王星前線基地から撤退したガイデロール級は一矢報いるためにWunderの予測される探知可能領域の外からこっそりと追跡していた。

 

スクリーンには、ワームホールに突入したWunderの姿が映っていた。

 

「ヴンダー、ジャンプしました」

「ジャンプ先を特定しろ!」

「時空間波動計測開始、空間航跡をトレース」

 

超空間航行、すなわちワープを行うと痕跡が残る。その痕跡というのが空間航跡で、それを解析すればどこでワープしてどこに出るのかが分かる。

 

「ガンツ少佐、友軍の補給艦がランデブーを求めています」

それは本来あり得ない報告だった。

 

 

 

『お父さん、早くお仕事終わらせて帰ってきてね。お母さんもお父さんのこと心配しているの。だってお父さん頑張りすぎる癖があるもん……』

遠く離れた娘からのホログラムビデオを寂しげな眼で眺めながらシュルツは言った。

 

 

「総統は我らに戦って死ねと仰せられた。すまない、ヒルデ」

静かな一人部屋に急に艦橋からのコールが入る。

 

『シュルツ司令! ゲール少将から支援物資が届きました!』

「なんだと?! 本当か?!」

勝手に逃げ出して見捨てられていたはずなのに、そんな「脱走艦」に支援物資など何度も言うがありえないのである。

 

『はい! 我々は見捨てられたのではなかったのです!』

 

 

 

デスラー総統の目の前に映っている人物は、遥か彼方のバラン星から通信している。

その映像通信を受けるデスラー総統の表情はウンザリ顔だ。いつも微笑を浮かべている総統がウンザリ顔をしている。大事なことなので2度言った。

そんな彼の心をのぞいてみると、

 

 

(彼は苦手なんだよなぁ、だからバランに行かせたんだが……)

 

 

総統本人がここまで嫌がる人はなかなかいない。ある意味ゲールは自慢してもいい。

『銀河方面、作戦司令長官のゲールであります! 今回、総統の立案された作戦の現場指揮を担当させていただけることを誠に光栄に……』

「もういい。ゲール君、君に送ったものは無事に届いたかな?」

ゲールのあいさつを途中で切らせたデスラー総統は送った積み荷について聞いた。

 

『失礼しました! 例の新型魚雷は』

「……デスラー魚雷」

セレステラがボソッと言うと、ゲールは慌てて

 

『あわわ、そのデスラー魚雷は、すでに前線配備が完了しております!』

 

「ならいい。あとは予想した宙域にテロンの船がやってくるだけだな」

 

 

 


 

 

 

突如空間にワームホールが出現して、薄氷を纏った不死鳥が現れた。その薄氷の羽衣を一息に脱ぎ捨てたWunder

の目の前には太陽によく似た恒星が鎮座している。

 

「ワープ終了。周辺宙域に艦影なし、重力場の影響もなし」

 

「ここは、地球から20.6光年のグリーゼ恒星系。あれが、主星の赤色矮星グリーゼ581だよ」

真田が現在位置について軽く説明を入れる。赤色矮星は通常の恒星に比べて小さく、フレアが発生しやすいやや癇癪持ちな恒星だ。

 

 

 

 

「フーム、ワープの影響はなさそうですな。けどもくれぐれも無理はせんといてくださいよ?」

 

ワープ後は体調不良を訴える人がたまにいる。しかし沖田艦長は持病があり、こうして艦長室で佐渡先生の問診を受けることがワープ後の習慣となっていた。このことは主治医である佐渡先生の他には、真田と徳川機関長しか知らない。

 

往診中に唐突に扉を叩く音が聞こえた。

「新見情報長、入ります」

そうして入ってきたのは新見だった。

 

 

「では、失礼しますよ」

「お先に失礼します」

往診が終わったので2人が艦長室を後にしたタイミングで新見は沖田艦長に話しかけた。

 

「よろしいでしょうか?」

「構わんよ、何だね?」

意を決した表情で新見が沖田艦長に提案したのは星系の調査だった。

 

「この星系には、人類移住計画の対象惑星があります。調査隊を編成して調査を行う許可を頂けないでしょうか」

 

「新見くん。贖罪計画は破棄されたのだよ?」

贖罪計画では、移住候補の惑星がいくつも選定されていた。そしてWunder……旧Bußeには、惑星探査能力が与えられていた。ハルナとリクは改装時に、「あらゆる状況に対応するために」わざとある程度残していた。

 

新見はそれを使って自分で贖罪計画を進めようとしているのだ。

 

 

「しかし……! 人類が生き残るためには1つでも多くの可能性を考慮するべきではないのですか?」

 

「我々にそんな余裕はないのだ」

沖田艦長が鋭い目で新見を射抜く。いつもの温和そうな目ではなく厳しい目だ。

その直後、船が大きく揺れた。

 

 

 

 

 

「電離圧、濃度高まる!」

「船体下部に衝撃! 船体復元、15度戻す!」

何かにぶつかったような衝撃で何と2500メートルの船体が傾いたのだ。

 

「電子機器の一部に障害発生!」

先程の衝撃で船の電子機器に作動不良が発生したのだ。その現象で、2人は衝撃の原因に思い当たるものがあった。

 

「アナライザー、荷電粒子の波動は感知できる?」

リクがアナライザーに真っ先に聞いてみた。そして返ってきた答えは予想通りであった。

 

『感知シテイマス! 信ジラレナイ程強力デス!』

 

「状況報告!」

沖田艦長が慌てて艦橋に入ってきてそう命じた。

 

「どうやら、超高出力のプラズマフィラメントに接触してしまったようです」

「何ですか?それ」

太田が聞きなれない言葉に首を傾げる。太田は気象長だが、そんな宇宙気象現象は聞いたこともない。

 

「恒星から発せられるフレアプラズマの束だ」

「つまり太陽風のこと。Wunderは恐らく、そのプラズマ回廊という見えない壁にぶつかったと思われるわ。真田くん、そうでしょ?」

赤木博士が沖田艦長の説明を引き継いで分かりやすく説明する。

「その通りです。現にそのプラズマの反応が本艦を挟み込むように形成されてます。」

真田がコンソールを操作して、プラズマの強弱と分布を中空スクリーンで表示する。

確かに両側に壁のように発生している。

 

 

「このような現象は地球でも観測されたことは数回ありますが、理論値の数億倍ものビルケランド電流が流れている。これは自然界では起こりえない」

 

「これは人為的なものですね?」

ハルナが確信した目で核心を突く。

 

 

「「ああ(ええ)、これは明らかに人為的なものだ(よ)」」

 

 

2人揃って同じ結論が出たところで、艦橋メンバー一同は確信した。

 

 

「ガミラスが仕掛けたんだ」

 

 


 

 

『ネズミが罠にかかりました! この星系に彼奴めがやってくることを予想されるとは、このゲール、感服しました!』

 

「なぁに、暇潰しに彼らの航路パターンを解析してみたのだよ」

暇潰しでやっていい事ではないはずだが、政治以外にも対応可能なデスラー総統にとっては暇潰し感覚で出来てしまうのだろう。

 

そして、召使いの1人からワインを受け取って、皆に一声かける。

 

 

「では諸君、テロン人の検討を祈って乾杯しようではないか……」「ギャハハハハ!」

 

デスラー総統の言葉を遮る形で1人の下品な笑い声が聞こえた。

 

「罠に落としておいて健闘を祈るだァ? 総統も相当冗談がお好きで…ヒック!」

既にワインに酔ってしまった1人の閣僚が、「命取りな発言」をした。

 

 

それが気に入らなかったのか、デスラー総統は秘密兵器を使用した。

 

玉座の肘掛にはリモコンのようなものが取り付けられている。

 

それを指で弾いてスイッチオンするだけで……

 

 

 

「へっ? うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

下品な閣僚は足元に空いた穴に真っ逆さま、あっという間に処理完了だ。お手軽に気に入らない人をバイバイ出来るまさに「総統の匙加減でなんでも出来る」便利装置である。

 

 

「……ガミラスに下品な男は不要だ」

「「ガーレデスラー! 総統万歳!」」

 

 

 


 

 

 

見えない壁にぶつかったWunderは見かけはなんともないようだが内部では異常が起こっていた。

 

「観測機器にも異常が出てるね。レーダーは大丈夫だけど」

「ほ〜んと参っちんぐよね、こんな大出力電流なんて想定してないよ」

「まず、ガミラスがどうやってビルケランド電流を大きくしたのかが気になるとこだ」

 

「I don't know〜。神のみぞ知るじゃなくてガミラスのみぞ知るってやつにゃ」

 

「ですね。真田さん、電子機器の異状は何とかなりますが、そう何回もぶつかるとホントに観測機器とか壊れますよ?」

 

「もちろんわかっている。その回廊をレーダーで確認できるようにはなったから森くんの指示で飛ばすしかない」

 

「責任重大……ということですか」

森が恐る恐る聞く。プラズマ回廊は見えないだけあって怖い。自分の指示で船が飛ぶとなったら指示ミス1つでぶつかることも有り得る。

 

 

「大丈夫だ。プラズマ回廊はこっちでも簡易的に見れるから安心してくれ。通過出来ない程狭くなったら、船を90度倒して飛ばすから」

島が気を使って安心させた。実質船の全幅とプラズマ回廊の幅はだいたい同じだからスレスレなのだ。

 

そして慎重にプラズマ回廊を通過している時に、それはやって来た。

 

 

「重力波の乱れを検知! ワープアウト反応です!」

複数の重力波の反応と共に、背後からガミラス艦がワープアウトした。

「こいつ、冥王星から離脱したのと同型艦じゃないか」

古代がすぐに気づいた。そして、敵艦が臨戦態勢に入ったことも気づいた。

 

 

「敵艦、魚雷発射!」

 


 

 

 

 

「ワープアウト、正面に艦影確認! データベース照合。テロン艦、ヴンダーです!」

 

「作戦開始、魚雷発射管1番にデスラー魚雷装填!」

 

「装填完了! 照準よし!」

 

「デスラー魚雷、発射ァ!」

ガイデロール級から放たれた1本の魚雷は獰猛なピラニアとなって、Wunderに向かって一直線に進んだ。

 

 

 

 

━━━━━━━━━

 

 

「敵艦、魚雷発射、数1! 迎撃不可能域まであと20秒!」

レーダーに映った魚雷の影を見るなり森がそう報告した。

 

「捕捉した。対空戦闘用意!」

古代が魚雷を装填して迎撃の準備を整えたが、迎撃命令が沖田艦長から下りない。

 

「迎撃不可能域まで、あと10、9、8、7、6……」

「艦長!」

「……左舷艦尾魚雷発射管開け」

 

「撃てぇ!」

古代の号令でWunderの艦尾から3本の魚雷が放たれて、敵艦の魚雷に向かって突き進んだ。そして衝突して迎撃が完了した。

 

 

「ふぅ」

「着弾。目標の迎撃に成功……えっ?待ってください!」

一息ついたところに予想だにしない事態が起こっていたのだ。

 

「雪さんちょっと見せて、えっ?? これって……太田さん! 艦尾カメラの映像回してください!」

ハルナが驚いた顔で太田さんにカメラを回すように頼んだ。

 

「映像出ます!」

 

直後に航海艦橋に展開された中空スクリーンには、目を疑うものが映っていた。

 

 

 


 

 

 

「これは……なんだ?」

その頃ガイデロール級艦橋では、シュルツを含めた艦橋要員がデスラー魚雷の正体に驚いていた。

 

「帝政司令部に映像送ります」

 

 

 

 

そしてその様子はガミラス本星にも届いた。

 

「これは、ジェル? いや、粘菌でありますか?!」

 

「アリステラ星系で確認された使徒の一体『バルディエル』です。侵食能力に特化したこの生命体は、物質に接触した瞬間に物理的に侵入を開始し、デストリア級ですら侵食した記録があります」

 

「野鳥狩りをするには、獲物を追い立てる役が必要だろう」

 

 

 

━━━━━━━━

 

 

その頃Wunderでは、魚雷から出てきた粘菌を解析していた。

 

「開けてびっくり玉手箱だにゃ」

「そうねぇ……冥王星の時といいコレといい、宇宙にはこういうのしかいないのかしら?」

 

マリと赤木博士はスクリーンに映る映像を半分楽しそうに見ていた。だがその脳内では、相手の能力がどのようなものか推測を行っている。

 

(敵の形状は粘菌のようだけどまさかここまで大きいとはね、しかも宇宙を自分で進んでいる。敵の形状は固定されてない以上、こちらがショックカノンを撃っても形状変化で避けられる可能性が高いわね)

 

(自由に動けるってことはこっちに触手伸ばしてダイレクトアタックも有り得るにゃ。だとしたら相当タフなやつ、冥王星の時よりも大変かもにゃ)

 

そんな風に思考の海を泳いでいる2人を一気に引き戻したのは、その粘菌状の敵の行動だった。

 

「未確認物体に変化あり!」

太田が粘菌状の敵の行動をWunderの高性能観測機器で捉えた。

 

そのまま中空スクリーンに映し出されたのは、粘菌状の敵が小惑星を取り込む場面だった。

敵は、一気に体のサイズを大きくして小惑星を包み込み、吸収してしまった。その「捕食」とも呼ぶべき活動を終えた時には、敵は少々サイズが肥大化したように見えた。

 

「小惑星を吸収してエネルギー変換したのか? 物体を吸収して自らの体に変換できるとしたら、Wunderも吸収される可能性があります」

 

敵は自分の体格よりも大きい小惑星を取り込んだ。ならば、この船を吸収することも不可能ではないはずだ。

 

 

 

 

「傾注! 未確認物体に変化あり!!」

太田の観測している敵に大きな変化が見られた。この時一同戦慄した。敵がグニャグニャと形をゆがませながら、触手のように細い腕を勢い良く伸ばしてきたのだ。

 

 

「波動防壁展開!!」

「はい!!」

沖田艦長がとっさの判断で防壁展開を命じた。真田が間髪入れずに防壁展開のスイッチをオンにした瞬間、

 

 

敵の触手が防壁に激突した。

 

 

艦内に激震が走り、立っている人は軒並み床に倒れこんだ。

波動防壁越しでもこの衝撃、一同は直感した。

 

 

 

「一瞬でも防壁が間に合わなかったら死んでいた」と

 

「波動防壁被弾経始圧低下。あと何とか数発は耐えれますが、防壁が切れた時に受けたらおしまいです」

「うむ。島、測定した干渉地帯は抜けられそうか?」

 

「何とか行けます」

「待ってください、このままその進路で航行すると……」

太田がコンソールを操作して、航路図の縮尺を操作すると、

 

 

正面に、灼熱の恒星があった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「バルディエルはうまく機能しているみたいだね?」

 

「そのようですね。先程、バルディエルからの直接攻撃が確認されましたが、ゲシュタムフィールドを展開したようで無傷のようです」

 

 

「まさに袋のネズミというわけですな、あとは猫が始末してくれるという算段ですなァ?」

ゼーリックが納得したようにスクリーンを見上げる。スクリーンにはバルディエルとヴンダーが映っている。

まさに追いかけっこ状態だ。

 

 

「いいや、出口を1つ用意してある」

そういうとデスラー総統は肘掛のスイッチを操作してその出口を表示した。

 

「その出口は、巨大な恒星がその口を開けて待っている。バルディエルに喰われるか、灼熱の溶鉱炉に身を投げるか、彼らの運命は他にあるのだろうか?」

 

「あるはずがございません。完璧です」

ヒスが総統の作戦をほめたたえる。究極の生物兵器&究極の溶鉱炉、どちらを向いても地獄だ。

「諸君、テロン人の勇敢な決断を、拍手で称えようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

「まさに、前門の虎後門の狼というやつか」

古代は苦々しい顔を浮かべて、そうつぶやいた。たった一言だったが、それが赤木博士にとって大きなヒントとなった。

 

 

「ん? 待って、古代君今なんて言ったの?」

「『前門の虎後門の狼』ですが……」

古代にとって特に考えずにつぶやいたのだが、赤木博士はすっきりしたような顔をした。

「ありがとう古代君。何とかなるかもしれないわ。沖田艦長、赤木リツコ意見具申!」

唐突に赤木博士が沖田艦長に意見を述べた

「聞こう」

 

「恒星スレスレを航行するべきと思います」

狂気の沙汰である。宇宙空間で恒星のすぐ近くを航行するのは自殺行為に等しい。航宙艦艇には艦内の環境制御システムが標準装備となっているのだが、あまりの高熱に防熱処理が追い付かない可能性がある。

つまり艦内がサウナのようになり、乗組員が熱中症でバタバタ倒れる。

「恒星をスレスレに? ……そういうことか。島、恒星に向けて第二戦速!」

 

 

「危険すぎます! この船が融解する可能性があります!!」

新見が反対意見が出して実行を阻止しようとするが、彼女はこの状況を打破する代案が出せなかった。

 

「艦長、防護隔壁は完全閉鎖して環境制御システムフル稼働。総員に船外服を着用してもらえば、恒星スレスレを飛んでも問題ありません。島君?間違ってもフレアに突っ込まないようにね?」

ハルナが熱対処についての対応案を出し、「問題ない」ことを伝えた。実際フレアをまともに食らったり太陽にダイブでもしない限り、高い耐熱性を持つWunderの装甲は問題ないのだ。

 

「もちろんです。この船を焼き鳥にはしませんよ? 太田、恒星の反応を引き続き観測してくれ! どんな些細な反応でも構わない!」

 

「了解です!」

 

 

「さあ、我慢比べだ。粘菌くん?」

リクは不敵な笑みでスクリーンに映る敵をにらんだ。

 

 

 


 

 

 

「どうやらテロン人は、焼身自殺を選んだようだ」

 

デスラー総統はその様子をたたえて拍手をすると、他の閣僚も同様に拍手し始める。しかし、デスラー総統は気付いていなかった。彼らがなぜ恒星に突き進んだのかについて。

 

「確かこの国には、最後に溶鉱炉に沈んでいく機械の兵士の物語があったはずだが、彼らも同じことをするのだろう」

 

 

 

「艦外温度1100度! 艦内温度75度! なおも上昇中!」

 

「環境制御システム、防熱処理追い付きません!」

恒星スレスレを航行中のWunderの艦内温度はみるみるうちに上昇していく。事前に環境制御システムを弄って冷房全開にしたのにこれである。

船外服を着用していなければ熱中症は確実。艦内の壁面床面も同様に熱くなっているはずなので、今ならアツアツの床面を使って目玉焼きが焼けそうだ。

 

「艦長、波動防壁を張ってみてはいかかでしょう。このままでは艦内の生命維持に支障が出でしまいます」

確かに防壁を張らないとこれ以上の温度上昇は回避できない。

 

「うむ、波動防壁を艦底部に集中展開。このまま余分なエネルギーを消費することなく進むのだ」

 

さすがに沖田艦長も暑すぎたのか、艦底部にのみ波動防壁を展開して

進むことにした。

「後方のガミラス艦は?」

 

「敵性生物後方、距離5000、ピッタリついてきています」

 

「引き続き監視を続けろ。ん、ムゥゥゥッ!」

 

ドサッ!

 

突如艦橋の後方で誰かが倒れる音が聞こえて、古代たちが振り返ると、

 

 

 

沖田艦長が艦長席に突っ伏して倒れていた。

 

「艦長!! 相原!佐渡先生呼べ!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

『現在艦内温度80度、総員、船外服を着用せよ。繰り返す船外服を着用せよ』

 

「えらいこっちゃ~!!」

「先生船外服着てください!」

佐渡先生と原田が、「艦長が倒れた」との一報を受けてアツアツの艦内を走っていた。

 

「しかしなんでこんなに暑いんじゃ?」

 

 

 

その疑問は、艦橋に入ることですぐに分かった。

なぜって?

そりゃあ目の前のスクリーンに恒星が映っているからだ。

 

 

 

「お前らなんちゅうとこに飛び込もうとしてんじゃあ! すぐ引き換えさんかい! 艦長を殺すつもりかぁ!!」

ごもっともである。佐渡先生からすると

『こいつら気でも狂ったんかァ!』という感想である。

 

「大丈夫だ、先生。ちょっと古傷がいたんだだけだよ。そうですな?」

しかし、当の本人がケロッとした感じで艦長席に座っていたので佐渡先生の慌てようも完全鎮火された。

 

 

「え……? え~とそれじゃあまあ、お手を拝借……脈は正常じゃな……こりゃあ大したことありませんな、過労でしょう! まぁ栄養剤だけでも注射しておきましょうかねぇ」

そういって艦長の船外服の袖をまくり上げた佐渡先生は沖田艦長にグイっと顔を近づけてこういった。

 

「いいですか? 儂はあんたの親友からくれぐれもと頼まれとるんです。そこはわかってもらわんと困ります。あんたの体は……」

 

「わかっとるよ、先生」

最後まで言わせたくなかったのか、艦長が途中で遮った。

 

 

 

「ふぅ、良かったぁ」

ハルナが一安心した顔をした。

「流石に艦長は高齢だからね、というか船外服越しでも暑いな」

「確かに、汗かいてるし。終わったら風呂かなぁ。折角造ったんだし」

 

「いいな。もう汗ビッチョビチョ。服の中気持ち悪い」

この作戦後は、温泉が大盛況となることだろう。

 

 

「前方、SK23の領域に小規模なフレア発生を確認!」

「了解、取り舵30度。回避します!」

 

フレアを器用に避けたWunderの背後では、バルディエルが奇妙にその体を変異させて、槍状の物を生成していた。

「艦長、後方の敵性生物に変化あり!例の触手が来ると思われます!」

 

「古代、艦尾副砲で迎撃するんだ。相手がある程度の加速をつけているなら、相対速度から考えて相手は回避しにくいはずだ。暁君、睦月君、古代のサポートを頼む」

 

「了解、迎撃行動に移ります。艦尾副砲用意!」

古代の指示で後部甲板の副砲が滑らかに回転して、敵の方向を向いた。

「古代君、敵の刺突攻撃は馬鹿正直に本艦後方7時の方向から狙っているようだ。島君!姿勢安定!」

「了解!」

 

「照準固定!」

あとは打つだけである。しかし、今撃っても避けられる可能性が高い。敵の攻撃と同じタイミングで撃たないといけない。

 

「まだか…」

「エネルギーは十分にたまっています。発射可能です!」

南部が真剣な目つきでスクリーンをにらむ。

 

 

「……敵性生物に動きあり!攻撃来ます!」

森がレーダーで確認した瞬間、古代は艦尾副砲に指示を下した。

 

「艦尾副砲、撃てェ!」

 

 

 

Wunderの艦尾副砲が青白い光の束を放ち、三本が一本に収束して敵に向かう。

バルディエルはそれに気付いたようだが、自分の刺突速度が速すぎたのか回避しきれずにショックカノンを受けてしまった。

一部が千切れ、一瞬意識を失ったバルディエルは恒星の強大な重力に捕まった。

 

 

「艦長! 後方の敵性生物が恒星の重力に捕まりました!」

スクリーンには恒星の重力で身動きできない敵が映っていた。

 

 

動けないバルディエルは業を煮やしたのか『恒星が邪魔なら取り込んでしまおう』という考えにたどり着き、自身の体を限界まで広げて恒星の表面に広がろうとした。

 

しかし、取り込もうとした直後に逆に恒星に飲み込まれ始めた。

 

 

「恒星を吸収しようとして逆に取り込まれている。なるほど、艦長と赤木博士はこれが狙いだったんですね」

 

真田が結果を見て納得したようでスクリーンを見てにやりと笑う。

 

 

 


 

 

 

その光景を玉座の間から見ていたデスラー総統は不満そうだ。自分の予想外の方法で突破されたのだから当然だろう。しかし同時に敵の指揮官を称賛に値する者だということも理解していた。

「まさか、こんな危険な方法で回避するとはな……」

 

 

 

ところ変わってバラン星、現場指揮を任されていたゲールは、何もしなかった(どうあがいても対処の使用のない)ガイデロール級の艦橋要員に怒鳴り散らしていた。

 

八つ当たりというやつである。

 

「この無能め! 貴様は総統のバルディエルが取り込まれていくのを指をくわえてみていたのか! これだから二等ガミラス人は二等なのだ。このことは私から総統に直々に報告させてもらうから覚悟してお……おい! シュルツ! シュルツ!」

 

 

超空間通信は、ガイデロール級の方から一方的に切られていたのだ。

 

 

 

 

 

ガイデロール級では、唐突に切れた通信にシュルツが驚いていた。

 

通信使の席を見ると、ガンツがすっきりした顔でこちらを向いていた。

 

「最後くらいガミラスの誇りではなく、ザルツの誇りをかけてやりましょう」

彼の一言は、シュルツを動かすには十分だった。

 

 

「本艦はこれより、ヴンダーに向けて最後の突撃を敢行する!」

 

「シュルツ大佐と共に!」

「「シュルツ大佐と共に!」」

艦橋要員はガミラス式の敬礼ではなく、旧ザルツ国軍の敬礼をした。

 

 

 

 

 

「くっ! イレギュラー発生! 前方に巨大なフレア!!」

太田が報告するやいなや、Wunderの前方に巨大なフレアが恒星表面から噴き出した。

 

それは火炎なんて生易しいものなんかではない。炎の壁である。触れれば一撃。装甲が融解して航行不能に陥る。

 

 

「避けられないのか?!」

「ダメだ!大きすぎる!!」

流石にフレアの規模が大きすぎる。このままなすすべも無く突っ込むかと思われたが、

 

 

「古代君! 波動砲の重力収束撃ちならばフレアを破れるかもしれない! 沖田艦長、やるべきです!」

リクが、突破できるかもしれない方法を提案した。シミュレーションなんかやっている暇はない。波動砲の力に全振りした突破方法だが、ぶっつけ本番でやるしかない。

他に案はない。

 

「進路そのまま! 古代! 波動砲でフレアを撃て!」

「はい! フレアを、波動砲で撃ちます!」

古代のコンソールから波動砲コントローラーが展開されて、発射準備が始まった。

 

「古代くん、以前浮遊大陸で使った重力収束を応用して収束してみる。リク、アナライザー、やろう!」

「任せて!」

『了解デス!』

 

「波動砲への回路開きます!」

「非常弁全閉鎖、強制注入器作動」

 

 

「重力収束アルゴリズム修正、グリーゼ581の重力の補正計算開始」

今回は恒星の表面で波動砲を発射する。そのためエネルギーの束は恒星の重力に少なからず影響を受けてしまう。アンノウンドライブの重力子で収束バレルを形成しても、外部からの重力で不安定となってしまう。

 

そのため、グリーゼ581の重力の強さからバレルのサイズ等を計算してアルゴリズムを組み直しているのだ。

 

「重力子配列一部修正、プラス10、21、23。バレル直径400から200センチに変更」

 

「確認した。既存アルゴリズムの数値変更確認! アナライザー!」

 

『MAGIシステムトノ接続良好! アルゴリズム入力完了! 配置計算開始シマス!』

 

 

「補助エンジン出力最大! 睦月君、行けるぞ!」

徳川機関長が波動砲発射準備と同時に補助エンジン出力を全開にしてくれていた。

「ありがとうございます! アンノウンドライブと補助エンジン接続! 重力子生成! 量子跳躍随時開始!」

 

アンノウンドライブが光を放ち始め、補助エンジンの生み出す電力を貪る様にして重力子を生成していく。生み出された重力子は次々に指定位置に量子跳躍してみるみるうちに筒を形成していく。

 

「認証、沖田十三、波動砲発射を許可!」

「真田志郎、発射を許可!」

「古代進、発射を許可!」

本来ならば指紋認証だが、船外服を着込んでいるのでムリだ。しかし、認証システムには非常時用に音声認証が組み込まれているのでそれで認証を行う。

 

『認証確認、最終セーフティ解除します』

「最終セーフティ解除! ターゲットスコープオープン! 電影クロスゲージ明度20照準固定!」

 

古代の目の前に中空スクリーンが表示されて、戦闘艦橋の時と同じサイトマークが表示された。今は航海艦橋のままなので中空スクリーン展開によって簡易的に展開されている。

 

「薬室内、タキオン粒子圧力上昇! 88、96、100! エネルギー充填120%!」

 

「総員、対ショック対閃光防御!」

 

沖田艦長の指示で皆がヘルメットのバイザーを下ろした。

 

 

 

「後方、敵艦急速接近!」

レーダーを注視していた森が後方のガミラス艦の動きに気づいた。

 

 

 

「目標、ヴンダー! 砲撃開始!」

シュルツの指示でガイデロール級の主砲が赤い光の束を放つ。1発目は逸れたが2発目が艦尾に命中した。

 

 

「艦尾に被弾!」

「構うな! このまま撃て!」

 

「5、4、3、2、1!波動砲、撃てぇ!」

力いっぱい引かれた引き金は、波動砲口の溢れんばかりの光を放った。

 

重力集速バレルをくぐり抜けたその光は2本から

1本にまとまり、目の前の炎の壁を貫いた。

 

 

「このまま開口部を突破する。進路そのまま! 船体傾斜、船を垂直に立て! 補助エンジン出力最大、第4戦速!」

 

撃ちぬいたフレアは修復し始めている。Wunderが通れるスキマを補助エンジンの最大出力で全速力でくぐり抜けた。

 

 

 

「ヴンダー! プロミネンスを突破!」

「艦内温度さらに上昇! 生命維持システムに支障発生!」

 

「耐熱限界点超えます! 艦尾融解! 操舵不能!」

 

Wunderがフレアを撃ち抜くその光景を目の当たりにしたガイデロール級の艦橋では、あまりの艦内温度に耐えきれず船外服を着用した艦橋要員が悲痛な報告を上げていた。

 

 

艦尾が、艦底部が溶けたということは「もう動けない」ことである。

 

足元からフレアが上がってくる。

 

 

自らの死期を悟った艦橋要員は、各々がザルツへの忠誠を最後に示す。

 

 

シュルツの脳裏に浮かんだのは、

本星に残してきた妻子の姿だった。

 

 

その瞬間だけ、「ガミラス国防軍のシュルツ大佐」としてではなく、

ヴァルケ・シュルツになることが出来た。

 

 

 

(すまない……)

 

 

 

その瞬間、フレアが船体を真っ二つに叩き折り、ガイデロール級は爆散した。

 

 

 


 

 

 

「映像通信、途絶しました」

デスラー総督府の玉座の間で最期を見ていたデスラーは微小を浮かべていた。

 

「最期に一矢報いたか……シュルツくん」

自身の作戦を突破されたのに、その微笑を浮かべるデスラーの本心は計り知れない。

 

 

「そっ総統、これは私奴ではなくシュルツの失態であってその私奴は……あっ」

 

 

 

保身に走るゲールを指先で、文字通り「消した」デスラー総統は、今夜はこれでお開きにすることにした。

 

「いやはや、私でも予想のつかない面白いゲームだった。今夜はこれまでにしようか。セレステラ、戦死したものは2階級特進、遺族には、名誉ガミラス臣民としての権利を与えたまえ」

 

「かしこまりました」

ガミラスにも、「戦死で2階級特進」という文化はある。これが帝国繁栄の一部を担うことは閣僚の皆様方も承知している。

「おやすみ諸君」

「「ガーレデスラー!」」

 

玉座から降りて自室へと戻るデスラー総統は、ふと気になったことがあって歩みを止めた。

 

「そうそう、セレステラ。あのテロンの船の名はなんと言ったかな?」

「確か、ヴンダーと言ったかと」

 

「ヴンダーか……。記憶に留めておこう」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「ああ〜サッパリした!」

「暑かったね〜『奇跡の湯』、あって良かったにゃ」

 

そう会話しながら暖簾をくぐって外に出てきたのはマリとアスカだった。2人とも恒星の温度に汗びっしょりとなっていたので、作戦終了後に即時ダッシュで温泉『奇跡の湯』に直行。この後マリは赤木博士と入れ替わりでデータ検証、アスカは戦闘シミュレータで訓練のため、大急ぎで一風呂浴びてきたのだ。

ちなみに髪はまだ乾かし中のため、後ろで束ねている。

 

 

「軍のシャワーよりも、日本特有の温泉は良いわね。落ち着くし」

 

「昔日本には温泉の源泉がいくつかあったみたいだにゃ。ハルナっちいわく、その頃のデータを参考にしたらしいにゃ」

遊星爆弾で地表が滅茶苦茶になる前にも日本には源泉がいくつかあって、観光地として栄えていた。

艦内生活が長くなると乗員のストレスが溜まってしまうため、こういう福利厚生の質を高める必要があるとハルナは考えた。そのため、かつての温泉を無理言って再現したのだ。

 

「あのお2人も来たみたいじゃん」

見ると、タオルで汗を拭きながらこっちにやって来るハルナとリクが見えた。

 

 

「いい風呂だった?」

「「サッパリです(だにゃ)!」」

2人揃って全く同じ感想を言うマリとアスカを見るなり、ハルナはニッコリ顔だ。

 

「こだわって良かったわ~。長期航海なのにシャワーしかないのは残念すぎるからね。私達もお風呂入らないともう限界~」

「同じく。絞る前の雑巾みたいになってるし、艦内服が肌に張り付いて気持ち悪いしな」

2人とも絞る前の雑巾みたいになっている。

すなわち「汗びっしょり」である。

 

「女湯は私たち以外誰もいなかったのでハルナさん貸切ですよ?」

「まじ?!行ってくる!」

駆逐艦も青ざめる程の加速力で温泉に直行したハルナを見送ったリクは、汗を流すために1人風呂に行ったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなりました、博士」

「サッパリした?こっちはあと少しよ。……よし出たわ」

 

 

《解析完了》

 

成分解析の結果、地球製の極限環境対応型塗料と確認

 

磨耗率から推定170年前に塗布されたものと確認

 

 

 

「……赤木博士、これって」

「ええ、170年前に人類はこの骨格に関わっているようね。しかし……2020年代に人類が火星に到達した記録はない」

 

「極秘ミッションが行われたっていう事はありませんか?」

 

「その可能性は低いと思うわ。2020年代の技術では、火星に向かうだけでも大規模なロケットが必要となるし、何より国家規模で行う必要性があるから何らかの記録が残るわ」

 

「じゃあ何者だって言うんですか?」

 

「これは仮説にすらならない私の思い付きだけど聞いてくれるかしら?170年前、この骨格に誰が関わったのか」

 

 

 

 




VLBI望遠鏡って、原作ヤマトにも装備されているようなんですが、電波望遠鏡を複数台使う必要がある上に電波望遠鏡同士をなるべく離す必要があります。

VLBIは、1台では視力の悪い電波望遠鏡を複数台繋ぐことで光学望遠鏡に迫る視力を獲得できます。
しかも観測するのは電波のため、やり方次第ではブラックホールの姿をも捉えてしまいます。


ホントにWonderのアレイアンテナって便利です。
Wonderの目と耳なのでね。


さて、外宇宙にやっと進出したので、テーマソングみたいなものを決めたいと思いましたら、良さそうなものがありました。
楽曲コードを載せておきます


さて、次はこの小説ならではの話です(ง •̀_•́)ง
やっと書けました……!早く出したいです
それと、基本情報の午前試験が近いので、しばらくお休みしようかと思います。

一応話は出来てますので、それは日を置いてうpします
(。-人-。) ゴメンナサイ。。。

では、次の話で会いましょう
フリフリ((ヾ(・д・。)マタネ
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