宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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そろそろ暑くなりますね
皆さん熱中症に気を付けて下さい。

夏バテとかも怖いですね。


では、次元断層編スタートです


現世(うつしよ)幽世(かくりよ)の狭間で

 

 

ゲルバデス改級航宙特務輸送艦 フリングホルニ……

 

EVANGELION Type nullを輸送、整備及び戦闘時に電撃展開するための特務艦艇で、見た目はゲルバデス級と似通っているが、その全長は450メートルと巨体で、ガミラスでも有数の大型艦艇である。

 

 

……しかし、その艦艇を扱う部隊は表には出ないため、「知られざる艦艇」という位置づけである。

 

 

 

「初陣で右腕の損傷のみで使徒を討伐……初陣は大金星だったな」

 

「司令が直々に訓練指導をして下さったお陰です」

 

「謙虚なのはいい事だ、だがこれは誇るべきことだ。中尉」

 

フリングホルニのケイジで話をしているのは、Type nullのパイロットであるメルダと、艦長兼司令を務めているアウル・クダンだ。

 

 

2人の目の前で横たわるType nullは、装甲の所々に擦過傷が見られるが交換するほどのものでもなく、右腕については自己再生で治癒可能な損傷だったため、右腕を「組織再生促進包帯」で巻いてそのままとなっている。

 

見た限りでは元気そうなType nullを眺めていたメルダは、ふと気になったことが出来、クダン司令に聞いてみた。

 

「司令、1つよろしいでしょうか?」

 

「何だね?」

 

「この機体は、回収された超大型艦艇の主機を解析して建造された機体であると技術局の方からお聞きしたのですが、その先ははぐらかされてしまいました。艦長は、その機体と超大型艦艇について、なにかご存知ですか?」

 

それを聞いた途端、クダンは渋い顔をした。

 

 

「そのことか……」

周りの人に聞かれてはまずいことだという事を理解しているクダンは、メルダの耳元でこう話した。

「この事は上層部からは機密扱いとなっている。よって、この船の人員にも知らされていない。だが、君には話した方がいいのかもしれないな」

 

事情を察したメルダが小声で話し始めた。

 

「機密を話しても大丈夫なのですか?」

メルダが心配するのも無理はない。機密漏洩は重罪、場合によっては死罪にもなりかねない。

「私は今回の部隊創設にあたり、上層部からこの機密の一部を預かり、君にのみ開示の許可を取り付けることが出来た。来なさい」

 

 

クダンはメルダにそう耳打ちすると、艦長室に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず、これを見てくれ」

クダンはそう言って、デスクのカギ付きの引き出しから一枚の写真を取り出し、メルダに手渡した。

 

「これは……」

 

 

 

 

その写真に写っていたのは、中央部からくの字に折れ曲がり、機械類の部品をまき散らした黒い鳥だった。

 

否、巨大な戦艦である。

 

 

 

 

「明らかに人為的に造られたものだ。我々ガミラスはこれまで多くの星間文明に接触し、併合を進めてきた。文明にはそれぞれ、特筆すべき技術が多数確認されてきたが、この船に該当する特徴を持った文明をいまだ確認できていない」

 

「未確認の文明が創り出した戦艦という事ですか?」

 

「はじめは技術局もそう推察した。だが、この船には有機的なパーツも使用されていた。つまり、戦艦でありながら生命体でもあったという事だ。さらに、内部部品にはテロンの言語、数字が幾つか確認できた。状況証拠から考えて、テロンが造りだした有機戦艦ということとなる」

 

「ちょっと待ってください、恒星間航行すらままならなかったテロン人が、こんな特異な大型艦を造れるとは到底思えません!」

 

「同意見だ。だが現実に存在しているのだよ。サイズはガイデロール級が7隻縦に並んでやっと同じくらい。そのような大型の戦艦を動かす動力というのが、君の機体の原型となった巨人だよ」

 

「そして建造されたのがType null……」

 

「ああ、その主機から発生する莫大なエネルギーで航行していたようだが、飛行原理がいまだ不明のまま。我々の技術体系とは根本から異なっている。極めつけはコレだ。テロンの言語ではと推察されている」

 

 

そう言いながらクダンは、メルダに一冊の資料を手渡した。

 

 

表紙は一部黒で塗り潰されていたが、こう書かれていた。

 

 

《サレザー恒星系宙域にて回収された超大型艦艇「Erlösung」仮称「黒鳥」についての調査報告書》

 

 

 

 

「……これがあの黒い船の名称ですか。何と読むのですか?」

「分からない。如何せんこの言語のサンプルが少なすぎる。我々は撃沈したテロン艦の装甲を回収しては装甲表面の文字の解析を行ってきたが、このタイプの文字は確認されてない。私が知る情報はここまでだ」

 

「ありがとうございます、クダン司令」

 

「君の期待に応えられてよかったよ。さて、本星に付いたらガルの方に一度顔でも出しておくか」

 

「久しぶりですね、叔父様と父上が会うのは」

 

仕事モードから通常モードに切り替わったクダンの様子を感じ取ったメルダは、クダンの事を叔父様と呼ぶ。

 

「仕事ばかりでな、顔を合わせる時間が少ないのが悩みどころだ。酒の一杯でも酌み交わしたいものだがなぁ」

メルダの父親であるガル・ディッツとクダンは古い仲で、時々酒を酌み交わして話をしている。ちなみに今回の任務に出撃する前にもクダンはガルと飲んでいた。2人が話すことと言えば、大方近頃の戦況の話なのだが……。

 

『まもなく、本艦隊はジャンプ航法に移行する。総員、ジャンプに備えよ』

「本星に戻るのも近そうだ」

 

 

 

 


 

 

 

Wunderは現在天の川銀河の端、銀河間空間の1歩手前を航行中だ。もう数十回も行ったワープ航法の準備は、慣れたものだ。

『ワープ開始10分前。総員、ワープに備えよ』

艦内にアナウンスが流れる。皆余裕顔だ。最初の頃はワープで体調崩す人が続出したが、今はほとんどの人がへっちゃらになっていた。

 

 

そんな「ワープ酔いへっちゃらな乗員」の中でも航空隊は隊の控え室で自由に過ごしていた。

 

「もう慣れっこだよな〜」

 

「気づけば着いてるからな」

篠原と沢村はのんびりしながらトランプを並べている。閉鎖環境である艦内ではどうしても娯楽が少ない。レク施設は沢山作られているが、それでも賄い切れない部分がある。

そのため乗艦時に、邪魔にならない程度の娯楽道具の持ち込みが例外的に許可された。

普通ならダメだが、1年間の長期航海ということもあるため例外的に認められたルールだ。

 

余談だが、マリが持ち込んでいる旧時代の映画アーカイブもこの持ち込み制度で持ち込んだものだ。

 

そんな和やかな雰囲気な航空隊控室の一角で、一人思い出にふけていた山本の手には、

赤い石のはめ込まれたネックレスが乗っていた。

 

 

 

(気を付けてね、兄さん)

 

山本の脳裏に浮かぶのは兄の「山本明生」の姿、最後に交わした会話だ。

 

国連宇宙軍の制服を身にまとい、帽子を少し斜めに被り、少しもブレることなく完璧に決まった敬礼。

この姿を最後に、明生が妹のもとに帰ることはなかった。

 

 

 

「本艦はまもなく、ワープ航法に入る。総員、ワープに備えよ」

 

艦内の照明が薄暗くなり、注意喚起用のアラート音が鳴り始める。

 

 

 

 

 

「ワープ先座標特定、絶対銀経274.76度、絶対銀緯-12.73度。距離63.7パーセクの空間点」

 

「確認した。目標座標固定しました!」

太田の操作で、ワープ先の目的地が設定された。

意外なことに、宇宙にも緯度と経度がある。ワープ先の座標を確認してからワープするのは当然のことだが、もしも宇宙に緯度と経度の概念がなかったら、ワープ先をいちいち望遠鏡で選定して測定しなければならない。

その点、緯度と経度が分かっていれば、ワープ先の選定がスムーズに済むし、何より航路の作成がかなり楽になる。どこに何があるのかが、正確な数値で確認できるからだ。

 

 

『波動エンジン出力上昇。44から99へ』

徳川機関長の指示で両舷波動エンジンの出力が上がっていく。いつも通りのワープの準備、何の滞りもなく進んでいく。

「ワープまで、5、4、3、2、1」

島の秒読みが始まり、ワープ用のワームホールが進行方向上に出現する。

 

「ワープ!」

沖田艦長の号令で島が思いっきり操縦桿を押し込む。

 

あっという間にワームホールに飛び込み、今日も空間跳躍……

 

 

 

しかし、この日は危機的な状況に陥ることとなったのであった。

 

 


 

 

1ナノ秒……1秒の10億分の1という一瞬にも満たない時間。

ワープの所要時間は、およそ人間には知覚することの出来ない程短い時間だ。

 

よって、操縦桿を押し込んで光を抜けて気づけばワープ終了がいつものワープだ。

 

 

 

だが、目を開けてみると……

 

「これは??ワープ時の異空間じゃないか」

 

「どうなっているんだ?」

1ナノ秒で終了するはずのワープがまだ続いているのだ。それも「ワープ中であるという事」を皆が知覚している。

 

「これは……状況を確認。太田、本艦はまだワープをしているという事でいいのか?」

 

「はい、本艦は現在、ワープを継続中です」

 

「何が起こってるんですか?!」

ハルナとリクが艦橋に飛び込んできた。明らかにいつもと状況が違うことに異常を感じて走ってきたのだ。

 

「本艦は現在ワープ中だ。そして我々は、ワープ時の1ナノ秒の時間を体感しているようだ」

 

「そんなまさか……真田さん、ミッションタイマー見せてください」

真田のコンソールには、ミッションタイマーが設置されている。Wunder発進時からずっと動き続けているこのタイマーは、本来ならば静かに時を刻み続けているはずなのだが、

 

 

「止まっている……」

 

 

そのタイマーも止まっているのだ。

 

 

 

「副長から総員に通達。本艦は現在ワープを継続中。総員はその場に待機せよ。繰り返す、その場で待機せよ」

 

 

極彩色の芸術的な異空間を駆け抜けていくWunder。このまま続くのかと思っていたら、突如艦に激震が走った。

何かに正面から衝突したような衝撃と共に閃光がほとばしり、

 

 

 

目を開けたら、明らかに異常な空間に船は浮かんでいた。

 

 

 

「な、何なんだよここは?!」

 

「深海……?のようにも見えるけど、ここは宇宙のはず」

ハルナが首をかしげる。彼女は宇宙用艦船では無類の強さを発揮するが、このような宇宙の謎現象には疎い。

 

「ここは……通常空間ではないな。レーダー及びスキャナの反応は?通信は使用可能か?」

沖田艦長には何か思い当たる節があったのか、観測機器に何か反応がないか太田に聞いた。

 

「レーダー及びスキャナ、ともに反応なし!」

 

「超空間通信は使用可能のようです!」

相原が言うには、一応通信は可能なようだ。

「使えても、この空間内限定だろう。この異空間の境界面に反射されて外部との通信は不可能だ」

助けは呼べない。通信波が外に届くことはない。

 

「艦長、どうやら我々は、次元のはざまに迷い込んだようです」

「異次元との結節点、次元断層か。仮説では存在が予見されていたようだが、まさか実在するとはな」

 

 

『艦橋!こちら機関室!』

「どうした?」

 

『波動エンジンに異常発生!原因不明のエネルギー流出減少が起こっとります!』

 

「機関停止」

 

沖田艦長の命令で両舷の波動エンジンが唸りを沈めた。

 

 

 

「2人とも、この空間内部の精査が完了した。この空間内部の位相は通常空間とは反転している。恐らくこのままエンジンの同調を行い続けていたら……」

 

「衝突後のエネルギー位相にも影響が出て、機関にダメージを負うことになりますね。位相が異なるから最悪光学フィルタにも影響が出て波動エネルギーの逆流が……機関長!」

リクがいつになく青ざめた。マズイことに気が付いたのだ。

『どうした?』

 

「波動エンジンを各個バラバラに動かせるように衝突炉へのバルブを閉じてください! 最悪の場合、機関損傷で永久に出られなくなります」

 

 

 

いや、機関損傷なんて生易しいもので終わったらまだいい方だろう。

エネルギー逆流防止の光学フィルタが機能不全を起こしたら衝突前のエネルギーと異常な反応を起こし、波動エンジン本体の炉心なんかに流れ込んだら、

 

 

機関暴走からの轟沈だ。

 

 

「危なかった……」

「ええ、ここは波動機関殺しの空間……まさに死の海域ね」

 

 

「真田君、この空間の精査を進めて頂戴」

艦橋に入ってきたのは、赤木博士とマリだった。

 

「赤木博士、この空間は外部の空間と空間位相が反転しています。恐らくそれが原因で波動エンジンからエネルギーが流出しています」

 

「まさにバミューダトライアングルね。地球の魔の海域とはよく言ったけど、それの宇宙版ね」

「ちょっといいかにゃ、正面に浮かんでいる物体はもしかしてすべて船?」

マリが指さす先には、見たこともない形状の船がこの空間で溺れていた。

 

 

『正面ニ、未確認物体多数!一部ガミラス艦特有形状ヲ確認!エネルギー反応ナシ!』

アナライザーの操作で航海艦橋正面に中空スクリーンが表示され、正面の残骸が表示された。

 

見れば見る程船だ。ボロボロになっているが、確かに船だ。

 

『11時ノ方向ニガミラス艦艇多数ヲ確認!識別Lクラス巡洋艦2、航空母艦ラシキ艦艇1、駆逐艦4、巡洋艦3!』

 

外部カメラをそちらに向けると、ガミラス艦隊がこの空間で浮いていた。

こちらを視認したようで、主砲塔をこちらに向けてきた。

 

「生きてるのか?!」

「ええ、彼らもこの空間に入り込んだのは比較的最近のようね」

「どういうことですか?」

ハルナが赤木博士の答えに疑問を呈した。なんで比較的最近に入り込んだことが分かったのか?

 

「彼らの機関技術は不明だけど、もしも我々と同じ技術でできていると仮定するならば、機関が停止するのは時間の問題よ。それでもまだ生きているという事は、何らかの対抗策があるか……この空間に入り込んでからそんなに時間がたっていないという事よ」

 

「ガミラス艦、臨戦態勢に入りました」

森の報告で艦橋に緊張が走る。ガミラス艦艇がこちらに砲塔を向けてきたのだ。

 

「応戦しましょう!火力は圧倒的にこちらが上です!」

 

「まて、泥沼に足を取られた二頭の獅子が、互いに相争えば沈むだけだ。向こうはそれくらいわかっているはずだ。南部、全ての砲塔を仰角最大まで上げ、砲塔をガミラス艦とは逆方向に向けるんだ。こちらに敵意のないことを示せ」

沖田艦長の指示で正面の主砲副砲が仰角最大にまで鎌首を挙げた。絶対に当たらない状態を敵に見せることで、「戦うつもりはない事」を示す。

 

問題は、敵がそれをどう受け取るのかという事だが……

 

 

「ガミラス艦に反応あり!」

 

なんと、全てのガミラス艦が砲塔をWunderとは逆向きに向けたのだ。

 

「こちらの意図は伝わったようですね」

 

艦艇を用いたジェスチャー……通信が届かなくても行動で意志は伝わるのだ。

 

「艦長!ガミラス艦隊が呼びかけています!映像通信!」

「ファーストコンタクト……」

地球人は、いまだにガミラス人の姿を知らない。

つまりこれは事実上、初めてのガミラスとの接触だ。

「メインモニターに回せ」

 

緊張が走る中、ガミラスからの映像通信が入った。

 

モニターに映ったガミラス人の姿を見て、Wunder艦橋クルーは決して軽くない衝撃を覚えた。

 

 

 


 

 

 

「あの形状……あの船と酷似しています」

 

「偶然と思いたいが、似すぎているな」

メルダとクダンはフリングホルニの艦橋で目を見張っていた。あの黒い船に酷似した船体構造、鈍い鋼色の翼、艦尾まで細く長く伸びる尾、鳥類に酷似した中央船体艦首部分。

 

 

どうみてもあの船の設計思想を持っている。

 

 

「とにかくその疑問は置いておこう。ディッツ中尉、貴官に臨時の任務を与える」

クダンが声を張ってメルダに命じた。司令官モードに切り替わったことを察したメルダは姿勢を正して、上官であるクダンの方に体を向けた。

 

「これより、貴官はテロン大型戦艦に乗艦。我々の提案を直接テロン人の彼らに伝え、協力を要請せよ」

 

「ですが、私のツヴァルケは……」

 

「本星から発つときに運び込んである。頼めるかな?」

 

「ザーベルク!」

 

____

 

 

 

 

『アルファ2発艦スタンバイ』

第1格納庫からコスモゼロ2号機がせりあがってくる。その機体に乗っている山本は少々複雑そうな心境だ。

 

 

まさかガミラスが我々と同じ姿形をしていたなんて、誰も想像していなかったのだから。

 

 

唯一違うのは肌の色、肌の色の違いなんて、単なる「バリエーションの違い」として片づけられてしまう。地球にも肌の色が違う人なんて普通にいる。

 

 

『ガミラス艦から艦載機発艦を確認、アルファ2発艦せよ』

 

「了解。アルファ2出ます」

カタパルトに乗るコスモゼロがリニアで射出され、ガミラス機に沿って飛行する。

 

『アルファ2はガミラス機を左舷第3格納庫に誘導せよ』

 

 

キャノピー越しに見えるのは、赤い戦闘機。そして目を凝らすと、人が乗っている。

 

山本は今は命令に従って、ガミラス機に随伴し、第3格納庫に誘導した。

 

 

 

____

 

 

 

 

「第3格納庫はガミラス機の収容準備にかかれ。保安部を配置」

 

「待った古代君、保安部は最低限の人員でいい。銃は向けちゃダメだ」

ここでリクが待ったをかけた。

「どういうことですか」

「敵なんですよ?」

古代と南部が物申すが、リクが珍しく声を荒げた。

 

「こちらが敵意のない事を示し、向こうもそれに応じた。一時的な停戦状態の今、向こうの使者に銃を向けたらどうなる?それはこちらが敵意を示すことに繫がる」

 

それに気づいた古代と南部はおとなしくなった。

 

「睦月君の言うとおりだ。使者に銃を持って対峙すること自体が、我々は野蛮な存在という印象を彼らに植え付けかねない。だが、保安部の銃の携帯だけはさせた方がいい。それではあまりにも無防備だ」

 

「うむ、保安部から人員を2名出せ。乗降スロープに配置させるんだ。睦月君、古代、使者を迎え入れるぞ」

「「了解」」

 

「私も行かせてください」

ハルナが艦長に打診した。

 

「僕一人でも大丈夫」

「でも、なんとなく心配だから……」

 

「暁君、睦月君と共に使者を最前線で迎え入れるんだ」

その様子を見かねた艦長が2人に重要任務を任せた。

 

 

 

 

人類史史上2回目となる異星文明との接触、その大仕事は、2人に任された。

 

 

 


 

 

 

『第3格納庫、与圧調整急げ!』

 

第3格納庫はいつもより慌ただしかった。

なぜかって?

 

それはもちろん、敵国の戦闘機が目の前で格納されているのだから。

 

 

そんないつもとは明らかに空気の違う格納庫で、親善大使役のハルナとリクは平常心を保っていた。

 

「ガミラス人の見た目がホントに人と変わらないなんてね」

「肌が青いのは驚いたけど、まさか人間の見た目をしているとは」

「何かもっと、異形の姿かと思った。映画の見過ぎかな」

 

そんな緊張ほぐしの会話をしていると、ガミラス機のキャノピーが開き、緊張が一気に高まった。

 

 

機体から出てきたのは紫色のパイロットスーツを着て、ヘルメットを被ったガミラス人。そのヘルメットを取ると、まだ幼さを残した女性の顔が見て取れた。

 

 

2人はもちろんながらガミラス語は話せない。だが、さっきオルタから聞いた文章で何とかなるはずだ。

 

 

2人で地球式の敬礼をしながら、覚えたての片言のガミラス語でこう話した。

 

 

《本艦にようこそ》

《私たちは貴官を歓迎します》

 

それが相当インパクトがあったのか、ガミラス人の女性は驚いた顔をして一瞬硬直したが、すぐに元に戻った。

 

そして、首元に付けている小型の機械に触れ、右腕を直角に曲げ手のひらをこちらに向けた状態でこう応えた。

 

「初めまして、私は銀河方面第707航空団所属、メルダ・ディッツ。お2人の歓迎に感謝します」

 

 

 

 

「……上手くいってますね」

「まさかとは思ったが、2人がガミラス語を習得していたとは……」

2人の様子を上から見ていた古代と沖田艦長は舌を巻いていた。ガミラス語をどこで覚えたのか、2人には不思議だった。

『睦月です。これより第1会議室にメルダさんを移送します。スタンバイお願いします』

 

「了解です。あと睦月さん、ガミラス語なんてどこで……」

『オルタからさっき聞いただけだよ。文法は分からないけど、出迎えるならこれくらいは話せた方がいいかなって思ってね』

 

何とびっくりさっき覚えただけとは。

たとえ敵国の使者でも丁重に迎える。2人の真面目さが良い方向に働いていることに、沖田艦長は感心して第1会議室に向かった。

 

 

 


 

 

 

「艦長、戦術長。メルダさんをお連れしました」

 

ガミラスとのファーストコンタクトは2人の真面目さで今のところ問題なく進んでいた。

 

「どうぞ、お掛けください」

「失礼します」

 

「私が、本艦の艦長の沖田です。こちら3人は……」

「本艦の戦術長の古代です」

「本艦を設計した睦月リクと」

「同じく、暁ハルナです」

 

「改めて自己紹介します。私はガミラス銀河方面軍第707航空団所属、メルダ・ディッツ。階級は少尉です」

「我々の帝国内にも、皆さんのように、肌が青くない民族が存在しています。」

 

「それは、異民族という事ですか?」

沖田艦長が真っ先に疑問を示す。

「いえ、併合された民族です。我々の星では二等ガミラス人と言われています」

それを聞いてリクは、ガミラスに我々地球人類との類似点を見つけた。

異民族との併合、かつて地球でも力で異民族を降伏させて併合した過去がある。

なぜガミラスが異民族の併合を行っているかはわからないが、地球に近いものを感じた。

 

 

「なるほど、全く同じ見た目の民族がいるとは……おっと、それでは本題に入りましょう。ディッツ少尉の提案を聞かせてもらえないでしょうか?」

 

「我々はこの空間から脱出できる方法を考案し、理論上は可能であるという事を確認しています」

 

 

 

 

______

 

 

 

 

 

「波動砲か……」

「この次元断層の壁面、通常空間との結節点に向かってその武器を放てば、一時的ながら通常空間への突破口が形成されるはずです」

 

「しかし、それではWunderが航行不能になってしまう!」

「いや古代君、航行自体は可能だが推力が足りなくなる」

 

「? どういうことですか?」

 

メルダは分からない顔をしていた。メルダは、このように想像していた。

「あのような大出力兵器を放てば、全エネルギーを使い果たして航行不能になる」

それでも航行が可能な理由がメルダには分からなかったが、その疑問はすぐに解消される。

 

「この船には波動エンジンが2機付いている。そのため片方のエンジンで波動砲を撃ち、もう片方で推力を供給すれば一応航行は可能だ。さっき衝突炉のバルブを閉じたからすぐにでもね」

 

「だけど、この船を動かすためには推力がどうしても足りないの。無茶なお願いかもしれませんが、脱出時に推力を肩代わりしてもらえませんか?」

 

「我々の艦隊で貴艦を動かせるかどうか、司令に打診してみます」

 

「動かすって……この船、2500メートルもあるんですよ?」

古代の言うこともご尤もだ。このような巨体がサイズ差があれど10隻の艦艇で動かせるのか?

 

 

「適切な配置位置で最大推力を発揮すればこの巨体を動かすことも可能だが、そちらの艦艇の機関が損傷して、航行不能になる可能性があります。脱出できた場合、しばらく我々がそちらの艦隊を曳航することも考えなければ……ともかく、貴官の案をこちらで精査してみます。しばらくお時間いただけますか?」

 

「お願いします」

 

 

_____

 

 

 

「なるほど、波動砲か」

 

「波動砲はその射線上に、強力な次元波動を発生させます。その干渉波が次元断層境界面に衝突することで、断層境界面に回廊を形成することが出来ます。ですが波動砲の出力を絞り、口径を絞る必要があり、威力を間違えるとこの空間の崩壊を招き、通常空間への脱出が危うくなる可能性があります」

 

「でもなんで波動砲の事を……」

 

「木星とグリーゼ581で使用した時に、彼らなりにマークしたのだろう」

「あいつら、信じられるのか?」

「この方法を知っていながら脱出しなかったのは、方法はあるけどそれが出来る道具を持っていなかったからなのか」

 

「俺たちに撃たせてそのまま脱出するのかもしれないぞ」

南部はいまだに疑っている。正しい反応かと言われたらどちらともいえないが、地球とガミラスは絶賛戦争中だ。

一時停戦中とはいえ、敵国の言うことをすぐに受け入れられるものではない。

その点では、正常な方だ。

 

 

「だが、信じるのだ。例え敵であっても、信じるみよう」

 

 

_____

 

 

 

「司令、テロン人に接触しました。我々の提案を今精査してもらっています」

 

『そっちはどうだ?』

 

「ここは本当に敵の船なのでしょうか……テロン人は、私を使者として対等に交渉してくれました」

 

『そうか、それを聞けて安心した』

 

「司令、心配し過ぎです。それと、テロン人から要請があり、回廊形成後の脱出用推力として我々への協力要請がありました」

 

『こちらは回廊を形成するための武器、向こうはその後の推進力を欲している……協力しなければ脱出はありえないか……』

 

「でも、私はテロン人を信じてみたいと思います」

 

『そうか……推力の件ならこちらで何とかする』

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

「結論が出ました。貴官らの提案を受け入れます」

「感謝します。こちらも、推力の件は司令は受け入れてくれました」

 

「ですが、1つ問題があります。回廊形成時に波動砲のエネルギー火線を収束しなければなりません……波動防壁で波動砲を収束することも考えましたが、波動砲発射時には防壁を張ることが出来ません」

 

 

 

 

メルダは深く思案した。あれほどのエネルギーをどう収束するか、今あるものでどう造るか、深く考えて後に思い付いたのが、

 

 

 

 

使徒討伐の方がマシに見えそうな危険な賭けだった。




重要なこと書きました……

Type nullの機体はサレザー恒星系で回収された艦の主機を解析して作られたのものですが、その戦艦がまさかのあの戦艦でした。


外はとんでもなく暑いです。
最高気温40度になりそうです。2199年の地球は最高気温何度になっているのでしょうか……

次元断層から脱出する準備にかなりの時間をかけることになりましたが、それもこれも波動エンジン2個乗せにしたからできる芸当です。


また別の資格試験をやることになったので投稿ペースが落ちるかもしれませんが、これ書いているときに日刊のランキングで偶々29位に入ってアクセス数が1日で600近くいって今年一番ビックリしました。


長くなりましたが、次の話でお会いしましょう
ではでは
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