宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
箸休め感覚で後に投稿するものを色々書いてたら、結構な量になりましたww
では、次元断層後編です。
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『馬鹿な真似はよせ! お前が持たないぞ!!』
「ですが、Type nullの防壁ならば……」
『確かにType nullのフィールドは陽電子カノンも防げたがそれとこれでは話が別だ! あれ程のエネルギーに耐えられる防壁を造るなんて、お前が正気を保てる保証は無いんだぞ!!』
「これしか手がありません!! 対ラミエル用の防壁偏向装備ならば防壁の形は変えられます、強度も上げられます。やるべきです!」
メルダの案はこうだ。Type nullの防壁で波動砲の収束用バレルを即席で造り、重力バレルでの収束と同じことをしようと言うのだ。
だがこれは、メルダ自身が危険な状態となる。
波動砲のエネルギーは、小宇宙に匹敵する。そんなエネルギーに耐えられる防壁を造るのは相当な集中が必要だが、余りにも集中しすぎると正気を保てなくなる可能性がある。
『今までお前の我儘は何とか許容してきたが、コレは許可できない。お前に何かあったら私はガルに顔向け出来ん……もっと自分の命を大事にするんだ……』
クダンにとって、メルダは親友の娘だ。
クダンは司令として彼女を預かり、同時に親友として彼女を預かった。
任務の際は、メルダが十分に動けるように配慮して、武装の面でも彼女の要望に最大限応えてきた。
(くれぐれもうちのバカ娘を頼むぞ)
(ああ、メルダの事は任せろ)
ガミラス星を発つ前にクダンはガルと約束した。その約束を違えることはできなかった。
「司令、前におっしゃいましたよね? 帰還するまでが任務だと。今我々に置かれたこの状況が、ガミラス星に帰還するための最後の任務なら、私はその任務を、いえ……彼らと共にその任務を果たします!」
「……クダン司令、赤木リツコと言います。その防壁偏向装備の検証を我々にも手伝わせてもらえないでしょうか。時間がありません、ディッツ少尉の案が本当に可能なのか早急に調べるべきです。今は、あらゆる方法を模索するべきです」
「お願いします! 司令!」
『……アカギリツコさん、技術班のメンバーを連れてこちらに来てください。検証を始めましょう。ディッツ少尉、一時帰還してくれ』
クダンはそう言い、通信が終了した。
「地球のコスモシーガルがガミラスの航空母艦に着艦って変な感じね」
「地球史に残すべきことなのは間違いないけど、複雑ね」
コスモシーガルに乗り込んだハルナとリク、真田、マリ、赤木博士は、運転手役のアスカと山本の操縦でガミラスの航空母艦に向かって異空を飛ぶ。
先導役のメルダの機体の後ろをついていく形で航空母艦に着艦した後、ガミラス兵の誘導で巨大な空間に誘導された。
「これは……!」
「巨人だ……」
「装甲を張り付けた巨人ね……動力は何?」
「かっこいいにゃ、でもどっかで……」
「メルダさん、これが……」
「ガミラス軍の試作した、汎用人型決戦兵器EVANGELION Type nullです。うすうす気づいているのかもしれませんが、私はこの機体のパイロットでもあります」
「君は、戦闘機乗りではなかったのか?」
「いえ、同時に戦闘機乗りでもあります。所属は第707航空団で、極秘裏に第101試作人型戦術機動兵器打撃部隊の第1軍でもあります。階級もこの極秘部隊では特務中尉という位置づけになっていて、航空団所属の方は一種のカモフラージュでもあるんです。このことは『ガミラス国内』では極秘となっていますのでくれぐれもガミラス本星で言いふらさないでください。こっちです」
そう言ってメルダにつれられた先には、物々しいサイズの武装の数々が保管されていた。
「これは全てType null用の特殊兵装です。全てこの部隊の任務のために造られた物で、それぞれ特徴が違います。そして、私が言っていた装備があれです」
メルダが指さした先には、緑色の奇妙な形をした放熱板のようなものがあった。
見たところ、何枚かの細い板状のパーツか何枚も横に連なっているようだ。
「フィン・〇ァンネル?」
「フィン?」
マリが唐突に発した「ロボット好きなら誰もが知っているであろう武装」の名前は、ガミラスでは初耳な存在だ。
聞いたことの無い単語にメルダが首を傾げる。マリには、あの武装が「あの機体のあの遠隔誘導兵器」に見えたのだろう。
「あぁ〜お構いなく、とにかくコレですか」
「はい。まだ名もない特殊兵装の一つで、このユニットを使用することで、機体の防壁の形を変えることが出来ます」
メルダとガミラスの作業員の説明によればこうだ。
Type nullの防壁は特殊な位相空間の展開によるものであり、この位相空間防壁は防壁誘起プレートを用いた物理的な干渉を行うことで、防壁の形と強度をある程度自在に変えることが出来るという事だ。
ユニットは一対の翼のようになっていて、最大で8機の偏向ユニットを装備可能で、それぞれをパイロットの思考操作で飛翔させて稼働させる。
防壁展開に意識を裂きながら偏向ユニットの制御も同時に行う必要があり、技術的な限界点という事もあって扱いの難しい装備となっている。
「波動防壁とは根本から異なる防御システムとは……興味が尽きませんね」
「ええ、私はその防壁の発生源と思われるあの機体の事を知りたいわ」
最強パーティに名を連ねる技術者の皆さんの目は、爛々と輝いていた。
今まで見たことも聞いたことのない超技術。未知の装備に巨大人型兵器。目が輝かないわけがない。
普通の人なら目が点になる超理論でも、彼らにとっては飛びつきたくなるネタだ。
人類よ、これがロマンの塊というものだ。
でも今は時間がない。やるべきことに移ろう。
「とにかく、検証に入るわ。私とマリで特殊装備の耐久性と最適なユニット配置を調査。真田君、暁君、睦月君であの機体について調べてちょうだい。ディッツ少尉……えっと階級はどっちで呼べばいいのかしら? 少尉? 中尉?」
「普通にメルダと呼んでもらっても大丈夫です。案内します」
「ちょ、ディッツ中尉、機体解析させて大丈夫なんですか?」
随伴のガミラス人作業員が少しマズそうな顔をしたが、
「司令から許可はとってあります。準備を」
そこは抜かりなく許可が出ていた。若干の不安さを抱えながらおもむろに耳元の通信機のスイッチを入れて技術班全体に連絡を入れた。
「……班長から技術班各員に通達、これよりテロン艦からの技術班と合同でType nullの緊急調整を行う。準備にかかれ!」
「アナライザー、推力の配置は?」
『各艦艇ノ最大推力及ビ、主機関最大出力持続時間ヲ考慮シタ結果……確定シマシタ!』
中空スクリーンに映し出されたのはWunderを上から見た図で、そこにガミラス艦艇が同スケールで重ねて配置されていく。
『メルトリア級ヲ艦尾ニ2、ゲルバデス改級ヲ中央船体上部ニ1、クリピテラ級ヲ主翼ニ2ズツ計4、ケルカピア級艦尾ニ2、艦尾テールスタビライザーニ1、計3!』
「ありがとう、アナライザー。それにしても、自軍の主機の最大出力を開示するなんて……」
「彼らも脱出に協力的なんですよ。その誠意がコレなんでしょう」
島も操縦桿を握ったままそう答えた。だぎ、まさかガミラス艦が自分たちの船にまるでコバンザメのようにくっ付くなんて思いもしなかっただろう。
「自分たちをブースター代わりにするなんでな、あのクダンっていう司令はずいぶん思い切った考えをするな」
「沖田艦長みたいだ。主砲の旋回で敵意のない事を示すなんて誰も思いつかないよ」
古代は、クダン司令に沖田艦長みたいな部分があるのを感覚的に感じ取っていた。でも、メルダを我が子のように心配していた。
沖田艦長にも、そういう時期があったのだろうか……
「古代。波動砲、しっかり頼むぞ」
「任せろ、操艦は任せたぞ? 島」
「任された」
2人は拳をぶつけ合った。仲の良いことである。
「アカツキさん、ムツキさん、サナダさん。これを付けて下さい。あと、プラグ内に入るときは命綱付けて下さい」
メルダがそういって取り出したのはヘルメットだった。しかも何か機械が取り付けられている。
「このヘルメットは? というか命綱って……」
命綱が必要な作業が行われるなんてとても思えなかった。今からやるのは
機体内部に入って調整を行うはずなのだが……
「このヘルメットは思考汚染防止と、思考が機体に混入するのを防ぐためのシールドヘルメットです。これがないと精神汚染が起こります。私も乗るときはパイロット用のを被ってます。命綱はプラグ深部に転がり落ちないようにするためです。ホントに危険ですから」
3人揃って今年1番ゾッとした。
精神汚染?? なんだかよく分からないけど確実にヤバいという事だけはよく分かった。
とにかく死にたくないのでヘルメットを被り、命綱を確実に繋ぐ。
エントリープラグは筒状となっていて、内部は壁面に液晶パネルが一面に取り付けられていて、外界の景色を確認することが出来る。中央にはインテリアと呼ばれるコックピットシートが設置されていて、これが前後に稼働するようだ。
「すっご……」
「ロボットだね」
「久しぶりロマンを感じるよ。改装以来だな」
皆それぞれロマンを感じながら作業を始めていく。インテリアに付いている情報端末用の接続端子を見つけた。
……が、案の定端子が合わない。ガミラスと地球の規格が同じなわけないのだ。そこで
「ハッキングかぁ……無線で何とか……」
「だね」
「メルダさん、ちょっといけないことしますね」
「??」
メルダが首をかしげるなりリクは、手持ちのタブレット端末を素早く操作して機体との情報伝達用ポートをこじ開けた。
「終わった?」
「何とかね。とりあえず管理者権限にしといたから。OK~メルダさんつながったよ~」
「え……どうやったんですか?」
「ちょっとした、神ワザでね。ガミラスのプログラミング言語が地球に似てて良かったよ、オルタに翻訳してもらう心配はなさそうだ」
「オルタ?? テロンの船にガミラスに詳しい人がいるんですか?」
「いや、オルタはガミロイド兵だよ。回収したから修復してうちで預かってる。そういえばまだ異星人のゲストがいたわね」
「そういえば、ユリーシャとサーシャさんはイスカンダル人だったな」
「ユリーシャ様とサーシャ様が?!」
「「「様??」」」
本当にこの3人はよくハモる。仲のいいことだ。というより、他の星の人間を「○○様」という風に敬称をつけて呼ぶことに、真田はピンときた。
「え~と、メルダ君……ガミラス人はイスカンダルと何らかの関係があるのか??」
「関係も何も、私たちガミラスはイスカンダルを崇拝しているんです」
「崇拝?! 宗教な感じ?」
「私たちの心の支えです」
「これ終わったら会っておく? クダン司令と一緒に」
「そうさせてもらいます」
「多分ユリーシャも喜ぶと思うよ。あ、あとさ、多分年齢近いと思うからさ、「さん」とかつけなくて良いよ? 普通に接してほしいな」
「……じゃあ、アカツキ、ムツキ、サナダ副長。よろしく頼む」
どうやら副長クラスの人物を呼び捨てにするのは抵抗があったようだが、壁のようなものは取り除かれたようだ。
「うん、OK~。とりあえずこの機体の解析始めるから、防壁関連のデータ見せてくれる?」
「ああ。これだ」
「……えーっと、これは一体……」
リクの目は点になりそうだ。波動エンジンの仕組みを初見で理解したりリクも、この未知の技術に対しては手が止まる。
「防壁強度と展開位置の特性を表しているようだが、距離と強度は反比例しているようだ」
真田がサラッと理解する。彼に「未知」という言葉は通用しないのだろうか。
「試験稼働時のテストデータだ。そして、機載コンピュータの方に戦闘記録が残っている」
「はいはい……あ、あった。操縦者の集中力に関係しているみたいだ。メルダが集中すればするほど防壁の強度が上がっている感じだな」
「防壁は、集中というよりは敵を拒絶すればするほど強くなるという結果が出ている。あの戦いのときは、敵を拒絶したから強度の高い防壁が作れたのだろう」
ざっくり言えば、拒絶したい対象に対してどれだけ意識を裂けるかで防壁の強度が上がっていくという事だ。逆に言えば、拒絶したい対象を明確にしておけば、一部の対象は素通りさせることも可能だという事だ。
「ちょっと待った。メルダは防壁展開しながら偏向ユニット操作するんでしょ? 防壁の方に十分に意識回せないじゃん」
「! そうか。ならば、あのユニットをこちら側から制御する必要があるな」
「だが、今からそんなソフトを作る時間がないと思うが……」
「大丈夫、流用できそうなやつがあるから」
「? あ、あれかぁ……木星以来使ってなかったなぁ。久しぶりの御登場だ」
「あの制御ソフトか、すぐに準備しよう」
「何をするかはよくわからないが、とにかく偏向ユニットに手を加えるんだな? 協力できることは何でもする」
メルダはよくわかってないようだが、「偏向ユニットに何か手を加えるという事」は分かっているようだ。
「メルダ、艦橋に案内してくれ。Wunderと連絡を取りたい」
「分かった。案内しよう」
「どこから見ても似てるにゃ。この板」
「大昔のロボットアニメの事でしょ? もう私でも覚えてるわ。休憩室であれだけ大音量で見ていたならね?」
「にゃはは……」
マリが持っている古い映画のアーカイブは種類を問わない。基本的に何でもある。アニメ実写問わず何でも見れてしまうマリは、ある時期古いロボットアニメにはまっていた。
主人公がラストに隕石を押し出すあのアニメである。その主人公機の装備にやはりそっくりなのである。
「はあ、そこまで似てる似てるいわれると私まで見たくなってくるわ。それよりも検証するわよ?」
「あいあいさ~」
赤木博士とマリは「フィン○ァンネルもどきの偏向ユニット」の最適な配置位置について検証を行っている。
最大個数での最適な配置位置と、最適な防壁の形と構造を導き出すのだ。
「波動砲くらいのエネルギーに負けないようにするには、受け流しやすいようにしないとまずムリね」
「跳弾ですね」
「波動砲はマイクロブラックホールのホーキング輻射によるものだけど、実際には大口径荷電粒子砲に近い物なの。この世で最強の水鉄砲であるなら、斜めの壁に撃ったら跳弾するはず。だけど、そこは防壁の強度任せになるわ」
「その辺はリっくんハルナっちと真田さんが何とかしてくれるはずだにゃ」
「そうね……ところで、あの塗料の話、どう思う?」
「あの話ですね、一応艦橋メンバーにはこういうマークがあったという事は話したんですけど、いくら何でも突飛すぎますよ。あの仮説」
「根拠があのマークの年代測定結果だけだからね、まだ仮説というよりは、空想に近いわ」
「どうやってこっちに来たのか、そこを推測できれば仮説になるんですけどね」
「アレに関わったのが地球人であるという結論自体が間違っている可能性も否定できないわ」
赤木博士が建てた仮説、アンノウンドライブに残されていたマーク『AD1-145』から暫定的に立てた仮説は、あの骨格「アンノウンドライブ」に地球人が関わっていたというものだ。
しかし、博士本人が言うように、この仮説はまだ仮説と呼べる段階ではなく、だいぶガバガバである。
何しろ証拠があのマーキングと塗料の解析結果しかないのだ。
残りは推測だけ。
「まあ、いずれ分かってくるはずよ。作業しましょ」
「ですね。一応円錐形をベースにしようかと考えてますが、長さと収束角度がイマイチで……」
「……防壁を何枚展開できるか分からないからメルダに聞いてみるわ」
「あんな謎原理バリア何枚も張れるんだったら無敵ですよ?」
赤木博士は自分の仮説をしまってやるべきことに向き合った。
(もう一押し、いやもう二押しくらいなんだけど……)
でも、気になることは抜け切らないのであった。
「真田副長、例の物持ってきました」
「ありがとう、すぐにコピーして改修作業に移ろう」
アスカと山本がWunderから持って来たのは、Wunderの装備の一つである「特殊誘導ミサイル」の制御ソフトだった。
MAGIシステムが誘導する特殊誘導ミサイルはMAGIシステムからの制御によって、何パターンかの行動をとることが出来る。その気になれば敵からの対空機銃掃射を回避して敵艦に命中させることが出来る。
このシステムを改修して、防壁の偏向ユニットの動きをMAGIシステムで制御しようというのだ。
「これを改修して偏向ユニットをMAGIから遠隔操縦する。これでメルダの集中を防壁展開に一極集中することが出来る」
「なるほど……それなら、偏向ユニットの制御プログラムを持って来よう。参考になるか?」
「頼む、時間が無いからすぐに取り掛かろう。睦月君、暁君、手伝ってくれ」
「「もちろんです」」
「メルダ君、ここからは我々の仕事だ。ぶっつけ本番になるかもしれないから準備を進めてくれ」
「分かった。準備しよう」
_____
「あなた、髪が赤いのね」
「不思議か? そういう君はアカツキとムツキのように髪が白いのだな。でも美しい赤い石を持っている」
搭乗準備が済んだメルダは、山本とアスカの2人と話していた。
「赤は、故郷の色。自分の色なの」
「大切な物のようだな」
山本はガミラス人に思うところがあったのか、どこかよそよそしい。そりゃあもちろんいきなり楽しく話せるはずがない。
「これは、私の兄さんの形見。貴方達との戦いで、兄さんは死んだ」
「玲の兄さんって……亡くなったんだ」
「ヤマモト。私たちは、なぜ争うことになったのだろうか。今、互いに向き合って話せているのだが、テロンとガミラスは戦いをしている最中だ。こうして話し合えるのに、なぜ戦争なんか始めてしまったのだろうか」
「それは……」
「手の差し伸べ方……じゃない?」
今まで静かに聞いていたアスカがそう口にした。
「手の差し伸べ方? どういう事だ?」
「人間……いや全ての生物はね、初めて遭遇した事態、初めて見る物、初めて会う『自分とは異なる生き物』には敏感で警戒するものよ。そうね……酷く臆病になると言ってもいいわ。どう対応していいのか困ってしまうのよ。互いに歩み寄ることが出来れば最高なんだけど、時に握手し合うことが出来る手で誰かを殴ってしまうこともある。ちょうど、地球とガミラスの今みたいな感じね」
「「……」」
「でも人類には言葉があるし、心もある。言語体型は異なるけどそんなもの些細な壁でしかないわ。お互いを知り、殴ってしまった拳を互いに開いて握手をして良き友となる。握り拳で握手は出来ないでしょ? 少なくとも地球人はそうしてきたし、ガミラス人も歴史を辿ればそういう出来事もあったと思うわ。時間はかかるかもしれないけど、充分出来ると私は思うわ」
アスカのこの言葉は、「ガミラスとの戦いに深く関わっていない」からこそ紡ぐことが出来た言葉だった。
敵に肉親を奪われた。愛する人を奪われた。
何かを奪われれば、奪った対象を憎む。
時に殺したくもなる。
でも、その一連のプロセスを多少乱暴にまとめてしまうと「喧嘩」なのだ。
宇宙を超えた文明間での喧嘩。そう言ってしまうと酷く呆気ない。
でも、「喧嘩」と表現してしまうと、和平の方法……仲直りの方法も簡単に見えてしまう。
「握り拳を開いて握手か……そう表現すると酷く簡単だな。……えっと、君はなんて名だ?」
「式波・アスカ・ラングレー。アスカでいいわ」
「そうか……ヤマモト、アスカ、君たちと握手をしたい。こうして話し合えたのも何かの縁だ」
「喧嘩の仲直り?」
「小さな一歩だけどな」
「踏み出さなきゃ永久にそこから動けないわよ?」
「それもそうだ」
3人は、握手をして輪になった。メルダはガミラス出身、山本は火星出身、アスカは地球出身。生まれの星が異なる3人が手を携えた瞬間だった。
かつて地球と火星は内惑星戦争で争った。今は地球とガミラスが戦争している。
でも、かつて争った同士でも、今争っている最中同士でも、手を携えることが出来る。
そう感じたのであった。
「「終わったぁ!!」」
「急ごしらえだが、何とかなったな」
一方ハルナとリクと真田は、特殊誘導ミサイル制御ソフトを改修して、「防壁偏向ユニット」の遠隔操縦システムを作り上げた。
作業効率上昇のために、本来の「偏向ユニット神経操縦システム」を一旦退避させて、地球言語でプログラミングしなおしたのだ。
(もちろん許可はとってあるし、後で元に戻す。でなきゃ訴えられそう)
特殊誘導ミサイルの遠隔制御システムをそのままに、偏向ユニット本体の試験稼働記録、ユニット内蔵のスラスターのデータなどなどを盛り込んで、急造品とは思えない出来に仕上がった。
「あるもので何とかなったわね」
「ああ。と言うかアレをベースにするとか冴えてるじゃん。さっすが~ハルナ」
「えへへ、ありがとっ」
リクに褒められてハルナの頬には赤みが差していた。その様子を見ていたメルダは全てを察した。
真田も察した。この2人の光景を何度も見たから、遂に察することが出来たのだ。
ガミラス人でも察することが出来るこの光景はすぐに終結し、撤収する時間となった。
「メルダ、偏向ユニットの制御はこっちでできるようになった。これで全力で防壁の展開が出来る」
「最適なユニット配置位置も計算が終わったわ。これなら波動砲を収束しても問題ないと思うわ。あとはメルダの頑張り次第、残りを押し付けてしまって申し訳ないわ」
赤木博士とマリの方も仕事が済んだようで、ユニットの最適な配置位置を導き出せたようだ。
「ハルナ、リク、サナダ副長、アカギ博士、マリ、感謝する。ガミラスとテロンの誇りをかけ、必ず任務を成功させよう。ヤマモト、アスカ。星が離れていても人類は分かり合えるようだ」
「私たちの誇りをかけてか。メルダくん、頼むよ?」
「もちろんだ」
「では、これにて撤収だにゃ。総員、名誉あるパイロットメルダ中尉に敬礼!」
マリがふざけ半分で敬礼をすると、それを見ていた他の全員が習って敬礼をした。
メルダもそれに返す形でガミラス式の敬礼をした後に、彼らの真似をして地球式の敬礼もした。
この「ありえない光景」は今後、ガミラス領土内でひっそりと語り継がれることとなった。
「これより作戦を開始する。ガミラス艦隊に連絡、所定位置にて艦体を重力アンカーで固定」
「了解! ガミラス艦隊に通達。各艦艇、所定の位置に移動。重力アンカーを用いて艦体を固定せよ。繰り返す……」
「Type nullはどうか?」
「既に発進を完了して、現在左舷第2船体艦首部分に鎮座、慣性制御で甲板上に固定完了」
「偏向ユニット制御は?」
『立ち上げ完了、接続良好です。基本動作問題なし』
全ての準備が整った。推力、機体、偏向ユニット、2つの星が協力した結果、ここまで早く準備が完了したことは幸いな事だった。
その証拠として、波動砲を撃っても想定より推力に少し余裕があるのだ。これでもまだ力不足だが、ガミラス艦隊と協力すれば十分カバー可能な程であった。
「ディッツ中尉、準備は?」
『準備完了。何時でもどうぞ』
「……波動砲、発射準備!」
「了解、左舷、波動砲発射準備」
古代のコンソールから波動砲用コントローラーがせり上がってきてその引き金に手をかける。
「非常弁、全閉鎖、強制注入機作動」
「認証開始」
《艦長、副長、戦術長の指紋認証を確認。最終セーフティ解除します》
「最終セーフティ解除を確認。照準、正面次元断層境界面」
___MAGIシステム格納エリア
「偏向ユニット作動を確認。稼働良好」
「よし、指定位置に移動しよう」
ハルナとリク、真田、マリに赤木博士は、偏向ユニットの制御のためにMAGIシステム格納エリアにいた。
MAGIを通すことで、人が操縦できるようにした急ごしらえのシステムは、継ぎはぎであることは否めないが安定して稼働している。
「指定位置に移動開始。ユニット1及び5をポイント1αに移動。完了後、ユニット4はポイント1前方のポイント1βに移動」
「続けてユニット2及び6をポイント2αに移動。完了後、ユニット6はポイント2α前方のポイント2βに移動。以降、ユニット3及び7,ユニット4及び8も同様に移動開始」
ハルナの操作によって艦外で準備運動で動き回っていた偏向ユニットたちを整列させる。
赤木博士とマリが導き出したのが、防壁を二段構えにすること。そして、防壁の形を四角すいにして頂点を開けておくことだった。
そしてその規模だ。波動砲のエネルギーに耐えきって収束させるためには、相当な長さが必要になる。そして収束角度は20度以下。よって、四角すい型の防壁の長さは400メートル、これが二つ直列となっているため収束用防壁の総合全長は800メートルほどにもなる。
「ユニット配置完了、各機展開。メルダ、防壁展開してみて!」
___Type null機内、エントリープラグ
「了解! 防壁展開」
メルダは防壁展開に意識をすべて集中させて、特大サイズの防壁を張った。
防壁を展開するときは、「何を拒絶するのか」を明確にしておく必要がある。
そのため、今回は「Wunderと自軍の艦隊、偏向ユニット以外をすべて拒絶する」防壁を展開した。
ちょうどWunderの正面全体を完全にカバーできる規模の防壁を展開して、そのまま正面に移動させて、偏向ユニットに接触させた。
偏向ユニットには防壁誘起プレートが備え付けられていて、防壁と誘起プレートが物理的に接触することで、防壁はその形と強度を変えることが出来る。
「防壁と誘起プレートの接触を確認。防壁の形状変化を確認。防壁強度、高位へ推移」
『形状も想定通りの物になってるわ、メルダこのまま防壁を維持して波動砲発射直前まで待機していて』
「了解!」
波動砲の収束……無理と思われたこのミッションは、テロンの技術者「ハルナとリク、サナダ副長、アカギ博士とマリ」の協力によって「理論上は可能」の域になった。叔父様も苦い顔をしていたけど、許可してくれた。他に未知がないという事を理解していながら「危険なことをさせたくない」という叔父様の気持ちは分かる。
でも、私は2つの星の名誉と誇りをかけて任務を全うする。
_____Wunder戦闘艦橋
「薬室内、タキオン粒子圧力上昇。エネルギー充填120%!」
「全周スクリーンを対ショック対閃光モードに切り替え。総員対閃光ゴーグルを着用」
閃光で失明しないように対閃光ゴーグルを皆が着用して、発射カウントダウンを刻む。
「ディッツ中尉、防壁を最大出力で展開だ」
『了解! 防壁全開!!』
通信からは、メルダの叫ぶような声が聞こえた。意識のすべてを防壁に裂いているため、余裕が少ないのだ。
対閃光ゴーグル越しに防壁の色が薄い虹色から赤みを帯びたオレンジ色に変色して、発光も増した。
「波動砲発射まで、5、4、3、2、1」
「撃てェ!」
沖田艦長の声で古代が引き金を思いきり引き絞り、Wunderの左舷波動砲口から光の束が放たれた。
その光の束は一直線に収束用防壁に飛び込み、防壁が軋みをあげる。一部のユニットでは火花を散らし、激震に襲われている。
ハルナとリクたちは、偏向ユニットそのものには手を加えてない。仕組みが分からなかったというのもあるが、そこまで改修を加えれるような時間がなかったというのが現状だ。
それでも、最適な配置にしておいたおかげで、「波動砲を収束する過程で即爆散」は何とか防げている。
2つ目の収束ユニットも無事に潜り抜け、最適なサイズにまで収束された波動砲のエネルギーは目標の次元断層境界面に飛び込み、そこに大穴を開けた。
「回廊形成を確認、作戦第二段階に移行。脱出行動に移る」
「ガミラス艦隊に通達! 各艦主機最大出力! 通常空間へ向け脱出する!!」
相原の通信を受けて、Wunderにコバンザメのように張り付いているガミラス艦隊が主機の出力を全開にした。
戦闘出力を超える緊急出力を放ったゲシュタム機関は、暴力的な光を推進ノズルから溢れ出させ、2500メートルの巨体を動かしていく。
Wunderも、温存していた右舷波動エンジンをギリギリまで回して推力を生み出しているが、やは回廊が閉じるまでに脱出できるかは五分五分だった。
___ゲルバデス改級フリングホルニ
「クダン司令! やはり、回廊が閉じるまでに脱出するのは不可能です……」
「……全艦に通達。速力をゲシュタム航法突入直前まで出せ。出し惜しみはなしだ」
「しかし、それでは我々が航行不能になります!!」
「出し惜しみは無しと言ったはずだ! 今は脱出することだけを考えろ!」
「……全艦に通達!! 各艦、ゲシュタム航法突入直前まで推力を上げろ! 機関の損傷は考えるな!!」
「ゲシュタム航法出力、開放します!」
___Wunder戦闘艦橋
「ガミラス艦隊の推力が上がっています!!」
全周スクリーンに映るガミラス艦隊の推進ノズルからは、いつものピンク色の推進光ではなく、青白い推進光を噴き出していた。
「脱出を急ぐんだ。推力全開」
「了解、両舷全速!」
Wunderの右舷波動エンジンが唸り、両舷メインスラスターに力を送り込んでいく。
それに比例してエネルギー流出量が大きくなっていくが、今はそんなこと気にしていられない。
「開口部が狭くなってきています!」
太田が周囲の空間の観測結果を報告し、さらに緊張が高まった。
「通常空間まで、あと10!」
通常空間に出ることが出来れば、Wunderの波動エンジンは存分にエネルギーを生み出すことが出来る。
次元断層は、波動エンジンにとっては「呼吸の出来ない水中に近い」。
人間は、水中では酸素を取り込むことが出来ず息を吐くしか出来ないように、波動エンジンはエネルギーを取り込むどころか吐き出してしまう。
しかし水中から地上に上がれば、人間は自力呼吸で酸素を取り込むことが出来るように、波動エンジンは余剰次元からエネルギーを取り出すことが出来る。
脱出にかかる時間は長くてもほんの数分なのだが、永遠に近い時間が艦橋に流れていく。
舵を握る島の手には汗が流れ、艦橋メンバーの顔には緊迫が張り付いている。
そして……
「通常空間への脱出を確認!」
「波動エンジン正常、右舷エンジンのエネルギーを左舷エンジン再起動用に回します」
「ディッツ中尉は無事か?」
「応答ありません……こちらWunder、ディッツ中尉、応答願う。繰り返す……」
真っ暗だ……作戦は成功したのか?
プラグ内の電源が落ちている……これでは外部の状況が確認できない
そもそもプラグ排出されたのか?
《グッ! ああ! 熱っ!! あああ!!》
プラグの外壁の一部が開き、飛び込んできた光によって目が眩んだ。
「……司令」
「メルダ、大丈夫か?!」
「……はい、私は、大丈夫です」
心配で死んでしまいそうな司令に向けて、私は微笑みました。
「そうか……よかった……」
高熱となっていたエントリープラグ、排出されたLCLはプラグ外壁の高熱に熱されて湯気が上がっていた。
その熱で、司令が私を救出するときに落としたメガネは歪んで使い物にならなくなってましたが、そんなことに気も留めない様子でした。
テストだァ、バイトだァ、まもなく夏休みだァ
進学してから初めての夏です。
書く内容も油田のごとく湧き出るので退屈にはなりません。
でもテストが立ちはだかるので倒してしまいましょう。
しばらく書けなくなるのでどうしようかと思ったら、「一応これで章終わり」ってことに気づいたので次はサイドストーリーです。
一応章末という事なので、エンディングテーマでも付けておこうかと思いました。
今回は、「Hello Goodbye hello」という曲です。
星を追う子供って言う映画の曲です。出会いと別れの要素も盛り込まれているので、今後もこの曲使いたいです。
ふと思えば、この小説書き始めてから軽く5ヶ月経ってました。体感時間のスピードって、状況によって早くなったり遅くなったりします。
詰まんないことやってる時だと、すっごく遅く感じますが、楽しいことやっていると、結構早く過ぎていきます。
という事は、この小説書き始めてから楽しい事続きっぱなしという事なのでしょうか
それだったらいいなと思ってます
ではでは失礼致します
ε=(*`>ω<)ノジャァネ