宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
うp主がどうしても書きたいと思った話が出せるまで、あともう少しです。
張り切っていきましょう
テストもあります……\(^o^)/オワタ
では、信仰と親交と侵攻始まり始まり~
信仰と親交と侵攻
「主機関のチェックは完了した。しばらくは経過観察だが今のところ問題なしだ」
「もってくれましたね。でも、ガミラス艦隊の方は……」
「この船を動かしたんだ。主機は修理しなければならないそうだ」
「しばらくこの船は、コバンザメが群れてくっつく鯨状態ですね」
次元断層脱出後、Wunderとガミラス艦隊は自身の主機関の緊急チェックを行った。
波動エンジンを2機搭載しているWunderは航行面では問題なかったが、ガミラス艦隊の方は主機に過負荷をかけたことにより、航行不能となっていた。
修理にしばらく時間が必要という事なので、「艦隊をくっつけたまま」Wunderは航行中だ。
「問題なしとは言ったが、右舷波動エンジンに若干の消耗が見られた。許容範囲内ではあるが、注意してもらうように、徳川機関長の方には伝えておいたよ」
「ありがとうございます。やること山積みだね」
「そうだね、フリングホルニの方で偏向ユニットのプログラムを元に戻したり、ガミラス艦の主機直しのアドバイスしたりしないとなぁ……赤木博士たちにも声かけようか」
「猫の手も借りたいよ……あ、赤木博士に限ってはチートの手も借りたいの方があってるかな」
「マリさんの場合はそのままがピッタリだね、猫の手も借りたい」
「ブフォッ、ちょ……それおもろい……」
謎にツボるリクはそのまま笑い続けて、この日は思い出し笑いが続いたのであった。
「……叔父様」
「メルダ、気が付いたか」
エントリープラグがら救出されたメルダは消耗が激しく、フリングホルニの医療設備では十分に治療することが出来なかったので、Wunderの医療設備で治療を受けていた。
「機体の方は……」
「偏向ユニットは3機お釈迦になったが、損傷なしだ。機体の事はどうでもいい。とにかく無事でよかったよ」
「……これで、帰れるのですね、母なる星に」
「ああ、故郷に帰ろうか」
あんまり長居するのもよくないので、クダンは早めに話を切り上げて医務室から出た。
通路の壁に何となくもたれかかり、胸をなでおろす。
「ガル……お前の娘は強いなぁ」
医務室を後にしたクダンはその足で沖田艦長のもとに向かった。
_______
「こうして顔を合わせてお会いするのは初めてですな。私は、国連宇宙海軍、宇宙戦艦Wunder艦長、沖田十三です」
「私はガミラス第101試作人型戦術機動兵器打撃部隊第1軍司令、兼ゲルバデス改級航宙特務輸送艦 フリングホルニの艦長、アウル・クダンです。まずは、共闘できたことに感謝します。オキタ艦長」
「それは、こちらも同じ思いです。クダン司令」
そう言い、互いに握手をする。
「しかし、我々と同じ見た目の民族が他の星間国家にもいるとは、正直驚きました」
「ディッツ中尉からは、ザルツ人という民族がそうだと伺ってます」
「かつて統合された星間国家の一つです。今では2等ガミラス人と言われてますが、正直言って二等とか一等とかそういう区別は私は好きではありません。ガミラス人はガミラス人です」
「ガミラスでは、そういう思想を持つ方が多いのですか?」
「いえ、その逆です。民族差別の元となっていて、自分たちは他も民族よりも優れているという思想が広まっています。軍部の中ではそれが一層強く、分け隔てなく接する人は少ない方ですね」
ため息をつき、紅茶を一口飲む。芳醇な香りで濁った気持ちが少し和らいでいく。
「地球にも、そのような思想が広まっていた時期がありました。少々辛辣な言葉になってしまいますが、そこまでして優越感に浸りたい意味が分かりませんな」
「全くです。現在の軍事独裁政権ではどうしようもありませんが」
「話は変わりますが、そちらの艦隊の航行の方は」
「この巨大な船を動かしたことで、主機は修理が必要になりましてね。しばらくはこの船に重力アンカーで括り付けるしかないようです」
クダンが眼鏡越しに申し訳なさそうな顔をした。
「では、ガミラスの基地が存在する恒星系までそちらの艦隊を送り届けましょう」
「ありがとうございます、オキタ艦長」
「恩返しというものです。それと、ユリーシャさんが貴方にお会いしたいそうですが?」
「ユリーシャ様が? ……すぐに伺います」
「ああ少々お待ちください」
そう言って沖田艦長は席から離れ、自動ドアの前でとある人物に声をかけた。
「お待たせしました。どうぞ」
部屋に入ってきたのはユリーシャだ。
クダンは文字通り目を丸くしていたが、流石司令官。すぐに元に戻って、
「
イスカンダルの作法に従って、その場で跪いて右手を左胸にあてた。
「初めまして、ユリーシャ・イスカンダルです」
「お初にお目にかかります。私は、アウル・クダンと申します。ユリーシャ殿下」
ガミラス人はイスカンダルに忠誠を誓っている事はメルダから聞いたのだが、ここまで礼儀を示すのを見た沖田艦長は、ガミラスの文化に強い興味を示した。
もともと沖田艦長は軍人ではあるが、学者でもある。宇宙空間での気象現象や、ガミロイドの仕組みに理解を示していたのは、この部分が大きい。
学者というのは、自身の示す興味に忠実。
ガミラスの文化を知りたいと思った沖田艦長は、後で色々聞いてみることにした。
「まず、オキタ艦長を始めとしたこの船の乗員に協力して頂いたこと、イスカンダルを代表して感謝します。ありがとうございます」
「お顔をお上げください! 私たちは、互いに信頼して協力したまでです。どちらの力が欠けても脱出はありえませんでした」
「私は、今この情景を目に焼き付けたいと考えています。奇しくも互いに戦争をしてしまった2つの文明の司令官が、一対一で顔を合わせて話をしている。私がこの船に乗り込んだ時には考えもしなかったことです」
「それは、私も同じ思いです。ここには、異なる星の出身の人間が今同じ部屋にいます。オキタ艦長はテロン出身、私はガミラス、そしてユリーシャ様はイスカンダル星。我がガミラスはテロンと戦争状態にあり、軍内部でのテロンに対する印象も悪いのですが、それは過度な妄想なのではと、あなたと話すことで考えを改めました」
「あなたのような人は、もしかしたらガミラスでも珍しいのでしょう。ですが、固定概念に囚われず、自分の考えを曲げない事は良いことです。ガミラス人はガミラス人で、1等も2等も関係ない……恐らくこの考えは異端児の扱いを受けるかもしれません。ですがその考えを持ち続けることが、貴方達のガミラスを良い方向に動かす事になるでしょう」
「異端児ですか……私からしてみれば慣れたものです。私はこの考えを曲げることはありません。テロン人とこのように協力できたことが、その証拠です」
「私も同じです。敵同士でも互いに銃を下ろしてこうして話し合える。それも停戦交渉などという物ではなく、一種の会談で話すことが出来るのは、互いに分かり合えることの証拠です」
奇しくも、沖田艦長とクダン司令が今思っていること、「異星人とも分かり合えるかもしれない」というのは、メルダと山本が感じたことと同じだった。
何が異星人だ、何が敵だ。
こうして話をしてみれば、完全な悪だという印象は脆く崩れ去る。新しい印象が定着することもあれば、敵に興味が湧くこともあるだろう。
互いに互いを敵と言いあうこの戦争は、この瞬間から歯車が狂い始めた。
互いに互いを知りたいという事が、分岐点になったのだろう。
「そろそろ重要な話に移りましょう。今後の航路についてですが、進路上にいくつかの恒星系が点在してますが、どこにガミラスの基地があるか教えていただけませんか?」
「それならば……」
クダンはおもむろに自身の端末を取り出して銀河間空間の星系の座標を表示した。
「ここですね。この星系です……」
こうして話し合う光景を、ユリーシャは微笑みながら眺めていた。
「ガミラス艦隊の移送ですか?」
「そうだ。次元断層脱出時にガミラス艦隊は主機関にダメージを負った。応急処置が完了するまで本艦がガミラス艦全艦を船体に固定して航行する。ガミラス艦隊の修理が完了次第、航路上の恒星系、ガミラス基地が存在する惑星近傍で彼らと別れる」
「まさか、ガミラス艦を船体に引っ付けたまま航行するとは……」
「暁君いわく、エンジン負荷と航行速度的には問題ないとのことだ」
「……」
島の父親、島大吾を殺したのはガミラス。軍部の発表ではそうなっている。
その敵を体に引っ付けたまま、いつ敵に襲われるか分からない宇宙空間を進みたいと思うだろうか?
彼らが反乱を起こさない保証はあるのか?
「本当に、大丈夫なんでしょうね……?」
「儂はクダン司令と話したが、こちらを信頼していることが分かった。島が懸念していることは儂が保証しよう。それでも不満があるなら、儂の部屋に来るんだ」
_______
「島航海長、入ります」
「入れ」
重厚な扉が開き、島が艦長室に入ってきた。が、そこに山崎がいることに驚いた。
「山崎さん……どうしてここに」
「航海長、私は、貴方のお父様、島大吾艦長の乗艦であったムラサメの生き残りです」
「父さんの船の……?!」
ガミラスとの初遭遇時、国連宇宙海軍はガミラス艦隊を脅威とみなし、先制攻撃をしてしまった。
何度も言うが、それが公式発表だ。
だが、軍という組織は、時に自分たちにとって不都合なことはもみ消すか、もしくは情報統制を行う。
「島。山崎をここに呼んだのは、初遭遇時の島艦長の行動を覚えているからだ。山崎も儂も、軍から口封じされてきたのだが、間違っていると思ったことは正さねばならんからな。君にも知ってもらわねばならん」
___2191年、ガミラス艦隊との初遭遇時、先遣隊として出向いたのはキリシマを始めとした艦隊十数隻。その中に、村雨型のネームシップ、一番艦のムラサメがいた。
艦長であった島大吾一等宙佐は、息子である島が知るように温和な性格だった。そして命令に忠実に真面目な人物。
そして異星人とも分かり合えるとよく島に言い聞かせていた。
「ガミラスとの初遭遇時、ガミラスからの先制攻撃でムラサメは撃沈したとなっているが、真実は逆だ」
「そんな……ガミラスが攻撃したから父さんは戦死したんじゃないんですか?」
「実際のところは、最初の攻撃は我々からだった。初遭遇時、儂は警戒用の艦隊を編成して外惑星軌道に展開していた。儂は司令部からの先制攻撃に異を唱えた」
「だが軍からの先制攻撃命令に異を唱えた儂は更迭され、艦隊指揮が上層部に移った」
「……芹沢軍務局長ですか」
「他人に責任を押し付けるのは儂はしたくないが、確かに芹沢軍務局長の命令で攻撃が行われた」
「それが本当の事なんですね。極東はこんな重要なことを隠していた……もう何を信じればいいか分かりませんよ」
肉親を殺された身として、ガミラスは憎む存在だった。それなのに、ガミラスと協力し、今は船体に張り付けて航行している。
協力するのはまだいいだろう。あれは致し方無い。だが敵と一緒に行動するのは、周囲の状況が変わりすぎて固定概念が効かなくなり混乱している。
島はまさにこの状態だ。
「艦長、山崎さん、どうしてこの事を自分に伝えたんですか? 親ガミラス派にでもなりたいのですか?」
「航海長、私は貴方のお父上……島艦長から遺言を預かっています。もし道に迷っていたら伝えてくれと頼まれていたものです」
「……」
「異星人ともきっと分かり合える」
「またそれですか……自分は、そう簡単に割り切れませんよ」
「では島、今までガミラス艦に遭遇して、なぜこちらから先制攻撃しなかったか分かるか?」
「この船の武装は、あくまで身を守るためのものであるからですか?」
「それもある。だが一番の理由は、カ2号作戦時の撤退行動から彼らに人間的な部分を受け取ることが出来たからだ。そこから対話の可能性を見出したが、対話による解決は青臭いだの夢物語だの罵声を浴びることとなりかねないが、このままではどちらかが完全に滅亡するまで終わらない全面戦争に突入する。それを避けるためには、こちらから手を出さずあくまで迎撃行動を主として、こちらはただ単に降りかかる火の粉を払おうとしていることを示さなければならない」
「艦長は、その時からガミラスが人間的な種族だという事を見抜いていたのですか?」
「いや、儂もここまで人間的だという事は予想外だった。だが、話してみて分かった。彼らは地球人と何ら変わりはない。この戦いは、かつての世界大戦の延長線上にあるといってもいい。互いの正義、互いの思惑が入り乱れる戦場だ。誰かが敵に対して一定の理解を示す、もしくはどちらかが停戦交渉や降伏勧告を出さなければ、最後に残る物は何もない」
「……」
「彼らが人間的ならば、話し合うことも可能かもしれない……そう考え、儂はガミラスとの一時的な協力関係を結結ぼうと考えた。儂はその気がなければ、次元断層内で砲撃準備を命じていた。あの時、全ての砲塔を逆方向に向けたことは、彼らに人間的なのかどうかを確認する最後の確認でもあった。もしガミラス人が地球人と同じメンタリティを持つならば、我々が伝えようとしている意図が分かるかもしれないと考えた。結果、彼らは我々の意図を読み取り砲塔を回転させて映像通信を入れてきた。その時点で儂は確信した。彼らは対話可能な種族であり、人間であると」
「すべて、ガミラスを試していたんですか……」
「確認も無しに受け入れようとするのは自殺行為に等しい。だがむやみに攻撃するわけにもいかなかったからかなりの回り道をすることとなったが、結果ガミラス人は我々と何ら変わらないメンタリティを持ち、先制攻撃さえしなければ今のような現状にはならなかったのではないかという結論に至った」
「納得してくれなくても構わない。ただ、こういう考えを持った一人の老人がいるという事だけでもいいから、覚えておいて欲しい。山崎応急長、急に呼び出したりしてすまなかったね」
「いえ。私は、真実を伝えることが出来て満足です」
「少し、考える時間をください。失礼します」
そう言って、島は艦長室から去っていった。
「伝わったでしょうか……」
「あとは、彼次第だ」
「先制攻撃しなければ父さんは死ななかった……彼らは迎撃行動として攻撃してきた」
島は、ひたすら思考の海に漂っていた。
先制攻撃をしてしまったのはガミラスではなく地球。自分たちの姿にうり二つのガミラス人、違うのは肌の色くらい。
同じ見た目、同じメンタリティ。
「でも協力関係を結ぶことが出来たのは事実……」
それでも話し合うことが出来る。互いに武器をしまって言葉という道具を使うことができる。
「でも、簡単に信じる事なんて……」
親を殺された。それは簡単には乗り越えられない。
そうやって悶々と考えて歩き回っていると、たどり着いたのが……
「暁・睦月研究室」だった
「珍しいお客さんだね。島君」
白い髪の設計者、ハルナは紅茶を入れながらそう切り出した。
「急に来てすみません、迷惑だったでしょうか……」
「ぜーんぜん。一人で暇だったのよ。リクは真田さんのとこで解析にかかりきりだし、マリさんと赤木博士は真剣な顔で何か考えてるし」
そう言いながらハルナは、乗艦時に持参した紅茶パックで紅茶を入れる。
「ここに来る人って余りいないのよ、前に来てくれたのは森さんと徳川機関長だったかな。ところで島君、なにか思い悩んでいるみたいだけど……何かあったの?」
「ちょっと……考え事をしていて」
「……もし良かったら聞かせてくれるかしら?」
ハルナは島が何で悩んでるのか分からなかったが、恐らくガミラス人絡みだろうという事は容易に想像できた。ガミラス人と話した自分なら、何か分かるかもしれないと思った。
「はい、実は……」
━━━━━━
「なるほどね、ガミラス人に対しての固定観念が効かなくなって混乱してると」
「はい……父親を殺されてから悪として見てきたんですが、艦長がガミラスに対して理解し始めたり、現状が予想と大きく変わってしまって、訳分からなくなってしまって……」
「地球人が持つガミラスのイメージは『The 悪』だからね、分からなくはないよ。敵と協力、敵と同行。混乱しないほうが変だわ。至って正常だし、島くんみたいに納得いかなかったりする人はいると思うよ」
「暁さんは、迷ったりしなかったんですか?」
「うーん、私はこの船に乗る前からガミラスとの戦いに関わってはないから分からないけど、敵と協力することに違和感はあったわ。でもガミラス人も私たちと変わらない人間だって割り切ってた。そこからはあんまり気にならなかったよ。でも島君の悩みを聞いたところ、解決できるかもしれないわ」
「ガミラスをどうやって信頼するかとかそういう物ですか?」
「いや、私のはもうちょっとアプローチが違うわ。島君、いい船乗りってどんな人だと思う?」
全く予想してない方向からの唐突の質問に、島はポカンとした。
「いい船乗り……ですか?」
「そう。今も昔も船乗りという言葉も役割も残っている。ただ定義というのは時代とともに変わってきているようだけどね」
「……最適な航路を導き出して、乗員乗客を安全に目的地に送り届ける、溺れているものを見捨てずに救助する……ですか?」
島は、思い浮かんだ全てを答えにしてみた。
「そうね、もう答え出てるじゃない?」
「?」
「『溺れているものを見捨てずに救助する』だよ。まあ今回は溺れているわけでもないけど、少なくとも機関にダメージを負って航行不能になっている。助けが必要な状況だね。古来の船乗りはそういう船を見つけたら、海賊船でもなかったら食料とか分け与えたり、どうあがいても無理な時は自分たちの船に全員乗せて安全な陸地に送り届けてたりしたそうよ?」
「でもそれって友軍同士だったりですよね?」
「ほとんどはそうよ? 昔は戦時国際法とかあったらしいけと、私が知る限り数件、敵にそういう行動をした事例があるの。250年位前の国家間……もしくは世界戦争でね」
ハルナがこの後何を言おうとしているのか、島はすぐに察した。
「工藤俊作艦長の事ですか……確かに彼は敵艦の乗組員を全員救助しましたね」
「割り切る割り切らないの問題じゃなくて、船乗りとしてどうしたい考えてみるのはどうだろうか。それか思い切って故事に倣うのも味があると思うよ?」
「なんか、見えた気がしました。あとは自分で何とかなりそうです」
「おや? もやもやした顔じゃなくなったね。あとは自分で何とかなるわね」
「はい。ありがとうございました」
そう言って島は研究室を後にした。
「……上手くできたかな? 私相談されるキャラというより相談する系のキャラなんだけど……ひとまずあの人みたいにやってみたけど」
ハルナの脳裏には、かつての火星での生活の風景が映し出されていた。
そこには、ハルナ自身と、リク、そして、もう一人の女性の姿があった。
「かなり体が楽になった。感謝する」
「一応寝たきりだったから身体能力は多少落ちているかもしれん。じゃが問題ない範囲に収まっているはずじゃ。美味いもん食って適度に動いてよく寝る事。元気になるにはそれが一番じゃ」
「サド先生、あなたはいい医者だ」
「儂はもう20年位医者をしとるが、そう言われるのは嬉しいねぇ。しかも他の星の人に言われるのは初じゃよ」
「では失礼する」
「うん、元気でな」
敬礼をするメルダに敬礼を返した佐渡は、ご機嫌で日本酒を湯呑に注いでいた。
「先生、なんだかご機嫌ですね」
「誰だって褒められたらそうなるじゃろ?」
その後、佐渡は三杯程飲んでさらに上機嫌になった。
_____
「メルダ、もういいの?」
「ああ、寝たきりも体に毒だからな。美味いもの食べて適度に動いてよく寝るのが良いそうだ」
「なら~おいしいもの食べに行く?」
「メルダ、この船の『パフェ』って言う食べ物最高においしいわよ!」
「ユリーシャ様、ご一緒します」
食堂にやって来た3ヵ国女子部は明らかに甘そうで「地球人ならご存じな食べ物」を頼んだ。
「おい、コレはホントに食べ物なのか……?」
さて、メルダは今微妙な顔をしている。その理由は、今自分の手の上に乗っている料理についてだ。
地球のスイーツ、パフェ。この船の食堂で販売されている期間限定メニュー「天の川パフェ」だ。
生クリーム、色とりどりのアイス。チョコチップ、どこからどう見ても女の子が飛びつきそうな豪華盛り合わせパフェなのだが、ガミラス人のメルダからしてみれば「何なんだこの物体は?」である。
「期間限定メニューの天の川パフェ。早くしないと溶けちゃうよ?」
「メルダはパフェ初めてだよね? 大丈夫、とても甘くておいしいよ?」
「……」
「食べないの?」
ユリーシャがうるうる顔で見ると、メルダは決心した。いや、どうにでもなれという方だろう。
恐る恐るスプーンをパフェに突き刺し、まずは一口、
ん? こっこれは……?!
「……どうよ?」
「こんなものが宇宙にあったとは……!」
「はいぃ?」
「私は今、感動している!」
美味しいものは逃げないし誰も取らない。だが、空間魚雷も真っ青な速度でパフェにがっつくメルダは、軍人ではなく、年頃の女の子というにふさわしい様子だった。
「……ここ、ついてる」
その勢いで気付かなかったようで、メルダの頬にはクリームがついていた。
言われてやっと気づいたようで少し恥ずかしながら頬に付いたクリームを拭って舐める。
「甘いもの好きなのは全宇宙共通のようだね」
「ガミラスにはこういう食べ物はない。茶菓子とかはよくあるが、ここまでキラキラして甘い素晴らしい物は無い。テロンには美味しい物がたくさんあるようだ」
「退院直後にそれ食べるのはハードじゃない?」
「アスカか。テロンのパフェ、素晴らしいな」
「フフーン。恐れ入ったか」
「異星人女子部勢ぞろいだね、ちゃっかり集まっちゃって」
「ハルナ、メルダったらパフェをすごい勢いで食べるのよ。ビックリしちゃったわ」
ユリーシャがニヤニヤしながら先程の一部始終をハルナに話すと、メルダは顔を真っ赤にした。
肌は青いはずだが……
「ちょ、ユリーシャ様! それは!」
「まあ女の子は大体パフェ好きだし、パフェ初体験ならがっつくのもわかる気がするわ」
「それはそうと、アカツキに聞きたいことがあった。どうして私たちを対等に迎えてくれたのだ?」
「ああ、そのこと? たとえ敵であっても使者や捕虜は丁重に迎えるのが、リクの考えだからだよ。もちろん私もそうだけど」
「例え敵であってもか……私達とは大違いだな。地球人にはそういう人しかいないのか?」
「流石に私達みたいな人ばっかりではないよ? いろんな人がいるわ」
「まあリクとハルナは私ともすぐに打ち遂げたけどね」
「そうだね~異星人とも仲良くなれるよね?」
「ちょ、イスカンダルのお方に来やすく触るのは」
「メルダおいで~なでなでしたい」
「そんな、もったいないです!」
___
「私たちは、初めて会った異民族に対して高圧的な態度をとっているようだ。弾圧や虐殺、一部の部隊がやっていることとはいえ、それを見て見ぬふりをしている我々も同罪だ」
「その点だと、私たちの先祖も同じことをしてたわね」
「どういうことだ?」
「地球にも、肌の色が異なる人種がいるの。私たちはこんな肌の色をしているけど、茶色かったり黒かったりする人もいるの。それらの他とは異なる特徴の人種を迫害した歴史が残っているの。今でもその迫害思想は残ってるわ」
「どの星でも同じ道をたどるのか……」
「人類は、間違いから学習して同じ間違えを犯さないように成長するからね。同族同士で世界規模での戦争を起こしてしまったこともあるけど、今はそういうことはない」
「今はガミラスと戦争しているけど、こうしてメルダと仲良く話せていることから、どんな星の人とも分かり合えることが証明できたわね」
「たとえ戦争中でも敵を思いやることが青臭いことかもしれないけど、これも歴史が証明しているわ。ちょっとその話をしようかな」
「面白そうね。ハルナ、聞かせて!」
「ええ、じゃあ昔話をしようかな。敵兵を救助した船の話を」
「今から250年くらい前、ちょうど世界規模の戦争をしていた時代の話。私たち地球人の先祖はいくつかの軍に分かれて殺し合いをしていた」
「第二次世界大戦の話ですね、確か……雷っていう船だったかな?」
「その話、極東でも語り継がれてますよ」
島と同じように、山本とアスカはこの話を知っているようだ。極東にいた山本はともかく、アスカまで知ってることにハルナは驚いた。
「確かに極東の軍で語り継がれているけど、アスカよく知ってるね。ユーロでも教本に書いてあった?」
「マリの持ち込み蔵書のライブラリにあったんです」
「そんな記録まで……どれほど昔をあされば気が済むのかな……話がそれたけど、その駆逐艦雷は、私たちの祖先の国から離れて広い海を航行していたの。当時は絶賛戦争中だから、常に周りの海を警戒しておく必要があるの。いつ敵に船が来るか、いつ潜水艦が迫ってくるかわからないからね」
「そんな航海をしていた雷は、近くの海域で人が漂流しているのを発見したの。その数400人。しかも自分たちに敵対する国の兵だったの。でも、その状況を見過ごさずに、雷の艦長の工藤俊作は敵兵を全員救助したの」
「敵を救助したのか?!」
「そう、全員ね。通りかかるまでに力尽きてしまった人も何十人もいたそうだけど、とにかく、400人以上が助かったの。彼らは沈没した自分たちの軍艦の燃料でドロドロだったけど、雷の船員は総出で彼らを救助、手当をして食料などを与えたそうよ」
「船員総出で救助活動して、警戒が手薄にならなかったのか?」
「もちろん手薄になってたし、救助活動中に敵に捕捉される可能性もあったわ。でもそれらのリスクを抱えて最低限の人員を残して、救助を行った」
「……凄いな、テロン人って」
「昔の極東は日本って呼ばれてたけど、その日本には『武士道』っていう考え方があるの」
「ブシドウ?」
ユリーシャが聞きなれない言葉に首をかしげた。そもそも武士というものを知らないからだ。
「武士道というのは、大まかに言うと『他人の気持ちに対する思いやりを目に見える形で表現すること』、要は礼儀を重んずる考え方なの。あの時工藤艦長がとった行動はまさにそれだったの」
「礼儀を重んずるか……私達と対等に接してくれたのはそういう所から来ていたのか」
「うん、まずは礼儀から始めないと。そして、今確認できるすべての漂流者を救助してから、工藤俊作艦長は救助した敵兵を甲板に集めて、彼らの言語こういったの『貴官達は勇敢に戦われた。今や諸官は、日本海軍の名誉あるゲストである』」
「そのクドウという男は救助した敵兵をゲストといったのか……広い心を持っているのだな。だから私を迎える時に、ガミラス語で話したのか?」
「それもあるね。うまく喋れてたかな?」
「流暢だった」
「あら嬉しいね。その後、工藤艦長と雷の船員は遭難者の捜索を続行して、1人も見逃すことなく遭難者を救助、敵国の病院船に全員引渡したそうよ」
「ニホンのブシドウ、礼儀に則った丁寧な対応。敬意を評したいな」
「この話には続きがあってね、その救助された船員が、終戦から数十年経って工藤艦長に感謝を伝えに行ったの。その時工藤艦長は亡くなってたけど、彼の思いが書かれた手紙は、しっかりと墓前に供えられたそうよ」
「感謝を伝えに行ったのね、日本と英国を結んだ友情が出来た瞬間ね」
アスカが頷きながら微笑む。当時の戦争はお互いに正義を掲げ、互いに「ゆがんだ思想」であるという事を決めつけて殺しあった。
でも、工藤艦長は武士道に則って溺れている者の救助を行った。海の男たるもの溺れている者を見過ごすわけにはいかなかったのだろう。
いかに敵兵であっても救助してもてなす。それは、今の状況に近かった。
Type nullの操縦で疲弊しきった自分を治療して、今では航行不能になりかけの敵艦を船体にくっつけて航行しようとしている。
軍人の家系として、礼儀を重んじる自分に響くものがあった。
「ここに来る前にクダン司令から、『恩返し』という言葉を聞いた。それも、ブシドウに近い物なのか?」
「そうね。何か助けてもらったら、今度はこっちが助けるとかね」
「いつか恩を返さんとな」
メルダのパフェの器……その中身は、心をそのまま映したようにきれい食べられていた。
「両舷波動エンジン、出力上昇問題なし」
「重力アンカー作動状況問題なし。ガミラス艦の固定状況、全艦問題なし」
「各部点検完了、発進準備完了」
『オキタ艦長、宜しくお願いします』
「もちろんです。文字通り、大船に乗ったつもりでいてください」
「クダン司令」
操縦桿を握る島が、急に口を開いた。
「互いに協力し合った身です。船乗りとして、あなた方を安全に送り届けます。ご安心ください」
敵か味方かではなく、船乗りとしてどうしたいか考えてた島の結論は、同じ船乗りを助けることにすることだった。
『シマ航海長、頼みます』
「了解です」
「Wunder、発進!」
沖田艦長の号令で船は休息を終え、宙を進み始めた。
でも少しだけ違う事があって、ガミラス艦と行動を共にしていることだろうか
これが、ガミラスと地球、双方の意識改革になるかもしれないと、沖田艦長は思うのであった。
艦内時間1100……
「ふう、ようやく終わった。多分寝てるよな……」
静かに扉を開けると、部屋は暗くなっていた。
そっとベットに行って寝ようとすると、
「風奏さん……」
ベットから、「親しい人の名前」が聞こえた。その人物を知ってるのはリク自信とハルナだけだ。
「思い出してるのか……」
一応寝顔を確認すると、目元から一筋の涙が流れていた。
そっと涙を拭いて、リクも眠りについたのであった。
勢いで書けてしまいました。
テスト期間があるので一応テンポよく書いていたつもりなのですが、7月23日現在、出来上がってしまいました。
今回登場した工藤俊作艦長は、実際に第二次世界大戦中に生きていた旧大日本帝国海軍の軍人で、イギリス海軍の重巡洋艦「エクセター」や「エンカウンター」の乗組員が漂流していたところ、敵でありながら全員救助したと記録が残っています。
この回を書くにあたって結構調べましたが結構いい話ですね
うまい具合に使うことが出来ました。
この他にも、日露戦争中の蔚山沖海戦における第二艦隊司令長官上村彦之丞中将も似たことをしています。
正直言って、「史実の人間を出しても大丈夫なのか?」と思いましたが、運営さんに連絡を取ったところ、「侮辱とかしなければ問題ない」との回答をいただけました。
運営さん、ありがとうございました。
そして名前のみの登場ですが風奏さんも久し振りの登場です。
では、次の話でお会いしましょう
(^.^)/~~~