宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
ITパスポートの試験勉強をしていたもので、どうも進まず……
色々考えた結果、原作「魔女は囁く」の話はオミットしてしまう事にしました。
つまり、この次の話「対次元潜航艦戦闘」でこの章は最後になります
「中将から上級大将に昇進か。一つ気になるのが、君が国民の中で人気が高いという事だ」
「閣僚の中には、君の活躍を快く思っていないものも多い。用心するんだ。君の赴任先は、あのもみあげゼーリックの腰巾着のゲールだぞ?」
ガルが懸念する通り、ドメルの赴任先である「バラン鎮守府」には、グレムト・ゲールがいる。
ゲールはゼーリックの腰巾着であり、何かの謀略にはめられる可能性もあるのだ。
「私は政治には興味ありません、軍人ですから。……バレラスも変わりましたね」
「……そういえば、君のとこのメルダ嬢ちゃん。無事のようだが」
「まったく、あのバカとバカ娘は2人そろって……」
「クダン司令とディッツ特務中尉、無事の様で良かったです」
「だが、テロン艦と行動を共にしている時点で驚いたもんだ。総統府に報告するだけで寿命が縮んだぞ。おまけで通信では何一つ話そうとしないし……」
「見たかねエルク、猛将ディッツにも意外な弱点があるようだ。クダン司令は言わずもがな変わり者だからな」
「おい、ヴェルテ!」
帝都バレラスを走るエアカーに乗るドメル、ガル、そしてヴェルテ・タラン。彼らを乗せた車は一つの揺れも起こすことなく郊外へと走っていく。
「提督、1つ、お願いがあります」
「ん? 何だね?」
「例の特務艦を、私にお貸し願えないでしょうか?」
「! アレをか」
「敵を沈めるためには情報が欲しいです。あの艦艇ならば、撃沈されることなく情報を集めるのも可能かと」
「確かに可能だ……うむ」
ガルが考えに浸っていると、突然車が停車した。
「どうした?」
「親衛隊による検問です」
マジックミラー越しに見えた外には、親衛隊の軍服を纏った兵が検問を行っていた。
「親衛隊の検問です。身分証の提示をお願いします」
運転手は、身分証代わりにエアカーのサイドガラスを下ろした。
名将ディッツ提督に軍需国防相のタラン長官、宇宙の狼ドメル中将。有名な面子御三方に思わず親衛隊員は敬礼をした。
「失礼しました!」
「どうしたんだい?」
「反乱分子の摘発です」
「こんなに……無関係の人まで巻き込むな!」
「全員収容します。これはギムレー長官の命令です。どうぞ、お通り下さい」
親衛隊員に通されて、検問地域を通過する。窓の外には、輸送艇に詰め込まれる臣民が悲痛な顔を浮かべていた。
「彼ら全員収容所惑星送りか……いくら何でもやり方という物があるだろう」
「親衛隊は総統直轄の治安維持組織、総統の名のもとに力を行使できる」
「権力というのは持たせるべき人に持たせねばならん、その事がよく分かったよ」
「正直、自分は親衛隊の傍若ぶりは好きではありません。人前では安易に口にすることは出来ませんが」
顔を歪めるドメルを見、かすかに顔を曇らせツ2人。何とかしたくてもどうにもできないのが、今の現状だ。
「ドメル。君、アウルのバカと気が合いそうだな」
「今度お会いした時に、話をしてみようかと思います」
「そういえば、提督とクダン司令は古い付き合いと聞いたのですが」
「あのバカとは長い付き合いでな、メルダをType nullに乗せるのを許したのは、あいつの指揮下に入るという事が決め手だったんだよ。あいつなら娘を任せられる」
「どのような方なのですか?」
「変わり者、異端児、変人……そういう言葉がお似合いなやつでな。二等一等とかの区別を嫌って分け隔てなく接するやつだ」
かなりの言われようだが、それを語るガルの口元は少し笑っていた。変人と言っていながらも信頼しているのだ。
「ひょっとしたらフラーケンよりも変わり者かもしれんな」
「それはない。フラーケンと肩を並べる変わり者は本土にはいないよ」
冷静にタランが補足説明をする。
静かに走り続けるエアカーはバレラス郊外の共同墓地に到着した。
「ここでいいのかい?」
「はい」
「ああ、例の特務艦のことだが。こちらで回しておこう」
「ありがとうございます。提督」
「それじゃあおやすみ」
ドメルを降ろしたエアカーはそこから静かに立ち去り、ドメルの目の前には広い広い墓地が広がっていた。
__________
「ドメル君の言うように、バレラスは変わったよ」
「ゼーリックは版図拡大、親衛隊のやりたい放題は目を覆うばかり、副総統はお飾り。そして総統は、遷都を考えておられるらしい」
「遷都? バレラスをか?」
「……大統合だよ。我々はどこから来て、どこに向かうのか……」
「古い昔話だと、我々は星の海を航海していたようだがな」
「あれは昔話だろう。でも神話、それもイスカンダルとガミラスの先祖らしきものが出ているからただの話とは言えんな」
「あなたがこの日を覚えているとは思わなかったわ」
「総統命令で一時帰国した。次は銀河系の方に向かわないといけない」
「遠いわね、銀河系」
「ああ、いつ帰れるかは分からない」
妻のエリーサと見つめる墓は、息子のヨハン・ドメルの墓。
ドメル夫妻の息子は死別しており、こうして眠っている。
「ねぇ、国民放送でよく聞くようになったけど……」
「どうした?」
「鋼の翼……テロンの宇宙戦艦がここに来ているみたいだけど」
「そのことか。まだ何とも言えないが、少なくとも大マゼラン方面に向かっていることは確かだ。総統からはその戦艦の撃沈命令が下った」
「……気を付けて」
「ああ」
…………
『一度身を隠してしまえば、誰も手出しはできなくなります』
「やはり隠れるならあそこが最適だね。君に相談して良かったよ」
『お役に立てて光栄です』
「無事の帰還を祈らせてもらうよ。では、また直に話そうか」
「何となくわかったよ。どうやらあの船は、君のもとに向かっているようだよ?」
郊外に静かに雨が降る……その曇り空の隙間には、蒼い星が輝いていた。
「そうですか、出航が可能に」
「はい。先日、主機関の修理が完了し、始動テストも無事に終了しました」
「短い間でしたが、ともに宙を進めた事を嬉しく思います」
「それは、こちらも同じ思いです。オキタ艦長」
Wunderの艦長室で話をする沖田艦長とクダン司令の顔は少々温和なものだ。
「こちらの航路図によると、2.4光年先にそちらの指定した恒星系があります。その宙域に進入し次第、重力アンカーを解除します。その後、そちらは補給基地に、我々は目的の地に向かいます」
「また会う事を楽しみにしましょう」
「そうですな。宇宙は広い、ですが船乗りならば宙を進めばいつか会えるでしょうな」
互いに紅茶を一口飲み、その後は宇宙物理学について語り明かした。
「そうか、そろそろお別れか」
「ああ。世話になった」
一方暁・睦月研究室では、メルダに関わった面々が別れを惜しんでいた。
「あーあ、スイカ食べる前に行ってしまうなんてね」
アスカがニヤニヤしながら話しかけた。
「むぅ、それは惜しいな。いつごろできるのだ?」
「うまくいけばイスカンダル到着には出来るよ」
「食べに行く」
「ちょ、食べに行くって、イスカンダルとガミラスってメチャメチャ距離あるんじゃないの?」
「そんなことないぞ? テロンの言葉で言うなら、『目と鼻の先』という感じだ」
「?! ホントなのユリーシャ?」
「……実はそうなの。なかなか言い出せなくて、ごめんなさい」
「沖田艦長はこの事を?」
「オキタ艦長には一応伝えたの。でも黙っているようにと言われて……」
「後で艦長に聞いてみる。これは地球存続の問題にかかわるから」
「ユリーシャ。とりあえず航海科にこの事を伝えて、そのあとに乗組員全体に知ってもらわないといけない。貴方の言葉で」
「……そうだね、黙っていた分責任はとるわ。メルダ、サレザーの軌道配置図って持ってる?」
「ありますが、それをどうなさるのですか?」
「貸して欲しいの。皆に納得してもらうための証拠が欲しい」
「それは……いくらイスカンダルのお方と言えど、軍規に抵触します」
「だよね……」
「……うっかり私がここに忘れたりしなければ配置図の確認は無理かと思います。……アカツキ、ツヴァルケの調整がしたい。格納庫に連れてってほしい」
「? ……! 分かったわ、手早く済まそうか。リク」
急にリクの耳元に顔を寄せて、
「お願いね」
といって手早く研究室から出ていくと、リクはその真意に気が付いた。
「ユリーシャ、今のうちにデータを取って」
「え?」
「『うっかり私が忘れたりしなければ確認は無理』、自分から見せるのは無理だけど置いてあるのを見られる分には軍規に触れないってこと。急いで!」
「わかった!」
ユリーシャはメルダが「忘れていった端末」に飛びつくなりサレザー恒星系の配置図を呼び出す。
目的のものを見つけたら、自分のイスカンダル製の端末の送り込む。
(あからさまに演技バレバレなんだよなぁ)
それから数分後、メルダとハルナが戻ってきた。
「あ……ここに置いてあったのか。これを忘れてしまったから愛機の調整が出来なくてな、そのまま戻ってきたのだ」
「次からは忘れないようにね。それ重要なんでしょ?」
「うっかりしていたようだ」
そう言いながら端末をしまうメルダはかなりわざとらしい。でも、こういう裏道を使ってこっそりを教えるあたり、なんだかんだあって彼女は友好的なのだ。
「さて、クダン司令から早く戻るようにと言われているのでな、この辺で失礼する。あとコダイとオキタ艦長にも会っておかなくてはならんのだ」
「そうだな。メルダ、元気でな」
「気を付けてね」
「メルダとドックファイトしたかったわ」
「いや、それは物騒極まりないよ?」
研究室に笑いが溢れ、別れがたい雰囲気になる。だが時間という物はこちらの都合を全く持って考えてくれないのだ。
「それでは、航海の無事を祈っているぞ」
そう言うなりメルダはガミラス式の敬礼をして、そのあとに見よう見まねで地球式の敬礼をした。
それは地球とガミラスの懸け橋となりうる出来事だった。
「ワープ終了。目標宙域に進入しました」
「うむ。重力アンカー解除用意。フリングホルニに通達。『まもなく重力アンカーを解除する。準備されたし』」
「了解です」
ワープアウト地点である目的地の恒星系にたどり着いたWunderは重力アンカーを解除して、ガミラス艦隊を係留から解き放った。
宙に浮かぶガミラス艦隊の推進ノズルに淡いピンク色の光が灯り、海洋生物的な印象を与えるガミラス艦はその宙を泳ぎ始めた。
「フリングホルニから電文を受信しました。『貴艦の航海の無事を祈る』です」
「フリングホルニに返信。『無事の帰還を祈る』」
フリングホルニ率いる101部隊が、ガミラス基地の存在する惑星に降下し始めたのを確認したWunderは、その恒星系から離脱した。
「進路そのまま。現宙域から離脱」
「了解」
「……沖田艦長。お時間よろしいでしょうか」
いつの間にか艦橋で静かに立っていたのはリクとハルナ、そして申し訳なさそうにしているユリーシャだった。
「……分かった。艦長室に来なさい」
「なぜ、イスカンダルとガミラスが同じ位置にあることを黙っていたんですか」
「……」
「応えてください。この船だけじゃなく地球存亡にもかかわってくることですよ!」
「おいハルナ! 落ち着け」
「あ、……ゴメン。すいませんでした」
ピリピリとした雰囲気に支配された艦長室。ハルナは怒りを隠せないでいる。
「オキタ艦長、もう知られてしまっていることなんです。説明しないと……」
ユリーシャが沖田艦長に促す。
「そうですね……まず、君たちにこの事を黙っていたことについて謝らせてくれ。すまなかった」
「まず、謝罪はそうなんですが、せめて乗組員の皆が納得する説明をください。ここまでで死者も出ているんです」
「……イスカンダルの位置は、サレザー恒星系の第四惑星、そしてガミラスも同じ位置にあり、二重惑星として存在している。互いに重力が釣り合い、この二つの星の中間地点、ラグランジュポイントを中心にして回っている」
「二重惑星……それがガミラスとイスカンダルが同じ位置にある理由なの。でも黙っていたのは理由があるからなの」
「それは?」
「イスカンダルに向かうというのは、同時に敵地に徐々に近づいていくという事になる。次第に敵からの攻撃も激しさを増す。イスカンダルに近づくことは乗組員全員の士気の上昇に繋がるが、敵地に近づくことに対しての恐怖にもなってしまう」
「だから黙っていた……それは違うと思います」
「……」
「本来なら進宙前に、遅くとも太陽系脱出前に座標を公開して、『それでも進むのか』と是非を問うべきです。もし公表がこれ以上先延ばしにされたら、乗員の士気に関わってきますし反乱の可能性も否定できません。彼らはイスカンダルへの大航海に対しては覚悟ができているはずです。ですが……ガミラス星に近づく覚悟は出来ていないと思われます」
「今からでも遅くないのか……」
「寧ろ遅いくらいですが、マゼランに入ってから公開するよりはいいと思います」
「……ユリーシャさん。真実を伝えるときが来たようだ。暁君、すまないが当直の航海科以外全員に集合を掛けて欲しい」
「……沖田艦長。必ず、あなたの言葉で真実を話してください」
そう言い残すと、ハルナは敬礼して艦橋に向かった。
「沖田艦長、ユリーシャ。黙っていた理由は分かりました。ですが、敵地に近付いているという事で怖気ずく様な人は、この船にまず乗れないと思います」
握られた拳は、震えていた。
「イスカンダルとガミラスが同じ位置に?!」
「そうだ。君たちにすまないことをした」
そう言い、沖田艦長と、ユリーシャは頭を下げた。
「ちょっと! 頭を上げて下さい艦長、ユリーシャさん!」
「ここに来て納得がいきました。銀河系から離れてきたのに何でガミラスの基地が存在する恒星系があるのか。大マゼランから銀河系に手を伸ばしてきているなら、中継基地という形で複数の恒星系に基地が設営されていてもおかしく無いです」
島が頷きながら状況を噛みしめていた。
「行き先が分かったならそれに合わせて航路を組み立てるだけです。ユリーシャさん、艦長、航路設定を行いますので協力をお願いします」
「分かった。……すまなかった」
示された行き先、それは敵地の中枢。
だが、それに慄く者はいなかった。
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「沖田十三……とんでもないことを黙っててくれましたねぇ」
「イスカンダルとガミラスが同じ位置に……洒落にならないスクープね。盗み聞ぎしていたあなたも洒落にならないけどね」
「保安部は詮索が大好きですからね。騒動でも起きなければひたすら閑古鳥が鳴きますよ」
新見と伊藤はどこかの小部屋で内緒話をしていた。
「さて、極上の旨味のネタは仕入れましたが、問題は何時何処ででやるかという事ですよ?」
「他の恒星系……せめて居住可能惑星が近くにあることが最も望ましいね」
「ではその時までネタは寝かしておくことにしましょうか。それと人集めも大事ですよ?」
___
「総員、艦長の沖田だ。私は君たちに謝らなければならない。イスカンダルまでの航路はユリーシャさんの協力で航海科で手探りで作成されている。だがイスカンダルの位置情報はすでに判明している。イスカンダルの位置は大マゼラン星雲のサレザー恒星系、第4惑星。そして同じ位置にガミラス星も存在している」
「私には君たちに問う権利はない。このような重要なことを黙っていたのだからな。だが私は皆に問いたい。イスカンダルに向かうということはガミラスに近づくことと同意となる。それでも向かうのか、皆の意思を伝えて欲しい。以上だ」
「生真面目ですね、艦長。そんなことしなくても、この船にはそれで怖気ずく様なヤワな人はいませんよ」
「筋は通しておかなくてはならん。黙っていた分はな」
目深にかぶった艦長帽のせいで目元が良く見えないが、引き締まった眼をしていた。
「そういう所、良いと思います」
『技術科、全員の意思を確認』
『船務科、全員の意思を確認しました』
『戦術科、異論なし』
『こちら機関室。儂らは窯の面倒を見て航海を支えるだけじゃ、艦長』
『航海科、我々はイスカンダルに向かいます』
意志は固い。
地球を救うためにイスカンダルに向かう、救世主たるWunder乗組員は同じ方向を向く。
目的地はまだ見えないが、確かにあるからだ。
「ありがとう」
そう締めた沖田艦長は、放送用マイクを静かに置いた。
「古代、お前はどう思う?」
「イスカンダルとガミラスが同じ位置にあることか? 驚いたけど、今思えば、『知らなかったから航海を続けることが出来た』んじゃないかな?」
Wunderアレイアンテナ基部の観測室は、時に談笑の場としても使われている。
星を見ながら話をするのはロマンチックだが、そんなことで片付けられない程艦内は忙しくなっている。
そんな忙しさの中一時の休憩を求めてこの部屋にやって来たのが、戦術長と航海長だ。
「知らなかったからか……航海科では大騒ぎだぞ? 急に目的地が決まったからバラン以降の航路も考えないといけないからな」
「バランとイスカンダルの間がまだ分からないのにか?」
「それでもだ。でも出来ることと言えば、恒星系をなるべく通れる航路にしておくことかな。主計科いわく、オムシスに回す有機物が減ってきているみたいだからそこもカバーできるようにしないといけない」
「流石に美味しい物食べれなくなるのは困るからな」
「一応いざという時の物もあるみたいよ?」
宇宙船独特の、圧縮空気の抜ける音が響きドアが開いた。そこにいたのは森だった。
「森君? それって何だい?」
「栄養食みたいな感じなの。睦月さん曰く『ディストピア飯』って言っていたけど」
「……それ何?」
「だから、ディストピア飯」
「……できれば食べたくないな、気のせいか嫌な予感しかしない」
「島、俺も同感だ」
「それはそうだけど、イスカンダルに近付くのはガミラスの攻撃に合う頻度も多くなることなんだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫だ。前に睦月さんが撃ったカミナリサマを技術科に頼んで量産の準備を進めてもらっている。あとは適度に火器の作動チェックしたりとかかな。航空隊にも頼んで模擬戦の頻度を多くしてもらった。それと……コスモゼロの改造だな」
「コスモゼロの改造?」
「暁さんに名案があるみたいで、真田さんも絡んでやっているみたいだ。なんか『変態機動が出来るようにする』みたいだ」
「変態機動……?」
「多分物凄い機動力の付加だと思うけど……」
「人が乗れる戦闘機だよな? それ」
島が怪訝そうな顔をして聞く。真田さんはもちろん分かっているが、ハルナもそれに劣らぬ技術者だという事は島もよく知っている。あんな2人が絡んだら「バケモノ」が生まれるとでも思ったのだ。
「ちゃんと乗れるようにするみたいだよ?」
「はぁよかった」
「??」
森が胸をなでおろしているのを見て古代は疑問を持った。
「古代君もコスモゼロ乗るでしょ? 危険な機体に乗ったりするのはやっぱり危険だからね」
「確かに操縦できなきゃ意味無いからな」
「一回古代君にシミュレータやらせてもらったけど、通常の状態でのコスモゼロすっごく速かったもん」
「森君コスモゼロのシミュレータやったの?」
「小惑星にぶつかって爆発四散したけどね」
「宇宙で衝突事故……クックック」
「むぅ~だって初めてだったんだから」
島にその事実を笑われて膨れる森を見て、苦笑いする古代であった。
『時空変動20から70へ、到着予定時刻に変更なし』
『回廊形成を確認。第六空間機甲師団、到着します』
バラン星……古代アケーリアス人が残した遺跡の一つである「超空間ネットワーク」のハブステーションであるこの星は、ガミラスの重要拠点の一つである。
その星は赤黒く、とても生物がすむような星ではない。だが、アケーリアスの人々は、「わざとここにした」のではないだろうか?
この広い広い宇宙でも類を見ない見た目を持つこの惑星にハブステーションを置くことから、「便利なのでどうぞ使ってください」という意図すら感じ取れる。あたかも、後続の文明の発展を願う形でこのような奇妙な事を行ったようだ。
ガミラスが分かっていることと言えば、「古代アケーリアスは、自らの似姿を宇宙全体に蒔いたらしい」という事。
そして超空間ネットワーク以外にも複数の遺跡を「よく目立つ形で」残したのだ。
この便利な高速道路じみたネットワークを現在管理して間借り人となっているのが、
「ガミラス」である。
_____
ドックに着艦指示が響き渡る。緑の船体が次々に降下していく。
バラン鎮守府航宙艦ドックに着艦した第六空間機甲師団、その旗艦たる「改ゼルグート級一等航宙戦闘艦 ドメラーズ三世」から現れたのは上級大将に昇進したドメルだった。
新任司令長官のご到着に不満げな顔が張り付いたゲール……彼はドメルの指揮下である「副司令」として今後は責務を全うしていく。
ドメルは周りの軍人から見ても出世スピードが速い。おまけにガミラス臣民からの人気が高いのもあって、閣僚や他の派閥の軍人からは良く思われていなかったりする。
「デスラー総統からの命令を伝える。タム12の8を持って小マゼラン防衛司令官ドメルを銀河方面作戦司令長官に任命する。なお、前任のゲールは副司令としてドメルの指揮下に入れ。以上だ」
互いに敬礼をして命令の伝達が行われ、司令長官の任は正式に引き継がれた。
やはり納得のいかないゲールは悔し顔。ドメルの背後のドメラーズ三世が覆しがたい現状、崩しがたい壁に見えてしまう。
「閣下、フラーケンより入電。『狼は空腹』です」
一見すると何のことだか分からない通信に、ゲールは眉をひそめるが、事情を知っているドメルはニヤリと笑った。
「何かあったのですか?」
「……猟犬が獲物に喰い付きたいらしい。ハイデルン、返信を頼む。『狼よ喰らい付け』」
その返信内容に含み笑いをしたハイデルンは姿勢を正して、
「なるほど、フラーケンはウズウズしていることでしょうな」
ドメルの参謀を長年やっているだけの事あって言いたいことをすぐに察して、敬礼を返した。
「フラーケン……UX-01ですか!」
「猟犬にはうってつけだ」
静かに迫る猟犬……それは異次元の狼。
「おやっさん。イスカンダルとガミラスが同じ位置にあるってこと、本当なんですよね……?」
「真実じゃろうなぁ。艦長の声聞けば嘘じゃないという事がすぐわかるわ」
「でも、何ですぐ近くにあるのかまでハッキリしていなんですよ? もしかしたらイスカンダルとガミラスがグル……なんてことも」
薮は腕は確かなのだが気の弱さと疑心が目立つ。
波動エンジンでワープが出来るのかどうかも半信半疑だったし、そもそもメ二号作戦時にイスカンダルから宇宙船が来るのかどうかも疑っていた。
「ならイスカンダルとガミラスがグルとした場合、何でお嬢さんが乗っているこの船を攻撃する?」
「そりゃあグルであるという事を隠すためとか……でもグルであるということも証明できないですし……」
「考えても埒が明かん。そういえば今日は新見君のカウンセリングじゃったろ? 行ってこんかい」
「そうでした。ではお先に失礼します」
そう言って薮は、機関室から出ていった。
「やっぱり心配なんです。この船どこに行くのかなって」
「そう……ありがと、よくわかったわ」
閉鎖空間での長期生活というのは見かけでは分からないが精神面にストレスがかかる。
そのストレスの発散としてWunderには様々な施設が設置されているが、「それでも足りないから」という新見の意見でカウンセリングが開かれている。
はたから見ればカウンセリングに精を出しているお姉さん。
でも真実は、贖罪計画の手先を増やしたい魔女。
「いい感じですね、イスカンダルの位置問題が良い感じに不安をあおってます」
「沖田艦長にはある意味感謝しないとね」
「老婆心で忠告しておきますが、反乱起こしたときに一番脅威になるのは技術科ですよ? 特にあの白髪コンビ。この船の生みの親ですし」
「そうね、あの2人には悪いけどアレを回収してから軟禁しておかないとね」
「沖田艦長と副長は力で軟禁できますが、さすがにあの2人は入念に準備しないといけません。ココが鋭すぎます」
そう言って伊藤は自分の頭を指さした。
「目標を確認した。……確かにでかいな」
「こんなに堂々と飛んでて、こっちに見られていることも知らずにねぇ~」
「艦長、ドメル上級大将から入電。『狼よ喰らい付け』です」
「フッ。魚雷発射管一番二番開け」
「発射管開けェ!」
「ゴーサインが出たか……狩りを始めよう」
狼、猟犬は舌なめずりをして血に飢える。肉に飢える。獲物に飢える。敵に飢える。
今、その目に映るのは誰も見たことのない非常に興味深い獲物だ。
「魚雷一番、二番発射ァ!」
そして、牙が放たれた。
そこは決して誰もたどり着けない宙の底
そこに潜むのは、一匹の狼だった。
かなり早い段階でイスカンダル座標の公開を行いました。
それが吉と出るか凶と出るか、どうやらどちらでもないようですね
それと、9月から基本情報技術者試験の勉強が佳境を迎えるので、1ヶ月間の休載をすることにしました。
10月になったらまた連載を再開します
2話くらい出したら重要な回を投下します。ご期待下さい♪♪
それでは少しの間さよならです
(^.^)/~~~
I'll be back~