宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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皆さんお久しぶりです帰ってきました。

試験に無事合格したので、試験期間中に書いていた4作を順番に上げていきます。
今回は、次元潜航艦の話です。


なお今回の話は、原作重視で書いていたので視点がコロコロ変わります。
そのため、視点が変わるところでは

【side○○】と書いてあります。

何も書いていないところは、「三人称のナレーション視点」となっています。

初期稿から調整しましたが、もしも読みにくかったら教えてください。
一旦戻して調整して再投稿します。


宙の底なし海

 

「次元潜航艦UX-01は総統直轄の特務艦。よく配属変更の許可が総統府から降りましたな」

 副司令に降格したゲールが驚いているのはほかでもない。「あの次元潜航艦」が総統直轄ではなくドメルの手元に今あるという事だ。

 

 

 どんなマジックを使ったんだ? 

 

 

「そんなものは出ていない」

 

「何ですと?!」

 そりゃあそうだ。総統の裁断がないと配属の変更が出来ないはずだ。

 少数製造艦……訂正しよう、たった一隻しか就役していない特務艦艇であり、兵器開発局の極秘の試作兵器の一つなのだから尚更だ。

 

「大丈夫ですよ副指令殿」

 

 どうも「副司令」という肩書が気にいらないゲールにとって、ドメル司令は目の上のたん瘤ともいうべき存在だ。

 しかし手を下そうものならドメル幕僚団にタコ殴りになるであろうというのは、いくらゲールと言えどもわかっていた。

 

 要するに、「自分からではどうにもならないのだ」

 

 

 

「猟犬の飼い主はディッツ提督ですからねぇ」

 

「つまり、ディッツの親父がうんと言えば問題はなし」

 

「問題なのはフラーケンの方だ」

 

「それ言えてる。奴は扱いが難しい」

 

 

 

「私のモットーは臨機応変だ。覚えておきたまえ、ゲール君」

 

「ざっ……ザーベルク……」

 ドメルの愛鳥が勢いよく頭の上に飛び乗り、文字どおり「目の上のたん瘤」となった。

 

 

 

 

 

 

 

 魚雷が駆ける。

 群れとなったその牙は、その全てが微惑星に着弾していく。

 

 

 第二種戦闘配置から四時間、Wunderは原始恒星系のガスに紛れ込み、姿を隠していた。

 

 

「敵空間魚雷2、微惑星に着弾」

「また探りを入れてきたか……」

 

「この原始恒星系の星間物質に紛れて隠れていれば、敵はこちらの位置を特定することは困難です。艦長の判断は、的確でした」

 

 

「また一本きます。……着弾。10時の方角」

 

「いったいどこから……レーダー、発砲位置は?」

 

「ダメ、今度も特定できなかった……」

 森が申し訳なさそうに答えた。

 

 このような魚雷攻撃はここに隠れてからもう何度も来ている。

 それなのに発砲位置が特定できていない。

 

「ステルス艦……ってことか」

 

「宇宙でステルス……?」

 全周スクリーンの宙に目を向けながらハルナがそう呟く。

 航宙艦艇には当然のようにレーダーがついている。Wunderについているレーダーはとびきり強力なものなのだが、艦影は無し。

 

「これって……うーん……」

 

 

 姿の見えない敵影に皆耐える。

 沖田艦長も、耐えていた。

 

 


【side リク】

 

 

「それじゃあ次、遠隔操作のミサイルユニット群による攻撃は?」

 

「ありえないにゃ、ここまで20発近くやって来てるにゃ。数揃えればできるかもしれないけど私が敵ならやりたくないにゃ。疲れる」

 

「それじゃあ次、こちらの索敵範囲外からの攻撃は?」

 

「難しいにゃ。いくら魚雷がフレキシブルに曲がっても、アレ全部いろんな方向から撃たれているんにゃ。撃つたびに艦を移動しているとすると相当移動していることになるにゃ。長距離移動すればWunderの自慢の目が捉えてるにゃ」

 

 解析室に詰めていた僕とマリと赤木博士は、この謎の攻撃がどこからどのような方法で行われているのかを考えている。

 そろそろ頭が煮えてきそうだ。

 

 タッチパネルには無数の方法が書かれては斜線で消されている。

 考察開始から3時間。そろそろわかってもいいころなのだが……

 

 

 

「……こうなったら突拍子もない案出すしかないわね。2人とも、次元断層覚えている?」

 

「はい、あの波動機関殺しの空間ですよね」

 

 

「もしもあの空間、もしくはアレによく似た空間を航行可能な艦艇がいたら、こっちに見つからずに航行することも可能なはずよ」

 

「そんな、あんな死の海域を通れるやつなんて……」

 

「ガミラスの科学力はいまだに分からないことが多いから、正直何でもアリな文明と考えた方がいいわ。私たち基準で考えない事ね。それに、波動エンジンの開発で亜空間の存在が実証されて、亜空間の潜む敵の存在も想定されたんでしょ?」

 

「まぁそれはそうなんですけど……」

 

 

 

 ガミラスの艦艇の種類には、実際まだ分からないことが多い。

 一応異形じゃなく、ビーム砲塔、魚雷発射管、艦橋、推進システムなど、地球の艦艇に類似している部分は多々ある。

 

 でも「これがガミラス艦の全て」というわけではない。その良い例がフリングホルニだ。

 

 

 クダン司令によると、「ゲルバデス改級」という艦のタイプらしい。

 明らかに雷撃戦を重視していなさそうな見た目だった。

 

 まあ船の用途からするとそりゃあそうだったんだけど、原型となった船を想像してみると明らかに「空母っぽかった」のだ。

 

 

「空母で雷撃戦するとは到底思えない。いや、でもやる気満々なくらいに魚雷発射管あるけどね……」

 

 ……と思ったのだが、まだ艦種がありそうな感じがあったのだ。

 

 ガミラスのドクトリンが一本に定まっているのか、はたまたそれぞれ派閥が掲げているドクトリンが違うのかは分からないけど、主としたドクトリンとは思想の違う艦、もしくは実験色の強い艦がいくつもあるという事が予想できた。

 

 

 

「にしても次元断層を航行できる船なんてどうやって調べるんですか? シーガルで哨戒します?」

 

「……まず、敵はこちらの位置を探り探りな状況なの。でも魚雷をこの近くの宙域に撃ちこめている。つまり、この辺の宙域で顔を出しているの。例えば……潜望鏡のようなものを使ってこちらの位置を探ったりね」

 

 なるほど、と思ってしまう。聞けば聞くほど突拍子もない仮説だが、仮称「何でもあり文明」を相手してるだけあって、それも後押しして「ありえる」と思ってしまう。

 

 

「そして敵艦が通常動力型潜水艦に近い物だと仮定すると、どうしても無限に潜っていられるわけじゃないのよ」

 

 

「「???」」

 いきなり航宙艦船から旧時代の潜水艦の話されても困る。どう繋げるんですか? 博士? 

 

「旧大戦、もしくは2000年代の潜水艦はどうやら、核分裂炉を搭載した原子力潜水艦と、ディーゼルエンジンとモーターやバッテリーを併用した通常動力型潜水艦という分類に分かれていたわ。そして、敵の潜水艦……いや、『次元潜航艦』は原子力潜水艦タイプではないと思うわ」

 

 

「……それって、敵の主機がWunderの波動エンジンに準じたものだからという事ですか?」

 

 

 話が見えてきた。敵艦の主機から敵がどういう艦なのか分かるという事みたい。

 今攻撃をしてきている船が「ガミラス星からやって来た」と仮定したら、僕としてはワープ機能が欲しい。

 ゲルバデス改級が空母っぽかった事もあって、「輸送艦みたいな艦がいてもおかしくない」という事もあるから断言はできないけど、もし単独で来たのならワープ機能は必須だ。

 

 距離的にどう考えても無理だ、ここまで来るのに何万年もかかる。

 

 

 

「そういう事。ガミラス星の波動エンジン……まぁガミラスエンジンも次元断層内部で影響を受けるなら使えない。なら別の『次元断層航行用機関』を使う。あの空間からエネルギーを取り出すのは……波動エンジンが無理だったから恐らくガミラスも不可能に近いわ、恐らく通常空間航行時に貯蓄しておいたエネルギーを使って航行しているのかもね。だから、次元潜航艦が通常動力型潜水艦に近いと思ったのよ」

 

 

 

 要するに、ガミラスの波動エンジンがディーゼルエンジン、次元断層航行用機関(仮称)がモーターの役割をしてるという事。

 ガミラスの波動エンジンであらかじめ作っておいたエネルギーをコンデンサーに溜めておいて、そのエネルギーを使って次元断層を航行する。

 

 

 

 なるほど、確かに通常動力型に近い。

 

 

 

 この場に真田さんがいなくて良かった。

 議論が加速度的に膨張して手が付けられなくなる。

 

 でも、次元潜航艦かぁ。ホントにいるという証拠が欲しいな……

 

 

 


 

 

 

「亜空間ベントを閉鎖、深度20から30。次元圧正常」

 

「位相パラメーター異常なし」

 

「次元波動パターン感知できない」

 

 

 

「……尻尾を出さないな」

 

「連中、もうくたばっちまったんじゃないですかぁ?」

 ハイニが癖のある口調で暇そうに口に出す。

 

「臆病で我慢強い、おまけに賢い鼠。狩りのし甲斐がある」

 

「こうも星間物質が多けりゃ、空間航跡のトレースも出来やしないすよ。いまんところ当たってない感じですし」

 

 

「狩りは長く楽しむ物だ」

 

 周囲には死んだ船が漂う次元断層……そこに潜む一匹の狼は、静かに行動する。

 

 さながら潜水艦。忍者はどこへ征く……

 

 

 


【side ハルナ】

 

 

「微弱な次元震……?」

 コンソールに表示された観測結果を見て真田さんはそう呟いた。

 

 

 ……次元震って何? 

 

 

「真田さん、次元震って何ですか?」

 聞きなれない単語に私は疑問を覚えた。

 

「そのままの意味だ。次元境界面が揺れている、さざ波が立っているという事だ。今までこんなもの見たことがないのだが……」

 

 真田さんにしては珍しくうんうん唸ってる。と言うより、次元に波が立つようなものって何かな? 

 自然に起こる物なのかな? 

 

「この波形の形……ばかに一定ですね」

「そうだな。これがもし自然に起こった物ならは気味が悪い、ありえないと思うが人工的なものなのかもしれない。……この波形を解析室に送ろう。何かわかるかもしれない」

 

 真田さんがデータを送ってから10分後……解析室から一報が届いた。

 

『解析室から戦闘艦橋へ。真田君、ちょうどいい時にちょうどいいデータ送ってくれてありがと。敵の正体、なんとなくわかって来たわ』

 

 

 

 赤木博士のご機嫌そうな声が全周スクリーンの内壁に響く。いや、データ送ってからそんなに時間経ってないよ? 

 

 

 

「赤木博士、どういうことですか?」

 真田さんが珍しく驚いていた。もちろん私もよ? 10分で敵の正体見つけるとか神様か何かかな? 

 

 

『敵は恐らく、次元断層から攻撃していると思われます。そして敵の正体は次元境界面に任意に回廊を形成して、通常空間と次元断層空間を自由に行き来することが可能な艦艇。宇宙の潜水艦……すなわち「次元潜航艦」です』

 

 

 急に音声通信から映像通信に切り替わって赤木博士グットサインと希少なドヤァ顔が映る。

 赤木博士は自信満々に説明してたけど……いや、突拍子もなさすぎる。そしてこうも思った。

 

 

 

 次元断層に潜めるなんて無敵じゃん!! 

 

 

 

 ……ええその通りです。

 断層に潜んでいられる時間に制限がないならこっちは手出しできない。向こうの武装の量によるけど、その気になれば一方的にボコボコにすることも出来る。

 幸いなのは、仮説上では無限に潜っていられるわけではないという事。

 エネルギー切れになる前に浮上して主機でエネルギーを発生させてコンデンサーに溜めないといけないという事。

 

 ガミラスにもトンデモ兵器あったんだぁ……

 

 

「じゃああの次元震は、次元潜航艦の潜航音だという事ですか?」

 

「流石真田君ね。あの次元震はいわば彼らの足音よ」

 真田さんが言うには、あの次元震は次元潜航艦が断層内を航行しているときに漏れた音らしい。

 潜水艦は静粛性が命。でも穴があったわね。

 

 

「艦長、至急対潜戦闘に移ることを進言しま……艦長?」

 そう進言して上を見ると、胸を掴んで蹲る艦長の姿があった。

 

 

 

 

 

 そして、急にその場に倒れこんだ。

 

 

「艦長!!」

 

 


 

 

 戦闘艦橋内で急に倒れた沖田艦長は医務室に緊急搬送され、検査を行っていた。

 

《臓器不全の進行が見られます》

 

 身体スキャン検査によると、肺と心臓の一部に機能不全が見られる。

 

 

「これは……先生」

 

「手術じゃ。すぐに準備にかかってくれ」

 

「はい!」

 

 

 その様子を陰でこっそり見る者が1人。その影はすぐに立ち去ったが、嫌みを含んだ空気がその場に残った。

 

 

 ____

 

 

 

「沖田艦長が復帰されるまでの間、本艦の指揮は副長である私が執る。これより、敵を次元断層内への潜航能力を持った艦艇、仮称『次元潜航艦』として対応する。新見君は森君と共に索敵にあたってくれ」

 

「はい」

 

「暁君は次元震の波長に注意してくれ。少しでも波長に変化があったら報告を頼む」

 

「わかりました」

 

(異次元に潜る船……)

 

 

 未知の敵、姿の見えない敵に焦りを募らす古代だった。

 

 

 

「艦長、今助けますぞ」

 緊急手術の準備が整った手術室。液体呼吸システムの水槽内に横たわる沖田艦長に向けて、その決意を放った佐渡先生は、手術を開始した。

 

 

 慌てず急いで慎重に、その体にレーザーメスを入れて術式を展開していく。

 

 

 


 

 

 

「こちらはエネルギーを無限に供給できる、対して相手の無敵時間は制限あり。いずれ尻尾を出すわ」

 

 索敵を行う新見がそういった。

 

 そう、要は我慢比べなのだ。

 

 

 戦闘配置からすでに5時間。戦闘艦橋に詰めている面々にも疲労の色が見え始めた。

 

 戦闘艦橋の非常口は、沖田艦長を医務室に搬送した時から開放している。そのため人員の交代も可能。

 

 オマケに緊急搬送時に無重力にしたのもそのまま。

 

 

 

 

「肩に力が入っとるぞ」

 機関室から交代に入った徳川機関長に、見抜かれていた。

 姿の見えない敵、沖田艦長の緊急手術。イレギュラーが重なりどことなく力が入ってしまっていた。

 

 

 誰かに言われないと気づかない程疲労を蓄積していたことに気づいた古代は、一度大きく伸びをした。

 

 

「待つのは辛いな」

 

「……はい」

 

 ___

【side ハルナ】

 

 

 

「ハルナ、そろそろ交代した方がいい」

 そう言って戦闘艦橋に入ってきたのは、解析室にこもっていたはずのリクでした。

 

 

「私は大丈夫、リクは解析をお願い」

 次元震モニターと睨めっこしてそうやんわりと断ろうとしました。

 でも、それで首を縦には降らないという事は分かってました。

 

「ここ数ヶ月安定しているんだから、無理はしちゃいけない」

 誰にも聞こえないようにリクは私の耳元でそう言いました。

 

 

 

 ……あの事を言っているんだ。私の事は自分が一番よくわかっている。

 でもリクに結構迷惑をかけたことがある。

 

 

 

「……わかった。交代するわ。あとお願いね」

 

 流石に迷惑をかけるわけにはいかないから、ここは意地を張らずに素直に受け入れることにした。

 

「あ、ハルナ。またなんか反応あったらそっちに送るよ」

「わかったわ」

 そう言って、無重力空間を器用に泳いで艦橋から出ました。

 

 

 リクの前では言わなかったけど、やっぱりストレスとか疲労とか、私からしてみるとなるべく避けた方が良いものがそれなりに溜まってました。

 

 リクが察知していたのかは分からないけど、そういう負荷の少ない方に回れるなら甘んじて受けようかな。

 そう思って、解析室まで歩くことにしました。

 

 道中に通りかかった手術室、そのドアの上部で赤々と輝く「手術中」の三文字

 

 

「成功しますように……」

 

 

 ドアの向こうで奮闘する佐渡先生と医療スタッフの皆さん。そして、何の病気かは分からないけど今まさに戦っている沖田艦長にお祈りをしました。

 

 


 

 

「これだけ待っても出て来ねぇんだ、もうとっくにくたばっちまったんじゃねすか?」

 ハイニが「そろそろ退屈になってきた」という感情を隠さずにフラーケンに放った。

 

 

「そうだな。そろそろかくれんぼにも飽きてきたころだ。カマをかけてみるか」

 そう呟くフラーケンの目は獲物を狩る狩人だった。

 

 

「デコイの準備だ。釣られるかな?」

 

 

 否、その目は狼の目だ。

 

 _______

【side リク】

 

「副長にお聞きしたいことがあります」

 

「古代、よさんか」

 徳川機関長が止めに入るが、古代くんは止まらない。

 隠し事されたら気になるのは分からなくはないけど、時と場を考えたほうが……

 

「艦長のご病気は何なんですか?」

 それでも止まらない古代くんの核心を衝くその問いは、1つの反応によってストップさせられた。

 次元震モニターが一つの波長を感知した。

 

「次元震モニターに反応あり! 次元断層内部で何か動いてます」

 新たに観測された次元震はだんだんと小さくなっていくものだった。まるで波が引いていくのようだ。

 

「森君、レーダーの方はどうか?」

 

「! 索敵範囲ギリギリの宙域で艦影らしきものを確認!」

 それは急に現れた反応だった。

 

 この奇妙すぎる反応はすぐさま解析室に送られ、その結果は即座に報告された。

 

 

『まず、いきなり現れたレーダー反応は恐らく次元境界面から何かが浮上ものと思われるわ。それと例の次元震の事なんだけど、一応ここから離れている反応なんだけど妙なのよ。先に観測した波形に比べると心なしか振幅が弱いのよ。ごめんなさい、これ以上は断定できないわ』

 

 本当に敵が帰ったのかは分からない。この宙域にまだ次元潜航艦が潜んでいる可能性は捨てきれないのだ。

 

「敵さん、あきらめて立ち去ったんじゃないですか?」

 

 長い長い戦闘配置にくたびれたのか、南部が大きく伸びをしながらそう締めようとする。

 

「いや、まだ敵が去ったと断定するのは早い」

 

 それに待ったをかけたのは古代だった。

 

「何か根拠でも?」

 

 新見が食い入る。

 

「根拠は、ありません。あえて言うならば、直観です」

 

「……血は争えないわね」

 何か懐かしい物を見る目となった新見。

「え?」

 

「その点については同感と言ったの。副長、ワープ機関のサブシステムとWunderアレイアンテナの重力振発振を、亜空間トランスデューサーに転用してみてはどうでしょうか?」

 

「新型の亜空間ソナーか」

 

「以前次元断層に迷い込んだ際に取得したデータからパラメーターを設定すれば、次元境界面を越えてピンを打つことが可能です」

 

 

 

 

 ……何やら難しい事を言ってるけど、要点だけつまみ食いして簡単に説明するとこうなる。

 

 まず、この宇宙空間を洋上。次元断層を海中とする。

 旧時代の洋上艦は、海中に潜水艦が潜んでいないかどうかをソナーを使って調べていた。

 

 その場合、自分から音を出してその音が跳ね返ってきた時間差や音の大きさとかを基にして海中の地形や潜水艦の有無を調べていた。

 

 そして、今回それを宇宙空間で、しかも次元断層と言う手の出しようのない海中に潜む敵に向けて行おうとしている。

 次元をごく小規模に揺らす……もしくは極小出力で重力震を発振することで、越えられない次元の壁を飛び越えてしまえる。

 

 その跳ね返りを使って次元潜航艦を探知するのだ。

 

 

 

 

「次元アクティブソナーですか。それならば、断層内に潜んでいる敵艦を索敵出来ますね!」

 

 

 相原さんも納得したような笑みを浮かべる。

 ただ、アクティブソナーだと一つ問題点がある。

 

 それはこっちから音を出すという事。

 

「ですがそれは、本艦の位置を敵に露呈することに繫がります」

 

 古代くんもそれが分かっているようだ。

 

 その通り、さっきも言ったけど「アクティブソナー」と言うのはこちらから音を出して潜水艦を探索するという物。ホントの洋上なら何ら問題はないが、その性質上今回のような敵が本当に立ち去ったのか不確かな宙域で、尚且つこちらが頑張って隠れている状態で使うのはリスキーだ。

 

 

 たとえるなら……

 

 

「おーい!! 僕はここに居るよ~!!!」

 

 

 ……とかくれんぼしている時に大声でアピールしているようなもの。

 

 さっきのレーダー反応と次元震の事もあるから、敵が聞き耳を立てているかもしれない。

 今回は僕も不賛成だ。

 

 

「流石にこれはリスキーかと思います。かくれんぼしている時に大声を上げるようなものです」

「自分は、シーガルによる対潜哨戒を具申します」

 

「……新型の亜空間ソノブイか」

 

 古代君が使おうとしている物に関して、僕もピンときた。

 赤木博士と真田さん謹製の亜空間ソノブイだね。

 

「はい、アレも原理は同じですから。これなら、船の位置を敵にバラすことなく次元潜航艦を探すことが出来ます」

 

 

「理論上はね。でも、こんな濃密な宇宙塵の中でシーガルを飛ばすというのは、自殺行為です!」

 

「宇宙塵は濃い部分と薄い部分があります。もちろん薄い部分を通りますし、それも高速飛行するわけでもないので、『自殺行為ではない』と思いますよ?」

 

 古代君も譲らない。

 お互い正しいと思ったことを通そうとしている。

 

 否、古代君は「間違っていると思ったことを正そうとしている」

 

 

「ではあなたはその危険な任務に誰を志願させるつもりなの?」

 

「自分がやります!」

 

 

「ダメだ! これは確認のために行うだけだ。この場合、新見案の方が適している」

 

 

 真田さん、たまに合理に頼りすぎている時がありますよ? 

 僕は内心そう思いながら着席する。

 

 

『艦橋。こちら佐渡じゃ。艦長の手術は完了した。……成功じゃ』

 

 

 ピリピリしている艦橋内に一時の安堵が流れる。

 

「どうだろうか真田君。艦長の様子を見に、ここから誰か行かせてみてはどうかな?」

 

 

 徳川機関長、何を考えているんですか? 

 おおかた古代君絡みかなと思うけど……

 

 

「こっちは任せろ」

 

 ああ、島君。君もか。

 どうやら古代君を行かせたいようだね。

 

 

 

 ……なら、こっちも準備しようかな。

 

 

 


 

 

 

「ん? 睦月さんから? なになに……」

 

 

 To 榎本勇

 From 睦月リク

 

 件名 【古代君そっち行くかもしれません】

 

 榎本さんお忙しいところスミマセン、睦月です。

 

 さっき古代君が艦橋から出ていきました。上から話が下りてきていると思いますが、今敵の次元潜航艦と戦闘してます。

 

 あくまで予測ですが古代君はシーガルに亜空間ソノブイを積載して対潜哨戒するつもりです。

 上から指示降りてきてないんですが、準備の方をお願いします。

 責任なら僕が何とかします。

 

 

 

 

 ……なるほどなるほど。

 

 

 えーと返信をっと

 

 

 

 

 件名【Re 古代君そっち行くかもしれません】

 

 アイアイサー

 既に準備してます。ピッチ上げますね

 

 

 

 ________

 

 

 

 

「あれ? 睦月さんから?」

 

 航空隊控室で端末を弄っていたアスカに届いたのは艦内ネットメールだった。

 

 

 To 式波・アスカ・ラングレー

 From 睦月リク

 

 件名【お願いしたいことがある】

 

 

 アスカちゃん? 一つ頼みたいことがある。

 今ガミラスの次元潜航艦艇と戦っているけど、思ったより良くない。

 

 そこで古代君がシーガルに乗って無許可で対潜哨戒をするつもりだ。

 

 でも一つ問題があって、今いる原始恒星系は宇宙塵が多い。

 古代君の操縦技術を疑うわけじゃないけどちょっと心配だ。

 

 そこで、アスカちゃんに古代君のサポートを頼みたい。

 でも宇宙塵の中を飛ぶことになる。

 少々危険だから無理にとは言わない。

 

 

 

 

 

 ……「ユーロ空軍、舐めないでくださいね?」っと

 

 

 件名【Re お願いしたいことがある】

 

 ユーロ空軍、舐めないでくださいね? 

 

 

 

 

「これで良しっと……あとは頑張れ、古代君」

 

 お膳立てはした。あとは任せた。

 


 

 

 

 水泡も立たぬ液体呼吸システム内部。

 手術を終え、いまだ麻酔の解けぬままその水槽に横たわる沖田艦長の顔は、穏やかだった。

 

 

 その姿を見つめる古代の目は、決意を持った目だった。

 

 

「おお、来とったのか」

 

 緊急手術を終えて休憩をしていた佐渡先生は、古代のことが気がかりだった。

 

「……艦長を、頼みます」

 

 

 ……無茶はするなよ? 

 

 心配そうな佐渡先生であった。

 

 

 


 

 

 

「索敵に入る。次元アクティブソナースタンバイ」

 

「亜空間トランスデューサースタンバイ」

 

 新見の操作で艦首バルバスバウ部分がスライドして、そこから発振機が無数に飛び出た。

 

 アレイアンテナも索敵用に稼働し始め、MAGIシステムと接続をする。

 

 

 

 

「亜空間ソノブイ……でありますか?」

 甲板部の岩田が怪訝そうに聞き返した。

 

「そうだ。搭載次第発進する」

 

 

「それだったら既に準備が済んでいるんだな」

 遠山がそう返す。

「え?」

 まるで先読みされていたかのような準備の良さ。

 もちろん古代はここまでくる道中で積み込みの指示なんかは出していない。

 

「そいつは睦月一尉の指示だ。まぁ念のため積み込み準備自体はこっちでしてたんだが、一尉から極秘指令貰って確信したから大急ぎで終わらせたんよ」

 

 オレンジつなぎのよく似合う叩き上げ甲板部長榎本がひょっこりと顔を出す。

 

「睦月さんが? 読んでたんですか……」

 

「何でも一歩先を読む。将来デカくなりますねぇ彼は」

 

 嬉しい想定外まだ続く。

 

「しかし、濃密な宇宙塵の中を飛ぶのは些か危険ですぞ?」

 

 

「私がサポートします」

 そう言い放って自信たっぷりに入ってきたのは、アスカだった。

 

「式波二尉?! どうしてここに?」

 

 彼女の登場は榎本にとっても想定外のようだ。だが、このタイミングで来ている当たり、

 

 

「なるほど、睦月一尉が頼み込んだのかな?」

 

 

 と想像できる。

 

 

 

「睦月さんに、危険だからサポートしてねと頼まれたんです。ユーロ空軍ならこんな宙域でも怖気づきませんよ」

 

(やっぱりね……)

 

 深紅のパイロットスーツを着込み、朱色がよく映えるヘルメットを抱えた彼女は、まさしく勇敢な者。

 戦乙女とも呼べるだろう。

 

 

「それでは役者はそろったようなので、行きますか。それから岩田と遠山! お前たちは戦術長と二尉のお手伝いだ!」

 

 

「「はいぃぃ!!」」

 

 

 

『亜空間トランスデューサースタンバイ完了デス。発振出力良好、チャージ完了シマシタ!』

 

「索敵を行う。次元ピンガー打て!」

 

「打てェ!」

 南部の操作で、次元アクティブソナーが虚空に波紋を生み出す。

 音ではなく次元を越えて伝わる波紋、次元振。

 

 一瞬以下の時間で、それは原始恒星系に広がった。

 

 


 

 

「来た来たァ〜!」

 

 狭く薄暗く時折息苦しく気にもなる次元潜航艦のブリッジに、歓喜の声が響く。

 

 次元潜航艦の次元パッシブソナーがWunderの次元アクティブソナーから発せられた次元震を感知した。

 そのソナー音にアクティブソナーの発振音が重なり響く。

 

 

 よく頑張りました

 

 

 あたかもそのソナー音が、ブリッジ要員を労っているようだ。

 

 

「まんまと喰い付きやがったぁ! いまだに俺らがこの宙域にいることも知らずにご苦労さん~」

 上手く敵を騙してご機嫌そうだ。

 今の今まで退屈そうにしていたのと打って変わって、まるで「玩具を与えられた子供」のようにテンション高めだ。

 

「今のピンガ―はトレースしたか?」

 

「バッチリです」

 ブリッジ詰めているソナーマンがヘッドフォン片手に親指を立てる。

「やりますか、やりますよねぇ?」

 

「次元潜望鏡深度まで浮上。魚雷発射管一番二番準備」

 

「っシャー! 次元タンクブロー! 魚雷装填急げェ!」

 ハイニの命令復唱で次元潜航艦は多次元位相バラストタンクを調整して、次元境界面付近へと浮上していく。

 

「……狩りを始めよう」

 

 その目は、紛れもない狼だった。

 

 

 


【side 真田】

 

 

「次元ピンガ―に感あり、次元境界面から浮上する物体有り」

 

 森船務長が注視するレーダーから、反応音が響いた。先程発振した次元アクティブソナーが早速何かを捉えたのか。

 だが……ピンガ―を打ってからほとんど時間がたっていないぞ? 

 

「これは、ピンガ―がトレースされています!」

「マジか……真田さん! 次元震にも感あり! 徐々に次元震の振幅が大きくなってきます! 恐らくこっちの位置はバレてます!」

 次元震モニターを確認した睦月君も危機感を顔に張り付けている。

 敵の罠にはまったか

 

 

「機関始動! 現宙域を離れる!」

「了解!」

 大急ぎでWunderのスラスターに火が灯り、その場を離れる。

 

「ピンガーが仇になったか……」

 

 沖田艦長にはなれない、合理に拘るが故に船を窮地に立たせた。

 私は指揮官にはなれないか……

 

 

 私の視覚の隅に「自身の案が船を窮地に立たせてしまった」ことに落ち込む新美くんがいる。

 私があの時止めていればこのような事にもならなかった。

 

 

 

 

 危機感で満たされた戦闘艦橋に、異常警報が鳴り響く。

 

「副長! 左舷第2船体第3格納庫が開いてます!」

 

 もちろん発進命令など誰も出していない。

 

「シーガル! 乗っているのは誰か?! 発艦命令は出ていない!」

 

 相原がシーガルに発進を止めるように無線をつかむが、警報音は鳴り響く。

 まさかとは思うが、さっき艦橋から出ていった古代が……? 

 

「相原さん待って! 真田さん、コレ古代くんです」

「何……? 睦月君、まさかとは思うが、君が裏で手を回したのか?」

 

「……古代君がシーガルに乗ると思ったので、あらかじめ現場の方に手をまわしてました、すみません。でも今は彼を行かせてください」

 

 

 ……そうか、彼もまた古代のように動けるのか。

 ……ならば今私が出来ることは一つだ。

 

 

「相原、シーガルに繋げ」

 

「了解です!」

 

 

「シーガル聞こえるか? 艦長代理の真田だ。次元ピンガ―がトレースされた。君たちの案を却下してその後に我々の失敗のカバーを頼むのは間違っていると自覚している。だが私なりに間違いを正させてほしい。これよりシーガルは積載した亜空間ソノブイを投下、対潜哨戒任務を開始せよ。なお、緊急事態に付き先程の無断発進は私の権限で追認とする」

 

 

『副長……了解。これより、対潜哨戒を開始します!』

 

「副長! よろしいのですか?!」

 新見君。気持ちは分かるが、敵艦が本艦の位置を把握しているという事は……

 

「新見さん! 気に入らないのは分かりますが現実見ましょう」

 

 君はズバッと言うなぁ。だがそれが最適解だ。少々言い過ぎかもしれないが、新見君も渋々納得してくれたようだ。

 シーガルがソノブイを撒くまで何とかして回避を……

 

「本艦前方に高速で接近する機影を感知! これは、魚雷です! 数2!」

「島! 船体傾斜回避行動!」

 

「了解!」

 

 指示通り船体を大きく傾斜して魚雷を回避。1本目は何とかなった。

 

「2本目来ます!」

 今度は左舷に大きく傾けて回避、だが魚雷は命中せずに至近距離で爆発、装甲に風穴をあけた。

 

「左舷第2船体第27区画に被弾! 空気漏出!」

 

「ダメコン急げ! ラジオデッキ閉鎖!」

 __

 

 今この時真田は知らなかったが、この時、この爆発が艦内にも影響を及ぼして、6人の命が失われた。

 

 


 

 

「古代一尉はこのような宙域での操縦経験は?」

 

「……ない」

 

「なるほど……さすがにユーロの訓練でこんな宙域での訓練は行いませんでしたが、シミュレータで散々こんな宙域は飛びましたよ?」

 

 操縦桿を握るアスカと古代。アスカは自信のある声だ。

 努力する天才は自己鍛錬を怠らない。

 

 それはアスカの周りにいる人が良く知っている。

 だからリクは自己鍛錬に邁進するアスカにこの任務を頼み込んだのだ。

 

 自分の努力が認められるのは誰もが嬉しいこと。

 アスカはそれが人よりも強いのだ。

 

 

「おい! Wunderが攻撃を受けとるぞ」

 

 榎本の双眼鏡に映るのは、船体から黒煙を噴き出しているWunderの姿だった。

 

「グズグズしていられない、投下開始する! 岩田! 遠山!」

 

『『はい~! (なんだなぁ)』』

 

 シーガル後部で船外服に身を包んだ。岩田と遠山がソノブイの投下を開始する。

 

 

 投下されたソノブイは先端をバルーン状に膨らませて宇宙空間をまるで糸の切れた風船のように漂っていく。

 

「ソノブイ投下完了! 観測開始します!」

 

 


 

 

 一方、穏やかな深海とも言える次元断層内から雷撃を行った次元潜航艦、そのブリッジから次元潜望鏡を睨むフラーケンの視覚には、黒煙を噴き出しているWunderの姿があった。

 

 原始恒星系ならではの微惑星や小惑星の群れの向こうを傷を負いながら飛ぶ怪鳥をその目にとらえ、更なる指示を飛ばす。

 

「しぶとい獲物だ。3番4番、発射」

 

「3番4番発射ァ!」

 

 魚雷発射管から放たれた2本の魚雷は、微細な泡を噴射して次元断層を境界面に向けて突き進む。

 潜望鏡に映る境界面から浮上した2本の魚雷は寸分狂いなく獲物に向かって突き進む。

 

 

 ____

 

 

 

 シーガルの後部、岩田と遠山が凝視する亜空間ソノブイのコンソールに、1つの反応が自己アピールをした。

 

「早速感あり、だな」

 

「魚雷2!」

 

「データを送れ!」

 

「了解!」

 

 

 ____

 

 

『こちらシーガル! こちらから魚雷出現予測座標を送る。これがあれば、敵艦の攻撃を迎撃できる』

 

「よしよし、良い感じ良い感じ、真田さん」

「左舷舷側短魚雷発射管開け、対空パルスレーザー発射準備。いつでも迎撃できるようにするんだ。睦月君、タイミングは任せる」

 

「了解!」

 リクがひたすら次元震モニターを睨み、タイミングを計る。シーガルから送られた出現予測座標付近にソノブイを移動させて、次元振を計測する。

 

 振幅が大きくなる。次元境界面に近付いているのがよく分かる。

 悟られないようにギリギリまで粘る。

 

 

「今ですっ!」

 

「舷側短魚雷撃て!」

「撃てぇ!!」

 

 南部がコンソールの発射スイッチを押し、舷側から9発分の短魚雷が発射された。

「半分の装填量で発射」することで無駄弾を避けて効果的に迎撃する、放たれた9発の短魚雷は2発の魚雷のうち1発を撃滅した。

 

 仕留め損ねた魚雷はパルスレーザー連射で叩き落とす。

 

 

 

「敵魚雷排除確認!」

 

 見えない敵からの奇襲を防ぎきったWunderの面々に安堵の空気が流れるが、

 

「まだだ。次を警戒するんだ」

 

 艦長代理の喝ですぐに引き締まった。

 

 

 ━━━━━

 

 

「何だよコレ……次元境界面から突出する物体を感知!」

 岩田のコンソールに映ったのは魚雷のような「速く動くもの」ではなく、1本の棒のようなものだ。

 

「何処にある?」

「近いです! 回り込んで10時の方向!」

 

「分かった! 二尉!」

「突っ込みます!」

 10時の方向に向かうが眼前には小惑星の群れ。艦載機の中では大きめのシーガルで突っ込むのは、新美が言った通りの自殺行為。

 

 だが、「式波・アスカ・ラングレーというジョーカー」がいることでそれを可能にしてしまった。

 

 小惑星の群れを抜けた先は開けていた。

 

 

「確認出来ますか?」

 双眼鏡を覗き込む榎本に古代が聞く。

 

 

「んん〜? いたいた、アレだね」

 喜を含む声色で示した発見報告を聞き、座標情報をWunderに送る。

 

 

 

 

 

 

『こちらシーガル。敵のプロープらしき物体を確認! これを叩けば敵の攻撃は止むはずだ!』

 

 古代の報告を受けた艦橋は砲撃準備を進める。

 目視では見えない宙域への遠距離狙撃。左舷に鎮座する第3主砲が目標に向けて頭を回し、小刻みに砲塔を動かす。

 

「座標入力完了、測敵よし!」

 

「主砲発射!」

 

「撃てぇ!」

 第3主砲から青白い光の束が放たれ、壁抜きをしながら目標へと突き進んだ。

 

 


 

 

 時は少し遡り、Wunder2本の魚雷を迎撃された頃である。

 

 

 

「射角を読まれた」

「マジっすか……見えてないはずですがねぇ」

 想定外に敵の読みが当たり、少し驚くハイニ。

 

「発見されてもこちらは異次元の中。手出しはできんよ」

 敵が次元断層内部に入り込んだり、断層に影響を与えるような武装でもない限り手は出せない。

 

 

「……これは?」

 潜望鏡に映ったのは、バルーン状の何かだった。

 そしてパッシブソナー音に重なるようになる反応音。

 

「なるほど、こいつか」

 全てを察した。「これ」を撒いたから魚雷の出現位置を読んで迎撃できたのだろう。

 

「ハイニ、どうやらこっちが何者なのかバレているらしい。……ソノブイだ」

 

「3時方向から高エネルギー反応!」

 センサー系統を監視していたブリッジ要員からの報告を受けて、報告に合った方向を向いてみた。

 

 

 その瞬間、映像が途切れた。

 かろうじて最後に見えたのは、資料映像でよく見た青白いビーム光だった。

 

「! ……やられた」

 

 

 


【side リク】

 

 

 

「アプローチに入る。ビフォーランディングチェック」

 

 対潜哨戒任務を終えたシーガルは、左舷第2船体第3格納庫に着艦した。

 

 

「お疲れ、上手いこといったじゃん」

「睦月さんの仕込みのおかげです」

「……バレた?」

 

 軽く舌を出しながら笑う。あらかじめ現場の方に手を回しておいてよかったなぁ。

 さて、真田さんに怒られに行こ……

 

「帰ってきたとこで悪いんだけど、真田さんとこ行こっか」

「……ですね。いくら追認されていると言っても、独断行動に変わりないですから」

 

 

 

 

 

 

「……シーガル無断発進は追認してお咎めなしという事にしたが、勝手に動いて混乱を招いたことは……すまない、立場上無視はできない。ひとまず私の方では微罪という事にしておく」

 

 あ~あ……眉間にしわが寄ってる。勝手に指示出しなんかしてゴメンナサイ。

 

「懲罰として、艦長代理権限で古代、睦月両名には、艦内の清掃活動を命じる。それで、睦月君が巻き込んだ式波二尉と榎本甲板長の分も清算という事にする」

 

 清掃作業、……この船の全長をよく理解したうえで命じているのですか? 

 これじゃあ小学生の罰当番じゃん。

 

 内心笑いを堪えながらツッコむ。

 

 

「罰は受けます。もっと重大なことしちゃった感はありますが……」

「本来なら懲罰房だが、敵艦からの攻撃を迎撃する際の功績もあり、プローブを破壊してその後の星系脱出のワープまでの時間稼ぎも出来た。その分を差し引いたのが、艦内掃除の罰だ」

 

 やっぱり懲罰房行き並のことしてたんだ。

 でも結果出せてよかったぁ。

 

「分かりました。罰掃除、こなします。あ、それと、沖田艦長の容体は?」

「古代が帰ってきたときに無事に目を覚ました。その掃除罰当番カードには医務室もある。掃除ついでに顔を出しておくんだ。艦長には事情を一通り説明しておいた」

 

 真田さんに手渡された掃除罰当番カードには何か所かの場所の名前と、印鑑を押す欄がある。

 その欄の中に医務室があった。

 

 

 その後、艦内掃除に従事し始めた僕と古代くんが最初に行ったのは、医務室でした。




帰ってきました。

試験が終わったのはいいのですが、次はアンドロイドアプリの開発作業をしないといけないのでまだまだ忙しいようです。

とりあえず試験期間中に書いておいた分はまだまだありますのでそれは順次投稿していきます

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