宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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遂にドメル艦隊との戦闘です
最近気づいたことなんですが、「沖田戦法」っていうのは決して突撃戦法などではないんですね。

どうやら、敵に反撃の時間を与えない戦法のようです。
バラン星の戦いとか分かりやすいかもしれませんね

良いこと知りました。

では、ドメル艦隊戦です。


奇跡の価値は

「なぁるほどぉ、ドメルがあの不死鳥に対して攻勢に出るかぁ……頃合いだなァ」

 

「と、いいますと?」

 

「貴様は気にしなくてもよいゲールゥ……吾輩の問題だァ」

 

「……分かりました。まもなくこちらはヴンダーに対しての大規模な包囲網を展開します」

 

「良い知らせを待っておるぞ?」

 

 ______

 

 

「全艦隊発進準備完了しました」

 ハイデルンの準備完了を受け、ドメルは閉じていた眼を見開き、一つの命令を数多の艦に伝えた。

「よし、全艦隊発進。バラン星大気圏突破後、ゲシュタムの門を用いた超長距離ワープを行う。目標宙域付近に近づき次第、各艦隊は所定の宙域にジャンプしろ」

 

 バラン鎮守府から無数の艦隊が発進していく。

 バラン宙域で碇泊していた部隊も一斉に推進部に火を灯し、旗艦の後に続いて一斉に門を潜り戦場に身を投じていく。

 

「本艦も突入します」

「よし、斥候艦に一報を入れろ。『第六空間機甲師団は全艦発進した。Wunderを刺激しろ。心配するな。奴は必ずジャンプする』」

 

「了解!」

 

 _______

 

 

「ゲシュタムの門を確認、バラン到着時刻タム12の30」

「総統、本艦はまもなくゲシュタムの門を通過、これを抜けますとバランに到着します」

 

 ゼルグート級一等航宙戦艦

 ゼーリックが自らの権威を示すために建造させた「大鑑巨砲主義」を体現したガミラス史上最大級の超弩級戦艦だ。

 圧倒的厚さの正面装甲と、490ミリというガミラス史上最大級の口径の陽電子ビーム砲塔を搭載した本艦は、一部の将校ように建造された。

 ネームシップたる一番艦は、ヘルム・ゼーリックの乗艦「ゼルグート二世」

 二番館は、現在デスラー総統が乗艦している自らの座乗艦「デウスーラ一世」

 そして三番艦は、宇宙の狼たるエルク・ドメルが扱う「ドメラーズ三世」である。

 

 厳密にはドメラーズ三世は、ゼルグートの「強力な指揮能力」を気に入ったドメルが、ゼルグートを建造した造船局に依頼して兵装周りに大規模な改装を依頼していたため、「改ゼルグート級」に値する。だが、「もはや別物と言えるくらいの」大幅な改造は施していないので、「ゼルグート級」とも見ることが出来る。

 

 今のところ、ガミラスで3隻しか存在していない最上級艦である。

 

 

 そんな最上級艦の艦橋は広く、豪華で、居住区は上級士官用に調度品も一級品。まさしく総統を乗せるにもバッチリな艦である。

 

「メインエンジンに異常発生! 内圧が上昇しています、このままではオーバーブーストします!」

「安定させろ! 急げ!」

 

 そんな豪華な船の艦橋に鳴り響いたのは警報音。メインエンジンの制御に異常が生じ、出力の上昇が止まらなくなっている。

 待つのは出力限界の突破……臨界突破による爆発。

 

 

 その瞬間、光が満ちた。

 

 


 

 

 

「総統が不在とはァ、どういうことであるかァ!!」

 

「総統の気まぐれだ、いつものことだよ」

 

「元帥閣下はご不満がおありのようですね」

「だがァ……なぜ総統の不在を、君だけが知っているのだァ、ディッツ君?」

 

「艦艇の指揮権は俺にある。デウスーラは親衛隊の船だが艦隊運用の観点から、総統がご乗艦されることは把握していた」

 

 閣議というものは難しい言い方だが、要約すれば、閣僚同士で会議をするもの。主に最近の国内総生産や財政に関してなど。ガミラスなら、最近の各管区での動向や植民惑星からの輸出品状況などなど。それには、情報の伝達を円滑にすることを目的にして、「全員が集まっている状態で行うこと」が最も望ましい。

 

 

 

「それよりも最近の親衛隊はやりすぎだ。オルタリアの件、鎮圧と称して星を焼いたではないか!」

 

「鎮圧ではありません。殲滅です」

 大したことしていないという顔をしてギムレーが応える。

 惑星オルタリアはその後生き残りが集まり、損壊の少ない都市に集まったそうだ。

 そして、オルタリアの総督であるドロッペ総督が死亡したことで、「ガミラスの支配から抜け出せた」ということになっている。

 ギムレーは「殲滅した」たは言った。「大ガミラスの版図に存在してはなりません」とも言っていた。

 惑星間弾道弾を大量に配備して地表面全体をグズグズに焼き尽くすことくらいなら、親衛隊に与えられた権限をフルに使えば可能だ。

 それをやらなかったのは、すなわち

 

 

 

「それする価値もないからあんたもういらない」

 ……そういう意味でもある。

 

 

 

「それがよくないんだ! ヴンダー出現以来、各惑星間区での暴動が後を絶たない。鎮圧はしなければならないが、これではかえって逆効果ではないか?!」

 

 

「それは違います。帝国繁栄のために必要なのは圧倒的な力と恐怖です。恐怖なくしては統治はあり得ません」

 

「諸君! 悠長に閣議などしている場合じゃないぞ!! 総統のデウスーラが爆破されたんだ! デスラー総統が暗殺されたんだ!!!」

 閣議に割り込んだのは最高指導者の訃報。

 

 その訃報は閣僚全員に衝撃を伝え、総統の訃報は閣僚間での秘密という事となった。

 


 

「ワープ先、新路上に障害物認められず」

「中性子星の影響は?」

 

「航路が歪められるのは確かですが、補正計算を加えれば何とかなるはずです」

「全艦ワープ準備!」

 ビーメラ恒星系への針路をとるWunder。ワープ先はビーメラ恒星系付近、ワープ航路上に中性子星がすぐ近くにあるので航路を歪められてしまう。本来ならそこを回避して進むべきだが、食糧問題の回避を何よりも優先したいために最短でビーメラに向かいたい彼らはそのままの航路で向かうことにした。

 

「レーダーに感あり。敵艦2、後方から近づく。敵速、7sノット」

「またいつもの威力偵察なんじゃないんですか?」

 もう慣れた、そういう感じになってしまった南部の口調は少々穏やかだった。

 またいつも通り圧力かけてきていいとこまで近づいてきて反転していく。そのお決まりのパターンなのだろう。

 

 しかし、戦場に絶対はない。

 

 ガミラス艦から放たれた陽電子ビームはWunderの左舷装甲に突き刺さった。

「左舷艦尾付近にに被弾!」

 

「応戦しましょう!」

 古代がそう進言するが、

「補給もままならない今、無駄な戦闘は避けるべきだ。補正計算を行い、直ちにワープ!」

 

 真田の命令でWunderは急加速でそのままワームホールに飛び込んだ。

 

 

 急なワープに対応しきれなかった乗員の一部が転倒したりふら付いたりしたが、無事にワープは終了した。

 しかし予想ワープ地点からズレてしまい、視界には怪しく光を放つ中性子星が輝いている。

 

「状況報告!」

「10時の方向に中性子星!」

 太田のコンソール画面には中性子星が大きく映し出されている。

 その密度が故に強大な重力を持つこととなったその星は、光をも超えて旅をする船をも捕まえる。

 

「やはり影響を受けたか……」

 

「レーダーに感あり! 艦首前方に敵艦隊! 後方からも近づく! 方位……全方位! 包囲されます!」

 

 全長2500mを取り囲む大量の艦艇は艦の角度を傾けず、Wunderに対して甲板面が平行になるように姿勢制御を行いながら取り囲み、獲物の周囲を周回する。

 

 

「航空隊発艦、敵艦隊に切り込み混乱させろ」

 

「待て」

 少し重く響く声が艦橋に伝わった。

 航海艦橋に現れたのは沖田艦長だ。

 

「隼を展開する時間もない。波動防壁を最大展開、敵正面に突入せよ」

「しかし! 前方には旗艦と思われる超弩級戦艦が!」

 

 中空スクリーンに映る敵艦隊の望遠映像には、白い船体の巨大な戦艦が構えていた。

 

『推定全長1200m、敵大型戦艦ヘノルートヲ確認シマシタ。デスガ、ソコニタドリ着クマデニ波動防壁ガ臨界ヲ迎エル可能性ガアリマス』

 

 

「死中に活を見出さねば、この包囲を突破することは出来ん! 両舷全速、敵中枢を狙え!!」

 

 

 エンジンが雄叫びをあげ、力を暴力的な光に還元し、この絶望的状況に1隻の船が飛び込んでいく。

 

 


 

 

「テロン艦、ゲシュタムアウトを確認!」

 時は僅かに遡り数分前、ドメルとゲールの乗り込むドメラーズ3世率いる艦隊の遥か前方には、獲物がいた。

 

「ここに出てきたか! 飛んで火に入る夏の虫だァ!」

「各隊に通達、直ちに集結せよ。……全艦砲雷撃戦用意! 全光学兵装に火を入れろ。魚雷発射管に全弾装填。各クリピテラ分隊、分隊旗艦ケルカピア級の指揮に従い魚雷を用いた飽和攻撃を行え。まずはヴンダーのゲシュタムフィールドを削り取る 」

 

 

 ドメルの立案した作戦『神殺し』……その全容はこうだ。

 まず、ヴンダーに対しての威力偵察を何度も行い敵を疲弊させる。

 そして、敵の進路上にある中性子星カレル163を利用するために、「ビーメラに進もうとするヴンダーをジャンプさせる」

 その場合、カレル163の重力勾配に捕まることでワープ先にズレが生じる。

 カレル163の重力勾配がどれくらいのものかは既に観測されているため、そのデータを元にして予測出現地点を5箇所に絞込みそこに艦隊を配置する。

 

 ヴンダーがゲシュタムアウトしたら、味方間での誤射が起こらない配置で、駆逐艦隊の魚雷飽和攻撃とデストリアとケルカピアの陽電子ビームと魚雷攻撃を用いてヴンダーのゲシュタムフィールドを削り取る。

 

 これまでの戦闘で、ヴンダーは「自分たちが戦闘用艦艇への実装が出来なかったゲシュタムフィールド」を実装していることが明らかとなっている。

 

 向こうのフィールドがどのような原理かは不明だが、こちらで研究していたものを基準として考えると、「耐久限界と稼働限界」が存在する。

 

 

 その限界まで攻撃を命中させてフィールドを消失させ、無防備にする。あとは残存艦隊でチェックメイト。

 

 

 

 

 第1段階は成功だ。後は第2段階。

 ドメルははやる気持ちを抑え、冷静に指示を出す。

 

「作戦第2段階に移行する」

 

 

 


 

 

 

 地球人類は、これほどの大艦隊を未だかつて見た事があっただろうか。いや、ないだろう。

 

 天の川銀河を背にしたWunder、遥かなる銀河間空間を背にしたガミラス艦隊。

 

 そしてWunderを取り囲む群れ。

 その戦場を彩るのは陽電子ビーム。

 流星群の如く放たれる魚雷。

 

 その死地同然の戦闘宙域に活路を見出そうとするWunderは、波動防壁という傘を広げて死の雨の中に飛び込んだ。

 

 

 

「艦艇部防壁に被弾!」

「艦艇部VLS一斉射! 撃てぇ!」

 波動防壁に隙間を空けて、無数の艦対艦ミサイルが放たれ、敵を確実に葬っていく。

 

「ミサイルの弾数は気にするな! 生き残ることだけを考えろ!」

 

 主砲も忙しく回頭して、ガミラス艦を次々に仕留める。

 過貫通、両断、抉り飛ばす。

 

 

 生き残る、それが勝利条件。

 

 

 皆がそれを掲げ、死力を尽くす。

 

 

 ━━━━━

 

 

「さすがにこの数は……いくら重武装艦にしたとはいえこの数には対処しきれないぞ!」

 

「対処……? そうだ! マリさんコレ使いましょう!」

 ハルナが指指したのは先程まで作業していたコンソール画面。

 

 そこに映る「コード777」だった。

 

「まだ未完成! 制御系が出来上がってないんにゃよ?!」

「制御系が出来てないなら手動制御で何とかします!」

「ホントは使いたくなかったけど、背に腹は代えられない……やろう」

 

 

「それなら……お2人さん手伝って欲しいにゃ!」

「「了解!」」

 

「艦橋! こちら解析室! コード777の使用許可を!」

 

『真希波くん、777はすぐに稼働可能か?』

「まだ未完成ですが手動制御で何とかします!」

 

『……よし、直ちに発動する』

「認証キーセット!」

 Wunderの艦内システムは、兵装、操舵、機関などのシステムの管理者権限の所在を分かりやすくするために、「認証キー」という物が使われている。

 

 自身が所有する権限が記録されているそのキーをコンソールに差し込むことで、その権限の範囲内でのコンソール操作が可能だ。

 例えば航海長の持つキーは、操舵関係のシステムの使用権限一式が入っている。

 

 

 沖田艦長の持つキーと、システム開発者である2人が持っているマスターキー1本には、全システムの操作権限と、システム改修権限が入っている。

 

 そのキーを同時に差し込んで回す。

 

 ハルナから手渡されたマスターキーをマリがコンソールに差し込み、航海艦橋の沖田艦長も最高権限のキーを差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『モードチェンジ、コード777!』」

 

 

 音声認証と共にキーが回され、鳥は竜となった。

 

 


 

 

 竜というのは神話の生き物。

 空を自由に駆け、口から炎を吐く。

 

 地方ごとに異なるが、雷を呼ぶ竜もいる。

 神龍とも言われ、神と同じく信仰の対象ともなる。

 

 

 今自分達が駆るのは、現実に顕現した神竜だ。

 

 

 ━━━━━

 

 

「第1から第4主砲各個目標を細く次第順次発射!」

「両舷甲板VLSにカミナリサマ装填、目標補足MAGIとの連動よし!」

 

「撃てぇ!」

 

 甲板上のVLSからカミナリサマが放たれる。

 数本迎撃されたが、その時の放電でダメージを負ったようだ。

 そこに無事だったカミナリサマが飛び込みユニットをばら蒔いて放電、艦艇数隻が鉄の棺桶となった。

 

「現在20Sknot! こんなの初めてだ!」

 コード777はエンジンにも手を加えるシステム、エンジン出力も跳ね上がり、操舵も敏感となった。

 機関長は荒ぶる機関の手網をしっかりと握り、機関調整を一部の隙もなく熟していく。

 

「薮! 右舷はどうか?!」

『右舷出力80%! 内圧安定してます!』

「山崎!」

『こちら左舷同じく80! 衝突炉フィルタ問題なし!』

 

 

 

 

「ショックカノンエネルギー効率、現在75%!」

「伝達アルゴリズムか! 係数弄る!」

 

「収束率は?!」

「砲身の粒子加速に手加える! ちょっと待ってて!」

 

 制御系が未完成な部分もあり本来自動で調整される部分を手動で調整しないといけないため、3人は解析室でコンソールに張り付いている。

 

 

「波動防壁は?!」

「エンジン出力をカチ上げたから強度は上がった、この様子だと……あと3分!」

 

「上等!」

 

 

 

 

 

「重力子生成、量子跳躍開始!」

『座標固定! 発射マデアト5秒!』

 新見の操作でWunderのアンノウンドライブが重力子を湯水の如く生み出し、アナライザーが座標を固定する。

 

 そして、ありえない兵器を放つ。

 

「ホーミング撃てぇ!」

 

 古代の号令でWunderの翼が輝き、陽電子ビームが16条放たれた。

 

 陽電子は、磁場、重力の影響を受けて直進しない。だがなぜショックカノンは重力下でもまっすぐ進んでいたのか。

 

 それは砲身内部で直進性を付与していたからで、この工程を挟むことで重力下でも直進性が担保される。

 

 そしてこの兵器は、あえて重力子を射線の近くに配置して重力勾配を作ることで、「直進性を与えてない陽電子ビームを曲げられる兵器」である。

 

 重力に従順な陽電子の束は軌道を変え、2時と10時の方向のガミラス艦を貫いた。

 

 

「前方敵艦隊の4割を撃滅!」

「機関最大! 敵旗艦を衝け!」

 業火をスラスターから吐き出し、雨を防ぎながら突き進む。

 

 


 

 

「……これ程とは」

 

『戦場で起こることは全て予測できる』……これはありえない。把握してない秘密兵器、極秘戦術、隠し球が出ることはドメルも想定していた。

 

 だが、ヴンダーの本気の火力と今まで見せなかった曲射陽電子ビームには、名将ドメルも驚かざるを得なかった。

 

「クライツェ艦隊、ゲシュタムアウトします!」

「各艦に通達。ヴンダーのゲシュタムフィールドは堅牢だが、1箇所に集中的に攻撃を加えれば破ることは可能だ。落ち着いて陽電子ビームで1箇所を繰り返し撃て。主砲塔が配置されている甲板付近を重点的に狙うんだ」

 

「ドメル司令、本当に仕留めることが出来るのですか?」

 ゲールが少々ニヤケながら聞いてきた。

「想定外」が起こって少し険しい顔になっているのを面白がっているようだ。

 

「戦場に絶対はない。敵の指した一手には、それを覆せる一手で対応するのみだ」

 

 

「各艦配置に着きました!」

「攻撃を開始しろ。押し込むぞ」

 

 

 ━━━━━

 

 

「艦首前方から重力場の歪みを検知! 数およそ60! なおも増大中!」

「冗談じゃないぞ!」

 南部が頭を抱える。これほどの数を相手にして無事で済むと思えない。

 

「波動防壁間も無く臨界に達します! 防壁消失まで1分!」

 

「真田さん、この場でワープは出来ないんですか?!」

「座標計算もなしにワープするのは自殺行為だ!」

 島の思いつきを真田が即座に否定する。

 ワープするには座標の指定と、障害物や重力の影響などを正確に観測しないといけない。

 

 それを無しにしてワープすると、どこに出るかは分からない。分からないから、この時空間上でワープアウトできるのかも怪しい。

 

 

「波動防壁を両舷側に集中展開、火力を前方に集中させろ!」

「どういうことですか?!」

「敵旗艦にダメージを与え、艦隊指揮能力を奪う。敵艦隊の混乱に乗じて全速力で振り切るぞ。目標、前方の超弩級戦艦!」

 

「「了解!」」

 

 残り僅かな防壁を左右に展開し、親玉を貫く。

 それが死中に活を見出すことに繋がるのだろうか

 

 

 

 

 ━━━━━

 

「前衛艦隊応戦中! しかし目標さらに増速!」

「ドメル司令……いくら改ゼルグートでも危険すぎます退避を!」

 

 

「ヴンダー……侮り難し、全砲門開け! ヴンダーを仕留める!」

 改ゼルグートの主砲たる420mm3連装陽電子カノン砲に赤い光が溢れ始め、真赤の矢が放たれた。

 

 

 

 

 

 

「第一砲塔沈黙!」

「アレイアンテナユニット損壊! センシング能力低下!」

 前方の超弩級戦艦から放たれた陽電子カノンが突き刺さり、右舷側に鎮座する第一砲塔が爆発煙を上げて動きを止めた。

 アレイアンテナにも掠めてしまい、探知能力が低下した。

 

「これは……! 敵艦の砲撃パターンが変化しています! 一点集中で波動防壁を削ってます!」

「防壁の損耗率は?!」

 

「777の効果もあり耐久限界が上がっていまので……残り17%!」

 波動防壁残りわずか、それに長時間展開による臨界間近。

 残された時間は少ない。

 

「側方にかまうな、波動エンジン出力最大、無事な主砲にエネルギーを回せ! 推力全開!」

 生き残っている主砲にエネルギーを貪り食わせ、お返しとばかりに消耗の少ない砲塔を前方に指向させる。

 

「狙うは旗艦ただ一隻」

 光が満ちる。

 

 

「このままぶつける!」

「了解っ!!!」

 その超巨大艦は撃沈するには少々時間がかかる。だが混乱させるくらいなら大して時間はかからない。

 ならば直接ぶつけて姿勢を崩して逃げ切る。

 一般道なら警察沙汰だがこれは戦闘、相手の意表を突く。

 

「撃ち方始めぇ!」

 総本数9本にもなるショックカノンの束が改ゼルグート級に殺到する。

 777による高出力化で、通常の水色から「何物をも貫き通す真っ白な矢」となった光はそのまま突き進む。

 

 

 だが、その一撃を改ゼルグートは跳弾させた。

 装甲は赤黒く焦げて大やけどを負っているが、目立つようなものではなかった。

 

 

「ショックカノン防ぐのかよ?!」

 南部が驚愕を滲ませる。

 今まで数多のガミラス艦を一撃で貫いてきたショックカノンが効かなかったのだ。

 

「狼狽えるな! 下げ舵25、敵艦の艦首に潜り込め! 儂の合図で上げ舵75と斥力を最大でかけろ! 急速上昇をかける!」

「斥力子緊急生成開始! 跳躍準備に入ります!」

 新見がコンソールを叩き、アンノウンドライブにありったけのエネルギーを補助エンジンから流し込む。

 速度を落とすことなくWunderは改ゼルグートの船体下部に滑り込み、第2船体の艦首が完全に潜り込んだのを確認した沖田艦長は指示を出す。

 

 

「いまだ! 上げ舵75! 艦底部斥力最大!」

「食らえぇぇぇ!!!」

 沖田艦長の出した指示に答えた島は、怒号とともにWunderの頭を勢い良く持ち上げた。

 

 

 互いに艦首が衝突し合い盛大な火花が散る。姿勢を大きく変えたことで翼がガミラス艦艇にあたり、衝突した艦艇が爆炎を上げる。

 

 

 避ける隙も無い「船を用いた肉弾戦」に持ち込まれた改ゼルグートはなすすべもなく艦首を持ち上げられていく。

 

 

 


 

 

 

「艦を立て直せ!」

「ダメです! ものすごい推力です!!」

 ヴンダーの莫大な出力と強大な斥力制御に押し負ける改ゼルグートはそのまま艦首が持ち上げられていく。

 

 

「艦首回頭! いけるか?!」

「なんとか行けます」

 ドメルは、艦首を何とかずらしてこの状況から脱出することにした。

「ただちに右舷艦首全力回頭! 両舷魚雷発射管に魚雷装填、目標、テロン艦両舷ゲシュタムフィールド!」

「発射!!」

 舷側の魚雷発射管が開き魚雷が放たれ、最後の決め手と言わんばかりに波動防壁に魚雷が突き刺さる。

 

 その瞬間、防壁が崩壊した。

 

「こちら光学観測班! テロン艦のゲシュタムフィールドの消滅を確認!」

 

 

 ____

 

 

「両舷防壁に魚雷多数着弾! 防壁消失!」

 

「かまうな! 艦を回せ、ロール角左舷180度重力制御アシスト全開! 敵艦と体勢を入れ替える!!」

 

「了っ解!!」

「アシスト全開! 主翼を斥力で押します!」

 

 島が思い切り操縦桿を左に倒し、新見の重力制御も併せて錐もみ回転をかける。

 

 艦首を逃さず捉えそのままロールして、

 

 

 その大翼で思い切り船を殴り飛ばした。

 

 

「艦尾主砲撃てぇ!」

 艦尾主砲が火を噴き、改ゼルグートの後部砲塔を潰す。

 

「船体装甲は?!」

「損壊なし! 航行に支障なし!」

 真田が船のステータスを確認する。

 擦過傷はかなり大きいが、装甲の裂傷などは一つもない。

 

 

「機関全開! このまま振り切る!」

 

 

 機関が悲鳴を上げながらすさまじい推力を放つ。

 敵の大艦隊が遠くになっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、敵将は抜け目のない者だった。

 

「重力場の乱れを検知! 数120! なおも増加中!」

 レーダーの反応音が絶体絶命の危機を喚く。

 

 前方からワームホールを通って出現するガミラス艦、その数100以上。

 

 

 

「冗談じゃないぞ!」

 解析室のモニターで確認したリクはそう怒鳴って画面に拳を叩きつけた。

 

 

 

 


 

『戦闘配置!』

『ヒャッハー! 獲物だぜおやっさん!』

「はしゃぐなバーガー!」

 

「バーガー艦隊、ゲットー艦隊、配置につきます!」

 やや予定から遅れたが、これで全艦隊が集結した。

 

「これでチェックメイトだ。諸君、神殺しを完遂しよう」

 

 

 その瞬間、残存艦隊によるヴンダーへの集中砲火が始まった。

 

 

 _____

 

 

「第2副砲に直撃!」

「第14から第20区画の隔壁を閉鎖! ダメージコントロール急げ!」

「艦首魚雷発射管並行面に散開斉射!」

「舷側短魚雷発射管斉射!」

「第3外部環境カメラ損壊!」

 

「聞こえるか?! 生きてる主砲は撃ちまくれ!」

 

 毒牙の蛇の群れ、その身で受け続ける攻撃の雨、破壊される船体、やむことのない爆発音、震動と警報音。

 外部観測用のカメラも壊され、全周スクリーンの一部の映像が一瞬砂嵐に変わる

 即座に画像補正が新たに掛けられ死角が生まれるのは防がれたが、この猛攻は止むところを知らないかのようだ。

 

「解析室付近に直撃弾!」

 解析室にはリクとハルナとマリがいる。真田は青ざめた。もし解析室の内壁をも抉っていたら……

 

 

「睦月くん暁くんマリくん生きてるか?!」

 

 

 


【side リク】

 

 

 

『睦月君! 暁君! 生きてるか?!』

 

「ギリギリ逸れました! 僕らは無事です!」

 着弾地点は解析室のすぐ隣。もし部屋一つ分逸れていたら、今頃僕らは陽電子の対消滅で遺体も残さず消えていたことだろう。

 

 すぐ近くにいる死神に3人は本気で死の恐怖を覚えた。

 

 着弾した時すさまじい爆発音が聞こえ、それを追って、空気が勢いよく抜けていく音が聞こえていた。

 すぐさま艦橋のダメコンで隔壁が封鎖されたけど、すぐ近くを狙われたということが脳裏に焼き付いた。

 

 そばでハルナが震えている。

 

 

 

 ハルナだけでも……逃がす

 

 

 

「ハルナ! お前だけでも艦の中心部に行くんだ!」

 

 

「……逃げない!!!」

 ハルナはそれに否を唱え、コンソールに水滴を生み出しながら、一心不乱に手動制御を続けていた。

 

 

 

「……どんなに怖くても! どんなに残酷な未来でも!! 私は逃げない!!! 私はもう逃がされたくないの!!!」

 

 

 

 自らに言霊を叩きつけ、死の恐怖に立ち向かおうとしている。

 必死に歯を食いしばっている

 

 あの日、僕とハルナは逃げた。迫ってくる残酷から逃がされた。

 逃がされたから今がある。けど、それで大切な人の命が目の前で失われた。

 

 

 

「……くそったれぇぇぇ!!!」

 

 まだくたばっていない。まだ死んでいない。まだ生きている。

 

 なら、最後の最後まで好きなだけ一緒に抗ってやる。

 

 


 

 

「第3遊撃戦隊、右翼から叩け!」

 

「ドメル司令、本国から通信です」

 

「後にしろ」

 

「総統府からの第1級優先通信です」

 戦闘終了間近での通信要請。ドメルは今は戦いに集中したいようだが、それよりもいきなり入ってきた総統府からの通信にゲールが慌てていない。

 

「総統府から……?」

 

 ゲールの落ち着いた態度に訝しみながらも、通信回線を開く。

 

 

「ガーレ・デスラー」

 

『総統府からの最優先命令を銀河方面作戦司令長官エルク・ドメルに通達する。直ちに艦隊を撤収して本国に帰還せよ』

 

「なぜですヒス副総統! 私はあと一歩のところでヴンダーを倒せるのです! 撃沈ももはや時間の問題です!」

 

『質問は許されない。今すぐ艦隊を撤収して本国に帰還せよ。これは最優先命令だ、わかったな!!』

 

 総統府から通信をいきなり切られ、急に何が起こったのかわからなくなったドメル。

 ここで撃沈することもできる。

 

 だが軍人として上からの命令には逆らえない。

 

 悔しい。ここで落とせないのが悔しい。

 せっかくここまで追い詰めた、僚艦も大勢沈んだ。

 それなのにこれはあんまりだ。

 

 

「……生き残っている全艦に通達。直ちにすべての戦闘行動を停止。現宙域から撤退する」

 断腸の思い。だが軍人なら仕方ない。

 

 すべての戦闘艦艇が警戒を解き、帰還の途についていく。

 

 

 

 _____

 

 

 

 

「艦尾主砲沈黙!」

「第4主砲! おい! 応答しろ!」

 

「弾幕張れ! 右舷何やっているんだ! 薄いぞ!!」

 

「くっそぉ! ここで沈むのかよ!」

 あまりの砲火に南部が絶望を声に出す。

 如何に重武装艦だとしても、如何に巨大だとしても、これでは撃沈されるのはもはや時間の問題だ。

 

 

「馬鹿野郎!! 諦めるな!!」

 しかし、最後まであきらめない。

 武装もかなり潰された。発射管も誘爆を起こした物もある。

 でも主砲もまだ無事な基が残されていて、中央船体のVLSも発射可能。

 

 

 思い切り抗ってやる。

 

 

 しかし、戦局は急速に収束していく。

 

 

 

「……何だ?」

 砲火がやんでいく。爆発音が収まっていき、ダメージコントロール表示も忙しさを手放していく。

 

『敵艦、全艦ワープシテイキマス』

 中空ディスプレイに映るのは、ワームホールに次々飛び込んでいくガミラス艦艇。

 こちらに目もくれずに背を向けて撤退していく。

 

「どういうことだ……?」

 

 ここまで追い込んでおいて、あと一歩で撃沈というところで沈めなかった。

 この不可解な状況に、古代の頭は解き明かしようもない疑問で飽和した。

 

(敵に何かがあった。だがいったい何が……)

 

 

 すべてのガミラス艦がワープしていき、そこに残ったのは、ひどく痛めつけらえた一頭の竜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(風奏さん!! 風奏さん!!! いや!! いやだ!!!)




ついにドメル将軍本格登場です(๑•̀ㅁ•́ฅ
そして、投稿すべき話も半分を投稿することが出来ました。




次の話は非戦闘系の話です……ある程度覚悟して読んでいただけると嬉しいです。

次回 『夢の跡地にできたもの』

遂に、2人に何があったのか踏み込みます
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