宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
今回はリクとハルナの身の内を書く話のため、少し苦しいです。でも、最後は嬉しいです。
書いてて色々な意味で泣きかけました。
苦手な人はブラウザバックを推奨します。
もう何十回と書き換えて分かりました。
この話に限って言えば、完成っていう物は無いなと思いました。
では、オリジナル回《夢の跡地にできたもの》です。
暁・睦月研究室は、設計段階では研究室としてのみ使われる予定だったが、とある理由で2人の居住スペースとしての側面も持つ事となった。
そして、この船の居住区画は男性同士もしくは女性同士で相部屋を組むのが普通だが、ハルナとリクはとある事情があって相部屋にしてもらっている。
これは、敵将「エルク・ドメル」との初邂逅の翌日の話である。
__________
艦内時間午前2時
(赤い.十字架.?)
(ハルナ! 逃げるぞ!!)
(リク! 母さんに構わず逃げてっ!)
(母さんっ!!!)
風奏さん!! 風奏さん!!! いや!! いやだ!!!
《ハルナ……ハルナ! ……ハルナ!》
「ハルナ! 大丈夫か?!」
私は目を覚ました。やけにじっとりしていると思ったら、パジャマが肌に張り付いていた。酷い寝汗をかいていたようで、呼吸も少し荒くなっていた。
「リク……私……」
ああ、見てしまったんだ……私。
心的外傷後ストレス障害……一般ではPTSDと呼ばれる症状を持ってしまった私は、こんな感じで、あの日の光景を夢に見る時がある。
2155年9月13日。火星のクルジスにいた私とリクは、リクのお母さん「睦月風奏」さんの家を訪れていた。
その日は嘘みたいな程快晴だった。火星ってテラフォーミングされたとはいえ、荒野の惑星なの。だからたまに青空に砂塵が舞い上がっていたりする。
でもこの日は嘘みたいな程天気が整っていて砂塵が一切起こってない。
あの日は楽しかったんだけど、死ぬほど怖かった。いや、実際死んだようなものだった。
一点の曇りのない青い空に、血のように赤黒い同心円が広がっていく。
その円の真下の様子が遠目でギリギリ見えたんだけど、どんどん真っ黒な空間に変わっていく光景が脳裏に焼き付いている。
イエスキリストを連想させるような真っ赤な……いや、血にまみれたように赤黒い十字架が空を衝く。
そしてその十字架が消えた瞬間に、強烈な衝撃波が私たちを襲った。
風に舞う木の葉のように、私たちの体はいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。
リクの母さんも私たちと同じように飛ばされてしまい建物の壁に強く打ち付けられてしまった。その時にどこかを骨折してしまったみたいで動けないようだった。
私たちはリクの母さんの体を抱えて逃げようとしたけど、壁に打ち付けられた衝撃で骨にヒビが入っていたみたいで動く度に骨が軋み激痛が走った。
衝撃波の第2波が迫る中、私たちはリクの母さんをどうにかして連れていこうとしたけど、リクの母さんはこう言ったの。
(リク! 母さんに構わず逃げてっ!)
私たちがそれを飲むはずがなく、それでも引きずってでも連れていこうとしたけど、リクの母さんは微笑んでいた。
こんな死を覚悟せざるを得ない状況に微笑むなんてどうかしているけど、
「あなた達だけでも生き残りなさい」って訴えかけてるように思えた。
涙と鼻水と頭部の流血で酷い様子の顔面で、私たちは喉が裂けるほど泣き叫んだ。
親を見捨てて逃げるなんて出来るはずがなかった。リクのお母さんは、私にとってはもう1人のお母さんだった。
そんな人を見捨てるなんて、出来なかった。
リクの母さんは、水色の石と橙色の石がチェーンで繋がってるペンダントをリクに手渡して、最後の力を振り絞って私たちを突き飛ばして逃がした。
2人で生きなさい
その直後、私たちがいたところに頭上から瓦礫が降ってきて、リクの母さんが潰れた。
辛うじて右手だけが瓦礫の山の外に出ていて、リクの母さんだった何かから真新しい赤い液体が流れ、私は吐き気を覚えた、今の今まで生きていた人の死で心が壊れそうだった。
身も心もボロボロってこういう事だと実感した。
リクの顔を見ると、涙でぐしゃぐしゃになってしまった顔で悲壮な覚悟を決めた目になっていた。砕けそうな程歯をかみ締めていた。
私は、頭部からの流血で眼球が血で塗れてしまったのか、視界が文字通り真っ赤に染まっていた。
「ハルナぁ、逃げるぞ!」
そのまま私はリクに手を引かれて迫りくる衝撃波から逃げた。
私の手は、自分の手じゃないくらい震えていた。でも、リクはその手をとても固く握っていた。
絶対離さない、そう叫んでいるようだった。
そのまま私たちは衝撃波の第2波に巻き込まれ、瓦礫の山に埋もれ、永遠に近い眠りに落ちた。
目覚めたのはその40年後、2190年後半のことだった。
「……体調は?」
「うん……平気……だと思う」
「やっぱり寝汗酷いな。吐き気とかはなさそうだな」
「……どうして起きてたの?」
「おまえがうなされてたからだよ、バカ。僕のベットが真上にあること忘れた?」
「……ありがとう」
航海が始まってからは調子良く起きれる感じだったのに、なんで急にこんなことに……?
そんなことを考えていると、急に悲しくなってきて、涙が零れ始めた。
そして私がそれに気づくのには、数瞬の時が必要だった。
「ハルナ……泣いてるのか?」
「え……? 私」
私の記憶は、そこで曖昧になってしまった。
「落ち着いたか?」
リクが私に、ドリンクの入ったボトルを差し出してくれた。
私は、それを一息に飲んだ。
「うん……私、どうなってた?」
目元が熱い。泣き腫らしてる。
「急に抱きついてそのまま10分くらい泣いてた。その様子だと、一応落ち着いたようだな」
「何か、急に……悲しくなって、心が、あの時の記憶でいっぱいになってしまって……それで……」
あの時のリクの母さんの最期の顔、最後に見たその姿が今でも忘れられない。いや、忘れてはならないのかもしれない。
リクの母さん、睦月風奏さんがいたという事をこの世から消してしまわないようにするために、私たちは彼女を知る人として覚えていなければならない。
あの時の正式な死者数は依然として不明のまま。
過去の地震や台風などの災害とは明らかに違う。クルジスの民間人居住区は、爆心地から遠いとはいえ町全体が壊滅的な被害を受けていた。
爆心地に最も近かった町は、開拓前の元の荒野に戻ったかのような惨状だった。
そこに残っていたのは瓦礫だけ。
もし瓦礫すらなかったら、そこに町があったとは誰も気づけないだろう。
遺体が発見されても、身元の判別がつかないほどの悲惨な状況になっているのがほとんどだったという事は、私たちが目覚めてから地球に保管されているアーカイブ資料で知った。
「リク……一緒にいてほしい……」
「一緒に?」
「……ぎゅってして欲しい……」
私は、自分が何言っているのかが分からなかった。確かに私はリクに好意を持っているけど、何言っているのか自覚して私は赤面するだろう、通常なら。
でも今は、安心感が欲しい。
大事な人の温もりが欲しかった。
「それでお前が安心するなら……」
そう言って、リクは私をやさしく包み込んで、頭を撫でてくれた。
リクに抱きしめられたのって確か、私が目覚めた時と、冥王星の戦いの時だった。
でも今は、そんなのと比べることはできなかった。
彼の鼓動が響く。
自己主張する命の音が強く私の胸に響き、形容しがたい安心感に触れた。
とめどなく涙が溢れてくる、零れていく。さっきとは違う、安心したから溢れてくる涙だった。
「すっきりするまで泣いていい。今は、何も気にしなくていい」
その後私は、泣いたり泣き止んだりを繰り返した。
どこかで求めていた温もりに包まれ、それは壊れた蛇口から水が流れ続けるように続いた。
「おはようございます……」
「おはよう……ハルナさんは?」
「まぁ、ちょっと……いろいろありまして……」
翌日、僕はハルナの様子を確認してから、解析室に向かった。頭がぼぅっとする。
「……徹夜?」
「徹夜じゃないんですけど……まぁ。博士、コーヒー貰えますか? もう眠くて限界です」
「いいけど、私ブラックしか飲まないわよ?」
「今はそれが欲しいです。あ、砂糖とかも無しでお願いします」
とにかく眠い。でもそれ以上に、どうしてもハルナのことが心配だった。
赤木博士に淹れてもらったブラックコーヒーはこの上なく苦いが、今はそれがありがたかった。
強い苦みが非常に強い眠気を塞き止めてくれるが、舌がどうにかなりそうだ。
「……何だろう、悩み? 心配事? 何か抱えている様だけど」
「……顔に描いてありましたか?」
「ええ、かなりはっきりとね」
昔から隠し事が下手だ。すぐに顔に出る。
「はい。これは、全員に話した方が良いかもしれませんね」
「リッくん、急にどうしたの?」
「ちょっと、大事な話があって」
「……わかったわ」
マリさん、今日はふざけは無しにしてくれるようだ。目が真剣になっているし、語尾も普通になっている。
マリさんは僕が何かを抱えていることを少し前に察知していたから、それもあるかもしれない。
「今から話すのは、僕たちの身の上の話です。沖田艦長と佐渡先生は職業上ある程度は知っていますが、極東側からは止められている内容なので、一切外部に漏らさないようにお願いします」
「……僕とハルナは、55年の9月に火星で起きた災害の生き残りです。正確には一度死んでいるようなもので、事故の年から40年間昏睡状態となり、ガミラスが侵攻してきたころに僕らは目覚めました。この髪色は、元から銀色なんですけど、あの時の強いショックで一部変色しているというのは、僕たちを診察した医師から聞いたことです。ハルナも同じです」
そこで一息ついて周りを見てみると、真田さんも、マリさんも、赤木博士も無理して聞いている感じがあった。
アスカちゃんとユリーシャなんて目元を押さえている。
やっぱり話すべきことではなかったのだろうか……。
「あの、そんなに無理して聞かなくても……」
「大丈夫だ、続きを聞かせてほしい。君も、無理して話しているんじゃないよね?」
真田さん、ありがとうございます。赤木博士もマリさんも真剣な顔で続きを促していた。
アスカちゃんも聞いてくれている。
「……続けます、あの災害で、僕は目の前で母を失いました。ハルナにとっては、もう一人の母親みたいな存在だったので、正直……今でもショックは大きいです。それで……ハルナはその、PTSDになってしまって」
「今日、ハルナっちが来ていないのは、フラッシュバックを起こしたからなの?」
「はい、航海を始めてからは調子良かったんですが、深夜に……うなされていて」
「今は落ち着いているの?」
「今は寝ています。ここに来るときに確認しましたが、普通の時の寝顔でした」
その後、僕はあの時の話を包み隠さず話した。よく、「話すとこは話して隠さないといけないとこは隠す」っていうやり方があるけど、真摯に聞いてくれる人に対して失礼と思ったから、洗いざらい全てを明かすことにした。
勝手に人の身の内の話をするのは良くないのかもしれない。でも、知ってもらうことが何かにつながるのならと思った。
「事情は分かった。また明日ここに来なさい、今日は暁君のそばにいてあげた方がいい」
真田さんが一つ提案をした。でも修復作業もあるし、皆さんに負担をかけてしまうし……
「負担をかけてしまうと思っている? それなら心配ない」
そんな僕の心は、マリさんに見透かされていた。
「今はハルナっちのそばにいる方が、ハルナっちのためにも、リっくんのためにもなる。ハルナっちの心が本当の意味で分かるのは、リっくんだけだと思う」
正直その言葉が本当に嬉しかった。
この人たちは、自分たちの心をこれほどまでに心配してくれているのか……
我慢しているはずの涙がこぼれ始めた。
泣くのなんて何年ぶりだ? あの日一生分泣いたのに……
あいつを支えるために我慢してきた、人前で弱い自分を見せないように努力してきたのに。
「睦月君……話してくれてありがとう」
艦内服の袖で涙をひたすら拭った。涙でぐちゃぐちゃになっても、気にしなかった。
ふと目が覚めたら、私は元のベットの上で横になっていた。
泣いていたのは覚えてるけど、そこからが分からない。
私がベットの上にいるという事は、泣き疲れて寝てしまった私を、リクがベットに戻してくれたと思う。
「リク……?」
ベットの横にある小ぶりなテーブルの上には、トレーに乗ったおにぎりとドリンクボトル、冥王星の時のメモ用紙で書置きがあった。
《おなかすいてるはずだから、食べれたら食べてね》
「これじゃあ……私が妹みたいじゃない……」
(ホントは嬉しいのに……いないと寂しいな……)
私はベットから這い出ておにぎりにかぶりつく。
気分も悪くなくお腹もちゃんと空いていたので、それらはあっという間に私の胃袋の中に収まった。
「起きたか、調子は?」
自動ドアから入ってきたのは、リクだった。よく見ると目の下にクマが出来ていた。
「気分は大丈夫。おにぎり美味しかった、ありがとう……」
「何よりだ」
「作業は?」
「今日は無しって言われた。真田さんやユリーシャ、アスカちゃんもマリさんも赤木博士も事情を理解してくれた。今日はゆっくり休もう」
「あと、説明する過程で僕らの過去を話した。勝手に話したことは謝る」
そういいながら、リクは私のベットに腰かけた。注意深く見てみると寝不足なのか、リクは少しふら付いている。
「そんな……リクが謝ることじゃないよ……」
私がうなされて、泣き疲れて寝てしまうまでずっと起きていたんだ……。
そう思うと、なんだか申し訳なくなってくる。
「急にきたよな、最近なかったのに」
「うん……リク、あれからずっと起きてたの……?」
「ん? ああ、前もそうだっただろ?」
「ホントごめん……私……リクに助けられっぱなしで」
「気にしなくていいって言った。ハルナは僕にとって唯一の肉親みたいな存在だから、僕は一緒にいたい。40年前に母さんが死んで、僕とハルナが生き残っていつも一緒にいた。少なくとも僕は、もう兄弟姉妹のようなものだと思う。そんな肉親が苦しんでいたら助けようとするだろ?」
なんとなくだけど、リクの気持ちが私に流れ込んできたような感じになった。
あの災害でクルジスは壊滅的な被害を受けて、多分、私の親も死んでいる。私もそうだったけど、リクは目の前で親しい人が死ぬところを目の当たりにしてしまっている。
私よりもずっとずっと辛いと思う。
それなのに、明るくふるまってそれとなく気遣ってくれている。
髪の色が一部変わってしまったのも、それを私たち共通の特徴にして明るくふるまったり、
私よりもずっと深く、決して消えない傷を負っているはずなのに
「リク……我慢、していない?」
「……していないと言ったら噓になる。正直辛いよ、目の前で母さんが死んだから。目覚めた時には地球に移送されてて火星は立ち入りが規制されてて、母さんの墓参りも出来てない……」
見かけでは分からないけど、リクの心はやっぱりあの時から止まったままだった。
決して人前では見せなかった、私にも見せなかったリクの心は、あの景色が焼き付いたまま、止まっていた。
「天涯孤独」という言葉がある。「身寄りもなく独りぼっちである状態」という意味らしいけど、そんなことない。
「私が傍にいるよ」と伝えたい。
「リク……私があなたの家族になる」
「……えっ?」
私の唐突な言葉にリクは石柱の様に固まった。
「自分の家族を好きになった人は、その人の家族という事になるの。私はリクの母さんの事が好きだった、なら私はリクの家族という事にもなる」
家族と言ってくれたことが嬉しかった。
唯一の肉親と言ってくれて嬉しかった。
ずっと気遣ってくれていたことが、申し訳ないと思いながらも嬉しかった。
頭を撫でてくれたことが……心を受け止めてくれたことが……凄く嬉しかった。
たった一人の最後の「家族」を……私は絶対に手放したくない。
私は……あなたのことが……
「それに私は……リクのことが……好きだから」
自分でもどうにもならない感情の渦巻きをそのままリクにぶつけてしまった。
気づいた時にはすでに手遅れで、言ってしまったことを自覚して顔から白煙を噴き出しそうになった。
真っ赤になってしまった顔を見られたくないと唐突に思い、両の掌で顔を隠してしまった。
指の隙間からそっとリクの様子をうかがってみると、涙を流していた。零れる涙と共に、困ったような嬉しいような……沢山の感情が入り交じった顔をしていた。
「ハルナ、こういう時、どうすれば正解なのか僕にはわからない。でも……」
リクが震える手で私を抱き寄せて、耳元でこう囁いた。
「家族になろうよ、ハルナ。僕も、ハルナのことが好きだ」
心がつながった感覚ってこういう感じなのかな
とても暖かい、「幸せってこういうものなんだ」という事がやっと分かった気がした……
両手をリクの背中に回して同じように抱きしめてみると、心がポカポカしてとても心地よい、ずっとこうしていたい。
40年の時を共に越え、寄り添い互いに助け合ってきた私たち2人は、
家族になろうと思いました。
「おはようございます、ご心配おかけしてすみませんでした」
「おはよう。睦月君から事情は聞いたけど、大丈夫かい?」
「はい。えっと……家族がいますから……えっと、平気です」
私は照れながらそう口にしました。
「まさか!!」
マリさんがとっても嬉しそうな顔をしている。赤木博士なんか、コーヒーが気管支に入ってしまったようで盛大に咽ている。ああ、ちょっと破壊力があったかな。
あれから私たちは家族になろうという事で……一言でいえば婚約に近いのだけど、とにかくこの戦いが終わったら一緒に暮らそうという事になりました。
それまでは恋人みたいな感じで過ごすことになり、いつものように業務に励む毎日を過ごすことになりました。
あの夜嬉しかったことは、リクが婚約指輪みたいなものを作ってくれたことと、一緒のベットで寝てくれたことです。
形見を2人で持とうという事であのペンダントを2つに分け、リクが橙色の方を、私が水色の方を持ちました。
指輪というよりブレスレットみたいな……と言うよりチェーンを手首に巻いている感じだけど、色違いでリクとお揃いに慣れたのは嬉しかったです。
一緒のベットに寝たことに関しては、「またうなされていたらすぐに起こせるように」という名目でやってくれたのですが、その日は昨日と比べてとてもすっきりと起きられました。リクが寝返りをうっていたようで、私が起きた時にはリクの顔が目の前にあってビックリしましたが……
(そういえば、一緒のベットに寝てたんだった……リク、寝てるなぁ。……つついちゃえ、えいえい!)
解析室に来る前に、フラッシュバックが起きたこととその後の事を、事情を伝えてあった佐渡先生にお伝えしてきたら、
「出来ればその日のうちに伝えて欲しかったんじゃが、パートナーがおるならそれでええ! 睦月君、ずっと支えるんじゃぞ!」
と言われて少し恥ずかしかったけど。
そして、自室から解析室まで手をつないで歩いてみました。周りの目が気になったので、人通りの少ない通路を選んだけど……
リクの手はえっと……優しい感じでした。当たり前のことを言うけど、あの時の死を覚悟した感じとは全く違う。でも、あの時とは違う「離したくない」という言葉が、ゆっくりと語るように染み込んでくるような……うまく表現できないけど、そんな感じでした。
「えーと、暁君、家族っていうのは……」
真田さんが目をぱちくりさせながら聞いてきた。もう、びっくりしすぎです。真田さん。
「そのままの意味です。この戦いが終わったら、地球で結婚します」
私たちの電撃発表は、真田さんの聡明な頭脳をショートさせて機能不全に陥れるには十分すぎる程だったみたいで、真田さんの再起動には幾分かの時間がかかりそうです。
「リっくん、ハルナっち! おめでとう!!」
「ありがとうございます、ご心配おかけしました」
「さてさてリク君~永遠の伴侶を得た気持ちを聞かせてもらい(ryちょっと姫~! やーめーてー!」
際どい内容を察知したアスカによってマリさんは引きずられて解析室の外に放り出されてしまいました。
「ふぅ、悪霊退散悪霊退散、もう慣れたものです。ハルナさん、リクさん、婚約おめでとうございます!」
「ありがとう。アスカちゃん、話、聞いてくれてありがとう」
「背負い込んだら人間潰れてしまいますよ? どこかで吐き出さないとスッキリしません。あ、式やるとき呼んでくださいね?」
うん絶対呼ぶね!
できれば復興した地球の日の本で式を挙げたいな。
「リク! ハルナ! おめでとう!!」
解析室のドアが開いたその瞬間に飛び込んできたのはユリーシャでした。
「「ぐはぁ!!」」
そしてそのまま私たちを抱き込む形で突撃、思いっきりユリーシャに押し倒されて、2人揃って変な声が出てしまいました。
ぶつけた頭を摩りながらユリーシャの顔を見ると、溢れんばかりの笑みを浮かべてました。
「私の思った通り! 2人は結ばれたわね!」
「そういえば初めて会った時に『ハルナのことはあなたが支えてあげてね。あなたなら大丈夫よ!』って言ってたな」
え! そんな事リクに言ってたの?!
私達のことは既にユリーシャに見抜かれていたようでした。
「フッフッフッ、全てはユリーシャのシナリオ通りに〜」
「何それ? 何かのギャグ?」
「知らなぁい」
解析室に笑いが溢れた。私がリクの横顔を見ていると、それに気付いたリクがはにかんだ。
たったそれだけで頬が熱くなってしまって、私はまた顔を隠してしまいました。むぅ、私嬉しいはずなのに……
「ハルナ、こういう時、笑えばといいと思うよ」
彼の声が聞こえて、私は恥じらいながら両手を顔から離し、笑顔になりました。
一向にに頬の熱は抜けないけど、「恥じらい」は「嬉しい」でかき消されてしまいました。
手首に着けた指輪代わりの形見が揺れる。
そのブレスレットで存在感を放つその石は、私たち2人……そして救うべき星と故郷の星を表しているようです。
私達の婚約と昔話を船の皆さんが聞いたらどう思うでしょうか?
喜んでくれるでしょうか? それとも、「ただ傷を舐めあっているだけ」と思うでしょうか?
確かに、お互い苦しいこと辛いことを経験した。時に急に悲しくなって泣くこともあると思う。そしてそれを慰める。……見る人が見れば、ホントに傷の舐めあいにしか見えないと思います。
でも、私はリクと支えあってきたし、お互い信頼している。お互い、好きです。
これは自論だけど、夫婦ってお互い支えあう存在だと思います。どちらか一方が依存する関係ではなく、互いに依存する「共依存」という関係でもない。
イメージしやすくすると、二人三脚かな。
それと、お互いの良いとこをよく知っています。
何年一緒だと思ってる? 少なくとも火星にいる頃から仲良かったよ?
ありきたりな言葉だけど、どんな未来が待っていても私たちは、2人でお互いに支えて、強く強く生きていきます。
「あらあら、拘り挽きのブラックコーヒーが甘いホットココアに変わりそうだわ。2人とも、おめでとう」
「なんかいい雰囲気だからここで見てよ、式の時は仲人でもやろうかにゃ」
解析室のドアから眺めていたマリは、かつての京大時代の風景、綾波ユイと碇ゲンドウを思い出していた。
目尻には、うっすらと涙が光っていた。
リクのデスクに置かれたもう動かないデジタル腕時計。
被災時に身に付けていたそれは、もう時刻を表示することは無い。
でもそれは、皆が気付かぬように静かに思い出を刻み始めた。
西暦2199年4月15日、私たち2人は、宙で結ばれた。
この話を書き終えてから後書きで色々書きたいことがありますが、長くなるのは良くないので抜粋して書きます
本作の主人公であるハルナとリクにはそれぞれオリジンがいるという事もあって、今回この話を最初から無かったことにしようかと迷いました。
「誰かの死が互いを結ぶ」というのは、連載初期は全く想定しておらず、当時の僕からしてみれば、書くつもりも全くなかったことでしょう。
そして「死を描く」のは精神的に参ってしまうことがあります。
この2人にはかなり思い入れがあり、筆者の僕自身、感情とかをかなりダイレクトに感じてしまうのでこの話を書く途中で何回もダウンしてしまいました。その都度無理矢理復活してましたが、どうにもキツイものがあります。
そもそもこのタイプの話は書いたことも読んだこともなかったので文字通りの暗中模索状態でした。
ですがこの連載をする上で避けては通れない話となっていた為、何とか書ききりました。
もしこの話を読んでいる中で気分が悪くなってしまった人がおりましたら、ここでお詫び申し上げます。
申し訳ございません。
今回は非常な特殊な回という事で、特殊テーマを付けます
という事で、楽曲コード載せておきます
主の気に入っている曲で「これだな」って思ったので載せてしまいました
曲名 聞こえますか
歌 こいぬ
HoneysWorksの曲で、色々あって主の大好きな曲です。意図せずこの曲をなぞることになってしまいましたが、途中からこの曲を織り交ぜる形で大規模な追記と修正を施してこの形に書き上げました。
実のところ、初期稿自体は3か月前から存在していました。
そこから途方もない編集作業を重ねて早3か月、多くの人に試作段階ものを見て頂き、その都度意見を頂いて来ました。
そしてようやく出せる段階まで書き上げることが出来ました。
試作段階の原稿を見て頂き意見をくださった鈴夢さん、名無しのミリオタにわかさん、そしてこのクロスオーバー小説を読んで頂いている多くの皆様、ありがとうございます。
皆さんにハルナとリクの物語を読んで頂けていることが、この特殊回を書く励みになりました。
後書きが長くなりましたが、満足のいく物が書けて主は本当に嬉しいです。
次からは通常運転です。ビーメラ4での反乱です