宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

41 / 139
皆様アンケートありがとうございました
NHGの使徒レーザー砲塔が予想以上に人気でしたので、それを1門と、次に人気だった試製ロンゴミニアド電磁投射砲を実装します
(使徒レーザー砲塔はオーバーキルの可能性があるので、一門です。電磁投射砲は何門か付けます)

形状についてのアンケート取るので是非是非お願いします



では、ビーメラの反乱です
お楽しみください




4枚のジョーカー

「本当にこれでいいんだな? 俺を信用して」

 

「……」

 

「いいのか? お前が掴んでいる情報では、数の差でやられる可能性もある」

 

「分の悪い賭けです。死傷者も出る可能性があります。それでも、あなたを信頼します」

 

「……わかった」

 

 


 

 

 

「損傷個所は?」

 

「甲板VLSが3ユニット、第一、第四主砲に第二副砲、対空兵装多数、おまけにアレイアンテナ基部、カメラもだ。砲身交換と内部機構の調整、あとはエンジンと砲塔をつなぐ供給ラインの点検、カメラユニットまるまる交換。777の弊害も出ていそうだ。VLSは誘爆も起こしていたから修復には時間がかかるな」

 

「手酷くやられたわね。私ら死にかけたし」

 

「あれは本当に怖かった。ハルナがああなるのも無理はないか」

 

「でも逃げないわ。たとえ、どうなってもね」

「その頑固は誰に似たんだか」

「あら? 私のパーソナリティよ?」

 

「……そうだな。誰のものでもない、お前自身のものだ」

 

 

 パーソナリティ。心理学では、人間の行動や判断のもとになる考え方や傾向のことを指し、個性とも呼べる。その人が見たり聞いたりしたことをもとにして形成されていくそれは、完成の2文字を知らない。

 

 リクの母さん「睦月風奏」の死を見て大きく改変されたそれは、睦月リクをいう存在によって互いに混じり、「持ち主が本当になりたいと思った」姿を体現させる。

 あの夜受け取った言葉、渡した言葉は、確実に2人の何かを変えた。

 

 その結果が今のハルナの言葉なら、それを見て2人の母親は何を思うだろうか。

 

 

「話変わるけどさ、この石って、地球と火星を表しているんだよね?」

「そのはずだ。僕が火星の方、ハルナが地球の方だ。母なる地球……ってね」

 

「もう……この水色を海と例えるなら、リクの橙色はさしずめ大地かな?」

「大地かぁ……日本神話では、大地を創ったのはオオクニヌシという神様らしい。そして海を創ったのがワタツミと言うらしいよ?」

 

 

「神様かぁ。……もし本当に神様が地球を作ったなら、壊れたとこは住んでる私たちが直さないとね」

「上から見てるなら、見られていても恥じないようにしないとな」

 

 そういって、互いの拳をぶつける

 揺れる石は、あたかも宝玉のようだ。

 

 

 


 

 

 

「航海日程21日の遅れか……」

 

 航海表と航路図に表示された日数は、「注意域」に入った黄色の点滅になっていた。

 次元断層に入り込んだ、次元潜航艦の攻撃を受けて修復、そして今回の大艦隊との戦闘、修復修復……航海日程は、どんどん遅れていく。

 

 これ以上の遅延が発生すれば、最悪1日5回のワープでは遅れを取り戻すことができなくなり、人類滅亡である。

 

「申し訳ありません」

「君の落ち度ではない。ガミラスとの戦闘で修復期間に足を引っ張られることは予想できたことだが、ここまで手酷く損壊を受けるとは、儂も想定していなかった。敵将の技量を見誤ったな」

 

「これ以上のスケジュール遅延は致命的です。可能ならば、1日3回のワープを5回に増やして遅れを巻き返すしかありません」

 

「そのことも考慮する必要がある。後は頼む」

「了解です」

 

 そういって沖田艦長は航海科室を後にしようとした時、

 

 

 

 

 

 

 沖田艦長は、その場に倒れこんでしまった。

 


 

「術後の経過は良好じゃ。過労じゃな。しばらくは無理させちゃいかんぞ?」

「はい……」

 

「……通常時の指揮は、私が執ろう。航海時の戦闘は、古代、君に任せようと思う」

「自分にですか?」

 

「先の戦いで分かった。指揮官と言うのは、論理を超えた指向て動ける人が指揮官になるべきと思う。私は参謀役に徹してみよう」

 

 

 次元潜航艦戦闘時に分かった。指揮官と言うのは、一般的な常識に囚われない柔軟な思考が必要だと。

 自身は論理的傾向がある。だが古代には、それらに囚われない。

 

 自身が見たことを論理的に考えた真田は、戦闘時の指揮権限を古代に預けたのであった。

 

 

 

 

「水は確実に手に入るとして、あとは食料か」

「有機物さえあればなんとかなるから、問題ないよ」

 補給地となりうる惑星が近づいてきたことで、船内の士気は回復しつつある。

「ようやくまともな食事にありつ得る」ことでディストピア飯ともおさらば、今回のことでオムシスのありがたみがよく分かった。

 

「へぇ~思ったよりも緑な惑星なんだねぇ」

「木製の浮遊大陸の時のように、大陸を丸々持ち込んだような痕跡はないわ。それに第三者からの手は一切加わっていないようね。一応ガミラスの心配はしなくても良さそうね」

 

 航海を始めてから初の「生命居住可能の惑星」にマリと赤木博士は興味深々だ。

 外宇宙というのは科学者にとっては垂涎ものだろう。それもあらゆる分野でだ。

 物理学、天文学、生物学。それ以外の学問も十分に扱える。未知の航海であるがゆえに、未知の発見もある。新たな学問も発生することだろう。

 それほど宇宙というのは、危険ではあるが輝く場所なのだ。

 

 

「ビーメラ恒星系の第4惑星ビーメラ4です」

「どうやら水は豊富に存在しているようね」

「今のところ、有害物質の類は検出されていません。嬉しいことに大気成分は地球とほぼ変わりませんので、呼吸の方はラクですね……ってそれじゃあ俺たちも住めそうだなぁ」

 

 

「そうね」

 そういって新見は島のコンソールに1枚のメモを置いて自分の席に向かった。

 

「島、ビーメラ4大気圏突破後、高度1000mで滞空だ。古代、調査隊を編成、指揮を執るんだ」

「はい」

 

 

「ビーメラ4大気圏に突入します。降下座標、北緯……」

 

 ゆっくりと降下していくWunderは、ビーメラ4の大気を慎重に割き、久しぶりの大気圏をその身で感じる。

 雲を割ってその外部カメラで視認したその光景は、かつて地球に存在していたアマゾンの熱帯雨林のようだ。

 

 

「大気成分の直接観測結果が出ました。人体に有害な成分は検出されません。素晴らしいわ……これなら、第二の地球にも……」

 

 新見は失念していた。今この場には真田がいる。

 

 以前新見は、グリーゼ恒星系に訪れた時に沖田艦長に調査隊の編成と調査の打診をした。

 それは日程上の問題で却下されたが、それが沖田艦長から真田に伝わっていてもおかしくないのだ。

 

「よし、シーガル発進準備」

「艦橋から左舷第2船体第3格納庫へ。ハッチオープン、繰り返す、ハッチオープン」

 

 

『シーガル、テイクオフ』

 第3格納庫管制室の管制室からの操作で電磁アームが稼働して、機体を船外に移動させる。その後電磁アームの吸引を解除して、シーガルはビーメラの重力に身を任して飛び立った。

 

 

 _________

 

 

「岬君、気分が悪いのか?」

「酔ったのか?」

 

「だ、大丈夫です! ただこの頃、サーシャさんとの入れ替わりがあって、記憶が飛びがちなんです」

「艦長もおっしゃっていたな、それ……ほんとに来ても大丈夫あったのか? 船内で安静にしていたほうが安全なんだが」

「いえ! イスカンダルのサーシャさんがいるなら、もし変なものがあっても何かわかるかもしれませんから」

 

「とにかく、少しでもおかしかったら言うんだ。サーシャさんも居るならそう伝えてくれ。いいな?」

「はい!」

 

 

『1時ノ方向ニ金属反応』

「確認する。着陸する」

 

 着陸態勢に入ったシーガルの中で岬は急にウトウトし始めた。

(あ、これはダメなやつだ……)

 そのまま眼を瞑ってしまった。

 

 

 __________

 

 

 

「新見君、君は優秀な解析士官だ。そして、私の後輩でもある。君は、ビーメラ4を第二の地球として、贖罪計画を再始動させたいようだね」

 

「第二の地球」

 その言葉を聞き逃さなかった真田は、新見を会議室に呼び出して、その真意を問いていた。

 地球脱出の贖罪計画、かつて地球で進められていたその計画は、イスカンダルから、波動エンジン設計図とメッセージが届けられたことで破棄された。

 この船もWunder計画のために、BußeからWunderへと大改装された。

 

 しかし、彼女はまだあきらめていなかったのだ。

 

 

「Wunderの航海は、達成が極めて困難な航海です、いいえ、不可能とも言ってもいいです。Wunderの航海日程は大幅に遅れています、その上、先のガミラスの大規模攻撃では、敵がもし撤退しなければ確実にこの船はやられていました。敵があれだけの艦艇を動かすことが出来るのならば、敵の戦力はあれらの10倍、あるいは100倍ともみて取れます。このまま進み続けてさらに攻撃を受け、撃沈ともなれば地球は終わりです。ですが今ここは人類の生存が可能な惑星です。この惑星のデータを持ち帰り直ちに地球脱出の準備を進めることが、今我々にできる最も生存確率の高い方法です」

 

「やめたまえ」

 

「お願いします先生。人類の種を存続させるためなんです。協力してください」

 

「それは、できない相談だな」

 地球人類への贖罪よりも地球の復興。真田の意志は固かった。

 如何に後輩とはいえ、如何に教え子といえ、

 

 

「これは反乱の前兆だった」

 

 

「いやはや、素晴らしいスピーチでしたよ新見情報長。今のは、反乱の意志ありと判断するしかありませんね」

 

「保安部長……新見君を、拘束したまえ」

 自らの教え子を拘束させるのは、心苦しいことだろう。

 しかし、その感情は立場が許さない。

 

「失礼、これも任務なのでね」

 そういって伊藤が取り出した拳銃は、

 

 

 

 真田に向けられた。

 

 

 


 

 

 

「へぇ~お前にこんな装備があったなんてな」

 パワードスーツというものをご存じだろうか? 強化外骨格とも呼ばれるそれは自身の目線を高くして、人間では到底発揮できないようなパワーを与える。

 しかし、今このロマン装備を付けているのは、人間ではない。

 

 

『私ハ、アラユル状況ニ対応デキル優レタユニットナノデス!』

 そう、アナライザーなのだ。

 このパワードスーツは、正確にはアナライザーの前身となったユニットが所有していた装備の改造型だ。「兄のお下がり」とも呼べる装備を身に着けたアナライザーは、いつも以上に頼もしい存在として、今回の調査に同行する。

 

「君たちはシーガルで待機だ」

「「了解!」」

 

 そういって古代は進んでいくが、岬だけ気の抜けたような顔で立っていた。

 

「岬君、どうした? 置いてくぞ」

 そういわれやっと気づいた岬は、何時もつけている髪留めをその場に落とし、スタスタとその後ろを付いて行った。

 

 

 

 _____

 

 

 

 

「副長を?!」

 新見から伝えられた計画とは違う。それも最初から。

 そのことは計画を伝えられた島を困惑させるには十分すぎるものだった。

「本意じゃないのよ……今、保安部が会議室に軟禁している」

 

「このまま、なし崩しに決行するのか」

 

「もう、後戻りはできない。決断して……島君」

 

 なし崩しに決行となった計画は、始動した以上止められない。

 

 

 _____

 

 

 

 一方、そんなことに全く気付いていない2人の研究室には、今日はお客さんがいた。

 

「お願いします」

 コスモゼロの強化案の提出を頼まれていた山本は、少し前からコスモゼロの改造に関しての要望を纏めていた。

 それは夥しいほどの紙面で形になり、それを受取ろうとしているハルナの顔もほんの少しだが引きつっている。

 

「うわぁ……よく書いたねこんなに」

「暇があればガリガリ書いてましたからね。ボツ案もいくつかあるみたいですけど」

 その様子を一番見ていたアスカが語るのだからそうなのだろう。

 食堂でも書き、控室でも書き、アスカがサンドバックをKOするときにも書いていた。

 

「そのボツ案も気になるところだけど、とりあえずこれで進めていこうかなと思う。でもこれじゃあ何週間かかるか分からないや」

「まぁ全部は無理かもしれないけど色んな人呼んで調整してみるね」

 

 

『全艦に達します。艦長重病につき、職務遂行が困難とみて、本日付けを持って本艦の指揮権は航海長の島大輔一尉に正式に譲渡されました。繰り返します、艦長重病につき……』

 

「は?」

「いきなり過ぎる」

「いや、艦長倒れたというのは知ってるけど佐渡先生からは過労と聞いている。佐渡先生のことだから誤診は無いけど、タイミングが良すぎるな」

 

『暫定的に、本艦の指揮を預かることになった、航海長の島だ。調査の結果、現在停泊中の惑星ビーメラ4は、人類が居住するために必要な環境を、十分に有していることが確認された。現在、Wunder計画は、大幅な日程の遅れを出している。そこで副長と協議した結果、本艦は、人類絶望までに帰還する確率が極めて低いWunder計画をここで中断する。我々は、この居住可能な惑星の情報を携え、地球に帰還する。これは、沖田艦長の同意も得た決定事項だ。皆の混乱を避けるためにも、乗組員は、保安部の指示に従い、冷静に行動してもらいたい』

 

 昏睡から復活してから佐渡先生にお世話になった2人が言うならそうなのだろう。

 艦長が過労で倒れる。佐渡先生への信頼。そしてこのタイミングでの艦内放送。

 

「何か変だ」

「だよね。艦長室で真意を確認したほうがいいな。ごめんね山本さん。改造の話はまた今度だ」

 そういって研究室を出ようとしたとき、ドアの向こうから声が聞こえた。

 

(睦月一尉、暁一尉はいらっしゃいますか?)

 

 

 何かに感づいたアスカがすかさずドアの前に回り込んだ。

 

「開けちゃダメ」

「……これって何かの謀略が動いてる感じ?」

「多分ですけど、タイミングが良すぎます」

 

「なら時間稼ぎしないと……声は男だったから……そうだ。玲ちゃんちょっといい?」

「はい?」

 

 そういって山本の耳元でハルナは何かゴニョゴニョ話したら、山本はにやりと笑った。

 急にシャワー室に入ってドアを全開にしてシャワーを出し始めた。

 それを確認したハルナは大声で叫んだ。

 

 

 

「今シャワー浴びてるのよ勝手に入ってきたらあなた達承知しないわよ!!」

(りょっ了解しました……)

 

 

 

「……ナイス」

「声が男だったから効くと思ったのよ。勝手に知らない人がシャワー中に上がり込んできたら私でも怒るわよ。でどうする? 時間稼ぎは長く持ちそうもないよ?」

 

 

「とりあえず、ここに来た事は何かの謀略の一部みたいだし、身柄取り押さえはあるな。でもそれにビビッて逃げたら逃げたという事が相手側に伝わる。多分敵はあれ以外にも結構いるから下手なことは出来ない」

 

「いっその事ここでボコります?」

「「「はぁ?」」」

 アスカの何とも暴力的な一案に一同素っ頓狂な声を上げる。

 

「敵に連絡されたら困るのはこっちですから、連絡される前にボコって武装解除させて縛っておきましょう」

 既に指の関節をコキコキ鳴らしながら準備運動しているアスカは、乗り気だ。

「いやだいぶ荒っぽいけど……今非常時みたいだから仕方ないか」

「その辺2人は問題なさそうね、ロッカーを壊すほどのパワーがあるんでしょ?」

 

「それはノーコメントで……」

 

 やらかしを突かれた山本とアスカは口笛を吹く真似をしながら明後日の方向を向く。

 

「敵は何人いるか分からないけど、少なくとも2人としておくか」

「じゃあ、ハルナさん、リクさん、何でもいいので一瞬だけ敵をひるませてください」

「何でもいいなら……容赦ないのにしようか」

 リクの視線の方向には、かなり厚みのある専門書が数冊あった。

 

「……あれ使うの? あの大判本」

「鈍器で頭をやるしかないな、身体能力は僕ら低いほうだし」

「気が引けるけど、悪い企みは断ち切ってやるわ」

 

「怯んだら私たちが飛び蹴りしますので、避けてくださいね?」

「……仮面ライダーになりたいのかい?」

 

「とにかく準備をお願いします!」

 

「よしわかった。とどめは任せたよ2人とも」

「「はい!」」

 

 

(あの~まだでしょうか……)

 

「あ、ごめんなさいもう出ますので!」

 結構時間稼ぎ出来て作戦も急ごしらえだが完成した。

 

 ドアの両横に大判本装備のリクとハルナが待ち構え、ベットの中に山本とアスカが待機、いつでも飛び出せるように準備する。

 

 

「お待たせしてしまってごめんなさい今開けますね!」

 そういって、ハルナはドアの開閉スイッチを押してドアを開けた。

 

「失礼します……ってあれ?」

 武装した保安部員の目の前には、誰もいない。確かに今の今まで声がしていたし、シャワー音もしている。

 それなのに誰もいない。

 

「おりゃぁ!」

「えい!」

 リクとハルナが振り下ろした大判本はそれが持つ質量の全てを活かし切り、運動エネルギーの恐ろしさを保安部員の頭に余すことなく叩きこんだ。

 その衝撃は決して侮れるものではなく、一瞬目の前が暗くなった保安部員のスキを突くように2人の赤と白の戦乙女が、身を隠していたベットから躍り出た。

 

 

「「スゥーパァァーッ!」」

 

「「イナズマァァーッ!」」

 

「「キィィーック!!」」

 

 

 その怒号で威力を強化した正義の必殺技は保安部員の胴体にクリティカルヒットを決め、保安部員は部屋の外まで吹っ飛び向かいの壁に激突した。

 

 

 そして気絶した保安部員を、何事もなかったかのように部屋の中に引っ張り込んだ。

 

 

 

 

 

「……アスカちゃん、またマリさんのアーカイブで変なの見たの? 明らかに仮面ライダーじゃなかった」

「あ、200年前の熱血スポコンロボットアニメをちょっと」

「『スーパーイナズマキック』って言ってたよね。ホントはいけないことしてるけどちょっと楽しく感じちゃうじゃん」

 

 そう言いながら保安部員のヘルメットに防弾ジャケット、アサルトライフルを取り上げていく。

 そして武装がないことを確認してから手近なひもで手足を縛る。

 逃げ出してもらったら困るので、かなり頑丈に、ギチギチに縛っておく。

 

「ふぅ、明らかに黒だよね」

「ああ、赤城博士のコーヒーよりも黒だ。でも何を狙ってきたのかな? こんな武装して」

 

「……多分、マスターキーかな」

「……! それじゃあ船を乗っ取るつもりなのか?」

「多分、ね。マスターなら船のシステム全部使えるし、システムそのものの改修権限もある。こっちが感づいてマスター権限でシステムを全部ロックする前に抑えたかったのかも。だからここに来た」

 

 

「なんか……今日冴えてるな」

「そんなことないよ、でも前まではこういう時怯えてたかもね」

「何かあったの? 睦月さんと暁さん」

 何か変わったような雰囲気を感じ取った山本だが、何があったのかはわかりかねていた。

「知りたい?」

 何があったのかを知っているアスカがすかさず裏話をしようとするが、

 

「ちょーっと待った。その話はあとでいいかな?」

 

 状況が状況なので止められてしまった。

 

 

「……とりあえず押さえておきたい場所、というか押さえられているだろう場所は?」

 この中で軍務経験の長いアスカが3人に質問する。

 

「僕なら機関室、中央電算室、MAGI格納エリア、艦長室に艦橋……ってとこかな」

「大体一緒ですね。とりあえず機関室は優先、その後に艦長室を何とかして押さえないと……艦長やられたら大問題です」

 

「でも連絡が途絶えていたら増援が来るかもしれないからササっとどこかに隠れておきましょうよ」

 山本がごもっともなことを口にする。

 連絡が途絶えているという異常を感知した敵が増援をこちらに寄越すかもしれない。

「ダクトにでも入る?」

 

 そう言ってリクが指さした先は、Wunderの空気循環を一手に引き受けるダクトだった。

 

「入れるんですか? あれ」

 

「ここまで大きい船のダクトだからね。空気循環の観点から大きめにしておいたから人くらいなら楽に入れると思う」

 

「よし、そうと決まれば……!」

 そういってハルナは長い髪を解き、保安部員から没収したヘルメットを勢いよく被った。

 白銀の美しい髪の印象が武骨なヘルメットで抑えられてしまっているが、まあ本人がやる気満々なので問題はない。

 

 

「準備が速いな。あと一個だけど誰か被る?」

 

「あったらあったで邪魔なのでいいです」

「同じく、格闘するときに余計なものついていると重心とかで動きにくいので」

「そ……そうか、じゃあ僕が」

 リクもヘルメットを被る。確かに近接格闘をする以上余計な装備があると途端に動きにくくなるのも、近接戦闘に疎いリクでも分かった。

 

 

「では、行動開始」

 アスカの号令で、全員は近くのダクトに身を隠した。

 Wunder乗っ取りという前代未聞の事態に対抗するための戦いが始まったのであった。

 

 


 

 

「カッコいいぞ~お前」

 主計科長の平田はどうやらこういうものに興味をそそられるようで、パワードスーツを装備したことでグレートアナライザーとかしたアナライザーを気に入ったようだ。

 

「アナライザー、その金属反応まではあとどれくらいだ?」

 古代が肝心なことを聞く。金属反応は確認したのだが、その肝心な位置がわからないのだ。

 

『オヨソ、3キロ』

「ええ……」

 遠い、遠すぎる。

 

 

「誰かに見られている。人ではないみたい」

 唐突に岬が、いや、サーシャがそう呟いた。

 その瞬間後方に振り向くとそこにいたのは、

 

 

 巨大な何かだった。

 

 

 ______

 

 

 

 時は少しさかのぼり、真田が軟禁された後。保安部は艦内の重要箇所の制圧に動いていた。

 

「よし航空隊控室、機関室、艦長室の確保へ動け。そして、研究室を押さえマスターキーの確保を急げ。あれを使用されたら厄介だ。無論、ユリーシャ・イスカンダルの確保もだ」

 

 そう命令した伊藤は数人の部下を連れて艦橋の制圧に向かった。

 この船に乗り込んだ保安部の大半は贖罪計画派であり、芹沢からの密命を受けていた。

 ここまで待った。機会が目の前で過ぎ去っていくことも見た。

 そして今が絶好のチャンスという事を一番理解している。

 

 

「伊藤さん、行きますよ」

「よし、行け」

 伊藤の合図で艦橋のドアが開かれ、突然引き起こした混乱を活かして武装した保安部員があっと言う間に艦橋を制圧した。

 

 

「伊藤! これは何の真似だ!」

 

「ハイハイ騒がない騒がない。皆さんお静かに」

 そんな言葉も軽く受け流し、蔑む目を隠そうともせずに艦橋を見渡す。

 

「我々はなるべく穏便に行きたいんですよ。なので協力してくれますか? 余計な血は流したくありません」

 冷ややかで感情がこめられない目でそう言い放たれた艦橋は、一気に緊張状態に包まれた。

 

 

「さて、皆さん静かになったところでお聞きします。皆さん、騙されてませんか?」

 伊藤が放ったのは、衝撃の一言だった。

 

「何のことだよ?!」

「なぜイスカンダルとガミラスが全く同じ位置にあるのか。なぜそのことが秘密扱いにされていたのか。なぜ使用制限条約なんて『最強手札を縛るような条約』が結ばれたのか。こんな事普通はする必要がないんですよ?」

 

 ねちっこい不気味な笑みを崩さずに淡々と語っていく伊藤の口からは、重みを感じさせているようで全く乗せていないようにも聞こえる言葉が流れる。

 

「そのことはもう沖田艦長から説明があったはずよ!」

「いやいやいや……違うんですねぇ皆さん。ガミラスはイスカンダルを信仰している。つまり、関わりがあるんですよ。こうは考えられませんか? グルなんですよ。もしもグルだったら、先の戦闘時に大艦隊に待ち伏せされていた理由も想像がつきます。そして位置がバレたのも彼女が発信機の役割を果たしているから、そう考えられませんか?」

 

 

「あんた! 頭がおかしくなったのか?!」

「こりゃまぁ心外ですねぇ。いつも通りの頭ですがね」

 そういいながら伊藤は艦内用の通信端末を懐から取り出して、とある場所のライブ映像を中空スクリーンに表示させた。

「うちの部下たちは優秀な駒でしてね、今のところ私が指定した場所は制圧済みなんです」

 

 中空スクリーンに映る場所は機関室、艦長室、そして、ユリーシャの部屋だった。

 どの画面にも武装した保安部員が映っていて、機関室の方には、藪をはじめとした機関科員数名が徳川機関長に拳銃を向けていた。

 

「手際が良くて助かりますねぇ、うん?」

 

 ふと目に留まったの、暁睦月研究室のライブ映像だった。

 

 大判本で保安部員を殴打した2人の白髪の技術科と、スーパーイナズマキックを食らわす2人の航空機パイロットの姿が映っていた。

 

 

「っこれは?!」

 

「どうやら、思惑通りにはいかないみたいね」

 狼狽える伊藤を面白く思ったのか、森が嫌味を放つ。

 

 

「……伊藤から二番に連絡、研究室を徹底的にやれ」

『二番、了解』

 

 

「……航海に必要のない皆さんには、しばらく別室でおとなしくしててもらいましょう。航海長、発進準備の方をお願いしますね?」

 

 

 


 

 

 

「どうもありがとう伊藤さん、会話が筒抜けだよ?」

「ハッ! 笑えて来るわ、こっちが装備剝がしただけと思ってるようですね」

「ヘルメットに無線がついているのは助かるわ。向こうの動向まるわかりだからね」

「おまけに部隊間の位置情報を把握するPDA……マップ付きですよ」

 

 ほふく前進が必須技能となるダクト内部でコソコソしている4人は、伊藤の焦り具合を音声のみでチェックしていた。

 山本の手元のPDAには、研究室に向かってくる一団が表示されている。

「危なかったなぁ」

「ダクトあってよかったですね。あ、こっちの位置情報切っておかないと」

 

「さて、ここからどうするか……嬉しいことに戦闘役2人と設計者が2人いるんだ。二手に分かれよう」

 

「まずは機関室の奪還と軟禁状態の艦橋メンバーの解放をして古代くんに状況を伝える、真田さんは位置情報がわからないから今は難しいわ」

「機関室までは……ほふく前進で500m先かぁ……」

「えっと、艦橋メンバーの軟禁位置は……ここかな?」

 そういいながら山本から借りたPDAを操作して見つけた場所は、営倉の監視室だった。

 そこにだけ保安部員の位置情報が複数表示されている。

 

「……遠いな」

 

「まぁやるしかないよ。玲ちゃん、お願いできる?」

「了解です!」

 

「んじゃあこっちはこっちでアスカちゃんと組むのか。とりあえず機関室の方行くわ。片舷押さえればこいつでもう片方も押さえれる」

 そう言ってリクは懐からマスターキーを取り出す。

 保安部が狙っていたのはまさしくこれだ。

「了解。ほふくならユーロで死ぬほどやりましたよ?」

「そりゃ頼もしい」

 

 

「んじゃ、作戦開始!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 __________

 

 

 

「虫は嫌虫は嫌! 虫は嫌!!」

「なんでこんなのがいるんだ!」

「わからん!!」

「とにかく逃げましょう!」

 

 これはいったい何なのだろうか

 ザリガニのような鋏を持っていて、百足のような足を持っている。

 終いには大きく開けた口からは触手のようなものを自慢げに見せびらかしている。

 

 虫嫌いの人には圧倒的破壊力のある見た目だ。

 

「ひぃーっ!!!」

 

 開けた場所に出た時に、急にアナライザーが反転してその剛腕で巨大昆虫を受け止めた。

 さながら大怪獣に立ち向かう正義のロボット。これで興奮しない者はいない。

 

『暴レナイデクダサイ!』

 怪獣を両手の武骨なアームで持ち上げ、機敏な動作で巨大昆虫をひっくり返した。

 

「……カッコいい」

 サーシャも気に入ったようで、無表情なようで口角がわずかに上がった顔でそう呟いた。

 しかし巨大昆虫がそれで退散するわけもなく、再び立ち上がりアナライザーを睨む。

 

『カカッテキナサイ!』

 アナライザーが構えて臨戦態勢に入るが、巨大昆虫は何かに怯えたそぶりを見せ、背を向けて緩慢な動作で歩いて行ってしまった。

 

 

「ふぅ~助かったぁ、ん? 古代、あれって」

 そういって平田が指さした先には、例の金属反応の物体があった。

 

 

「これって……」

 それは、かつて地球と火星に不時着した宇宙船だった。

 

 

 


 

「これは、火星に不時着したあの宇宙船と似ている」

 

「これはイスカンダルの船です。この星にも、救済をしていたのですね」

 不意にサーシャがそう口にしたとき、古代はその言動にピンときた。

 

「もしかして、サーシャさん?」

「急に入れ替わってしまったことをお詫び申し上げます。金属反応について心当たりが一つあったもので、居ても立っても居られなくなりまして」

 

 

「それで、なんでこの星にイスカンダルが?」

「……私たちイスカンダルの使命は、あまねく知的生命体の救済。その一つとしてこの星を訪れたのでしょう。ですが、この星は救済を拒んだ、もしくは救済を行う前に滅亡してしまったようです」

 それを話すサーシャの声色は少し悲しそうだった。

 無表情に近い彼女の顔からは、表情というものを読み取ることが至難の業といえよう。

 

『戦術長、コノ先ニ別ノ金属反応ガアリマス』

 

 __________

 

 その先には、細かな彫刻が刻まれた神殿のような遺跡が広がっていた。

 

「これは……」

 

「ゲームのダンジョンとかでよく見るけど……こいつは本物なんだよな」

 これはゲームではなくリアルである。当然先ほどの様に何がいるのか分からないが、とにかく進んでみる。

 

 

 その神殿はすでに酷く荒れ果てていて、壁際には人型生物の遺骸が背を預けていた。

 

「彼らが、この星に生きた人々……」

「多分ね……こういう見た目好きじゃないけど」

「こいつは、さっきのでかい虫か」

『恐ラク、彼ラガ家畜トシテ使役シテイタノデショウ。ソレガ文明崩壊時ニ野生化シタト思ワレマス』

 壁にはとにかく大量の情報が壁画として残されている。

 こういうところに考古学者を連れてきたら一生ここに張り付くだろう。

 

 その通路はどこまでもどこまでも長く続いていたが、急に開けた場所に出た。

 そこでは数十人は入れそうな空間だが、そこに置かれていたのは古代も観たことのあるものだった。

 

 

「これは……! 波動コアか!」

 

 


 

 

 ところ変わってWunder艦内、その航空隊控室に軟禁状態にされている航空隊各員は緊張状態となっている。

 

「あんたら、何がしたいんだ?」

「無駄口を叩くな」

 そう言われてアサルトを向けられる。

 保安部員は完全武装、航空隊員は丸腰、打つ手なしだ。

 

「星名、入ります」

「なんだお前か。何の用だ?」

 

「伊藤さんからの命令で、加藤隊長は別室で隔離しろとのことです」

「別室で? ……ちょうどいい、お前が連れてけ」

「了解です。加藤隊長、ご同行願います」

 星名はアサルトを構えて加藤にそう告げる。

 武装している相手に無暗に突っかかれない以上、渋々したがって加藤は控室を出た。

 

 

「……急にこんなことしてすみません。僕に協力してくれませんか?」

 近くにいる加藤にしか聞こえないように小さな声でそう言った。

「……どういうつもりだ」

「……僕は保安部ですが、藤堂長官の勅命で動いています。贖罪計画派の反乱を防ぐ、もしくは鎮圧させるためにこの船に乗艦しました。艦長室の保護をしたいので、戦力として協力して頂けませんか?」

 

「……向こう側のふりして実はコッチ側か。じゃあ頑張って演技しないとな。協力しよう」

「一応医務室で佐渡先生も拾っていきます」

 

「はいよ。奴らに見つかったら面倒だがそこはわかってるよな?」

 

「各員の位置はPDAで分かります。人通りの少ない通路を辿って医務室に行ってそこから艦長室に向かいます」

「そこまで考えてんだな。じゃあナビの方は任せる。お前はそれらしくアサルトを突きつけておけばどうだ?」

 

「……我慢してくださいね?」

 そう言って星名は弾倉を空にしておいたマガジンを取り付けたアサルトを加藤の背中に突きつけ、連行しているように見せかけて歩き始めた。

 

「やっぱり気分のいいものじゃないな」

 背中の冷たいものを感じながら、反抗へと向かった。

 

 


 

 

「佐渡先生佐渡先生起きてください」

「んぉ? 何じゃ伊藤の腰巾着と加藤か、今日は開店休業じゃあ」

 酒瓶を両手で抱き抱えてスヤスヤと眠っていた佐渡は、急に現実に引き戻されて不満そうだ

「あはは……それじゃ困るんですよ」

 

「沖田艦長が軟禁されてます。艦長室の奪還をするので手伝ってください」

 加藤のその一言で一瞬で酔いが覚めた佐渡は、同時に原田が戻ってきていないことから状況を察して2人について行くことにした。

 

 

「な〜にが『艦長重病のため』じゃあ。儂の診察に狂いは無いぞぉ?」

「確か佐渡先生と艦長は付き合い長いんですよね?」

 

「土方中将からも『親友を頼むぞ』と言われとるからな。この歳になっても誤診なし処置ミスなし、ガミラスのお嬢さんにも称賛されて、艦長からは宇宙一の名医とか言われちゃってるからな!」

 

 なお、これらは全て事実である。決して話を盛ってないことは約束しよう。

 

「ほら! さっさと行くぞ!」

 

 お怒りモードの佐渡に引きずられそうになりながら、星名と加藤は艦長室に向かった。

 

 

 __________

 

 

 

「なに? Wunderと交信ができない?」

『そうです。何度も呼び掛けているのですが、全く応答がありません』

 

「……とりあえず、俺たちの迎えを頼む。ポイントを送信する」

 ひとまず帰還するという事で纏まったので、平田は自身のポイントを送信する。

 その傍らで、古代とアナライザー、そしてサーシャは謎の波動コアの解析を行っていた。

 

『戦術長、取得シタ情報の中に可視化できる情報ガアリマス』

「この場で出せるのか?」

『ハイ』

 

 そういってアナライザーは自身のカメラから光を出して、その情報を表示した。

 

 

「……これは?」

『詳細不明デス。何カノ概念図ノ様デスガ……』

 

「これは……超空間ネットワークの概念図だと思います」

 

「超空間ネットワーク? それは何なんですか?」

「……銀河間航行を行う上で重要な中継システムです。超光速航行でも多くの時間を要する銀河間航行を支える宇宙の灯台。あなた方の言う、亜空間ゲートと呼ばれるものです」

 

 

 


 

 

 

「狭い……」

「さすがにキツイ。でもあとちょっとだから行くよ!」

 網目の様に張り巡らされたダクト内部でほふく前進を敢行中のハルナと山本は、艦橋メンバーが軟禁されている監視室まで残り100mのところまで来ていた。

 

「ホントに何があったんですか?」

「?」

「いや、前よりも雰囲気というのが前向きになっている感じになっているので、何なのかなぁって思って」

 

「……私の手首に巻いているブレスレット見たでしょ?」

「はい、前まで着けてなかったので何かなぁと思ってました」

「あれね、本当は一つのチェーンネックレスで、リクの母さんの形見なの。今は2つのブレスレットにして2人でお揃いの物を持ってるの」

 

 

「……もしかして、前に言っていた好きな人と言うのは睦月さんの事ですよね?」

 

「バレてた? 私って本当に顔に出るからね。……うん、好きって言えた。両想いでとっても嬉しかったよ」

 

「暁さん」

「うん?」

「……おめでとうございます!」

 

「……ありがとう!」

 ここでは言っていないのだが、婚約しているのだ。一応山本は「2人は付き合っている」と認識しているのだが、実際はそれの斜め上を行く婚約なのだ。

 


 

「着いた、ちょうどこの下ね」

 ダクト移動から20分。ようやく到着したのは営倉の監視室、そのダクトの金網だ。

 

(騒動が落ち着くまで、しばらくここに居て頂きます)

 保安部員の威圧的な声が聞こえ、顔をしかめる。

 でも我慢して、金網越しに敵数を確認する。

 

「人数は変わってませんね。一応2人でアサルトライフルを装備、素早く落とさないと応援を呼ばれる」

「……自信ないけど私も加勢したほうがいい?」

「大丈夫ですよ。私が2人とも落としますので、後で紐でグルグル巻きにしてください」

 

「分かったわ」

「暁さんには彼氏いますからね。怪我一つさせません」

 

 そういって山本は金網を突き破って監視室の中央に躍り出た。

 

(わぁ~凄っ)

 そうハルナが思っているのは、今ダクトの真下で行われている戦闘が原因だ。

 

 ダクトから出た時に保安部員の頭を両足で掴んで頭で床面に釘打ちをさせて、保安部員のアサルトライフルを用いた近接攻撃を軽くかわして顔面に蹴りを叩きこみ、ようやくダウン状態から回復したもう一人の保安部員を再度回し蹴りで沈黙させる。

 

(蹴りくらいなら私も出来るようになるかな?)

 そんなのんきなことを考えていると、戦闘の音が止んで拍手が響いた。

 

「山本さん! どうしてここに?!」

 

(終わったみたいね、今度教えてもらおうかな)

 自分も突き破られたダクトから足を出して飛び降りた。

 

「私もいるよ?」

「「暁さん!」」

 

「ああ~狭かった。太田さんちょっとこの人の上に馬乗りになっててね先こっち縛るから」

 そういって太田に保安部を押さえてもらって武装解除を手際よく済ませて紐で頑丈に縛る。

「怪我の方は、してないみたいね」

「あの、睦月さんの方は?」

「リクはアスカちゃん連れて機関室の方に行ったわ。っと、噂をすればね」

 タイミングよく鳴り響いた端末を手に取ってスピーカーにする。

 

「そっちはどう?」

『終わったよ~。も~恐ろしい恐ろしい。こっち何があったか聞きたい?』

「何かあったの?」

『そりゃあもうアスカちゃんの阿修羅じみた攻撃で3人がノックアウト。容赦なく急所を蹴り上げててゾッとしたわ』

 

「うわぁ、式波二尉。『蹴ったんだ』」

 その場にいる男性一同が震えあがった。

 何を蹴ったのかはさすがに言わないのは、キチンと場をわきまえているのだろう。

 

「とにかく、外にいる古代くんにこのことを伝えないと……」

「ダメ、通信関係は連中が押さえている」

『一応マスターキーでこじ開けれるけど、バレない様にしないといけないからな』

 

「ありますよ! 通信できる場所、ありますよ!」

 相原が良いアイデアを閃いたようで、さっきまでのビックリ顔が嘘のようだ。

『どこどこ?』

「この船の通信関係が押さえられているなら、艦載機の通信システムならいけます!」

 

「さっすがぁ相原さん。とりあえずここから近いのは第3格納庫の方ね、私がナビするけど、狭いとこは苦手かな?」

 

 その後、皆を連れてハルナチームは第3格納庫に向かった。

 

 

 


 

 

 

 ところ変わって艦長室には、保安部員2名が詰めていた。

 こちらも完全武装で隙がない。そして原田一人では何もできない。

 

 そんな状況で何ができるのかと言うと、大人しくしていることだ。

 

 緊張状態が長続きしてそろそろ疲れてきたところで、誰かが入ってきた。

 

「誰だ?」

「星名です」

 

「何だお前か、何の用だ?」

 同じ保安部員だったことで銃の構えを解いたが、そこに予想外の人が乱入してきた。

 

「くぉらぁ! 艦長の往診じゃあぁ!」

「先生!」

 鬼の形相で入ってきたのは佐渡先生。原田は知らないのだが、先ほどまで酒瓶抱えて酔って寝ていたのだ。

 沖田艦長が軟禁されていることに対して、怒りでアルコールが蒸発した。

 

「ダメです。ここには誰も入れるなと」

「伊藤さんの許可はとってますよ?」

 

「ついでに彼の許可も!」

 そう星名が言った瞬間、星名の陰から現れた何かがストレートを放ち、保安部員の頬にめり込ませた。

 保安部員の倒れこむ様子を見た原田はその拳を放った主の方を見てみると、なんとも意外であったが、実に頼もしい人であった。

 

「加藤隊長?!」

 

「貴様っ!!」

「遅い!」

 急襲に激怒した保安部員がアサルトを構えるが、それよりも早くアサルトを叩き落として一本背負いで一気に制圧した。

 

「グアッ!」

 馬乗りになって保安部員を抑え込む加藤と、その様子を確認してから手際よく武装解除して紐で縛る星名の姿に、原田はあっけにとられていた。

 

「加藤隊長、どうして……」

「艦長室に艦長とあんたが軟禁されていると星名から聞いてな、ちょっと奪還しに来たんよ。……それで済まないが……また巻いてくれるか? 痛めちまって」

 

 見ると、右手の甲が赤くなってしまってて、痛々しい様子だった。

 

「助けてくれて……ありがとうございます」

 そういいながら、原田は加藤の手の甲の手当を始めたのであった。

 なお、この時原田の頬が少し赤くなっていたのだが、それを見ていた佐渡先生がデリカシーをあえて無視して聞いたのはまた別の話であった。

 

 

「……状況は?」

「保安部と贖罪計画派の乗組員が反乱を起こし、現在艦橋と機関室が制圧されています」

 この騒ぎで目を覚ました沖田艦長は、目の前で捕縛されている保安部と転がっている防弾ジャケットとアサルトライフルからただ事ではない状況を察して、星名から一連の状況を聞いた。

 

「艦長は重病で職務遂行が困難という事にされています、この船の指揮権は今は航海長の島一尉にあります。ですが航海長には、あらかじめ反乱発生の前に事情を話して自分の協力者となってもらっています」

 

「……艦橋に向かう。佐渡先生、原田君、加藤隊長、ここは任せる。星名准尉、行くぞ」

 体中から怒気を滲ませている沖田艦長は、静かに艦長服に着替え、艦長帽を目深に被って艦長室を後にした。

 

 


 

 

「着いたぁ……」

「さすがにダクト移動は骨が折れますね」

 少々痛くなった背中を解す為に軽く体を反らす。

 左舷第2船体第3格納庫についたハルナ一同は、格納されていた100式の通信システムを立ち上げてビーメラを調査中の古代と連絡を取ろうとしていた。

 

「さすが相原さん」

「どんなにこの船を制圧しようとしても、意外な穴がありましたね?」

 保安部員全員が出張ってもこの船は絶対に制圧できないだろう。なんせ2500mもあるのだから。

 くどいようだが2500mもあるのだ。たとえ通信が押さえられていてもやりようはある。

 

「シーガル、聞こえますか? こちらWunder。シーガル応答願います」

 

『……こちらシーガル』

 

「……古代くん!」

『これより着艦する』

 

「榎本さんお願いしまーす! 上が怒鳴ってきても今はスルーしちゃってください!」

「アイアイサ~佐伯! やれ!」

 

「はい~!」

 榎本の指示で佐伯が第3格納庫のハッチを開放して、コスモシーガルを迎え入れようとする。

 

『第3格納庫! ハッチ解放の指示は出ていないぞ!!』

「お~お~怖い怖い」

 そう言いながら榎本は内線を切って一切のコールを無視した。

 

 


 

 

「航海長、何をやっている」

「調査隊が帰投した。だから受け入れ準備に入っている」

 

「その必要はありません。航海長? ハッチを閉めてください」

「本気で置き去りにする気?!」

「航海長! ハッチを閉めてください!」

 

「現在の本艦の指揮権は、俺にある。という事は、保安部の指揮権も俺にあるという事になるんだ。保安部は今は大人しくするんだ」

 反乱に加担していたと思われていた島が反旗を翻したことは、保安部全体に衝撃を与えた。そして、伊藤にも火をつけてしまった。

 

 

「困ったなぁ、言う事聞いて下さいよ」

 そう言って、手元のホルスターに手をかけた。

 

「伊藤さん?!」

「本当に残念だよ」

 

 

「やめてっ!」

 そう叫んだ新見は走り出し、拳銃を構えた伊藤を突き飛ばした。

 

 邪魔された。

 

「もう終わりにしてよこんなこと!」

 

「これだから、女は、嫌いなんだよぉ!!」

 

 その怒りの銃口は、新見に向けられ、安全装置が外され、引き金に指が掛けられた。

 

 

 そして、一発の銃声が艦橋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……ぬぅぅぅ……!」

 しかしその銃声は誰の手も汚さず、誰の血も流れない状況を作った。

 

「星名……俺を、裏切ったのか……?!」

 

「嫌だなぁ、表返ったっただけですよ」

 艦橋の出入り口で拳銃を構えていたのは、星名だった。

 その銃声は伊藤の構える拳銃を弾き、その状況に一瞬の空隙を生み出す。

 

 

「馬鹿者!! 何をやっとるか!!!」

 艦長室からやって来た沖田艦長の一喝で艦橋要員は一瞬で凍り付き、一瞬で艦橋を制圧した。

 

「儂が寝ている間に起ったことは星名准尉から要点は聞かせてもらった。では、詳しく聞かせてもらおうか」

 

 

 __________

 

 

 

 シーガルが第三格納庫に格納される。

 そこに待っていたのは森に南部、相原に太田。そしてWunder奪還に大貢献したハルナとリク、山本にアスカだ。

 

 シーガルの乗降ハッチが開き、古代と平田、そして岬に憑依しているサーシャが下りてきた。

「古代くん!!」

 

 それを見るなり、森が駆けだし、古代の胸元に飛び込んだ。

 

「もっ森君?!」

「良かった……古代くん……良かった……」

 そう言いながら涙を流している森を見て「何しなければいけないのか」を感じ取って古代は、にやにや顔のハルナがジェスチャーで示す通りの行動を非常にぎこちない動きで何とか実行した。

 

「ええええぇ……」

 

 

「ハルナ、なんかマリさんに似てきたのか?」

「またまた~。2人は意識しちゃってるのよ? 何だか少し前の私みたいに見えちゃってね」

 

 ヘルメットを取り、長い髪を結い直しているハルナは前よりもスッキリした顔だ。

 

「リク」

「うん?」

 

「私のこと、まだ心配?」

「……いや、心配してない。もう気にかけなくても大丈夫と思った」

 そう言いながら、リクはハルナの頭を撫でようとした。

 でも、なぜか撫でる前に手を押さえられた。

 

「ストップ!」

「どうした?」

「そうじゃない。こう!」

 そう言って、ブレスレットを巻いた手を挙げる。

 

「! そう言う事か」

 その意図を感じ取ったリクも同様にブレスレットを巻いた手を挙げ、2人でハイタッチした。

 

 


 

 

「……戦略作戦部第6課、藤堂本部長の直属か」

 

「はい、本部長命令で、Wunder内部で活動する贖罪計画派の動向を内偵していました。彼らの反乱を事前に防ぐことは出来ませんでしたが、流血の事態に至ることなく収束できたのは、航海長の協力のおかげです」

 

「責任は、自分にもあります。今回の航海日程の遅れが艦内を不安にさせ、贖罪計画反乱組に隙を与えてしまいました」

 

 

「その心配、これからは無くなると思うよ」

「え?」

 

「古代がビーメラから持ち帰った情報が正しければ、行程の遅れを取り戻して尚且つお釣りが帰ってくる。夫妻と赤城博士に解析してもらっているけど、そうかからないよ」

 

「「夫妻?」」

 聞きなれない単語に古代と島が首を傾げる。

 

「おっと……今のは、聞かなかったことにしてくれ」

「誰の事かは想像がつく。あの2人かね?」

 

 しかし沖田艦長にはすべてを察されてしまった。

(睦月君、暁君、すまない)

 

 

「……今回のことは、イスカンダルへ向かう我々に課せられた試練だったのかもしれんな」




スーパーイナズマキーック!

という訳で、今回は庵野秀明監督の作品の一つ、「トップをねらえ!」のガンバスターの必殺技を山本とアスカにやってもらいました。
「何やってるんだろう」と思いましたが、たまにはネタに走るのも良かろうと思ったので必殺技を入れました。

修正前は「ライダーキック!」でしたが、エヴァとのクロスなので「トップをねらえ!を入れてもいいんじゃない?」と思いました。

Wonderは完全修復されていません
そりゃあそこまでボロボロにされたのでとても間に合わないのです。
したがって、「修復されてピッカピカの状態にはならない」です。

したがって、翼が折れたりでもしたらそこからは「片翼で飛ぶことになります」

では次の話でお会いしましょう
(@^^)/~~~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。