宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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あけましておめでとうございます。
遅くなりましたが、七色星団決戦です。

七色星団の構成
1 前編
2 後編
3 sideアスカ

と書いていきます。


虹と戦火 前編

『偵察機103ヨリドメラーズヘ 我ヴンダーヲ発見セリ 繰リ返ス 我ヴンダーヲ発見セリ』

 

 

 

 

 

「有視界戦闘とか大昔の空中戦かよ」

発艦した航空機隊は星団7thB付近を飛行していた。

通常、宇宙空間での航空機戦闘はレーダー頼りの戦闘になる。それは、宇宙空間では強力な光源が存在しない限り暗中を飛ぶことに等しいからで、だからレーダーに頼って戦闘することとなっている。

 

しかし、今回の宙域は恒星の光が星間物質で拡散され、まるで大気圏内かと見間違うほどの明るさで満たされている。

従って、レーダー戦闘よりも確実な目視での戦闘に切り替えられ、今こうしてレーダーと目視による索敵を行っている。

「無駄口を叩くな」

「敵さんはどこから来るかわかったもんじゃない。星間物質の影響でレーダーにもゴーストが映るかもしれんからな」

レーダーにゴーストが映るというのは、文字通りありもしないものを認識するというものだ。

星間物質の近くを通っていて、それが機載のレーダーの影響を及ぼしてレーダーにありもしない目標「幽霊」を映してしまう。

先ほどの様な星間物質やイオンの嵐の中ほどではないが、濃密な星間物質の影響でレーダーに影響が出るのだ。

 

「10時の方向に機影を確認! 数40!」

目視で確認された方向を見ると、眼下に編隊を組んで飛行するガミラス戦闘機が見えた。

 

 

「敵さんを出迎える。命落とすな敵落せ!」

 

 

『『ラジャー!』』

加藤の号令で一斉にガミラス機に飛び掛かり、七色星団の一角は敵味方入り乱れる大混戦となった。

数は明らかにガミラス側が勝っている。しかし、それを覆せるかもしれない練度がWunder航空隊にはある。

 

しかしWunder航空隊も人員不足で新人もいる。だが航海中に訓練を重ねてきた彼らは、多少の自信をもって挑む姿をしていた。

大混戦になったWunder航空隊は、自然にいくつかの群体に分かれ、おとり役と攻撃役に徹し始めた。

 

 

 

 

 

 

「第二次攻撃隊 、発艦準備を急げ。繰り返す第二次攻撃隊は発艦準備を急げ」

ランベアの甲板上に駐機された攻撃機DWB87スヌーカに多数の航空機パイロットが乗り込み、各々準備が出来次第リニアカタパルトで発艦していく。

 

対艦用の小型ミサイルを多数懸架したこの機体は、今回の作戦に合わせて非常に大量に搭載している。

Wunderのその大きさも相まって、機体に搭載可能なギリギリの量のミサイルを搭載して、全機がドメラーズ三世の正面に続々と集結していく。

続いてバルメスからもスヌーカが発艦していき、紫色を主張するその機体は大規模な群れと化した。

 

 

「フォムト・バーガー。発艦する」

スヌーカ隊のリーダーを務めるバーガーも、部下のメルギとスヌーカに搭乗して発艦していく。

その後も矢継ぎ早に発艦が続き、Wunderに飛び掛かることなく全ての機体がドメラーズ三世の正面で陣形を組んだ。

 

 

「フォムト・バーガーからドメラーズへ。第二次攻撃隊全機配置に着いた」

『了解。全機転送に備えよ』

 

 

 

 

 

「第二次攻撃隊配置につきました」

「偵察機からの情報を入力、転送座標入力、ヴンダー直上」

 

「物質転送システム起動します!」

 

 

(今のところの成功率は70%。確実ではないが君の欲しがったものだ、どう使うのか楽しみにしていようか)

 

成功率は現段階で70%。無人機を送り込んで指定座標に転送できたのは10回中7回。残りの3回のうち2回は異なる位置に転送され、残りの1回は宇宙規模の迷子になった。

物質転送機はまだ試作段階で、その技術はまだまだ改善の余地がある。

 

なぜ物質転送機は2機必要なのか。それにはこの転送機の途方もない開発記録を語る必要があるのだが、端的に言えば、「1機のみで物質転送波を照射したら、指定座標に飛ばなかったから」である。

 

 

そもそも物質転送機は、転送波照射装置のみでの運用は不可能である。

通常ワープできないものをワープさせるため、転送対象の周りに次元の歪みを創り出す必要がある。

その為、転送波照射装置を搭載している艦艇は主機を一時的に過負荷状態にする必要がある。

過負荷状態では、主機を中心にして母艦の周りに次元の重複領域が生成される。そこに転送波を照射することで、次元の穴に物体を送り込んでワープできないものをワープさせている。

 

 

「物質転送機、エネルギー充填完了!」

 

「第一次攻撃隊、転送に備え! 3、2、1、照射!」

ドメルが照射スイッチを押し込むと、転送波照射装置が激しい光を放った。

カメラのストロボに近いだろう。異なる位相の光を断続的に照射して、指定座標に航空機を送り込んでいく。

 

 

航空機をワープさせて奇襲、そして数をそろえることで波状攻撃を実現した戦法、これが、長らくドメルが温めていた「戦場を変えられる戦法」だった。

 

 

 


 

 

「まるで沸いたように現れる」という言葉があるが、今置かれようとしている状況はまさにそれだろう。

突如レーダーに反応が現れ、艦橋が一瞬狼狽える。

 

「敵機直上!!」

 

すかさず対空防御兵装が起動、パルスレーザーが航空機を撃ち落としにかかる。しかし余りにも数が多すぎる。まるで大きな獲物に飛び掛かる蟻のようだが、数の力は流石に侮れない。

 

「博士! お願いします!」

「MAGIにパルスレーザーやらせるわ!」

赤木博士がコマンドを打ち込みエンターキーを押した瞬間、あらかじめ搭載しておいたプログラムが始動した。

パルスレーザーが各基独立して旋回と仰角の調整を行い、次々に敵とミサイルを落とし始めた。

 

まき散らす様に打つのではなく、正確無比な狙いで確実に落としていく。

 

 

『艦橋、聞こえるか。アルファ2山本出る!』

事態の急変に対し、山本のコスモゼロ改が緊急発艦の準備を始めた。

 

しかしそれを阻止するかのように第一格納庫のコスモゼロ用カタパルトがミサイルで吹き飛ばされた。

ゼロ改はカタパルトに乗る前で被弾は免れたが、カタパルトがない以上まともな発進が出来ない。

 

「第一格納庫カタパルト破損!!」

「これでは出せないですよ?!」

 

 

「ちょっと待って! 聞こえる?! そっちのロック無理矢理外して出すよ!」

リクがコンソールを叩きデバックモードに切り替える。

即時にカタパルトの動作プログラムに繋いでリフトを上昇させる。

「タイミングはそっちに渡す! 噴かして!」

リフトを引き千切る勢い程の勢いで、山本はメインスラスターを噴かしていく。

急激な負荷にリフトのセンサーが緊急停止を提案してくるが、有無を言わせず黙らせる。

 

『アルファ2山本出る!』

そしてリクがエンターキーを叩いた直後にゼロ改が乗っていたリフトのロックが勢いよく外れ、暴力的な推進力に一瞬よろけながらも、すぐさま姿勢を安定させて飛び立った。

「アルファ2強行発艦を確認! ステータスに異常なし!」

 

『こちら式波! EURO2出ます!』

 

「了解した!」

 

 

「これで何とかなるといいたいところだけど、数が多すぎるわよ?!」

パルスレーザー1基につき航空機1機。その縛りがある以上、この数を捌ききれるはずがなかった。

いくらMAGIの完璧な照準があってもじわじわと対空砲塔が削られていく。

 

「左舷第二前方パルスレーザー破損!」

「左舷第一副砲に直撃弾!」

「第一主砲損壊!」

「ダメージコントロール!」

 

「対空三式撃ち方始め!」

古代の指示で第一第二主砲に対空用三式弾が装填され、爆炎と衝撃と共に放たれる。

その数瞬後時限信管が作動して敵航空機群の中央で起爆、一瞬の爆炎を生み出す。

 

 

しかし、その爆炎に隠れて放たれた数発のミサイルを見落としてしまう。

それらは数個のペアに分かれ、Wunderのとある数箇所を完全に破壊した。

 

 

 

 


 

 

 

「フォムト・バーガーから作戦行動中の各機に通達。各機、ミッションプランに従い攻撃を開始しろ! 奴の目と耳は、俺が貰う」

 

 

出撃したスヌーカはランベアとバルメス合わせてちょうど60機。

満足に配備することが出来なかったが、これでも一隻の船に雷撃を仕掛けるにしてはやりすぎな規模だ。

だが、今回は相手が相手。かつてない規模の超大型戦艦をしとめる以上、規模の問題は考えていられない。

 

 

『目標直下!』

 

「よし! 全機、目標の天頂方向から急降下雷撃を開始! 撃ち尽くした奴から全力で後退!」

 

『ザーベルク!』

隊長機のスヌーカからそう通達したバーガーは、スヌーカの操縦桿を大きく倒して急降下を開始した。

それに反応したWunderが対空火器を作動させ、宙域はあっという間に赤い雨で満たされた。

 

スヌーカから対艦ミサイルが放たれるが、それはWunderの対空防御に阻まれる。

 

 

「濃すぎるだろ弾幕……! プラン2でいく! 今から転送する位置情報にミサイルの誘導情報を設定しろ! そこを集中的に叩け!」

 

 

バーガーの送った情報はWunderの外見情報。そして戦略上弱点ともいえるような箇所の情報だった。

「メルギ! 行け!」

 

「誘導情報付与! いけぇ!!」

バーガーとメルギの乗るスヌーカから放たれた誘導ミサイルがとある一点に命中する。

一点集中の一撃は大爆発を起こし、発射したスヌーカも爆炎によろけそうになった。

 

「お前ら! 今俺らが撃ったとこに高貫徹で集中攻撃しろ!」

 

練度の浅いパイロットしかいないこの航空隊でも、この程度の事は難なくできてしまう。

複数機のスヌーカが自然とグループに分かれ、バーガーから転送されてきたとある箇所への攻撃を続けた。

 

作戦上では、高貫通誘導ミサイルはそこまでの数はない。

プラン2ははっきり言って博打だ。

 

 

「撃ち尽くした奴からさっさと下がれ! 的になるぞ!!」

Wunderから砲弾が放たれ、それの爆発でスヌーカが火だるまになる。熟練のパイロットは少ない。経験年数が長いものがいても大体が老人。満足いく人員が少ないこともあって、かなりのペースで落とされていく。

 

『後方敵機接近!』

「言わんこっちゃない!」

さらに三本角を機首に生やした戦闘機がスヌーカの群れにミサイルを多数叩き込んでいき、懸架しているミサイルも巻き添えにして爆発していく。

対抗して機首と主翼に内蔵された機関銃で応戦するが、着弾したと思ったらすでに背後に回られていてそのまま被弾。まったく捉えることが出来ない。

そしてスピードがおかしい。当たったと思ったら既に背後に回られているから機動力が段違いすぎる。ドックファイトに長けているとは言えないスヌーカは、まるで猛禽に食われる小鳥だ。

 

 

『目標命中確認! このまま叩きます!』

「よし! 各機そのまま潰していけ!! 三本角のやつに常に気を配れ!!」

バーガーの機体も誘導ミサイルを放ち、目標ポイントを豪快に潰していく。

 

他の機体も防壁を貫通して目標にミサイルを叩きこむ。

 

誘導ミサイルが次々に突き刺さり盛大に爆発煙を上げていく。見かけでも分かるくらい明確な損害を与えることが出来ている。

 

 

『目標破壊確認!』

 

「よぉし! こっちでアンテナを頂く! お前らはさっさと退避しろ!」

バーガーとメルギの駆るスヌーカから、最後の誘導ミサイル群が放たれ、Wunderのよく目立つアレイアンテナの基部に正確に命中した。

 

 

「目標の破壊を確認! 全員引け! 引け!!」

全てのスヌーカが、まるで潮が一気に引いていくかのようにWunderから離れていった。

途中まで三本角が猛追していたが、防空が疎かになるをの嫌ってか追撃をやめた。

 

「何機落ちた?」

 

「……34です」

 

 

「そうか……撤収する」

 

 

 


 

 

 

その瞬間、艦橋が真っ暗になった。

「外部カメラ全機破損!」

 

「アレイアンテナ破損レーダー精度低下! 波動防壁制御ダウン!」

両舷のアレイアンテナに直撃弾を受け、波動防壁の展開が出来なくなってしまった。

 

カメラが全て破壊されてしまい、現状何も視認できない。

「不可視波長は?!」

「いけます! スクリーンに投影します!!」

 

赤外線、熱源、イオンの流れ、その他多数の膨大な情報から構成される情報が真っ暗なスクリーンに投影され、熱反応から辛うじて航空機反応を確認できる。

 

「センサー系も潰されたら本当に盲目になりますよ?! それに急造品なので、対ミサイルのフレア等の判別が効きません!」

 

 

「でも、奴ら一体何処から……」

 

「……ワープだ」

 

「そんな?! あんな小型機でワープなんて?!」

「……ワームホールを無理矢理開いてそこに航空機を放り込めば行けると思うけど……あの数をどうやって……?」

敵は戦闘機で、波動エンジンに準じたエンジンなんてものは積めない。

それなのに急に出現してきて急降下攻撃を食らわせに来るのはあまりにも脅威だ。

 

 

「こちらの認識の外側から戦術を展開しているようだ。敵の指揮官は手強い。総員目視による警戒に努めよ」

 

 

「肉眼で……ありますか?」

 

 

「……船の目と耳を奪われた以上、最後に物を言うのは、人の知恵、人の力だ」

レーダー精度は大幅に低下、おまけに外部環境カメラは根こそぎ潰された。でも、こうして知恵で仮の視界を確保した。

それにWunderには900人ほどの人間が乗っている。全員は無理でも多数動員すれば見えない部分の索敵も可能だ。

 

 

「このあたりにイオン乱流の本流があるはずだ。集めたデータを解析、宙域を特定せよ」

 

「了解!」

 

「各科に通達! 本艦は現在外部環境カメラを破損し、環境情報の半数を消失した! 各科は最低限の人員を残し、船外を確認可能な部屋に移動して索敵活動を行え!」

 

 

 

_____________

 

 

 

 

「よぉーし配置に付け! いいか?! 一機たりとも見逃すな!」

 

「「了解!!」」

甲板部、技術科、戦術科、保安部、航海科、全ての部署の手の空いている人員が全員索敵に回され、艦外を確認できる全ての部屋に索敵班が配置された。

 

その一つ左舷の展望室には、岬に憑依したサーシャが虚空を眺めていた。

 

 

「サーシャさん」

 

「ここは危険です、戻ってください。ユリーシャさんも待っています」

でも、サーシャはそのまま見ているだけだった。

 

 

「……戻って……」

星名はもう一度声をかけるが、それはサーシャにかけられた言葉ではなかった。

 

 

_____________

 

 

 

 

「どうだバーレン? 久しぶりに古バケツを飛ばす気分は」

 

『壮快じゃ、老いたとは言えど、腕は衰えんというところを貴様に見せてやる!』

それを聞いたハイデルンは思わず面白くなり高笑いをしてしまう。

 

古バケツというあだ名がついたこの重爆撃機ガルントは、全幅83.3mのかなり大型の部類に入る機体だ。

航空機を用いた戦闘は速さが命であり、対艦戦闘を行う時にお呼びが掛かるとは到底思えない。

 

しかし、今回の戦闘でお呼びが掛かったのは、対Wunderに対して実に強力な武装をあったからである。

 

 

『ガルント発艦する!』

ゲルバデス級ダロルドから発艦したその古バケツは、その巨体と懸架しているその重量物で若干上昇に時間がかかったが無事に上昇。

続いて、ゲルバデス級ナグルファルからもガルントが発艦して、ドメラーズ三世の頭上を飛び越える。

 

 

 

「作戦第2段階に入ります。両機転送に備えよ!!」

 

 

 

作戦第二段階は、あまり日の目を見ない重爆撃機による対艦攻撃。しかし懸架しているそれでは迎撃されてしまう。だが、スヌーカ隊の急降下雷撃攻撃によってWunderは目と耳を失っている。これならば回避不可能迎撃困難な一撃となりうる。

 

 

数秒後、2機のガルントは歪みに飲まれ、戦場へ飛んだ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

《警告 空間波動エコーを検知》

 

 

「えっ?! 正面何か来ます!!」

Wunderのセンサー系が空間波動エコーを検知した。その直後に突然何もない所から熱源が2つ湧いて出た。

エコーの大きさまでは分からないが、確実に何か来た。

 

 

『航海艦橋索敵班から艦橋! 正面に重爆2! 大型弾頭装備!!』

航海艦橋の窓から索敵を行う班から一報が飛び、敵の正体が明らかになった。

先ほど攻撃してきたミサイル装備の攻撃機とは違い、かなりの大物らしい。

「アルファ2! 重爆機を迎撃!」

『了解!』

 

山本のゼロ改が急速加速をかけて重爆機の迎撃に向かうが、一機ではどうにもならない。2機の重爆撃機から大型弾頭が発射され、Wunderに向かって一直線に進んでいく。急速反転で大型弾頭に機首を向けるが弾頭の方が一手早い。

 

 

 

「熱源移動! 敵大型弾頭です!」

 

「南部、熱源センサーと連動させて弾頭を迎撃! VLSで仕留めろ! 総員対閃光防御!」

「了解! VLS撃てぇ!」

VLSが甲板から発射され、熱誘導に従って大型弾頭に突き刺さった。

その爆発は一瞬太陽がて来たかと見間違うほどで、サーモセンサーが拾った高熱で全周スクリーンが一瞬真っ白になった。

 

しかし、広大な熱反応に身を隠すように2つ目の弾頭が突き進んで来る。

 

 

そのまま大型弾頭はWunderに直撃した。

 

 

 

 

「敵ミサイル不発!」

「不発……?」

「いや……違う」

 

「不発弾を解析。あの指揮官なら……これで済まないはずだ」

 

『敵大型弾頭ハ、本来兵器トシテ制作サレタ物デハナイト推察サレマス』

「兵器じゃない?」

『敵大型弾頭正面ニ用途不明ノハッチヲ確認。尚、弾頭ニシールドマシンニ類似シタ構造ヲ確認シマシタ』

シールドマシンというと分かりにくいかもしれないが、要はドリルだ。

その巨大な弾頭はまるでコルクの栓のように右舷波動砲口を塞いだ。

 

 

「シールドマシン……波動砲無力化狙いで掘って来るってことか」

 

「それと、空間波動エコーって……これ感知すれば行けますよね?!」

 

 

「次元震と同様、感知さえできれば迎え撃つことは可能だ。感知システムの構築をやってくれるか?」

沖田艦長がハルナとリクに目を向け、はたから見れば無理難題を頼む。

でも2人の力量と実績を見込んで頼み込んでいるのであって、決してダメ元で頼んでいるのではない。

 

 

「「了解!」」

 

「あ、マリさん! センサーデータの統合表示お願いします!」

「任せんさい!」

緊急の任務を受けて、ハルナとリクは急いでベルトを取り外して自由になり、器用に泳いで戦闘艦橋を出た。

 

 

「……艦長、意見具申してよろしいでしょうか?」

2人が戦闘艦橋から出ていった後、真田はとあること艦長に提案した。

 

 


 

 

 

「キャプテン~調理進んでるっすねぇ」

「手際が良いな。そろそろ頃あいだ。浮上してお客さんを切り離すぞ」

 

自分しか生き残れない次元断層で長々と身を隠していた次元潜航艦は行動を開始した。

今回与えられた任務は、偵察。そしてイスカンダル人をWunderから保護すること。

その為に召集がかかったのが、第442特務小隊。

 

彼らの容姿は地球人とうり二つ。この時点で地球の船に忍び込む上での問題である「肌の色」をクリアしてしまっている。

そこで彼ら特務小隊に声がかかり、青い肌には不可能な潜入を今回任されたという事になる。

 

 

 

「この顔をよく覚えておけ」

 

「綺麗な人ですね」

 

特務小隊の目の前にあるホログラムには、確保対象であるユリーシャとサーシャのホロ画像が投影されている。

その姿はイスカンダル王族の伝統的な衣装と、ミレーネル・リンケが潜入した際に取得した艦内服情報から作成した姿となっている。

 

「惚れるなよノラン」

ユリーシャのホロ画像を見て頬を染めていたノランを見るなり、べリスが茶々を入れる

「なっ! 誰が?!」

 

 

 

B特殊戦群所属第442特務小隊、目標はユリーシャ・イスカンダルとサーシャ・イスカンダル双方、もしくはどちらかの保護。

Wunderの目と耳を潰したことを確認したことで、作戦実行の最低条件である「まず気づかれない事」をクリアした。

 

次元潜航艦は急速浮上行動に入り、甲板構造物のみを通常空間に露出させた。そして、甲板上に露天駐機させてあったFS型宙雷艇を浮上させる。

FS型宙雷艇は船体を90度傾けると、そのままWunderにコバンザメの様に張り付いた。

 

 

「ヴンダーに接舷成功。ハッチ解放します」

「慎重にな。目と耳を潰したはずだが奴は削岩弾を迎撃していた」

 

「攻撃隊の方は潰し切れていないんですか?」

 

「恐らくな。センサー頼りで大雑把だが、あれは確かに迎撃行動だった」

レーダーと外部カメラと思わしく個所は航空攻撃による奇襲で潰されたはず。完璧な盲目と化したはずなのにWunderは特殊削岩弾の一発を迎撃していた。

 

 

「解析完了、ハッチ解放します」

メックが操作していたタブレットに《ロック解除》の文字が表示され、目の前のハッチが解放された。

そのまま立体機動用のスラスターで慎重に潜入して、無事に船内に進入。即座に船外服を脱ぎ捨てて、ミレーネル・リンケが潜入した時に取得した情報から制作したWunderの艦内服に着替えた。

 

 

「ノラン、お前はエアロックを確保しろ」

ゲルガーがノランに待機の指示を出し、残りの隊員を連れて艦内への潜入を開始した。

 

 

 


 

 

 

《次元震を感知 相対位置、至近》

 

「次元潜航反応を確認!」

タブレットを凝視していたマリが声を上げた。

Wunderが拾った次元震は、以前原始恒星系で遭遇した次元潜航艦の反応と同じものだった。

即座にライブラリで照合して正体が判明した。

 

「対潜警戒。位置は?」

「本艦を中心にして7時の方向です。Y軸はマイナスです」

 

「足元か。第1格納庫観測室、確認できるか?」

 

『こちら第1格納庫観測班。角度的に死角になってます!』

見えない位置からの浮上。レーダーも効かない全周スクリーンでも確認できない以上、下手に手出しできない。

 

「次元潜航反応……消えました」

「いったい何がしたいんだ……?」

古代はセンサー軍団が感知した外部情報を睨み、頭を掻いた。レーダー機能がほぼ死んでいるし、目視で確認できない死角も存在している。

ただハッタリをかけるために浮上して潜航をしただけかもしれないし、そうでないかもしれない。

 

沖田艦長の言うように人の力と知恵で何とか視界をこしらえたが、それでも見えていないところがある。

 

 

見えていないところ……

 

 

「真希波さん! 艦体全体をスキャンしてください!」

 

「艦体?! 前みたいに接舷されているの?」

「直感ですけど、お願いします!」

 

「……30秒頂戴!」

30秒と言う戦場では短いようで短くない時間を提示して、船体全体のスキャンを行う。真っ暗な全周スクリーンにWunderのデジタルワイヤーフレームが投影され、被弾箇所以外の各ブロックが「異常なし」を示す緑色に点灯していく。

 

「スキャン完了、艦体に異常……?! 左舷第19区画の舷側に未識別艦船の反応を確認! 同時に一番近い非常用ハッチの開閉記録が更新されています! 最新の記録で5分前です!」

 

第19区画のみが「異常あり」の赤色を示し、異常個所のスキャンから生成したCG画像と、不審な反応として挙がった非常用ハッチの開閉記録のログが表示された。

 

 

「保安部を第19区画に急行。侵入者を確保、最悪の場合は排除しろ。古代、指揮を取れ」

「了解。南部、後を任せる」

 

「了解!」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『総員、白兵戦用意。総員白兵戦用意』

MAGIの人工音声が艦内中に鳴り響き、あらゆる通路で警告灯が灯り始める。

第19区画に侵入者を確認したことで艦内は慌ただしくなり、保安部が非常時用のアサルトライフルを構えて第19区画に直行していく。

 

その緊急警報音を聞いていたのは潜入中の彼らもであり、それは彼らにとって侵入がバレたという事を意味する。

 

「隊長、思ったよりも早いですね」

「勘が良いな。だが、切り札は切らせてもらう」

 

ゲルガーが偽装艦内服のポケットから取り出したのは1つのスイッチ。少し硬い押しボタン式のスイッチを親指で力を込めて押し込んだ。

 

「うむ、起動した。総員いつでも銃を抜けるようにして置け」

 

 

____________

 

 

 

ゲルガーがスイッチを押し込んだ瞬間、Wunderの右舷波動砲口に突入した大型弾頭、その外装となっている大型シールドマシンが作動した。

 

波動砲口を塞ぐ絞り羽に激突すると、その先端を瞬く間にめり込ませ、その隙間から虹色の位相光をまき散らし始めた。

 

 

 

『緊急警報 右舷波動砲薬室内圧力急速低下を確認』

「敵大型弾頭が薬室に向けて前進していきます!」

 

「安全弁閉鎖急げ! 右舷波動砲制御室総員退避しろ!」

徳川機関長が大急ぎで波動砲制御室に指示を飛ばし、減圧の続く制御室から全員を退避させた。

 

大型弾頭、いや削岩弾はそのままの速度で薬室内を掘り進め、波動砲最終安全装置を大きく歪ませながらその先端部を制御室内に覗かせた。

 

「敵弾頭先端部、制御室内に露出!」

 

「マズい……弾頭の掘削部が完全に制御室に入り込めば除去は不可能だ。新見君急いでくれ!」

 

『まもなく制御室に到着します!』

戦闘艦橋に響いたのは、紛れもなく営倉にいたはずの新見だった。

 

 

 


 

 

 

真田が提案したのは、敵の大型弾頭を手作業で除去する事だった。弾頭は本来兵器用として作られたものではなく、いわゆるシールドマシンとして制作されたものだとアナライザーは推測した。その証拠として、兵器では付けないようなハッチが確認された。ならば、そのハッチを開いて内部で弾頭の時限システムに侵入、タイマーを停止させることが出来るのではないか?

 

しかし今人手を割くわけにもいかず、艦橋は手一杯でハルナとリクは空間波動エコーの解析に向かってしまった。自らが出向くことも可能だが、大半を索敵に割いているため補充人員が出ない。

 

そこで白羽の矢が立ったのは、現在拘留中の新見だった。

 

 

 

 

弾頭が掘削を開始する少し前、アナライザーは技術科カラーの船外服を持ち出して、営倉に向かった。

 

そして新見のいる営倉のロックを自分のコードで解除した。

 

『新見サン。手伝ッテクダサイ。敵大型弾頭ガ船ヲ破壊スル可能性ガアリマス』

 

「……爆発音で何が起こっているのかは理解しているわ。今更私に頼むの? 裏切り者に」

 

『今ハ人手ガ足リマセン。猫ノ手モ借リタイ状況ナノデス』

そう言いながらアナライザーは、抱えていた船外服を新見に押し付けた。

 

「……状況を教えて」

そう言うなり、船外服を素早く着てヘルメットを装着した。

 

 

 

 

 

『敵大型弾頭ガ波動砲口ヲ塞イデイマス。波動砲口のメンテナンス用ハッチカラノアプローチヲ考エマシタガ、残念ナガラ弾頭ガハッチソノモノを塞イデシマッテイマス』

 

「船外からミサイルで吹っ飛ばせなかったの?」

 

『敵弾頭ハカナリノ高威力ヲ持ッテイマス。アルファ2ガ迎撃シタ際ニ、相当量ノ熱量ガ観測サレマシタ』

 

「外からミサイルで処理は無理ね」

 

『最悪ノ場合ハ、弾頭ガ薬室ヲ貫通シテ制御室ニ侵入シタノヲ見計ラッテ、弾頭内部ニ侵入スルシカナイカト思ワレマス』

 

 

「……それしか手がないと思うわ」

取りえる手段がまさにその最悪の場合しかないという事に、ヘルメット越しに頭を抱える。

戦闘中でトラムリフトは安全のため停止。従って営倉のある第18区画から艦首にある右舷波動砲口制御室までダッシュしていかないといけない。

 

だが不幸中の幸いと言ったところか、第一波攻撃によって慣性制御にも支障が出て現在0G状態。走るよりも早く移動ができる。

 

 

曲がり角を曲がって、手押しの反動で加速を付けようと思ったら、人にぶつかりそうになった。

 

「睦月君? 暁君?」

「新見さん?! どうして?!」

 

「波動砲口に詰まったミサイルを取りに行くのよ!」

「ミサイル? あの弾頭ですか?」

 

「そっちは?」

「解析室! あと新見さん。船にガミラス人が侵入してます。一応護身用で持っててください!」

そう言うとハルナは自信の拳銃を取り出して新見に持たせた。

 

「これ渡して貴方たちは大丈夫なの?!」

 

「一丁あればなんとかなります。ハルナは僕が護衛します」

そういってリクは自信の腰ベルトの革ホルスターを叩いた。

 

 

「分かったわ。気を付けて!」

そう言って新見は反動でさらに加速して波動砲制御室に向かった。

 

「さて、解析室まであと100m……」

その瞬間、リクは何かの気配を感じて一瞬言葉が失せた。

明らかに地球人ではない、平常心を保ってスッと通った3人の集団が、「船外服を着ていなかった」。

 

 

不審に思って声をかけたくなるが、そこを堪えて彼らの後ろ姿を確認してみると……

 

 

 

 

 

 

 

ホルスターには、決して地球製とは言えない拳銃が収まっていた。

 

 

 

(侵入者?! えっまさか?!)

 

危機感を覚えてとっさにハルナを引っ張って近くの物陰に隠れた。

 

(どうしたの?!)

(例の侵入者がいた?!)

 

(でも艦内服着ていたよ?!)

(どうにかしてコピー品と作ったんだ! しかも肌色が一緒!)

 

物陰で読唇術で話し合い、こっちが気付いたという事をどうにか隠せていることを確認したリクとハルは、艦橋に向けて通信を開いた。

 

 

 

「艦橋、侵入者を発見。ザルツ人系、数3。位置は第17区画。保安部を」

『了解! そのまま待機を!』

「了解」

(解析室あと少しだったのに……)

(後で謝ろう。これは仕方ない)

 

ホルスターに入った拳銃をそっと取り出しながら、そう呟いた。

 

 

_____________

 

 

 

「君たち!」

船外服を着ていない不審な3人を見て、星名は呼び止めた。

岬に憑依したサーシャを安全な艦中枢部まで護衛していたのだが、その時に船外服を未だに着用していない航海科3人を不審に思った星名は、直感的に「ヤバい」と感じ、サーシャを背に庇って呼び止めた。

 

 

「船外服着用の指示が出ていたはずです。出来るだけ急いで着用してください。……それと、何処の部署ですか?」

 

 

ホルスターから拳銃を抜き、確信をもってそう聞いた。

明らかにこの船の人ではない。地球人と全く同じ見た目をしているが、諜報に特化して保安部として全員の顔を覚えた星名からしてみれば、こんな人は知らない。

 

 

こっちは気づいているぞ。と察してもらうために、銃の安全装置を聞こえるように解除する。

最悪殺すしかない。

 

 

サーシャを今守れるのは星名のみだ。

 

 

「我々は……」

侵入者は、ホルスターから一瞬で銃を抜いて星名に向けた。星名もそれに反応して引き金を引こうとするが、相手の方が一瞬早く引き金を引いて星名の肩のあたりを射抜いた。

 

 

「目的のために手段を選ばない者だ」

 

 

そう言って星名の額に銃を向け、引き金に指をかけようとした。

 

 

 

「何をしているの?!」

その声の方向にいたのは森だった。船外服を着たままで拳銃を構えて険しい顔をしていた。

しかし、敵の増援に怖気づくどころか、彼らはニヤリと笑う。

 

 

「イスカンダル……!」

こうも早く目標が自ら出てきてくれることに歓喜した彼らは、自然と笑みが零れた。

 

その雰囲気を怪しく思った森が拳銃を両手でしっかりと構え直すが、気配を悟られぬように回り込んだ敵に気付かなかった。

 

「ご無礼」

その一言共に、腕に注射器を刺されてしまう。驚くことに船外服を貫通してしまうほど細く、注射痕が全く残らない注射針であり、いとも簡単に麻酔を投与された。

 

強烈な眠気に抗う事も出来ずに森は意識を手放してしまった。

 

 

「目標確保。帰投するぞ」

 

 

 


 

 

 

『第17区画で発砲反応確認! 未登録の発砲反応です!』

恐れていたことが起こった。侵入者と誰かが接触し、その誰かが撃たれた。

 

 

「真田さん! 第17の隔壁閉鎖出来ますか?」

『待て! 付近に森君と星名君、サーシャがいる! 人質にされかねない!』

 

完全に閉じ込めた場合、人質を取られて要らぬ血が流れる可能性が高い。

敵の目的が分からない以上下手には動けない。

 

「敵の位置は?」

 

『第17区画だ! 森君を連れている!』

 

 

 

「足止めします……!」

『待つんだ! 敵は相当な手練れだ! そこで待機しろ! 命令だ!』

「それでもやります!」

 

真田からの怒号が飛ぶが今は選んでいられない。通信を切り、両手で拳銃のグリップを強く握った。

酷く手元が震える。拳銃なんて国連宇宙軍編入の時に多少やっただけ。2人とも人を打つような訓練はしていない。

 

大きく何度も深呼吸をして安全装置を解除して、覚悟を決めた。

 

「まずは負傷者を安全な所に退避させる。負傷者の方は任せる。僕は……これで撃つ」

落とさないように物凄い力で握っている拳銃に目を落として、歯を食いしばる。

 

 

 

「来るぞ……今だ!」

侵入者が角から顔を出すタイミングで迎撃をする。

威嚇射撃として当たらないように壁に着弾させ、そのまま顔を出させないように牽制射撃をする。

 

その隙にハルナが、負傷した星名と気を失ってしまっているサーシャを通路の隅に引っ張り込んで保護をする。

 

保護を確認してから、リクも一旦物陰に身を隠し警戒を続ける。

「大丈夫、脈と息はあるわ」

船外服の首元に指をあて、生きていることを確認したハルナは、即座に通信を入れた。

 

 

「艦橋、侵入者は第17にいます。星名君と岬さんを保護。医療班の待機を」

『……今度こそそこで待機。保安部が第16区画を移動している。彼らに任せるんだ』

通信越しで真田の安堵した声が聞こえてきて、ハルナとリクは後で真面目に謝ろうと思った。

咄嗟の行動で星名と岬を救えたのは良かったが、真田に大変迷惑をかけてしまった。

 

 

そのまま飛び出したりせずに通路脇から牽制射撃を続けようと、脇から顔を覗かせると、何かがこっちに飛んでくるのを見た。

 

 

 

 

 

 

それは、明らかに手りゅう弾だった。

 

 

 

 

 

 

「マズい!!!」

 

逃げようにも通路の門では逃げられない。大急ぎでそれを投げ返すが、それを見切られていたのか投げ返した手投げ弾は瞬時に宙で狙い撃たれ、爆発がリクを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆炎が晴れたそこにあったのは……船外服が破れ、左腕を真っ赤に染めて宙に浮かぶ誰かだった。




難作でした。

七色星団決戦は原作でもシーンの移り変わりが非常に多く、「どう書くか、どう改造するかと言う観点」から、相当時間がかかりました。

しばらくはまたフリーなので、2月に入るまでには七色星団を書ききれそうです
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