宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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皆様、大変お待たせしました。
ここまで遅くなってしまった経緯についてお話しします。

① オリジナルとしてレプタポーダを書いたため。
② Androidアプリの開発のため。
③ のちに出さないといけない物語を三本程試作していたため

ほぼほぼ言い訳みたいですが、本当にごめんなさい。


それでは、「フリングホルニ」始まり始まりです


フリングホルニ

 銃声が響き、爆発音が耳を突く。人が倒れる音がする。震動が止まない。

 第17収容所惑星は混沌に満ち満ちている。

 

 

 人が倒れ、血が流れ、銃器が火を吹く。

 古代進は、その混乱の真っ只中にいた。

 

「囚人が反乱……?!」

「古代戦術長。……一旦貴方の事を何も思わない事にします」

 伊藤が発した言葉の意味を、古代はすぐに掴む事が出来なかった。しかし、伊藤が手錠を付けたまま取った次の行動ですぐにその意図を理解した。

 

 近くにいたガミロイド兵の首に自身の手錠を引っ掛けて強引に引き倒し、起き上がられる前に首元を思い切り踏みつけて首と胴体を泣き別れにした。

 それを見た古代はその意図を理解して、同じようにガミロイド兵を無力化する。足元には無残な姿となったガミロイドの残骸が転がり、機関銃もその手に残されていた。

 

「お前……」

「サッサとその辺の銃火器を頂戴しましょう。無防備のままでいようと考えるのは馬鹿の考えることです。ハイそこの貴方も行きますよ」

 面倒臭そうに伊藤が視線を向ける先に藪がいたが、彼は蹲って只管怯えるしかない状態になり果てていた。

 

「こうなってしまってはどうにもならないんですよ人間って。行きますよ」

「待て、藪を置いていくのか?!」

「お荷物なんですよ、何もできない状況ではね」

 

「立てよ藪! 死にたいのかよ!」

 

「……にたく……ですよ」

「何ですって?」

 

「俺だって死にたくないですよ! いきなりこんなことになってもみくちゃにされて死ぬなんてゴメンですよ!!」

 藪がキレながら怒号を浴びせると、それを真面に受けた伊藤はいつも通りの人を見下すような笑みとは違い、引き締まった顔をした。

 伊藤は先程首と胴体を泣き別れにしたガミロイド兵から銃器を拝借し、ガミロイドの残骸に対して死体撃ちをする。撃てる事を確認した伊藤は古代と藪にも同じ物を投げて寄越した。

「死にたくないなら行きますよ?」

 伊藤は古代と藪の手錠の繋ぎ目を機関銃で器用に壊すと、古代にもそれをやらせて拘束を解いた。

 伊藤が先頭となり、3人は兎に角生き残る方向へ進み始めた。

 

 

 


 

 

 

「誰だ?! おいやめんか離さんかぁ!!」

「しばらくここにっ……居てくださいね?」

 収容所の一室から情けない声が聞こえてくる。ボーゼンは、囚人の反乱に泡食って指令室から逃げ出し、一室に閉じ込められ、縄でグルグル巻きにされかけている。

 

「お前は……?! 新入り給仕の?!」

「覚えておいででしたか実に光栄ですね。貴方とはもう少し話をしてみたいものですが生憎趣味が合わないようで……このままここでジッとしてくださいね? デバルゾ・ボーゼン所長ォ?」

 

「……貴様?! 内通者か?!」

「おっと……少々お気づきになるのが遅かったようですね。もう少し早くお気づきになられていたら貴方の株も上がった事でしょう。……よいしょっと、では私はこれで」

 

 

「貴様ァァァァァァッ!!」

 ボーゼンの怒号もむなしく部屋の外まで響き、給仕係……「ガル・ディッツの側近」は外へ駆け出し突入隊との合流を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 それから数十秒後、部屋の自動ドアが開く音が聞こえた。

 

「おお誰か! ワシはここだ助けろ!!」

 しかし肝心の「はいって来た人」は、自身に味方するとはとても思えない人だった。

 特徴的な緑の肌で筋肉質。幾ら自爆防止処理をされていてもその存在だけでも脅威となり得る。

 

 

《ガトランティス万歳ィィ!!!》

 

 

 現れたのは、今まで自分が散々狩猟の的として使用してきたガトランティス人だった。鬼とも呼べるその形相でボーゼンを睨みつけ、銃火器を鈍器の様に持ち一斉に襲い掛かってくる。

 

 

 その後ボーゼンがどうなったかは……残念ながらこの場で言うまでもない。

 

 

 


 

 

「突入隊の皆様ですね?」

「貴官がクダン司令のおっしゃっていた協力者か?」

「その通りです」

 収容所内部に無事に侵入できた突入隊は、退避してきた側近と図らずして合流した。

 側近の手には凶悪な見た目をしたライフルが抱えられていて、この場の注目を掻っ攫う。明らかに軍の支給品ではないその見た目に多少心配になりながらも、突入隊の面々は何となく出所を察していた。

 

 

(ボーゼンコレクションから拝借したんだな……)

 

 

 全会一致。そう、これもボーゼンのコレクションだ。

 

「まったく、ここの所長は必要ない物をこんなに……」

「それもこれも奴の趣味ですが、囚人を射殺する時に使用する物らしいです。ここの囚人は……無用な殺しの対象にさせられていました……」

 

 ボーゼンの私欲のために殺されていった囚人は皆、収容所の端の谷にを墓にしている。彼らはそこを終着点にするしかなく今もそこに佇んでいる事は、胸糞の悪くなる話だ。

 

「囚人の遺体回収は……ここの実態を公表してからになるだろう。だが、然るべき場所に埋葬しなければ……。ここへの強襲を行っている我々も、彼らを遺体にしてしまう行動を今している、やり方次第では奴とそんなに変わらない。誰も殺さず完遂するぞ」

 

 隊長の一声で隊員が通路の影から閃光手榴弾を投げて囚人を一時的に麻痺させ、その間に突っ切る。機関銃は牽制用として使用。当てるとしても急所は絶対に避けて、あくまで無力化させるのみで済ませる。

 

 

________

 

 

「ここですね。マップが馬鹿でなかったらここです」

 側近の抱える情報端末が示すこの一角。そこはガル・ディッツが収監されていると思われる独房だ。

 通常区画から離れた特別区画。要注意人物が収監されているこの区画は、政治犯やテロリスト等の国家の存続にかかわるようなことをしでかした人物が収監されている。

 

「ここヤバい区画じゃないか……何もしてない提督をこんなとこに押し込むとかどういう神経してんだ?」

「あのクソ並の奴がゴロゴロしているという事ですよ。開けますので周辺の警戒お願いします」

 

「勿論だ。慌てず急いで正確に頼むぞ。帰りの分の閃光手榴弾は出来れば使いたくない」

「はい」

 側近を背にするようにして複数人が施錠された房のドア周囲を固め、残りの隊員は房に一番近い角で脱走した囚人がこちらに気付かないか警戒を始めた。

 そして側近は房のドアのロック解除の為に工具で壁の板を外し、剥き出しになった回路基板にプラグを突っ込んだ。

 

「行けそうか?」

「少々お時間頂けますか? 一般房と異なりちゃんと施錠されていますので」

「ボーゼンが殺ってたのは一般房の囚人ばかりって事か。要注意の方は交渉材料に……って事か。吐きそうな話だな」

「吐くなら向こうでやってくれ」

「ジョークだジョーク。察しろよ」

 各々が周囲を固めジョークを叩き合いながら警戒を続ける。

 

 

「もっとプログラム的なことやると思ってたぞ」

「ですよね。そんな知識はありませんが、昔趣味で電子工作してましたのでこっちのほうが楽なんです」

 剥き出しの基盤、その回路パターンにプラグを当てて導通を調べる手段は、今となっては朽ち果てたような技術だ。砲弾が捨てられて光学兵器に移ったようにこれも廃れていったが、場合によっては逆に古臭い手段が一番強かったりもする。

 

「趣味に救われたな。どうだ? 再就職先はうちの所とか。電子系に覚えがあるなら歓迎するぜ」

「嬉しいお誘いですが、私にはお仕えする提督がいますので。定年退職して老後にでもそちらに伺いましょうか?」

 

「その頃には俺らはお役御免。静かで平和に暮らしているだろうな」

「そうなって欲しい物です」

 その瞬間プラグを当てる基盤から火花が飛び散り基盤が焼け焦げた。

 

「回路は殺しました。開けちゃってください」

 回路が死にただの扉となった以上人の力でも簡単に開けられる。隊員数名が協力して強引に抉じ開ける。

 

 

 

「提督。お迎えに上がりました」

「お前……どうやってここまで来た?」

 

「提督の愉快なご友人とご子息の協力あっての事です」

 

 その言葉で、猛将ガル・ディッツは全てを理解してこの騒動の原因が「あの変人であることを」納得した。

 

 

________

 

 

「状況は?」

『突入隊を投入してから1200ゲックが経過した。もうそろそろだろう』

 レプタポーダ収容所に恐慌着地したType-nullは一度全システムに対して自己診断プログラムを走らせていた。

 今の所はエラーを吐いている項目はなく、着地時の衝撃で足回りの構造的な疲労が蓄積されているだけだ。

 

「メルダ。地上からの迎撃が無くなった。他の艦隊も降ろすつもりでいるが、念のため、船を抑え込んでくれ」

「抑え込むって……どのようにですか?」

 

「単純な腕力だ」

 帰ってきた回答は何とも原始的なもので、それでいて現状取り得る最も効果的な方法だった。Type-nullの腕力をもってすれば船そのものを押さえつけることも可能だろう、それに「ただそこに存在するだけ」でも相手に対して相当な圧力を与える事となる。

 

 

「宜しいでしょうか?」

「壊さない程度にな。後で問題になる」

「既に問題行動ですよ」

 

「そこはガルの一声で何とかしてもらうか、カバーストーリーを誰かに執筆してもらおう。文才のある人とかにな」

 クダンの吞気そうな声に半分呆れながら、メルダはType-nullを動かしてドックにその身を収める駆逐艦を単純な腕力で抑え込んだ。

 

 

_______

 

 

 

「救出には本当に感謝しているが……お前にもアイツのバカがうつったのか?」

「いえ、これは自分で考えて実行した事です。提督が濡れ衣で収監されて現在に至るまでに相当の期間がありました。その間、この収容所への潜入。クダン司令との打ち合わせ。その他準備等々が重なり、今に至るという事です」

 

「後始末が大変だな」

 ディッツ提督を救出した突入隊は、元来た道を戻っていた。脱走した囚人は管理区画に殺到している。残っているのは少数で、状況の変わりように右往左往している者のみだ。

 それもあり足止めを食らう事も少なく、催涙弾や閃光手榴弾の手持ちは思っていたよりも消費が少なく済んだ。

 

 

「そろそろですね。まもなくメインゲートです」

「そうか……っ」

「お疲れでしょうか?」

 この中で息の上がったディッツ提督は御年55。体力の衰えには抗えない。

「あんな所に監禁されれば体力も落ちる。老人をいきなり走らせおって」

「ご子息もいらっしゃいます。カッコいい父親らしく振舞ってみてはどうでしょうか?」

 

「関係あるか精一杯だ!」

 

 娘がいようが敵がいようが今は関係ない。兎に角メインゲートに走る。

 

 

 


 

 

 

 突入隊が救出に成功したころ、古代と伊藤と藪は必死に撃ち続けていた。本職の伊藤は兎も角、機関銃なんか真面に扱ったことのない古代と藪は苦戦していた。

「野蛮ですねぇ。囚人って感じがします」

「伊藤! 援護頼む!」

 

「お願いします、では?」

 そう言いつつも伊藤は古代の背に回り互いに背後を固めて移動を開始する。藪はと言うと、近くの装甲車に立てこもって窓の隙間から怯えながら撃っていた。それでも命中率はたとえお世辞だとしても高くはなく、多数の激昂した囚人に取り囲まれている。

 

「フォロー!」

「マジですか……冗談は止してください」

 そんな薮のフォローに入る伊藤の顔は嫌々顔で、車両を取り囲む暴徒と化した囚人にめがけて射撃する。古代は致命傷を避けるようにして、上半身は狙わない様にしていたのだが、伊藤は違った。容赦なく上半身を狙いに行き、命を奪う事も厭わないような行動をした。

 

「あなたは本当バカですね1人で籠城とか死にたいのですか? 死にたいのであれば止めませんが」

「伊藤!!」

「事実ですが? こういう時は中に籠城するよりも上から掃射ですよ掃射」

 そう言った伊藤は装甲車両の上によじ登り、囚人の足元めがけて乱射した。囚人はそれに引き下がるしかなく、必然的に囚人たちと古代と藪との間に間隔が空いた。それを逃さず古代がよじ登り、藪も死に物狂いで登る。

 

「チマチマ下で撃つよりもこっちがいいでしょう。適度に屋根移動しながらがいいでしょう」

「このままですか?!」

 

「下で死にたかったら下へどうぞ」

 相変わらず伊藤の言動は辛辣だ。それでも「何も考えないようにします」の通り、一方的に休戦協定の様な物でも結んでいるのだろう。自分だけが生き残るような行動はせずに集団で生き残れるような行動を主体にしている。今も足元まで距離を詰められかけた古代を軽く援護している。

 

 人間と言うのは、時に非情になれるが、「非情にはなり切れない」。

 

 伊藤もその中の一人だった。

 

 

 

_____

 

 

 

「Wunderはこれより、シルビア4への降下軌道に入る。現在シルビア4では101艦隊の強襲降下作戦が行われている。総員第二種戦闘配置を維持しつつ降下に備えよ」

 榎本の手腕により15分で撤収が完了した結果、Wunderの発進準備に幾らかの余裕が出来た。レーダーや装甲に火器、そして戦闘艦橋。とりあえず戦闘は可能な状態にまで復旧が完了しており、万が一の状況にも対処可能となっている。

 沖田艦長の言う通り、現在進行形で第101艦隊がシルビア4への降下作戦を行っている。先行した100式が艦隊旗艦フリングホルニの甲板上に緊急着艦しそのまま降下したと報告が山本機から上がり、Wunderも緊急で降りる事となった。

 

 

「シルビア4大気圏突入開始。波動防壁、前面及び艦底部に集中展開」

 

「了解。大気圏突入開始!」

 

 最優先で修復が完了した波動防壁の調子も良く、水色の膜が目視でも薄く見える程の出力を発揮している。装甲が破損した以上装甲内部に組み込まれる波動コイルもかなりの数が巻き添えになっているが、前面と艦底部に張るくらいなら問題ないくらいの制御を取り戻した事で大気圏突入が可能になった。

 武装はと言うと、戦闘は出来るくらいなのだがそれでも万全とは言い難い。稼働可能な砲塔は現状4基でVLSも誘爆跡が残っている。舷側短魚雷は比較的被害が少ないが、それでも発射管数が少ないことにより万が一戦いになったら厳しい戦いを強いられるだろう。

 

 断熱圧縮による空力加熱で波動防壁が揺れ、全周スクリーンは対閃光モードに切り替わる。突入時の大気との摩擦により艦全体に若干の振動が走り、各々ベルトを着用している。肝心のハルナはと言うと、真田の席のヘッドレストにしがみ付いていた。

 

 

「モニター回復します」

 対閃光モードを解除し開けた視界には、かなりの規模のある施設があった。だがそこには黒煙が上がっていて、見覚えのある艦艇と非常に存在感のある機体が存在している。

 

「あれは……」

「識別信号確認! フリングホルニです!」

「それとあれって……メルダのですね?」

 

「ああ、Type-nullだ」

 次元断層脱出時に提供された識別コード通りの艦艇と判断され、レーダー上の敵性表示が「友軍判定」となった。ガミラス艦艇を見るとどうしてもピリピリしてしまうが、彼らだけは別だ。

 次元断層脱出後もある程度の期間共に航行していた以上、極一部の乗組員の方で信頼関係の様な物が構築されていた。それもそのはず、彼らはWunderに接舷した状態になっていたので内火艇使うなり船外服で泳いでいけば容易にWunderに辿り着ける。それこそ「パフェが食べたいからちょっち向こうに行ってきます」と言った感覚で。

 

 Wunderは滑らかに大気を滑り、その施設の遥か上空に滑り込んだ。大気圏内航行に入り重力推進に切り替えたWunderは、艦を重力で釣り上げて各砲塔の砲身仰角を最大の45度にした。下部への攻撃はVLSで何とかなる。問題は上から。

 

 

「レーダーに感あり! 敵艦影、及び敵防空機と思われる機影。敵艦、数10。敵防空機、数7」

「指示あるまで攻撃を禁ずる。識別コード照会急げ」

 Wunderは大前提としてイスカンダルへの航海を目的としていて、ガミラスを殲滅する事が目的ではない。

 

 

 唐突だが、ここで1つの仮説を話してみることにする。

 Wunderには3連装ショックカノン砲塔が9基搭載されている。つまり合計砲門数は27門で、一度発射した場合、インターバルに4秒。

 VLS発射管では合計数で174。装填時間に差はあれど、ここでは10秒と仮定する

 そして波動防壁の限界稼働時間は20分。コード777使用時にはさらに伸びて30分となる。

 

 もし、波動防壁の被弾経始圧の低下が起こらないと仮定し、バラン星の様に艦隊が集結している場合、30分以内であればWunderは「ショックカノンのみで12150隻の艦艇を爆沈させる」事が可能。

 VLSのみであれば無限にミサイルを発射できるとして、10秒おきに174発のミサイルを同時に発射可能で全て特殊誘導ミサイルと仮定した場合、「31120隻」となる。単純計算で合計43270隻。

 

 

 

 かなり不確定要素が存在するが、Wunderはたったの30分でガミラス全戦力を余裕で鉄屑に出来てしまう。

 

 

 

 それでもそれらの武装はあくまでも迎撃用として搭載され、正しく迎撃武装として運用された。

 結果、Wunderは莫大な戦闘能力を防衛のための用い、無視できない損害はあれど大マゼランまで航行できているのだ。

 

 

「照会完了! 101艦隊所属艦艇と確認! 未確認機は該当なし、シルビア4の防空機と思われます!」

「光学観測。正面に出せ」

「回します!」

 

 該当艦艇が存在する上空を環境カメラで捕捉。そのまま高解像処理と拡大を通して正面に表示された。これまで嫌と言う程見てきて、嫌という程爆沈両断してきた緑の艦艇が降下しようとしているが、コスモファルコンにも似た緑の機体が群がり始めている。

 

 

「……VLS1番2番用意特殊誘導ミサイルパターンA装填」

「艦長?!」

 急な発射指示に一同が戸惑う。

「復唱どうした」

「VLS1番2番用意特殊誘導ミサイルパターンA装填!」

「パターンA設定完了目標設定完了。画像誘導自動追尾よし!」

 もう一度指示が下され、南部が装填し、新見がコンソール操作でミサイルの詳細ステータスを設定した、

 

「発射」

 沖田艦長の咄嗟の指示で放たれた特殊誘導ミサイルは、画像誘導方式に従ってシルビア4の防空機に殺到する。ガミラス艦艇の間を縫って現れるミサイルは防空機にとっては意表を突く一撃だろう。一様に散開しフレアらしきものを巻いてミサイルを回避しようと試みるが、熱誘導に頼らない以上無意味に等しく、次々に火球に姿を変えていく。

 

「防空機全機撃墜を確認。……よろしかったのですか?」

「構わん。こちらに敵意があると判断し、『敵である』ガミラス機を撃墜したに過ぎない」

 艦長帽を目深に被った沖田艦長の表情は読み取れないが、わざわざ「敵である」と付け加えた変化を皆見逃さなかった。

「レーダー。ガミラス艦の動向は?」

「防空機撃墜後、そのまま降下していきます」

 

「ガミラス艦の1隻から電文を受信しました。『貴艦の援護に感謝する』、以上です」

 メ号作戦で受け取った電文は、「直ちに降伏せよ」

 そして今回受け取った電文は、「援護に感謝する」

 

 あの時とは全く異なる電文に沖田艦長は冷静に受け取り、「やはり同じメンタリティである事」を嬉しく思ったのであった。

 

 


 

 

「キャプテン! 船を出して下さい!」

『ノラン、何があった?』

「囚人の反乱です! かなり大規模で正面のドックに回れません!」

 

『何か巨人みたいヤツがいるが……開けた場所に回れるか? そこに船を回す。急げ』

「ありがとうございます!」

 

 ノランと雪はそのまま走り続けていた。しかし正面ゲートに群がる暴徒と化した囚人を突っ切ることが出来ず収容所内から出ることが出来なかった。

 進めば地獄の状況に戻る事しか出来なくなったノランは、自身が一時的に乗艦していた次元潜航艦の存在を思い出した。上司に対して嚙みつく事はあれど部下をよく見るフラーケンは、下で働いた者からの信頼がある。たとえそれが一時的な乗艦であっても。

 もしかしたらと思い、次元潜航艦に無線を飛ばしてみればまだ繋がり、状況理解も早く二つ返事で了承が得られた。

 

「ユリーシャ様、とにかく開けた場所に向かいます! そこで次元潜航艦に移乗します!」

 引き返したノランと森の頭上には黒煙が立ち上り、機関銃の音も響いている。混乱の真っただ中を走るノランは若干焦っていた。

 この状況で護衛対象を守り切れるかどうか怪しくなってきていた。囚人の動きは管理区画にまで及び、管理区画を破壊しきった囚人が下に降りてくる可能性も否定できない。

 さらに、次元潜航艦クラスの艦艇が停泊できる位の開けた場所があるとは思えない。全長144mと言うサイズは馬鹿にならない。通常はドックを造ってやっと置くことが出来るため、最初から航宙艦が停泊できるくらいの広さの場所があるとは思えない。

 

 

 

 

 

『ノラン着いたぜ。上見ろ上上』

 ノランが見上げるとそこには戦闘機の様な機影が見えた。次元潜航艦ではない。戦闘機にしては大きい。大きいで有名なドルシーラの魚雷より長い全長を誇る機体なんていただろうか? ノランは一瞬頭の中を探したが、その答えはすぐに出た。

「FS型宙雷艇?! その手があったか!!」

 ノランと森の上空に現れたのは、七色星団で使用されたFS型宙雷艇だった。全長33mの小型艦艇である宙雷艇は戦闘機並みの高機動を有し、掃宙に人員移送、強襲特務用途での使用など汎用性に富み、単独での次元跳躍能力も有している。ノランと森を迎えに行くにはまさにうってつけだ。

 

『ノラン、ワイヤーを垂らすぞ。ユリーシャ様、ワイヤーは多少揺れますんでご注意ください』

 FS型の艦底部の一部が解放されワイヤーが垂らされる。ノランはまず最初に森をワイヤーで固定して、固定し終わったらそのまま抱えて自身も上がる。その際囚人が迫ってくることも考慮して機関銃を地面に向けて警戒を怠らない。

 

 懸垂上昇で何とかFS型に乗り込んだノランと森は操縦室に向かった。そこに座っていたのは次元潜航艦副長のハイニだった。

「ハイニさん。ありがとうございます!」

「飛ばすぞぉ? 次元潜航艦は適当な安全な宙域で待ってるからそのまま船に向かうぞ。ユリーシャ様、宜しいですか?」

 

「……お願いします」

 

「あい! 当機はノランの特別チャーター便、レプタポーダ発次元潜航艦行きになります。乗客の皆様、ゲシュタムジャンプにご注意ください!」

 軽口をはさみ、ハイニはFS型の出力を上げて急加速、そのまま大気圏を振り切り、重力圏を脱出したと同時にゲシュタムジャンプを敢行。空間を飛び越えた。

 

 

(古代くん……)

 その想いは、空間と言うどうしようもない距離に阻まれてしまった。

 

 

 ─────

 

 

 

「強襲降下艦隊、全艦成層圏に入りました。損失艦無し全艦損傷軽微。それと……ヴンダーからの対空迎撃ミサイルによる支援攻撃を受けたらしいです」

「ヴンダーも降りてきているのか? 光学観測。レーダーにも何か映ってないか?」

「レーダーには……これは、かなりの高高度に巨大な何かがいます。推定全長……ああ、これヴンダーです」

「呆れるほど大きいという事は間違いなくヴンダーだろう」

 

 収容所に強行着陸したフリングホルニから光学観測されたのは鳥のような影。しかし遥か上空を飛ぶ鳥が、肉眼でハッキリ見える程のサイズのシルエットで見えるのは明らかにおかしい。

 クダン及び艦橋にて職務をこなす乗組員の脳裏に浮かんだのは「明らかにサイズを間違えているのではと疑いたくなる戦艦」であった。思い出そうと頭を捻るまでもない。ヴンダーだ。

 

 

「借りが出来てしまったな」

 

 

 ポロリと口からこぼれた一言は誰にも聞かれる事のない様な呟きだったが、そこには若干の懐かしさを含んでいた。

 別れから約3か月。奇跡の船と神の大船は、同じ空で再会した。

 

 

 


 

 

 

 

「第17収容所惑星レプタポーダで暴動が発生。収容所としての機能が喪失し、反乱分子どもで溢れかえっています」

「駐留部隊もこの事態に対処しきれず、レプタポーダ駐留部隊より応援要請が入っています」

 

 レプタポーダでの反乱の事はガミラス中枢にも伝わり、緊急で閣議が始まっていた。これまで各収容所惑星は各地の駐留部隊による統制で反乱知らずであった。だが、今になってなぜこれほどの大規模な反乱が起こったのか。()()()()()()()()()()()1()0()1()()()()()()()()()()()から状況は確認出来ているが、閣僚たちには「腑に落ちない」点があった。

 これ程の反乱が「偶然起こった」とは、どうにも考えにくいのだ。

 囚人が大量の武器を持ち、それも「収容人数と同等の人数」が敷地内に溢れ返っている。仮に反乱が起こるとしても、少数の囚人による物だろう。管理体制に差はあれど収容所の常備戦力のみで対処可能な範囲でしか反乱は起こらず、現に今日に至るまで収容所内での反乱は常備戦力のみで鎮圧され、上に上がって来るのは「事後報告の書類の束」と「人事異動の書類」だった。

 

 しかし、こうして囚人ほぼ全員による反乱と、駐留軍の機能不全、それによる応援要請。未だかつてない状況に際し、このようにして緊急で閣議が開かれることとなった。

「101艦隊からのリアルタイム映像です」

「被害状況は?」

「収容所管理機能の喪失、デバルゾ・ボーゼン所長の行方不明。及びテロン艦ヴンダーも確認されています。現在、101艦隊からの突入部隊が収容所で鎮圧活動を遂行中。それと追加で、航宙艦隊司令長官ディッツ提督の救出も行っているそうです」

 

「提督を……?」

「総統暗殺容疑が晴れても尚収監されていたようです」

 

「レプタポーダにいたのか……応援の艦隊を回せるか?」

「無理だ。本国に戻るにはまだ30日はかかる。バランとゲシュタムの門を潰された以上ゲシュタム航法に頼るしかないんだ」

「親衛隊は回せないのか!」

「虎の子の艦隊を反乱鎮圧に回せと? 冗談がお好きですね」

 会議は進まず、ただ各々の席の目の前でライブ映像が躍るのみ。回せる真面な艦隊が手元になく、親衛隊は本土防衛に使われ、現状「対応に回っている101艦隊」に任せるしかない。

 Type-nullを運用する事に特化した艦艇を保有する特殊な部隊。閣僚の間では「変人率いる異端な部隊」と言う認識が強く、旧友ガル・ディッツに「変わり者・変人・異端児」と言わしめた指揮官率いるこの部隊は、サキエルを討伐してヴンダーと邂逅してその後のんびりと帰路についていたはずだ。

 

「101艦隊には後で事情聴取を行わなければならない。だが、今は彼らに任せるのが現状の最適解かもしれん」

「そうですね。本土防衛に穴を開けたくないのは皆さんの総意ですからね」

「しかし、この緊急事態でも「総統の気まぐれ」か。総統は今どこにいらっしゃるんだ?」

 

 

 

 ______

 

 

 

 

「艤装作業は最終段階に移行しました。現状でもコアシップとの接続は可能となっております」

「例の物は?」

 

「艦首に内蔵兵器として搭載に成功しました。ですが試作兵器が故、一度発射するごとにシステムに障害が発生する可能性があります。連発は推奨しかねます」

「使えさえすればいい。そのまま進めてくれ」

「それと、もう1つお耳にいれておきたい事がございます」

「何だね?」

 

 

「あの船は、明らかに我々の現行技術を超えています。オーバーテクノロジーと断言しても差し支えないこの戦艦を本当に扱うおつもりですか?」

「そうでなければ、NHGとやらを徴発してはいないがね」

 

 

 閣議が行われている陰で、デスラー総統とタランはとある場所に来ていた。実に3000mは下らない巨大なドックに鎮座するその船は、高貴な青に身を包み威光を示す金の紋様があしらわれているが、従来のガミラス艦艇とは全く異なる印象を与えている。

 

 大きく広げられた大翼は剣の様に鋭利で、一部装甲がまだ黒いままだが鳥をイメージした様にも見てとれる。

 船体各所に格納されている陽電子カノンは480ミリという圧倒的口径を誇るが、それらを打ち消すほどの異様さを持った球形の何かが搭載されている。

 中央船体にはぽっかりと窪みが空いていて、そこに巨大な何かを納めるかのようだ。そして中央船体艦首には、推進ノズルのような砲口が備えられている。

 それは、クダンが所持していた報告書のコピーに記載されていた超大型艦、あの黒い巨大戦艦だった物だ。

 

 

 

 翻訳名称 [NHG-***2 Erlösung(エアレーズング)]

 

 

 

「……お言葉ですが総統。艦首の例の兵器は、嘗てイスカンダルが用いた力そのものです。スターシャ陛下が何と申されるか……」

「抗議の1つや2つくらいは来るだろう。彼らがイスカンダルの力を持つ以上、同じ力を持ってしてのみ墜とす事が叶う。作業を急がろ。警戒レベルを最大に引き上げ、親衛隊も幾らか回せ」

 それを言い残したデスラー総統は踵を返し、ドックから立ち去って行った。

 


 

 

 古代達が装甲車両郡の上にのぼり防御に徹して10数分。機関銃の銃身が熱を帯び始め、作動不良が目立ち始めた。

 

「不味い!」

「このポンコツめ!」

 

 誰よりも多く無駄撃ちをしてしまった薮の機関銃は放熱が追い付かず、銃身が若干赤く焼けていた。銃器に疎い藪も流石に不味いと思い射撃を一旦止めていたが、生憎機関銃の予備はない。

 

 上空を警戒すると、収容所内で滞空している一隻の宇宙船が目に入った。七色星団で森を連れ去った連中が足にしていた小型艦艇。その真下で懸垂上昇している2人のシルエット。1人は男性。そしてもう1人は……。

 

「雪!!」

 

 豆粒サイズの人影ではあったが、古代にはそれが誰かが直ぐに分かった。ユリーシャが着ている物とよく似た服を身に纏った森は、ザルツ人らしき男の手を借りて何とかよじ登り、そのまま小型艦艇はどこかへ飛び去ってしまった。

 

「戦術長!! そんなに会いたいなら今は生きろ! 野垂れ死にたいのか?!」

 伊藤が寿命間近の機関銃を再度連射して古代をカバー。空に手を伸ばしたまま動かなかった古代に言葉をぶつけ、正常な思考に戻した。

 

「ヒイィィ! 来てますよ来てますよぉ?!」

「喧しい! クッソォ!」

 藪ももう撃つ事が考えられなくなり、その場で蹲るようになってしまった。

 現実を認識できなくなった者、拒絶した者から死んでいく。ここはそういう戦場。だから伊藤も現実を殴り付けるような勢いで現実に銃を撃ち続けている。

 古代も今を見て生き残るために撃っているが、それでも限界が近い。

 

 走行車両の上にまでよじ登る暴徒は少なくなってきたがそれでもメンタル的にも厳しくなり、流石の伊藤も苦い顔をし始めた。

 

 

「少なくなってきたがキリがない……! おい! 降りるぞ! 今なら上からじゃなくでも迎撃できる!」

 咄嗟の判断で伊藤と古代、引き摺られるようにして藪も走行車両の上から飛び降り、身を隠せる場所に向かって走り出した。

 

 しかしその数秒後、下に降りたことを後悔した。複数人の暴徒がそれに気づき襲い掛かってくるのを確認した伊藤は寿命間近の機関銃を連射するが、遂に銃身が焼けてしまい作動不良を起こしてしまった。古代も援護するが多くは撃てないし、何より伊藤の後ろにいる以上、急に伊藤が立ち上がった時等に誤射が起こってしまう。

 

 

「くそっ!!」

 撃てない以上近接に頼るしかなく、機関銃を鈍器代わりにして制圧していく。

 

 

「戦術長! 行け!」

「伊藤! 何言ってるんだ?!」

 

「元来贖罪計画は『地球人類存続』のための計画です。そしてそれは手段は異なりますがWunder計画も同じく『地球人類存続』の為。贖罪計画続行不可能である以上、Wunder成功のための手札は今は温存しておくべきなんですよ。その手札の1枚は、古代戦術長。貴方なんですよ。どうせ捜索が来ますのでそれまで適当に生き残ってくださいね?」

 

 伊藤の目的は、「贖罪計画完遂」ではなく、「人類を生き永らえさせる」事である。この際地球の復活は前提としておらず、最悪「Wunderを方舟にしてどこかの恒星系で人類復活」も考えていた。

 伊藤がWunderで反乱を起こしたのは、「人類の存続の為」。贖罪計画に関わったのも「人類存続の為」。そして、今こうして古代を逃がそうとしているのは「人類存続の為」。

 

 そしてWunderの復旧作業中、伊藤はシーガル内でこんなことも考えていた。

 

 

「何故あの激しい戦闘を今まで生き残ることが出来たのか?」

 

 

 船のスペック。指揮能力。「火星出身白色バケモノ夫妻」といった人員スペック等の条件。そしてガミラス側の状況等の様々な要因が絡むとはいえ、一番大きいのは沖田艦長の指揮能力でありそれを見て吸収していく古代であった。

 沖田が病に蝕まれ長く持ちそうもない以上、沖田の知恵と戦略眼を継ぎ始めた古代を生かすことは人類存続のための重要事項。

 

 

 全ては人類存続のための壮大な打算であり、ここが「自身」と言うカードの切り時と伊藤は考えた。

 

 

「人類存続は頼みますよ? 指揮官殿」

 伊藤はそれだけ言い残すと、銃器を鈍器として特攻した。

「伊藤!!! ……逃げるぞ!!」

 伊藤を引き止めたかった古代であったが、伊藤の回りくどい話の真意を読み取り逃げる方向に舵を切った。薮を引き摺るようにして暴徒のいない方向にひたすら走り、伊藤の姿がだんだんと見えなくなっていく。

 

 

 

「さて、食い止めますか」

 

 古代と藪の姿を見届けた伊藤は、腹をくくった。ここで対処しきれない程のヘイトを一気に集めて自身に課した仕事を完遂させる。

 ヘイトを集めるためにはどうすればいいのか。

 

「簡単な事です」

 

 

 鈍器と化した機関銃を思い切り振り被り暴徒の頭を潰す。偽りでも本物でも何でもいい「狂気」さえ見せて注目を集める。自身を狂気に染めない様に正気を保ちながら狂ったかのように戦闘を行う。

 嘗て保安部として受けた訓練の中に、人を殺すための訓練があった。

「余計な犠牲を出したくない」以上「出来れば活かしたくない」訓練内容であったが、最後の最後でコレが十分に活きるとは随分皮肉じみている。

 

 すれ違いざまに暴徒から機関銃をかすめ取り連射。その隙を埋めるようにして鈍器にしかならない機関銃を投げてそれを撃ち抜く。

 銃身が使い物にならなくなっただけでエネルギーは余っていた。そのエネルギーが誘爆を起こしてさらに注目が集まる。

 機関銃を用いた近接格闘戦で幾らか殴り倒していくが、自身にもダメージが増えていく。殴られた時に額を切ったのか、傷から血が流れ始める。

 

 それを皮切りにしてどんどん押されていく。伊藤に集まる暴徒の数も増えていく。いいぞ。もっと来い。

 その瞬間、胸元が急に熱くなった。一瞬の痛みが過ぎ去り胸元を見ると、灰色の制服に赤黒いシミが広がっていた。急速に体の力が抜けていき、地面に触れる感触を背中で感じる。

 

 

「流石に……引き付けすぎましたね。ここまでやったので、後は……お願いしますね」

 

 それを最後にして伊藤は、使命を完遂した。

 

 


 

 

 もうあと数分走ればメインゲート。ディッツ提督も呼吸を整え直して走り続ける。

 駐車している装甲車の間にも気を配り、メインゲート前に横付けしている車両を確認するなりさらに速度を上げる。

 

 しかし、装甲車の隙間から1人の人影が飛び出し、突入隊は一斉に銃を構えた。

 

「待て!」

 突入隊が銃を構えた先には機関銃を構えた白い服を着た男がいた。隊員の殆どが見覚えのない男だが隊長だけはその男の姿に見覚えがあり、左手を上げて皆の銃を降ろさせた。

 うろ覚えだがもしかしたらと思い、首元の翻訳機のスイッチを入れた。

「間違っていたら済まない。お前は確かテロンの宇宙戦艦の?」

「何故それが……」

 

「その軍服だ。メルダ中尉と一緒に作業していた者達もそれの色違いを着ていた。偶然とはいえは見つかってよかった」

「突入隊からフリングホルニ艦橋へ。テロン人確認。墜落地点に向かったテロン機を呼び戻してください!」

『艦橋了解。生存者に替わってくれ』

 

 通信機を差し出された古代は、それを耳に当てた。

 

「助けて頂いて、ありがとうございます」

『礼には及ばん。その声、君は確か……コダイ戦術長だったか』

「覚えていてくれたのですか?」

『君が交渉相手で良かったとメルダから聞いていてね。とにかく横付けしてある装甲車に便乗してくれ。皆も聞いていたかね? ガルを抱えながらですまないが、コダイ戦術長もフリングホルニまで護衛して欲しい。銃は……その辺に機械化兵が転がっていればそこから拝借してしまっても構わんよ』

 

 自身が死んではどうにもならない。はぐれてしまった薮の安否が気になる所だが、ここは自身を守るしかない。ガミラスの部隊に合流する事を選んだ古代はその辺りに転がっていた機関銃を拾って状態を確認……しようと思ったが先ほどの見知った形状の物とは全く形状が違い、どうすればいいのかが分からなかった。

「テロンとうちじゃ銃の種類も違うんだろ? グリップ握ってれば勝手に連射される。緩めれば止まる。いいな?」

「……ああ」

 それを察した1人の隊員が古代に軽く説明をする。T字にも見える形状をした「それ」は、Tの縦棒が銃身になっていて横棒がグリップ兼トリガーとなっている。地球の拳銃によくみられる形状の引き金がない以上、グリップを握って発射という説明がすんなり入る。

 

「君がバカ娘の知り合いの一人か?」

「バカ娘?」

「ああ……メルダ・ディッツと言えば分かるか?」

 ディッツ提督に声を掛けられ、古代はそう答えた。おそらくディッツ少尉(兼特務中尉)の親族。年齢的にも親なのだろうと古代は考えた。

「ディッツ少尉の事は、良く聞いています。と言っても、一番長く接していたのは僕ではなく、睦月さんと暁さんです」

「ムツキアカツキ……アウルの報告書にもそんなことが書いてあった。Type-nullの改造もして次元断層脱出に貢献したとか。……こんな状況ではあるが礼を言わせてくれ」

 メインゲートに走りながら古代に軽く礼を言うディッツは決して笑ってはいなかったが、娘に友人が出来たことを安心しているようで多少困惑もしているようにも見えた。

 

「娘は友人が少ない。幼い頃に軍に入り儂を追いかけたからか女の子らしいことに一切興味を持たんかった。じゃが、アウルの報告書に余計な一言が加えられ取った。『メルダは多少は女の子らしくなった』とな」

 娘を語るその声は先ほどとは異なりほんの少しだけ穏やかに聞こえる。本人は「余計な一言」と語ってはいるが、実はクダンの出した報告書で一番特筆されていたのはなぜかそこだった。

 変わり者異端児変人と散々言われてはいるがなかなか粋な事もするクダンの事を、ディッツ提督は自慢の友人と思っている。

 

 それは古代にも伝わり、この戦場ではあり得ない筈の微笑を浮かべていた。

 

 

 上空から轟音が響いてくる。降下してくるWunderの有機的な骨格を目にする古代には一種の安心感があったが、恐らくこの世から先に立ち去った伊藤を思えば一種の悲しみもあった。あの最後の言動と行動は紛れもなく、自身を逃がす為だった。

 方法等に差異はあれど、人類の為を思った行動だったそれは無駄などにしてはならない。

 

 ガミラス側の装甲車に乗り込み一時的ではあるがフリングホルニに向かい、捜索機のパイロットとの合流。そしてWunderへの帰還。現状これが最優先事項。

 途中ではぐれてしまった薮の安否も気になるが、捜索自体は人員を増やして探すしかない。

 唯一の心残りは、走ればギリギリ間に合いそうな距離にいた森を助けられなかった事。どんどん離れていってしまう。どこへ連れ去られたのかもわからない。今地球人であることがバレていない事が唯一の救い。でも、それがどこまで押し通せるか分からない。イスカンダル人ではなく地球人である事が判明してしまえば殺されるかもしれない。それが古代の心をどうしようもなく締め付けていき、食い縛る歯が擦れる音が聞こえる。

 

 

 目の前にフリングホルニが見えてくる。ガミラス兵の一人が教えてくれたのだが、フリングホルニは「神の大船」と言う意味らしい。縁起のいい名前に聞こえるが、今の古代の心は、たとえどんな大船に乗せても安心を得ることは出来ないだろう




お久しぶりです
……本当に遅くなりました。ごめんなさい。

フリングホルニ大気圏突入によりレプタポーダの話を新規に作り上げる必要が出てきてしまい、昼夜唸りながら書く羽目になりました。
それでも、なんとな納得のいく話になったので、何とか投稿することが出来ました。

次回は6月後半あたりになるかなと思います。
それではまたお会いしましょう。
(@^^)/~~~
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