宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
書きたい話がどんどん増えていったり次の話の内容を考えるのにあたまをひねっていたらこんなに時間がかかってしまいました。
それと私事ながら、応用情報技術者試験に合格しました。(ひと月前に合格通知が来ました)
では、向かうべき星(原作そのまんまの名前ですが)始まり始まりです
艦長日誌
補修に立ち寄った惑星、レプタポーダでは、第101艦隊が強襲降下作戦を実行中だった。
彼らの目的、それはレプタポーダ収容所に収容されていた高官「ガル・ディッツ提督」の救出。ガミラス本星には「緊急鎮圧作戦」と見せかけたうえでの作戦であり、たった一人の為に実行された作戦だった。
我々は、ディッツ提督とクダン司令を交えた会談に臨んだ。
現政権に対し疑問を持つディッツ提督ではあったが互いの経緯もあり、共に手を携えることは出来なかった。
だが会談の過程で、我々はガミラスに関する有益な情報を幾つか手に入れることが出来た。
ガミラス星の地形、帝都バレラス地表面の構造物に関わる情報、そして内政に関わる情報だった。彼らの指導者の名は、「アベルト・デスラー」。総統として現政権を掌握し、その広大な大小マゼランを恐怖で支配しているのだ。
ディッツ提督とクダン司令はしばらくレプタポーダに残り、強襲作戦の事後処理とレプタポーダの管理体制の再編。そして「時機」を見てガミラス本星への出頭を行うらしい。
我々は、袂を分かつしかなかったのだろうか。
しかし、共闘出来ないまでも、彼らは連絡将校として1名を残してくれた。
これは、未来に希望をつなぐことだと信じたい。
尚、ガミラスに拉致された本艦の船務長の森一尉の生存も確認された。彼女と接したドメル夫人によると、森一尉は現在ユリーシャとして丁重に扱われている。だが、いつまでガミラスが誤認し続けるかは不明で、早急な救出、もしくはイスカンダル到達が求められる。
<録音終了>
《国連宇宙軍 恒星間航行宇宙戦艦Wunder艦長日誌 第144号より抜粋》
その国の王となった者は、「国を手にした」と呼べるだろう。ならば、星を統べた者は「星を手にした」とも言い変えることが出来る。
バレラスタワー高層階。地球換算で地上約2000mに設けられたこの空間にはその者に対しての玉座が据えられており、その背後にそびえるオブジェにはその者の威光、権力、この星で一番の力を持つことを言葉を使わずに示している。
「その手に星を掴む」を見事にまでに示したそれは天に突き上げるかの如く腕を上げ、その五指にはガミラス星が包まれていた。
「ようこそユリーシャ姫。我が大ガミラスへ」
「……お招きいただき、ありがとうございます。アベルト・デスラー総統」
兎に角バレない様に。目の前に敵の頭がいるという事を理解しているがここは礼儀正しくしておく。
「ふむ。以前にお会いした時はもう少し無邪気な印象があったのだが」
どうやら以前ユリーシャはデスラー総統と会っているらしい。恐らく総統本人がイスカンダルに赴いたのだろうが、流石にそのような事は知らない。
「その……かなり期間も空いてしまいまたので、少し緊張してしまっているのかもしれませんね」
「そうか。早速で悪いが、君には明後日に開催される慰霊祭に出席してもらえるかな」
「慰霊……ですか?」
「ガミラスでも指折りであろう者がヴンダーとの戦いで散った。その慰霊だ」
「分かりました。ご出席させていただきます」
ガミラスだろうが地球だろうが死者は弔う。森も死者の弔いを蹴るような人ではなく、大人しく承諾した。そこには「怪しまれないようにする為」と言う思惑もあるかもしれないが、七色星団の戦いで双方多くの人が死んだことに心を痛めていた。せめてその魂が在るべき処へ帰る為にもと思い、決定したのだ。
「セレステラ、ユリーシャ姫は長旅でお疲れのようだ。騒動にも巻き込まれたと聞く。君の方でもてなしてくれ。それと、方法は任せるよ」
「かしこまりました」
「おりゃあっ!!」
艦内に設置されている航空隊用の操縦用シミュレーションシステムに追加されたものがある。夢とロマンを大事にする真希波・マリ・イラストリアスの手によって、「航空機ではない何か」の操縦シミュレーションが追加されてしまったのだ。
問題は、その何かが途方もなく巨大だという事。少なくとも今後人類が作れるのかどうか怪しいほどのサイズで、莫大な推力と豊富な兵器と大気圏突入能力と超光速航行を持ち、数多のガミラス艦を破壊してきたあの戦艦。
NHG級 恒星間航行宇宙戦艦 Wunder
何故かは分からないが、この戦艦の操縦プログラムが実装されたのだ。おまけに通常の操艦ではなく立体式操舵であるこの凝りようは
そして今こうして声を上げながら操縦桿を引き艦体に急上昇を強いているのは、式波・アスカ・ラングレー。
実装されている操縦シミュレーションを全て制覇した彼女はこうしてWunderに挑んでいるのである。
「テロン人は……何をしたいんだ?」
傍で困惑しているメルダの感想にも頷ける。ここは航空隊が運用する機体の全てをシミュレーションで操作できるのだが、これは艦船だ。航海科が取り組む分なら違和感ないかもしれないが、アスカは航空隊。明らかにジャンルが異なる。操縦方式も違う。通常の航空機や宇宙用艦船は操縦桿……狭義の定義でコントロール・スティックという物が使われている。一部コスモシーガルやキ8型試作宙艇「こうのとり」、そしてWunderにはコントロールホイールが使われている。これらの名称の区別はあまり意識されていないのだが操縦方法は勿論大きく異なる。
実際、アスカはシーガルやこうのとりの操縦をした事がない。従って「コントロールホイール」の扱いは初めてなのだが、画面上のWunderは常識を置き去りにしたような機動性を発揮している。2500mの戦艦に戦闘機のような機動性を発揮させ、錐揉み回転に宙返り。急加速急停止を画面上で披露している。
「あちゃ~やっちゃったか。慣性制御なかったら中の人ミンチにゃ。重力推進はフレキシブルで今の地球からしてみればオーバーテクノロジーにゃ……」
「マリ、ココに私をつれてきた理由はコレを見せる為ではないはずだ」
何故こんなものを見せられているのかメルダには全く理解が出来なかったが、マリは意図もなく変な事はしないは聞いていたので、速やかに本題を出すように切り出した。
「鋭いにゃ。姫〜あがってにゃ」
「もーいーの?」
「データ取れた。もう少し感度上げとくにゃ」
アスカをテストから上がらせたマリを見たメルダは、そのままとある場所に向かっていった。
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「育っているじゃないか」
「そうなんよ~ハルナっち絶不調状態の頃から持ち回りで手入れしてたんにゃ」
「前はまだ小さかったからな。あと一息……くらいか?」
場所を移したのは良かったのだが場所が場所。かなり日差しが強い空間に汗ばむ。作業着に着替えたマリとメルダはリクとハルナの実験農園に来ていた。リクが重傷を負ってハルナが絶不調だったここ数週間は、周りの面々が持ち回りで面倒を見ていた。土仕事に対して全く縁の無い真田や赤木博士まで手伝いに回った結果、主が不在の畑の作物達はすくすくと成長し、収穫まであと半月程となっていた。
余談ではあるが、作業着に着替えたマリが自身のボディをメルダに自慢していたのだが、詳細はこの一行のみで残りは省く事にする。
(流石甲板部の作業服~布との隙間あって気持ちっいい!!)
「……ハルナっちの目、見た?」
「目か? ……輝いていたが」
「前まではね、目のハイライトが殆ど無かったんにゃ」
大玉のスイカが鳴る畑に向かって、ホースで水をやるマリの目は、少しだけ陰りが出来ていた。
「私的には、ぶっ壊れバフの話はあながち間違っていないと思うんにゃ。リっくんと居る時は「覚醒っ!!」みたいに目がキラキラしてるしスペック降り切れるし、結ばれてから2か月近くたってるからもう「常時覚醒っ!」がデフォルトになってるんにゃ。それに沿って考えるとリっくんのいないハルナっちは絶不調かつ半暴走なんよ」
「……アスカから話は聞いた。3日3晩らしいな」
「そう、半暴走はそっから来てる。でも、メルダがこうして来て話してある程度暴走が止まったのは本当に助かってるんにゃ。ハルナっち的にも私達的にもね」
そこまで言い切ったマリは大きな溜息をついた。
「正直言って、気が気でなかったし、こんなこと前にもあったって思いながらどうすればいいのか分からなかった自分が嫌だ。人類は同じ状況に立たされたらそれなりに考えて対応できるはずなのに、直接的な効果のある事は何も出来なかったんにゃ……」
「親しい人があんなになってしまって苦しんでるときにどうすればいいのか、私ね、ユイさんが死亡扱いになってその婚約者が苦しんでいるときに何もできなかったんだ。そしてその人は婚約者を取り戻すために全てを捨て始めてしまった。……変わってないんよ、私」
ハイライトに陰りを見せた目で、マリはポツポツと呟いていた。マリは何が出来ないか思って話を聞いたりココアを淹れたり少しの間だけ姉になったりもした。
それでもマリは効果的とは思っておらず、「ただの時間稼ぎにしかならなかった」と認識していた。
そんな姿を見かねたメルダはマリからホースを受け取り、水を撒き始めた。
「マリ、恐らくだがムツキやアカツキよりも年上なのだろう?」
「そう。リっくんハルナっちが確か公的には25くらいで私が27。真田さんよりも2個下にゃ。んで実際の生年月日で計算するとハルリクが一番年上にゃ」
「年長物が傍にいるだけでも人は安心するだろう。私にはそういう経験が少ないから鵜呑みにはしないで欲しいが、マリは傍にいるだけでアカツキを安心させることが出来たと思っている。実際私は、上官であるクダン司令……いや叔父様や父上の傍に居る時、安心して肩の力を抜いてリラックスしている。今この時も、似たような感じだ」
「……そっか」
「私からしてみればあの2人の姉の様になっているじゃないか。兄弟か姉妹でもいるのか?」
「似たようなのはね。血縁はなしにゃ」
「それでもだと思う」
「……やれやれ、妹みたいな人が再起動してんのに、私何してんのかね」
陰りが解けた顔を浮かべ始めたのを見て安心したメルダは、次の策を展開する事にした。
「覚悟」
「へ? どわぁぁぁあああっ!!」
メルダの放水が見事にマリに命中し、あっという間にびしょ濡れになってしまった。水圧攻撃によってメガネがずり落ち素顔が露になってしまう。
「メルダぁ?!」
「やり返さないのか?」
「……やったなぁ?!」
完全にやる気モードのマリは近くにかけてあったホースを手に取り直ちに放水開始。構えるホースはさながら「某光る剣」。びしょ濡れ状態も相まってさながら映画のワンシーンのようだ。
「古いSF映画のお約束は、光る剣同士の切り合いにゃ」
「水だけどな。雰囲気はある様だな」
ほぼ同時に突撃をかます2人。その手に握られた得物を振り被り最初の一撃をお見舞いする。
その後十数回の切り合いの末、2人は下着までびしょ濡れになり主計科のお世話になった。その後、水の使い過ぎで叱られるのだが、ここでは割愛する。
その代わりと言っては何なんだが、柔らかな土の上に乗ったスイカは瑞々しい色をしていたようだ。
総統府から出た森は、ノランの運転でとある場所に向かっていた。バレていない……と思いたいが今は油断が出来ない。この星の住民は自分以外全員ガミラス人。圧倒的敵地であるこの環境は、森の精神にもそれなりの負担を与えていた。
何より、少し心が苦しい。
Wunderから拉致される直前、森は古代の声を聴いたような気がしていた。麻酔のような気体をかがされて眠らされたはずだが、何故か残っていた。
そっと手を胸に当て、今も残っていることを確かめる。
(古代くん……)
「まもなく到着します。降車の準備をお願いします」
運転席に座るノランに促されて手荷物を纏め始めた。
警護車両がゆっくりと路面に車輪を降ろし、目に映ったのは風変わりなオブジェのような場所だった。そこにはすでに車両が止まっていて、そこから1人の人物が降りた。
ノランやほかのガミラス人とは異なる肌と少し高く伸びている耳。明らかにガミラス人とは違うと感じるその風貌の女性は、つい先程まで総統府で立っていた女性の一人だ。
__________
奇妙なオブジェの中は、帝都を一望出来る個室になっていた。帝都に面する側の壁全てがガラス張りで美しい夜景を一望できるのだが、この構造にした理由の内訳で最も大きいのは、空に浮かぶかの星を見るためだろう。
その一室に設けられたラウンドソファの両端に腰かけた森とセレステラは、ヒルデが入れた上質な紅茶を受け取った。
「どうぞ」
「ありがとう」
「……!」
「下がっていいわ。ヒルデ」
「はい。
ガミラス人だらけだろうと覚悟していたのだが、同じ肌の人に思わず親近感が出た。ガミラスに併合された民族ザルツ。その外見は地球人と同じで、同じ見た目で言語問題さえクリアできれば地球人の中に何ら違和感なく馴染めてしまうだろう。皮肉なことに、既にWunder艦内で証明された。
そして、ガミラスに併合されたという事で、ガミラスの拡大政策と共にイスカンダルへの信仰心も一部では伝わった。イスカンダルと言う人型種族の長女的存在の威光は、確かに遍く星々に伝わり信仰され、本人の与り知らぬ所で崇められている。
自分の知る紅茶とは明らかに違う青色紅茶。顔に出さず怪訝に思う。森は意を決して口を付けようとした時、急にセレステラから話しかけられた。
「彼女は純粋なガミラス人ではなく、下で待っている坊やと同じ種族の民族なの。父親があの野蛮人の船、ヴンダーと言う船と戦って、命を落としたのよ」
「私も同じ、生まれたのはこの星じゃない。でもあの子も私も、同じガミラス人なんだわ」
「貴方は、自分が何者か分かっていて?」
核心を突くようなセレステラの発言に、森は一瞬息が詰まった。ここまで何とか誤魔化してきたのだが、遂にボロが出たのか。
だが、森にはそれを打開する手段を持ち合わせておらず、ただ白を切るしかない。
「私は、イスカンダルのユリーシャ」
「いいえ違うわ」
「今はガミラスのユリーシャよ。あなたは籠の鳥、イスカンダルに対する駒にしか過ぎない」
「デスラー総統の駒……総統は、いったい何をなさるおつもりですか?」
自身が駒。それは誰かの掌の上に居るという事。駒なら向こうの思惑で使われ、必要なくなったら切り捨てられる。自身の置かれている状況を把握した森は、さらに切り込んでみた。
「私を駒にするという事は、恐らくスターシャ姉様は把握していない。把握していればそれを止めに入る。お姉様に黙って何をする積もりなの」
「……遍く星々、その知的生命体の救済。それがイスカンダルの進む道。御立派な高説ですね。実際は自ら動かず、相手を試すだけの女王様」
「でも、我らが総統は違う。銀河を越えた共栄圏を築きそれを実践なさろうとしている。自分の手を汚そうとしないあの女とは違って」
途端に始まったイスカンダル主義の話から始まったのは、総統を称えながらスターシャを批判する言葉だった。これには思わず森も顔を軽く顰めてしまう。これが敵の策略な同課は分からないが、森には単純な悪意のようにも感じられた。
「帝国の庇護のもとで人々は初めて本物の恒久平和を手に出来る。それこそが真の救済であり、彼にはそれが出来る。イスカンダルの掲げる救済はまがい物の救済でしかない」
「あなた、あの収容所に立ち寄ったのですって? どうだった?」
「ひどい場所だった」
「私ね、子供のころあの収容所にいたの。ガミラス人じゃないってだけで。そこからあの人がご自分の手で救ってくださったのよ。他種族であるはずの私達を」
心酔、と言う言葉があるのだが、今のセレステラはそれに近いのではと森は思った。心からの敬意という物でもなく、絶対視と言う状態になっているセレスレラは、デスラー総統を命の恩人であり覇道を成し遂げることが出来る絶対的存在として見ていない。
それはまるで、「愛しているかのように」
「貴方は、デスラー総統を愛しているの?」
口からこぼれたその言葉に、セレステラは思わず噴き出した。随分と想定外の返しだったらしくセレステラの微笑みが笑みに替わった。
「ごめんなさいね、イスカンダルの姫君にしては随分と下世話な物言いなので……愛している……だなんて」
「これ、メランの極上品よ。冷めないうちにどうぞ。それともお口に合わなかったかしら」
_______
「総統! このゲール旗下無敵艦隊3000隻は一路ガミラスを目指しております! しかしあとふた月、あとふた月は如何してもかかってしまいます! 総統にお目通りするために日夜歩みを進めてぇおr」
「もういい! ゲール君、頑張ってくれたまえ」
「はっ! ガーレ・デスr」
ゲールは全力の「総統万歳」を放ったようだが、一方的に通信を切られた事で最後の1音が聞き取れなかった。
そして一方的に通信を切ったご本人はウンザリ顔で、こめかみに指を当てていた。
ゲールからの映像付き超空間通信が消えて次に表示されたのは、ガミラス近傍の星系図だった。
「ヴンダーは現在、我が方の絶対国防圏内に侵入。サレザーの玄関口に迫っています」
「聞けばヴンダーには、惑星を崩壊させるほどの兵器を持っているとか」
「問題は、本土防衛の艦隊が無いに等しいこの状況でどう対処するかだ」
「心配には及びません。親衛隊には虎の子の艦隊が残されています。本土防衛は国軍に代わり我々親衛隊が努めます」
そう、現状ガミラスには本土防衛に使えるまともな艦隊が存在していない。あのゼーリックがバラン星に「観艦式という名のクーデター」として艦艇を集めた結果、ヴンダーによりゲシュタムの門を潰されて艦隊の即時召集がほぼ不可能となった。ちなみに、バラン星に集結した艦艇の総数は1万を優に超える。
バラン星崩壊に飲まれたのはその半数。辛くも逃れその半数の艦艇達は通常のゲシュタム航法に頼るしかなくなり、今もゲシュタム航法で鈍行気味の行軍を続けている。
そして国軍以外に艦艇を持っていて作戦行動が可能な組織がいる。デスラーの名のもとに活動を行う「親衛隊」と呼称される組織だ。
ハッキリ言って精鋭部隊で、ギムレーが長官を務める治安維持組織という名の暴力装置は、その名に違わぬ活動とそのイメージに違わぬ活動を行い、時には植民星をも焼く軍事力を持っている。
「総統。実は、ぜひお耳に入れたい件がございます」
「何だね」
「あの女、ユリーシャなどではありません。恐らく、テロン人かと」
セレステラから語られた真実は、その場にいた閣僚たちが予想し得なかったものであり、それゆえにデスラー総統以外の閣僚に激震をもたらした。
「それは……間違いないのか?!」
「垣間見えました」
「フンッ……魔女」
「それが何か問題なのかね?」
しかし、デスラー総統はにとっては、些細な事でしかなかった。
「本物かどうかは、どうでもいいことなのだよ。イスカンダルの第3皇女が、大統合を承認してくれれば。そしてこの事を国民が信じてくれさえすればね」
「成程……仰る通りです」
事を進めるための駒であるユリーシャが本物か偽物かは関係ない。正直なところ、もしもユリーシャの保護が失敗した場合、ザルツ人の一人を適当に連れてきてユリーシャと同じ容姿に変装させる手はずだった。
つまり、実質偽物を使う事に変わりはない。
国民が信じればいい。この際「イスカンダルの承認」はでっち上げでもいい。大事なのは大統合の実行であり、その過程に疑惑が残ろうがただ結果のみが真実。デスラーの一言で閣僚全員がその考えに染まり、ヒスはそのことに賛同の声を上げた。
「では諸君、儀式の時間だ」
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帝都バレラスの鐘が鳴り響く。普段は鳴らない鐘の音は帝都全域に鎮魂を伝え、失われた命に対し哀悼の意を捧げている。たとえそれに策謀が絡んでいたとしても。
巨大な遺影のすぐ下には数える事を諦める程の数の花束が贈られており、彼の国民からの指示の高さが良く見える。
Wunderとの戦いで散った名将エルク・ドメルその追悼式典は、総統府の手によって大々的に行われている。
「エルク・ドメル。国民の英雄であり私の友。君を失ったことは、私にとって心臓を抉られるに等しい。親愛なる臣民諸君も、思いは同じであると信じている。だが、悲しんでも彼は帰ってこない。その穴を埋めるのは何か。それはただ一つ」
持ち前のカリスマ性を最大限に生かした演説は臣民の心に浸透し、涙を誘う効果も発揮する。悲しいことに、これらは全て原稿。デスラーの本心は一切入っていない。
「希望だ。希望こそが、我々の悲しみを癒し、未来を示してくれる」
「私は諸君らに希望を与えよう。民族の悲願。我々の宿命。それはガミラスとイスカンダルの大統合と言う希望だ! 古に二つに分かれた民族が今、長き時を越えて今再び一つとなる時が来たのだ」
「このことは、イスカンダル第三皇女ユリーシャ様の承認を得ることが出来た!」
「諸君! 大統合と言う希望に向かって踏み出そう! 未来に向かって歩みだそう! 帝国の飽くなき全身こそ、我が友ドメルが望んでいたことでもあるのだ!」
もしもここにバーガーがいたら、もしもここに戦死したハイデルンがいたらどうだろうか。
煮えたぎるかのような怒りをぶちまけていただろう。砕ける程奥歯を噛み締めている事だろう。
ドメルの追悼式典も、総統府の閣僚たちからしてみれば政治的パフォーマンスでしかなかった。
________
そして、この追悼式典を惑星間通信で生亜中継を見ていた人物が一人。
静かな王宮の一室。そのモニターに映る「イスカンダル伝統衣装に身を包んだ女性」を見て、スターシャ・イスカンダルは驚愕した。
ユリーシャ……?!
何を考えているの……?! アベルト……!
「この作戦要綱だが……最後のは認められない」
「冗談……だよな」
古代がみていた作戦要綱。その一番下に追加されていた救出作戦は、古代が発案したものでは無かった。発案者は南部だった。
「どの道ガミラスへの突入は確定事項だ。作戦に追加しても良いんじゃないか? 第二目標に捻じ込んだりとか」
加藤が再考を勧めるが古代は押し殺している。行きたい助けたい取り戻したい感情よりも地球を優先する彼の心の痛みは手の震えに変換されていく。
それをハルナと同じように隠そうとするが、ハルナにはバレていた。
(古代くん……。そうだ)
何か思いついたハルナは会議をそっちのけにして思慮に浸り始める。その数秒後、「取り敢えず作ってみた手順」に従って周りの音が聞こえなくなる位の集中に入る。
何も見えない、何も聞こえない。目と耳に回す感覚と神経を全て頭と掌に回し、頭と掌が痺れるのが分かる。
(こうして……えっこうなの……?)
「正しい手順」が急に頭に飛び込み慌ててリセット。正しい方法に従って手順をこなして準備が整った事を感じたハルナは、手探りで古代の右腕を掴んで持ち上げてみた。突然の行動に狼狽える古代とは対照的に物凄く落ち着いて目を閉じていたハルナは、確かな感覚を捉えた瞬間に目を開けた。
「古代君。私が言えることじゃないけど無理をし過ぎよ。森さんが生きているなら私はこの作戦案を推すし森さんを迎えに行って欲しい。それは、向こうも望んでいると思う。艦長。突入作戦の要綱の目標に追加をお願いします。第二目標、森船務長の救出にして下さい」
「暁さん?!」
「行きたい助けたい取り戻したいっていう気持ちは分かったわ。私はそれを押す。……私は、自分のすべき事が何なのか分かった。古代くんのすべき事は?」
「自分は……」
「まだ時間はあるから、ちゃんと考えて欲しい。自分が何をすべきかをね」
左手を擦ってハルナは強く残る痺れを落とそうとするが、中々落ちずに結局そのままにした。
自分が何をしたいのか、自分は何をするべきなのか。その問いに困ってしまった古代は黙り込んでしまい、周りの面々もどう進めればいいのか分からなくなってしまった。
「急にこんな話しちゃってごめんなさい。続けてください」
_______
「暁君。さっきのは……」
「凄く簡単に言うと心を読んだって感じです。ちゃんと詳細話しますから」
頭を掻きながらそう答えたハルナは、極端に鋭敏になったままの感覚を抑えようとしていた。試しもせずにリクを救いに行こうとするのはあまりにもリスキーだと感じたハルナは一度だけ古代の心に触れてみようと考えて即座に実行に移した。結果、古代が無理をしている事をダイレクトに感じて、的確に触れることが出来た。
「真田さん……リクをこっち側に引き戻す方法があります」
「……っ?!」
「理論も公式も詳細な原理も何もない。半分オカルトな学問に従ってはいるんですが、周りから見れば博打なんですけど……」
ここまで言い切ったハルナは、リクの見ている景色を見た事を、「正しい方法」についてを真田に全て話した。
「……ここまでくるとオカルトじみてくるが、睦月君と暁君なら納得が出来てしまう。……これは推測だが、最悪の場合戻れなくなる可能性がある。その海岸のような精神空間に囚われた……魅入られたと言おうか。帰り道を失って、植物人間のようになる可能性も十分にある。それでも、行くのかい?」
「……私の、大好きな人は、リクです。もう他の物に引き付けられる事もなさそうなので、大丈夫かなと思います」
「そういう心配じゃない!!」
突然声を上げた真田に気圧されハルナが一瞬身を引く。怒ってはいない、ただ「行かせたくない」と苦悩していた。両の手で顔を覆い、普段の雰囲気が全く感じ取れない。
真田はリクとハルナを友人として見ている。「仕事仲間」なんかではなく「友人」。これからも、恐らくこの先も。リクが倒れたと知った真田は普段の彼では考えられない行動が多々見られたようで、睦月リクと暁ハルナという人物は真田の中でも大きい存在となっていた。少し年下で同レベルで話し合えて他愛無い会話も出来てしまう。後輩と言う立ち位置にいる新見とは明らかに違う2人との出会いは真田を変えた。否……変えてしまった。
周りからは「コンピュータ人間」と言われていた防大時代からの印象は鳴りを潜めて少し親しみやすくなったが、友人を失う事の怖さが増えてしまった。
それが真田の弱さとなってしまい、それが発露した。
「私は……怖いんだ。守……古代守は、それでも行くと言った。私はそれを止められずに友人を失った。君も同じだ。もう私は……俺は、同じ景色を見たくない」
「真田さん……」
通路の脇の長椅子で蹲るようにして呟く真田は、今まで見せたことのない本音だった。出会ってからの変化はハルナも見てきた。真田がハルナとリクと出会い、古代守の弟である古代進に出会い、赤木博士やマリ、アスカと出会い、真田の人生上では短期間のうちに数多くの性質の異なる人と浅く、時に深く関わってきた。
だから怖くなってしまった。親しい人がいなくなってしまう事に恐怖を覚えた真田は、リクが倒れたことに酷く動揺し、今こうしてハルナを引き留めてしまった。
「真田さん。以前、目覚めたらリクを怒らないとって言ってましたよね。……私も受けます。ちゃんと戻って叱られますので……彼のもとに、行かせてください」
蹲る真田と目を合わせたハルナはもう一度懇願した。意識が戻らない危険性があるというのに怖がる素振りを全く見せないハルナは、「確信しかない」顔をしていた。これが出来るならいけると信じているそれは妄信や過信ではなく、真田がどれほど必死に手を伸ばしても決して届かない感覚や次元の上での確信になっていた。
止められない。止まろうとしない。でも、ちゃんと帰ってくるかもしれない。
俯いていた真田は、取り戻した光を失わないハルナの目を真っ直ぐに見た瞬間に、そう希望を抱いた。
「まさか私が、希望的観測を持つとはな……彼を、無事に引き戻したら、私の元に2人で来ること。これが絶対条件だ」
「……今行く」
彼の右手を左手で握り、身に着けていたブレスレット一旦外して鎖になるように繋ぎ直す。束縛気味に見えてしまうがこれは気持ちだけの儀式めいたもので、彼との繋がりをより強固なものにする。温度を感じ、頭と左手だけに集中する。全ての光と音が消え、無になった空間に立った。
前と同じ痺れが頭と掌に付きまとい、その掌に触れる感覚すら無くなりかける。でもそれだけは繫ぎ止めようとして脳に手繰り寄せる。
何者かに渡されたその方法。ハルナはその得体のしれない方法に1つの答えを出していた。
それは、自我境界線の融和と可変、そして同調を基礎3要素とする高深度シンクロ。人が持つ自我境界線に同調するために、境界線の強度能動的に変えて相手の波長に合わせる。合わせたら深く相手に入り込み、人の心にダイレクトに触れる。
もし「シンクロ率」という値を作って計測すれば、間違いなく100%を超えるだろう。何%になるかは想像もつかない。
「……とても信じられない」というのが正直な感想。自分と他人の区別が付かなくなって元の自分に戻れない。マクスウェルの悪魔の様に、自分と他人を誰かに観測させないとココアの粉の様にあっと言う間に溶けてしまうと思う。
この方法を渡してきた相手は、少なくとも「こうなると思えないから渡してきた」んじゃないかとハルナは思っている。でもこの考え方では、私の中に誰かが住んでいる様な物じゃないかと思えてしまって、思わず自分に失笑してしまった。
正直言って誰なのかは分からない。別人格なのか幽霊なのかひたすらオカルト路線で考えたが、結局正体は不明。でも使えそうなら使うことにした。
今からする事は心を感じることではない。自分とリクの境目をギリギリまで無くしてシンクロし、会いに行く。
彼の中枢、彼がいると思うあの海に行くそれは、あの世一歩手前までの命がけの旅。ちょっと間違えば意識が帰って来れなくなる可能性もあるから、真田が止めようとするのも無理はなかった。
行ってきます……
艦橋に詰める友人と仲間たちにそう告げてハルナは目を瞑り、現実世界のハルナも目を閉じてベットに顔を埋めた。閉じられる瞼の隙間から見えた虹彩は赤ではなく、揺れる炎のような緋色に輝いていた。
___________
『全艦に達する。本艦は艦内時間1100にワープに入る。総員、第二種空間装備で待機。繰り返す、総員、第二種空間装備で待機』
全ての砲塔へのエネルギーラインが解放され発射可能な状態に移行し、艦首魚雷発射管に魚雷が装填されていく。激戦を潜り抜けた航空隊員は各々自分の機体の元に移り、搭乗準備を進めていく。
「私は待機ですか……?」
「いや、第三格納庫に行ってくれ。いいか? EURO2を置いといた方のだぞ」
機体が大破してそれ以降話が上がってきていない。ならば待機だろうと考えていたが、暗に「機体があるから出る準備をしろ」と伝えられたアスカは、そのまま左舷第三格納庫に直行した。
「おうっ。待っとったぞ」
「榎本さん!」
「改修型EURO2。俺らは改2号機って呼んどる」
第三格納庫で出迎えたのは榎本。そして白と赤が目立つコスモファルコンに似た機体だった。
榎本が紹介したその機体は、EURO2の面影を残し、手持ちのパーツで戦闘可能なまでに修復が行われた白と赤がの機体だ。
被弾しパージしたエンジンの代わりはコスモファルコンの予備機から移植し、主翼の移植と合わせて両翼部の機関砲も移設。
コックピットも所々傷ついているが既に修復が済んでおり、コンソール群は発艦可能な表示を出していた。
「まだお前さんに合わせた微調整が終わってないが、行くんだろ?」
「行きます!」
「存分にブン回してやれ。おい! 改2いつでも出せるように準備進めろ!」
「「「了解っ!」」」
その怒号を背にして甲板科が第三格納庫で走り回り、アスカは復活した愛機に乗り込んだ。キャノピーが閉じ、正面で稼働しているコンソールをざっと見渡す。所々傷ついたり入れ替えられた部分もあるが、間違いなく乗りなれたコックピットだった。
「カッコ良くなったじゃん、改2」
コンソールを軽く小突きアスカは再びその操縦桿を手に取った。コンソールにパイロット名が表示され、機体が主を再び迎え入れたのを確認したアスカは、管制に通信を繋げた。
『コントロールから改2号機へ。以降の通信ではコールサインをツーダッシュとする』
「了解。ツーダッシュからコントロールへ。コンディションよし、レーダー起動確認。スラスタ偏向ノズルの稼働チェック終了。異常表示なし」
『コントロール了解。艦橋より待機命令が出ているが、いざという時はツーダッシュの判断での発艦が許可されている。発艦タイミングをそちらに移譲する』
「ツーダッシュ了解。……榎本さん」
形式上の交信に割り込む形で、アスカは一言加えた。
『どうした?』
「ありがとうございます。また飛べるようにしてくれて」
『おう。ちなみに何だが、尾翼の方にWunder主翼をマーキングをしてある。復活祝いだ』
_________
艦内の全ての区画に警報音が鳴り響き船外服を着用した乗員が慌ただしく持ち場に移っていく。そんな中医務室でも傷病者の受け入れ準備を進めていくが、原田の目に留まったのは、リクの眠るベットに突っ伏す形で微動だにしないハルナだった。
「暁さん?! 大丈夫ですか?! しっかりして下さい!!」
どれだけハルナを揺さぶっても目を覚まさず、原田の大声に佐渡も駆け寄って来た。
「どうした?!」
「暁さんが目覚めません?! 脈と呼吸が通常よりも弱くて……どうなってるんですかこれ?!」
「知らん!! とにかく引き剥がせんのか?!」
「無理です?! 凄い握力で離れないんですよ?!」
原田が若干泣き声になっているが無理はない。元中央大病院の看護師として様々な患者を見て、様々な症状を見てきたのだが、これはハッキリ言って異常だ。意識が戻らないのに信じられない程の握力で手を握り続け、冬眠のように脈と呼吸が弱くなっている。
あまりにも奇妙で考えにくい状況が佐渡の頭を悩ませた。症例が見当たらず、どう対処するべきなのかが組み立てられない。
だが、ハルナとリクの関係性を知っていた佐渡は、常識ではあり得ない仮説を頭の中で立ててしまった。
(いや、あり得ないんじゃが……現に睦月君はやってしまっとる。それの発展と考えるならばあるいは……)
「真琴はそのまま暁君の状態をモニターしとれ! 絶対に触れるんじゃない! 多分じゃが……引き剥がしたら永久に目を覚まさん」
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「諸君。我々は今、地球から160000光年にいる。だが、そんなものはただの数字にしか過ぎない。地球はすぐ後ろにある。後ろにあって、諸君らの帰りを待っている。Wunderは間もなく、最終目的地であるサレザー恒星系、その内惑星系に到着する。そこにはイスカンダルがあり、同時にガミラスも存在している。目的地でもあり、敵地でもあるのだ。
だが、我々は進まねばならない。そこに希望があり、それが地球を救うための希望であるからだ。そしてすぐ後ろの地球が、その希望を持って我々が帰るのを待っているからだ。Wunderはまもなくワープに入る。イスカンダルに向けた最後の大ワープだ。総員第1種戦闘配置のまま、ワープに備えよ」
「ワープ先座標設定終了。絶対銀経163.34度絶対銀緯-69.75度」
「確認。座標軸固定した」
「波動エンジン、最大出力。室圧上昇」
もう何十回と繰り返してきたワープ。いつも通りの手順のはずなのだが、今回は緊張が違う。ワープアウト先は敵地。そして艦内乗組員は全員第2種空間装備……船外服を着用している。非常に特殊な例外はあれど皆が着用し、無重力状態の戦闘艦橋には艦橋メンバー以外にマリと赤木博士、ユリーシャとサーシャが詰めている。
エンジンノズルから青い光が吹き出し、反動推進で艦体を押し出していく。正面に見すえるワームホールに自信を突き刺すほどの勢いをつけ、秒読みが始まる。
「5、4、3、2、1、ワープ!」
両舷波動エンジンが雄叫びを上げ空間を飛び越える。ワームホールに押し込まれた境界面から目もくらむ位相光が撒き散らされて、噴射光のみを空間に残してWunderは飛び去った。
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「ワープ終了。サレザー恒星系に侵入。現在、第五惑星公転軌道上です」
ワープアウト先は、サレザー恒星系の外惑星系の端。内惑星系に程近い軌道上を回る第五惑星の軌道上だった。
「サレザー系第五惑星のエピドラだ」
エピドラと命名されているその惑星は木星に極めて似通った見た目をしていて、その表面をやや赤黒い雲が渦を巻きゆっくりと滞留している。
「第四惑星軌道上に二連星を確認」
「拡大投影」
全周スクリーンに拡大ウィンドウが開き、二つの星が表示された。
片方は、青々とした水を蓄えた命の星。だがもう片方は黄緑に染まり、歪な開口部がいくつもその存在をアピールする骸のような星。
「やはりお隣はガミラスか……」
敵地……それもガミラスまでもう1光年もない距離に居ながら、敵から何の介入もない。
余りにも静かすぎる。冥王星の時と全く同じ感覚を皆味わっていた。
「……静かすぎる。本土防衛艦艇どころか親衛隊すら来ない。ここは既に絶対国防圏の内側なんだぞ……レーダ手、観測手。本当に何も映ってないのか?」
「はい。半径75光秒以内に敵艦影は確認出来ません」
「こちらもです。念の為次元震や空間波動エコーも確認してますが、反応ありません」
岬と太田が言うように、レーダーと各種センサー機器は何も感知していない。サレザー恒星系にやってきたという事は、実質ガミラスとゼロ距離で睨んでいるようなものだ
「了解した……サナダ副長。念の為ゲシュタムフィールド……波動防壁の展開を進言させて貰えないだろうか。出すぎたことを言っているのは承知だが、胸騒ぎがする」
「……艦長、私は賛成です。かつてのメ2号作戦と同じく、何らかの搦め手を用いてくる可能性すらあります」
「任せる。ディッツ少尉、君の言う胸騒ぎはどのようなものだ?」
「……Wunderと艦隊戦をしても撃沈は出来ない。ならば他の手を使うしかない。搦め手で来るのか……何で来るのかは分からないが、一瞬で勝利が決するような物で攻撃を仕掛けてくる……。申し訳ない、上手く言葉に出来ない」
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『こちらはまだ、80%の稼働率です。使用するのは時期尚早かと』
「構わないよタラン。アレが使えさえすればね」
『恐れながら総統。この施設は、来るべき遷都に備えられた物です。本来、ヴンダーに対するものではありません』
「私は構わないといった」
『……ザーベルク』
「では、準備を進めてくれ」
タランは躊躇ったが、総統の命である以上逆らうことは出来ない。第二バレラスの中央コントロール棟に出向き、オペレータに指示を出していく。
『これより、特秘試製第0号……デスラー砲発射シークエンスに入る。各員持ち場に付け』
特秘第0号……第二バレラスで開発が進められてきた高威力長射程決戦兵器。それは、ガミラス版次元波動理論を根幹とした兵器であり、デスラーの名を冠する唯一の砲でもある。
その力の咆哮が目覚め、ゲシュ=タム・ドライブのエネルギーを貪り始めた。
『余剰エネルギーの充填を開始。薬室内圧力上昇』
『目標。サレザー星系第五惑星エピドラ付近。目標自動追尾設定よし』
『ゲシュ=タム・ドライブ各機安全出力解除。発射出力に移行、ドライブ内圧力上昇。各ゲシュ=タム・コア、励起状態を維持』
「遥々ここまで来たというのだ。その労を労い、丁重にお出迎えしなければな。君もここで見ていると良いよ」
「何をなさるおつもりですか」
「……戦争だよ」
その顔は戦争を遊戯の様に見る邪悪な笑みで、森はその場から逃げたくなった。後ろに立つ森を眺めるように視線を向けたデスラーは、笑みを浮かべてそう放った。
『最終安全装置解除。撃鉄システム起動』
『自動カウントダウン開始します』
『
『「
紅い光束が放たれ、正面スクリーンが閃光で染め上げられる。
漆黒の宙を引き裂くようにして放たれたそれは周辺宙域に激しいスパークを撒き散らし、ただ目標に突き刺さる為だけに宙を疾走する。
第4惑星軌道から第5惑星軌道までの距離は、地球換算で約5億2000万㎞。光の速さでも約1800秒、分換算で30分の時間がかかる。その空間を疾走し引き裂いていく光は真っ直ぐに第五惑星軌道上まで突き進み、やがて亜光速に到達する。
赤い光束はスパークを撒き散らし、突き進む。
Wunderに向かって
お久しぶりです。朱色です。
本っ当に時間がかかってしまって申し訳ありません。合格してからいろいろアニメ見ていたらあっと言う間に水生の魔女が終了して、内容がちょっと詰まってちょっと息抜きに他の話を書いたりしていたらあっと言う間にひと
月以上たってしまいました。
お待たせしてしまい、本当に申し訳ありません……
次の話は、原作でいうところの「たった一人の戦争」です。
ちょっとニヤニヤしながら書いています。(殴)普通に書けうp主
それでは次の話でお会いしましょう。
(@^^)/~~~