宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
前編公開後から一週間後に後編を公開します。
では前編をお楽しみください
月の日の輪の元に 前編
「ガミラス・イスカンダルのポイントL1に高エネルギー反応!」
岬のあげた報告は全員の耳に届き、メルダの胸騒ぎはある意味的中した事を思い知った。
「面舵一杯全速!!」
「了解っ!!!」
沖田艦長の咄嗟の指示で島が船体を思い切り倒し、慣性制御でも殺しきれないGがかかる。その瞬間Wunderがついさっきまで存在していた空間を赤い光束が横切った。
対閃光モードが遅れ、全周スクリーンに映る景色の半分が目も眩むような光に包まれていく。そのスパークが艦体側面を叩き、スクリーンの画像にノイズが生じる。
辛くも直撃から逃れたWunder。その光ははるか後方の軌道に鎮座するエピドラに突き刺さる。ガス惑星の表面に突き刺さると有無を言わせずエピドラは崩壊し、星間物質を血のように撒き散らしていく。
たった一射。たった一射で惑星は殺された。
「くっ……! 各部被害状況を報告!!」
「波動防壁被弾経始圧極低下及び消失! 船体第一装甲板一部融解」
「外部観測カメラの感度低下! 現在MAGIでの補正処理を行っています! 完全復旧まで30秒!」
「左舷対空砲座損害大きい! 対空砲塔砲身部の融解確認!」
「重力アンカーに異常表示確認! 使用不能!」
かすめただけで少なくない損害を受けた現状に一同が戦慄し、これがもし直撃していたらどうなっていたかを各々が想像した。その光に一瞬で貫かれ艦体は爆散。ここで轟沈していただろう。
「後方の惑星、崩壊していきます」
「エピドラが……」
「星を死に至らしめる一撃。でも……これじゃあまるで波動砲だ」
「その通りかもしれない。博士、やはり出ましたね」
「ええ、重力場の変動が検出されているわ。こっちの波動砲とは少々異なるけど、十中八九波動砲ね」
真田と赤木博士が睨む観測機器のモニターには、重力場の観測結果が表示されていた。通常は凪いでいるはずの重力場の波形が、先ほどの攻撃で大きく歪曲している。そしてその観測結果に重ねる形で表示されているのは「Wunderの波動砲による重力場の変動グラフ」。通常の光学兵器による攻撃ではこのような変動は見られない。
つまり波動砲。もしくはそれに準ずる兵器だ。
「ガミラスが波動砲を……っ」
「何も不思議じゃないわ。波動エンジンとゲシュタム機関は理論がほぼ一緒っぽいのよ。出力がかなり違うだけ。実現には時間がかかるけど、やろうと思えばね。尤も、それはイスカンダルにとっては禁忌だけど」
南部の衝撃を抑えながらそう言葉を付け加えた赤木博士は、ちらりとユリーシャとサーシャの方向を見た。悲痛な面持ちでエピドラの崩壊を見つめるその脳裏には、スターシャから聞かされてきたイスカンダルの愚行が再生されていた。
星を焼き、銀河を地に染めた大帝国時代。波動砲の力で何もかもを焼き払ったそれはとうの昔のはず。それでも今放たれた閃光は、星を殺した。
「本艦はこれより、亜光速航行で第4惑星軌道に向かう」
その衝撃を押し返すような声で、沖田艦長が命を下した。
「波動砲と言えど、亜光速の物体を狙撃するのは困難だ。連射が効かない兵器である以上、この機を逃さずに懐深くに入らぬ限り、活路は見出せん。作戦継続! 最大戦速! 目標、ガミラス!」
「亜光速航行用意! 両舷エンジンノズル収縮!」
「波動エンジン最大出力。各砲塔へのエネルギー供給を切れ。いいか、全部推進に回せ!」
赤木博士とマリの操作で第二船体最後部のメインエンジンノズルの口径が絞られる。戦闘機のエンジンノズルの様に、Wunderのエンジンノズルはその口径を変更する事が可能になっている。戦闘機のノズル……コスモゼロにも採用されている「可変断面積機構」を利用した「コン・ダイ・ノズル」を艦艇用推進ノズルに採用した例は過去存在していない。
それでも取り入れられたこれは、もしもの時用に頑張って設計したハルリクの、「こんなこともあろうかと」だった。
「収縮完了! 徳川さん!」
「最大出力を推進に回すぞ! 島! しっかり操艦せい!」
「了解! 出力どうぞ!」
その瞬間、収縮したエンジンノズルから細く荒々しい豪炎が噴出し、艦内にGがかかる。艦内に微振動が走り急速に光速に迫っていく。現状の地球人類は通常空間で光速を超える事は出来ない。それでも、光速に限りなく近い速度を発揮し、Wunderは第四惑星軌道上に迫っていく。
__________
『第二バレラスからの迎撃終了』
前方の埋め尽くす光が落ち着き、元の漆黒の宇宙に代わっていく。
「何をなさったのですか」
「ちょっとした思い付きでね、波動エネルギーを武器に転用してみたのだよ」
「波動砲……」
ちょっとした思い付き……本来は星を超える力である筈の波動エネルギーをちょっとした思い付きで波動砲にしてしまう。イスカンダル信仰の深いガミラスでそれをすることは禁忌であるはずのその所業を、デスラー総統……デスラーは何て事もないように実行した。そしてそれを自身の意思一つで放ち、星を崩壊させた。
遥か昔のイスカンダルの再現とも呼ぶべきそれは、デスラーにとってはちょっとした思い付きでしかなかった。
「ヴンダー、消滅した模様」
「苦難の果て、目的地を目の前にして散る。なかなか美しい最期じゃないか。……ユリーシャ姫は気分がすぐれない様だ。外にお連れしたまえ」
消滅という結果を直視できない森は、思わずデスラーから目を逸らした。森の髪に触れるデスラーは森を偽物と認識しているかは、森は正直分からない。
「参りましょう」
「着弾地点よりこちらに亜光速で接近する物体を確認。推定質量に該当するオブジェクト1。ヴンダーです」
ノランに誘導される形で部屋から立ち去ろうとしてたその時、士官の一人がモニターに映る巨大な反応に一報を上げた。
「沈まないか。……ギムレー、始めてくれ」
『ザーベルク』
「11時から1時の方向に艦影確認。空母4!」
「波動防壁再展開用意」
「まだだ。まだ早い」
真田の操作を沖田艦長が一言で止める。
「両舷半速。隼を降ろせ!」
_________
「100加藤。発艦する!」
「アルファ2。山本出る!」
前方に構える空母めがけて、Wunderの航空隊が一斉に発艦を始める。第二格納庫からはコスモファルコンが、第一格納庫からはコスモゼロ。そして再起を待ち望んだ機体が、今まさに左舷第三格納庫から発艦しようとしていた。
『格納庫内減圧終了。ハッチオープン』
左舷第三格納庫が真空になり、側面のシャッター式ハッチが解放される。一部の演出好き整備員の手によって格納庫内の照明が順番に消灯していき、格納庫内の警告灯が回転を始める。さらに管制室と機体との通信が悪用されているようでBGMまで流れ始めた。
『コントロールからツーダッシュへ。艦橋からの発艦許可が下りた。発艦タイミングを式波・アスカ・ラングレーに譲渡する』
「ツーダッシュ了解! 出してください!」
改2号機を掴む電磁アームが稼働し、改2号機を漆黒の宇宙空間に水平に移動させる。エンジンノズルに青く穏やかな噴射炎を抱え、宙に滲み始める。
「本艦周辺宙域に留意すべきオブジェクト無し。903VW/2、ツーダッシュ。発艦どうぞ」
『ツーダッシュ、式波・アスカ・ラングレー! 行きます!』
電磁アームの拘束から解き放たれ、EURO2……改2号機は再び宙に戻った。宙に青い残光を引きながら準備運動を始め、機体の動きの自分の操作が嚙み合っていることを確認する
「演出やりすぎじゃないの……? まあ雰囲気あるからいいけどね」
少々苦笑いしながらも再び操縦桿を握る。手元のスイッチ。見慣れた計器。傷ついた座席。そして新しい主翼とエンジン。全てが調子よく、身体の感覚に馴染む。NT-Dは……動くかどうか分からない。
「頼むわよ」
ペダルを踏みこみ加速を感じ、アスカと改2号機は航空隊に合流した。
__________
「守るべきは新しき都。ポーズを付けたいところですが、あの神殺しの船と同じであるならば、本気で守らねばなりませんね。物質転送システム、急ぎなさい」
ギムレーが睨む方向には漆黒の宇宙があり、待機する複数のポルメリア級が映る。親衛隊仕様の青いポルメリアにはメランカが積載限界まで搭載され、現在はその最終チェックに入っている。
「ポルメリア級1~4より連絡。メランカ全機への爆装作業完了。発進可能です」
「総統からの命が下りました。仕掛けなさい」
「メランカ発進させろ!」
ポルメリア級の艦底部シャッターが4か所開き、常に無重力環境の艦内でメランカが横に平行移動を始める。スラスターを吹かせてスライドしながら艦外に出たメランカは機体の向きと進行方向を合わせ、紡錘陣形を組み始める。
その数実に120機。航空隊の規模としては6個飛行隊に及ぶ大編隊は、虚ろな目のパイロットをコックピットに抱えて稼働している。陣形の先端にあたる20機が前進し、艦体の正面の宙域で停止する。
……このメランカは、紛れもなく有人機だ。
ただし、パイロットは各所の収容所惑星から「強制徴発」された収容犯……薬物投与により意図的に自我を消され、何も感じない人形となった者たち。彼らは与えられた指示のみを実行し、その命令に対し何も疑問も感情も抱かない。
「物質転送システムを起動」
「了解。第2バレラス第5ゲシュ=タム・ドライブ、過負荷運転を開始。次元重複領域の拡大を開始」
「転送座標、ヴンダー直上。及び直下」
「物質転送システム、照射準備完了」
「照射」
第2バレラス実験棟の屋上に仮設された転送システムが瞬き、メランカ部隊の転送が始まる。主翼に懸架した空対艦ミサイル以外にも主翼の上部には爆薬が固定されている。懸架でも取り付けでもなく固定だ。そしてコクピットの操縦桿からは投下スイッチが抜かれている。
正真正銘の特攻機体。20の生きた爆弾は空間の歪みに飲まれていき、神殺しの船に群がって逝く。
《警告 空間波動エコー感知。範囲、本艦直上及び直下。半径500m》
「空間波動エコーを検知!」
「位置、本艦直上及び直下!」
「来たか……! 対空戦闘用意! 艦底部VLS装填確認!」
「VLS発射管開け! 甲板VLSにカミナリサマ装填! 弾道入力よし!」
「各観測機器を耐EMモードに切りかえ!」
待ち構えていた敵襲にスムーズに迎撃準備が進められる。空間波動エコーが発生したのは大体半径500mの円状の範囲。10数機程度を送り込むくらいならそこまで大きくなくていい。つまりここまで広いなら、かなりの物量で攻めてくることが考えられる。
であるならば、対空では対処しきれないことは明確。そこで、カミナリサマによる無効化を主体とした防衛体制を整える。
「エコー極大値! 来ます!」
太田とマリの観測により方向と範囲を特定。あとは出現し次第迎撃を行うだけだ。
「目標現出!」
「迎撃初め!」
岬の目の前に表示されるレーダーに複数の機影が表示され始め、間髪入れずにカミナリサマが発射される。手始めに甲板VLS1番から発射されたカミナリサマ6発は、各々が等間隔に散らばり子機を展開。ショックカノン並の電圧を敵機に食らわせシステムを落としにかかる。
「第1波EMP作動確認。全機体の機能停止を確認」
「敵機再加速確認! 直撃コースです!!」
「南部! 撃ち漏らすなよ!」
「対空始め!!」
しかし、敵機はそれでも動きだした。
咄嗟の古代の指示に間髪入れずに、南部が対空パルスレーザ砲塔を作動させ、MAGIによる照準補正を加えた掃射を始める。
レーダー上に映る敵機20機を正確にロックオンし、数と演算と威力で構成された暴力の豪雨を叩きつけていく。
一機、また一機と撃ち落とされていく。不可解なのは、どの機体も回避運動を取っていない事と、通常の航空機の爆発では考えられない程の爆発を起こしている事。
パルスレーザ砲塔の至近に迫っても回避を取らない。そのことに沖田艦長は一つの最悪な結論に辿り着いた。
「特攻機か……っ! 恐らく敵機は全て特攻機だ! 甲板VLSを変更! 対空に入れ替えろ! 相原! 航空隊各機に連絡! 直掩機を数機残して敵空母への攻撃を命じろ!」
「了解! 甲板VLS全発射管を対空ミサイルに入れ替えます!」
「航空隊全機! 敵機は全機特攻機と推定される! 各機は敵航空母艦を撃破せよ!」
パルスレーザー管制で手一杯な南部に代わりマリが火器管制に入り、甲板VLSの発射管を装填し直す。それに加えて相原が航空隊全機に一斉通信を開き、空母への攻撃命令を出す。
航空機で特攻機を落とす事もできるかもしれない。だがこの場合、敵機の背後について撃ち落とすには味方機を艦体への衝突リスクを背負わせる事になる。逆に正面から迎え撃つ場合、遠方にいて顔を向け合っている機体を撃ち落とすには相当な技量が必要であり、迎撃確率が極端に下がってしまう。
ならば、敵空母を叩く事で特攻を止めてもらう事が一番で、航空隊の生存確率が上がる。
「空間波動エコー確認! 第二波来ます!」
「方位は?!」
「……全方位です!!」
「波動防壁!」
岬の叫び声と共にレーダーに機影が表示され、沖田艦長は咄嗟に波動防壁の展開を真田に命じた。
特攻機が群がるWunderを守るために波動防壁は力強く立ちはだかり、機体すら残らない大爆発を受け止めていく。その爆発は凄まじく、避弾経始圧が瞬く間に下がっていき突破も時間の問題だ。
その爆発の間隙を縫い、装填し直した対空ミサイルが発射されて波動防壁にあけた穴から目標に殺到する。
「これは……っ!」
撮影に成功した敵機を解析していた真田は敵機の異常さの1つに気付き、それを察したメルダは真田のコンソールに飛びつきその画像を確認する。
「サナダ副長失礼する。1枚翼機……メランカか! だが機体に付いているこれは……」
「真田君、まさかとは思うけど……」
「ええ、敵機には高性能爆薬が外付けされています。それと追加のスラスターです」
「恐らくはカミナリサマ対策。システムが落ちたら点火するようね。命すら武器にするなんて……」
嘗ての人類の間違いである第二次世界大戦。日本が選択した特攻と言う戦術は、自身の命を武器にして敵に突っ込み甚大な被害を与える戦術。それを他の星の軍も実行している。
特攻がどんなに恐ろしい物でパイロットに何を強いるのか、それは軍人である彼らもよく分かっている。
それでも特攻を敢行してくる敵機をそのまま迎え入れるわけにもいかない。航空隊から撃破報告を受け取るまで、何とかしのぐしかない。
「敵機至近! 直撃します!」
「衝撃に備えェ!」
その瞬間大きな振動が走り、甲高い警報音が鳴り響いた。
「中央船体に直撃1! 全装甲板貫通火災確認!」
「ダメージコントロール隔壁閉鎖! 急げ!」
「4層の特殊装甲板を、一撃で……っ?!」
「狼狽えるな! 中央船体VLS装填状況は?!」
「装填完了しています! 対空です!」
「弾薬は気にするな。終末誘導を熱誘導に切り替え発射」
「了解! ターミネーターを熱モードに切り替え発射します! 南部さん! タイミングは?!」
「t-2、カウント、今!」
南部のタイミングに合わせてマリが火器管制の発射スイッチを押し込み、中央船体のVLS発射管12基から艦対空ミサイルが飛び出した。
終末誘導に熱探知を選択した対空ミサイル12機は敵機のエンジンの熱を狙って殺到し、近接信管による爆発炎と爆発時の破片で全機を潰し切った。
「全機撃墜! 損害無し!」
「第3波に備えろ! 再装填急げ! 航空隊からの連絡はどうか?!」
「未だ連絡なし!」
「航空隊各機に通達! 目標敵航空母艦数6! 各機視認次第攻撃行動に入れ!」
Wunderに飛来する敵特攻機の攻撃を阻止するべく、航空隊全機は敵航空母艦にめがけて全機最大出力で宙を疾走している。
その中でひときわ目立つ改2号機にはミサイルが満載されており、七色星団の重武装型EURO2を想起させている。
『隊長あの機体ってアレですよね?』
「そうだ。二尉……ああ面倒くせぇ、式波のEURO2の生まれ変わりで、魔改造修復の産物だ」
『へぇ~、隊長そんなん何で知ってんですか?』
「俺から頼みこんで突貫で進めてもらった。戦力は欲しいし、式波ずっとシミュの方で死に物狂いでやってんだぞ。そんなん見たらこうするしかないだろ」
シミュレータに張り付いているアスカを、加藤はよく見ていた。努力する秀才キャラであることは加藤も部下を預から職業柄知っていたのだが、機体が大破しても尚生き残りいつ出ても良い様に鍛錬に励むアスカを見て、加藤は榎本と技術科に機体の修復を頼みこんでいた。
その結果、戦力の増強と言う名目で修復が行われ、彼女にとっての後継機として改2号機が生まれたのだ。
『隊長案外優しいのね~』
「うるっせえっ!」
「加藤隊長」
そんな内容を通信で流していたら、式波が通信に入り込んできた。
「式波か。問題発生か?」
『いえ、改修をお願いしてくれていたのは、隊長だったんですね』
「……聞こえてたのか」
『そりゃ勿論これオープン回線だからね。次からは個別にしといた方が良いっすね』
「うるせぇ! 予想目標地点まであと1分だ。通信切るぞ。それと式波」
『はい!』
「ぶっつけ本番だが機体の用意はした。あとは何とかしてくれ」
次からは通信を開く時はオープンになっていないか確認しようと心に決めた加藤。徐に通信を切ろうとすると、何とも奇妙なセリフが飛び込んできた。
『やって見せろよ中尉っ!』
『何とでもなる筈だっ!』
『後継機だと?!』
『『『鳴らない言葉をもう一度描いて~』』』
「お前ら絶対真希波さんのアニメ見たろ?! どうせカボチャ男のアレだろ?!」
『隊長も知ってんですね。あのアニメ』
「揃ってシアタールームで上映すれば気にもするぞまったく」
マリの映画アーカイブの一つ。
余談ではあるが、過去に映像化不可能とも言われた傑作のひとつを航空隊が見ていたのだが、その上映後、恒例のシミュレータ勝負で例の構文が飛び交った。
主にこの2文。
「やって見せろよ○○!」
「何とでもなる筈だ!」
これが流行りに流行り、艦内では「航空隊構文」とも言われるほどになっていた。
「……っ! レーダーに反応! 12時の方向に艦影4! 見えるか?!」
『まんだ何も見えんよ?! でも遠くの方にバカでかいのがいる!』
「バカデカいの?! SID! レーダー半径広くしてくれ! 最大だ!」
《コマンドを実行します。本機のレーダー出力を全開にします》
突然報告された巨大な何かに、加藤はレーダ半径を最大にしてそれを確認した。
「……っ?! 何だよコレクソデカいじゃねえか?!」
突然の巨大物反応に、皆のアレな話が一斉に潮が引いたかのように収まる。と同時に臨戦態勢に入る。
艦影4。プラス巨大な何か。
今の所機影の方は確認されておらず敵の護衛期の存在はまずは置いておいて良さそうだ。
「玲と式波! 足早いのはお前らだ! 先行して情報を掴んでくれ! 」
『『了解!』』
「総統。スターシャ陛下より、ホットラインが届いております。直接、総統と」
1人の親衛隊士官の報告に頷いたデスラーは、表示されたホログラムと向き合った。
『デスラー総統、一体どういうおつもりですか。波動エネルギーを兵器に転用するとは、正気の沙汰とは思えません』
「抗議かね?」
『そうです』
目の前に現れたスターシャに物おじせずに言葉を交わしてゆく。だがスターシャは姿勢を崩さず、デスラーが放ったデスラー砲について抗議する。自身が与えたはずの技術を勝手に兵器に作り替えられたことに対する憤りはホログラム越しでも伝わるが、デスラーはそれに動じない。
「ならば、あのテロン人達にも抗議をしてみてはどうだろうか」
『どういうこと……』
「君が呼び寄せたあの船……あれを船と呼ぶかは君に任せるが、あれも波動エネルギーを武器に転用している」
『そんな……』
自身が救いの手を差し伸べた星も同じ事をしていた。自身が起こした救済は間違っていたのかと一瞬考えてしまったスターシャは、表情を曇らせる。
「そう言えば君の妹。元気そうでよかったよ」
『どういう事……』
「私が命じて保護させたのだよ」
その微笑は影により怪しい物となり、スターシャはデスラーの真意が読めない。それでも、怪しいことをしていることは目に見えていた。が未ラストイスカンダルの大統合。デスラー政策による大小マゼランの統合。今までの行いを挙げてゆけばキリがない。
『アベルト……いったい何を進めているの』
「君の為だ。スターシャ」
『もうやめて……アベルト』
「……そうか。残念だ」
目線で通信を切らせたデスラーは再び正面を向き、戦況に目を光らせる。
「ヴンダー、依然接近中です」
「そうか。ギムレーに繋いでくれ」
特攻攻撃を浴びても尚接近してくるヴンダー。バレラスタワーの航宙管制室では多数の報告が飛び交っている。それでも現状では場の空気を多少波立たせる程にしかならず、デスラーはギムレーへの通信を開くように伝えた、
『お呼びでしょうか? 総統』
「ギムレー君。首尾はどうだい?」
『特攻機隊第2波を転送し光学で観測を行いましたが、超常的な防空能力でほぼ全てが叩き落されています。ですが総統のご考案された電磁パルス対策が功を奏し、小規模ずつではありますが損害が確実に増えています』
この特攻作戦の立案者はデスラー。各地の収容所からの思想犯の調達。そして薬物による自我消滅。国防軍のポルメリア級の接収と搭載機メランカの特攻仕様への改装。全てデスラーの指示であり、親衛隊はあくまでも実行部隊。
薬物洗脳を受けた思想犯は皆危険思想に走った者であり、現在の政権の転覆やデスラーしか知らぬ国の秘密に触れた者。過激なクーデター派も含まれている。だが、冤罪だと分かっている者には一切手を付けていない。
新たなる帝都とそこに住まう国民。そこに住まうのは限られた臣民で、欲や思想に塗れた者はいらない。
その心境の表れが、この特攻作戦だった。
「神殺しの船……君はそのまま攻撃を続けてくれ。守るべきは新しき都。期待しているよ」
『ザーベルク』
__________
「状況を報告せよ」
「現在、親衛隊各艦が防衛作戦を展開中です。第二バレラス周辺宙域にポルメリア級4。メランカ多数です」
「それと、転送システムの発動による空間波動エコーを確認しています」
総統府バレラスタワーの危機管理センターに集まった閣僚の顔はみな厳しく、総統不在の中ヒスが指揮を執っている。
「ドメラーズ三世に搭載したと報告を受けたアレか」
「恐らくですが、反応を確認する限り転送システムでしょう」
(親衛隊とはいえ食い止められる保証は何処にも無い……だが国防軍の艦艇は無きに等しい。やはり親衛隊に頼るしかないのか……)
ヒスは言い表せようの無い不安感に駆られ、それと同時にデスラーの不在が何故か結びついた。
「総統不在につき、全指揮を一時的に私が預かる! 本土防空隊各基地に緊急発進命令を! 動ける航空団は全部だ!」
「恐れながらヒス副総統。親衛隊による防衛戦が進行中である今、こちらで独自に動いて良いものなのでしょうか?」
「良くは無い。だが、総統不在と親衛隊がどうも気になる。……観測された発光の解析は済んでいるか?」
「正面に出します!」
「解析によりますと、ゲシュ=タム・ドライブ内部でのエネルギー変換に酷似しています。この波形に類似するものが1つ……ヴンダーの例の兵器に酷似しています」
「ヴンダーと同等の兵器か……!」
第2バレラスの開発状況は、民間は勿論の事だが政府内部でも知らされていない者は多い。先程まで「何かが撃たれた」と言う情報でしかなかったが、それがヴンダーと同等のものということが、益々危機感を募らせる。
そんな中でヒスは1つの可能性にぶち当たり、側近の1人に声をかけた。
「……帝都全域に避難勧告を出せるか? 済まないが、私の勘を信じて欲しい」
朱色です
ついにサレザー内惑星系突入です
この話をどのように書こうかなと思ったら、終戦日を超えてしまいました。
色々書いていたのですが、文全体の長さが20000を超えてしまったので今回は前後編に分けて作成と言う形にしました
個人的には後編とその後の話と波動砲の話を書くのがとても楽しみであり、サッサと書いてしまいたいのですが、内容的にかなり大きめの話になるので慎重に書いている感じになっています
後編は必ず1週間後に投稿されるように設定してありますが、その後の話はもう少しかかるかもしれません
では次のお話で(@^^)/~~~