宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
ではお楽しみください。月と日の輪の元に 後編です。
加速度で体をシートの押し付けられながら、山本は自身の右を飛ぶ改2号機に目をやった。
EURO2やコスモファルコンのような滑らかな機体デザインから、継ぎ接ぎで多少凹凸が多くなったデザインに変わっている。
七色星団海戦の直後、山本はEURO2を見に行っていた。戻って来れたのが不思議な位の大破具合だったが、稼働可能なまでに修復が完了して今こうして最大速度で飛行している。
「まるで不死鳥ね」
『目視圏内に捉えた! 玲見える?!』
アスカからの通信に意識を引き戻され、山本は前方の宙域に目を凝らす。
「……見えた! 空母6と要塞も確認! ハッキリだ……まって!」
『どうしたの?!』
「……何か光った。投光器みたいなんだけど、それにしては変に断続的に光ってる」
『……隊長に一本連絡入れて確認向かおう。飛ばす!』
「了解……!」
スロットルを限界まで押し込み2機は流星となる。敵空母艦体は要塞を背にして陣を敷いている。恐らく守備艦隊としての行動だろう。ならば先程の光は何なのか。この宇宙空間でわざわざ投光器を使う理由があるのだろうか。
「行けば分かる筈……!」
(古代さんだってそうしたから!)
脳裏にはアルファ1こと古代の姿があり、今回は出撃していないが彼もコスモゼロ改のパイロット。ハルナに動かされ、救いたいという気持ちが徐々に強くなってきている古代を見て、山本は自身の想いに反して退こうかと考えている。
「想い人」ではなく、「尊敬する人」として、自分はその人を陰で応援していよう。もしもこの作戦で古代が無事に森を救出できて笑顔が戻れば、自分は古代を陰で支えよう。そう思いながら、今回の作戦に参加している。
この場に古代がいなくて良かったと内心で思っている。もし横で飛んでいるのがアスカでなく古代だったら、自分は間違いなくその決断に強力なブレーキをかけている事だろう。
『玲』
全速力の飛行に届けられた戦友の声に、山本は耳を傾けた。
「分かってるわ。私は玲の友達でいる。航空隊の皆もいるでしょ? ちょっと変なの流行ってるけど」
確かに変な物が流行っていると、山本も自覚している。そうだ。自身には航空隊と言う仲間がいた。なら、多少は寂しくないかもしれない。しばらくは心にぽっかり穴が開いたみたいな感覚になるかもしれないが、多分大丈夫だろう。
視界に移り始めた巨大要塞、山本とアスカはその目標に向かって飛び続ける。
__________
「第三波確認!」
「対空戦闘始めっ!!」
Wunderに備え付けられたパルスレーザー砲塔が周囲の空間を赤い雨で満たす。波動防壁は敵の特攻で喪失した。ライフで受けるか全部撃ち落とすかの選択肢しか持てなくなったWunderは、消耗戦に突入し始めていた。
(恐らく要塞からの観測と偵察機体だろう)
「相原、直掩機に繋いでくれ。誰の機体だ?」
「篠原機と沢村機です」
「通信を繋いでくれ」
ここまで正確な転送と特攻は、現地での観測と言う要素があるからだろう。ならば近隣宙域で息をひそめている観測機を落とせば、転送に必要な正確な座標は取得しにくくなるはずだ。
「篠原機。沢村機。こちら艦長だ。敵の空間跳躍には、正確な三次元的座標情報と跳躍地点付近での精密な空間観測情報、そして現地での観測を行う偵察機の存在が必要と思われる。両機には本艦周辺宙域での索敵行動と敵偵察機の撃墜を命ずる」
『篠原了解~』
『沢村了解』
(さて、これで何か分かるか……)
「対空の蓄熱状況はどうか?」
「対空砲塔の砲身がある程度放熱出来ましたのでまた暫くはやれます。敵の波動砲で砲身が融解した方はどうしようもありませんが……」
「構わない。篠原機と沢村機からの撃破報告が来るまで持てばいい」
対空砲塔の苛烈を極める掃射により撃ち漏らしはあれど多くの特攻機を撃破することが出来た。しかし、砲身の強制冷却機構でも間に合わない程の掃射により、砲身の冷却として一定時間のクールタイムを挟まなければならなくなった。対空無しではなぶり殺される以上、そこはどうしても無視できない。
直掩についていた沢村機と篠原機が飛び去り、Wunderの周囲には一時の静寂が戻った。
「第4波用意」
「照射準備急げ! 第四次航空隊配置につかせろ!」
ハイゼラード級キルメナイムの艦橋で紅茶を嗜みながらギムレーは指示を下し、四回目の転送に入った。
「……レーダーに感あり! 敵航空機2 真っ直ぐこちらに向かって来ています」
「ハエがやって来ましたか……。ツヴァルケを出しなさい。掃除をしてもらいましょう」
第二バレラスの断面、その開口部から青いツヴァルケが数機飛び立ち、そのまま正面方向を向いて加速。敵機の迎撃に向かった。
「転送座標は?」
「偵察機からの情報を入力中です」
「転送システム立ち上げなさい、手早く粉々にしましょう。反乱分子もまとめて処理です」
________
「アスカ、敵機確認数4!」
『確認した……!』
正面の要塞から発艦した敵機が4機。倍以上の数を差し向けてきたが、アスカと山本は物怖じしない。機関砲ミサイル共にフル装備。蘇ったEURO2こと改2号機もいる、オマケに重武装。
「まずは敵機の撃破」
『それから謎の光。あんな数で私達を止めれるとか思ってるの?』
「慢心しない。でも、何とでもする」
『改2号機、エンゲージ!』
全武装発射待機。安全装置解除。スロットル最大。その手順を踏むという事は、本気でやるという事。ゼロ改と改2号機は敵機に突っ込んでいく。敵機はそれに応じて散開して数に任せて回りこもうとするが、2機は二手に分かれて2対4の戦いに飛び込む。
敵機が機銃を放つがそれを複雑かつ不規則な軌道で避け切り、高機動で相手の裏を取ろうとする。だが、そこは敵機も想定していたようで、もう一機がそれを許さずゼロ改の進路を塞ぎにかかる。だがそれを改2号機が機銃で牽制し敵機を退かせる。敵機も七色星団で遭遇した者よりも技量が高く、追い回そうとしたら防御され、その防御を剥がしたらまた追い回そうとする。
辛うじて「追い回す」側になれているが、気を抜くと追い回される側になりかねない。
『玲、アレいける?』
「……やってみる! スタンバイ!」
山本の正面にホロディスプレイが展開され、目標である敵機4機をロックオンする。保持してきたミサイルが目標を得た瞬間発射され、搭載された全てのミサイルが各々敵機を追い詰める。だがミサイルに与えられた使命は「敵機の撃墜」ではない。
「今!」
『フラァァァァッ!!』
ミサイルはただの囮。敵機が迎撃したミサイルの爆炎を突っ切り、機銃掃射それぞれ2機撃墜。瞬きが出来ない程の高速戦闘と戦闘機乗りの勘で形勢を一気に逆転させる。最後の一機は果敢にこちらに向かってくるが、それに応じたアスカが改2号機を急加速させて敵機を正面に収める。
刹那、互いの機銃が瞬く。
『居合切りじゃなく居合撃ちね』
その言葉と共に敵機は爆散する。それを背にし、2機はさらに進んでいく。
「沢村~なんか見えるか?」
『レーダーには何も見えないですね。真っ暗ですよ』
「目視ね目視。さてさて……」
直掩から放たれ偵察機殺しとなった沢村と篠原は、レーダーを睨んでいた。だが何も見えない以上ステルスだなと瞬時に悟り、目視に切り替える。
『篠さん! なんかいました!』
「いやお前早くね! 何処だ!」
「座標送ります!」
余りにも早すぎる偵察機捕捉にツッコミを入れる篠原だが、ここまで早く発見できたことに実際驚いている。おまけにその座標はWunderの遥か上方。
「はは~ん。完全ステルスでレーダーに映らない究極忍者って感じか。やっちまうぞ!」
「やります!」
こちらも間髪入れずに機首を敵機に向けて加速。ステルス機がまだ見えていないが、大まかな位置を把握して篠原がバルカンを乱れ撃ちしてステルス機をまずは退かせる。
「オラオラあっちいけ!」
さらに内蔵ミサイルを無誘導の直進で放ち針路誘導。最大速力で回り込んでいる沢村に得物を追い込んでいく。敵機はそれに気づいていないかもしれないが、仮に気づいていてもこれは回避できない。熟練パイロットによる追い込み漁。その弾幕の網の目は細かく、逃れる術がない。
「篠原~食べちゃってくれ」
『い た だ き ま す』
篠原の軽口にノリで帰した沢村によってミサイル発射。牙は確実に獲物に刺さり爆散した。
『ご ち そ う さ ま で し た』
「はいお粗末様。艦橋。こちら篠原機。沢村がステルス観測機を落とした。観測精度は下がったはずだから距離は詰めれる。これより直掩に戻る」
『艦橋了解』
追い込み漁に使われたミサイルはファルコン内蔵型の3分の2。余りはあるがちょっと厳しい。
「沢村~戻る」
『はい!』
任務完了。篠原と沢村は直掩に戻っていった。
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「観測機墜とされました!」
「第4次転送、いけます!」
「照射」
「敵機急速接近! 本艦下部からです!」
ギムレーの命令で再び転送が行われかけたが、突如挙げられた報告でスイッチに添えられた指を放してしまった。
「ツヴァルケ隊は何をやっていたのですか」
「……全機、撃墜されてます」
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「あの尖塔の頂点。あの投光器ね!」
『ええ。アレが光ったから、アレが一番怪しい! 知らないけど!』
「勘ね。でも光ってるしチャージ完了って感じだから!」
敵艦隊の隙間を下からすり抜け、敵要塞に侵入する。要塞ビル群の隙間を縫うように飛び、目標の尖塔に向かう。
『こちらブラボー1! お前ら飛ばし過ぎだ!』
「現状はどうですか?!」
『まもなく敵空母艦隊と会敵する! お前らはその投光器っぽいのを破壊しろ! 多分それで転送してる!』
「『了解!』」
加藤率いる航空隊本隊は間もなく会敵。ならば最も怪しい投光器らしきものを壊すのは、今最も近い2人の役目だ。
『要塞ビル群を抜ける!』
「了解!」
要塞ビル群を抜けるとその先は少し開けていて、目の前に尖塔が見える。その頂点には怪しい投光器が光をため込んでいる。
「あれでワープさせてんの?」
『多分! そうじゃなかったら航空機に波動エンジン付いていることになっちゃう』
「冗談でもやめてそれコワい。自分でワープする航空機とか恐怖の兵器じゃん」
要塞表面を這うように低空飛行をする2機は、機首を天頂方向に強引に向けて垂直上昇を始める。両機のコスモエンジンの航跡が尖塔に沿うように引かれていき、宙を駆けあがる。二本の水色の航跡は真っ直ぐに引かれていき、瞬きすら許されない時間で目標の投光器らしき物に
「『今!!』」
尖塔を駆け上り切る数舜前、2機は装備していたミサイルを投光器めがけて発射。狙いが付け辛い高機動状態の中、無誘導での発射により投光器に突き刺さる。
照射準備を終えてエネルギーがたまっていた投光器……転送システムはスパークを散らし激しく明滅を起こし、その数瞬後爆発した。
「攻撃目標破壊完了! 隊長!」
『分かってらァ! 全機急降下! 空母艦隊と待機中の特攻機全部潰せ!』
『『『了解!』』』
アスカと山本の眼下に広がる要塞の足元で、後続の航空隊が猛禽のごとく襲い掛かる。ロックオンしたミサイルが敵空母に突き刺さり、特攻機が無抵抗でハチの巣に変わっていく。
「野郎! 特攻なんてマネしやがって!」
加藤の怒号と共にミサイルが放たれ、空母が爆発する。辛うじて爆発しなかった空母は対空砲塔を撒き散らす様に乱射されるが、その弾幕は航空隊を阻むには薄すぎたようで、コスモファルコンの侵入を防ぐことが出来ず、さらに一隻沈む。
敵航空母艦からも対空防御が始まるが、艦底部の対空ががら空きなのを確認した航空隊は次々にミサイルを突き刺していき、全長383mの異形の船が焼かれていく。
特攻機も機銃と機関砲で穴だらけになっていき、隊列が崩れ始める。だが、敵からは一切の反撃がない。
『隊長! こいつら反撃してきません変ですよ?!』
「無人機か?!」
『いえ……パイロットが乗ってます』
「こいつら……狂信者か何かなのか?」
その報告を受けた加藤はうすら寒い何かを感じた。特攻戦術と一切反撃してこない有人機。だがそれでも敵であることに変わらず、加藤と航空隊は迷わず敵を撃破していく。
「転送システムオフライン!」
「前衛艦隊、空母に損害多数! メランカ隊ロスト!」
「……足止めはここまでです。行かせなさい。いずれにせよ総統は決行するでしょう」
組織的戦闘力を失った状態……すなわち全滅と言う状態でも姿勢を崩さず声色も崩さない。静かに役目を終えると、ギムレーはキルメナイム周辺で警戒に当たっていたデストリア級とケルカピア級、メルトリア級を多数向かわせて、帝都防衛をしているかのように見せかける。
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「先行した航空隊より入電! 敵航空母艦撃沈、後続の特攻隊の撃破を確認!」
「第四戦速、このままガミラス星に突入する。総員安全ベルト確認。航空隊全機に連絡。作戦終了後に全機回収を行う。全機ガミラス星の近傍宙域より離脱し、警戒に入れ」
特攻隊の恐怖は去り、Wunderはガミラス星に突入することが出来るようになった。敵が次にどのような策を立ててくるのかが分からない。ならば直ちに増速して振り切るのみ。第四戦速まで増速しガミラス星目掛けて突入していく。
「6時より敵艦近づく!」
「構うな。そのまま大気圏突入、対閃光モード用意」
全周スクリーンが暗くなり対閃光モードに切り替わる。一時的に光学情報の視覚化を制限した状態は目隠しに近く、マニュアル操艦……操艦を担う島の腕前にかかる。
波動防壁を艦底部に薄く張り、大気圏突入時の摩擦熱を軽減していく。艦内に微振動が伝わり、大気の壁をその大翼で引き裂いていく。
「モニター、回復します。現在、ガミラス星赤道線上です」
対閃光モードが解除され、景色の色彩が一気に広がる。紺色の空、森、そして空に浮かぶイスカンダルが映え、ついに目の前までやってきたことをその身で実感する。
「シマ航海長。帝都バレラスまでのルートを指示する、その通りに飛んで貰えるか?」
「了解。指示を頼みます」
太田のコンソールに映るガミラス星地表面の情報をもとにしてメルダがナビゲートを行う。
大気を震わせ、Wunderはガミラス星を駆け抜けてゆく。
「本土に敵の侵入を許すとは、親衛隊は何をやっとる!」
「ギムレー……役に立たないヤツめ」
閣僚たちがギムレーに対し悪態をつく中、ヒスだけは厳しい顔をして指示を出した。
「……帝都全域に避難命令を出せ。勧告ではもう済まない」
「副総統! それは……?!」
「考えてみたまえ、我々がテロン人に行った事を。その報復を受けるのが今ということだろう。……無関係な臣民だけでも帝都から無理矢理にでも退避させるんだ。いいな」
「スクランブルの方はどうなっとる」
「はっ! 各基地より実働可能な航空団は全機上がりました」
「した事がした事だ。だが無抵抗というわけにもいかん。済まないが、皆付き合ってもらう」
_______
「このまま直進で帝都バレラス……正面に確認できている外殻の開口部がそうだ」
「了解、針路0-0-0」
地を震わせ、轟音を響かせ、木々を揺らして宙を裂く。
帝都バレラスに侵入を仕掛けるWunderは、上空4000mを飛翔する。
「6時より追尾する敵艦、及び敵機急速接近!」
「距離は?」
「敵艦0.3光秒です。敵機はあと30秒で三式弾の射程に入ります」
「うむ。島、徳川君、可能な限り速度維持しつつ反転180度! 古代、三式弾対空用意!」
「機関は第四を維持しろ! 姿勢制御に回しても速力だけは落とすなよ!」
『慣性制御最大、どうぞ振り回してください』
「反転180度!」
島の操艦と徳川機関長の機関調整と榎本による慣性制御調整で、Wunderはその巨体を振り回し後方を向く。大気圏内での反転180度は大気の壁を強引に押し退ける様な物で、艦体に震動が走る。
「第一第二対空三式用意!」
第一第二主砲に三式弾が装填され、砲身が稼働し始める。仰角調整に数秒もかからずに照準が定まり、戦闘艦橋に発射準備完了の報が届く。
「対空三式撃ち方始め!」
大気圏に轟音と衝撃波を響かせ、第一第二主砲から三式弾が六発発射される。重力で緩やかな曲線を描き、敵航空機の大軍の中に飛び込みそのまま起爆した。残りの航空機は、品切れに近い対空ミサイルに変わり特殊誘導ミサイルで根こそぎ潰す。
「敵航空機排除を確認! 敵艦近づく!」
「艦首戻せ、バレラスに降下する。ディッツ少尉」
「開口部近づく! 航海長!」
「全速急降下!」
一気に高度を下げ、バレラスの開口部に飛び込む。いびつに割れた開口部から覗く煌びやかな都市部と天に突き刺すがごとくのタワーがその中心部に聳え立っている。
「ここが帝都バレラス。このルートを突破すれば、総統府に肉薄できる」
「うむ。本艦はこれより、敵中枢、デスラー総統府を突く」
バレラスに降下したWunderはそのまま直進をかけ、高度1500mを維持しつつ第三船速で駆け抜けてゆく。6時方向から接近する敵艦はそれに泡を食ったかのようにさらなる加速をかけWunderに追いつこうとする。
「6時より接近する敵艦4、同行戦を仕掛ける模様です」
「主砲発射用意。大気圏内砲戦により、主砲は三式とする」
「了解! 第一から第四主砲に三式弾装填! 各砲塔回頭!」
ショックカノンは陽電子砲の類であり、反粒子である陽電子を用いる以上、対消滅によりガンマ線が発生してしまう。宇宙空間であれば何ら問題はないが、大気圏内……それも人口密集地であれば多量のガンマ線の発生により周辺環境が終わってしまう。
Wunderは現在バレラスへの突入を行っているが、あくまでも民間人に危害を加えるためではない。従って艦船のみの撃沈を行うのであれば、46㎝から放たれる三式のみで問題ない。
「照準合わせ、誤差修正1.03! 照準よし!」
「撃ち方始め!」
「撃てぇ!」
轟音と共に12発の三式弾が放たれ、正確に指向された砲塔は発射煙に包まれる。砲弾は正確に敵艦に突き刺さり、4隻の艦艇は機関を破損しビル群を巻き込みながら爆発した。
「9時より12時に回り込む艦艇2!」
「再装填急げ!」
「あと10秒で衝突します!」
「真田、波動防壁を艦種に集中展開。速度そのまま!」
「了解、防壁展開します」
「進路そのまま! 衝撃に備え」
その数秒後波動防壁に衝撃が走り、衝突した青いガミラス艦艇が大きく歪み三日月の様に折れ曲がった。そこから間髪入れずに爆発が起こる。
「このまま総統府側面に接舷する!」
高度を1700まで上げ、Wunderは艦隊を大きく横に回し急減速。右側面をタワーに寄せる形で接舷した。多少揺れたが右舷を総統府にピッタリつける形で艦を停止させたWunderは、操艦を立体式操舵に切り替えて自身を重力で釣り上げ空中で静止した。
「接舷完了! 艦隊各部異常なし!」
「突入隊を出せ。古代、指揮を執れ」
「了解!」
艦内に警報音が再び鳴り響き、古代はコンソールから離れようとする。
________
「ヴンダー、バレラスタワーに接舷しました!」
「接舷だと……? 動ける保安部隊を防衛に回せ。侵入を防ぐ」
「総統の所在をすぐに確認しなさい! テロン人なんかに決して触れさせてはなりません!」
「落ち着け……」
『デウスーラの分離シークエンスを開始します』
「デウスーラだと?」
デウスーラはゼーリックの暗殺計画により爆沈したはず。それが閣僚の中での話。だが、そのデウスーラがどこかから発進しようとしているそのアナウンスに、一同騒然とする。
デウスーラはデスラーの座乗艦で親衛隊のみで運用される。ここまで嫌と言う程繋がって来た親衛隊とデスラーに、閣僚全員は無関係とは思えなかった。
『
「どいてっ!!」
セレステラだけだ何かに気付き、バレラスタワー内部の回廊に向かって走り出した。あの回廊の内部には船が一隻固定されている。それは決して国防軍でも親衛隊の船でもなく、ガミラスに古くから伝わる星を渡るために船だった。もしかしたら……
『
バレラスタワー中心部に秘匿された艦艇に火が灯り、艦尾の主推進からガミラス艦特有の桃色の推進光が満ちる。噴煙と共に艦隊は浮上し始め、旧世代のロケットのごとくバレラスタワー内部を通り抜けて外部へと飛び出した。
「そんな……私を置いて……嘘よ……」
セレステラの叫びも空しく響き、艦艇……デウスーラは宙へと昇っていく。緊急発進したデウスーラはそのままラグランジュポイントL1に向かってゆく。
その艦橋には親衛隊の尉官、佐官がコンソールに詰め、デスラーが艦橋に上がるや否や一糸乱れぬ敬礼を見せる。
「総統。第二バレラスのコントロールは、まもなく掌握予定です」
「……予定通りだな。これより作戦行動に入る」
「ザーベルク」
艦長のハルツ・レクターが敬礼し、艦橋要員の全員が作業に戻る。デスラーはそのまま用意された玉座に座る事もなくただただ立っていた。金色で装飾された艦橋、その正面に映るのは空間機動要塞都市第二バレラス。最大幅25キロを優に超える機動要塞は静かにL1に座し、王を待ち構えている。
それも、王が何をするのかも知らずに。
「総統府から離脱する物体確認」
「脱出艦艇か?」
「これは……全長200m。大きいです」
総統府から離脱する艦艇に一同騒然とし、突入準備が一瞬止まった。その瞬間、ユリーシャが何かを感じ、声を漏らした。
「感じる……ユキが乗っている」
「……っ! アレに雪が?!」
ユリーシャの一言で突入準備を進めていた古代の手が止まり、思わず全周スクリーンの天頂を見上げる。
さらに驚愕を乗せた一報がアナライザーから発せられた。
『警告。ラグランジュポイントL1ヨリ移動スル物体ヲ確認』
「拡大。正面に出してくれ」
___
Wunderがバレラスに落下する物体を確認する1分前、第二バレラスの中央コントロールセンターは混乱していた。
「タラン長官! 中央コントロールシステムが外部からの介入を受けています! 現在防衛中ですが、最高位のアクセス権を使用されている様で長く持ちません!」
「最高位だと……っ?! どこからだ! 特定急げ!」
「このコマンドは……デウスーラ2世からの最高位アクセス権によるコマンドです」
「総統だと……?!」
「タラン長官! 第633工区が分離シークエンスに入ります!」
「……っ?! 非常用爆砕ボルト点火! 633工区の主エネルギー伝導管を爆破しろ!」
「ダメです! こちらからの制御を受け付けません!」
プロセスの強引な停止を命ずるが、その時にはコントロール権限がデスラーに移ってしまっていた。633工区との接合面で爆砕ボルトによる分離が行われ、ゆっくりと分離が始まる。接続されていたケーブル類も接続部で綺麗に分離されて宙に浮く。
慣性で離れたかと思えば、断面の巨大なメインスラスタ複数に光が灯り加速が開始されていく。そのまま落下する633工区は指数的に加速を続けてゆく。
総質量6000万トンほどの塊は、下手な隕石よりも効果がある。一つの都市を文字通り潰すくらい訳もない、岩塊ではなく金属の塊である以上只の隕石よりもずっと質量がありずっと破壊力がある。
そんなものが地表に落ちればどうなるか。まず落下地点は壊滅するだろう。舞い上がったチリは宙を覆いつくし、日の差し込みが極端に悪くなり気温低下。地殻変動に外殻崩壊。起こる事を挙げればキリがない。
「そんな……総統が……」
コンソールを睨みつけるタランの目の前には、入港予定の欄外に表示されている「デウスーラ2世」の文字があった。
意を決したタランは指揮を他の者に任せ、デウスーラの専用ドックに向かった。
「推定重量6000万tラグランジュポイントL1カラ降下シテキマス。推定落着ポイントハ、総統府。ツマリ、ココデス」
アナライザーが確認した事実は戦闘艦橋に衝撃を与え、ただ事実を正面に投影された事実だけが堂々としていた。
L1から落下する巨大構造物は落下軌道上の大気に焼かれるとはいえ、その殆どは地表面に落ちるだろう。
「突入待て。総統府から離脱し、艦首をあげろ」
「艦長……いったい何を……」
「バレラスに落下するあの質量を破壊する。あの質量を一撃で破壊しうる力は、波動砲を持って他にない。……力は正しく使われなければならない。それがメギドの火だとしても、向ける方向を間違えなければ正しく救う事が出来る」
波動砲の使用。そして巨大構造物の破壊。それが自身とバレラスを守るための現状取れる最善の策であるという事は、皆一瞬で理解していた。
「力の咆哮の方向」その答えを示す瞬間が今であるという事を皆がこの言葉で理解した。
「言葉ではなく、その行動で示す。今は誰もが最善を尽くす時。自分がすべき事を自分が成すべき事を……だから私達がユキを……!」
「ダメだ」
その言葉を止めた古代の目は、「決めた目」だった。
「それは、俺がすべき事……俺が示す事だ」
「艦長。自分に、ゼロ改での出撃許可をください」
「……古代。現時点をもって、君の戦術長としての任を解く。別命、古代一尉はこれより、森専務長救出の任を付け」
「はい!」
沖田艦長の決定にユリーシャは一瞬膨れたが、古代と森の事を案じてか素直に引き下がった。素直に引き下がったことに沖田艦長は意外そうな顔をしたが、ユリーシャの態度にサーシャが申し訳なさそうな顔をしている事に気が付き何も言わない事にした。
「しかし艦長、現状波動砲の発射が可能なのは古代です。彼が抜けては……」
現状、波動砲の発射権限を持っているのは、古代しかいない。「権限委譲」と言う手段もあるが、それには開発者側からの権限変更承認が必要であり、現状開発者がこの場にいない以上その手段は取れない。
「いや、それについては問題ない」
妙に笑みを浮かべる沖田艦長に真田は疑問符を浮かべたが、その瞬間、沖田艦長のコンソールの表示の1つが点滅し、戦闘艦橋のハッチが解放された。外部から解放されたハッチの一同が目を向けると、そこに居た人物の存在と生存に一同は少なくない衝撃を覚えた。
「……波動砲は、僕達が撃ちます」
外部から解放された戦闘艦橋のハッチ。そこに立っていたのは2人の人物だった。
1人は紅い目を瞬かせ、白銀の髪が綺麗に結われている。
もう1人は、頭に包帯を巻き左腕を吊っているが、力強く紅い目を瞬かせている。
バレラスに落下する巨大構造物。それを見据える2人の目は決して怯えず、互いに混じり合った紅い光を携えていた。
続く
後編公開です。
原作に沿って書くとどうしても原作のコピーになってしまうので、コピーにならない様に随所に工夫するのが楽しいですね。
色々忙しくなる頃合いですが、本格的に忙しくなってしまう前に書いてしまいましょう
ってことで書いてみました。
次の話ではハルリクと、それをずっと見守ってきた人たちの話になります。
では次の話でお会いしましょう
(@^^)/~~~
思ったよりも難作になりそうなので、かなりかかりそうです