宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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難作なのは次の話でした。案外すんなりいけました

それではイスカンダル中編です


次世代に向けて

 2日前 633工区落下軌道遷移時

 帝都バレラス デスラー総統府内部

 

 

『緊急事態、緊急事態。全職員は、至急総統府から退避せよ。繰り返す、全職員は、総統府より退避せよ』

 

 人工音声による緊急事態宣言が総統府に響き渡り、各々我が身1番に階を降りていく。人を押しのけ、物も散らばり、エレベーターに強引に乗ろうとする者までいる。

 帝都壊滅の危機は優秀な高官さえも烏合の衆に変えてゆく。

 

 それでもヒスを筆頭とした閣僚は、ヒスの指示に従い避難誘導を最後まで行い殿を務める覚悟を決めていた。

 

 

「ヒス副総統! 残りは我々です!」

 

「皆聞こえているな! 緊急用昇降機を用い避難を行う! 全員昇降機に集まれ!」

 

 耳元に装着している通信機を使い一斉に呼びかける。

 大勢を乗せることの可能なエレベーターを職員避難用にまわし、自分と誘導に徹する閣僚はお世辞でもちゃんとしているとは言い難い昇降機で降りるつもりだ。

 

「副総統お早く!」

 

「分かっている!」

 

 危険ながらも自身と共に残ってくれた側近に急かされながらも走り続ける。もう自身らを残して人のいない総統府はひたすらに人工音声が鳴り響き、人がいないこともあり嫌という程よく響く。

 ただ忙しなく響く靴音だけが長い長い通路に響く中、ヒスは通路に倒れ込んでいる1名のザルツ人を見つけた。

 

「しっかりしなさい! 脈はあるか!?」

 

「生きてます、気絶しているだけのようです。恐らく給仕でしょう」

 

 まだ生きている。それを確認したヒスはその給仕係を抱えた。

 

「生きているなら運ぶぞ」

 

「間に合いませんよ!?」

 

「お飾りだろうが私は副総統だ。民を助けて不都合は無いはずだ」

 

 地球換算で御歳54の体にむち打ち何とかその人物を抱えて、再び走り始める。昇降機までそう近い訳では無いのだが、それでも足を止めず走る。

 

「副総統急いで下さい!」

 

「分かっている!!」

 

 小さな昇降機にすし詰め状態の閣僚達から声があがり、声を荒らげる。この歳になってこれほど走ったのは後にも先にもこれきりだろう。だが、次こうなっても問題ないように運動はしておくべきとヒスは固く誓った。

 

 抱えていた給仕係を別の側近に先ずは預け、それから側近を乗せ、自分は最後に乗り込んだ。

 何とか乗り込んだ瞬間に間髪入れずに昇降機が勢いよく降下する。乗り心地は大きく劣るもののスムーズに降下していき、備え付けられた高度計の値が滑らかに減っていく。

 

「この娘、セレステラ情報相のところで給仕をしている娘じゃないか。わざわざ担いできたのですか?」

 

「担いできたとも。生きているからな」

 

 

 ━━━━━

 

 

 昇降機から解放されやっと地上に降りられた閣僚達は、まずはバレラスタワーから離れることにした。尤も、633工区という巨大質量がバレラスと落ちる以上バレラス内に逃げ場は無いのだが、少しでも推定落着地点から離れるべきだ。

 再び給仕係を抱えてヒスは走る。時折息切れを起こしながらも足だけは動かし何とか距離を稼ぐ。

 

 

「……ここは、何処ですか?」

 

「総統府の外だ。避難中に気を失ったことは覚えているか?」

 

「……はい、何が何だかで。何が起こっているんですか?」

 

「第2バレラスの一部が落下してきている。帝都全域に避難命令は出したが間に合わんだろう」

 

 その瞬間、ヒスの耳の届いたのは甲高い鳴き声のような音だった。振り向いた先にはテロンのあの宇宙戦艦。骨格の様な白い物体から目も眩むような光を放ちながら、上空と艦尾に光の輪を生み出していく。

 

「ヴンダーか、何をするつもりだ!?」

 

 青白い稲妻を走らせながらも艦首に莫大なエネルギーを蓄積していく。だが射線は空に向いている。ヒスには1つの予想が生まれたが、正直に言って信じられないものだった。

 

「!? 総員目を塞げ!」

 

 それでもそれしか考えられなかったから指示を飛ばし、閣僚らもその意味を理解して即座に腕で目を庇った。嘗てヴンダーがゾル星系浮遊大陸基地を消し飛ばしたあの砲を今ここで使い、633工区を完全破壊するつもりだ。

 

 ヒスも腕で目を庇ったがその隙間から全てを見る事とした。デスラーが暴挙に走る今、この事実を記憶に焼き付けておけるのは自分自身だ。

 

 そこからはあっという間だった。技術に明るくないヒスが見ても「明らかに過剰なエネルギー」が注ぎ込まれ、バレラスが一瞬白に染った。それがヴンダーの艦首の輝きだと理解するのには時間が必要だったが、その後の光景に対する理解は一瞬で済んだ。

 

 あの633工区が、青白い光に貫かれて崩壊していた。粉々に砕け散った工区は小規模なデブリ郡となり大気圏で燃え尽き、その光景は恐怖を煽りながらも美しくもある光景だった。

 

 

 間髪入れずに爆発音が響き、その方向に目を向けた。

 ヴンダーの艦首から、あの砲撃を行った艦首から爆炎が上がった。青白いエネルギーも一部漏出して霧散した。明らかに自身の攻撃の反動で損壊している。

 

「我々を、助けたのか……」

 

 

 


 

 

 

「大ガミラス帝星暫定政権を代表し私レドフ・ヒスが、イスカンダル王星第1皇女スターシャ・イスカンダル殿下にご報告申し上げます」

 

 その一言から連なるようにスターシャに伝えられた一報は、デスラーの行方不明及び捜索だった。

 

「行方不明……?」

 

「はい。惑星テロンの宇宙戦艦ヴンダーによるバレラス急襲時にバレラスを脱出、第2バレラスから総統座乗艦にご乗艦されヴンダーとの戦闘が行われました。その際に第2バレラス次元波動機関の原因不明の暴走による爆発事故に巻き込まれ、現在行方不明となっております」

 

「また、第2バレラス第633工区の分離とそれに続く落下軌道への投入の件にデスラー総統が関係している事を受け、ガミラス本土防衛艦隊は明後日を持って、デスラー総統への聴取を目的とした捜索活動を開始します」

 

 行方不明に連なる形で続けて、デスラーの捜索開始宣言が行われた。それは決して救出を行うためのもではなく、「一連の事件に対する事情聴取」の為であり、暫定政権がデスラーに対して説明を求めている事の証明だった。

 

「我々はヴンダーに救われました。もう、彼らに対する執着はありません」

 

「貴方々に無くとも、私にはあるのです」

 

 一通りの報告は終了した。ヒスはホットラインを切断しようとしたが、これだけは言わなければと思い口を開いた。

 

「それと、我々を救ったのは波動エネルギーを転用した大砲であり、私見ではありますが発射機構の自壊を覚悟の上で発射したものと思われます」

 

 

「自壊ですか?」

 

「はい。総統府からの避難誘導中に私が肉眼で確認したものであり詳細な記録等が存在しませんが、あの大砲を発射した直後に艦首付近からの爆発が確認できました。彼らはリスクを承知の上で力を行使したのだと、私は考えます」

 

 自壊覚悟での発射。テロン人は自壊を想定出来なかったのかと一瞬スターシャは考えた。だが、あの2人が搭載した事実を考慮に入れればその考えは見当違いであると考え直した。

 

 例え力を失う事となっても正しいと思う方向に力を向ける。それがあの白髪の2人の信念であり全員の意思なのだろう。

 

「後の事は、こちらで判断します」

 

ルードゥ(高貴なる)イスカンダ(イスカンダル)

 

 通信が切れたことでまた静かになった部屋で、スターシャはため息をついた。

 イスカンダルの力を行使していた事に変わりなはい。それでも身を守る事にしか使わず、自壊覚悟で敵さえも救った。

 イスカンダルともガミラスとも違う。イスカンダルは艦隊を星ごと消滅させ、ガミラスは自身の星を壊そうとした。だが地球はその力を生み出した瞬間にそれを理解して鎖を巻き、鍵を付けた。簡単には使えない様に。

 

 その鍵の番人と呼べそうなのがあの2人。恐らくは開発者の一部なのだろうが、彼らの政府はその鎖……縛りに対し良い印象を持たなかっただろう。確かに波動砲は一撃必殺の兵器であり、面制圧能力は兎も角1点に対しての制圧能力が他の星間国家の兵器と比べても群を抜いている。その威力から考えれば、「滅亡間近なのに生まれたての一撃必殺兵器に制約を付けるのは本来ではあり得ない」のだ。

 誰が聞いてもそう思うかもしれない。それでも縛りを与えようとしたのがあの2人であり、波動コアを人質のように扱い縛りを結ばせた。

 

 その上で、縛りの中でしか動けない波動砲をカバーする形であの戦艦は過剰な程の重武装となった。

 

 

「波動砲の番人……。あの2人は、波動砲の力を抑え続けるのかもしれない」

 

 

 スターシャがふと呟いた。波動砲に対する印象は悪い。それでも今後の地球の武力になる可能性は高い。理由としてあの条約は「使用の制限」を明示していて、「使用禁止」ではない。今後は保有しながら抑止力、もしくは最終手段として扱うかもしれない。

 

 波動砲開発と運用の事実で、地球は「イスカンダルの道を辿る」と一度は思った。それでも開発された初期の段階で自己判断で縛りを与えた事実から、今の所は「イスカンダルの道から逃れている」のだ。

 

 

 この力が真に守るための力になるのなら、彼らの未来にこの力が存在し続けても大丈夫かもしれない。だがイスカンダルの負の歴史が引き止める。

 

 

 

「もう一度、話をしなければ」

 

 

 


 

 

 

「……潮の香りだ。前に嗅いだのはいつだったか」

 

「取り戻したいものですね、この景色も」

 

 沖田艦長と佐渡先生は、甲板で風に当たっていた。その手元にはタブレットが握られていて、自身のカルテが表示されている。

 

 

 病名 遊星爆弾症候群(再発兆候あり)

 

 

 遊星爆弾、厳密には地球を侵食する有毒植物の胞子に由来する病であり、その毒に徐々に体を侵されていき多臓器不全により死に至る病である。

 沖田艦長はガミラス戦争中期にこの病に倒れ、97年に何とか持ち直した。それから定期的に検査を行ってきたが、今回の精密検査により再発兆候が見られたのだ。

 根本的な治療方法が無く特効薬なる物も勿論存在しない以上、対症療法を用い患者の回復力に頼るしかない。これが地球のように潤沢な設備と人員が用意された医療施設ならいいのだが、Wunderは軍艦。設備も人員も限られている以上回復には知恵も時間もより多く要する。

 

 

「艦長、貴方の体はギリギリです。心臓に悪いったらありゃあしません」

 

「遊星爆弾症候群かね」

 

「それ以外に何があるとお思いですか? 不治の病ですからどう転ぶか分かりません。尤も、ここまでよく再発しなかったものです」

 

「佐渡先生という宇宙一の名医がいるからだ。お陰で助かったよ」

 

「……今後のこと、分かってらっしゃいますね?」

 

「分かっているよ。ここまでよく持ってくれた以上、自身を労らねばな。……艦長代理は、古代か真田君に務めてもらうつもりだ。私は、軽く口出しをするくらいだろう」

 

「程々にですよ。それと治療中は絶対安静です。帰還して土方宙将に会われるのでしょう?」

 

「儂は死なんよ。いや、まだまだ死ねないな」

 

 タブレットの電源を落とし、沖田艦長は久しぶりに日本酒が飲みたいと思った。治療が始まれば飲酒は出来ない。佐渡先生には内緒で徳川機関長でも呼んでまた飲もうと思い、沖田艦長はほんの少しだけ足取りが軽くなった。

 

(まだ、死ねないな)

 

 

 


 

 

 

「青いな」

 

「ああ。綺麗だな」

 

 戦闘艦橋に映る景色は船体各所に設けられた外部環境カメラからの映像を合成したものである。従って生の映像ではないのだが、今回だけは息をのむほど美しい景色を見せている。

 

 船体下部構造物に設けられたカメラが海中を映し出し、上部構造物のカメラが空を映し出す。海と空の境目がくっきりと映し出され、戦闘艦橋は宇宙では決して見られない幻想的な光景を映し出している。また、航海艦橋が破壊された以上戦闘艦橋が航海艦橋を兼ねている故に、常に空中にある席に移動するために戦闘艦橋は慣性制御技術で常に無重力となっている。

 

「……待つのは、少し苦手だ」

 

「ああ。今は待ちだな」

 

「浮足立つな」

 

 急に低く威厳のある声が響き一同その声の方に向いた。

 

「って沖田艦長ならおっしゃるだろうな。果報は寝て待てってわけじゃないけど、動かない方が良い時もあるって事だ。今は睦月さん達の案を上で練り上げている所だ。あと少しで完成する」

 

「聞いたぞ。条約締結とコスモリバースシステム譲渡の話。マジで結ぶのか? 条約」

 

 まだ事情を断片的にしか知らない島が声を潜めて聞いた。イスカンダルと条約を結ぶという事となり、その件で不安がっているのだ。

 

「睦月さん達がスターシャさんに提案したらしい。なんていうか、その場で相互に練り上げたらしい」

 

「おいおい、その場で相談かよ」

 

「いや、スターシャさんの目の前で相談したわけじゃなくて、互いに思考だけをやり取りしてたらしい。それをその場で組み上げたらしい」

 

「人間……だよな? 睦月さん達」

 

「人間じゃなかったら何なんだよ」

 

「だってさ、古代は体験してないけど俺ら全員『デストルドー』とか言う変なものにやられかけたんだぞ。でもな、睦月さん達だけはそれを完全に壊したんだよ。偽物とはいえ大事な人の幻影をな」

 

「幻影?」

 

「古代、お前睦月さんや暁さんの昔話とか何か知らないのか? 絶対なんかあったろ」

 

「聞いてはいるけど……知られない方が良いな。内緒のままが睦月さんたちにはいいと思う」

 

「お、おう」

 

 そのうち常人では指先すら届かない次元に行ってしまうのではと島は妙な想像をしてしまうが、あの2人は主翼上に座って普通にスイカも食べて普通に寄り添って海を見ていた事を思い出した以上、考え過ぎだと切り上げた。

 

 


 

 

 side ハルナ

 

 謹慎(と言う名の休暇)2日目、私とリクは佐渡先生の元に検査を受けに行きました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後悔しました。

 

 

 

 このWunderに搭載された医療機器と医療班総動員で全身隅々まで検査されてもうグッタリ、医務室のベットで現在突っ伏してます。

 ちなみにリクも同じものを受けさせられて今仰向けで伸びています。

 

 生体スキャン、脳波チェック、昔ながらの心拍血圧測定。あと視力聴力その他五感の検査。

 

 まるで昏睡から起きたあの時みたいに検査尽くし。しばらく医務室には行きたくないと思うくらい検査に引き摺り回されました。そんなこんなで一通りの検査が終わりあとは結果を聞くだけ。

 

「疲れたな」

 

「うん、疲れたね……まさかここまで引き摺りまわされるなんて。ごめんね」

 

「いや、どっちみちこうなるような事揃ってしてたから仕方ない。検査すっ飛ばして艦橋に行ったりとか」

 

「あはは……佐渡先生カンカンだったからね」

 

 あの時の佐渡先生ったら顔真っ赤のカンカン顔で本当に行かせない気だったみたい。佐渡先生、地球に戻ったらいいお酒プレゼントしますから、どうか刀を収めてください。

 

「待たせてすまんね。ようやく結果がまとまった」

 

 佐渡先生、覚悟できてます。

 

 

 _________

 

 

 

 検査終了ってことで真田さんに赤木博士、アスカちゃんにマリさんも入ってきた。気の所為かもしれないけど、真田さんと博士が保護者に見えてくる。問題児扱いですか私達? あ、ごめんなさいそんな目で見ないで博士。

 

「まず睦月君の怪我なんじゃが、取り敢えず跡はどうしても残る。まぁここの医療じゃ限界があるからそこは納得してくれ。左腕の神経は無事。繋がったらすぐにでも動かしてもらっても構わん」

 

「どれくらいですか?」

 

「大雑把に見積もって、地球に着く頃には前より頑丈になっとる。動 か さ な け れ ば な」

 

 痕残っちゃうのはホント申し訳ないけど、ちゃんと動くってのが分かってよかった。……なんかもう手開いたり閉じたりしてるけど問題ないよね? 佐渡先生タブレット握ってる手がプルプルしてる……ああ動かしちゃダメ! タブレットが! 何か軋む音聞こえるし! リクストップ!! 

 

 

「睦月君の話はここまでじゃ。本題はそっち……暁君。目は何ともないんか?」

 

「目ですか? 何ともありませんが……」

 

 ああ、後なんか虹彩が多少変化してるみたいなの。元から赤色っぽかったからよく見ないと……いやこれだとちょっと見ただけでバレそう。目がなんか緋色っぽくなっててなんか多少発光? してるの? 

 

「いいか? 通常虹彩は変わらないんじゃ。カラコンとか病気でもない限り生きている内に虹彩が変わるとかおらんからな? まあ視力は相変わらずの両目0.3じゃから……今は問題なしにしておこう」

 

「リク、これ変じゃないかな……? 真っ赤な目って変じゃない?」

 

「僕は綺麗だと思う。ハルナ髪真っ白だし、対比になってていいと思う」

 

「……お世辞はいやだ」

 

「本心。影響なしならいいじゃないか」

 

「でも人前に出る時は気にした方が良い。あまりにも人の目を引きかねない」

 

「私は別にこのままでもいいですよ?」

 

「おすすめはしないわ。白髪の時点で目立つのに、ここまで真っ赤な目をされたら嫌でも目立つから多少の誤魔化しはした方が良いわ」

 

「地球に帰ってからアイドル事務所に引っ張りだこにグフフフフフ」

 

「マリ、あんた暁さんを事務所に売り込もうとか考えてないでしょうね?」

 

「キノセイキノセイ」

 

「取り敢えず眼鏡を借りて構わないか? スペクトル補正の加工をして自然な虹彩に見える様にしておこうかと思う」

 

「……お願いします。えっと私の眼鏡どこだっけ……ごめんなさい今無いです」

 

 真田さんが言うには、光の波長の一部……波長の長い赤色の光だけ軽く減光できるようにレンズの表面を加工するらしい。そうすれば多少発光している分が落ち着いて見えるようになるから、こうなる前の状態の虹彩にそっくりになるみたい。リクが綺麗って言ってくれるのはとても嬉しいけど、今後の事も考えていくとやっぱりお願いしようかな。

 

「まあ後で持って来なさい」

 

「と言うか何でかけてなかったの?」

 

「えっとね、最初は気にしてなかったけど……3か月目くらいにメガネ無しの方が好きってリクに言われちゃって、それから無しでいようかなって。それまではかけたりかけなかったりだったのよ」

 

 アスカちゃん気になるのね、コレ単純に嬉しかったからなの。メガネ有り無しの好みって別れるから気になっちゃって思わず聞いてみたの。その時顔赤くして答えてくれて……って事で今日までメガネ無しで過ごしてきたの。勿論必要な時はかけてたよ? 

 

「ワ カ リ マ シ タ 惚 気 デ ス ネ」

 

「はい惚気です……って言わせないでください!!」

 

 お願いします、真田さん。それとアスカちゃんはマリさんの除霊お願い。もう悪霊レベル……

 

「ここからが本題じゃ。真面目な話じゃからふざける人は出て行ってくれ」

 

 佐渡先生の引き締まった顔と声にしんと静まり返り、流石のマリさんも顔からも笑みが消えてしまった。自身でも分かってるけど、私の変化は常識的に見ても考えられない事が多い。

 純粋な人間ではない可能性すら考えたくらいだから、ちょっと人外に片足を突っ込んでいても覚悟はできてる。

 

 だって、リク助けるためにリミッター壊しちゃったから。それが何のリミッターなのかは私じゃ分からなかったけど、壊した以上元には戻せないんだと思う。

 

 

 だから、どうなっていても覚悟はできてる。どうなっても一緒にいるだけだから。全部救うために、全部後悔しないためにやったんだから

 

 

 

「暁君。……出生後に何らかの疾患、もしくは実験を受けた……なんて事はないよな?」

 

「本気で言ってるんですか?」

 

 いきなりとんでもない事を聞かれて思わず覚悟が冷めてしまった。私はちゃんとお母さんのお腹から生まれた人間です。悪の組織とかに拉致されて怪人にされたりもしてません。

 境界の時にリミッターは壊したけど、その時背中辺りから何かが噴出したの。「その現象=人外化現象」とは思えないんだけど、明らかにどこかおかしくなっちゃったのかな。

 

「脳波とかも精査したんじゃが何も無し。こうとしか考えられんのじゃ。それか身内から何か遺伝したとか……」

 

「身内?」

 

(流石にあの話はアウトだ……)

 

(佐渡先生には申し訳ないけど……これは内緒にしておきたい)

 

(でも真田さんとかには話しても大丈夫だと思う。僕らの発想だけではどうにもならない)

 

(真田さん口硬い……あ、1回だけポロって「夫妻」って言ったよね)

 

(あれはノーカウントでいいや)

 

(うん、ノーカン)

 

 

 ごめんなさい。整理付いたら話します。お母さんの出自がちょっと信じられないから、まだ時間がかかるの。えっとね、お母さんはちゃんと人間だったの。人間だった。うん……元人間なの。

 風奏さんの記憶にも詳しい情報が無かったけど、分かった事は「ゼーレ」と言う組織が関係していたの。多分そのゼーレが、真田さんが予想した「世界を裏から操れるくらいの組織」だと思う。

 

 もしも23世紀までゼーレが続いていたら、関わるかもしれない。

 

 覚悟は、しておかないと。

 

 

(ハルナ? また何か考えているの)

 

(うん、私の出自の事)

 

(僕も見たけど……薫さんは一体何をされたんだ? 何をされて人以外になった?)

 

(分からない……でも多分、マリさんの形而上生物学に近いのかなって思う。そこは後で伝える)

 

(分かった)

 

 

「お2人さん、フリーズしているところ申し訳ないが続けるぞ」

 

 いけないいけない。やり取りに夢中になりかけていた。佐渡先生続けてください。

 

「真希波君から聞いた分じゃと……自我境界線の融和と可変、同調……それによる相互意思疎通。初見の単語塗れでパンクしそうじゃ。要はあれじゃな。一方通行のテレパシーだな?」

 

「でも、肝心の止め方が分からないんです……」

 

「止められんのか?」

 

「もうずっと繋がりっぱなしです」

 

 そう、止められないの。何をしたら、どうしたら止められるのか全く分からず回線を開きっぱなし状態。多分お母さん由来の力だと思うけど、風奏さんにもらった分では分からない部分があるからあんまり試せてない。

 でもどういう感じなの河犯となく分かっている。私が出来るのは意思の送信と他人の意思の読み取り。何もしないでいると周りにいる人の声が無制限に聞こえてくるから酔ってしまう。だから徹底的に省いてリクだけにしてある。

 

「……そのままでよくない? 他の人と勝手にシンクロするより、これ以上弄らずに固定しちゃおう」

 

「それ睦月君も危ないんじゃぞ?」

 

「ハルナ、僕が何考えているか分かるよね?」

 

「わかるけど、それがどうかしたの?」

 

「じゃあ佐渡先生の考えている事は?」

 

「分からないわ」

 

 何でもない時ならお酒のこと考えていそうだけど、流石に分からないよ。

 

「オッケー。体調に異常は?」

 

「ない。リクだけ聞こえるように他の声カットしてるから、頭痛いとか気持ち悪いとかないよ」

 

「って事です。制御を失っ一対体多数でシンクロなんか始まったら大変です。多分ハルナは潰れますし無理矢理シンクロされた人は多分精神が壊れます。だったら、シンクロしても何ら問題の無い僕で固定しておく方が良いかなって思います。マリさん、大体解釈あってますよね?」

 

「まぁ……大人の自我境界は固いからシンクロで心殺っちゃうかもしれんって書いてあるし、リっくんならハルナっちとの付き合いめちゃ長いしぶっちゃけ相思相愛だから……2人がくっついている理由が増えただけかにゃ。ちなみに常時シンクロ中のご感想は?」

 

「あったかい。ずっとこの辺に手が当てられている感じかな」

 

「分かる分かる。ずーっと胸がボンヤリ暖かいよね」

 

「なるほどなるほど、つまり互いに胸触っているって事に(ryおっとゲフンゲフン。異常ないならいいけど、取り敢えずなんかあったら言うにゃ。これでも大学飛び級してるから」

 

「助かります」

 

「お姉さんを頼りなさい」

 

「という事で先生。暁君の検査結果は、結局どうなんですか?」

 

 最初から結論を聞きたがっていた真田さんが身を乗り出して聞いてきた。

 

「……一応異常なしじゃ。あと暁君、気を抜いたら周辺被害が出るかもしれん。そこは忘れんように」

 

「分かりました」

 

「はい帰って良し」

 

 やっと解放された。さあ研究室に戻ってあと数時間の休暇を堪能しよう。

 

「ああ言い忘れとった」

 

「どうかしましたか?」

 

「これはまだ秘密なんじゃが、真田君とかもいるから話しとかんとな。沖田艦長の持病が再発する可能性があるんじゃ。艦長は長期療養に入られる。そういう事で、艦長代理は真田君と古代にお任せるされるつもりらしい」

 

「やっぱりですね。艦長のご病気はなんですか?」

 

「遊星爆弾症候群。一度持ち直したんじゃが、ここまでの無理が響いて再発リスクが上がっとったんじゃ。イスカンダル出発前に古代にも正式に事例が下るだろう」

 

 

 そっか。沖田艦長、ここまで人類の運命を背負われて指揮を執られたからね。

 沖田艦長。あとは古代くんと真田さん、私達にお任せください。

 

 私達では沖田艦長には届かないけど、皆で頑張って肩車して手を伸ばせば沖田艦長に届くかな? 

 

(私が言うの何だけど、「ぶっ壊れ枠」って感じで頑張ろうかな)

 

(やり過ぎだ。古代くんの戦法を技術枠でバックアップするくらいかな)

 

 


 

 

 side リク

 

 謹慎(休暇)が明けたという事で沖田艦長と真田さん、古代くんの会議に参加しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

 画面上に沢山アイディアが並んでる、沖田艦長、真田さん、古代君、お疲れ様です。あ、今度フルーツ持ってこう。スイカ以外にも育ててたから。

 

「来たかね」

 

「謹慎(休暇)明けました」

 

「どうでしたか?」

 

「丸一日検査で潰れた以外はのんびりできたよ。あ、スイカ食べた?」

 

「ごちそうさまでした」

 

「真田君がここまでして休暇を取らせようとするのは、済まないが面白かった」

 

「艦長……」

 

「真田君、いい友人がいるじゃないか。大事にしなさい」

 

「……はい」

 

「早速だが、こちらで纏めてみた物を見てもらえるかな? 私は政治家ではないが、可能な限り知恵を絞ったつもりだ」

 

「拝見します」

 

(うわぁ……)

 

 思わず言葉を失った。夥しい数のアイディアからこれ程の草案と条件が出来上がった事に、僕は驚きの余り暫く言葉を失い動けなかった。

 何故動けなくなったのかだけど、まずはとにかくこれを見て欲しい。

 これは第1条と第2条の条文だ。

 

 仮称 イスク・サン・アリア条約

 

 第1条 

 国際連合安全保障理事会及びその下部組織である国際連合宇宙海軍、若しくは上記の組織の後継に当たる「軍事的行動が可能な組織」は、対艦又は対惑星を目的とした波動砲の使用を禁ずる。

 

 第1条捕捉

 地球人類の存続の危機と判断された場合、非常事態宣言による特例に基づき波動砲の対艦隊戦使用を容認する

 

 第2条

 波動砲艦艇保有数は○○隻とする

 

 

「○○隻……」

 

「その部分は決めるわけにはいかなくて、イスカンダルとの協議がどうしても必要です」

 

 古代くんの顔も厳しい顔になっている。それもそうだ。今はWunder1隻だけど、これが複数隻になってしまうんだ。でも、地球を波動砲抜きで守り切れと言われたら実際心もとないと思う。

 現状の使用制限条約では、各管区で10隻まで。あの時は波動砲の効果範囲とその威力がシミュレーション上でしか再現できなかったが故の判断であり、木星や恒星のフレア、巨大構造物と言った物を撃っていく事でその威力と硬貨が分かってきた。

 正真正銘紛れもなく「核兵器枠」だった。

 

「この波動砲搭載艦が、使われずに順次退役していく事を願うよ」

 

「だが、現状波動砲の効果とその優位性は地球側も理解しているはずだ。それこそ、条約を放棄してでも数を揃えて対艦戦に用いる思想も少なからず存在しているだろう。それ以上に、殆どの艦艇と経験者が失われた以上戦術に長けた者は少ない。結局のところは波動砲艦隊を用いたアウトレンジ戦法しか取れないかもしれない」

 

「……波動砲一斉射で100隻撃破できる波動砲艦隊と通常兵器と戦術で100隻撃破できる防衛艦隊。戦術的戦略的に見ればどちらが好ましいですか?」

 

 突然だけどここで問いを投げかけてみよう。波動砲は戦略兵器であり、たった1射で盤面をひっくり返せる兵器だ。条約は一旦忘れて考えてみて欲しい。1回撃つだけで小宇宙並みのエネルギーを消費してしまう。再充填にはかなりの時間がかかる以上的には大きな隙を見せる事となる。

 

 実は「隙が大きい問題」は解決できてしまう。波動砲艦隊をマスケット銃の様に数を揃え、1回撃ったら後ろに回り補給に回る。後ろに控えていた艦艇が波動砲の発射シークエンスに入る。そして撃つ。これの繰り返しなら隙を可能な限り減らしながら波動砲斉射を連続で行うことが出来る。

 これは、安土桃山時代に行われた戦い「長篠の戦」で織田信長が使ったらしい戦法を真似た方法で、当時信長は火縄銃を大量に用意して「三段撃ち」という「火縄銃を効率的に使う戦術」を使って勝利したらしい。ちなみに諸説ありだ。未だに本当かどうか分からない。

 

 だが、これは敵が真正面から突撃してくれた時に最も効果的な方法。宇宙空間での戦闘は前後左右上下関係なく動き回れる以上、敵が側面や後方、上下から奇襲して来たらアウト。ワープもある以上上から奇襲を受ける事もかなりあり得ると思う。

 

 それ以上に波動砲は、面(ry

 

 

 

「面制圧兵器ではない」

 

 ハルナ、フライング。あってるけどフライングだ。頬引っ張っちゃうか。

 

「うにゃあ」

 

「分かるのはいいけど、今は言っちゃダメ」

 

「……ふぁい」

 

「面制圧兵器ではない?」

 

「言っちゃった。例えば航海中に作ったカミナリサマは、ミサイル内部にEMP発生装置を大量に内包してそれを散らす事で効果的に敵機を無力化します。この事実から、用語としては違いますがカミナリサマは面制圧能力がかなり高いと見れるんです」

 

「その反面、エネルギーを集中させて一気に放っても敵の大艦隊に向けて放っても敵艦隊の一部に穴を開ける事しか出来ず、そこに増援が入れば穴は塞がり戦果は無かったことになります。特定の目標の破壊に対してはかなり効果的かもしれませんが、それ以外では使い道が限られてしまうんですよ」

 

 ハルナが言ってしまったけど、要はそういう事だ。

 波動砲は一点集中でエネルギーの束を捻じ込んでいるんだけど、一言で言えば「超強力な槍」だ。だが溜め時間が大きく外れたら意味がなく、外したら一気に無防備な状態になる。

 

 尤も、散弾銃のように広範囲を穴だらけにしたりホーミングで全部射抜けるような波動砲なんかが出てきたらそのへんの問題は全部無かった事になる。この場で名前を付けるなら「拡散波動砲」。こんなモンスターが生まれたら波動砲艦隊の出現と大軍拡時代の到来だろう。

 

「……波動砲は発射までに多くの時間とエネルギーを要する。艦の全エネルギーを集中させる以上波動防壁も展開できない以上無防備な状態となる。それならば、防壁で守りを固めながら主砲を用いて的確に撃沈させる方が効果的だろう。カ2号作戦の時点でショックカノンはガミラス艦艇を撃沈した。Wunderは砲塔単位のショックカノンでガミラス艦隊に対し優位に立った。それならばショックカノンを、もしくはそれを発展させた通常兵器を搭載した艦艇を揃えて防衛が出来るならば、波動砲艦隊よりもエネルギーロスを抑えながらの防衛が可能だろう。艦隊の練度不足は、ソフトとハードの面で支えられる。さらに、用意されたある程度の戦術を習得すれば、戦術歩兵を行わずに済むかもしれん」

 

「そういう事です。波動砲制限下での防衛行動は効果的な砲撃と機動力、戦術に沿った機動戦が必要と感じます。ビームの威力と装甲と速力がモノを言う宇宙艦隊戦では今まで以上の装甲と機動力と打撃力が要求されます。ですが、少なくともこれを揃えて踏み台を使ってでも練度を上げれば防衛は可能だと思います。これならば、波動砲艦隊出現を防ぎながら、波動砲を正真正銘の最後の手段にする事が出来ます」

 

 そう、波動砲は最終手段。言い方悪いけどバカスカ撃てば勝ててしまう訳でもないし、波動砲三段撃ちなんか始めてしまったら戦術の単純化による弱体化が始まってしまう。「国連宇宙海軍再び壊滅!」なんて未来は来てほしくない。

 さて、そこで問題になって来るのは……

 

「待って下さい。それではまずそれが可能な次世代艦艇を用意する事から始めないとダメです。そんな理想を全て詰め込んだ艦艇なんて……あっ!」

 

 そう、船の問題。そんな理想的な艦艇は今の地球にはありません。

 でも安心して古代くん、ここにいますよ。超戦艦を設計した2人組が。

 

(まあ作るよね?)

 

(と言うかやるしかない。無いと困るし地球に着いてから作ってても時間が無い)

 

(休暇明けにトンデモ仕事作っちゃって。忙しくなるね)

 

(極端な話、僕とハルナなら何でもできるでしょ)

 

「金剛村雨磯風型をベースにした第2世代艦艇を僕らで作ります。少なくともガミラス艦艇と正面切って堂々と勝てるくらいの物を」

 

 無いから作るんです。あったらやりません。という事で作ってしまいましょう第2世代艦艇。

 

「博士の言ったとおりだ。君達は2のn乗だな」

 

「「どういうことですか?」」

 

「まあ気にしないでくれ。でも2人でまた作るつもりか?」

 

「いや、時間も少ないので流石に無理ですよ。ですので、地球に帰るまでの時間を使って機能定義や外装を設計したりします。帰還次第、艦艇の設計経験とかそういう部署のある企業の協力を仰いで新規に部署でも設立します。南部重工やエプシロンといったWunder改修にお世話になった企業の方々にはもうお願いする積もりです」

 

 さて、戻ったら仕事仕事。第二世代艦艇の機能要件から始めないとな。取り敢えず波動エンジンとワープとショックカノンは大前提だ。それ以外にも付けれる物は付けていきたいな。

 

 取り敢えずここで分かったのは、「地球は今後も波動砲を持つだろう」という事だ。最終兵器は持っておいた方が良いけど使わずに済む方が良い。厳重な管理の下で運用する事を前提にすれば、スターシャさんにも納得してもらえるかもしれない。

 

 ところで、僕は「あとは使い手次第だ」と言う言葉はあまり好きじゃない。まるで作った本人が責任から逃げている感じがするからね。これが兵器の設計や製造であるならば、壮大な責任放棄にしか聞こえない。だから、波動砲を生み出した者達として、これからもその力が守るために使われるようにうまく調整していかないと。

 

 

 ……地球の上層部を信じないってわけじゃないけど、隠し手札のカウンターでも作っておこうか。

 

 

 


 

 

 

 

 3日後。諸々の準備が終了し、沖田艦長と真田、Wunder生みの親のリクとハルナ、波動砲を撃ってきた古代は再び王都の大宮殿を訪れた。

 

 イスカンドロイドに応接室に通された一同はその広さに圧倒されているが、リクとハルナはもう慣れたと言わんばかりに落ち着いている。

 

「沖田艦長、お体の方は?」

 

「大丈夫だ。もしかして、知っているのかね?」

 

「佐渡先生から聞きました、復路は療養なさると。それと、ご病気の件も」

 

「復路は、古代と真田君に艦長代理を任せるつもりでいる。君達は、戦術科や航海科、機関科からの意見も参考にしながら、新型艦艇の設計に入ってもらいたい。戦術の方は……私が考えてみよう。内惑星戦争の経験が活きるかもしれん」

 

「勿論です。波動砲は万能ではない以上、通常兵力での防衛が重要です。なるべく早めに性能表を仕上げてみますね」

 

「慌てないように。時間は無いわけではない」

 

 意気込む2人を抑えるようにして沖田艦長が念の為釘をさす。自身が戦術、あの2人が建造を創り出す。それまで自身が生きていられるかは今後次第だが、それでもその未来を一目見て見たいと沖田艦長はそっと笑みを浮かべた。

 

 

 __________

 

 

 

 スターシャ陛下から緊急のお呼び出しを受けたため、私はクリスタルパレスに向かった。テロンの宇宙戦艦の乗員……テロン人との条約締結を打診され、閣僚内では紛糾した。だが、ヴンダーの来訪で領内は引っ掻き回され、デスラー体制すら崩壊した。主力艦隊の戦力はいまだ多く残されているが、指揮系統が混乱している今ではどうしようもない。

 

 ある意味、負けたのだ。

 

 その相手からの休戦協定の申し出は、余りにもタイミングが良すぎる。ヴンダーがイスカンダルに到着したのは観測していた。その相手が何を求めてイスカンダルに向かったかはまだよく分からない。

 だが今は、条約云々よりもまずは頭を下げるべきだろう。ヴンダーのあの一撃が無ければがバレラスは終わっていた。バレラス総人口6000万人の命、いやガミラス星50億の命は、ヴンダーによって救われた。

 

 それに、彼らの目標はイスカンダルに向かう事で、我々と正面から戦う事ではない。今までだって降りかかる火の粉を払い続けていただけだ。

 

 これ以上の争いは互いが望まない、ここで終わらせなければ誰が終わらせる? 

 

 

「……真意は、確かめないとな」

 

 

 大ガミラス帝星暫定政権代表レドフ・ヒス。クリスタルパレスに到着し、大きく深呼吸をした。

 

 

 

 __________

 

 

 

 

「時間です。行きましょう」

 

 端末の時計を確認した真田は立ち上がり、2人も古代も沖田艦長も立ち上がり前室を出る。

 

 扉の先は応接室が広々と広がり、視界の先にはスターシャが。正面の応接用テーブル、その向こう側にスターシャが。テーブルの右側にはその相手が。

 

 

「皆さん集まりましたね。では、始めましょう」

 

 ここに、大ガミラス帝星暫定政権との和平交渉が始まった。




再び縛りを与えられる波動砲と、地球の今後の力を書いてみました。

この物語では、波動砲の扱いで苦悩する古代くんを次回作で書かないようにする為に色々手回しをしていきました。ですが、現実はそうはいかない。地球の今後を考えれば波動砲と言う力は持っていた方が良い。ですがそれは「いざと言う時の最終兵器」で、波動砲艦隊でバカスカ撃って良い物ではないと思います。

……2202の波動砲艦隊を悪く言ってるように聞こえますが、僕としてはちゃんとした艦隊戦を書きたいんです。だからそのための準備として波動砲をイスカンダルでもう一度縛り、通常兵装でかなり優位に立てる艦艇の建造がここで決まりました。

次の話はまだまだかかります。年末までには出すつもりですので、それまでどうかお待ちください。

(@^^)/~~~


追記

どなたか感想下さい。モチベが保てそうにありません……
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