宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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「ここ、何処なの?」

 

 目を覚ましたら知らない所にいた。真っ白な壁が見えて、すごい簡易的なベットの様な物に横たわっている。どうやら2段ベットみたい。

 

「確か、設計してていいとこで区切り付いたからベット入って……夢?」

 

 確かヤタノカガミの大雑把な設計と機能概要してて、丁度キリのいいとこで寝ちゃったんだった。

 それにしては、夢にしてはかなり良く出来てるけどこんな物想像したことないし、こんな所来たこともない。ふと横渡ってたベットを見ると、誰かが使ってた跡があった。……網紐? ガラス瓶? 誰の物? 

 

「この部屋って誰の部屋だったの?」

 

 もっと探してみる。知らない人の部屋漁りはちょっといけない事だけど、部屋主さんごめんなさい調べさせてください。

 それにしても何か結構色々ある、電話に枕に……拳銃なんかもあった。それもリボルバーでだいぶ昔の火薬式。私はあまり詳しくないけど、触ってみた感じ弾も入っていて撃とうと思えばすぐにでも撃ててしまう感じ。流石に南部重工の97式拳銃は扱ったことあるけどこれは初めて。あんまり持ちたくないけど異常事態だから持つしかないかな、ごめんなさい借ります。

 

 持つ物持って自動ドアを開けて外に出てみる。何とか拵えた空間に無理やり拵えたかのような居住空間って感じがする。通路もWunderよりもずっと狭く出来ている。

 

「ん?」

 

 さっきまでいた部屋を振り返ると、自動ドアに名前が書かれていた。

 

 [SAKURA SUZUHARA]

 [MIDORI KITAKAMI]

 

 

「日本系の名前だ……」

 

 日本人……というか極東系の人間が乗っているらしい。よく見るとリボルバーのグリップにも氏名が書かれていた。

 

 [SAKURA SUZUHARA]

 

 おまけに弾が数発入ってなくて既に撃った後みたい。……何かあったのかな、このサクラさん。

 

 

 _______

 

 

 

 人2人が横に並んでギリギリ通れるくらいの通路を進んでいく。何かある訳でもなかったけど、同じような景色がずっと続いていて逆に不安になる。

 少し前にマリさんに見せてもらった21世紀の話に、BackRoomがどうたらこうたらって言うのがあった。何かの拍子に裏世界に入ってしまうって言うアレ。そして色々モンスターがいたり即死トラップがどうとかっていうアレ。作業しながら見ていたから全部覚えているわけじゃないけど、それなりに面白くて少し怖い内容だった。

 

「夢なら覚めてね……」

 

 と呟いて正面の巨大なハッチを開ける。電源は生きているのは確認済みだから、巨大なハッチは部屋の内側に向けて持ち上がるようにして開いた。

 

「何この部屋?」

 

 球体状の空間が広がっていて、コンクリ……じゃない、特殊合金の装甲板でかなり頑丈に固められている。その中央にはプレハブが置いてあり、そこまで簡易的な足場が伸びている。

 兎に角慎重にその足場を渡ってみる。頑丈なんだけど少し高い位置だから慎重にっと。

 

「っと。着いたけど、これって……」

 

 プレハブを眺めて見て分かったのは、この部屋は「明らかに爆殺が出来るようにした部屋」だって事。プレハブの周囲に指向性の爆薬が取り付けられている。それも多すぎな程に。壁の面積が許す限り兎に角取り付けられてる。

 ガラスの扉の奥にはこれでもかと言う程大量の本が押し込まれていて、ギリギリ2人くらいが生活できるくらいのスペースが辛うじて保たれていた。

 マリさんならこういう事しそう。紙の本集め始めたら断捨離とかせずに部屋が本で占拠されそう……。

 

 本の話は置いておいて、ちょっとこの部屋は物騒すぎる。……誰かを閉じ込める目的で作ったの? それもかなりの危険人物を。

 

「あれは?」

 

 本の山になってる部屋の中に何か落ちてる。艦内用の携帯端末にしては変わった形をしてるしボタンも付いてる。おまけに横向きにもっても使えるタイプだ。

 

「これゲーム機じゃん」

 

 火星の頃ゲームとかほとんどやらなかったけど流石にゲーム機位は分かる。でもこれは古すぎる。製造年とかは……分からないや。取れないから分からない。でも、「WonderSwan」って表面に書いてある。これが多分ゲーム機の名前だと思う。

 

 

 ……これ以上ここには長居したくない、一回戻ろう。

 

 

 ____

 

 

 

 歩き回った結果、最初に軍事施設なのではと考えた。明らかに狭い居住空間と謎の物騒な隔離室の件もあってそれ以外の選択肢が思いつかない。

 でも、ふと立ち寄った部屋に設置された艦内マップを見て、目を見開いた。

 

 

 

「これ……AAAWunderの中なんだ」

 

 

 

 そう、今私がいるのは、多分AAAWunderの艦内。今まだ私が見てきた部屋とか例の爆破部屋もちゃんと位置が決まっていた。そのマップに従ってもう一度爆破部屋まで行ってみたけどちゃんと辿り着いたからちゃんと艦内だ。

 ……爆破部屋まで行くのは正直気が乗らなかったけど。

 今はそのマップを何とかして取り外して艦橋に向かっている。

 

 驚いたのは、WunderとAAAWunderは殆ど同じ形状をしているという事。これは物凄い偶然だと思うけど、まだ開いた口が塞がらない。本当に驚いた。

 違う所は、旧AAAWunderはかなり武装が少ないという事。マップを見た感じではレールガンが5基しか付いていない。連射できるみたいだけど手数が余りにも少なすぎる。

 

 そして、AAAWunderはどちらかと言うと戦艦と言うより航空母艦って感じじゃないかなって思った。理由としては、この船はエヴァンゲリオンを格納出来て整備も出来るようになってたから。第二船体のほぼ半分を使ってエヴァの格納と整備を行い発進も出来る。だとしたらレールガン5基は迎撃能力みたいな感じかな。

 

 でも気になったのは、第二船体のレールガンを見に行った時にレールガンが無くなっていたこと。それにフレームが大きく歪んでいて大穴も空いていた。まるで巨大で鋭利な鉄の柱が貫通したみたいな破損状況だった。正直言って何で貫通させられたのか分かんないけど、こんな大穴が開いていても船体が千切れていない事は奇跡だと思う。おまけに補助エンジンらしいN2リアクターと言う反応炉も壊れていた。

 

 

 

「ここが航海艦橋ね」

 

 自動ドアが解放され、とにかく入ってみる事にした。

 

「航海艦橋……だよね?」

 

 ……夢の中でもWunderの中というのは何かおかしい気がするけど、今は別の疑問が浮上しているので一旦隅に置いておく。航海艦橋は敵の自爆攻撃でボロボロになってしまって修復が見送られたけど、今見ているヒルムシュタムタワーは元に戻ったかのように綺麗な見た目をしている。

 ここまでなら「夢だから」で片付けられるけど、実際に「全部設計してた」から分かる。艦長席を始めとした各員の席のコンソールが異なっている。それに薄暗くてよく見えないけど、艦橋後部の奥の方にうっすらと「MAGI」って書いてある。MAGIってこんなとこに付けた憶えないし……。

 

「……西暦2028年4月7日。地球の静止衛星軌道上から発進したブンダーは、旧南極爆心地跡のNERV本部を強襲した」

 

 突然声が響いて思わずリボルバーに手をかける。オバケとか無理だよ。

 ……ふざけていられる状況じゃないってのは分かっているよ。でも、こうでもしないと気が気でないの。一人ぼっちだし、明らかに現実じゃないし……後リクいないから寂しいし。

 

「驚かせてゴメン。ちょっち話したいことがあったから呼び寄せてもらったの」

 

 ……今確信した。多分、今目の前にいる人物は、あの時バレラスで戦った時に現れた人物。初代艦長だ。

 

「私を呼び寄せたって、そんな……兎に角、私は暁ハルナです。貴方は誰なんですか?」

 

「AAAWunderの初代艦長、葛城ミサトよ」

 

 


 

 

「葛城さん」

 

「ミサト、で良いわよ」

 

「ミサトさん。初代艦長という事は、貴方は170年前に何処かで何かと戦い、ここに流れ着いたという事ですか?」

 

「驚いた……どうしてそこまで分かったの?」

 

「このWunderの中枢部、私達はアンノウンドライブって呼んでましたが、そこに旧Wunder時のマーキングっぽいものがあったんです。ちゃんと地球言語でちゃんと規格化されて意味も持たされて書かれていました。それに、私だけの知恵じゃないんですよ? リクに真田さん、赤木博士にマリさんアスカちゃん、みんなで知恵を絞った結果の答えです」

 

「リツコとアスカ、マリまでいるのね……懐かしいわ、もう100年も前なのに」

 

「そちらにも赤木博士はいらっしゃったんですね。……ところで、教えてもらえませんか? ミサトさん達がいた世界で何が起こったのか」

 

「……長いわよ」

 

「大丈夫です、ここは時間の感覚すら曖昧みたいなので。それにWunderがこっちに流れてきた以上、他に何か来ていても可笑しくはないんです。例えば……エヴァンゲリオンのような物とか」

 

「っ……!」

 

「ご存じですね、エヴァンゲリオン」

 

 この反応、やっぱりエヴァンゲリオンとWunderは切っても切れない関係みたい。どっちが先に生まれたかは分からないけど、この調子だとType nullも向こうから? 

 でも、ガリラヤの巨人とアンノウンドライブの組成が一緒だった件もあって両方は同じ種族だってことは分かってるけど、それでType nullがエヴァ……いや、向こうからやって来たオリジナルエヴァかは証明できないな。

 

「何故、エバーの事まで知っているの?」

 

「見たからです。向こうで生まれた機体かは分かりませんが、こちらの世界にもエヴァンゲリオンはいます」

 

「……」

 

「あなたが知っている事、見てきた事を一通り教えてください。この世界にイレギュラーがやって来ている以上どうなってもおかしくありません。最悪どうなっても、最低限対処できるようにしたいんです」

 

「一人で抱えるには、重すぎるわよ」

 

 過去の戦争の話がどういう物か想像は付かない。それでも、この世界線に別世界産のオーバーテクノロジーがやって来ているという事は、それによって投じられた一石の影響で今後の予測がつかない。だって分からないモノだから。

 アンノウンドライブだってさえ本来の運用方法は分からない。今は重力子を生み出す側面を利用しているけど、それ以上の事は分からない。

 

 それ以上に……

 

「平気です。それに私隠し事は無理なんです顔によく出るので。多分どう足掻いても彼には気付かれてしまうので、後で全部話しちゃいます」

 

 バレちゃうから結局はこっちから話した方が良いの。

 

「……分かったわ。全て話すわ。私が見てきた事を、何をしてきたのか」

 

 

 

 __________

 

 

 

 

 ヒルムシュタムタワーに上がりながら、ミサトさんと私は航海艦橋の向こう側、艦の外を眺めた。

 

「変な景色、ですね」

 

「アナザーのあの瞬間で止まっているの。……何処から話そうか」

 

 航海艦橋の丸い窓。その向こうには虹色に染まった同心円が中心に真っ黒な穴を開けて広がっている。宗教神話か作り物にしか見えないけど、多分これはイメージなんかじゃない。本当に実際に起こっていたんだと思う。

でも、一切景色が変化していない。ホントに止まってるんだ……。

 

「……まず私達のいた世界は、使徒と言う準完全生命体と人類がいたの。初めは南極にいた何かが、私の父の提唱した人類補完計画の実験の為に利用されて南極のカルヴァリーベースが消滅して死の大陸になった。これを、私達はセカンドインパクトと言った」

 

「その数年くらい後に、日本の箱根辺りに黒き月が見つかった。黒き月と言うのは第2使徒リリスという神様もどきが入っていた卵みたいな物。実際は聖杯に近い形状しているけど私達は黒き月って呼んでいた」

 

「セカンドインパクトから14年経ったあの日、最初の使徒侵攻があった。その時に動いたのは、国連の非公開組織『特務機関NERV』と碇シンジ君。シンジ君は、エヴァンゲリオン試験初号機の選任パイロットになった少年で、元々私の同居人だった子なの」

 

「碇シンジ君? その子でしたら、この時代の22世紀上で生きていますよ」

 

「こっちのシンジ君は、22世紀で生きているの?」

 

「はい。今は冬月さんと一緒に極東……日本の地下都市で生活しています」

 

 え? シンジ君がこっちにもあっちにもいるの? って事は、並行宇宙があって世界線が幾つも並んでて……うわぁごちゃごちゃする。

 でも、向こうの世界線で向こう側の南極カルヴァリーベースでミサトさんのお父さんが何かしたって事は、並行世界線では同じ人物が必ず存在していると仮定したうえで考えると、ガリラヤベースの事故は「こっちのミサトさんのお父さん」がやった事かもしれない。書かれてなかった生存者は、ミサトさんなのかな? 

 ……でも聞いちゃマズい気がする。

 

「状況は把握しているけど、人類じゃなく異星人による物だったとはね」

 

「遊星爆弾と有毒植物の胞子。ある意味この赤い世界よりも酷いかもしれません」

 

「どちらも酷い有様ね。でも、あなた達の方がまだずっとマシ。地球再生用の装置を手に入れて艦体に組み込んだんでしょう?」

 

 ミサトは自身の左腕を叩きながら言った。そう言えばコスモリバースシステムは左舷に組み込んだんだった。

 

「コスモリバースシステム。修復不可能になった波動砲を入れ替える形で搭載しました」

 

「あの何だか分からない装置ね。只凄いって事しか分からないけど」

 

 ええ、原理は何となく理解したけど、第一印象が「只凄い」だったので。私達にもまだ分からない事があるんですよ。コスモリバースは最早魔法じみているの。高度に発達した科学は魔法と区別が付かない。もしも21世紀の人が波動砲を見たら「魔法の様な一撃」としか例えられないと思う。ホントにそんな感じで、今の私達に取ってコスモリバースは魔法なの。

 

「話を戻すわ。私達はNERVの一員として使徒襲来のたびにあらゆるものを使い、多くの犠牲を払いながら撃退してきた。第4から第9まで全てを。そして、あの日の戦いで、第10の使徒は償えない犠牲と共に撃破した」

 

「償えない犠牲……ですか」

 

 ミサトさん、震えている。私だって、今この場で昔の事を鮮明に思い出そうとすると震えが止まらない。それでも話そうとしている事が私にダイレクトに伝わる。……誰もいないから制御を緩めてて良かったって初めて思った。

 

「ミサトさん」

 

「どうしたの?」

 

「……私だってホントは忘れておきたい過去の1つや2つあります。だから」

 

「いいえ、話させて」

 

 私の制止を振り切りミサトさんは話を続けた。

 

「レイが使徒に取り込まれ、2号機は大破しアスカは第9使徒戦後に隔離、あの時は初号機しか残されていなかった。シンジ君が乗って戦ってくれなければ、あの日あの瞬間で間違いなく人類は終わっていたわ。私は、「人類ではなくたった一人の少女を救う」彼の背中を押した。その結果……初号機は、シンジ君の意志とは別に世界を滅亡寸前に追いやってしまった」

 

「滅亡寸前……」

 

「それから14年がたち、世界を崩壊させてしまった初号機を封印軌道から強奪し、シンジ君を救出し隔離。初号機はブンダー、貴方達が言う「旧AAAWunder」の動力となった」

 

「エヴァを動力に?」

 

 まさかエヴァが動力になるなんて……。それは正直言って驚いた。主機と聞いたら波動エンジンや核融合機関くらいしか私達持ってないし、エヴァって聞いたら「汎用人型機動兵器」という印象しかないもの。エンジンになるのは変な感じ。

 

「ブンダーのような神殺しの船を動かす為には人類技術でだけではどうしようもなかった。神に最も近づいた初号機の力でなければ主機の代打は務まらなかったの。WILLEは発足当時から何もかも足りてなかったから、ある意味決断したわ」

 

「NERV壊滅を目論む組織として生まれたWILLEは、民間人も含めた寄せ集めの軍事組織。経験が常時不足していてバタバタしてる時もあったけど、ユーロ封印柱の頃も何とか作戦通りいって資材面で多少安心した頃もあったわ」

 

 

 ______

 

 

 

「長くなったけど、4月7日の事を今から話すわ。日本の第三村という生存者集落に寄港したブンダーは、最後の補給して静止衛星軌道上に上がった。最後の決戦ってやつね。エヴァ新2号機αと改8号機γ、イージス艦を使ったN2ミサイル、核じゃないけど核並みのミサイルを用意して旧南極……セカンドインパクトの爆心地でアナザーインパクトの爆心となったカルヴァリーベースに移動したネルフ本部の強襲作戦に踏み切った。……あの時はヤマト作戦って言ったわ」

 

 持てる資材全部を使い切って挑んだ戦いで、旧南極の爆心地に向かって敵を制圧って感じね。もう後がないって感じだったのかな。

 

 

「制圧目標は再起動準備中のエバー第13号機。ATフィールドを持たない神に近い機体で、シンジ君が一度乗せられていた機体だったの。13号機を停止信号プラグで無効化し、2度と起動できないようにしてしまう。NERVの起こすフォースインパクトを止めるためには最も現実的でこれしかなかった」

 

「ブンダーの同型艦にこの船を攻撃されて損害は大きかったけど、エバー2機を本部上空に投下、本部への降着までは出来た。でも、碇ゲンドウと冬月副指令の策に落ち、アスカを失いエバー2機を失い……ブンダーは行動不能となった」

 

「行動不能?」

 

 行動不能って、撃沈されたの? それとも航行能力喪失? どちらにせよかなり危険な状態だって事は分かったけど、Wunderと同等のサイズの戦艦を行動不能にする方法ってあるの? 

 

「私が焦った事で艦首の主砲塔が全て失われ、初号機も奪われたの。私達は浮いているだけでも奇跡だった。成す術が無くなった私は、乗員を軌道強襲艇に詰め込んで脱出をさせ……自沈に飲み込まれた」

 

「自沈……ですか?」

 

「本艦がブーセとして乗っ取られた際に、目的遂行が完了次第自沈する様に仕込まれたと思う。自沈直前に私はL結界に侵食され体を失いインフィニティになりかけたが、何の因果かAAAWunderのアダムス組織……その脊椎結合システムの1つに押し込まれた」

 

 脊椎結合システムなんてものは知らない。私が調査して火星の海底から引き揚げたのはアンノウンドライブだけ。それ以外は何も見ていない。

 技研は何か隠しているの? それとも「ここに着いた時点でもう全損して、アンノウンドライブに移住(正しい表現が分からない……)した」のかな? 

 

「そこからは覚えていない。どうやってこっちに来たのかは分からないけど、リツコなら多分「インパクト時の高次空間との接続時にうんたらかんたら」って言うと思う。そしてあの時に目を覚ました。あなたが、この船を『命を救う戦闘艦として』使った時に」

 

「それは……ううぅ恥ずかしい。……元々この船は、人類脱出用の船だったんです。それでイスカンダルからの申し出に答えてこの船を「命を残す方舟」から「命を救う戦闘艦」に作り変えた以上、せめてもとオモイマシテ」

 

 そう。イスカンダルから手を差し伸べてもらえなければ、AAAWunderはまたBußeに戻り人類に対し贖罪をする事になったと思う。だからイスカンダルの申し出は、私達にとってもAAAWunderにとっても、そしてミサトさん達にとっても救いだったと思う。

 

「それでもよ。私では命を救えなかった。でも貴方とその彼は、確かに命を救った」

 

「艦の皆は複雑じゃないかなと思います」

 

「こっちの地球由来の人類もガミラス由来の人類も、大本を辿れば同じ種族かもしれない。そういうくくりで考えれば、貴方達はもう人類を救ったかもしれない。あとは地球人類を救うために帰るだけよ」

 

 

 ______

 

 

 そうだ、ミサトさんならわかるかもしれない。

 

「ミサトさん。Wunderの同型艦、何隻いましたか?」

 

「Wunderを除いてあと3隻。それだけしか視認していないわ。リツコが言ってたけど、2番艦がエアレーズング、3番が……確か言いにくい名前のエルブズュンデ。4番艦がゲベート。一応全部エヴァが主機になってる。使えそう?」

 

「助かります。……あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「この艦名……」

 

 懐かしいなこの艦名、エアレーズングとエルブズュンデは艦名の変更の時に案で上がってたんだった。ユリーシャのアイディアで一発採用されてWunderになったけど、Wunderがこうなる道もあったかもしれないな。

 

「救済」も「原罪」も「祈り」もいらない。私達に必要なのは、「奇跡」を自分たちで生み出せる力と意志だ。

 ……どこかのアニメで言ってたの、思いだけでも力だけでもダメだって。

 

 

「こっちに落ちてきていたら、あと2隻どこかにいる」

 

「1番艦はこの船。2番艦はあの青い艦艇ね。2番艦はNERV艦の中でも完成した状態で戦場に来てたから、こっちに落ちてきて破損してても状態はいいと思う」

 

 驚いた……あの船とWunderはやっぱり姉妹艦だったんだ、それもそうだ。あんなに形状が似てあんなに大きい戦艦なんて半年以内には作れない。もしガミラス側がWunderの存在を知ってそれを真似て作ったとしても、あのサイズだからとても間に合わないんじゃないかな。

 それに、あの船はATフィールドを展開していた。それで殺されそうになった事実はとても大きいけど、その次に重要なのが、「ATフィールドはエヴァしか展開できない筈で、そのATフィールドを使っていた点」なの。

 制御云々は兎も角使っていたの。尤も制御出来てるか確認取り様が無いけど。

 

 でも全艦がエヴァを動力にしていたって事だから、「こっちに落ちてきた残りの3隻もエヴァと一緒に落ちてきた」と一先ず仮定してみる。あのType-nullが0から生まれた「ぽっと出のエヴァンゲリオン」じゃないなら、お手本がいたはずだ。

 そのお手本がエアレーズングの主機ならば、ガミラス側は「Type-nullのお手本(主機)とエアレーズング」をセットで手に入れたと言えると思う。

 

 

 

「ミサトさん。これからはどうするつもりですか?」

 

「しばらくはこのままいる積もりよ。何かあったら私も動くけど、多分勝手に戦闘配置したら勝手に兵器が動くと思うから今のクルーを混乱させてしまうんよ」

 

「ですね。中枢部から艦への回線が出来てしまっているので否が応でも動きます。しばらくはアンノウンドライブに刻まれていた情報からAAAWunderが起動したって事で通そうかなと思います。嘘を突き通すのは嫌ですしリクも絶対渋ると思いますけど……でも危ないと思ったら躊躇なく動いてもらえると助かります」

 

「渋るねぇ……イヤかもしれないけどお願いね。それと」

 

「?」

 

「ありがとう、もう一度戦う力を与えてくれて。あの戦いで、私達の世界は全員インフィニティ化してしまい滅亡してしまった。それでも、人類を救う機会と力がやって来たのは何かの縁かもしれない。せめてこの世界の人類だけでも、私達にも救わせて。人類が滅亡するのを、皆これ以上見たくないから」

 

「お願いします。ミサトさん」

 

「分かったわ。ところで、名前もう一回聞いていいかな?」

 

「私は暁ハルナ、リクの彼女です」

 

「彼女?」

 

「……っ! ごめんなさい急に変なこと言っちゃって……」

 

「あはは、私にもこんな時期あったよ。前にリョウジって彼氏いたけど、1人でサードを止めて消えたのよ。年長者として言わせてもらうけど、少し強めにアピールして引き留め続ける方が良いわ」

 

「大丈夫だと思います。私達は、どんなに遠くても、苦しくても、折れません。どんなに残酷な事が起こっても、未来に進みます」

 

 そう。後ろにある過去は悲しかったり苦しかったり、死ぬような思いをした過去もある。でも、それが今の私とリクを作ったんなら、どんな内容でもそれらは私達の糧。逃げずに受け止めるよ。

 それに、事故か事件はまだはっきりできないけど、あの出来事から何とか生き延びて今この世で生きている以上、まだまだ先の未来がある。きっとこの先も大変な事が起こってくる。お母さん絡みや軍絡みで、ひょっとするとゼーレも絡んで来るかもしれない。

 そうなっても、逃げずに立ち向かう。それがどんなに残酷な事でも、生きて立ち向かうよ。

 

 

「どんなに残酷でも、ね。私みたいに復讐心で生きないようにね。とにかく、話せてよかったわ」

 

「私もです。でも、どうやってここに私を呼び寄せたんですか?」

 

「レイにやってもらったのよ。でもなかなか出来なかったって、ハルナちゃん」

 

「出来なかった?」

 

「なんかね、そこらじゅうにある意思から特定の意思だけが素通り出来る感じで、レイも弾かれちゃんたんよ。んで、たまたま今日だけ緩まってたから奇跡的に繋がったって感じ」

 

 そもそもレイちゃんって誰? って思ったけど、やっぱり緩んでたんだ。24時間365日集中しないと他の人の声も拾ってしまうんだよね、コレ。でも今日だけは、ある意味緩まってて良かったかなって思う。こうしてAAAWunderの過去も知れたしミサトさんとも話せた。そのレイちゃんって子と話せなかったのはちょっと残念だけど。

 

「ミサトさん。お話ししたかったら呼んでって、そのレイちゃん? に伝えてください」

 

「オッケ、伝えとくね。レイったら珍しく他の人に凄く興味津々だから、近いうちに来るんじゃないかな」

 

「お願いします。では、私はこれで戻ります」

 

 

 ____

 

 

 

 

 

 対話の様な物が終わり、私はようやく現実に戻ってきた。ふと枕もとの時計を見ると8時30分。いつもよりもずっと長く寝ていたのを自覚して起き上がろうとする。

 

「なかなか目を覚まさなかったから、心配したぞ」

 

 安心した顔でこっちを見るリクがいる。多分何回か揺り動かしても全く起きる気配が無かったから、そのままずっとここで待っていたんだと思う。それ以上にめちゃくちゃ心配心配していたことが感じれる。……うっかり他の人の分も拾ってないか心配したけど今は大丈夫そう。心身色々変化もあって、寝起きは一番気を付けてるの。

 

「心配かけてゴメン。でもちょっと……凄い大変な事になってきたかもしれない」

 

「凄い大変な事?」

 

「取り敢えず準備する。今日の作業は全部パスで色々考察しないと」

 

「ちょっとストップ、一体全体何があったの?」

 

「この船は、人を乗せてきたんだよ。ミサトさんとレイちゃんを」

 

 

 


 

 

 

 

「葛城ミサト……か」

 

「AAAWunder初代艦長葛城ミサト。ミサトさんは、世界崩壊後の軍事組織「反NERV組織 WILLE」で西暦2028年より前からAAAWunderを運用していたの」

 

「まさかこっちが解こうと思っていたら向こうから答えて来るとは……」

 

「そして初号機と言うエヴァ……この際区別するけど、向こう産のオリジナルエヴァンゲリオン初号機が世界を崩壊させてその14年後にAAAWunderの主機となった」

 

「そのよく分からないエヴァがアンノウンドライブの空洞部分に搭載されていたって事か……繋がって来たな。真田さんが言ってたことの通りだと、AAAWunderは中央船体にエヴァを組み込んでATフィールドを発生させたことになる。でも、何でWunderはエヴァ無しでATフィールドを出せたんだ? そこが解決してない」

 

「多分だけど、これはアンノウンドライブがアダムス組織だって事が関係してるんじゃないかな」

 

「ああ、組成同じって事から?」

 

「多分。同じ種族とか同じ文明産とかそういう感じで。でもそれだとエヴァに例えると身体しかないって事だから何も入ってない抜け殻に近いと思うの。だから、誰かがその抜け殻を使ってATフィールドを出したんじゃないかな」

 

「誰かか……あっ」

 

 唐突に頭に浮かんだのはあの少女。水色の髪を伸び散らかして奇妙なパイロットスーツを着込んだその少女が発生させたのではないかとリクは考えた。あの少女を見たのは実質自分だけだ。

 

「葛城さんとは別に誰かいなかったか? 水色の長髪の女の子だけど、見なかった?」

 

「えっとね、レイちゃんって子がいるみたいだけど、その時はいなかったの」

 

「エアレーズングとの戦闘時にアレやろうとしたけど、その時に止められたのを覚えている? あの時にハルナが見たのは誰かは分からないけど、僕が見たのはその少女だった。声も聞いた」

 

 

 ここまでハルナの話を聞いていて思ったことが色々ある。でも確実なのは、ガミラスのL1で戦ったあのWunderのような形状の戦艦は多分エアレーズングの改造艦じゃないかという事だ。

 葛城さんは直感的な物で把握したと思うけど、僕としては別の事を確認したい。

 

 前提として、この世界線にやって来た事が確実になったのは4隻中2隻。AAAWunderとエアレーズング。エルブズュンデとゲベートは今は一旦消息不明と考えてしまおう。居場所が分かるような手掛かりはない。

 

 ハルナが考えた通り、確かに「あの巨大戦艦≒エアレーズング」と言えるかもしれない。実質僕だって同じ結論を出すと思うし、事実も限られているからね。

 

 僕が確認したい事は、エアレーズングはどうやってATフィールドを張っていたのかと言う点。と言っても解決はしている。要は艦内にATフィールド発生機としてエヴァを置いておけばいい。外部からの信号かType-nullみたいにパイロットが乗りこんでエヴァを操作する事でフィールド発生くらいは出来ると思う。

 

 しかしWunderはどうやってAAAWunderとしてATフィールドを発生させたのか。Wunderにはエヴァンゲリオンなんて積んでいない。強いて言えばガリラヤ巨人を積み込めば出来るかもしれないが、火星のあの日で回収不可か木っ端微塵にでもなっているだろう。

 

 ここでヒントとなるのが、ガリラヤ巨人とType-nullとアンノウンドライブは同じ組成だって事。つまり同じとこで生まれたかもしれないって事だ。このWunderのアンノウンドライブは、極端な話エヴァの体。エヴァタイプの生物の骨格をそのまま使ってる感じだ。

 

 ただ、只の体だけで出来るとは到底思えない。もしもこれが体のみで発生させる事が出来ていたなら、ATフィールドの侵食(便宜上こう呼ぶ)で幻影なんか見せられない筈だ。亡霊かなんかの仕業と言えばそれまでだけど、とにかく何らかの意思が無ければ無理だと思う。

 

 そこで唯一の可能性となるのが、あの水色の長髪の女の子「レイちゃん」。今のハルナは人の意思を無制限に拾ってしまうから、その意思を1つ1つ徹底的に弾いて僕のやつだけ聞こえるようにしている。そして僕にのみ意思をテレパシーみたいに伝えられる。ハルナの「意思弾き」が自分に対する物限定だとしたら、「レイちゃん」はアンノウンドライブというエヴァの体を介して広大な範囲で全部弾いたのかもしれない。

 エヴァの体を使って人間の魂がATフィールドを発生させた……という事じゃないだろうか。

 

 全ては推測でしかないけど、実際に体験したり聞いた事だ。確度は高いと思う。

 

 

 

「リク考えている事ダダ漏れだよ? 凄い難しく考えているけど」

 

「ハルナの前で隠し事は出来ないな。……この船がATフィールド張れたわけ、多分説明が付くかもしれない」

 

「……とりあえず相談しよっか、真田さん達に。それと、レイちゃんが私達にすごい興味津々だから、そのうち触れて来るんじゃないかな? そのうち」

 

「僕も話してみたい」

 

「え? でもどうやってリクも行くの?」

 

「ハルナは僕の意思だけ通しているんでしょ? だったら、ハルナを中継して僕も行けば多分……ああでもハルナの負担が大きいな」

 

 考え着いたのは良いんだけど、明らかにハルナ頼りで負担をかけてしまう事に気が付き一旦ストップをかける。現状出来そうなのがハルナしかいないとはいえ追加で1人分の意思を通すのはキツイと思う。焼き切れるまではいかないと思うけど、消耗が凄そうだ。

 

「いいよやってみる。きつくなったらカットしちゃうけどいい?」

 

「ごめん、お願い」

 

 それでも承諾してくれたことは少し嬉しいけど申し訳ない。ちょっとでもキツそうにし始めたらその場で切ってもらうように言おう。

 

 今は兎に角相談、そして考察。AAAWunderは一体何なのかは一番の課題。僕としては、今最も明かしたい真実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイ、ありがとね」

 

「いいえ、葛城艦長。私のやりたい事でもありましたので」

 

「そう遠慮しないしない。でも、そんなにあのハルナちゃんに興味あるの?」

 

 航海艦橋で外を見ていたレイは、ミサトの言葉に振り返りこう呟いた。

 

「はい。暁一尉からは、少しだけ、私と同じ感じがします」




 この話を書くにあたって、ハルナとは何なのかと考える事がありました。
 出航直後と比較すれば今の状況はかなり変化してしまいバフも盛られていて、実は完璧に近くなっているではないかとも考えました。
ですが、完璧に近ければそれだけ脆い部分もあるんです。それが9月13日の火星での体験です。
 今は目立たなくなりましたが、まだなかなか埋められない傷を負っています。

 ですが、僕が思うにハルナは「敢えて埋めていないのでは」とも思っています。

 リクと結ばれた結果かなり拠り所が広がり負担が共有出来て軽くなった感じですが、それでも傷はそのままです。ですが、全ての経験を持って自分が形作られているのならば、過去の取捨選択は経験を捨てる事と同じ。あの過去を忘れ無かったことにする事で傷が埋まるかと問えば、イエスでありノーでしょう。ハルナはノーを唱え、忘れてはならない記憶として傷をそのままにしたのではないかなと思います。


 全てを自身の糧と見ることが出来るハルナはもう「作者の想像を超えたキャラ」となり、多くを取込み多くを生み出し多くと交わる経験を取り込みました。
 他作品を挙げると、psycho-passの常守朱に近いかもしれません。

 ハルナを生み出した作者としては、これ以上どう動くのか「長期的な予測」が付きません。なので、その場その場でどう動きたそうにしているのかを推し量って書いて、嫌そうにしていたら書き直すの繰り返しになって来るんじゃないかと思います。それゆえに次回作のオリジナル展開を書き始めたら彼女の意に沿える作品になるのか心配にもなります。

 皆さんから見てハルナはどんな人に見えているのでしょう。作者としてはとても気になるポイントです。


 後書きが長くなりましたが、これだけは書かせてください。
 ハルナはもう一人の主人公として据えていましたが、「もう1人の」なんかではなく立派な主人公です。
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