宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
Wunderも化け物だから問題ナシナシ
では次の話です。お楽しみください
(注)ガトランティスにもWunderと言う名称は伝わっていますが、「ヤマト⇒ヤマッテ」と同じように「Wunder⇒ブンダー」となっています
Wunderから遥か前方のガトランティス空母艦隊、その1隻から発艦したデスバデーターがWunderの姿を捉えた。
「テロン艦ブンダーを光学で確認」
「やはり、あの艦の分かれし姉妹か。メガルーダに映像送信!」
ナスカ級の1隻から送信された映像はメガルーダに送られ、艦橋の面々にお披露目となった。
「前方空母打撃軍からの映像です」
「やはり、我らガトランティスが捕らえし船とよく似ているではないか。面白いくらいに。まさに天佑神助!」
薄暗く禍々しい艦橋で宴を行うダガームとその配下。酒を煽り、肉に食らいつく。「野蛮」と言う言葉がこれでもかと言う程に似合う彼らは、軍と言うよりも実際の所は海賊に近いだろう。宇宙を渡り、船を襲い、奪い、容赦を与えない。ただし、海賊に近いと言っても彼らはガトランティスに対し忠誠を誓っている。そのため大帝から与えられた命令は必ず守る。
その命令は、技術の奪取。
彼らは自国の技術向上の為に他国、そして異星文明の技術を欲している。方法は多岐にわたり、シンプルに盗むか盗掘。または他文明の艦艇を襲撃し科学者ごと鹵獲する。
その時捕虜となった科学者は「科学奴隷」と呼称され、ガトランティス全体の科学技術の向上の為に兵器の開発、及び改良を命じられる。拒否権は無い。帝国に従順な者以外には死を与えるような彼らの元では、「No」と唱える事は「死にます」と宣言している様なものだ。
「帝国に寄与すべき技術者は生かし、戦士は皆殺せ。今宵は船も奪え。偉大なる大抵陛下が望まれた神殺しの船。極上の獲物、我らの手で献上するのだァ!!」
ダガームの命令に皆腰の短剣を振り上げ、雄叫びを上げる。艦艇も推進器の光を強め、Wunderに向かって突き進んでいく。
「正面より敵艦近づく。敵速、10Sknot」
「艦種は相変わらず不明……って、出てます、艦種識別」
「えっ?」
ついさっきまでunknownとなっていたタグが駆逐艦や巡洋艦と識別され、敵艦隊の中核に位置する巨大艦には「nearlyNHG」と暫定的にタグが付けられている。
いつの間にか終わっている識別に一瞬MAGIが処理したかと思ったが、「MAGIよりも凄いかもしれない」人に2名ほど心当たりがあった。
「取り敢えず識別は終わった。あくまでガミラス艦艇の識別を基準にした場合だから、あまり当てにならないと思うけど」
「そんな短時間で……でも、助かります。一先ず、艦首艦尾の魚雷装填。カミナリサマの残弾は?」
「6発です。第3波を無力化するだけで使い切るかと思います。それより、航空隊による防空は?」
「ダメだ、距離が近すぎる。展開の隙をつかれ肉薄されるぞ。VLSにカミナリサマを装填、目的はあくまで無力化と迎撃だ。睦月さん、使い切りますよ?」
「大盤振る舞いだ。思う存分使ってくれ」
未知の敵に狼狽えず状況に合わせて的確に指揮をする古代に、リクは感心していた。真田も迎撃準備を進めていく古代に真田も感心したようで腕を組んで頷いていた。
「使わせてもらいます。赤木博士、ホーミングも立ち上げをお願いします。特に後方への火力投射能力を底上げします」
「分かったわ。アナライザー、射線計算手伝ってね」
『リョウカイ』
古代が言うように、Wunderは前方への火力投射能力が高いが後方は低い。主砲塔とVLSが配置されているのみで、後方から狙われれば低い迎撃能力でジリジリと削られる。だが、重力子の配置で自由に軌道を変えられるホーミングを使えば後方への火力を強引にではあるが底上げ出来るのだ。
「戦闘準備」
「待て」
「10時の方向、自由浮遊惑星を確認」
自由浮遊惑星。恒星系を回る通常の惑星とは異なり、恒星系から何らかの原因で弾き出されてはぐれてしまった惑星で、銀河系を直接公転している。それが偶然近くにあるとの事だ。
「……惑星に転舵、面舵一杯」
「逃げるんですか?!」
てっきり正面から迎撃を行うと思った南部は声を上げるが、古代は南部に向くと言った。
「……逃げる。敵を後方のみにする」
正面からやり合うにも後方にも敵がいる。ここは反転して敵を後方からのみにするべきだ。Wunderは艦首を一気に右方向に向け、第2戦速で自由浮遊惑星に向かって進み始めた。
それを確認した敵艦隊もWunderの後方に付き追跡を開始。古代の思惑通り、敵は前方と後方にいたはずだが一気に後方のみとなった。
「レーダーに感。敵航空機、第3波です。数20!」
「南部。航空機相手なら3発、それで仕留める。VLS1番1から3番発射管開け、撃て!」
使い切るとは言うが1回で使い切る訳にはいかない。過剰投入を避けて半分の3発が放たれ、外装が分離しEMPユニットが散布される。散布宙域に戦闘集団が突っ込んだことを確認してEMPが一斉に起動。20機のデスバデーターは金属の棺桶となった。
「起動確認、第3波の停止を確認。敵機の熱反応、減少中です」
「引き続き後方を観測。林、観測情報を船務長に回せ」
「船務長に回します」
「頂きました」
「敵駆逐艦級、4時方向から近づく!」
「波動防壁、展開!」
Wunderの周囲に波動防壁が展開され、敵駆逐艦からの砲撃を弾いていく。敵艦も陽電子ビームを扱っているがそこまで威力は無い。だがガミラスの砲撃よりも数が多く速射砲のような勢いで発射されている。半円のような物体が艦体のそのかしこに取り付けられていて、陽電子ビームを雨の様に降らすことが出来ている。質よりも数が重視なのだろう。
「敵駆逐艦級、巡洋艦級が後方から接近、数8!」
「島、速度を保ったまま反転180度! 南部、正面に射撃可能な砲塔全てで敵艦隊を掃討する!」
「ああ……古代くん、Wunderなら出来なくは無いけどそれ鬼だよ。鬼」
「これ沖田艦長絶対やらないな、どっちかと言うと僕ら寄りだ。島君やってみて、出来るから」
「ああもう古代やってやる! サイドキック、Wunder回頭! 総員衝撃に備え!」
思い切り艦首を右に振り一気に180度回頭。主推進を落とし艦首艦尾のスラスターを全力で吹かし、前に進もうとする慣性をそのままに一気に回頭した。サイドキックは潜水艦がするもので戦艦がする様な物じゃない。ましてやWunderは全長2500m。そんな巨体を振り回す事は常軌を逸しているが、Wunderの莫大なエネルギーと暴力的な推力が全てを解決した。
「南部!」
「第1から第4主砲、及び副砲照準合わせ! 撃ち方始め!」
「撃てぇ!」
まず甲板上部の副砲と第2船体艦艇部に取り付けられた35サンチショックカノンが駆逐艦級を射抜く。続いて甲板上部4基の48サンチショックカノンが青白い光を放ち巡洋艦を抉り飛ばす。
「敵艦掃討完了、射程圏内に艦影なし」
「島、戻してくれ!」
「了っ解!」
再び180度回頭。慣性制御があっても多少振り回されるが、見事に後方の艦艇を撃滅した。
「あんな巨大な船が、こうも容易く回頭するのですか?」
「知らん。だがそれでこそ大帝に献上する価値ある船。舳先を星に回せェ! 我らガトランティスの光を、褒美に味わせてやろう。火焔直撃砲、発射準備ィ!」
「火焔直撃砲、発射準備!」
「だが星に逃げ込むのは姑息なマネだ、臆病な者だ」
メガルーダの艦橋内部に打楽器のように響く音が鳴り始め、コンソールに向かう戦士が各自で報告を上げ始める。
「エネルギーダンパー《ガルグ》《ボルグ》《ゲルグ》起動!」
艦橋に微振動が響き始め、両舷第2船体、中央船体に収められた巨大なエネルギーダンパーが顔を覗かせる。艦首装甲が獣の顎の様に上下に開かれ中から迫り出し、その先端部が回転を始めエネルギーの充填に入る。
「相対着弾座標入力。全砲連動!」
「全薬室圧力上昇!」
「エネルギー転送跳躍管、開け!」
中央船体下部に取り付けたれた投光器のようなものが光を灯し、水色の光の輪を断続的に放ち始める。
「周辺重力分布取得、着弾座標誤差修正! 照準合わせ!」
戦士の1人が兜に取り付けられた遮光板を下ろし、艦橋内に置かれた巨大な制御装置から生える最終安全装置棒を、3本とも目一杯引き出した。
「……我らガトランティスの光、とくと見よ。火焔直撃砲、全門発射ァ!!」
ダガームの命令により火焔直撃砲の引き金が引かれ、艦橋正面の窓が真っ白に染まった。
三門の砲身に蓄積された太陽の様な火球は一気に爆縮し、正面方向に向かって炎の柱を放った。その炎は投光器らしきものが放つ水色の光の環を内側に全て収まり、暴力的な熱量を持ったエネルギーはどこかへと消えて行った。
「……後方に強大な重力震! 数3!」
「ワープしてきたのか!?」
「……最大船速取り舵一杯!」
何か嫌な予感を感じ取った古代の指示で、Wunderは最大戦速で取り舵一杯、全力で目一杯左に移動した。同時にアンノウンドライブが眩く発光し、腹に響くような低音で空間がズシンと揺れた。
その数瞬後、Wunderの右側を三本の炎の柱が疾走した。莫大なエネルギー流が空間を突き進む以上空間も大きく揺れ、ハルナ思わずコンソールにしがみ付いて流されないように踏ん張った。
初めは眩しすぎて、何が通ったのか全く分からなかった。
「あれなに!?」
「分からない! フレアみたいだけど違う!」
「あれに飲み込まれれば、Wunderは……。っ損害報告!」
「右舷主翼先端部が融解、緊急措置としてホーミングのエネルギー弁と供給管をすべて閉鎖しました。現在チェック中ですが、ダメコン表示もないので使用可能と思われます」
「波動防壁も一部破られています。船体装甲、主翼以外にも一部損傷」
「掠めたのか……。発砲位置は?」
「発砲位置に艦艇はありません。重力振から突然出現したとしか……」
「……どうやら、敵はこちらの射程外から攻撃出来るらしい。位置さえ分かればどこからでもワープ越しに攻撃できるだろう。博士」
「ええ、あの火炎は確かに重力振から出現したわ。例えるなら、ワープする波動砲。弾着予定地点に測量艦がいれば、たとえ1光年離れていても攻撃可能じゃないかしら」
サラッと恐ろしいことを言う赤木博士だが、かなり正確に的を得ている。エネルギーを敵の至近に持ってきて回避不能な攻撃をお見舞いする。この武装は実質初見では回避困難だ。
だが先程の重力振発振は誰も操作していない。2人も、真田も、マリも、赤木博士でさえ対処出来なかった。それでも自律防御のように
「ねぇ、さっきの重力振ってこっちで操作してないよね……?」
「する暇もなかった。ミサトさんとレイちゃんにまた救われた。……2人はこれを直感で逸らそうとしたんだ」
「重力振で回避をしようとした……ってことは、アレだよね」
「ああ、アレだ。マリさん、コレ回避できると思います」
「マジで言ってるの? 回避ってこれワープしてくる……あっ」
もうやった事がある。それに気づくにはそう時間もかからなかった。ここには人類代表として禁止カード級の人材がそろっている。そう、重力振さえキャッチできれば回避できる。もしくは逸らすことが出来る。しかし、その弱点は3連装化という強引な解決法でカバーされている。範囲も広く、炎の柱の周辺にはフレアの様に漏れ出すエネルギー流もある、加害範囲が広すぎるのだ。完全回避は現状では困難だろう。
_______
「テロンの船は……健在!」
「……命中したのか? どうなのだ?!」
「大都督、転送座標に誤差が生じたのかもしれません。転送投擲器はガミロンの技術でも完全な物と成っておらず、テロン艦はそれで運よく生き延びたのかと」
「……だがこれで沈まぬとは、神殺しは運さえも味方に付けるか。それでこそ大帝に献上する価値ある船だ」
黄色い舌を覗かせ、モニターに映るWunderをニヤリと見る。右舷の主翼らしき部分が融解してはいるが、広大な加害範囲を持つはずの火焔直撃砲から逃れた。火焔直撃砲と転送投擲器の弱点は科学奴隷に話させた。だからこそカバーするためにこの決戦兵器を3連装としているのだ。
「科学奴隷をこの場に呼べ。方法は問わん、何故やつは燃え尽きなかったかを究明させろ」
「はっ」
「奴らを追え。メガルーダも前に出せ、前衛前進ン!!」
ガトランティス艦隊はメガルーダを中心に据え、数多の駆逐艦、巡洋艦を従えて前進を始めた。
___
「7色星団の時の航空機ワープ、アレと一緒って事かにゃ?」
「ワープさせてるものは別ですけど、やってる事は一緒です」
「つまり自分を中心にした宙域を重力振で乱せばあらぬ方向に逸らしたり送り返す事も可能、と」
あれよあれよと戦闘艦橋で対策が練られていく。真田に赤木博士、マリにハルリク。基本的にこの技術科の4人のうち誰か1人でも敵に回したら、相手は碌な目に合わない。
その証拠としてガトランティスの決戦兵器は、ちょうど今彼らの頭脳によって大まかな仕組みが丸裸にされようとしていた。
「レーダーに感。敵駆逐艦、巡洋艦、旗艦級近づく。敵速11sknot」
「早いな」
そう言うと古代は正面の自由浮遊惑星を見る。先ほどの攻撃で惑星には大穴が開き着弾地点は火山の火口の様な色をしている。
まるで神話や映画に出て来る火を吐く怪獣。正直に言って敵が波動砲を使う事よりも厄介かもしれない。
「解析完了、惑星は複雑な空洞形状を有しています。ですが、Wunderが入れるとは思いません」
「そこはWunderを横ロールさせて右に立てて航行すればいい、コスモリバースも守れる。島?」
「あのなぁ戦艦は曲芸飛行するための物じゃないんだぞ? って言っても、出来るんです……よね?」
「「出来ます」」
「はあもうこの船なんなんだよ」
設計者2人が親指を立てたことで、島は今後あれこれ言うことを諦めた。大抵の無理難題は「出来る」か「出来る様にしてしまう」のだろう。
「もういいや、全部出来てしまうって事で。古代、降りるぞ?」
「よし、惑星に降下する」
Wunderは惑星に降下を始める。急激に高度を下げていき、右に姿勢を倒す。横からの攻撃等も考慮して90度ではなく75度。ギリギリまで傾けていく。
その後方から敵駆逐艦が追撃の為に惑星に降下してくる。それを狙いショックカノンを最大仰角で斉射、駆逐艦を下から貫かれ、中には艦橋ごと貫かれた敵艦もいたが、例外なく無残に爆沈される。
「後方から敵駆逐艦数4」
「博士、アナライザー、計算を!」
「目標後方、重力子配置相対座標確認発射軌道調整、発射準備完了!」
「ホーミング、全門発射!」
翼に内蔵されたホーミング用陽電子ビーム砲16門が火を吹き、重力子の緻密な配置によってそれらは生きているかのように後方へと進路を変える。曲がるビームは常識の範疇を超えられた兵器で意表を突くにはうってつけ。その物量も相まって3隻が餌食となった。
残り1隻も後部副砲のショックカノンの1撃で撃沈した。
だが敵艦爆発の影響で空洞構造の一部が崩れてしまった。Wunderが通れなくなったのではないが、重力下である為敵艦の残骸が惑星表面に落下し、爆発。空洞の崩壊を引き起こしているのだ。
だが、この時では気付いていないがそれがよくなかったのだ。
「後方より、アンノウンターゲット現る。艦艇ではない、さらに増加中!」
「艦艇ではない? 見せて」
ハルナがレーダ隻のコンソールに体を寄せて確認するが、タグに「UnknownTarget」と表示されている。未確認、そもそもの識別が出来なかったようだ。
「リク、後ろは?」
「なんか気持ち悪いのがいる。図鑑で見たクラゲみたいだ。……というか追いついてきてるぞ! かなり速い!」
異星人は見たが異星生物は見た事が無い。その上初めて見た異星生物がまさかのクラゲの様な見た目だったため、咄嗟に「気持ち悪い」と感じてしまう。
だがそんな事意に介さず異星生物はWunderに追いつき、艦体に張り付き始めた。
「アンノウンターゲット接触! まだ来ます!」
「人力では剥がせなさそうか。アナライザー、そもそもあれは生物なの?」
『接触シタターゲットカラ、生体反応ヲ感知。マタ、破損個所ヨリ個体ガ侵入シテイマス』
「何処からか分かるか?」
『現在マデノ攻撃ハ、全テ最外殻部デアル第1装甲板ノ破損ノミ防ガレテイマス。恐ラク第1装甲板ノ破損個所カラノ侵入デス』
「第一装甲板って、コイル部じゃないか。わざわざそこから入るよりほかのハッチを抉じ開ければいいじゃないか。何か理由が……」
奇妙な宇宙クラゲを気持ち悪いと言いながら注意を向けるリクは、何故第1装甲板の破損部から侵入したのか考えていた。アレが生物なら自律的に、もしくはある程度の群れで統率を保ちながら行動を行う。ならあの生物はWunderを餌か何かと捉えてきたのだろう。
もしWunderの装甲と言った金属を餌とするなら、接触した段階でダメコンの制御にかかりきりになっていただろう。溶かされたりでもしたらお終いだ。
ならエネルギーを求めていたらどうか。
だがエネルギーと言う単語に辿り着いた時には、もう状況は良くない方向に動き始めていた。
「波動防壁出力低下! 展開時間残り数秒!」
「遅かったかッ! 真田さん、あのクラゲ擬きマズいです!」
「ああ、エネルギー吸収性を持つ宇宙生物の様だ。艦内のエネルギーを餌にしている。古代、このままでは船がマズいぞ」
「エネルギーならこうします。艦首方向にカミナリサマ発射。3秒後に起爆、全艦耐EMモードに切り替える。電磁パルスをやつらに過剰供給させて、駆除します。博士!」
「耐EMモード用意。対ショック対閃光防御。撃ってみて?」
「南部、カミナリサマを艦首方向に」
「VLS1番、4から6番発射管開け。撃てぇ!」
南部の指示で残ったVLSを艦首方向に発射。耐EMモードで機器を守ったWunderが電子の嵐に突っ込むが、それは宇宙クラゲの腹を多少満たしたくらいにしかならなかった。
「ダメかっ……!」
『対象生物ノエネルギー反応増大。全個体ノ貯蓄可能エネルギー限界ヲ満タスノニ必要ナエネルギー量ハ、推定デカミナリサマ20発』
「多すぎる!」
いくらなんでもこんな量は増産していない。クラスターミサイル自体複雑な構造をしていて、さらに積み込んでいるのはEMP発生装置総数100以上。これで手間がかからないわけがない。従って本格的な量産がまだ出来ないのだ。
「波動エネルギー流出50%!」
「アンノウンターゲットが敵艦と接触。敵艦降下中!」
全周スクリーンの隅。右に横倒しとなりながら進むWunderの頭上に敵駆逐艦が航行している。だが、その表面には夥しい数の宇宙クラゲが貼り付き徐々にではあるが高度が低下している。撃退の為に陽電子ビームを発射したようだが、それすら取り込まれ逆にやつらが吸収したエネルギーを噴射。砲塔の1つを吹っ飛ばした。
「島、増速!」
「分かってる!」
巻き添えを食う訳にもいかずさらに増速をかける。ギリギリすり抜けた後方で敵駆逐艦が着底しそのまま爆沈した。200mに近い艦体が真後ろで爆発を起こし、古代はさらに危機感を募らせる。
惑星外に逃げるか? 否、外に出たらあの決戦兵器に狙い撃ちにされる。
取り除く? 否、取り除く術から模索しなければならない。間に合わずエネルギーを吸いつくされる。
「全艦、ワープ準備に入れ!」
考えた末に見つけたのが、ワープだった。
「惑星上でですか?! 無茶苦茶だ!」
「古代、当ても無くワープするのは危険すぎる。ワープ先に物体があった場合、Wunderが大損害を受けるぞ!」
ワープする際はワープ先の空間を解析して、出口に何もない事や重力分布を計測して空間的にも安定した宙域に出る事が大前提となっている。もしも出口に何かあった場合それに突っ込む形でワープアウトする事となる為、本来ワープ航法を行う場合は時間をかけて準備する必要があるのだ。
「それでもワープすべきと考えます。このまま外に出ればさっきの兵器で狙い撃ちにされます。やるべきです!」
「……古代君、位置くらいなら一つだけ当てがある」
「当てですか?」
「障害物が怖いなら、本当に何もない宙域に出ればいい。宇宙大規模構造の空白地帯、ボイド空間だ。そこなら、出口の心配をせずにワープは出来るかもしれない。現宙域から一番近い所は?」
「検索します。……ありました。ここから40光年先に、ボイド空間があります。小規模の銀河フィラメントが枝分かれした部分ですが、確かにあります」
何かある宙域に出て木っ端みじんになるくらいなら、何もない所を選んでワープすればいい。宇宙には銀河や恒星系が満遍なく散らばっているのではなく、ダークマターの分布の偏りが原因で偏っている。その偏りを一角ではなく宇宙全域にまで広げて見てみるとまるでニューロンや網目のような構造をしている。その網目構造の宇宙の大部分を占めている何もない空間。それがボイド空間だ。
「そこにワープ先を設定すればいいと思う。戻れる範囲内だし、一時避難だ。これならワープしても良いと思うよ、古代くん」
「睦月さん……」
「アンノウンが生物である以上、ワープの次元共振で振り切れる可能性はあります」
森も古代の決断を支持する。
「本当に何もない宙域に出るなら、ワープ先の心配はそこまでいらないか。ここは、賭けてみよう。全艦、ワープ準備!」
真田も了承し、波動エンジンが雄叫びを上げ始める。
エネルギーが吸われ続けている現状ではそこまで時間はかけられない。何時もよりも迅速に準備が進められる。
「ワープ先座標を確保、ボイド空間国連宇宙軍観測ナンバー45。座標固定」
「確認。座標軸を固定」
「両舷波動エンジン最大出力。ワープに必要なエネルギー保持限界まで、あと30秒!」
両舷の機関室内部にスパークが迸り、思わず制御室に全員退避する。エネルギー流出が酷くなり始めている環境下でも、諦めが悪いかのようにエンジンは更に回転数を上げる。
「あと10秒!」
「……ワープ!!」
島が操縦桿を思い切り押し込み、Wunderはワームホールにその艦体を突っ込んだ。艦体に響く激烈な次元共振で大型の宇宙クラゲが剥がれ落ち、それを皮切りにほとんどの宇宙クラゲが引き剥がされていく。極彩色の超空間を全力で疾走し、Wunderはボイド空間へと向かった。
______
「惑星表面に強力な重力干渉波を検知! テロン艦、空間跳躍を行った模様!」
得物に逃げられるという失態と屈辱と憤怒に溢れるダガームは怒りに震えて唸りを上げていた。大帝から命じられた獲物である「神殺しの船」。その力はガトランティスが望む未来の為に使われるべきであった。それが手の届かぬ場所へと飛び去ってしまった。
思わず部下を殴りつける。それ以外の発散方法が思いつかなかったのだ。殴りつけても結果は変わらない。どうにもならず、ダガームは声を上げた。
「怒髪衝天ンンンッ‼‼」
ボイド空間へのワープ。今までの航海で起こり得なかった緊急事態のワープであるが、それでも正常にワープアウトした。
「ボイド空間……じゃない」
だが明らかに異常だという事は、目を見開いた真田の口から洩れた言葉で皆が認識した。
「何処なんだよココ!? おい林! 座標設定ミスってないよな?」
「ミスってませんって! 何もない空間の筈なんですよ!?」
「皆落ち着け、状況を確認。周囲に艦艇はいるか?」
「レーダー、確認できない。何も映りません」
「現在位置を特定!」
「それが……恒星を観測できません」
「1つもか?」
「本当です。1つもです……」
「睦月さん、暁さん。周辺宙域に何らかの異常が無いか確認できますか?」
「……あんまり期待はしないでね。そもそも重力振どころか、揺らぎの1つも無いんだから」
「まあとにかく、何かあったら言うよ」
「それでもお願いします」
既にコンソールのキーを叩き観測機器を動かしているハルナが、その姿に似合わず自信なさげに言う。その傍らでコンソールを叩き観測を続けるリクの表情も険しい。「出来ます」といって親指を立てていた2人がこうも険しい顔をする、事態の深刻さを物語るにはこれ位で十分だろう。
『警告。メインフレームガ、外部カラノ介入ヲ受ケテイマス』
「せき止められる? うわぁっととっ!」
艦体がぐらりと傾き、甲高い鳴き声のような音が響き渡る。だがノイズが混ざり途切れ途切れに聞こえてくる。外部からの介入に対してミサトが制御を守ろうとしているのだろう。
(ミサトさん! 聞こえていたら今は制御を手放して下さい!)
(どうして?! 攻撃かもしれないのよ?!)
(いいから手放して下さい! ミサトさん潰れますよ!)
(クッ……!!)
ミサトに向けて全力で意思を飛ばす。抗ってくれているのは助かるけど、それで如何にか出来る様な物とも思えない。ここは一回手放してもらう事にした。
「Wunder……正常に戻りました」
「何だったんだ……今の、まるで生きてるようだ。島、まずは動こう。ここが何なのか調査して手掛かりを見つける必要がある」
「分かった。って、舵が動かない……!」
操艦桿がまるで岩のように固くなり微動だにしない。島がどれだけ力を込めても動かず、それどころか勝手にWunderが動き始めた。
「動いているぞ!?」
「山崎さん機関止めてください。多分無理ですが一応」
「分かりました。機関停止、機関停止」
リクの提案で波動エンジンを止める指示が出された。その数分後、徳川機関長のお手上げ状態の声が戦闘艦橋に響いた。
『ダメじゃ! やっとるがサッパリ言う事聞いてくれん!』
「ああもうこれ確定かな……メインフレームを握られちゃってるので今すぐ取り返すのは無理です。アナライザー何か自分に異変はある?」
『緊急自己診断ノ結果、私ニ軽度ノ動揺ガ確認サレマシタ。尚、ソノ他特筆スベキ異常ハ見受ケラレマセン』
「アナライザーはサブフレームだからまあ無事か、それでメインフレームがダメ。……FCSは? 撃てますか?」
「いけます。発射まで持っていけます」
「一応構えててください、何が来ても迎撃できるように」
何者かに操られたWunderは主砲副砲VLSを立ち上げ、万全の構えでその誘導に乗った。何も映らないレーダーの音が戦闘艦橋に響き、全周スクリーンに雲海が映り始める。海を裂くかのように雲海を裂き、潜っていく。全周スクリーンも薄暗くなり不可視波長による映像に切り替えられる。
「レーダーに感。前方に巨大構造物」
「ああもう驚かないぞ……」
夢か現実か分からなくなりそうになり、リクは取り敢えず頬を引っ張ってみるが痛い。どうやらこれは現実の様だ。横でハルナが不思議そうに見ているが、平然を保つためにも軽く引っ張ってみる。
「いひゃい」
「どうやら現実みたいだ、本当にここ何処だよ」
「……減速しだした」
「どうやら、ここが終着点らしい」
巨大構造物をぐるりと回りこむように旋回し、徐々に減速していく。姿勢制御用スラスターも小刻みに吹かしながら速度を落としていき、最後に思い切り前方に向けて吹かすと、Wunderは巨大構造物のすぐそばで停止した。
「……止まりました」
「操艦は?」
「まだ動きません。立体式もダメです」
「……現状報告と作戦会議を。一先ず、艦長室へ」
沖田艦長の意見も聞きたい。それより今はどうしようもないと判断した古代は真田と新見と2人を連れて艦長室に向かった。
「閉ざされたボイド空間か」
「あくまでも仮説です。本来、このような空間の存在はあり得ません。あり得ないのですが……」
「我々は現実としてここにいる」
「……確認された構造物は、明らかに人為的に生み出された物です。艦の制御を乗っ取られた事も加えると、外部からの何らかの意思が介在していると見て、間違いないかと」
「外部からの意思か。睦月君、Wunderから発せられた鳴き声のような音だが、心当たりはあるかね?」
「……AAAWunderです。まだ確認が取れませんが、葛城艦長がその介入に対し対抗したからかもしれません」
葛城艦長と言う単語を聞くなり、ハルナがその資料を沖田艦長に手渡す。氏名とハルナの記憶から書き出した外見、反NERV組織WILLEについても書き込まれている。さらにまだ記録上でしか存在を確認していない「レイ」と言う人物についても人相と氏名が書き込まれている。
「報告にあった人物だね。旧AAAWunder初代艦長葛城ミサト、170年以上前にAAAWunderを運用した組織の1人。現在彼女と話をできるのが暁君だけ。そして葛城艦長がAAAWunderであり逆でもある、かね?」
「はい。バレラスの時点で再起動したAAAWunderは、バレラスと今回のガトランティスとの遭遇時に私達を助けてくれました。以前にコンタクトを受けた時ミサトさんは、何かあったら動くとおっしゃっていました。その「何か」が今回の自立稼動のキッカケだったかと」
「……戦術長(情報長)、意見具申。あっ」
タイミングが被ってしまったが、古代と新見はどうやら同じことを考えていた。それを伝えると、沖田艦長は熟考した上で1つ命令を出した。
「うわぁ、コイツを出す事になるとは……」
複雑そうな笑みを浮かべながら榎本は右舷第3格納庫で艦載艇の準備を進めていた。
キ8型試作宙艇、通称「こうのとり」。嘗て古代がメ号作戦参加時に火星で使用した機体で、旧贖罪計画の遺産だ。贖罪計画の再始動、その発端となるWunder内での反乱が成功した時に備えて用意されたこの機体は、奇しくも本来の運用目的と同じ惑星探査に使用されようとしていた。
陸海空宇宙と行動範囲を選ばない機体性能と、探査機ではなく探査艇らしく複数人を乗せる事も可能な搭乗部。今回の任務にこれ以上の適任はいないだろう。
「沢村君が操縦するの?」
「きっちり運びますよ。というか暁さん、旦那さんは?」
「沢村」
「……すみません」
ふざけて旦那さんと呼ぶ沢村を古代が諫めるが、余裕の大きいハルナが軽く笑って受け流してしまう。
「旦那様はお留守番かな。行く気満々だったけど、真田さんに止められたのよ」
(行きたいです)
(ダメだ。腕も治っていないのに船外活動するつもりか? やっておかなければならない事もあるから、君はこっちだ)
(そんなぁ……ハルナあと任せた)
「って」
「そういえば意識戻った直後で艦橋に行ってましたね睦月さん」
ガミラス星突入作戦で大怪我の状態で戦闘艦橋に上がったリクを思い出して、古代は思わず苦笑した。遅れてやって来た勇者感があって頼もしく見えるが、絶対安静なのに動いていたからあまり褒められるべき事ではない。
「あの時は佐渡先生も諦めたから良かったけど、真田さんだからね。リクも振り切れないよ」
「遅れましたぁ!」
「遅い!」
「すみません~!」
集合時間にギリギリ間に合わなかった桐生が無重力の第三格納庫に飛び込んできて、勢い余って止まらなくなってしまった。通路の手すりにぶつかり、偶々方向がこうのとりの元へと修正されたがクルクルと回りながらこうのとりへと向かう。
偶々進行方向にハルナがいたが、ぶつからずにハルナに上手くキャッチされた。
「おっと……美影ちゃん大丈夫?」
「暁さん! 助かりま……えっ、何であんたがいんのよ!?」
「あんた? ん?」
桐生の視線が明らかに自分の後ろに向いていると感じたハルナが向いた先には、露骨に嫌そうな顔をした沢村がいた。
「お前さぁ、何百合イチャイチャしてんだよ任務ヒィッ!!」
思わず沢村が言葉を失い小さく悲鳴を上げる。聞き捨てならない部分があったようで、ハルナは少しだけ沢村に対して圧をかけた。が、全員にも影響が出てしまったようで、古代も新見も相原も桐生も思わず冷や汗をかいた。肝心のハルナはと言うと、いつもの笑顔とは違い真顔をしていた
もしもオーラが見えるなら、今のハルナの周りには危険なオーラが漏れ出し、そのまま沢村に向いて揺れているだろう。
「何か言った?」
(圧かけちゃえ、圧。不調にさせないレベルで)
全力で圧をかければ有無を言わせず即失神させられるレベルなのは、幸か不幸か極一部の物しか知らない。
______
『格納庫ハッチ開け、アーム稼働始め!』
電磁アームに掴まれたこうのとりがゆっくりと艦外に移動し、こうのとりを離した。
「こ、怖かったぁ……すみませんでした、暁さん」
「私だって怒る時は怒るよ。ただあんまり経験ないだけ」
かなり久しぶりに起こったなと自覚しつつ自身を冷ましていたハルナは、まだまだ不機嫌状態だ。沢村が涙目になって誤ってきているので流石に許したが、「百合」と言われるのは無視できない。ただ「やりすぎた」とハルナが自覚したように、皆一様に冷や汗をかき続けている。
「それにしても、生きた心地がしませんでした、ですよね古代さん」
「ああ、怖かった。威嚇みたいものですか?」
「威嚇というより圧をかけてるだけよ。はい、この話はこれでお終い」
これ以上不機嫌を続行すると全員が心を病んでしまいそうだ。気持ちを切り替えて任務を続行する。古代に新見、相原、沢村、桐生、そしてハルナにアナライザー。これが今回の探査任務のメンバーだ。Wunderからの観測の結果では、現在停泊中の惑星は海洋惑星ではとの予測が立っている。それも文明の痕跡アリのおまけつき。
海面すれすれになるまで降下を続け、緩やかに着水、そのまま主翼を折りたたんで潜航態勢に入る。そのまま潜水。暗い青をした液体はどこまでも広がり続けるが、生物が見当たらない事に不気味さを覚える。海は本来生命の源。生物の起源が生まれるのに必要な場所だ。
「深度50、55、60」
《■■■■■■■■■■■■■■》
「歌……? うわっ!!」
潜航中のこうのとりが急に潜航速度を速め、艇内が揺れに襲われた。
「急制動!」
「やってますが効きません!」
「……総員対衝撃姿勢!」
こうのとりなら多少の衝撃くらいなら物ともしない……内部を除けば。怪我をしてしまえば機体が無事でも意味が無いため、古代は全員に頭を抱えて姿勢を低くするように指示する。
「沢村! 急制動もっとかけろ!」
「やってますって! クッソォッ!!」
沢村の急制動も効かず、こうのとりはさらに深度を下げていく。深く深く、光も届かない深海へ潜っていく。だがその底にハルナは日の光が見えた。
「……っ! 私のタイミングで急制動して!」
「えええっ!?」
「いいからやる! ……今!」
ギリギリで制動をかけて水底にある陽の光に突っ込んだ瞬間、次に見た景色は青空だった。海もある。雲もある。建物も建っている、それも無事な状態で。だが海が血の様に赤い。
「操縦桿上げて制動! あと踏ん張って!」
景色に見覚えは無いがここは異常な星だと理解したハルナは考えた。
(ここは、昔の人類の町かもしれない)
ガトランティスって、軍隊と言うよりも海賊。海賊と言うよりも山賊なんです。
まるで、「野蛮と言う文字が体を持って暴れ出した」と言うイメージがこれでもかと言うほどよく似合うガトランティスは、やっぱり野蛮であるべき。
という事で、あの火焔直撃砲の欠点を強引な方法で解決してみました。
3連装火焔直撃砲ってかっこいいけど頭悪悪、だけどMap攻撃みたいに広範囲をこんがり焼くことが出来る鬼畜兵器なんです。
やっぱりWunderに対抗しようと思ったらこれ位の強化は欲しいです。
それでは次のお話で
(@^^)/~~~